百間ひゃくけん川がわ

百間ひゃくけん川がわ
芥子からし山さんより百ひゃく間あいだ川中かわなか流りゅうを望のぞむ
水系すいけい	一級いっきゅう水系すいけい 旭川あさひかわ
種別しゅべつ	一級いっきゅう河川かせん
延長えんちょう	12.9 km
平均へいきん流量りゅうりょう	-- m3/s
流域りゅういき面積めんせき	16.3 km2
水源すいげん	旭川あさひかわ（岡山おかやま県けん）
水源すいげんの標高ひょうこう	-- m
河口かこう・合流ごうりゅう先さき	児島湾こじまわん（岡山おかやま県けん）
流域りゅういき	岡山おかやま県けん

現在げんざいの低てい水路すいろが開削かいさくされる直前ちょくぜんの百ひゃく間あいだ川中かわなか流域りゅういき。中央ちゅうおう下かが沢田さわだ集落しゅうらくで、左ひだりに国道こくどう2号ごう（現げん国道こくどう250号ごう）百ひゃく間あいだ川かわ橋きょうが見みえる。堤防ていぼうの中なかの水田すいでん地帯ちたい内ないをクランク状じょうに流ながれる細ほそい水路すいろが平常へいじょう時じの百間ひゃくけん川がわで、操みさお山さん沿ぞいは大だい部分ぶぶんに堤防ていぼうがなく、放水ほうすい時じは山やますそや集落しゅうらく端はしの石垣いしがきが河川かせん区域くいきとの境目さかいめとなった（1975年ねん1月がつ）

百間ひゃくけん川がわ（ひゃっけんがわ）は、岡山おかやま県けん岡山おかやま市し南部なんぶにある人工じんこう河川かせん。旭川あさひかわ放水ほうすい路ろとも呼よばれる。2019年ねん9月がつ4日にちの国際こくさいかんがい排水はいすい委員いいん会かいの国際こくさい執行しっこう理事りじ会かいにおいて、令れい和わ元もと年度ねんどにかんがい施設しせつ遺産いさんに県内けんないで初はじめて登録とうろくされた。

地理ちり

旭川あさひかわの氾濫はんらんから岡山おかやま城じょう下したを守まもるため、江戸えど時代じだい初期しょきに岡山おかやま藩はん主あるじ池田いけだ光政みつまさの命いのちにより築造ちくぞうされた。「百間ひゃくけん川がわ」の名なの由来ゆらいは、「二にの荒手あらて」（中島なかじま竹田たけだ橋きょう直下ちょっか流りゅう）の幅はばが堤防ていぼうを含ふくめ百ひゃく間あいだ（約やく180m）あったことによる。

岡山おかやま市し北きた区く三野みの・中ちゅう区く中島なかじま付近ふきんで旭川あさひかわと分流ぶんりゅうし、操みさお山さんの北きたを東ひがし流りゅうする。岡山おかやま市し中なか区く米田よねだ付近ふきんで、東ひがしにそびえる芥子からし山やまを避さけるように大おおきく南みなみに流ながれを変かえ、干拓かんたく地ちの間あいだを通とおって児島湾こじまわんに注そそぐ。

低地ていちの住宅じゅうたく地ちや水田すいでん地帯ちたいを流ながれるため、流域りゅういき各所かくしょに排水はいすいポンプ場じょうが整備せいびされている。2014年ねんには河口かこうに海水かいすいの流入りゅうにゅう防止ぼうしと大雨おおあめ時じの排水はいすい能力のうりょく向上こうじょうのためのライジングセクターゲート方式ほうしきの水門すいもん計けい3基きが完成かんせいする。堤防ていぼう内ないの高水たかみず敷じきには公園こうえんやテニスコート、野球やきゅう場じょう、サッカー場じょう、ウォーキングコースなどが整備せいびされ、市民しみんに親したしまれている。

旭川あさひかわの分流ぶんりゅう部ぶより河口かこうまでの総そう延長えんちょうは12.9kmである。国土こくど交通省こうつうしょう岡山おかやま河川かせん事務所じむしょにより維持いじ・管理かんりされている。

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  旭川あさひかわとの分流ぶんりゅう水門すいもん
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  一いちの荒手あらて
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  高水たかみず敷じきに整備せいびされた公園こうえん
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  下しも流域りゅういき
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  百間ひゃくけん川がわ河口かこうの水門すいもん
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  百間ひゃくけん川がわ河口かこうにある岡山おかやま河川かせん事務所じむしょ百ひゃく間あいだ川かわ出張所しゅっちょうしょ

流域りゅういきの自治体じちたい

岡山おかやま県けん

岡山おかやま市し中ちゅう区く・東ひがし区く

歴史れきし

中島なかじま竹田たけだ橋きょう着工ちゃっこう前まえの百間ひゃくけん川がわ二にの荒手あらて。改修かいしゅう工事こうじのため一部いちぶの取とり壊こわしが始はじまったあと。並行へいこうして河川かせん区域くいきを横切よこぎる市道しどう（写真しゃしん右みぎ奥おく）も増水ぞうすい時じには洗あらい越ごしとなる構造こうぞうだった（1989年ねん、現げん・岡山おかやま市し中なか区く中島なかじま）

百間ひゃくけん川がわに存在そんざいした陸りく閘と旧きゅう堤防ていぼう。増水ぞうすい時じには縦たてに切きられた2本ほんの溝みぞにそれぞれ木製もくせいの板いたを落おとし込こみ、その間あいだに土嚢どのうを詰つめて水みずを防ふせいだ。河川敷かせんしき内ないに保存ほぞんされているもの。背後はいごは米田よねだ橋きょう（岡山おかやま市し中なか区く米田よねだ）

米田よねだ旧きゅう堤防ていぼう周辺しゅうへんの改修かいしゅう以前いぜんの空中くうちゅう写真しゃしん。中央ちゅうおう下かの米田よねだ集落しゅうらくの北きたに東西とうざいに築きずかれた堤防ていぼうがあり、対岸たいがんの神下こうかに向むかう道路どうろが切きり通どおしで横断おうだんしている部分ぶぶんが現存げんそんする旧きゅう堤防ていぼうである。左下ひだりしたから中央ちゅうおうを経へて小山こやま（河川かせん改修かいしゅう時じに消失しょうしつ）の山やますそを回まわり込こむように右みぎ下かに流下りゅうかするのが平常へいじょう時じの百間ひゃくけん川がわ水路すいろ（1975年ねん1月がつ）

1970年代ねんだいの河川かせん改修かいしゅうで旧きゅう山陽さんよう道どうに作つくられた鉄製てつせいゲート式しきの陸りく閘。河川敷かせんしき内ないには原尾島はらおしま遺跡いせき発掘はっくつの作業さぎょうテントが見みえる（1989年ねん、現げん・岡山おかやま市し中なか区く原尾島はらおしま）

岡山おかやま城じょう付近ふきんを流ながれる旭川あさひかわは、安土あづち桃山ももやま時代じだいに行おこなわれた築城ちくじょう工事こうじの時ときに、蛇行だこうするよう付つけ替かえられ、河かわ道どうも狭せまくされたことから、岡山おかやま城下じょうかはその後ご、たびたび洪水こうずいに見舞みまわれるようになった。特とくに1654年ねん（承うけたまわ応おう3年ねん）に起おこった大だい洪水こうずいは城下じょうかに甚大じんだいな被害ひがいをもたらしたことから、当時とうじ岡山おかやま藩はんに出仕しゅっししていた陽明学ようめいがく者ものの熊沢くまさわ蕃山ばんざんが、洪水こうずい対策たいさくとして「荒手あらて」と呼よぶ越えつ流りゅう堤つつみと放水ほうすい路ろを組くみ合あわせた「川かわ除のけ（かわよけ）の法ほう」を考案こうあん。岡山おかやま藩はん郡代ぐんだいの津田つだ永えい忠ただしはこの構想こうそうを基もとに、3段だんの荒手あらてにより水勢すいせいを弱よわめながら旭川あさひかわの氾濫はんらんを越えつ流りゅう・放水ほうすいさせる百間ひゃくけん川がわを設計せっけいした。1669年ねん（寛文ひろふみ9年ねん）に永えい忠ただしの指揮しきで着工ちゃっこうし、1686年ねん（貞享ていきょう3年ねん）に完成かんせいしたと伝つたえられている。江戸えど期きを通つうじて完成かんせい当初とうしょの姿すがたで洪水こうずいから岡山おかやま城下じょうかを守まもった。

当時とうじの百間ひゃくけん川がわは、通常つうじょう時じには平坦へいたんな水田すいでん地帯ちたいの中なかに一定いってい間隔かんかくで並行へいこうする2本ほんの堤防ていぼうが河口かこうまで連つらなるもので、1960年代ねんだいから始はじまった国くにの大だい改修かいしゅう事業じぎょうまで同おなじ景観けいかんを保たもっていた。堤防ていぼうの高たかさは2メートル前後ぜんこうで、これに切きり通どおしを設もうけて道路どうろや鉄道てつどうを通とおす陸りく閘（りっこう）や洗あらい越ごしが多数たすう存在そんざいした。

砂川すなかわ合流ごうりゅう地点ちてん付近ふきんの清しん内ない橋きょうより上流じょうりゅうは流域りゅういき両りょう岸きしの農業のうぎょう用水路ようすいろが合流ごうりゅうする水路すいろがあるのみで、現在げんざい見みられる低てい水路すいろは存在そんざいせず、当初とうしょから河川かせん区域くいき外がいと変かわらない水田すいでん耕作こうさくが行おこなわれた。放水ほうすい時じには流失りゅうしつして収穫しゅうかくが得えられない可能かのう性せいがあることから、岡山おかやま藩はんは河川かせん区域くいき内ないの水田すいでんについては、年貢ねんぐを通常つうじょうの水田すいでんより低ひくく抑おさえる措置そちを取とっていた。

旭川あさひかわは明治めいじ以降いこう相次あいついで氾濫はんらんして岡山おかやま市街地しがいちが水害すいがいに見舞みまわれたため、1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）から大だい改修かいしゅうが行おこなわれた。百間ひゃくけん川がわでは1961年ねん（昭和しょうわ36年ねん）の第だい2室しつ戸と台風たいふう災害さいがいを契機けいきに、1963年ねん（昭和しょうわ38年ねん）から建設省けんせつしょう（現げん・国土こくど交通省こうつうしょう）が改修かいしゅうに着手ちゃくしゅ。1968年ねん（昭和しょうわ43年ねん）に河口かこう部ぶの水門すいもんと堤防ていぼうの整備せいびを終おえた。次ついで中なか・上うえ流域りゅういきで、河川かせん区域くいきに低てい水路すいろを開削かいさくして高水たかみず敷じきを設もうけ、さらに堤防ていぼうを整備せいびする河かわ道どう整備せいび工事こうじが1974年ねん（昭和しょうわ49年ねん）から1983年ねん（昭和しょうわ58年ねん）まで行おこなわれ、岡山おかやま県けん下かで戦後せんご最大さいだいを記録きろくした1972年ねん昭和しょうわ47年ねん7月がつ豪雨ごうう時どきの流量りゅうりょう（毎秒まいびょう800m³）に耐たえられる構造こうぞうになった。

この工事こうじにともない、建設省けんせつしょうによる河川かせん区域くいき内ないの水田すいでんの買収ばいしゅうが1971年ねん（昭和しょうわ46年ねん）から進すすめられ、江戸えど時代じだいから続つづいた耕作こうさくが消滅しょうめつした。また旧きゅう山陽さんよう道どうなど一部いちぶを除のぞき、陸りく閘で河川かせん区域くいきを横切よこぎっていたほとんどの道路どうろが新規しんきに架かけられた橋はしに移うつされた。さらに堤防ていぼう改修かいしゅう工事こうじが1996年ねん（平成へいせい8年ねん）まで続つづけられ、残のこる陸りく閘もすべて橋きょうに置おき換かえられて姿すがたを消けした。高水たかみず敷じきには堤防ていぼう改修かいしゅう終了しゅうりょう後ご、公園こうえん施設しせつやテニスコート、野球やきゅう場じょう、サッカー場じょうなどが整備せいびされ、幅広はばひろく市民しみんに活用かつようされている。

2009年ねん（平成へいせい21年ねん）4月がつ1日にち、岡山おかやま市しの政令せいれい指定してい都市とし移行いこうにともない、中流ちゅうりゅう以南いなんは中ちゅう区くと東ひがし区くのおおむねの区く境さかいとなった。

2015年ねん（平成へいせい27年ねん）、一いちノ荒手あらて、二にノ荒手あらて、米田よねだの旧きゅう堤防ていぼう、大だい水尾みずおの旧きゅう堤つつみからなる治水ちすい施設しせつ群ぐんは土木どぼく学会がっかい選奨せんしょう土木どぼく遺産いさんに選えらばれる。

百間ひゃくけん川がわ遺跡いせき

百間ひゃくけん川がわは、岡山平野おかやまへいやのほぼ中央ちゅうおう部ぶを流ながれる旭川あさひかわの放水ほうすい路ろであり、百間ひゃくけん川がわ改修かいしゅう工事こうじの際さいに、中ちゅう流域りゅういきの河川敷かせんしきの下した4カ所かしょで集落しゅうらく遺跡いせきが発見はっけんされ、1977年ねん（昭和しょうわ52年ねん）より発掘はっくつ調査ちょうさが行おこなわれた。縄文じょうもん後期こうきから中世ちゅうせいにかけての複ふく合あい遺跡いせきである。遺跡いせき名めいは大字だいじ名めいを冠かんしており、総称そうしょうして百ひゃく間あいだ川かわ遺跡いせきと呼よばれる。弥生やよい時代じだい後期こうき末まつには、水田すいでんがかなり広大こうだいに行おこなわれていたと推定すいていされている。また、部分ぶぶん的てきに稲いね株かぶ跡あとが見みつかっており、株かぶの大おおきさやその分布ぶんぷ状じょう況きょうから「田植たうえ」が行おこなわれていたと考かんがえられている。

原はら尾島おじま遺跡いせき

原はら尾島おじま（はらおじま）遺跡いせきでは、縄文じょうもん時代じだい後期こうきから室町むろまち時代ときよにかけての集落しゅうらく群ぐんが発掘はっくつされた。主あるじには弥生やよい時代じだい後期こうきから古墳こふん時代じだいにかけての集落しゅうらく、鎌倉かまくら時代ときよから室町むろまち時代じだいにかけての集落しゅうらくが中心ちゅうしんである。

沢田さわだ遺跡いせき

沢田さわだ（さわだ）遺跡いせきは弥生やよい時代じだい前期ぜんきから古墳こふん時代じだい前期ぜんきにかけての集落しゅうらく群ぐんの遺跡いせきである。特とくに弥生やよい時代じだいの遺跡いせきは環かん濠ほりに囲かこまれていたことが確認かくにんされている。ここで発掘はっくつされた弥生やよい土器どきは現在げんざい、岡山おかやま市し埋蔵まいぞう文化財ぶんかざいセンターに収蔵しゅうぞうされている。

兼基かねもと・今谷いまたに遺跡いせき

兼基かねもと・今谷いまたに（かねもと・いまだに）遺跡いせきは弥生やよい時代じだいから古墳こふん時代じだいにかけての遺跡いせきと鎌倉かまくら時代じだいの集落しゅうらく跡あとの遺跡いせきである。弥生やよい時代じだいの遺跡いせきからは水田すいでん跡あとや掘立柱ほったてばしらの建物たてもの群ぐんが発掘はっくつされた。

米田よねだ遺跡いせき

米田よねだ（よねだ）遺跡いせきは弥生やよい時代じだいから古墳こふん時代じだいにかけての遺跡いせきと、奈良なら時代じだいから室町むろまち時代じだいにかけての遺跡いせきである。特とくに奈良なら時代じだいから室町むろまち時代じだいにかけての遺跡いせきでは道路どうろや橋脚きょうきゃくの跡あとや、掘立柱ほったてばしらの建物たてもの群ぐんが発掘はっくつされている。

笄の井戸いど

笄の井戸いど

米田よねだ遺跡いせきの下手へたには「笄（こうがい）の井戸いど」がある。百間ひゃくけん川がわ遺跡いせき群ぐんの南みなみにある操みさお山さん山塊さんかいの最さい東端ひがしばた部ぶには戦国せんごく時代じだいに正木まさき城じょうがあり、天正てんしょう年間ねんかん（1573年ねん - 1592年ねん）城主じょうしゅの正木まさき大膳だいぜん康正こうせいが宇喜多うきた直家なおいえに攻せめられ落城らくじょうした。その際さい、康正こうせいの妻つま・玉たま尾おの方ほうは娘むすめの初瀬はつせを抱だいてこの井戸いどに身みを投なげた。

後年こうねん、この2人ふたりを供養くようしたところ、井戸いどより笄と櫛くしが浮うかび上あがり、この井戸いどを「笄（こうがい）の井戸いど」と呼よぶようになったという伝承でんしょうが伝つたわっている。

支流しりゅう

• 砂川すながわ

参考さんこう文献ぶんけん

• 　岡山おかやま県けん高等こうとう学校がっこう教育きょういく研究けんきゅう会かい社会しゃかい科か部会ぶかい歴史れきし分科ぶんか会かい/編へん 『新版しんぱん 岡山おかやま県けんの歴史れきし散歩さんぽ』 山川やまかわ出版しゅっぱん社しゃ 1991年ねん 17ページ

関連かんれん項目こうもく

• 内田うちだ百閒ひゃっけん
• 弥生やよい時代じだいの遺跡いせき一覧いちらん

外部がいぶリンク

• 国土こくど交通省こうつうしょう岡山おかやま河川かせん事務所じむしょ
• 百間ひゃくけん川がわ (8707120004) - 旭川あさひかわ水系すいけい | 国土こくど数値すうち情報じょうほう河川かせんデータセット - Geoshapeリポジトリ