(Translated by https://www.hiragana.jp/)
精巣捻転症 - Wikipedia コンテンツにスキップ

精巣せいそう捻転ねんてんしょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
正常せいじょうイヌ睾丸こうがん (ひだり) と精巣せいそう捻転ねんてんしょうこした睾丸こうがん (みぎ) 。

精巣せいそう捻転ねんてんしょう(せいそうねんてんしょう)は、男性だんせいにおいて腹部ふくぶ精巣せいそうつなせいさくじれる症状しょうじょうせいさく捻転ねんてんしょう(せいさくねんてんしょう)、睾丸こうがん回転かいてんしょう(こうがんかいてんしょう)とも[* 1]せいさくねじれにより精巣せいそうへのりゅう途絶とだえるため、処置しょちまでに時間じかんようすると精巣せいそう壊死えしする危険きけんがある。このため、発症はっしょうから6時間じかん以内いない緊急きんきゅう手術しゅじゅつ必要ひつようとする[1]

臨床りんしょうぞう

[編集へんしゅう]

ぜん年代ねんだい男性だんせい発生はっせいする可能かのうせいがあり、とりわけ25さい以下いかおおい。『標準ひょうじゅん外科げかがく だい11はん』 p.1210によれば成人せいじん男性だんせいやく4000にん一人ひとりられる症状しょうじょうである。『現代げんだい外科げかがく大系たいけい』によれば精巣せいそう血行けっこう障害しょうがいの90%がこの症状しょうじょうであるとわれる[2]広川ひろかわいさお報告ほうこく[2][3]によれば患者かんじゃすうは10代が53%、20だいが26.9%。

また左右さゆうべつ左側ひだりがわがややおおく、2/3もしくは60 - 65.5%。両側りょうがわせいも0.9%とすくないながらも報告ほうこくされている[2][4]

実際じっさい精巣せいそう回転かいてんは、あしがわから時計とけいまわりが43%、はん時計とけいまわりが57%との報告ほうこくがあり[4]回転かいてん角度かくどは360が40.7%、180が33.8%[4]であるが、じつに4回転かいてん、1440などとれい報告ほうこくされている[5]。 またさやまくなか精巣せいそうのみが捻転ねんてんしているさやまくない捻転ねんてんさやまくごと捻転ねんてんしているさやまくがい捻転ねんてんのほか、精巣せいそう精巣せいそう上体じょうたい接合せつごう精巣せいそう単体たんたい捻転ねんてんしているケースもある[6]

Parry と岩下いわしたはこの症状しょうじょうを、およそ急激きゅうげきかつ突発とっぱつてきいちかい発作ほっさ決定的けっていてき局面きょくめんいた急性きゅうせい完全かんぜんがた軽度けいど発作ほっさなんこり、そのたびにすうじゅうふん乃至ないし2 - 3あいだ自然しぜんもしくは人為じんいてき整復せいふくされる再発さいはつ不全ふぜんがた再発さいはつ不全ふぜんがたがあるとき致命ちめいてき発作ほっさこす移行いこうがた分類ぶんるいし、おおくのケースは移行いこうがたであるとした[2]

原因げんいん

[編集へんしゅう]

原因げんいんとしては精巣せいそう周辺しゅうへんにおけるなんらかの形状けいじょう異常いじょうつようたがわれ、たとえば精巣せいそうつつさやまく腔の内部ないぶひろすぎる場合ばあいせいさくながすぎる場合ばあいや、ふく睾丸こうがん付着ふちゃく異常いじょうおおきさの均衡きんこうなどがかんがえられる[2][7]。より直接的ちょくせつてき発症はっしょう起点きてんとしては、精巣せいそう静脈じょうみゃく内圧ないあつ変化へんか一部いちぶ反復はんぷく運動うんどうなどがかんがえられる[2]。ただし実際じっさいのところはあきらかな原因げんいん不明ふめい場合ばあいおお[* 2]。また、停留ていりゅう睾丸こうがんとの合併がっぺいりつたかく、木本きもと (1969) によれば50%にものぼっている[2]

症状しょうじょう

[編集へんしゅう]

下腹部かふくぶから陰嚢ふぐりにかけていたみまたはあつつうともな炎症えんしょうこし、陰嚢ふぐりにはつよ鬱血うっけつられ、全身ぜんしん症状しょうじょうとして便秘べんぴなどをともな場合ばあいもある。原則げんそくてき発熱はつねつられないとする文献ぶんけん[8]発作ほっさ 2 - 3にちまたはいち週間しゅうかん、38程度ていど発熱はつねつられるとする文献ぶんけんがある[2]感染かんせんしょうではないため、うみ尿にょう白血球はっけっきゅうすう顕著けんちょ上昇じょうしょうなどはみられない[2][8]

睾丸こうがん壊死えししたのち疼痛とうつう軽減けいげんし、2 - 3週間しゅうかんすればあつつうおさまる。

時間じかん経過けいか精巣せいそう生存せいぞんりつ[9]
時間じかん 生存せいぞんりつ
0 - 6 85 - 97%
6 - 12 55 - 85%
12 - 24 20 - 80%
24 - 10%未満みまん

検査けんさ

[編集へんしゅう]

触診しょくしんで、大腿だいたい内側うちがわでることでこる精巣せいそうきょすじ反射はんしゃ喪失そうしつ[9]プレーン徴候ちょうこうなどをることで急性きゅうせい睾丸こうがんえんなどとの鑑別かんべつ可能かのうほんしょうでは精巣せいそうきょじょうによるいたみの減少げんしょうられない[7]。また、前述ぜんじゅつよう白血球はっけっきゅう減少げんしょうられないてんでも鑑別かんべつ可能かのう

そのちょう音波おんぱ検査けんさシンチグラフィによりりゅう確認かくにんするが[8]緊急きんきゅうようする症状しょうじょうであるため、うたがいがつよようであれば画像がぞう診断しんだんなどに時間じかんをかけず、緊急きんきゅうてき手術しゅじゅつおこなわれる[9]

治療ちりょう

[編集へんしゅう]

精巣せいそうへのりゅう停止ていしが6時間じかん以上いじょうつと、精巣せいそう壊死えしはじまる[1][8]切開せっかいしてせいさくねじれをもどすとともに、再発さいはつ防止ぼうしのため精巣せいそう安定あんていさせる処置しょちおこない、けんがわ精巣せいそうも、予防よぼうてき固定こていおこな[8][9]。このさいさやまくない捻転ねんてんであれば、余分よぶんめて再発さいはつ予防よぼうとする[6]固定こてい目視もくししろまく試験しけんてき切開せっかいちょう音波おんぱ検査けんさなどでりゅう充分じゅうぶん確認かくにんする[2]。 また、すで睾丸こうがん壊死えししていた場合ばあいは、すみやかにこれを除去じょきょする[2]。80%は手術しゅじゅつすで壊死えしいたっている[2]

陰嚢ふぐりがいからの整復せいふく一般いっぱん困難こんなんであるが[7]保存ほぞんてき治療ちりょうとしてもちいられる場合ばあいもある。ただし再発さいはつ傾向けいこうつよいので一時凌いちじしのぎにぎず、いずれは固定こていじゅつ必要ひつようとされる[2]

[編集へんしゅう]

必要ひつようであればインプラントで睾丸こうがん再建さいけんすることができる[10]

類似るいじ症例しょうれい

[編集へんしゅう]

睾丸こうがんせいさく捻転ねんてん回転かいてんられないにもかかわらずほんしょう同様どうよう症状しょうじょうられるものを睾丸こうがん梗塞こうそくしょうぶ。血管けっかん閉塞へいそくによってこるがおおくは原因げんいん不明ふめいである[2]。この場合ばあいも2/3は左側ひだりがわ精巣せいそうこり、やはり10代や20だいおお症状しょうじょうとされる[2]

その睾丸こうがん付随ふずいする付属ふぞく小体こていである睾丸こうがんたれふく睾丸こうがんたれ睾丸こうがんつくりたい、迷管などが捻転ねんてん梗塞こうそく壊死えしこす場合ばあいがあり、これらを睾丸こうがんたれ捻転ねんてんしょう場合ばあいがある。全身ぜんしん症状しょうじょう軽度けいどである傾向けいこうがあるが、基本きほんてきにはケース次第しだいである。11-14さいによくみられる[2]

その

[編集へんしゅう]
  • 捻転ねんてん」は睾丸こうがん回転かいてん結果けっかであるからほんしょうは「睾丸こうがん回転かいてんしょう」とすべきだとのろんもあったようである[* 3]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ かつてはせいさく捻転ねんてんしょう睾丸こうがん捻転ねんてんしょうばれていたが、近年きんねん(2011ねん現在げんざい)の文献ぶんけんでは精巣せいそう捻転ねんてんしょうおおられるようである。
  2. ^ 木本きもと (1969) によれば30% - 50%は原因げんいん不明ふめい
  3. ^ 木本きもと (1969) によれば、1935ねん岩下いわした健三けんぞうなど。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b Wampler SM, Llanes M (September 2010). “Common scrotal and testicular problems”. Prim. Care 37 (3): 613?26, x. doi:10.1016/j.pop.2010.04.009. PMID 20705202. 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 木本きもと (1969)
  3. ^ 広川ひろかわいさお (1956) 泌尿器ひにょうき科学かがく紀要きよう 2:97 木本もくほん (1969) よりの孫引まごびき。
  4. ^ a b c 広川ひろかわいさお 泌尿器ひにょうき科学かがく紀要きよう 2:97 (1956) / 木本きもと (1969) 『現代げんだい外科げかがく大系たいけい だい42かんB』より孫引まごびき。
  5. ^ 杉本すぎもと雄三ゆうぞう 日本にっぽん外科げかたからはこ 23:280 (1945) 木本きもと (1969) よりの孫引まごびき。
  6. ^ a b 木本きもと (1983) 『現代げんだい外科げか手術しゅじゅつがく大系たいけい だい17かん
  7. ^ a b c 大槻おおつき (1969) p.537
  8. ^ a b c d e 田中たなかあきらみき盛岡もりおか政明まさあきへん)、2001、『泌尿器ひにょうき科学かがくハンドブック』、大学だいがく教育きょういく出版しゅっぱん pp. 60
  9. ^ a b c d Mary E.Klingensmith (2008, 2009) p.855
  10. ^ 鬼塚おにづか卓弥たくや、1996、『形成けいせい外科げか手術しゅじゅつしょ 実際じっさいへん 改訂かいていだい3はん』、南江堂なんこうどう pp. 919

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • Mary E.Klingensmith 、2008(原著げんちょ) / 2009(邦訳ほうやく)、『ワシントン外科げかマニュアル だい3はん』、メディカル・サイエンス・インターナショナル pp. 844 - 845
  • 大槻おおつき菊男きくおへん)、1969、『大槻おおつき外科げかがく各論かくろん』、文光ぶんこうどう
  • 木本きもと誠二せいじ 監修かんしゅう、1969、『現代げんだい外科げかがく大系たいけい だい42かんB 男性だんせい性器せいき II 性病せいびょう』、中山なかやま書店しょてん
  • 木本きもと誠二せいじ 監修かんしゅう、1983、『現代げんだい外科げか手術しゅじゅつがく大系たいけい だい17かん 性器せいき手術しゅじゅつ』、中山なかやま書店しょてん
  • 松野まつの正紀まさき 監修かんしゅう北島きたじま政樹まさき加藤かとうおさむぶん畠山はたけやま勝義まさよし北野きたのただしつよしへん)、2007、『標準ひょうじゅん外科げかがく だい11はん』、医学書院いがくしょいん pp. 818

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]