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満洲民族 - Wikipedia
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満まん洲しゅう民族みんぞく

満まん洲しゅうに発祥はっしょうしたツングース系けい民族みんぞく
（満州まんしゅう人じんから転送てんそう）
この記事きじの項目こうもく名めいには以下いかのような表記ひょうき揺ゆれがあります。 （詳細しょうさい）
  • 満まん洲しゅう民族みんぞく
  • 滿まん洲しゅう民族みんぞく
  • 満州まんしゅう民族みんぞく

満まん洲しゅう民族みんぞく（まんしゅうみんぞく、マンジュみんぞく、満まん洲しゅう語ご: ᠮᠠᠨᠵᡠ
ᡠᡴ᠋ᠰᡠᡵᠠ、転写てんしゃ: manju uksura）は、ツングース系けい民族みんぞくの一ひとつで、中国ちゅうごく東北とうほく部ぶ、ロシア沿海えんかい地方ちほう（旧きゅう満まん洲しゅう）などに発祥はっしょうし、現在げんざいは中国ちゅうごく各地かくちに散在さんざいしている民族みんぞくである。満まん洲しゅう族ぞく（まんしゅうぞく、マンジュぞく）、満まん族ぞく（まんぞく、マンぞく）などとも呼よばれる。

満まん洲しゅう民族みんぞく
ᠮᠠᠨᠵᡠ
ᡠᡴ᠋ᠰᡠᡵᠠ

ヌルハチ（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）、ホンタイジ（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）、玄げん燁（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）、胤たね禛（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）
弘ひろ暦れき（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）、西にし太ふとし后きさき（イェヘ=ナラ氏し）、載の湉（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）、溥儀ふぎ（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）
ドルゴン（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）、オボイ（グヮルギャ氏し）、ヘシェン（ニオフル氏し）、溥傑（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）
老ろう舎しゃ、顯あらわ玗（愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）、ロザムンド・クワン、郎ろう朗ろう
総そう人口じんこう
10,700,000
全ぜん人類じんるいの0.15%
（見積みつもり）
居住きょじゅう地域ちいき
中華人民共和国の旗 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく10,682,263[1]
香港の旗 香港ほんこん288[2]
中華民国の旗 中華民国ちゅうかみんこく12,000[3]
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく379[4]
関連かんれんする民族みんぞく
シベ族ぞく、ダウール族ぞく、モンゴル族ぞく、漢かん民族みんぞくなど

同おなじく中国ちゅうごく東北とうほく部ぶに興おこり、かつて金きむを建国けんこくした女おんな真しんを祖先そせんとする。17世紀せいきに現在げんざいの中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくおよびモンゴル国こくの全土ぜんどを支配しはいする清きよしを興おこした[5]。清朝せいちょうでは、民族みんぞく全体ぜんたいが八はち旗はた（満まん洲しゅう語ご: ᠵᠠᡴᡡᠨ
ᡤᡡᠰᠠ、転写てんしゃ: jakūn gūsa、八やっつの旗はた）に組織そしきされ（満まん洲しゅう八はち旗はた）、蒙こうむ古こ八はち旗はた、漢かん軍ぐん八はち旗はたと呼よばれる主おもにモンゴル人じんや漢かん人じんによって構成こうせいされた軍事ぐんじ集団しゅうだん八はち旗はたのメンバーとともに旗はた人じんとも呼よばれた。同系どうけいの民族みんぞくにシベ、ウデヘ、ナナイ、ウリチ、ウィルタなどがある。中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくによる民族みんぞく識別しきべつ工作こうさくでは、蒙こうむ古こ八はち旗はたや漢かん軍ぐん八はち旗はたも含ふくむ「旗はた人じんの末裔まつえい」全体ぜんたいが「満まん族ぞく」に「識別しきべつ」（＝区分くぶん）され、「55の少数しょうすう民族みんぞく」の一ひとつとされた。2010年ねんの中国ちゅうごくの国勢調査こくせいちょうさでは人口じんこう1,038万まん人にんとされ、「少数しょうすう民族みんぞく」としてはチワン族ぞく・回かい族ぞくに次つぐ人口じんこうである[6][注釈ちゅうしゃく 1]。

概要がいよう

編集へんしゅう
 
福ふく州しゅうの満まん洲しゅう民族みんぞく（1915年ねん）

「満まん洲しゅう」の漢字かんじは満まん洲しゅう語ごの民族みんぞく名めいᠮᠠᠨᠵᡠ、manju（マンジュ）の当あて字じで、元来がんらいは「満まん洲しゅう」であるが、現在げんざいの日本にっぽんでは一般いっぱんに常用漢字じょうようかんじをもって「満州まんしゅう」と表記ひょうきすることが多おおい[5]。

満まん洲しゅうについては「洲しゅう」の文字もじが含ふくまれていることから、満まん洲しゅう民族みんぞくの興おこった地域ちいきは、現在げんざいでも英語えいごでは満まん洲しゅう民族みんぞくの土地とちという意味いみでマンチュリア（“Manchuria”）のように地域ちいき呼称こしょうとして用もちいられ、これに対応たいおうして日本語にほんごでも「中国ちゅうごく東北とうほく部ぶ」を指さす広域こういき地名ちめい「満まん洲しゅう（満州まんしゅう）」と呼よばれたり、国境こっきょうの町まち「満まん洲しゅう里さと」など地域ちいき名称めいしょうのイメージが強つよい。特とくに民族みんぞくのことを指さす場合ばあいは、満まん洲しゅう民族みんぞく、満まん洲しゅう族ぞく、満まん洲しゅう人じん、満まん人じんなどと表記ひょうきする。しかし、中国ちゅうごく語ごにおいてはあくまでも民族みんぞく名めいであり、土地とちの名前なまえではない。満まん洲しゅう語ごにおいても "ᠮᠠᠨ᠋ᠵᡠ, manju" は専もっぱら満まん洲しゅう族ぞくを指さし、「満まん洲しゅう語ご (ᠮᠠᠨ᠋ᠵᡠ
ᡤᡳᠰᡠᠨ, manju gisun) 」、「満まん洲しゅう文字もじ (ᠮᠠᠨ᠋ᠵᡠ
ᡥᡝᡵᡤᡝᠨ, manju hergen）」なども「満まん洲しゅう人じんの言葉ことば」「満まん洲しゅう人じんの文字もじ」と解ほぐされる。

民族みんぞく名めいである 満まん洲しゅう/マンジュの起源きげんについては諸説しょせつあり、今いまのところ不明ふめいである。しばしば、サンスクリット語ごのマンジュシュリー（文殊もんじゅ師し利り、文殊もんじゅ菩薩ぼさつのこと）に由来ゆらいするともいわれるが[7]、元来がんらいは16世紀せいきまでに女おんな真しんの名なの下したに括くくられていた人々ひとびとのうち、建けん州しゅう女おんな直じき[注釈ちゅうしゃく 2]に属ぞくする5つの部族ぶぞく（スクスフ、フネヘ、ワンギャ、ドンゴ、ジェチェン）を一括いっかつする呼称こしょうであった[8]。日本にっぽんの東洋とうよう史し学者がくしゃである岡田おかだ英弘ひでひろは清朝せいちょう時代じだいのダライ・ラマが「マンジュと言いわれるからには、清朝せいちょう皇帝こうていは文殊もんじゅ菩薩ぼさつの化身けしんである」と宣伝せんでんしたものを第だい6代だい皇帝こうていの乾いぬい隆たかし帝みかどが政治せいじ的てきに利用りようしたところから、文殊もんじゅ菩薩ぼさつが民族みんぞく名めいの由来ゆらいとなったという俗説ぞくせつが生うまれたのではないかとしている[9]。

現在げんざいの中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくのもとでは、モンゴル人じん・漢人かんどの末裔まつえいの一部いちぶ（旧きゅう「蒙こうむ古こ八はち旗はた」、旧きゅう「漢かん軍ぐん八はち旗はた」の末裔まつえいら）と合あわせて「満まん族ぞく」（Mănzú）としてひとくくりにされ、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの55の少数しょうすう民族みんぞくの一ひとつと位置付いちづけられている。1911年ねんの辛からし亥い革命かくめいによる清朝せいちょう崩壊ほうかい後ごは排斥はいせきを受うけた過去かこを持もち、1949年ねんに中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくが成立せいりつした後のちには他たの少数しょうすう民族みんぞくと同おなじく区域くいき自治じち権けんが与あたえられ、合計ごうけい11の自治じち県けんがある（一覧いちらんは後述こうじゅつ）。映画えいが『ラストエンペラー』で知しられる清朝せいちょう最後さいごの皇帝こうていである溥儀ふぎや、戯曲ぎきょく『茶ちゃ館かん』などの作品さくひんで有名ゆうめいな作家さっか老ろう舎しゃも満まん洲しゅう人じんの出身しゅっしんである[6]。

分布ぶんぷ

編集へんしゅう
 
永えい陵りょうの四よん祖そ碑ひ亭てい
 
永えい陵りょうの龍りゅう壁かべ

満まん洲しゅう族ぞくは、かつて中国ちゅうごくを支配しはいした清きよし朝あさ旗はた人じんの末裔まつえいであり、中国ちゅうごく全土ぜんどに散在さんざいする[5]。過半数かはんすうは、遼寧りょうねい省しょうに居住きょじゅうしており[6]、河北かほく省しょう、吉林きつりん省しょう、黒竜江こくりゅうこう省しょう、内モンゴル自治うちもんごるじち区く、新疆しんきょうウイグル自治じち区く、甘粛かんせい省しょう、山東さんとう省しょうにも分布ぶんぷし、北京ぺきん、天津てんしん、成都せいと、西安しーあん、広州こうしゅう、銀川ぎんかわなどの大都市だいとしやその他た中小ちゅうしょう都市としにも居住きょじゅうする。清朝せいちょう前期ぜんきの公文書こうぶんしょや民間みんかん史料しりょうは満まん洲しゅう語ごだけで記しるされているが、人ひとびとの満まん洲しゅう語ごに対たいする意識いしきは薄うすれており、満まん洲しゅう語ごは危機ききに瀕ひんしている[6]。『朝日新聞あさひしんぶん』の報道ほうどうによれば2013年ねん時点じてんで、中国ちゅうごく国内こくないで満まん洲しゅう語ごを解かいし、古こ文献ぶんけんも読よめるレベルの学者がくしゃは決けっして多おおくないという。一方いっぽうで黒竜江こくりゅうこう大学だいがく、中央ちゅうおう民族みんぞく大学だいがく、北京ぺきん市し社会しゃかい科学かがく院いんなどをはじめとする大学だいがく・研究けんきゅう機関きかんによっても満まん洲しゅう語ごに関かんする研究けんきゅうが行おこなわれている。満まん洲しゅう文字もじはモンゴル文字もじを起源きげんとするアルファベットであり、満まん洲しゅう文字もじを解かいすモンゴル族ぞくの研究けんきゅう者しゃ（哈斯巴ともえ特とく爾なんじ（ハスバートル）氏しなど）もおられる。日本にっぽんでも有名ゆうめいな『論語ろんご』『孟子もうし』『詩経しきょう』『孫子まごこ兵法ひょうほう』など中国ちゅうごくの伝統でんとう文化ぶんかを代表だいひょうする著作ちょさくにも満まん洲しゅう語ごの訳本やくほんが存在そんざいし、満まん洲しゅう文字もじが漢文かんぶんと併記へいきされている。研究けんきゅう機関きかん以外いがいの場所ばしょで自学じがくや授業じゅぎょうを通つうじて満まん洲しゅう語ごを習得しゅうとくした学習がくしゅう者しゃの人数にんずうを除のぞいても、満まん洲しゅう語ごを解かいし、古こ文献ぶんけんを読よむことができるレベルの学者がくしゃが10名めいほどに過すぎないのは疑うたがわしい[6]。

清朝せいちょう発祥はっしょうの地ちといわれているのが、遼寧りょうねい省しょうの撫なで順じゅん市しの新しん賓まろうど満まん族ぞく自治じち県けんである[6]。しかし、そこにあっても満まん洲しゅう民族みんぞくの小学校しょうがっこうは1校こうしかなく、満まん洲しゅう族ぞく固有こゆうの姓せいを用もちいる児童じどうもいない[6]。一方いっぽうで、ヌルハチが城しろや寺てらを築きずいて最初さいしょの根拠地こんきょちとしたヘトゥアラ（ᡥᡝᡨᡠ᠋
ᠠᠯᠠ、hetu ala、赫図阿おもね拉ひしげ）[注釈ちゅうしゃく 3]、すなわち、同どう自治じち県けんの西方せいほう、永えい陵りょう鎮老城村じょうむらはヌルハチ即位そくいの地ちであり、ヌルハチの祖先そせんの陵墓りょうぼである永えい陵りょうがあり、太陰暦たいいんれき4月がつ18日にちに各地かくちの満まん洲しゅう族ぞくが集あつまる祭礼さいれいの地ちとなっている[11][注釈ちゅうしゃく 4]。

満まん洲しゅう民族みんぞくの人口じんこうは清朝せいちょうの時代じだいには200万まん人にんほどとされていたが、清朝せいちょう滅亡めつぼう後ごは迫害はくがいを恐おそれたため、続つづいて行おこなわれた中華民国ちゅうかみんこく初期しょきの国勢調査こくせいちょうさで自みずからを満まん洲しゅう族ぞくとしたのは約やく50万まん人にんにすぎなかったという。しかし、少数しょうすう民族みんぞくの権利けんりが謳うたわれるようになると、その人口じんこうは一気いっきに500万まん人にんに増ふえたといわれている。

主要しゅよう分布ぶんぷ域いき

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満まん洲しゅう族ぞくの自治じち県けん
 
シベ族ぞくの自治じち県けん

自治じち県けん・民族みんぞく鎮・民族みんぞく郷きょう

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歴史れきし

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古代こだいの記録きろく

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文献ぶんけん上じょうによれば、狩猟しゅりょう民みんと称たたえさるそれ製せいの石いしを、あるいは以降いこう、物産ぶっさんといった。貊（はく）という民族みんぞくもあったが[13]、戦国せんごく時代じだいから漢かん代だいにかけての漢かん民族みんぞくの進出しんしゅつと楽らく浪なみ郡ぐん（前ぜん108年ねん設置せっち）以下いか4郡ぐんの設置せっちという動うごきのなかで、貊のなかから夫おっと余あまりが起おこった[13]。

高句麗こうくりを建国けんこくしたのも韓かん族ぞくではなく、貊族であった。7世紀せいき末葉まつよう、粟あわ末まつ靺鞨に高句麗こうくりの遺のこ民みんを加くわえ、南みなみ満まん洲しゅうから現在げんざいの朝鮮半島ちょうせんはんとう北部ほくぶにかけての地ちに、「海うみ東ひがしの盛もり国こく」と称しょうされた渤海が建国けんこくされた[5][13][注釈ちゅうしゃく 5]。

金きむ王朝おうちょうと女おんな真しん族ぞく

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→「女おんな真しん」および「金きむ (王朝おうちょう)」も参照さんしょう
 
女おんな真ま文字もじ[注釈ちゅうしゃく 6]
 
1142年ねんにおける女おんな真しん族ぞく王朝おうちょう「金かね」と周辺しゅうへん諸しょ王朝おうちょう
宋そう（南みなみ宋そう）は漢かん民族みんぞく王朝おうちょう、西にし夏なつはチベット系けいタングートの王朝おうちょう、大だい理りはチベット系けいペー族ぞくの王朝おうちょう

半はん農のう半はん猟りょうの女おんな真しん族ぞくが完かん顔がお阿おもね骨ほね打だ（ワンヤン・アクダ）[15][注釈ちゅうしゃく 7]により統一とういつされた。女おんな真しんは、靺鞨七なな部ぶのうち、黒水くろみず靺鞨と呼よばれた集団しゅうだんだと考かんがえられる[16]。金かねは、渤海を滅ほろぼしたモンゴル系けい契ちぎり丹に族ぞくによる遊牧民ゆうぼくみん王朝おうちょうの遼りょうを滅ほろぼし、さらに1126年ねん、漢かん民族みんぞく王朝おうちょうの宋そうの徽宗・欽宗のニ帝みかどおよび皇族こうぞく・重臣じゅうしんらを捕とらえて中国ちゅうごく北半きたはんを支配しはいし、燕つばめ京きょう（いまの北京ぺきん市し）に都とを移うつして宋朝そうちょうを南みなみへと追おいやった[5][17]。体系たいけいを整備せいびし、政府せいふ組織そしきを中央ちゅうおう、地方ちほうともに中国ちゅうごく風ふうにして支配しはい体制たいせいを整ととのえたが、軍事ぐんじ権力けんりょくを強つよく握にぎって独占どくせんしたのは女おんな真しん族ぞくであり、政府せいふ首脳しゅのうもまた女じょ真しん族ぞくによって占しめられた[5][17]。女おんな真人しんじんには行政ぎょうせいと軍事ぐんじを兼かねたミンガン・ムクンの制度せいどなどがとられ特別とくべつの保護ほごを受うけた[17]。東北とうほく部ぶ（満まん洲しゅう）にあっては大だい部分ぶぶんが猛もう安やす・謀はかりごと克かつ制せいによって統治とうちされたが、他た民族みんぞくの住すむ西部せいぶや南部なんぶでは州しゅう県けん制せいが採用さいようされた[17]。

金きむはしかし、1206年ねんにチンギス・カンによって成立せいりつしたモンゴル帝国ていこくの猛攻もうこうを受うけて劣勢れっせいに立たち、都とを開封かいふうに移うつしたものの1232年ねんにはその開封かいふうが包囲ほういされた[18]。そして、1234年ねん、オゴデイらの進撃しんげきにより、逃走とうそうしていた哀あい宗むねが自殺じさつして金かねは滅ほろんだ[5][17][18]。一方いっぽう、これに先立さきだって、契ちぎり丹にの反乱はんらん鎮圧ちんあつを称しょうして挙兵きょへいしていた金きむ王朝おうちょうの将しょうの蒲かば鮮万まん奴やつは、1215年ねんに金かねより自立じりつして「天王てんのう」を名乗なのり、東ひがし夏なつ国こく（大だい真しん国こく）を建国けんこくしていた[18]。東ひがし夏なつは、モンゴルに服属ふくぞくしたり自立じりつしたりを繰くり返かえしていたが、この国くにもまた、1233年ねん、オゴデイの子このグユクによって滅ほろぼされた[17][18]。

女おんな真しん族ぞくは、金きむがモンゴル帝国ていこくに滅ほろぼされてからのちは、モンゴル帝国ていこく、大元おおもと、大明だいめいの支配しはい下かに置おかれた[17][19]。その間あいだ、金かねの時代じだいに創始そうしした女おんな真ま文字もじもしだいに失うしなわれ、金きむ建国けんこく以前いぜんの部族ぶぞく集団しゅうだんに後退こうたいした[19]。当時とうじの女おんな真しん族ぞくの家族かぞくは、主人しゅじんと奴婢ぬひに完全かんぜんに二分にぶんされており、主人しゅじんは狩猟しゅりょうや採集さいしゅう、交易こうえき、戦争せんそうなどの外そと仕事しごと、奴婢ぬひは農耕のうこうやブタの飼養しようなど食糧しょくりょう生産せいさんを担当たんとうするという分業ぶんぎょう体制たいせいが確立かくりつしていた[20]。その役割やくわりは固定こていし、世襲せしゅうされていったが、代々だいだい起居ききょや食事しょくじをともにし、双方そうほうの物産ぶっさん・物資ぶっしは分わけ隔へだてなく均等きんとうに分配ぶんぱいされたから、両者りょうしゃの結むすびつきはきわめて緊密きんみつであった[20]。東北とうほく部ぶに残留ざんりゅうした女おんな真しん（女おんな直じき）は、元もと代だいには遼りょう陽ひ等とう処しょ行ゆき中書ちゅうしょ省しょうの管轄かんかつ下かに入はいったが、その統制とうせいはゆるやかなもので、ほぼ完全かんぜんな自治じちがゆるされていた[21]。代だいからにかけて人ひとは、半島はんとう族ぞくの下したにあった[8][17][注釈ちゅうしゃく 8]。

女おんな真しん族ぞくから満まん洲しゅう族ぞくへ

編集へんしゅう
 
満まん洲しゅう文字もじ（右みぎ）と漢字かんじ（左ひだり）
紫むらさき禁城きんじょう（北京ぺきん）乾いぬい清きよし門もんの額がく

とりわけながら中国ちゅうごく本土ほんどに相対そうたい的てきに近ちかい建けん州しゅう女おんな直じきからスクスフ部ぶの有力ゆうりょくな氏族しぞくだった英傑えいけつで拡大かくだいした[17]。ヌルハチの支配しはいする領域りょういきは、一方いっぽうでは「マンジュ国こく」（ᠮᠠᠨᠵᡠ
ᡤᡠᡵᡠᠨ, manju gurun, 満まん洲しゅう国こく）と称しょうされるようになったが、マンジュ国こくがさらに海うみ西にし女おんな真しん四よん部ぶ（マンジュ政権せいけんからは「フルン四よん部ぶ」）、野人やじん女おんな真しん四よん部ぶ（同おなじく「東海とうかい四よん部ぶ」）を統合とうごうしていく過程かていで、「マンジュ」が広ひろく女おんな真しん全体ぜんたいの総称そうしょうとして用もちいられるようになった[8]。なお、建けん州しゅう・海うみ西にし・野人やじんの各かく女おんな真しんには、それぞれ内部ないぶ的てきに何なんらかの結合けつごう関係かんけいがあったと考かんがえられがちだが、実際じっさいはそうではなかった[8]。建けん州しゅう女おんな真しんのなかの五ご部ぶもまた、それぞれ別個べっこに建たてられた5つの国くにのような様相ようそうを呈ていしており、それを越こえてのまとまりはなかった[8]。「マンジュ国こく」は、その意味いみで複ふく合あい部族ぶぞく国家こっかであった[8]。

金かねの滅亡めつぼう後ご、女おんな真ま文字もじは失うしなわれ、女おんな真しん族ぞくはモンゴル文ぶんや漢文かんぶんに翻訳ほんやくして文書ぶんしょをつくるようになっていたが、「マンジュ国こく」の勢威せいいが拡大かくだいし、民族みんぞく統合とうごうを進すすめるなかで民族みんぞく的てき自覚じかくは高たかまり、その長ちょうであるヌルハチは自分じぶんたちの文書ぶんしょを外国がいこく語ごに翻訳ほんやくして記述きじゅつしている状況じょうきょうを不自然ふしぜんだと感かんじるようになっていた[23]。ヌルハチは、学者がくしゃエルデニ・バクシ（中国語ちゅうごくご版ばん）に命めいじて文字もじをつくらせた[23]。1599年ねんのこととされている[23]。すなわち、広大こうだいな地域ちいきで話はなされるようになった「マンジュ国こく」の言語げんごを表記ひょうきするため、アラム文字もじをルーツにするモンゴル文字もじ（縦たて書がきの古こウイグル文字もじを応用おうようしたもの）を改良かいりょうさせて無む圏点けんてん満まん洲しゅう文字もじをつくり、当時とうじの女おんな真しん語ご（満まん洲しゅう語ご）を表記ひょうきすることとしたのである[23]。さらに、無む圏点けんてん文字もじでは区別くべつすることのできないha(ᡥᠠ)とga(ᡤᠠ)、de(ᡩ᠋ᡝ᠋)とte (ᡨᡝ᠋）などを識別しきべつするため、ヌルハチの子このホンタイジは、17世紀せいきにダハイ・バクシに有ゆう圏点けんてん満まん洲しゅう文字もじをつくらせた[23][注釈ちゅうしゃく 9]。満まん洲しゅう文字もじの資料しりょうは有ゆう圏点けんてん満まん洲しゅう文字もじで書かかれたものが圧倒的あっとうてきに多おおい。

ヌルハチは、中国ちゅうごくのほぼ全域ぜんいきを領有りょうゆうして、[17]これは、数すう百ひゃく年ねんの空白くうはくを隔へだてて、2度どにわたり歴史れきしに名なを残のこす統一とういつ国家こっかを樹立じゅりつして中国ちゅうごく内地ないちを支配しはいした、稀有けうな例れいであった[19]。後金あときんはヌルハチ没ぼつ後ごも発展はってんし、子息しそくホンタイジは内うちモンゴルを併合へいごうし、李り氏し朝鮮ちょうせんを属国ぞっこくとなして国号こくごうを「清きよし」に改あらため、また、民族みんぞく名めいも「女おんな真しん」を民族みんぞく名めいとして用もちいることを禁きんじ、"マンジュ"と改あらため、それに「満まん洲しゅう」の字じを当あてた[5][25][注釈ちゅうしゃく 10]。

清朝せいちょうの中国ちゅうごく支配しはい

編集へんしゅう
→「清きよし § 政治せいじ」も参照さんしょう

女おんな真しん族ぞく出身しゅっしんのホンタイジは女おんな真しんの概念がいねんを捨すて、女おんな真人しんじん、蒙こうむ古人こじん、遼東りゃおとん漢かん人じん等とうの北方ほっぽう諸しょ族ぞくを満まん洲しゅう（人ひと）と統合とうごうし、国号こくごうを「大だい清きよし」に改あらためた。ちなみに、民族みんぞくの名称めいしょうを表あらわす“満みつる”と“洲しゅう”、そして政権せいけんの名称めいしょうを表あらわす“清きよし”のいずれにも“氵（さんずい）”が付ついているのは、五ご行ぎょうの火ひ徳とくに結むすび付つく“明あきら”を“以水克かつ火ひ”するという陰陽いんよう五ご行ぎょう思想しそうに基もとづいているとされる[29][注釈ちゅうしゃく 12]。ホンタイジは、1636年ねん、清きよしの国号こくごうを称しょうしたとき、満みつる、漢かん、モンゴルの三さん勢力せいりょくに推戴すいたいされ、多た民族みんぞく国家こっかの君主くんしゅとしてハーンであると同時どうじに皇帝こうていでもあるということを、内外ないがいに宣言せんげんした[31]。多た民族みんぞく王朝おうちょうとなった清きよしのもと、満まん洲しゅう人じんは、八はち旗はたと称しょうする8グループに編成へんせいされ、王朝おうちょうを支ささえる支配しはい層そうを構成こうせいする主要しゅよう民族みんぞくのひとつとなり、軍人ぐんじん・官僚かんりょうを輩出はいしゅつした。

 
雍和宮みや（北京ぺきん）昭あきら泰たい門もんに掲かかげられた扁額へんがく。左ひだりからモンゴル文ぶん、チベット文ぶん、漢文かんぶん、満まん洲しゅう文ぶんの四よん体たい合ごう璧となっている。

1644年ねん、清きよしは山海さんかい関せきを越こえて万里ばんりの長城ちょうじょう以南いなんに進出しんしゅつし、李り自じ成なりの乱らんで滅亡めつぼうした明あかりにかわって北京ぺきんに入城にゅうじょうした。明あかり滅亡めつぼう後ごは、明あかりの旧領きゅうりょうを征服せいふくし、八はち旗はたを北京ぺきんに集団しゅうだん移住いじゅうさせて漢人かんどの土地とちを満まん洲しゅう人じんが支配しはいする体制たいせいをき上ずきあげた[32]。なお、漂着ひょうちゃくにより朝鮮ちょうせんに抑留よくりゅうされていたヘンドリック・ハメルによれば、満まん洲しゅう人じん支配しはい下かの17世紀せいき初期しょきの朝鮮ちょうせんでは、朝鮮ちょうせん国王こくおうは国内こくないでは絶対ぜったい的てき権力けんりょくをもっているものの、後継こうけい者しゃを決きめる際さいは満まん洲しゅう人じんのハーンの同意どういを得えなければならず、また、満まん洲しゅう人じんの勅使ちょくしやウリャンカイ（野人やじん女おんな真しん）は、年としに3回かい朝鮮ちょうせんから貢物みつぎものを徴収ちょうしゅうし、朝鮮ちょうせん高官こうかんは満まん洲しゅう人じんに怯おびえきっていたという[33]。

歴代れきだいの清朝せいちょう皇帝こうていは、同時どうじに、満まん洲しゅうやモンゴルなど北方ほっぽう民族みんぞく社会しゃかいの長ちょうとしてのハーンでもあった[31][34]。その意味いみで清朝せいちょうは、非ひ漢かん族ぞくのハンが中国ちゅうごく皇帝こうていでもあるという「夷えびす」と「華はな」が同居どうきょする二に重じゅう性せいを有ゆうしていたが[31]、日本にっぽんの東洋とうよう史し学者がくしゃ石橋いしばし崇たかし雄ゆうは、さらにこれに「旗はた＝満みつる（東北とうほく部ぶでの満みつる・蒙こうむ・漢かん）」の体系たいけいを加くわえた「三重みえの帝国ていこく」であったとしている[34]。首都しゅと北京ぺきんは中国ちゅうごく内地ないちの華北かほくに、副ふく都盛つもり京きょう（現げん、瀋陽しんよう）は中国ちゅうごく東北とうほく部ぶに、行在所あんざいしょ「避暑ひしょ山荘さんそう」は熱ねつ河かわ（現げん、承うけたまわ徳とく）にそれぞれ位置いちしており、いずれも清朝せいちょうのハン（大だい清きよし皇帝こうてい）が政治せいじの実務じつむを執とり行おこなった場所ばしょという点てんでは共通きょうつうしているが、実際じっさいはこの3か所しょの性格せいかくはまったく異質いしつであった[34]。清朝せいちょうの皇帝こうていは、北京ぺきんにいるときは中華ちゅうか世界せかいの天子てんしとして君臨くんりんしていたが、長城ちょうじょう外がいに位置いちする熱ねつ河かわの離宮りきゅう（「避暑ひしょ山荘さんそう」）では、内陸ないりくアジア世界せかいにおけるモンゴル族ぞくの首長しゅちょう、ボグド=セチェン=ハンとして行動こうどうし、熱ねつ河かわは、モンゴル族ぞくやチベット族ぞくのみならず、ウイグルの王公おうこう、テュルク系けい民族みんぞくの首長しゅちょう（ベグ）、朝鮮ちょうせん（李り朝ちょう）および大南おおみなみ（阮朝）・タイ王国おうこく（アユタヤ王朝おうちょう、トンブリー王朝おうちょう、チャクリー王朝おうちょう）・ビルマ（コンバウン王朝おうちょう）といった東南とうなんアジアにおける朝貢ちょうこう国こくの使節しせつ、さらにイギリスの使節しせつまでも朝あさ覲する非ひ漢かん族ぞく世界せかい「藩はん」の中心ちゅうしんであった[34][注釈ちゅうしゃく 13]。一方いっぽう、瀋陽しんようの奉天ほうてん行宮あんぐう（瀋陽しんよう故こ宮みや）東ひがし郭くるわには右翼うよく王おうおよび左翼さよく王おうの執務しつむ室しつと八はち旗はたそれぞれの建造けんぞう物ぶつをともなう、旗はた人じんの部族ぶぞく長ちょう会議かいぎを反映はんえいした十王じゅうおう亭ちんがある[34][注釈ちゅうしゃく 14]。

清朝せいちょう期きの建築けんちく物ぶつは、複数ふくすう言語げんごで表記ひょうきされる「合ごう璧形式けいしき」の額がくが掲かかげられることを一大いちだい特徴とくちょうとしているが、ここでは満みつる・漢かん合あい璧であるだけでなく、満みつる・漢かん・蒙こうむの合ごう璧、それにチベットを加くわえた四よん体たい合ごう璧、さらにウイグルを加くわえた五体ごたい完璧かんぺきもある[34]。清朝せいちょうの記録きろくはまた、『満まん洲しゅう実録じつろく（中国語ちゅうごくご版ばん）』をはじめとする実録じつろく類るいが原則げんそくとして満まん文ぶん本ほん・漢文かんぶん本ほん・蒙こうむ古文こぶん本ほんの三さん種類しゅるいによって編纂へんさんされており、満みつる・漢かん・蒙こうむの各かく語かたりを担当たんとうする翻訳ほんやく官かんがおり、そのための科挙かきょもあった[34]。これにチベットやウイグルなどの諸語しょごも含ふくめた官かん撰せん・私撰しせんの辞書じしょが多おおく作つくられたのも清朝せいちょう文化ぶんかの特徴とくちょうとなっている[34]。大だい清きよし帝国ていこくは、満みつる・漢かん・蒙こうむの三重みえ構造こうぞうを基本きほんとしており、瀋陽しんよう・北京ぺきん・熱ねつ河かわにあった3政務せいむ所しょはそれを象徴しょうちょうするものというとらえ方かたができるのである[34]。

中国ちゅうごくを扱あつかった映画えいがなどにみられる辮髪べんぱつや両りょう把わ頭あたま、チーパオ（チャイナドレス）は、本来ほんらいは満まん洲しゅう人じんの習俗しゅうぞくであったものが清しん代だいに漢人かんどの社会しゃかいに持もち込こまれたものである[36][注釈ちゅうしゃく 15]。明あかりとの戦争せんそうに際さいしては占領せんりょう地ちの男性だんせい住民じゅうみんに辮髪べんぱつを命めいじ、明あかりの滅亡めつぼうは満まん洲しゅう族ぞくの髪型かみがたと服装ふくそうを漢かん族ぞくにも強制きょうせいして漢人かんどの服飾ふくしょくを身みに付つけることを禁止きんしし、漢かん民族みんぞくの伝統でんとう文化ぶんかを抑圧よくあつする態度たいどをとった[36][注釈ちゅうしゃく 16]。これを「剃髪ていはつ易えき服ふく」（髪かみを剃すり、服ふくを替かえるの意い）という。一方いっぽう、科挙かきょの実施じっしや中央ちゅうおうに内閣ないかく、六ろく部ぶ、地方ちほうに総督そうとく、巡めぐ撫なでを設置せっちして軍事ぐんじ・政治せいじを管轄かんかつさせるなど、明朝みょうちょうの行政ぎょうせい制度せいどを存続そんぞくさせて強硬きょうこう政策せいさくと懐柔かいじゅう政策せいさくを併用へいようした[37]。また、指導しどう理念りねんとして朱子学しゅしがくをはじめとする儒家じゅかの思想しそうも取とり入いれていた[37]。

 
乾いぬい隆たかし帝みかど時代じだいの大臣だいじんであるマチャン

盛期せいきの清きよし王朝おうちょうと満まん洲しゅう人じん

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→「清しん露ろ国境こっきょう紛争ふんそう」も参照さんしょう
 
史上しじょう最大さいだい版図はんとをきずいた乾いぬい隆たかし帝みかどの肖像しょうぞう（ジュゼッペ・カスティリオーネ画が、1736年ねん）
 
乾いぬい隆たかし帝みかどに仕つかえた満まん洲しゅう族ぞく衛兵えいへいフルチャ・バトゥル占うらない音おん保ほ（ジャンインボー）　紫むらさき禁城きんじょうの紫むらさき光ひかり閣かくに掲かかげられていた武たけ功臣こうしんの肖像しょうぞう画が（作者さくしゃ不明ふめい、1760年ねん）。満まん洲しゅう語ごと漢文かんぶんで彼かれに対たいする賛さんが書かかれている。彼かれには名誉めいよ称号しょうごうであるバトゥルが与あたえられている。

17世紀せいき、コサック（カザク）によるシベリアへの東進とうしんが著いちじるしいロシア・ツァーリ国こくと清きよしとが国境こっきょうをめぐって対立たいりつした（清しん露ろ国境こっきょう紛争ふんそう）[38]。1650年代ねんだい初頭しょとう、エロフェイ・ハバロフ率ひきいるコサックの一派いっぱはアムール川がわに臨のぞむ清きよし側がわの拠点きょてんヤクサ（雅まさ克かつ薩）を奪うばい、同地どうちをアルバジンと改あらためて東方とうほう進出しんしゅつへの拠点きょてんとした[38]。ロシア人じんはアムール川がわを下おりながら先住民せんじゅうみんからヤサク（毛皮けがわ税ぜい）を徴収ちょうしゅうした[38]。1652年ねん、現在げんざいのハバロフスク周辺しゅうへんとみられるアチャンスクで清しん露ろの戦闘せんとうが起おこった。1658年ねんには朝鮮ちょうせん国こく軍ぐんも動員どういんした清国きよくに側がわが勝利しょうりし、アムール川がわ流域りゅういきからロシア人じん勢力せいりょくを駆逐くちくしたが、1665年ねん、シベリアに追放ついほうされていたポーランド貴族きぞくのニキフォール・チェルノゴフスキー（英語えいご版ばん）がイリムスク（英語えいご版ばん）のヴォイヴォダ（軍ぐん司令しれい官かん）を殺害さつがいして逃走とうそう、ヤクサ国こく（英語えいご版ばん）を建国けんこくして先住民せんじゅうみんから毛皮けがわ税ぜいを徴収ちょうしゅうした。清しん露ろ国境こっきょう紛争ふんそうは再燃さいねんし、1683年ねん、アルバジン戦争せんそうが勃発ぼっぱつ、戦況せんきょうは清しん側がわ優勢ゆうせいで推移すいいし、1689年ねん、清しん露ろ両国りょうこくはネルチンスク条約じょうやくを結むすんで講和こうわした[38]。その結果けっか、外そと満まん洲しゅうを含ふくめた満まん洲しゅう全体ぜんたいが清きよしの領土りょうどと確定かくていした[39][注釈ちゅうしゃく 17]。なお、この時ときのロシア人じん捕虜ほりょは「ニル」に編成へんせいされ鑲黄旗はた満まん洲しゅうに配属はいぞくされた[注釈ちゅうしゃく 18]。

清きよしの歴代れきだいの皇帝こうていは、漢人かんどが圧倒的あっとうてき多数たすうを占しめる中国ちゅうごくを支配しはいするにあたっても、満まん洲しゅう語ごをはじめとする独自どくじの民族みんぞく文化ぶんかの維持いじ・発展はってんに努つとめていた。しかし、次第しだいに満まん洲しゅう語ごは廃すたれ、満まん洲しゅう人じんの間あいだでも漢語かんごが話はなされるようになり、習俗しゅうぞくもしだいに漢かん化かしていった。清しん代だい中期ちゅうきの北京ぺきんの満まん洲しゅう人じんによって編あまれた「子弟してい書しょ」という俗曲ぞっきょく集しゅうには、漢語かんごと満まん洲しゅう語ごを交まぜてできている曲きょくがあり、当時とうじの満まん洲しゅう人じんの言語げんご状況じょうきょうの一端いったんがかいまみえる[41]。

清朝せいちょうによって優遇ゆうぐうされた満まん洲しゅう族ぞくは清朝せいちょう発展はってんにともない中国ちゅうごく本土ほんどに移住いじゅうする者ものが増加ぞうかした一方いっぽう、満まん洲しゅう人じんの故こ地ちである満まん洲しゅうでは人口じんこうが減へり、荒廃こうはいしたため、1653年ねんから1668年ねんまで遼東りゃおとん招民開墾かいこん令れいを出だして漢人かんどの移住いじゅうを勧すすめた[17]。しかし、18世紀せいきに入はいると東北とうほく部ぶ（満まん洲しゅう）に自発じはつ的てきに移住いじゅうする漢かん人じんの数かずが急増きゅうぞうしたため、1740年ねんには移住いじゅう禁止きんし令れいを出だして満まん洲しゅう人じんの生活せいかつを保護ほごしようとした[17]。

1735年ねんから1795年ねんまで治世ちせい60年ねんにおよぶ第だい6代だい乾いぬい隆たかし帝みかどは、45年ねんにわたる外征がいせいを「十全じゅうぜん武功ぶこう」と称しょうし、晩年ばんねん好このんで用もちいた玉たま璽にも「十全じゅうぜん老人ろうじん」の文字もじを彫ほらせた[42]。1750年代ねんだいの後半こうはんには、清きよしは乾いぬい隆たかし帝みかどの外征がいせいにより中国ちゅうごく東北とうほく部ぶ、中国ちゅうごく内地ないち、モンゴル高原こうげん、東ひがしトルキスタンを含ふくむテンシャン山脈さんみゃくの南北なんぼく両側りょうがわ、チベットより構成こうせいされる最大さいだい版図はんとを築きずいた[43]。1759年ねんにはテンシャンの南北なんぼく両側りょうがわ地域ちいきを「新あたらし彊つよし」と命名めいめいした[43]。現代げんだいの中国ちゅうごくの骨格こっかくは、乾いぬい隆たかし帝みかどによってかたちづくられたということができる[42]。

列強れっきょうの進出しんしゅつと満まん洲しゅう族ぞく

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→「滅ほろび満まん興きょう漢かん」および「満まん洲しゅう国こく」も参照さんしょう
 
清朝せいちょう末期まっきの満まん洲しゅう族ぞくの武人ぶじんたち
 
満まん洲しゅう国こく（1932-1945）の地図ちず

1840年ねん以降いこう、清せいがアヘン戦争せんそうやアロー戦争せんそうに敗北はいぼくし、大だい規模きぼな農民のうみん反乱はんらんである太平たいへい天国てんごくの乱らんが起おこって弱体じゃくたい化かすると、ロシアは清きよしに対たいして武力ぶりょくによる威圧いあつを強つよめ、1858年ねんにはアイグン条約じょうやくを結むすんで、清しん領りょうとされてきた外そと満まん洲しゅうのうちに割譲かつじょうし、両国りょうこくの共同きょうどう管理かんりすることとなった。さらに2年ねん後ごの1860年ねんには北京ぺきん条約じょうやくによって、この地ちも正式せいしきにロシア領りょうとなった[44][注釈ちゅうしゃく 19]。

一方いっぽう、皇帝こうていの故郷こきょうの満まん洲しゅうは1860年ねんまでは保護ほごされ、漢人かんどの移住いじゅうはある程度ていど制限せいげんされていたが、特とく普ひろし欽らの献策けんさくを容いれて開放かいほう策さくに転てんじ、漢人かんど農民のうみんの移住いじゅうが急増きゅうぞうした。中国ちゅうごく史しではこれを「闖関東かんとう」と呼よんでいる[注釈ちゅうしゃく 20]。漢人かんど人口じんこうはさらに急増きゅうぞうして満まん洲しゅう人じん人口じんこうを上回うわまわり、その生活せいかつ域いきは蚕食さんしょくされた。また、イギリス領事館りょうじかんが営口に置おかれるなど外国がいこく人じん勢力せいりょくが満まん洲しゅうの南方なんぽうからも入はいり込こんで、満まん洲しゅう人じんの故郷こきょうは大おおきな変貌へんぼうを遂とげた[17]。アヘン戦争せんそうの敗北はいぼく後ご、清国きよくには海うみ禁きん政策せいさくを放棄ほうきして欧米おうべい列強れっきょうに門戸もんこを開ひらいたが、日にち清しん戦争せんそう（1894-1895）や北きた清きよし事変じへん（1900）の敗北はいぼくなどによって深刻しんこくな半はん植民しょくみん地ち状態じょうたいに陥おちいった。1911年ねんの辛からし亥い革命かくめいの際さいには「滅ほろび満まん興きょう漢かん」がスローガンとして掲かかげられた[注釈ちゅうしゃく 21]。

1932年ねんには日本にっぽんの手てによって、清きよしの最後さいごの皇帝こうていだった宣せん統すべ帝みかど溥儀ふぎを執政しっせい（のちに皇帝こうてい）として満まん洲しゅう国こくが建たてられた[17][45][46][注釈ちゅうしゃく 22]。満まん洲しゅう国こくは日ひ・満みつる・蒙こうむ・漢かん・朝あさの五ご民族みんぞくによる「五ご族ぞく協和きょうわ」「王道おうどう楽土らくど」を理念りねんとしており[45]、国名こくめいに「満まん洲しゅう」を含ふくむものの、満まん洲しゅう人じんがこの国くにを自分じぶんたちの民族みんぞく国家こっかとして意識いしきしていたわけではない。しかし、建国けんこく後ごの満まん洲しゅう族ぞくには帝政ていせい期成きせい運動うんどうを起おこすなど、この国くにに民族みんぞくの復権ふっけんを期待きたいする傾向けいこうも一部いちぶではみられた。満まん洲しゅう国こくの建国けんこく宣言せんげんは、溥儀ふぎを担かついだ旧きゅう清朝せいちょう帝政ていせい派はの人ひとびとの主導しゅどうによってなされ、それを関東軍かんとうぐんが承認しょうにんしたものだが、そこには「礼れい教きょう（儒教じゅきょうとほぼ同おなじだが、道徳どうとく秩序ちつじょや祭礼さいれい面めんを前面ぜんめんに立たてる）」を国教こっきょうとすることが謳うたわれていた[47]。1934年ねんの皇帝こうてい即位そくい式しきにおいて溥儀ふぎは、満まん洲しゅう族ぞくの民族みんぞく衣装いしょうである竜りゅう袍ほうの着用ちゃくようを、関東軍かんとうぐんは「五ご族ぞく協和きょうわ」の見地けんちからこれを許ゆるされず、満まん洲しゅう国軍こくぐん大だい総帥そうすい服ふくを着用ちゃくようするよう求もとめられた[48]。溥儀ふぎはこれに従したがったが、それに先立さきだって祖そ霊れいに報告ほうこくの開催かいさいを主張しゅちょうし、関東軍かんとうぐんはその開催かいさいと着用ちゃくようを認みとめた[48]。なお、満まん洲しゅう国こくにおける筆頭ひっとう公用こうよう語ごは中国ちゅうごく語ご（漢語かんご）であり、第だい二に公用こうよう語ごは日本語にほんごであった[49]。ただし、筆頭ひっとう公用こうよう語ごは中国語ちゅうごくごとも漢語かんご（シナ語ご）とも称しょうされず「満まん洲しゅう語ご」もしくは「満まん語ご」と称しょうされ[注釈ちゅうしゃく 23]、満まん洲しゅう国こくの住人じゅうにんは満まん族ぞく・漢かん族ぞくとわず「満まん人ひと」と称しょうされた[49]。

現代げんだいの満まん族ぞく

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→「民族みんぞく識別しきべつ工作こうさく」も参照さんしょう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後のちに成立せいりつした中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくは、愛あい新しん覚さとし羅ら溥儀ふぎを「思想しそう改造かいぞう」したのち満まん洲しゅう族ぞく代表だいひょうとして中国ちゅうごく人民じんみん政治せいじ協商きょうしょう会議かいぎ全国ぜんこく委員いいんに任命にんめいし[48]、「民族みんぞく識別しきべつ工作こうさく」を行おこなって国内こくないの少数しょうすう民族みんぞくを一定いっていの権利けんりを有ゆうする民族みんぞくとして公認こうにんしていった。清しん代だいの旗はた人じんたちは、主おもにマンジュたちにより構成こうせいされた満まん洲しゅう八はち旗はたのほか、蒙こうむ古こ八はち旗はた・漢かん軍ぐん八はち旗はたなど3つの集団しゅうだんから構成こうせいされていたが、この「民族みんぞく識別しきべつ工作こうさく」では、蒙こうむ古こ八はち旗はたや漢かん軍ぐん八はち旗はたの末裔まつえいたちを「蒙こうむ古こ族ぞく」や「漢かん族ぞく」に区分くぶんするのではなく、「旗はた人じん」全体ぜんたいをまとめて「満まん族ぞく」と区分くぶんした[注釈ちゅうしゃく 24]。

満まん洲しゅう八はち旗はたに属ぞくしていた錫すず伯はく（シベ）族ぞく、達いたる斡爾（ダウール）族ぞくなどについては、それぞれ56の民族みんぞくの一員いちいんである独自どくじの民族みんぞくとして識別しきべつされている。

なお、満まん洲しゅう族ぞくは、清しん代だいに支配しはい者しゃ階級かいきゅうとして長城ちょうじょう以南いなんに移住いじゅうした経緯けいい上じょうから都市とし住民じゅうみんが多おおいため、漢かん民族みんぞくに比くらべて教育きょういく水準すいじゅんが高たかい。1990年ねんの人口じんこう調査ちょうさ資料しりょうによれば満まん洲しゅう族ぞく人口じんこう1万まん人にん当あたりの大学だいがく進学しんがく者しゃ数すうは1,652.2人ふたりで、全国ぜんこく平均へいきん水準すいじゅん139.0人にん、漢かん族ぞく平均へいきん水準すいじゅん143.1人ひとりに比くらべて遥はるかに高たかかった。また、15歳さい以上いじょうで非ひ識字しきじ・半はん非ひ識字しきじが占しめる比率ひりつは、満まん族ぞくは1.41パーセントで、全国ぜんこく22.21パーセント、漢かん族ぞく21.53パーセントよりも遥はるかに低ひくく、中国ちゅうごく国内こくないの各かく民族みんぞくの中なかで非ひ識字しきじ率りつ（半はん非ひ識字しきじ率りつを含ふくむ）が最もっとも低ひくい[51]。

生業せいぎょうと文化ぶんか・習俗しゅうぞく

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伝統でんとう的てき生業せいぎょう

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さて依然いぜん中国ちゅうごくにいたるまではいうにとってが主おもな生業せいぎょう。農耕のうこうはムギ、アワ、ヒエ、キビなど穀類こくるいを中心ちゅうしんとする天水てんすい農業のうぎょうであった[20]。狩猟しゅりょうはテン、キツネ、ミンク、リスなど毛皮けがわ目的もくてきであり、中華ちゅうか料理りょうりの食材しょくざいとなるキクラゲ、キノコ類るい、松まつの実み、薬用やくようとして知しられる朝鮮人参ちょうせんにんじん（オタネニンジン）の採集さいしゅうなどもおこなわれた[19][20][52]。清朝せいちょうの軍事ぐんじ組織そしきとして知しられる八はち旗はたも、その編成へんせい方法ほうほうは元来がんらい、満まん洲しゅう族ぞくの狩猟しゅりょう生活せいかつからあみだされた巻狩まきがりの制せいを応用おうようしたものだったといわれる[7][24]。

明代あきよ後期こうきの遼東りゃおとん地方ちほうで当時とうじ高額こうがくで取引とりひきされた二に大だい商品しょうひんといえば、クロテンの毛皮けがわと山岳さんがく地帯ちたいに自生じせいする薬用やくよう人参にんじんであった[52][注釈ちゅうしゃく 25]。こうした産物さんぶつは現地げんちで消費しょうひされず、奥地おくちからリレー式しきに遼りょう陽ひにもたらされ、さらに北京ぺきん方面ほうめんへと送おくられて、穀物こくもつ、織物おりもの、金属きんぞく製品せいひんといった中国ちゅうごく内地ないちの商品しょうひんと交換こうかんされる[20]。ヌルハチはこうした特産とくさん品ひんのルートを掌握しょうあくして交易こうえきの利益りえきを得えていた氏族しぞく長ちょうのひとりであった[52]。

ヌルハチの故こ地ちに関かんして言いえば、その地ちは山やまがちで大小だいしょうの河川かせんが縦横じゅうおうに流ながれ、斜面しゃめんや点在てんざいする平地ひらちではコーリャンなどが栽培さいばいされていたが、農地のうちとしては必かならずしも恵めぐまれていなかった[53]。したがって、西方せいほうに隣接りんせつする肥沃ひよくで広大こうだいな遼東りゃおとん平野へいやの農地のうちは、彼かれにすれば垂涎すいえんの的てきであった[53]。ヌルハチは遼東りゃおとんに進出しんしゅつするや女おんな真人しんじん（満まん洲しゅう人じん）をこの地ちに続々ぞくぞくと移住いじゅうさせ、農耕のうこう国家こっかとして発展はってんする基礎きそを固かためた[53]。

またブタ養やしなえがなされており、産地さんちとしても有名ゆうめいであった[注釈ちゅうしゃく 26]。ただし、こうした生業せいぎょうのみで十分じゅうぶんな自給自足じきゅうじそくができるというほどの経済けいざい的てき基盤きばんを有ゆうしていたわけではなかった[19][注釈ちゅうしゃく 27]。なお、吉林きつりん省しょう吉林きつりん市しの鷹たか屯たむろ[注釈ちゅうしゃく 28]は、鷹狩たかがりに従事じゅうじする八はち旗はたの兵士へいしが代々だいだい居住きょじゅうし、鷹匠たかじょうを数多かずおおく輩出はいしゅつした地ちであり、古ふるい狩猟しゅりょう文化ぶんかを今日きょうに伝つたえている[54]。

習俗しゅうぞくと生活せいかつ文化ぶんか

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→「辮髪べんぱつ」も参照さんしょう
 
辮髪べんぱつにカットする巡回じゅんかい理髪りはつ者しゃ（19世紀せいき、トーマス・アロム（英語えいご版ばん）画が）

漢かん民族みんぞくに見みられる纏足てんそくの習慣しゅうかんは満まん洲しゅう族ぞく女性じょせいにはなかった。女性じょせいの服飾ふくしょくは、上述じょうじゅつしたチーパオまたはベストを着用ちゃくようすることが多おおく[54]、男性だんせいは伝統でんとう的てきに筒袖つつそでのチョッキとズボンという服飾ふくしょくを好このんだ[55]。

対たいして、満まん洲しゅう族ぞく男性だんせいのヘアスタイルであった[56]。1644年ねんの北京ぺきん入城にゅうじょう直後ちょくご、清きよしの第だい3代だい皇帝こうていフリン（順治じゅんじ帝みかど）の摂政せっしょうドルゴンは、清きよしに服属ふくぞくするか逆さからうかを区別くべつするため、漢かん族ぞくに対たいしても「薙髪ちはつ令れい」を発令はつれいした[56][57]。この際さいは、中華ちゅうか思想しそうの根強ねづよい抵抗ていこうのため強制きょうせいできなかった[57][注釈ちゅうしゃく 29]。しかし、1645年ねん、「薙髪ちはつ令れい」を再さい発令はつれいし、辮髪べんぱつを強制きょうせいした[56][58]。このとき、辮髪べんぱつを拒否きょひする者ものには死刑しけいを以もって臨のぞんだ[56][57]。儒教じゅきょうの伝統でんとう的てきな考かんがえでは、毛髪もうはつを含ふくむ身体しんたいを傷付きずつけることは「不孝ふこう」とされ、タブーであったため、抵抗ていこうする者ものも多おおかったが、清朝せいちょうは辮髪べんぱつを行おこなった者ものに対たいしては「髪かみを切きって我がに従したがうものには、すべてもとどおり安堵あんどする」として従来じゅうらいの生活せいかつや慣習かんしゅうが行おこなえることを保証ほしょうした[57]。清朝せいちょうは、漢かん族ぞくが辮髪べんぱつを死しぬほど嫌きらい抜ぬいていることを承知しょうちしたうえで、あえて「薙髪ちはつ令れい」を再さい発令はつれいしたのであり、ある意味いみ、清朝せいちょうの敵てき味方みかたの識別しきべつのためには、これ以上いじょう効果こうか的てきな策さくはなかった[57]。

やがて、19世紀せいきには辮髪べんぱつが完全かんぜんに普及ふきゅうし、僧侶そうりょと道士どうしと女性じょせいのほかはことごとく辮髪べんぱつするようになり[56]、中国ちゅうごくのものと見みなされるようになった。

氏族しぞく制せいと社会しゃかい文化ぶんか

編集へんしゅう
 
伝統でんとう衣装いしょうを着きた現代げんだいの満まん族ぞく男性だんせい（2012年ねん）

満まん洲しゅう族ぞく「哈喇（ᡥᠠᠯᠠ,）」または「ムクン（mukūn）」と呼よばれる父系ふけい氏族しぞくとした[59]。ロシアのセルゲイ・シロコゴロフ（英語えいご版ばん）はかつて、ハラが基本きほん的てきな血縁けつえん組織そしきであり、その後ご、血縁けつえん組織そしきの発展はってんにともないガルガン（garugan）、ムクンの2層そうが生しょうじたと論ろんじ、中国ちゅうごくの莫東寅とらはこれを継承けいしょうして、ハラ（部族ぶぞく）、ガルガン（胞族）、ムクン（氏族しぞく）の三さん層そう構造こうぞうを唱となえた[59]。しかし、シロコゴルフ・莫東寅とらの説せつは、今西いまにし春秋しゅんじゅうが指摘してきしているように何なんら史料しりょう的てき根拠こんきょを有ゆうしない[59]。これに対たいし、三田村みたむら泰やすし助すけは、詳細しょうさいな検討けんとうの結果けっか、ムクンをハラから派生はせいした地域ちいき関係かんけいを基もととする血族けつぞく集団しゅうだんとみなす見解けんかいを示しめした[59]。ムクンがハラより発生はっせいしたとする説せつは、現在げんざい、多おおくの専門せんもん家かの支持しじする定説ていせつとなっている[59]。ムクンは、金代かなだい女おんな真しん族ぞくの「謀はかりごと克かつ」を原義げんぎとしているとみられ、一義的いちぎてきには「族ぞく」、二義的にぎてきには「氏し」を表あらわしており、一方いっぽう、ハラには「姓せい」の字じがあてられる[59]。清しん代だいにあっては、ハラはもはや実体じったいをともなった血縁けつえん組織そしきとはいえず、ムクンだけがのこったが、野人やじん女おんな直ひたと呼よばれた人ひとびととその末裔まつえいにあってはハラ組織そしきが濃厚のうこうに残存ざんそんしたのだった[59]。

明あきら・清きよし両りょう王朝おうちょうの皇宮こうぐうとなった紫むらさき禁城きんじょうでは、明あかりが内廷ないてい（後宮こうきゅう）と外そと廷の間あいだに塀へいを設もうけ、その区別くべつが厳格げんかくであったのに対たいし、清朝せいちょうではその塀へいを撤去てっきょして両者りょうしゃの区別くべつは緩ゆるやかなものとなり、また、内廷ないていにおいても男子だんし禁制きんせいが明あかりほどには厳きびしくなかった[60]。このことは、漢かん族ぞくの家族かぞく制せいと満まん洲しゅう族ぞくの氏族しぞく制せいの相違そういが反映はんえいしているものととらえることができる[60][注釈ちゅうしゃく 30]。

満まん洲しゅう族ぞくの姓氏せいし

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1個いっこのハラは複数ふくすうのムクンを包含ほうがんするが、1個いっこのムクンはただ1つのハラに帰属きぞくしており、ハラ組織そしきは元来がんらい、地域ちいき的てき同一どういつ性せいを有ゆうしていた[59]。女おんな真しん族ぞく（満まん洲しゅう民族みんぞく）のハラの由来ゆらいは、次つぎの2種しゅに大別たいべつできる[59]。

  1. 地名ちめいや河川かせん名めいを姓せいとするもの … グワルギャ（瓜ふり爾しか佳よ（中国語ちゅうごくご版ばん））、トゥンギャ（佟佳）、ドンゴ（董ただし鄂）、マギャ（馬うま佳けい）など。
  2. 古来こらいのトーテムを姓せいとするもの … ニョフル（鈕ぼたん祜禄（中国語ちゅうごくご版ばん）、原義げんぎは「オオカミ」）、サクダ（薩克達たち、原義げんぎは「イノシシ」）、ニマチャ（尼あま馬ば察、原義げんぎは「魚さかな」）、ショムル（舒穆禄ろく）など[59]。

ハラは、当初とうしょは族ぞく外がい婚こんの単位たんいであると同時どうじに族ぞく内ないへの受うけ入いれ機能きのうを有ゆうし、血ち讐の義務ぎむをともない、また、精神せいしん生活せいかつの単位たんいでもあった[59]。それに対たいし、ムクンはハラの瓦解がかいを受うけて不断ふだんに分節ぶんせつ化かし、発展はってんしていったもので、その過程かていも示しめしていた[61]。たとえば、ギョロ（覚さとし羅ら）というハラは、『氏族しぞく通どおり譜ふ』によれば、イルゲンギョロ（伊い爾なんじ根ね覚さとし羅ら）、シュシュギョロ（舒舒覚さとし羅ら）、シリンギョロ（西林にしばやし覚さとし羅ら）、トゥンギャンギョロ（通つう顔がお覚さとし羅ら）、アヤンギョロ（阿おもね顔かお覚さとし羅ら）、フルンギョロ（呼よび倫りん覚さとし羅ら）、アハギョロ（阿おもね哈覚羅ら）、チャラギョロ（察喇覚さとし羅ら）という8つのムクンに分わかれ、さらにそれぞれが多数たすうの分ぶん枝えだを持もっていた[61]。ハラからムクンが生しょうじた理由りゆうのひとつは族ぞく外がい婚こん規制きせいの機能きのう緩和かんわであって、すでに明代あきよ女じょ真しん族ぞくにおいて婚姻こんいん禁忌きんきが破やぶられていたことにある[61]。すなわち、同どう一いちハラ内ないの異いムクンとの通つう婚こんを可かとしたのである[61]。太ふとし祖そヌルハチはアイシンギョロ出身しゅっしんであったが、その妻つまにはイルゲンギョロ氏し2名めい、シリンギョロ氏し1名めい、ギャムフギョロ（嘉よしみ穆きよし瑚覚羅ら）1名めい、計けい4人にんの異いムクンの妻女さいじょが含ふくまれていた[61]。

満まん洲しゅう民族みんぞくの姓氏せいしは本来ほんらい、アイシンギョロ（愛あい新しん覚さとし羅ら、ᠠᡳ᠌ᠰᡳ᠍ᠨ
ᡤᡳᠣᡵᠣ, aisin gioro)、イェヘナラ（葉は赫那拉ひしげ、ᠶᡝᡥᡝ
ᠨᠠᡵᠠ, yehe nara）、ヒタラ（喜き塔とう臘、ᡥᡳᡨ᠋ᠠᡵᠠ, hitara) 等とうにみられるように満まん洲しゅう語ごに基もとづいたものであった。しかし、現代げんだい満まん族ぞくの多おおくは、漢かん民族みんぞくの姓氏せいしになぞらえて主おもに一文字ひともじの「漢かん姓せい」を用もちいている。これは、清末きよすえ期きの辛からし亥い革命かくめいの風潮ふうちょう、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごの「漢奸かんかん」狩かり、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく成立せいりつ後ごの文化ぶんか大だい革命かくめいなど、中国ちゅうごく当局とうきょくの弾圧だんあつを避さけるための一いち方策ほうさくであったと考かんがえられる。しかしながら、その場合ばあいであっても、

というように、改姓かいせいの際さいにも一定いっていの原則げんそくに従したがっている。現代げんだい満まん族ぞくは、「氏族しぞく ― 哈喇（姓せい）漢かん訳やく表ひょう」と照てらし合あわせることによって自分じぶんの本来ほんらいの姓氏せいしを知しることができるようになっている。

満まん洲しゅう民族みんぞくはもともとモンゴル人じんの影響えいきょうを受うけて、漢かん民族みんぞくのように姓氏せいしと名なを同時どうじに呼よぶ習慣しゅうかんはなく、名前なまえのみを呼よぶか、名前なまえの前まえに爵位しゃくいや官職かんしょく名めいを付つけて呼よんでいた（例れい：睿親王おうドルゴン）。あえて姓氏せいしと名なを続つづけて呼よぶ場合ばあいは、例たとえば「グワルギャ姓せいのオボイ（満まん洲しゅう語ご: ᡤᡡᠸᠠᠯᡤᡳᠶᠠ
ᡥᠠᠯᠠ ᡳ
ᠣᠪᠣᡳ , gūwalgiya hala-i oboi） 」のような呼よび方かたをしていた。

婚姻こんいん

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伝統でんとう的てきな婚姻こんいんは、族ぞく外がい婚こんと満まん漢かん不ふ婚こんによって特徴とくちょうづけられる[62][63]。族ぞく外がい婚こん規制きせいは、同おなじ氏族しぞく同士どうしは結婚けっこんしないという原則げんそくであり、現代げんだいにおいても濃厚のうこうに確認かくにんでき、しかも、その規制きせいの強つよさは漢かん族ぞく以上いじょうである[62][63][注釈ちゅうしゃく 31]。上述じょうじゅつした「ハラ（旧きゅう氏族しぞく）」は当初とうしょ、族ぞく外がい婚こんの単位たんいであったが、その分節ぶんせつ化かによって生しょうじた「ムクン（新しん氏族しぞく）」が現代げんだいにおける族ぞく外がい婚こん単位たんいとなっている[59][61]。

満まん漢かん不ふ婚こんは、満まん族ぞくと漢かん族ぞくの婚姻こんいん禁止きんしの慣習かんしゅうであったが、現代げんだいにおいては守まもられていない[62][63]。かつて満まん洲しゅう族ぞくは全体ぜんたいが八はち旗はたの組織そしきに入はいる旗はた人じんであり、入にゅう旗はたしていない漢かん族ぞくとの通つう婚こんは許ゆるされていなかったが、入にゅう旗はたしている漢かん族ぞく（漢かん軍ぐん八はち旗はた）との結婚けっこんは可能かのうであった[62][63]。なお、彼かれらが女じょ真しん族ぞくと称しょうしていた時代じだいにあっては、子こが継母けいぼを娶めとったり、弟おとうとが嫂あによめを娶めとったりする収おさむ継つぎ婚こんも多おおかったが、ホンタイジの時代じだいに入はいると漢人かんど的てきな観念かんねんが浸透しんとうして旧きゅう俗ぞく矯正きょうせいが図はかられ、収おさむ継つぎ婚こんは禁止きんしされた[63]。

満まん洲しゅう族ぞくの婚姻こんいんの旧きゅう俗ぞくでは、子女しじょが成年せいねんに達たっすると双方そうほうの両親りょうしんまたは仲人なこうどの話はなし合あいを経へて、双方そうほうの「門戸もんこ帳ちょう」（本人ほんにんの生辰せいしん八はち字じ（生年月日せいねんがっぴ）と姓氏せいし三さん代だい（曾祖そうそ父母ちちはは・祖父母そふぼ・父母ちちははの姓名せいめい）が記しるされている）を交換こうかんし、これが適合てきごうすれば婚約こんやくできるなど、おびただしい数かずのしきたりと規制きせいがあった[63]。

葬送そうそうと殉死じゅんしの風習ふうしゅう

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太ふとし祖そヌルハチに殉死じゅんしした夫人ふじん、アバハイ（孝こう烈れつ武たけ皇后こうごう）

女おんな真しん族ぞくの旧きゅう俗ぞくでは、火葬かそうが行おこなわれていた[64]。ヌルハチもホンタイジも火葬かそうされ、3代だい順治じゅんじ帝みかどは火葬かそう制度せいどを詳細しょうさいに定さだめ、彼かれ自身じしんも火葬かそうされた[64]。順治じゅんじ年間ねんかん以降いこう、北京ぺきんの満まん洲しゅう族ぞくはしだいに土葬どそうを行おこなうようになったが、清朝せいちょうは漢かん化かを防止ぼうしする観点かんてんから、各地かくちに駐ちゅう防ぼうする旗はた人じんの行動こうどうに厳きびしい制限せいげんを課かし、死後しご、現地げんちに墳墓ふんぼを設もうけることを許ゆるさず、必かならず京きょう旗はたに帰き葬そうすることとした[64]。そのため、火葬かそうの風習ふうしゅうは各地かくちの駐ちゅう防ぼうにたずさわる旗はた人じんの間あいだで保たもたれた[64]。しかし、乾いぬい隆たかし年間ねんかんになると、各地かくちの戦役せんえきも収おさまり、火葬かそうを不孝ふこう・不ふ道みちとみなす漢かん族ぞくの儒家じゅか思想しそうの影響えいきょうも受うけていたので、乾いぬい隆たかし帝みかどは死後しごに現地げんちで土葬どそうすることを許可きょかし、帰き葬そうを一律いちりつに禁止きんしした[64]。

女おんな真しんの人ひとびとはまた、死者ししゃの葬送そうそうのために牛うし・馬うまを殺ころしてこれを死者ししゃに捧ささげ、その肉にくを食しょくすという旧きゅう俗ぞくをもっていた[64]。このような習俗しゅうぞくは康かん熙帝の頃ころまではつづいたが、やがて漢かん民族みんぞくの習俗しゅうぞくを取とり入いれ、紙かみ馬ばをもって祭礼さいれいをおこなうようになった[64]。

殉死じゅんしの風習ふうしゅうも広ひろく行おこなわれ、ヌルハチの妻つまの死去しきょの際さいには4人にんの奴婢ぬひが、ヌルハチ自身じしんの死去しきょの際さいにも正妃せいひアバハイと2人ふたりの側室そくしつが殉死じゅんしした[64]。ホンタイジは殉死じゅんしの強制きょうせいを禁止きんししたが、禁止きんしされたのは強制きょうせい行為こういのみであって殉死じゅんしそのものは否定ひていされなかった[64]。ホンタイジの死去しきょの際さいには近侍きんじ2名めいが殉死じゅんししている[64]。殉死じゅんしの旧きゅう俗ぞくが満まん洲しゅう族ぞくの社会しゃかいで連綿れんめんと続つづいてきたのは、奴婢ぬひの制度せいどと無関係むかんけいではないと考かんがえられる[64]。康かん熙帝が在位ざいい中ちゅうに殉死じゅんしの禁止きんしを諭さとす命令めいれいを発はっし、以降いこうは紙かみ人じんを焼やくことで死者ししゃの霊魂れいこんを祭まつることとなった[64]。

言語げんご・文字もじ

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→「満まん洲しゅう語ご」および「満まん洲しゅう文字もじ」も参照さんしょう
 
満州まんしゅう文字もじの朱印しゅいん
「白山はくさん黒水くろみず、源みなもと遠流おんる長ちょう」の満まん洲しゅう語ご "Šanyan alin, sahaliyan muke, sekiyen goro, eyen golmin" を満まん文ぶんで示しめしている。

なかの言語げんごも概おおむね他たの諸語しょごにおいて顕あらわに[14]。語彙ごいではとくに、モンゴル語ご、漢語かんごからの借用しゃくよう語ごも多おおい[65]。清朝せいちょうにあっては第だい一いち公用こうよう語ごの地位ちいにあった[66]。満まん洲しゅう語ごは、その話者わしゃが北京ぺきんはじめ中国ちゅうごく全土ぜんどに居住きょじゅうするようになり、言語げんご分布ぶんぷは拡大かくだいしたが、漢かん人じんに比較ひかくすると人口じんこうの絶対ぜったい数すうがきわめて少すくなかったので、満まん洲しゅう族ぞくの文化ぶんかは漢かん化かし、言語げんごも漢語かんごを話はなすようになり、満まん洲しゅう語ごはしだいに使つかわなくなっていった[67][68][69]。満まん洲しゅう語ご使用しようは、すでに清朝せいちょう中期ちゅうきの隆盛りゅうせい期きには衰微すいびの兆候ちょうこうを示しめしていたという[67]。現代げんだい、満まん洲しゅう語ごは中国ちゅうごく東北とうほく部ぶのごく一部いちぶでしか話はなされなくなっている[65][注釈ちゅうしゃく 32]。なお、乾いぬい隆年たかとし間あいだ中期ちゅうきにイリ地方ちほうへ移住いじゅうしたシベ族ぞくの末裔まつえいは今日きょうでも満まん洲しゅう語ごを話はなしている[65][68]。これをシベ語ごといい、シベ語ご（シベ文字もじ）の新聞しんぶんや書籍しょせきも発行はっこうされている[65]。

満まん洲しゅう文語ぶんごの資料しりょうには、『満まん文ぶん老ろう檔』をはじめとする記録きろく類るい[71]、満まん洲しゅう・モンゴル・漢かん・チベット・ウイグル5族ぞくの言語げんごを対照たいしょうさせた『御製ぎょせい五ご体たい清文せいぶん鑑あきら（中国語ちゅうごくご版ばん）』などの辞書じしょ類るい、『大蔵経だいぞうきょう』、漢文かんぶん古典こてんその他た大量たいりょうの翻訳ほんやく文献ぶんけんなどがある[68][注釈ちゅうしゃく 33]。また、文語ぶんご資料しりょうにはあたらないが17世紀せいきの日本にっぽん越前えちぜん国こくの船乗ふなのりが漂流ひょうりゅうした際さいの記録きろく、『韃靼だったん漂流ひょうりゅう記き（異国いこく物語ものがたり）』には当時とうじの満まん洲しゅう語ごが仮名かめい文字もじで収録しゅうろくされている[68]。満まん洲しゅう語ごについての情報じょうほうの大半たいはんはこの種たねの文書ぶんしょ記録きろくから得えられたものであり、この文語ぶんごの基盤きばんとなった南部なんぶ方言ほうげんの直接的ちょくせつてきな記録きろくは乏とぼしい。満まん洲しゅう語ごについて近代きんだい的てきな記録きろくが行おこなわれ始はじめた19世紀せいきには、満まん洲しゅう語ごはほとんど少数しょうすうの知識ちしき人じんや官吏かんりに依よって用もちいられる人工じんこう的てきに整ととのえられた形体けいたいとなっており、西洋せいよう人じんによる構造こうぞうや文法ぶんぽうについての記録きろくが高たかい一貫いっかん性せいを持もつ一方いっぽうで、発音はつおんについての記録きろくはしばしば混乱こんらんしている[72]。


満まん洲しゅう文字もじに先立さきだつ女おんな真ま文字もじについては、金石かねいし文あやの発見はっけんや辞書じしょに収録しゅうろくされたにおける[73]。完かん顔がお希まれ尹いん（中国語ちゅうごくご版ばん）や完かん顔がお葉は魯（耶魯）らによって1119年ねんに創成そうせいされた女おんな真ま大字だいじは表意ひょうい文字もじ、1138年ねんに金かねの第だい3代だい皇帝こうてい熙宗が制定せいていし、1145年ねんに公布こうふしたと記しるされる女おんな真ま小字こあざは表音ひょうおん文字もじであった[74]。大字だいじのみで表記ひょうき、小字こあざのみで表記ひょうき、という三さん様ようの表記ひょうき法ほうがあった[74]。女おんな真しん語ごは満まん洲しゅう語ごに近ちかい言語げんごだとみられる[68]。両者りょうしゃは姉妹しまい語ご関係かんけいにあったというよりは、むしろ方言ほうげん的てき関係かんけいにあって、女おんな真しん語ごは広義こうぎの満まん洲しゅう語ごのなかに没ぼっしていったものと考かんがえられる[73]。

満まん洲しゅう文字もじは、左ひだりから縦たて書がきで右みぎに改行かいぎょうする[66]。ホンタイジが、ギョルチャ氏しの満まん洲しゅう旗はた人じんに命めいじて改良かいりょうさせた[66][75][注釈ちゅうしゃく 34]。新疆しんきょうウイグル自治じち区くに在住ざいじゅうするシベ族ぞくは、満まん洲しゅう文字もじを改良かいりょうしたシベ文字もじを使用しようしている[66]。

宗教しゅうきょう

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水浴みずあびをする三さん仙女せんにょ（『満まん洲しゅう実録じつろく』）

自然しぜん崇拝すうはいにおいては、火ひ神しん・星ほし神しんおよび神山かみやま・神石じんせきを尊崇そんすうし、とりわけ星ほし神しんに対たいする信仰しんこうは最もっとも普遍ふへん的てきなものであった[76]。『吉林きつりん通どおり志こころざし』にも「祭祀さいし典礼てんれいは、満まん洲しゅうの最もっとも重おもんずるは、一いちに祭まつり星ぼし、二にに祭まつり祖そ」とある[76]。星ほし神しんとは、具体ぐたい的てきには北斗七星ほくとしちせいであり、満まん洲しゅう語ごでは「ᠨᠠᡩ᠋ᠠᠨ
ᡠᠰᡳᡥᠠ, nadan usiha, ナダン（七ななつ）ウシハ（星ほし）」と称しょうする[76]。記録きろくによれば、満まん洲しゅう族ぞくの祭まつり星ぼしは、多おおくは月つきが沈しずむ後のちに行おこなう背せ灯とう祭さいで、そこでは灯火ともしびがかき消けされ静寂せいじゃくのなかで執とり行おこなわれ、通常つうじょうは占うらない卜ぼくや祟たたり祓ばらい、病やまい祓ばらいなどの巫術ふじゅつと結むすびついた除じょ災わざわいの祭まつりである[76]。満まん洲しゅう族ぞくに近ちかい、同おなじツングース系けいのホジェン族ぞく[注釈ちゅうしゃく 35]もまた、七なな星ほしを除じょ災わざわいの神かみとみなし、「吉よし星ほし神しん」と呼称こしょうする[76]。満まん洲しゅう族ぞくの七なな星ほし神しんは、のちに祭礼さいれいが固定こてい的てきなものに整備せいびされていき、それにともない人格じんかく神化しんかしていった[76]。

 
瀋陽しんよう故こ宮みや（旧きゅう、奉天ほうてん行宮あんぐう）の神かみ杆（神かみ鳥とりの止とまり木き）

満まん洲しゅう族ぞくは鳥とり・鵲かささぎ（カササギ）・イヌを崇拝すうはいした[77]。鳥とり・鵲かささぎの崇拝すうはいは満まん洲しゅう族ぞくのシャーマニズム信仰しんこうの古層こそうをなしており、長ちょう白山はくさんで水浴みずあびをしていた天女てんにょ（三さん仙女せんにょの末すえ娘むすめ）フォクレン（仏ふつ庫こ倫りん）が神かみ鵲かささぎがくわえてきた朱しゅ果はてを食しょくして感かん精くわし、満まん洲しゅうの始祖しそのブクリヨンション（中国語ちゅうごくご版ばん）（布ぬの庫こ里さと雍順、愛あい新しん覚さとし羅ら氏し）を産うんだという伝説でんせつがのこる[77]。『満まん洲しゅう実録じつろく』でも鳥とりや鵲かささぎに関かんするいくつかの伝承でんしょうが記述きじゅつされており、同どう著ちょの満まん文ぶん本ほんでは満まん洲しゅう人じんの後裔こうえいはカササギを祖そとしたことを伝つたえている[77]。また、ヘトゥアラに抑留よくりゅうされていた朝鮮ちょうせん人じん李り民みん煥の著述ちょじゅつした『建けん州しゅう聞見録ろく』では、建けん州しゅう女おんな真しんがイヌを自分じぶんたちの祖先そせんと見みなしていて、イヌを殺ころしたり食たべたり、イヌ皮がわを使用しようすることを決けっして許ゆるさないという習俗しゅうぞくをもっていたことにふれている[77]。こうした習俗しゅうぞくは、清朝せいちょうを通つうじて変かわらなかった[77]。

満まん洲しゅう族ぞくは元来がんらい、自身じしんを地上ちじょうに降臨こうりんした天上てんじょう界かいに住すむ神かみ々の子孫しそんであると信しんじ、自身じしんの氏神うじがみを中心ちゅうしんとして団結だんけつした[7]。虎とら神かみ、人面じんめん豹ひょう身みの神かみ、大鳥おおとり神しん（人面じんめん怪かい鳥とりの神かみ）、突忽到いた瑪法（海獣かいじゅうの形象けいしょうから変化へんかした神かみ）、鹿しか神かみなどは、満まん洲しゅうの各かく氏族しぞくにおける保護ほご神しんや祖神そしんなどとして崇あがめられた[77]。彼かれらは森林地帯しんりんちたいでの狩猟しゅりょうや採集さいしゅうに際さいして、しばしば各種かくしゅの猛獣もうじゅうの襲撃しゅうげきに直面ちょくめんし、予期よきせぬ災禍さいかや不幸ふこうに見舞みまわれ、あるいは漁撈ぎょろうに際さいしても数々かずかずの危険きけんや事故じこに遭遇そうぐうし、自分じぶんたちの無力むりょくさを悟さとることも多おおかったと考かんがえられる[77]。そこで鳥獣ちょうじゅうを神格しんかく化かして祭祀さいしし、その勇気ゆうきや能力のうりょくを借かりて災厄さいやくを逃のがれようと願ねがったところから動物どうぶつ崇拝すうはいが始はじまったのだろうと推測すいそくされる[77]。ここにおいてシャーマンが憑依ひょういして、たとえば、虎とらの各種かくしゅの動作どうさを真似まねて病人びょうにんに災わざわいをなす妖魔ようまを威嚇いかくすることにより、病気びょうきが治癒ちゆされるものと信しんじられた[77]。鹿しか神しんは、ウジャラ（烏がらす扎拉）氏しが鹿しかの角かくを採取さいしゅする際さいに祭まつった神かみであったが、ここではシャーマンが帽子ぼうしの上うえに一対いっついの鹿しかの角かくを挿さし、鹿しか神しんに憑依ひょういするものとされた[77]。

女おんな真しん族ぞく（満まん洲しゅう族ぞく）は、仏教ぶっきょう、とりわけモンゴル族ぞくの影響えいきょうでチベット仏教ぶっきょうになじんでいき、漢かん民族みんぞくとの交流こうりゅうを通つうじて彼かれらの民間みんかん信仰しんこう、とくに道教どうきょうからの影響えいきょうも受うけていった[5][78]。1616年ねんの後金あときん建国けんこくの際さい、ヌルハチはヘトゥアラ城東じょうとうの山上さんじょうに仏教ぶっきょう寺院じいん、玉たま皇すめらぎ廟びょう、十王じゅうおう殿どのなどを建設けんせつして、これを「七なな大だい廟びょう」と称しょうした[78]。関せき帝みかど（関せき羽はね）、仏祖ぶっそ（釈迦しゃか）、観世音菩薩かんぜおんぼさつはしだいにシャーマニズムの神祇じんぎの列れつに加くわえられ、清朝せいちょう宮廷きゅうていや一般いっぱん満まん洲しゅう族ぞくから尊崇そんすうされるようになり、満まん洲しゅう古来こらいの神かみ々よりも篤あつい崇拝すうはいを受うけた[78]。

1626年ねん、ホンタイジが即位そくいした直後ちょくごの儀礼ぎれいでは、最後さいごに支配しはい領域りょういきにおける弓ゆみの達人たつじんらに弓ゆみを射ささせる「射い柳やなぎの儀式ぎしき」が執行しっこうされたが、これは金時きんとき代だいの女おんな真しんがシャーマニズムの拝はい天てんの祭儀さいぎに付属ふぞくして行いった儀式ぎしきを継承けいしょうしたものであった[79]。北京ぺきんの紫むらさき禁城きんじょう内廷ないていの坤ひつじさる寧やすし宮みや、盛もり京きょう（現在げんざいの瀋陽しんよう）の奉天ほうてん行宮あんぐうの清せい寧やすし宮みやは、ともに、中国ちゅうごく皇帝こうていを兼かねる満まん洲しゅう族ぞくのハーンが、シャーマンの祭祀さいしを行おこなった祭神さいじん殿どのとして独特どくとくの設計せっけいが施ほどこされており、その入いり口くちの南みなみには神かみ杆（しんかん）、すなわち神かみ鳥とりの止とまり木きが建たてられていた[79]。坤ひつじさる寧やすし宮みやでは元旦がんたん行くだり礼れいなどの特別とくべつな祭祀さいしのほか、常つね祭さいである朝あさ・夕ゆうの祭まつりが毎日まいにち行おこなわれ、ブタが生贄いけにえとして供そなえられた[79]。また、神かみ々の前まえで「薩満太ふとし々（サマンタイタイ）」と称しょうされる巫女ふじょが満まん洲しゅう語ごの神歌しんかを唱となえ、跳はね回まわったという[79]。シャーマニズムの伝統でんとうは、満まん洲しゅう族ぞくが中国ちゅうごく内地ないちの支配しはい的てき地位ちいに立たってからも温存おんぞんされたのであった。

神話しんわ・伝承でんしょう

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『満まん文ぶん老ろう檔』天命てんめい6年ねん（1621年ねん）条じょうや満まん文ぶん『内国ないこく史し院いん檔』天てん聡さと8年ねん（1634年ねん）条じょうには、当時とうじの女おんな真しん族ぞく（満まん洲しゅう族ぞく）が日食にっしょくや月食げっしょくという天文てんもん現象げんしょうを「天界てんかいの犬いぬが太陽たいよう・月つきを食たべること」であると考かんがえていたことを示唆しさする記述きじゅつが収載しゅうさいされており、こうした伝承でんしょうは他たのツングース系けいの諸しょ民族みんぞくや朝鮮ちょうせん民族みんぞく、テュルク系けい民族みんぞく、また、パレオアジア語ご系けいとみられるニヴフ（ギリヤーク）にもみられる[80]。

また、これに似にた説話せつわとして、イチェ・マンジュ（伊い徹てっ満まん洲しゅう ice manju/ 新しん満まん洲しゅう）人にんの伝承でんしょうとして、1.背後はいごに敵てき軍ぐんが迫せまり、2.行ゆく手てを大河たいがが遮さえぎり滅亡めつぼうの危機ききを迎むかえるが、3.大河たいがに魚さかなの浮うわき橋きょうができて難なんを逃のがれ、4.滅亡めつぼうを免まぬかれる（新天地しんてんちへ移住いじゅうする）という4つのモチーフをともなう説話せつわも伝つたわっている[80]。この4モチーフは、夫おっと余あまり・高句麗こうくりの開国かいこく説話せつわ（東ひがし明王みょうおう・朱蒙チュモン伝説でんせつ）にも共通きょうつうし、オロチョン族ぞくやナナイ族ぞくなどツングース系けい民族みんぞくの説話せつわにもみられる[80][注釈ちゅうしゃく 36]。

歌舞かぶと武術ぶじゅつ

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金きむ昆こん・程ほど志こころざし道どう・福ぶく隆たかし安やす「氷こおり嬉うれし図ず」（『清きよし代だい宮廷きゅうてい生活せいかつ』より
厳寒げんかん期きの北京ぺきんでスケートをしながら矢やを射いる技わざを披露ひろうする八はち旗はた軍人ぐんじん

満まん洲しゅう族ぞくは、歌舞かぶに長たけた民族みんぞくとして知しられており、そこには鮮あざやかな民族みんぞく的てき個性こせいと独特どくとくの品格ひんかくがみられる[81]。満まん洲しゅう族ぞくのなかで最もっともさかんに行おこなわれたのは、莽勢舞まい（莽式舞まい）と称しょうする歌舞かぶで、別名べつめいを「空そら斉ひとし」といった[81]。莽勢舞まいは、集団しゅうだんのなかの1人ひとりが歌うたい、他たの衆しゅうは「空そら斉ひとし」を以もってこれに和わし、正月しょうがつや祝祭日しゅくさいじつに男女だんじょが相対あいたいして舞まうというものであった[81]。この舞まいには「九折つづらおり十じゅう八はち式しき」と称しょうされる、漁撈ぎょろう・狩猟しゅりょう・騎射きしゃなどの生活せいかつを反映はんえいした9つの舞まいのかたち、身体しんたい部位ぶいを用もちいた18の所作しょさがあったと伝つたわっている[81]。清朝せいちょうの北京ぺきん入城にゅうじょう後ごは宮廷きゅうていに取とり入いれられて大だい規模きぼ化かし、慶けい隆りゅう舞まいへと発展はってんした[81]。慶けい隆りゅう舞まいは、揚あげ列れつ舞まい（武たけ舞まい）と喜き起おこり舞まい（文ぶん舞まい）の二に部ぶで構成こうせいされた[81]。

習武に関かんしては、満まん洲しゅう族ぞくは古来こらい騎馬きば・射しゃ猟りょうを得意とくいとし、清朝せいちょう建国けんこく後ごはこれを満まん洲しゅうの根本こんぽんとみなして狩猟しゅりょうや軍事ぐんじに活用かつようするのみならず、競技きょうぎ化かした[82]。ヌルハチは、その趣味しゅみが弓ゆみの試合しあいであり、すぐれた射手しゃしゅと技わざを競きそって負まけなかったという弓ゆみの名手めいしゅであったし、ホンタイジも飛翔ひしょうする一いち羽わの鳥とりをただの一矢いっしで射い落おとすほどの腕前うでまえであった[82]。競技きょうぎ種目しゅもくとしては歩ふ射しゃと騎射きしゃがあり、弓術きゅうじゅつは、近代きんだいに至いたるまで満まん洲しゅう民族みんぞくの伝統でんとうとして受うけ継つがれた[82]。

スケートも満まん洲しゅう族ぞくが得意とくいとするスポーツで、これまた初期しょきの生業せいぎょうや軍事ぐんじ活動かつどうと結むすびついていた[82]。冬季とうきにおける酷寒こっかんの東北とうほく部ぶでは河川かせんや湖沼こしょうが凍結とうけつして天然てんねんのスケートリンクとなった[82]。スケートはスポーツであると同時どうじに軍事ぐんじ訓練くんれんでもあり、乾いぬい隆たかし帝みかどはこれを「国くに俗ぞく」と称しょうした[82]。氷上ひかみで行おこなわれた競技きょうぎとしては他たに、王おうなどのリーダーが侍さむらい衛まもるを率ひきいて鞠きく（ボール）を蹴けりながら氷上ひかみを走はしり、次ついで諸しょ貴族きぞく・官員かんいんの妻女さいじょたちが氷上ひかみで競争きょうそうし、先さきに終点しゅうてんに着ついたものを勝かちとする「踢行頭あたま」などがあった[82]。

満まん洲しゅう人じんたちはまた、相撲すもう（角かく觝）をことのほか愛好あいこうし、それは満まん洲しゅう語ごで「布ぬの庫こ（プク）」と称しょうされた[82]。すでに入にゅう関前せきまえの宮廷きゅうていで弓ゆみ試合しあいや宴会えんかいの際さいに、相撲すもうの実演じつえんが催もよおされている[82]。ホンタイジの時代じだいにモンゴルとの関係かんけいが深ふかまると、朝貢ちょうこうに訪おとずれたモンゴル族ぞくの力士りきしたちはしばしば宮廷きゅうてい内ないで技わざを披露ひろうし、満まん洲しゅう族ぞくの力士りきしと勝負しょうぶした[82]。幼おさなくして帝位ていいに就つき、権臣けんしんオボイの専横せんおうに苦くるしんだ康かん熙帝は若年じゃくねんの際さい、相撲すもう好すきと称しょうして旗はた人じんより強壮きょうそうな少年しょうねんたちを選抜せんばつして密ひそかに親衛隊しんえいたいをつくり、日々ひびこれを鍛錬たんれんさせて、機きが熟じゅくしたときにオボイを逮捕たいほ、その腹心ふくしんたちを一網打尽いちもうだじんにして親政しんせいを開始かいししたという逸話いつわをもっている[35][82]。

満まん洲しゅう族ぞく出身しゅっしんの著名ちょめい人じん

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脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 2010年ねんの人口じんこう調査ちょうさでは満まん族ぞく人口じんこうは10,387,958人にんであった[5]。
  2. ^ 建けん州しゅう女おんな真しん、「女おんな直じき」は明あかり側がわの呼称こしょうである。
  3. ^ 太ふとし祖そヌルハチの事績じせきをまとめた『満まん洲しゅう実録じつろく』によれば地名ちめい「ヘトゥアラ」は「横岡よこおか」という意味いみである[10]。
  4. ^ ヘトゥアラで生うまれたヌルハチは、モンゴルのハルハ部ぶと友好ゆうこう関係かんけいを結むすぶことに成功せいこうし、1616年ねん、同地どうちで明朝みんちょうからの独立どくりつとアイシン（後金あときん）の建国けんこく、自身じしんの即位そくいを宣せんしたという[12]。
  5. ^ 靺鞨族ぞくの文化ぶんかについては、考古学こうこがく的てき研究けんきゅうによってその多おおくが解明かいめいされてきている[14]。
  6. ^ 女おんな真ま文字もじによる六ろく字じ真言しんごん（六ろく字じ大明だいめい呪のろい）である。
  7. ^ 遼りょう代だいの女おんな真しん族ぞくのなかでもさほど有力ゆうりょくとはいえない完かん顔がお部ぶが金かね王朝おうちょうを樹立じゅりつさせるにいたった原因げんいんは、砂金さきんを産さんする河川かせん流域りゅういきを支配しはい地ちに収おさめたことによると考かんがえられる[15]。
  8. ^ 現在げんざい、ロシア連邦れんぽうの沿海州えんかいしゅうに住すみ、狩猟しゅりょうを主おもな生業せいぎょうとしてきた少数しょうすう民族みんぞくウデヘは、このうちの野人やじん女おんな直じきの末裔まつえいと考かんがえられる[22]。
  9. ^ 「バクシ」とは、書記官しょきかんの意いであるとも[24]、学者がくしゃ・博士はかせの意いであるともいわれる。
  10. ^ 1634年ねん、後金あときん軍ぐんはモンゴルの一大いちだい拠点きょてんのフフホトを占領せんりょうし、ドルゴンらを派遣はけんしてリンダン・ハーンの息子むすこを捜索そうさくさせた[25]。1635年ねん、ドルゴンはモンゴル帝国ていこく最後さいごの君主くんしゅとなったエジェイ・ハーンを降伏ごうぶくさせ、彼かれをともなって都との瀋陽しんように帰還きかんした[26]。エジェイは、「制せい誥之宝たから」と刻きざまれた大元おおもと伝でん国こくの璽をたずさえ、ホンタイジにこれを献上けんじょうした[26]。元朝がんちょうの皇帝こうてい権けんを象徴しょうちょうする印璽いんじがホンタイジの手てに入はいったということは、彼かれが全ぜん中国ちゅうごくの支配しはい権けんを元もとから継承けいしょうしたことを意味いみしていた[26]。
  11. ^ これにより「満まん洲しゅう」の名なが定着ていちゃくするが、東方とうほう世界せかいを支配しはいするとされる仏ほとけである文殊もんじゅ菩薩ぼさつと満まん洲しゅうの語かたりを結むすびつける説明せつめいについては、当時とうじのチベット仏教ぶっきょうの指導しどう者しゃの発言はつげんを乾いぬい隆たかし帝みかどが利用りようしたところから生しょうじた俗説ぞくせつだという見解けんかいもある[9]。満州まんしゅう語ごの史書ししょ『満まん文ぶん原げん檔』はヌルハチによる国家こっか建設けんせつを「漢人かんどの国くに（ニカン＝グルン）から東ひがしのかた日びの浮うかぶ海うみ（日本海にほんかい）に至いたるまでの、高麗こうらい国こく（ソルホ＝グルン）以北いほく、モンゴル国こく（モンゴ＝グルン）以南いなんのジュシェン語ごの国くに（グルン）をみな討うち従したがえ尽づくした」と記しるすように女おんな真人しんじんは自分じぶんたちの世界せかいを言語げんごによって周囲しゅういから区別くべつされる「ジュシェン国こく（女おんな真しん国こく）」というまとまりとして理解りかいしていた[27]。ホンタイジは「われらがくにたみ（グルン）の名なは元来がんらいマンジュ、ハダ・ウラ・イェヘ・ホイファであるぞ。それを理解りかいしない者ものがジュシェンという。...これからはいずれの者ものもわれらの本来ほんらいのマンジュという名なで呼よべ。ジュシェンと呼よんだときは罪つみとする。」「くにたみの名めいをマンジュと言いう。旗はたの諸王しょおうに千せん束たばさせた属ぞく下か（ジュシェン）を、その王おうの族ぞく下か（ジュシェン）という。」（『満まん文ぶん原げん檔』）という勅みことのり令れいを下くだし、単たんなる金かね国こくの後継こうけいに留とまらない新あらたな自意識じいしきを示しめした[28]。
  12. ^ 満州まんしゅう人じん（族ぞく）は当時とうじ東北とうほくアジアに住すんでいた様々さまざまな集団しゅうだんの複ふく合あい・統合とうごうを経へて形成けいせいされたものである。「南方なんぽうツングースを中心ちゅうしんとする満まん洲しゅう族ぞくは女おんな真しん族ぞくの末裔まつえいを母体ぼたいとし、蒙こうむ古こ族ぞく、朝鮮ちょうせん族ぞく、錫すず伯はく族ぞく、ダウール（達いたる斡爾）族ぞくを吸収きゅうしゅうし、長期ちょうきの雑居ざっきょを経へて新あたらしい共同きょうどう体たいを形成けいせい、今日きょう見みられる独特どくとくの民族みんぞく誌し的てき複ふく合あいを形成けいせいしたものである」（畑中はたなか）[30]。
  13. ^ 1793年ねん、初代しょだいマカートニー伯爵はくしゃくジョージ・マカートニーはイギリス王おうジョージ3世せいの派遣はけんした乾いぬい隆たかし帝みかどの80歳さいを祝いわう使節しせつ団だんとして熱ねつ河かわに赴おもむき、三さん跪九叩頭こうとうの礼れいを拒否きょひした（のちに清しん側がわが妥協だきょうして英国えいこく流りゅうに膝ひざをつき皇帝こうていの手てに接吻せっぷんすることで事態じたいを収拾しゅうしゅうした）ことで知しられる[34]。
  14. ^ 清朝せいちょうの皇帝こうていが皇帝こうていであるためには、満まん洲しゅう人じん、モンゴル人じん、漢人かんどの支配しはい権けんを確立かくりつしなければならなかった[35]。モンゴル人じんに対たいしては大元おおもと伝でん国こくの玉たま璽を有ゆうして最後さいごのハーンからその権利けんりを譲ゆずられ、漢人かんどに対たいしては大明だいめいの帝位ていいを継承けいしょうしたとしてその支配しはい権けんを主張しゅちょうできたのであるが、実みのところ、肝心かんじんの満まん洲しゅう人じんに対たいしては本来ほんらい独裁どくさいの権限けんげんはなく、部族ぶぞく長ちょう会議かいぎの議長ぎちょうにすぎない存在そんざいであり、当初とうしょは皇帝こうてい自身じしんがその部族ぶぞく長ちょう会議かいぎで軍事ぐんじ・外交がいこうのリーダーとして選挙せんきょで選えらばれた存在そんざいだった[35]。
  15. ^ チーパオ（旗はた袍ほう）は本来ほんらい、清朝せいちょう旗はた人じん社会しゃかいの婦人ふじんのうち、冬ふゆの綿入わたいれの形かたちを普遍ふへん化かしたものであるが、現在げんざいのようなかたちで統一とういつ・普及ふきゅうするのは、中華民国ちゅうかみんこく成立せいりつ以降いこうのことである[36]。清朝せいちょうでは、支配しはい者しゃである旗はた人じんと一般いっぱん漢人かんどとは厳格げんかくに区別くべつされていたため、漢人かんど女性じょせいがチーパオを着用ちゃくようすることは認みとめられていなかった[36]。このことが逆ぎゃくに女性じょせいの憧あこがれとなったのか、政治せいじとは別べつ次元じげんとして満まん洲しゅう民族みんぞくの服ふくが元もとになって「チャイナドレス」として独ひとり歩あるきし、ボディコンシャスなワンピースとして広ひろく愛用あいようされることになった[36]。
  16. ^ 辮髪べんぱつは、満まん洲しゅう族ぞく（女おんな真しん族ぞく）に限かぎらず、北きたアジア系けい諸しょ民族みんぞくのあいだに古ふるくから広ひろくみられる風習ふうしゅうである[36]。
  17. ^ ネルチンスク条約じょうやくは、東ひがしアジア史上しじょうはじめてヨーロッパの一いち国こくと結むすんだ国際こくさい条約じょうやくであった[39]。
  18. ^ ニル（niru、「矢や」の意い）とは、八はち旗はた制せいにおいて有事ゆうじの際さいに兵士へいしとなる成年せいねん男子だんし300人にんを供出きょうしゅつしうる集団しゅうだんを指さす[24]。清朝せいちょうは、5ニルをジャラン（jalan、1,500人にん）とし、5ジャランをグサ（gūsa、25ニル、7,500人にん）として、1グサ（7,500人にん）をもって一旗ひとはたとした[24][40]。「旗はた」は本籍ほんせきの所在しょざいをもあらわしており、単たんなる兵制へいせい上じょうの単位たんいではなく、旗はた人じんの基本きほん的てきな帰属きぞく先さきを示しめす社会しゃかい組織そしきであった[24]。
  19. ^ 北京ぺきん条約じょうやくはアロー戦争せんそう終結しゅうけつのためのイギリス・フランスとの講和こうわ条約じょうやくである。
  20. ^ 1931年ねんの満まん洲しゅう事変じへんまでに、数すう百ひゃく万まん規模きぼの人々ひとびとが関内かんないから移動いどうしたといわれている。
  21. ^ 太平たいへい天国てんごくでは反はん清きよしの意思いしとして辮髪べんぱつを廃止はいししたが、清朝せいちょうはこのような反はん政府せいふ勢力せいりょくを「長髪ちょうはつ賊ぞく」と呼よんだ。
  22. ^ 愛あい新しん覚さとし羅ら溥儀ふぎは、1917年ねん7月がつ、軍閥ぐんばつの指導しどう者しゃ張ちょう勲いさおによって13日間にちかんだけだが、帝位ていいに就ついたことがあった（張ちょう勲いさお復辟ふくへき）。
  23. ^ 満まん洲しゅう族ぞくに固有こゆうの言語げんご（本来ほんらいの満まん洲しゅう語ご）は「固有こゆう満まん洲しゅう語ご」と称しょうされた[49]。
  24. ^ しかし、「中国ちゅうごく的てき夢ゆめ」を掲かかげる習近平ひらた政権せいけんに入はいってからは、以前いぜんにも増ましていっそう抑圧よくあつ的てきな少数しょうすう民族みんぞく政策せいさくがとられるようになっている[50]。
  25. ^ クロテンの毛皮けがわは冬ふゆの厳きびしい華北かほく地方ちほうで人ひとびとの耳みみ当あてとして大量たいりょうの需要じゅようがあったほか、明あきや朝鮮ちょうせんでの奢侈しゃしの風潮ふうちょうからも人気にんきがあった[52]。オタネニンジン（朝鮮人参ちょうせんにんじん）は、上等じょうとうなものだと銀ぎんに匹敵ひってきするといわれたほど高価こうかであったが、これを採集さいしゅうするには夏なつの数すうか月げつ、猛獣もうじゅうの多おおく棲すむ高山たかやま地帯ちたいで集団しゅうだん生活せいかつを送おくる必要ひつようがあった[52]。
  26. ^ 「ツングース」の名前なまえの由来ゆらいも、トルコ語ごのトングス（＝ブタ）の訛なまったものといわれている[20]。
  27. ^ 明あかり帝国ていこくは、対たいモンゴル政策せいさくの一環いっかんとして女おんな真しん族ぞくを利用りようする政策せいさくを採用さいようし、衛まもる所しょの制度せいどを適用てきようして各地かくちの女おんな真しん族ぞくの部族ぶぞく長ちょうに官職かんしょくを授さづけ、それを示しめす勅書ちょくしょ・印璽いんじをあたえて、朝貢ちょうこう・馬市うまいちにかかわる特権とっけんの付与ふよに便宜べんぎを図はかった[19]。これは、自給自足じきゅうじそくの難むずかしい女おんな真しん族ぞくの社会しゃかいに権威けんいと利権りけんをめぐる熾烈しれつな争奪そうだつ抗こう争そうを生うむこととなって、結果けっか的てきに女おんな真しん族ぞく内ないに覇権はけん闘争とうそうを生うんだ[8][19]。明朝みんちょうの政策せいさくの根底こんていには女おんな真しん族ぞく分断ぶんだんの意図いともあったが、ヌルハチはこうした覇権はけん闘争とうそうを勝かち抜ぬいたうえで明あかりの対抗たいこう勢力せいりょくとなるまでに勢力せいりょくを拡大かくだいさせたのであるから、長期ちょうき的てきに考かんがえれば明あかりにとって皮肉ひにくな結果けっかだったといえる[8][19]。
  28. ^ ヌルハチはここを「打だ漁りょう楼ろう」と名付なづけた。
  29. ^ 清朝せいちょうの北京ぺきん入城にゅうじょうは、概おおむね人民じんみんの歓迎かんげいを受うけたが、辮髪べんぱつの強制きょうせいはこれに対たいする裏切うらぎり行為こういとして受うけ止とめられた[57]。
  30. ^ 清朝せいちょうにあっては、明代あきよには顕著けんちょだった後宮こうきゅう勢力せいりょくを背景はいけいとする宦官かんがんの専せん権けんという現象げんしょうはあまりみられなかった。
  31. ^ 漢かん族ぞくにあっては、同姓どうせいであっても同どう祖そでなければ通つう婚こんは制限せいげんされないし、同姓どうせい同どう祖そであっても五ご服ふく親おや（高祖父こうそふを同おなじくする三さん従兄弟いとこ姉妹しまいまでの親族しんぞく）の範囲はんいを越こえれば結婚けっこんは可能かのうである[63]。満まん族ぞくにあっては、かつては禁忌きんきとされた、同姓どうせいであるが同どう祖そでない男女だんじょ、同どう祖そであるが五ご服ふく親おやの範囲はんい外がいにある男女だんじょの結婚けっこんがみられるようになったというものの、特とくに老人ろうじんたちはそのことに否定ひてい的てきである[63]。
  32. ^ 嫩江沿岸えんがんやアイグン（黒竜江こくりゅうこう省しょう黒河くろかわ市し）周辺しゅうへんなどの少数しょうすうの集落しゅうらくでは、満まん洲しゅう語ごが口頭こうとう語ごとして用もちいられている[70]。
  33. ^ 『満まん文ぶん老ろう檔』文献ぶんけんの題名だいめいであり、内藤ないとうの命名めいめいによる[71]。
  34. ^ 無む圏点けんてん文字もじと有ゆう圏点けんてん文字もじは明瞭めいりょうに区別くべつされ、満まん洲しゅう文ぶん史料しりょうの年代ねんだいを検討けんとうする際さいの重要じゅうような指標しひょうのひとつとなっている[66]。
  35. ^ 赫哲族ぞく、ロシアでは「ナナイ」と称しょうする。
  36. ^ 浮うわき橋きょうのモチーフは、説話せつわによっては、魚さかなではなくカメによってつくられる場合ばあいもある[80]。

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

編集へんしゅう
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    • 李り鴻ひろし彬あきら; 劉りゅう小しょう萌もえ 著ちょ、柳沢やなぎさわ明あきら 訳やく「第だい2部ぶ第だい2章しょう 満まん族ぞくの社会しゃかい習俗しゅうぞく」『満まん族ぞくの家族かぞくと社会しゃかい』第だい一いち書房しょぼう、1996年ねん。 
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  • 三田村みたむら泰やすし助すけ 著ちょ「満州まんしゅうからきた王朝おうちょう」、田村たむら実みのる造づくり 編へん『世界せかいの歴史れきし9 最後さいごの東洋とうよう的てき社会しゃかい』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ〈中公ちゅうこう文庫ぶんこ〉、1975年ねん3月がつ。 
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  • 原山はらやま煌、畑中はたなか幸子さちこ 編へん『東北とうほくアジアの歴史れきしと社会しゃかい』名古屋大学出版会なごやだいがくしゅっぱんかい、1991年ねん1月がつ。ISBN 978-4815801526。 
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    • 杉山すぎやま清彦きよひこ「ジュシェンからマンジュへ － 明代あきよのマンチュリアと後金あときん国こくの興起こうき」勉つとむ誠まこと出版しゅっぱん、2019年ねん。 
  • 吉川よしかわ慧とし「「ラストエンペラー」溥儀ふぎの没後ぼつご50年ねん。波乱はらんの生涯しょうがいをふり返かえる」、The Huffington Post、2017年ねん10月がつ9日にち、2022年ねん9月がつ10日とおか閲覧えつらん。 
  • 平野ひらの聡さとし「中国ちゅうごくが少数しょうすう民族みんぞくに抑圧よくあつ的てきな政策せいさくを採とる構造こうぞう的てき要因よういん」、東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、2022年ねん3月がつ21日にち、2022年ねん9月がつ10日とおか閲覧えつらん。 
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関連かんれん項目こうもく

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登場とうじょう作品さくひん

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