合ごう字じ

合ごう字じ（ごうじ、英えい: Ligature;リガチャー）とは、複数ふくすうの文字もじを合成ごうせいして一文字ひともじにしたもの。抱いだき字じ、連れん字じとも呼よばれる。ユリウス・カエサルの表記ひょうき「Julius Cæsar」の「æ」（aとe）が典型てんけい的てきな合ごう字じの例れいである。

総説そうせつ

世界せかいの様々さまざまな文字もじ体系たいけいにおいて、合ごう字じが考案こうあんされ用もちいられてきた。国際こくさい音声おんせい記号きごう (IPA) にも合ごう字じが採用さいようされている。

現代げんだいの欧文おうぶん組版くみはんでは、特定とくてい文字もじの組くみ合あわせのときに、読よみやすくする効果こうかを狙ねらって結合けつごうさせることを合ごう字じと呼よぶ。

ラテン文字もじにおける合ごう字じのステージ

ラテン文字もじの代表だいひょう的てきな合ごう字じ

合ごう字じには、いくつかのステージが認みとめられる。

1. 筆記ひっき体たいの影響えいきょうなどから、デザイン上じょう、単たんに複数ふくすうの文字もじをくっつけて書かいたもの。
2. 活版かっぱん印刷いんさつにおいて、スペースを調整ちょうせいする目的もくてき（カーニング）により、いくつかの文字もじをくっつけた活字かつじを作つくり、必要ひつように応おうじて使用しようしたもの。
3. fi(fi), fl(fl) など、特定とくていの組くみ合あわせについて、統一とういつ的てきに合ごう字じを使つかうようになったもの（F#合ごう字じ）。

   PC にあっては、文字もじコード体系たいけいによってはこれらの合ごう字じに独立どくりつしたコードを与あたえており、一部いちぶの欧文おうぶんフォントはそれに対応たいおうし、字形じけいを持もっている。一部いちぶの組版くみはんソフト（DTPソフト）は、本来ほんらいの文字もじコードと独立どくりつした文字もじコードを一括いっかつして、ないし自動じどうで変換へんかんする機能きのうを持もっている

4. フランス語ふらんすごの Œ, œ のように、2つの文字もじの組くみ合あわせである意識いしきは残のこしながらも、綴つづりの中なかで必かならずその合ごう字じを使つかうようになったもの。
5. ドイツ語ごの ß のように、その文字もじに特別とくべつの役割やくわりを与あたえ、1字じとして扱あつかうようになったもの。
6. アイスランド語ご、デンマーク語ご、ノルウェー語ごの Æ, æ のように、もとの文字もじから離はなれて新あたらしい役割やくわりを持もたせるようになったもの。
7. フェロー語ご、デンマーク語ご、ノルウェー語ごの Ø, ø (o + e) のように、2字じを重かさねて書かかれた結果けっか、新あたらしい役割やくわりを持もつ字じとなったもの。
8. オランダ語ごの IJ/ij (IJ/ij) のように、印刷いんさつ上じょう分わかれて書かかれたとしても1字じと扱あつかわれるようになったもの。
9. W/w (VV/vv, UU/uu) の様ように、完全かんぜんに独立どくりつした文字もじとして多おおくの言語げんごに迎むかえられたもの。
10. & (et) や @ (ad) のように、形かたちを大おおきく変かえ、他たの言語げんごに記号きごうないし表意ひょうい文字もじとして迎むかえられるようになったもの。
11. $ のように、起源きげんがわからなくなっているもの（ラテン文字もじの P と S を重かさねたという説せつが有力ゆうりょく）。
12. Å, å のように、縦たてに重かさねた結果けっか、上うえの文字もじが小ちいさく書かかれるようになったもの。
13. Ä, ä, Ö, ö, Ü, ü のように、縦たてに重かさねて書かいた結果けっか、上うえに付つけられていたものが点てんに変かわったもの（これらドイツ語ごのウムラウトの ¨ は e に由来ゆらいする）。
14. その他た、? はラテン語らてんごの quaestio の最初さいしょと最後さいごの q, o を縦たてに重かさねたものであり、! は、ラテン語らてんごの io を縦たてに重かさねた形かたちとする説せつがある。

これらの合ごう字じが単語たんごに含ふくまれる場合ばあい、辞書じしょなどでどのような位置いちに並ならべるかは様々さまざまである。合ごう字じにする前まえの位置いちに置おく場合ばあい、独立どくりつした文字もじとしてアルファベットに加くわえて並ならべる場合ばあい、また、ウムラウトのようにそれがないものとして並ならべる場合ばあい等とうがある。

「ラテン文字もじ一覧いちらん#追加ついか文字もじ・合ごう字じ」も参照さんしょう

ラテン文字もじ以外いがいの合ごう字じの例れい

表音ひょうおん文字もじの合ごう字じ

デーヴァナーガリー文字もじの合ごう字じの例れい
द् + ध् + र् + य = द्ध्र्य
ラテン文字もじでは ddhrya

• インド系けい文字もじのほとんどやハングルは、複数ふくすうの文字もじを合成ごうせいして一いち音節おんせつの音おと（言語げんごによっては複数ふくすうの音節おんせつで読よまれる）を表あらわす字じを作つくるシステムになっているため、文字もじ表記ひょうき上じょうはまとまった音素おんそが1つの文字もじに結合けつごうした状態じょうたいになり、一種いっしゅの合ごう字じとみなされる（デーヴァナーガリーにおけるॐ など、例外れいがい的てきに表意ひょうい文字もじとなっているものを除のぞく）。
• キリル文字もじの Я は、IA の合ごう字じといわれる。キリル文字もじを用もちいる諸しょ言語げんごのなかには、АとЕの合ごう字じ(Ӕ, ӕ)・НとГの合ごう字じ (Ҥ, ҥ)・ТとЦの合ごう字じ(Ҵ ,ҵ)などが採用さいようされているものもある。
  「キリル文字もじ一覧いちらん」も参照さんしょう
• アラビア文字もじには ل （ラーム）と ا （アリフ）の合ごう字じ لا （ラー）がある。
• 日本語にほんごの仮名かめいでは、「𪜈（トモ）」、「ヿ（コト）」、「ゟ（より）」などの合ごう略りゃく仮名がな（仮名かめい合あい字じ）が使つかわれた。「ゟ」は、現在げんざいでも新聞しんぶんの求人きゅうじん欄らんの三さん行ぎょう広告こうこくなどで使用しようされている。明治めいじ初期しょきに制定せいていされた法律ほうりつで、時折ときおり見みることができる。
• モンゴル文字もじにも合ごう字じが存在そんざいする。

表意ひょうい文字もじの合ごう字じ

• 漢字かんじは古来こらいより形声けいせいや会意かいいによって多数たすうつくられた文字もじであり、その成なり立たち自体じたいが一種いっしゅの合ごう字じである。
  • 中国語ちゅうごくご圏けんでは、護符ごふとして、「大吉だいきち」、「招財進しん寶たから」、「黄金おうごん萬まん両りょう」などを合ごう字じとして書かく例れいが現代げんだいにいたるまで見みられる。
  • 日本にっぽんにおける漢字かんじでは、和製わせい漢字かんじの合ごう字じとして、「麿まろ」（麻呂まろ）、「粂」（久米くめ）、「杢もく」（木工もっこう）、「袰」(母衣ほろ)、「塰」（海士あま）、「𡍄」（土居どい）などの人名じんめい・地名ちめいを表記ひょうきするための造みやつこ字じ、「浬かいり」（海うみ里さと）、「粁きろめーとる」（千せん米めーとる、キロメートル）などの単位たんいを表あらわすための造みやつこ字じが行おこなわれ、長ながく使つかわれていたが、明治めいじ期き以降いこうの日本語にほんごの変革へんかくにおいて簡便かんべん性せいを欠かくとして徐々じょじょに使つかわれなくなった。このうち「麿まろ」などは1951年ねん以降いこう、戸籍こせき法ほう施行しこう規則きそくの人名じんめい用よう漢字かんじに定さだめられ、新生児しんせいじの命名めいめいに使用しようすることが可能かのうとなっている。
  • 朝鮮ちょうせん漢字かんじにも合ごう字じが存在そんざいする。

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  「招財進しん寶たから」（財ざい運うんの到来とうらいを願ねがう）の合ごう字じ
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  （恐おそらく）中ちゅう文ぶんにおける博物館はくぶつかんの合ごう字じ

組くみ文字もじ

• 2つ以上いじょうの文字もじが、活字かつじやコンピュータ上じょうで1文字もじのデータとして扱あつかわれる例れい（Unicodeにおける明治めいじ以降いこうの元号げんごうや、「cm」「kg」の単位たんい記号きごう、「10」といった2桁けた以上いじょうの数字すうじなど）は組くみ文字もじと呼よぶ。組くみ文字もじを使用しようすれば、横よこ組ぐみ/縦たて組ぐみのレイアウトを変更へんこうしても、組版くみはんを調整ちょうせいする必要ひつようがない。

関連かんれん項目こうもく

• 国字こくじ、方言ほうげん字じ
• カーニング
• モノグラム

外部がいぶリンク

• 『漢字かんじの写真しゃしん字典じてん』の「神かみ字じ」（護符ごふに使つかわれる合ごう字じなど）