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『バック・トゥ・ザ・フューチャー 』に登場 とうじょう するタイムマシン・デロリアン の、行先 いきさき を設定 せってい する部分 ぶぶん の模型 もけい
タイムトラベル (英語 えいご : time travel )は、SF文学 ぶんがく や映画 えいが などのフィクション作品 さくひん の題材 だいざい として用 もち いられる表現 ひょうげん であり、通常 つうじょう の時間 じかん の流 なが れから独立 どくりつ して過去 かこ や未来 みらい へ移動 いどう すること。日本語 にほんご で時間 じかん 旅行 りょこう (じかんりょこう)とも呼称 こしょう する他 ほか 、移動 いどう の様態 ようたい によって「タイムスリップ 」「タイムワープ 」「タイムリープ 」「タイムトリップ 」など多様 たよう な表現 ひょうげん がなされる。
タイムトラベルという概念 がいねん は、科学 かがく 的 てき な立場 たちば からみると様々 さまざま な問題 もんだい 点 てん [ 注 ちゅう 1] が指摘 してき され、今 いま の科学 かがく 力 りょく では実現 じつげん できないとされている。
タイムトラベルの類 るい は、「過去 かこ -未来 みらい の非対称 ひたいしょう 性 せい 」や、「時間 じかん の流 なが れ」という概念 がいねん を前提 ぜんてい としているが、これらの前提 ぜんてい をどう扱 あつか うかで「タイムトラベル」は様々 さまざま に描 えが かれる。視聴 しちょう 者 しゃ を楽 たの しませてくれる反面 はんめん 、作者 さくしゃ には、視聴 しちょう 者 しゃ に論理 ろんり 破綻 はたん を感 かん じさせないようにストーリーを構築 こうちく する、夢 ゆめ があるように描 えが く、などの課題 かだい を突 つ きつける。
空想 くうそう 物語 ものがたり (フィクション)としては一般 いっぱん 的 てき なもので、タイムトラベルを扱 あつか った作品 さくひん も国内外 こくないがい 多 おお く発表 はっぴょう されている。
タイムトラベルは、現在 げんざい では主 しゅ としてSF やファンタジー の分野 ぶんや での舞台 ぶたい 設定 せってい に利用 りよう される概念 がいねん である。
タイムトラベラーが主人公 しゅじんこう であるマーク・トウェイン の「アーサー王 おう 宮廷 きゅうてい のコネチカット・ヤンキー 」や、天使 てんし が未来 みらい の書物 しょもつ を携 たずさ えて現 あらわ れるサミュエル・マッデン の「20世紀 せいき 回想 かいそう 」など、SFというカテゴリが明確 めいかく なものとして育 そだ つ以前 いぜん から、タイムトラベルをテーマにした物語 ものがたり は創 つく られている。
そういった背景 はいけい をもとに、産業 さんぎょう 革命 かくめい 以降 いこう の科学 かがく 技術 ぎじゅつ の発展 はってん から生 う まれたSFというカテゴリが、夢 ゆめ の科学 かがく 技術 ぎじゅつ や超 ちょう 常 つね 現象 げんしょう としてのタイムトラベルを物語 ものがたり の類型 るいけい として取 と り込 こ んでいった。
実在 じつざい する現象 げんしょう かは解明 かいめい されていないが、理論 りろん 物理 ぶつり 学 がく などにおいて実現 じつげん の可能 かのう 性 せい が示 しめ されることがある(相対性理論 そうたいせいりろん におけるタイムラグ等 とう )。また、半 なか ば空想 くうそう 的 てき 、思考 しこう 実験 じっけん 的 てき な意味 いみ を伴 ともな う「楽 たの しい娯楽 ごらく 研究 けんきゅう 対象 たいしょう 」と扱 あつか われることもある。
タイムトラベルを舞台 ぶたい 設定 せってい として利用 りよう する物語 ものがたり 作品 さくひん には、いくつかの類型 るいけい がある。
A. 手段 しゅだん による類型 るいけい
タイムトラベルを実現 じつげん するメカニズム、「タイムマシン 」によるもの。「タイムマシン」は、エンリケ・ガスパール・イ・リンバウの1887年 ねん の作品 さくひん 『時間 じかん 遡行 そこう 者 しゃ 』で発案 はつあん され、1895年 ねん にハーバート・ジョージ・ウェルズ が発表 はっぴょう した『タイム・マシン 』で広 ひろ まったとされる。
登場 とうじょう 人物 じんぶつ の強 つよ い願望 がんぼう 、あるいは個人 こじん 的 てき な超 ちょう 能力 のうりょく に由来 ゆらい するもの。
何 なん らかの天変地異 てんぺんちい が原因 げんいん で受動 じゅどう 的 てき に引 ひ き起 お こされるもの。この類型 るいけい については「タイムスリップ 」や「タイムクェイク(時 とき 震 ふるえ )」などと呼 よ ばれる場合 ばあい がある。
何 なん らかのゲート(門 もん )が設定 せってい され、そのゲートの両側 りょうがわ が異 こと なる時間 じかん に開 ひら いており、そこを行 い き来 き することでタイムトラベルが実現 じつげん されるもの。
B. 主人公 しゅじんこう の意図 いと との関係 かんけい による類型 るいけい
目的 もくてき 地 ち を定 さだ めての意図 いと 的 てき なタイムトラベルが行 おこな われるもの。
いつの時代 じだい にタイムトラベルするかが分 わ からない・制御 せいぎょ 不可能 ふかのう なもの。
何 なん らかの不測 ふそく の事態 じたい によってタイムトラベルをしてしまい、そこから物語 ものがたり が始 はじ まるもの。しばしば主人公 しゅじんこう たちはタイムトラベルをしたことにしばらく気付 きづ かない。
明確 めいかく なタイムトラベルは結末 けつまつ に至 いた るまで示 しめ されず、種明 たねあ かしとしてタイムトラベルが生 しょう じていたことが明 あき らかになるもの。
広義 こうぎ のタイムトラベルと見 み なせる要素 ようそ を持 も つ多数 たすう の初期 しょき 作品 さくひん が存在 そんざい するため、タイムトラベル物 ぶつ の最初 さいしょ の実例 じつれい と認 みと められる作品 さくひん について、全面 ぜんめん 的 てき に同意 どうい された定義 ていぎ は存在 そんざい しない。古代 こだい に創作 そうさく されたいくつかの神話 しんわ や寓話 ぐうわ などには未来 みらい へタイムスリップする話 はなし が含 ふく まれている。また、知 し られている作品 さくひん は未来 みらい へのタイムトラベルものよりも近年 きんねん になるが、過去 かこ へのタイムトラベルものの起源 きげん もはっきりとは知 し られていない。
ヒンドゥ教 きょう の神話 しんわ 『マハーバーラタ 』[ 注 ちゅう 2] には、カクドミ (英語 えいご 版 ばん ) 王 おう が天界 てんかい で創造 そうぞう 主 ぬし ブラフマー と会 あ い、地上 ちじょう に戻 もど るととてつもなく時間 じかん が経 た っていたという話 はなし が含 ふく まれている[ 1] 。
仏教 ぶっきょう の経典 きょうてん 『パーリ仏典 ぶってん 』(紀元前 きげんぜん 29年 ねん ごろ成立 せいりつ )には、時間 じかん の相対 そうたい 性 せい が説 と かれている。ブッダ の上 うえ 弟子 でし であった大 だい 迦葉 は懐疑 かいぎ 的 てき なen:Payasi に対 たい して「天上 てんじょう 界 かい では時間 じかん の流 なが れが人間 にんげん 界 かい よりも遅 おそ く、そこの住人 じゅうにん は地上 ちじょう の住人 じゅうにん よりも長 なが く生 い きる」と説 と いている[ 2] 。
日本 にっぽん の昔話 むかしばなし の「浦島 うらしま 太郎 たろう (浦嶋 うらしま 子 こ )」でも、竜 りゅう 宮城 みやぎ から帰 かえ って来 く ると多 おお くの時 とき が流 なが れていたという話 はなし が登場 とうじょう する。これが文献 ぶんけん に登場 とうじょう する例 れい の初 はつ 見 み は、『日本書紀 にほんしょき 』(8世紀 せいき の初 はじ めに編纂 へんさん )の「雄略 ゆうりゃく 紀 き 」の雄略天皇 ゆうりゃくてんのう 22年 ねん (478年 ねん )秋 あき 7月 がつ の条 じょう の記述 きじゅつ である。書籍 しょせき として出版 しゅっぱん されたわけではないが、最古 さいこ にして初 はつ の正史 せいし (国家 こっか の正式 せいしき な歴史 れきし 書 しょ )に記述 きじゅつ されている。
中国 ちゅうごく にも同様 どうよう の昔話 むかしばなし 「爛 ただれ 柯 」(文献 ぶんけん として残 のこ る最古 さいこ のものは325年刊 ねんかん とされる)がある。王 おう 質 ただし という木 き こりが山 やま で碁 ご を打 う っている数 すう 人 にん の童子 どうじ と出会 であ い、山 やま から帰 かえ って来 く ると多 おお くの時 とき が流 なが れていたというストーリーである。
アイルランド神話 しんわ 『ティル・ナ・ノーグ 』にも同様 どうよう のストーリー展開 てんかい が見 み られる。説話 せつわ 『ブランの航海 こうかい 』では、ブラン王子 おうじ ら一 いち 行 ぎょう が美 うつく しい海 うみ の乙女 おとめ と「常 つね 若 わか の国 くに 」に行 い き楽 たの しく過 す ごして3年 ねん ぶりに故郷 こきょう に帰 かえ ってきたら300年 ねん 経 た っていたというものである。
イスラム教 いすらむきょう の聖典 せいてん 『クルアーン 』の「洞窟 どうくつ の章 あきら 」には、アッラーフ によって309年間 ねんかん 洞窟 どうくつ で眠 ねむ っていた男 おとこ 達 たち の話 はなし がある。これは「エフェソスの7人 にん の眠 ねむ り男 おとこ 」と呼 よ ばれる、ロ ろ ーマ帝国 まていこく の迫害 はくがい から逃 のが れた人々 ひとびと が洞窟 どうくつ に閉 と じこめられたが、200年 ねん 以上 いじょう たった後 のち 、そのうち一人 ひとり の男 おとこ が目覚 めざ め街 がい に姿 すがた を現 あらわ したという説話 せつわ が元 もと になっている。これは男 おとこ たちが眠 ねむ っていた洞窟 どうくつ と外 そと の世界 せかい で時間 じかん の流 なが れる速 はや さが違 ちが っていると考 かんが えることもできる。
他 ほか にも古代 こだい ギリシアのエピメニデス も59年間 ねんかん 眠 ねむ っていて、その間 あいだ に歳 とし をとらなかったとされる逸話 いつわ がある。
とても長 なが く眠 ねむ ることで未来 みらい へ行 い くストーリーのアメリカ 版 はん では、「リップ・ヴァン・ウィンクル 」(1820年 ねん 出版 しゅっぱん )がある。また、エドワード・ベラミー の「かえりみれば (Looking backward)」(1888年 ねん 出版 しゅっぱん )は1887年 ねん の上流 じょうりゅう 階級 かいきゅう 男性 だんせい が催眠 さいみん 術 じゅつ で眠 ねむ りに落 お ち、社会 しゃかい 主義 しゅぎ 的 てき ユートピアが実現 じつげん された2000年 ねん の社会 しゃかい を目 ま の当 あ たりにする物語 ものがたり である。
ルイ・セバスチャン・メルシエの『西暦 せいれき 二 に 千 せん 四 よん 百 ひゃく 四 よん 十 じゅう 年 ねん この上 うえ ない夢 ゆめ (L'An 2440, rêve s'il en fut jamais)[ 注 ちゅう 3] 』(1770年 ねん 出版 しゅっぱん )は、西暦 せいれき 2440年 ねん の世界 せかい を舞台 ぶたい にしたユートピア小説 しょうせつ である。非常 ひじょう に有名 ゆうめい な作品 さくひん である本書 ほんしょ では(1771年 ねん の初版 しょはん 刊行 かんこう 以来 いらい 、25版 はん が重 かさ ねられた)、哲学 てつがく 者 しゃ の友人 ゆうじん とのパリでの不 ふ 公正 こうせい についての激 はげ しい議論 ぎろん の後 のち に眠 ねむ りに落 お ち、夢 ゆめ の中 なか で未来 みらい のパリを訪 おとず れる無名 むめい の人物 じんぶつ の冒険 ぼうけん が描 えが かれる。ロバート・ダーントンは本書 ほんしょ を「幻想 げんそう 文学 ぶんがく であるとの断 ことわ りはあるが、『西暦 せいれき 二 に 千 せん 四 よん 百 ひゃく 四 よん 十 じゅう 年 ねん 』は真摯 しんし (しんし)な未来 みらい 予測 よそく 小説 しょうせつ として読 よ むことができる」と述 の べている。[ 3]
サミュエル・マッデンの『20世紀 せいき 回想 かいそう 』 Memoirs of the Twentieth Century (1733年 ねん )は、主 おも に世界 せかい 各国 かっこく の英国 えいこく 大使 たいし が英 えい 本土 ほんど の大蔵 おおくら 卿 きょう へ宛 あ てた一連 いちれん の書簡 しょかん と、英国 えいこく 外務省 がいむしょう からの若干 じゃっかん の返信 へんしん からなる作品 さくひん であり、それらの書簡 しょかん はいずれも1997年 ねん と1998年 ねん に書 か かれたとの触 ふ れ込 こ みで、その時代 じだい の状況 じょうきょう について記述 きじゅつ されている[ 4] 。しかしながら物語 ものがたり の枠組 わくぐ みでは、これらの書簡 しょかん は1728年 ねん のある晩 ばん に、語 かた り手 て が彼 かれ の守護 しゅご 天使 てんし から与 あた えられた本物 ほんもの の文書 ぶんしょ であると述 の べられている。これらの理由 りゆう から、ポール・アルコンは彼 かれ の著書 ちょしょ 『未来 みらい 小説 しょうせつ の起源 きげん 』 Origins of Futuristic Fiction において、「英 えい 文学 ぶんがく で最初 さいしょ のタイム・トラベラーは、1998年 ねん から1728年 ねん に国家 こっか 文書 ぶんしょ を持 も ち帰 かえ ったある守護 しゅご 天使 てんし である」と述 の べている[ 5] 。ただし、本書 ほんしょ では天使 てんし がそれらの文書 ぶんしょ を入手 にゅうしゅ した手段 しゅだん は明 あき らかにされていなかった。後 ご の文章 ぶんしょう でアルコンは、「マッデンを未来 みらい からの訪問 ほうもん 者 しゃ を描 えが いた最初 さいしょ の作家 さっか として称賛 しょうさん するのは、寛大 かんだい に過 す ぎるかもしれない」と語気 ごき を弱 よわ めてはいるが、「未来 みらい から時間 じかん を遡 さかのぼ って送 おく り込 こ まれた品物 しなもの が現代 げんだい で発見 はっけん されるという形式 けいしき による、巧 たく みなタイムトラベルの着想 ちゃくそう を持 も ち込 こ んだ最初 さいしょ の作家 さっか として、評価 ひょうか に値 あたい する」とも述 の べている[ 4] 。
SFアンソロジー『彼方 かなた の境界 きょうかい 』 Far Boundaries (1951年 ねん )では編者 へんしゃ のオーガスト・ダーレス が、1838年 ねん にダブリン・リテラリー・マガジンで匿名 とくめい の作者 さくしゃ により執筆 しっぴつ された『神隠 かみがく しの馬車 ばしゃ : 時代 じだい を超 こ えた男 おとこ 』 Missing One's Coach: An Anachronism という題 だい の短編 たんぺん を、最初 さいしょ 期 き のタイムトラベル作品 さくひん として定義 ていぎ している[ 6] 。この作品 さくひん では、木 こ の下 した でニューカッスル を離 はな れる馬車 ばしゃ を待 ま っていた語 かた り手 て が、突然 とつぜん に千 せん 年 ねん 前 まえ の世界 せかい に放 ほう り込 こ まれ、修道院 しゅうどういん で8世紀 せいき の聖職 せいしょく 者 しゃ ベーダ・ヴェネラビリス と遭遇 そうぐう し、未来 みらい の世紀 せいき の発展 はってん についていささか皮肉 ひにく めいた説明 せつめい を行 おこな う。これらの出来事 できごと が現実 げんじつ の出来事 できごと であったのか、単 たん なる夢 ゆめ に過 す ぎなかったのかは最後 さいご まで明 あき らかにされない。語 かた り手 て は、初 はじ めに木 き の根元 ねもと に居心地 いごこち の良 よ さそうな場所 ばしょ を見 み つけて、腰 こし を下 お ろしたと述 の べ、「疑 うたが い深 ぶか い読者 どくしゃ 諸氏 しょし は、私 わたし がうたた寝 ね をしたのだと言 い うかもしれない」が、「そんなことはなかったと断言 だんげん する」。修道院 しゅうどういん の者 もの たちが誰 だれ も彼 かれ と初対面 しょたいめん であるように見 み えないことや、ベーダが語 かた り手 て との話 はなし に口 くち ごもり、他 た の修道 しゅうどう 僧 そう らが何 なに かの害 がい が彼 かれ に与 あた えられたのだと思 おも い込 こ んでなだれ込 こ んできたところで、突然 とつぜん に語 かた り手 て は自分 じぶん が現代 げんだい (1837年 ねん の8月 がつ )の木 こ の下 した に戻 もど っているのに気付 きづ き、丁度 ちょうど 待 ま っていた馬車 ばしゃ が彼 かれ の目 め の前 まえ を通 とお り過 す ぎていき、もう一 いち 晩 ばん ニューカッスルに足止 あしど めされる羽目 はめ になるという唐突 とうとつ な終 お わり方 かた などの、作中 さくちゅう の多数 たすう の夢 ゆめ のような要素 ようそ は、別 べつ の可能 かのう 性 せい を読者 どくしゃ に暗示 あんじ している[ 7] 。
チャールズ・ディケンズ の1843年 ねん の小説 しょうせつ 『クリスマス・キャロル 』は、主人公 しゅじんこう のエビネザー・スクルージが、過去 かこ 、現在 げんざい 、未来 みらい のクリスマスを訪 おとず れることから、一部 いちぶ の者 もの からはタイムトラベルを描 えが いた最初 さいしょ の作品 さくひん であると見 み なされている[ 8] 。ただし、スクルージは各々 おのおの の時代 じだい を受動 じゅどう 的 てき に観察 かんさつ するのみであり、その時代 じだい から物理 ぶつり 的 てき な影響 えいきょう を受 う けたり、自 みずか らが干渉 かんしょう するわけではない。
より明確 めいかく なタイムトラベルの実例 じつれい は、フランスの植物 しょくぶつ 学者 がくしゃ にして地質 ちしつ 学者 がくしゃ であったピエール・ブアタールによる、彼 かれ の死後 しご 1861年 ねん に出版 しゅっぱん された有名 ゆうめい な書籍 しょせき 『人類 じんるい 以前 いぜん のパリ』 Paris avant les hommes の中 なか に見出 みいだ される。この作中 さくちゅう で主人公 しゅじんこう は跛 ちんば の悪魔 あくま アスモデ の魔法 まほう によって、先史 せんし 時代 じだい へと送 おく り込 こ まれ、そこでプレシオサウルス 等 ひとし の絶滅 ぜつめつ した生物 せいぶつ や、ブアタールの想像 そうぞう した人類 じんるい の祖先 そせん の猿 さる 人 じん と遭遇 そうぐう し、それらの生物 せいぶつ のいくつかと積極 せっきょく 的 てき に干渉 かんしょう できた[ 9] 。
SF的 てき なガジェット が初 はじ めて使 つか われたタイムトラベルの例 れい には、1881年 ねん にニューヨークの新聞 しんぶん サン紙 し に掲載 けいさい されたエドワード・ページ・ミッチェルの短編 たんぺん 『逆 ぎゃく 回 まわ りした時計 とけい 』 The Clock That Went Backward がある。ある時計 とけい を逆 ぎゃく 方向 ほうこう に巻 ま くと過去 かこ へ行 い けるという設定 せってい であるが、過去 かこ へ行 い けるメカニズムに科学 かがく 的 てき な説明 せつめい はなくファンタジー的 てき である。
喧嘩 けんか の末 すえ に大金 たいきん 鎚 づち でぶん殴 なぐ られた主人公 しゅじんこう がアーサー王 おう の時代 じだい に飛 と ばされるマーク・トゥエイン の『アーサー王 おう 宮廷 きゅうてい のコネチカット・ヤンキー 』(1889年 ねん )は、タイムトラベルという主題 しゅだい を大勢 おおぜい の読者 どくしゃ に広 ひろ めるのに貢献 こうけん した初期 しょき のタイムトラベル物 ぶつ の一 いち 例 れい であり、タイムトラベラーの行動 こうどう による歴史 れきし の改変 かいへん を扱 あつか った最初 さいしょ の作品 さくひん の一 いち 冊 さつ でもある。
タイムマシンの使用 しよう によるタイムトラベルを描 えが いた最初 さいしょ の作品 さくひん は、エンリケ・ガスパール・イ・リンバウの1887年 ねん の作品 さくひん 『時間 じかん 遡行 そこう 機 き 』 El Anacronópete である[ 10] 。この作品 さくひん では、鋳鉄 ちゅうてつ でできた電気 でんき 推進 すいしん のマシンによって、人 ひと が時間 じかん を逆行 ぎゃっこう してタイムトラベルすることができた。
時間 じかん を移動 いどう するためのマシンというアイデアは1895年 ねん に出版 しゅっぱん されたH・G・ウェルズ の小説 しょうせつ 『タイム・マシン 』により広 ひろ まった。これは未来 みらい へのタイムトラベルものである。これに先行 せんこう して1888年 ねん にウェルズは『時 じ の探検 たんけん 家 か たち』 en:The Chronic Argonauts と題 だい されたやや知名度 ちめいど の劣 おと る作品 さくひん を手掛 てが けており、これは過去 かこ へのタイムトラベルものであった。タイムマシンのコンセプトが大衆 たいしゅう に受 う け入 い れられるきっかけとなった本書 ほんしょ はしばしば後 ご のタイムトラベルを扱 あつか ったあらゆるSF小説 しょうせつ に影響 えいきょう を与 あた えた作品 さくひん と見 み なされている。
これ以降 いこう 、科学 かがく とフィクションの両面 りょうめん でタイムトラベルの概念 がいねん が広 ひろ く知 し られるようになったが、タイムトラベルが現実 げんじつ に可能 かのう であるか否 ひ かという問題 もんだい は依然 いぜん として未 み 解決 かいけつ のままである。現代 げんだい 物理 ぶつり 学 がく においても、過去 かこ へのタイムトラベルの方 ほう が未来 みらい へのタイムトラベルよりも難 むずか しいと考 かんが えられている(時間 じかん はもともと未来 みらい へと流 なが れていくものであるため、逆行 ぎゃっこう する方 ほう がより不自然 ふしぜん な流 なが れとなる)。
タイムトラベル物語 ものがたり の歴史 れきし といくつかの構造 こうぞう [ 編集 へんしゅう ]
ウェルズの『タイム・マシン』は未来 みらい へのタイムトラベルを題材 だいざい としたが、その後 ご のSF作品 さくひん では未来 みらい だけではなく過去 かこ へのタイムトラベルを扱 あつか った作品 さくひん もまた多 おお く生 う み出 だ されている。これらの作品 さくひん では、必 かなら ずしもタイムマシンの登場 とうじょう は必須 ひっす ではなく、超 ちょう 能力 のうりょく によるタイムトラベルや超 ちょう 常 つね 現象 げんしょう によるタイムトラベルなども含 ふく まれている。
作品 さくひん の傾向 けいこう として、未来 みらい へのタイムトラベルは『タイム・マシン』に代表 だいひょう されるような悲観 ひかん 的 てき な未来 みらい 社会 しゃかい が題材 だいざい とされる場合 ばあい が多 おお い。これはウェルズの作品 さくひん が当時 とうじ のイギリスの階級 かいきゅう 問題 もんだい や労働 ろうどう 問題 もんだい を未来 みらい 社会 しゃかい になぞらえていたように、現代 げんだい 社会 しゃかい の問題 もんだい 点 てん を未来 みらい に投影 とうえい し描 えが くことで現代 げんだい に問題 もんだい を提起 ていき する作家 さっか の意図 いと が強 つよ いためである。
一方 いっぽう 、過去 かこ へのタイムトラベルでは現代 げんだい と過去 かこ で繋 つな がる問題 もんだい や危機 きき が頻繁 ひんぱん に題材 だいざい とされ、過去 かこ の改変 かいへん により現代 げんだい の事象 じしょう も影響 えいきょう を受 う けるタイムパラドックス により、歴史 れきし が書 か き換 か わった場合 ばあい に訪 おとず れる危機 きき や現代 げんだい の悲観 ひかん 的 てき 状況 じょうきょう を打開 だかい するドラマが多 おお く描 えが かれている。また不 ふ 可逆 かぎゃく 的 てき な時間 じかん を遡 さかのぼ る現象 げんしょう の特性 とくせい から、経験 けいけん してきた時代 じだい をもう一度 いちど 体験 たいけん したい、生前 せいぜん の時代 じだい を垣間見 かいまみ たい、人生 じんせい をやり直 なお せたらとの読者 どくしゃ の願望 がんぼう を反映 はんえい したノスタルジックな内容 ないよう の作品 さくひん も少 すく なくない。これらは歴史 れきし 小説 しょうせつ 的 てき 側面 そくめん を持 も つ作品 さくひん もある。過去 かこ へのタイムトラベルは、荒唐無稽 こうとうむけい になりがちな未来 みらい 社会 しゃかい を扱 あつか った作品 さくひん よりも、時代 じだい 考証 こうしょう や史実 しじつ を踏 ふ まえることでよりリアルな描写 びょうしゃ が可能 かのう である。そのためか、現代 げんだい への影響 えいきょう が想像 そうぞう しやすく読者 どくしゃ が感情 かんじょう 移入 いにゅう しやすいという評価 ひょうか もある。
「タイムパラドックス 」はこの項目 こうもく へ転送 てんそう されています。
タイムパラドックス (Time Paradox / 時間 じかん の逆説 ぎゃくせつ )は、タイムトラベルに伴 ともな う矛盾 むじゅん や変化 へんか のことであり、物語 ものがたり のテーマとしてしばしば扱 あつか われる。具体 ぐたい 的 てき には、タイムトラベルした過去 かこ で現代 げんだい (相対 そうたい 的 てき 未来 みらい )に存在 そんざい する事象 じしょう を改変 かいへん した場合 ばあい 、その事象 じしょう における過去 かこ と現代 げんだい の存在 そんざい や状況 じょうきょう 、因果 いんが 関係 かんけい の不一致 ふいっち という逆説 ぎゃくせつ が生 しょう じることに着目 ちゃくもく したものである。
SF 作品 さくひん の中 なか においてタイムパラドックスは、歴史 れきし に関 かか わる重大 じゅうだい な出来事 できごと や危機 きき 、思考 しこう 実験 じっけん として頻繁 ひんぱん に題材 だいざい とされている。タイムパラドックスによる危機 きき やその回避 かいひ のサスペンス性 せい 、展開 てんかい の意外 いがい 性 せい による面白 おもしろ さが時間 じかん を題材 だいざい とするSFで多用 たよう される理由 りゆう で、作品 さくひん の醍醐味 だいごみ ともなっている。
タイムパラドックスの最 もっと も有名 ゆうめい な例 れい に、親 おや 殺 ごろ しのパラドックス と呼 よ ばれるものがある。過去 かこ へ遡 さかのぼ ったタイムトラベル者 しゃ が自分 じぶん の誕生 たんじょう 前 まえ の両親 りょうしん を殺害 さつがい した場合 ばあい どのような効果 こうか が発生 はっせい するかという問題 もんだい である。以下 いか の3つに場合 ばあい 分 わ けできる。
どう画策 かくさく しても殺 ころ すことはできない(矛盾 むじゅん が生 しょう じない)。[ 注 ちゅう 4] [ 注 ちゅう 5]
両親 りょうしん は自分 じぶん を生 う む前 まえ に死亡 しぼう するので自分 じぶん も消滅 しょうめつ する。そうすると自分 じぶん が過去 かこ へ遡 さかのぼ ることもなくなり両親 りょうしん が死 し ぬこともなくなる。矛盾 むじゅん である。[ 注 ちゅう 6]
両親 りょうしん が死 し んで自分 じぶん が生 う まれない世界 せかい が、自分 じぶん が生 う まれてやってきた未来 みらい 世界 せかい から分岐 ぶんき する(パラレルワールド )。両親 りょうしん が無事 ぶじ だった過去 かこ (そもそも時間 じかん 移動 いどう すらしなかった世界 せかい )には何 なん の影響 えいきょう もないので、これは矛盾 むじゅん とは言 い わない。
矛盾 むじゅん が生 しょう じない場合 ばあい でも、過去 かこ の改変 かいへん が未来 みらい に与 あた える影響 えいきょう を扱 あつか った作品 さくひん も多 おお い。これには些細 ささい な過去 かこ の改変 かいへん がバタフライ効果 こうか のように連鎖 れんさ しながら拡大 かくだい 波及 はきゅう し、未来 みらい の方向 ほうこう 性 せい を大 おお きく変更 へんこう してしまうとする立場 たちば と、些細 ささい な改変 かいへん は一時 いちじ 的 てき なゆらぎに過 す ぎず、その後 ご は収束 しゅうそく し未来 みらい の方向 ほうこう 性 せい に大 おお きな影響 えいきょう を与 あた えないとする立場 たちば がある。SF作家 さっか のポール・アンダースン は、歴史 れきし に大 おお きく関 かか わる人物 じんぶつ の暗殺 あんさつ や史実 しじつ の妨害 ぼうがい など、未 み 来社 らいしゃ 会 かい に重大 じゅうだい な影響 えいきょう を与 あた える歴史 れきし の改変 かいへん を防 ふせ ぐための組織 そしき のアイデアを、オムニバス長編 ちょうへん 『タイムパトロール 』(Gurdians of Time、1960年 ねん )で発表 はっぴょう した。またこの小説 しょうせつ では「歴史 れきし が改変 かいへん 可能 かのう であるならば、何 なに をもって正 ただ しい歴史 れきし とするか」という疑問 ぎもん も提示 ていじ されている。
タイムパラドックスの矛盾 むじゅん を説明 せつめい するため、タイムトラベル者 しゃ による歴史 れきし の改変 かいへん で時間 じかん 軸 じく が分岐 ぶんき し元 もと の世界 せかい と並行 へいこう した別 べつ の世界 せかい が生 う まれるとするパラレルワールド の概念 がいねん がある。この概念 がいねん を発展 はってん させ、タイムトラベル者 しゃ の介在 かいざい がなくとも歴史 れきし 上 じょう の重要 じゅうよう なポイントで世界 せかい が枝分 えだわ かれしていると解釈 かいしゃく する立場 たちば もある。この概念 がいねん を大幅 おおはば に作品 さくひん に取 と り入 い れた最初 さいしょ 期 き の小説 しょうせつ に、可能 かのう 性 せい として存在 そんざい する二 ふた つの歴史 れきし 「ジョンバール」と「ギロンチ」の抗 こう 争 そう を描 えが いた、ジャック・ウィリアムスン の『航 こう 時 じ 軍団 ぐんだん 』(The Legion of Time、1938年 ねん )がある。
このパラレルワールドの発想 はっそう に類似 るいじ したものに、量子力学 りょうしりきがく の多 た 世界 せかい 解釈 かいしゃく がある。これは物理 ぶつり 的 てき な相互 そうご 作用 さよう が時間 じかん 上 じょう にも及 およ ぶ[要 よう 出典 しゅってん ] とするもので、この理論 りろん に基 もと づくと、過去 かこ の改変 かいへん が行 おこな われても素粒子 そりゅうし レベルで世界 せかい の再 さい 構成 こうせい が行 おこ なわれるため、結果 けっか としてタイムパラドックスは生 しょう じない。ただし、二 ふた つの別々 べつべつ の世界 せかい でのタイムトラベルの瞬間 しゅんかん 前後 ぜんこう で物体 ぶったい や情報 じょうほう 量 りょう が生成 せいせい ・消滅 しょうめつ するため、エネルギー保存 ほぞん の法則 ほうそく ・エントロピー増大 ぞうだい の法則 ほうそく ・相対性理論 そうたいせいりろん 等 ひとし 、古典 こてん 力学 りきがく の法則 ほうそく は破綻 はたん する。また、多 た 世界 せかい 解釈 かいしゃく もタイムトラベルの瞬間 しゅんかん 前後 ぜんこう で相関 そうかん のない情報 じょうほう 量 りょう が割 わ り込 こ むため破綻 はたん してしまうという問題 もんだい が解決 かいけつ される訳 わけ ではない。
一方 いっぽう で、こうしたタイムパラドックスを全 まった く否定 ひてい する立場 たちば のフィクション作家 さっか もいる。例 たと えば、「もし時間 じかん を逆行 ぎゃっこう できるタイムマシンが存在 そんざい するならば、あってはならない矛盾 むじゅん が想定 そうてい される。したがってタイムマシンは存在 そんざい しない」との背理法 はいりほう に基 もと づき、時間 じかん は一方 いっぽう 通行 つうこう で流 なが れ逆行 ぎゃっこう できないとする考 かんが え方 かた がある。また、タイムトラベル者 しゃ が歴史 れきし の改変 かいへん を試 こころ みようとする行為 こうい 自体 じたい が現代 げんだい の歴史 れきし に含 ふく まれるという考 かんが え方 かた もある。意図 いと 的 てき にタイムパラドックスを起 お こそうと努力 どりょく しても、その行動 こうどう は必 かなら ず妨害 ぼうがい されタイムパラドックスの成立 せいりつ が阻止 そし されるとした作品 さくひん もある。この理論 りろん は現在 げんざい から過去 かこ への改変 かいへん だけではなく、現在 げんざい から未来 みらい へ対 たい する改変 かいへん も含 ふく まれることになる。
親 おや 殺 ごろ しのパラドックスを例 れい に取 と ると、過去 かこ に遡 さかのぼ り親 おや の殺害 さつがい を試 こころ みようとするが、絶対 ぜったい に成功 せいこう しないことが歴史 れきし として組 く み込 こ まれているか、そもそも過去 かこ に移動 いどう できないとしている。ロバート・A・ハインライン の短編 たんぺん 『時 じ の門 もん 』(By His Bootstraps、1941年 ねん )など、タイム・パラドックスの論理 ろんり 性 せい を追求 ついきゅう した一群 いちぐん の作品 さくひん の中 なか では、「タイムトラベル者 しゃ による歴史 れきし の改変 かいへん 自体 じたい が歴史 れきし に含 ふく まれており、タイムパラドックスは起 お こり得 え ない」との解釈 かいしゃく がなされている(ただし、この結論 けつろん は「主人公 しゅじんこう に活躍 かつやく の余地 よち がなく、努力 どりょく も報 むく われず、カタルシスとエンターティメント性 せい を欠 か く」ため、理論 りろん 的 てき には成 な り立 た つかもしれないが、文学 ぶんがく 的 てき にはあまり一般 いっぱん 的 てき には受 う け入 い れられない)。
またSF作家 さっか のラリー・ニーヴン は、『タイム・トラベルの理論 りろん と実際 じっさい 』(The Theory and Practice of Time Travel、1971年 ねん )と題 だい したエッセイの中 なか で、もし歴史 れきし の流 なが れが一本 いっぽん 道 どう であり、タイムトラベルによって歴史 れきし が改変 かいへん 可能 かのう であるならば、幾度 いくど ものタイムトラベル者 しゃ による歴史 れきし の改変 かいへん を経 へ た末 すえ に、最終 さいしゅう 的 てき に人類 じんるい の歴史 れきし は、「タイムマシンが存在 そんざい せず、タイムトラベル者 しゃ が決 けっ して現 あらわ れない歴史 れきし 」として安定 あんてい するのではないか、と述 の べている。
これらのような架空 かくう の理論 りろん や仮説 かせつ に基 もと づく過去 かこ や未来 みらい との因果 いんが 関係 かんけい の矛盾 むじゅん に着目 ちゃくもく したものとは別 べつ に、論理 ろんり パズル的 てき なタイムパラドックス もいくつか考案 こうあん されている。これらは論理 ろんり 的 てき には矛盾 むじゅん はないのに、あり得 え ないようなことが起 お こる事象 じしょう を題材 だいざい としたもので、その多 おお くは現実 げんじつ の物理 ぶつり 学 がく や量子力学 りょうしりきがく 上 じょう の考察 こうさつ を要求 ようきゅう する要素 ようそ を含 ふく んでいる。
【例 れい 】『マイナス・ゼロ 』(広瀬 ひろせ 正 ただし )より
現代 げんだい で買 か った新品 しんぴん のライターを持 も つ男 おとこ がタイムトラベルし、過去 かこ へそのライターを忘 わす れてくる。実 じつ はそのライターは第三者 だいさんしゃ により時 とき を経 へ て現代 げんだい に存在 そんざい する忘 わす れてきたライターとすり替 か えられており、新品 しんぴん で買 か ったライターはタイムトラベルをせず現代 げんだい に存在 そんざい する。タイムトラベルをするライターは現代 げんだい と過去 かこ を無限 むげん ループとして往来 おうらい する存在 そんざい であるが、現代 げんだい に新品 しんぴん がある限 かぎ りそのライターはどこで買 か ったものでもない。
このパラドックスではなぜこのようなライターが存在 そんざい するか、またこのような存在 そんざい となった時点 じてん でライターの分 ぶん だけ宇宙 うちゅう の質量 しつりょう が増 ふ えたのではないのか、そして時 とき を経 へ ても永久 えいきゅう に古 ふる くならず傷 きず すらつかないのではないか、との問題 もんだい が提起 ていき されている。1960年代 ねんだい に書 か かれたこの小説 しょうせつ のパラドックスは小説 しょうせつ 『存在 そんざい の環 たまき 』(P・スカイラー・ミラー、1944年 ねん )で提示 ていじ されたものの類型 るいけい であるが、1990年代 ねんだい にスティーブン・ホーキング 博士 はかせ がこれに類似 るいじ する概念 がいねん を持 も つ閉時曲線 きょくせん と量子 りょうし 効果 こうか の仮説 かせつ を示 しめ し、過去 かこ へのタイムトラベルを否定 ひてい する論拠 ろんきょ としている。小説 しょうせつ では言及 げんきゅう されていないが、このタイムパラドックスは「すり替 か えた人間 にんげん の意志 いし が、特異 とくい な物質 ぶっしつ の存在 そんざい や状態 じょうたい を創出 そうしゅつ した」という観測 かんそく 問題 もんだい 的 てき 側面 そくめん も内包 ないほう している。
タイムトラベルを扱 あつか った作品 さくひん には、タイムパラドックスのような論理 ろんり 性 せい や理詰 りづ めにはあまりこだわらず、自由 じゆう な発想 はっそう でタイムトラベルやそれに伴 ともな う世界 せかい 観 かん を描 えが いた活劇 かつげき 的 てき 内容 ないよう の作品 さくひん もある。
シミュレーション 的 てき 要素 ようそ を重視 じゅうし し、もし歴史 れきし が変 か わった場合 ばあい に存在 そんざい するかも知 し れない世界 せかい を描 えが いた、SFで言 い うIf世界 せかい (仮定 かてい 世界 せかい )を構築 こうちく した作品 さくひん として、『モンゴルの残 ざん 光 こう 』(豊田 とよだ 有恒 ありつね )や『スーパー太平 たいへい 記 き 』(手塚 てづか 治虫 おさむ )などがある。
また、過去 かこ に飛 と ばされた現代 げんだい 人 じん 、未来 みらい から現在 げんざい に飛 と ばされてきた未来 みらい 人 じん が、その高度 こうど な知識 ちしき を援用 えんよう して救民 きゅうみん や社会 しゃかい 変革 へんかく を目指 めざ すという類型 るいけい もあるが、そういった類型 るいけい でもタイムパラドックスはあまり重視 じゅうし されない。小説 しょうせつ 『闇 やみ よ落 お ちるなかれ』(L・スプレイグ・ディ・キャンプ )のように、現代 げんだい の科学 かがく 知識 ちしき や技術 ぎじゅつ を用 もち いて過去 かこ で主人公 しゅじんこう が活躍 かつやく する冒険 ぼうけん 活劇 かつげき としてエンターテイメント性 せい を重視 じゅうし したものや、漫画 まんが 『JIN-仁 ひとし - 』(村上 むらかみ もとか )のように、現代 げんだい の医療 いりょう 技術 ぎじゅつ で江戸 えど 時代 じだい の人々 ひとびと を救 すく おうとするヒューマンドラマ仕立 した てのものなど、多 おお くの事例 じれい が挙 あ げられる。タイムトラベルを題材 だいざい とした映画 えいが 『ゴジラvsキングギドラ 』(1991年 ねん )でプロデューサーを務 つと めた東宝 とうほう の富山 とみやま 省吾 しょうご は、映画 えいが を観 み ている間 あいだ 、観客 かんきゃく に矛盾 むじゅん を気 き づかせなければ良 よ いと思 おも うと述 の べており、同 どう 作品 さくひん 監督 かんとく の大森 おおもり 一樹 かずき も映画 えいが には科学 かがく 的 てき リアリズムは不要 ふよう であり、映画 えいが 内 ない のストーリーが合理 ごうり 的 てき に進 すす んでいれば良 よ いとしている[ 11] 。
また、歴史 れきし 上 じょう の謎 なぞ をタイムトラベルにより解明 かいめい するという趣向 しゅこう の作品 さくひん もある。これらの作品 さくひん の例 れい としては、タイムトラベルにより恐竜 きょうりゅう 絶滅 ぜつめつ の原因 げんいん が解明 かいめい される『さよならダイノサウルス』(ロバート・J・ソウヤー )がある。
小説 しょうせつ 『戦国 せんごく 自衛隊 じえいたい 』では、主人公 しゅじんこう 達 たち がタイムスリップすることによって史実 しじつ が再現 さいげん され歴史 れきし が正 まさ しくなる(主人公 しゅじんこう が過去 かこ に飛 と んだ時点 じてん で本来 ほんらい と違 ちが う歴史 れきし が繰 く り広 ひろ げられていた)という手法 しゅほう が取 と られていた。
タイムトラベルの概念 がいねん は、短 たん 編集 へんしゅう 『時 とき との戦 たたか い』(アレッホ・カルペンティエール )などSF以外 いがい の文学 ぶんがく 的 てき な作品 さくひん においても、題材 だいざい や表現 ひょうげん 手法 しゅほう のひとつとしても使用 しよう されている。
人間 にんげん がタイムトラベルに対 たい して抱 いだ く願望 がんぼう の一 ひと つに、「現在 げんざい の知識 ちしき を保 たも ったまま過去 かこ に赴 おもむ き、現在 げんざい にとって有利 ゆうり な結果 けっか になる様 よう に過去 かこ を改変 かいへん したい' 」というものがある。これを逆 ぎゃく にとらえて、未来 みらい に関 かん する情報 じょうほう を元 もと に現在 げんざい の行動 こうどう を決定 けってい する のも一種 いっしゅ のタイムトラベルであるといえる。勿論 もちろん 、未来 みらい の情報 じょうほう に基 もと づいて現在 げんざい を改変 かいへん すれば、「本来 ほんらい の未来 みらい 」も消滅 しょうめつ する、タイムパラドックスが生 しょう じる。これを「いかさま師 し のタイムパラドックス 」と言 い う。
超 ちょう 光速 こうそく 通信 つうしん と同様 どうよう に、物質 ぶっしつ でなく情報 じょうほう のみであれば、物理 ぶつり 的 てき 制約 せいやく に縛 しば られずに過去 かこ に送 おく り届 とど けることができるのではないかという考 かんが え方 かた がある。SF作品 さくひん においては、何 なん らかの災厄 さいやく に襲 おそ われた人間 にんげん (人類 じんるい )が過去 かこ に警告 けいこく を送 おく るという内容 ないよう のものが多 おお い。情報 じょうほう が過去 かこ へ遡上 そじょう すれば、当然 とうぜん 「本来 ほんらい の時間 じかん 」の情報 じょうほう が消滅 しょうめつ する。これは情報 じょうほう のパラドックス と呼 よ ばれる。
変 か わったものではズッコケ三 さん 人組 にんぐみ シリーズの『驚異 きょうい のズッコケ大 だい 時 じ 震 ふるえ 』(那須 なす 正幹 まさみき )における時 とき 震 ふるえ によるタイムトラベルで、「現代 げんだい の間 あいだ 違 ちが った知識 ちしき 」を持 も ったまま過去 かこ へ行 い った結果 けっか 、「間 あいだ 違 ちが った知識 ちしき 」が「史実 しじつ 」として具現 ぐげん 化 か してしまうというものもある(作品 さくひん 中 ちゅう では、関ヶ原 せきがはら の戦 たたか い の勝敗 しょうはい や架空 かくう の人物 じんぶつ である鞍馬 あんば 天狗 てんぐ が実在 じつざい してしまうなどという形 かたち で表現 ひょうげん )。これは作中 さくちゅう で「観念 かんねん 実体 じったい 化 か 現象 げんしょう 」という名称 めいしょう で呼称 こしょう された。
タイムトラベルの可能 かのう 性 せい と不可能 ふかのう 性 せい [ 編集 へんしゅう ]
リチャード・P・ファインマン は、「反 はん 粒子 りゅうし は時間 じかん を逆行 ぎゃっこう している正 せい の素粒子 そりゅうし だ」と考 かんが えた。この考 かんが え方 かた は「ディラックの海 うみ 」の持 も つ問題 もんだい 点 てん を解決 かいけつ するものだったが、「ディラックの海 うみ 」という考 かんが え方 かた は後 のち に物理 ぶつり 学者 がくしゃ らによって(別 べつ の方法 ほうほう で)修正 しゅうせい された。
スティーヴン・ホーキング は「タイムマシンは不可能 ふかのう である」と述 の べた。彼 かれ は「過去 かこ に行 い くことを許容 きょよう する時間 じかん 的 てき 閉曲線 へいきょくせん が存在 そんざい するためには、場 ば のエネルギー が無限 むげん 大 だい でなくてはならない[要 よう 出典 しゅってん ] 」と述 の べた。
もし、自分 じぶん がゆっくりと変化 へんか することや意識 いしき の低下 ていか などにより、変化 へんか を意識 いしき していないうちに周囲 しゅうい が変化 へんか していってしまうことも「タイムトラベル」と呼 よ ぶならば、ウラシマ効果 こうか 、コールドスリープ (冷凍 れいとう 睡眠 すいみん )や重力 じゅうりょく ポテンシャルの高低 こうてい 差 さ を利用 りよう することにより理論 りろん 上 じょう 可能 かのう とされる。ただし、これらの方法 ほうほう では過去 かこ へと時間 じかん を遡 さかのぼ ることはできない。
タイムマシンを開発 かいはつ しようとした人々 ひとびと の話 はなし や、その困難 こんなん 、可能 かのう 性 せい ・不可能 ふかのう 性 せい に関 かん する諸 しょ 見解 けんかい については「タイムマシンの研究 けんきゅう 」を参照 さんしょう 。
^ 時間 じかん 論 ろん 上 じょう の重大 じゅうだい な矛盾 むじゅん がある(歴史 れきし にやり直 なお しはできない)、場 ば のエネルギーが無限 むげん だと提言 ていげん しなければならなくなってしまうなど
^ 紀元前 きげんぜん 4世紀 せいき 頃 ごろ から紀元 きげん 後 ご 4世紀 せいき 頃 ごろ にかけて編纂 へんさん されたとされる
^ 植田 うえだ 祐次 ゆうじ の訳 わけ により『フランス幻想 げんそう 文学 ぶんがく 傑作 けっさく 選 せん 1 非合理 ひごうり 世界 せかい への出発 しゅっぱつ 』(白水 しろみず 社 しゃ 、1982年 ねん )所収 しょしゅう 。
^ 『ターミネーター 』では、軍事 ぐんじ コンピュータースカイネット が人類 じんるい 軍 ぐん の総 そう 司令 しれい 官 かん ジョン・コナー が生 う まれる前 まえ に母 はは のサラ・コナー を抹殺 まっさつ しようとし、暗殺 あんさつ 用 よう アンドロイドT-800 をタイムスリップさせたが阻止 そし されてしまった。その後 ご も過去 かこ のジョンを殺 ころ すため、T-1000 やT-X が未来 みらい から転送 てんそう されているが、どう画策 かくさく しても殺 ころ すことはできないという形態 けいたい になっている。
^ 『ルパン三 さん 世 せい 』(原作 げんさく )の第 だい 83話 わ およびそのアニメ化 か である『ルパン三 さん 世 せい (TV第 だい 1シリーズ) 』第 だい 13話 わ では、魔 ま 毛 げ 狂 きょう 介 かい が、ルパンの祖先 そせん を殺害 さつがい して、ルパン三 さん 世 せい を消滅 しょうめつ させようとするも、ルパンが仕掛 しか けた罠 わな 、タイムマシンの操縦 そうじゅう ミスなどが生 しょう じた結果 けっか 、魔 ま 毛 げ はルパンたちの返 かえ り討 う ちにあい、ルパンの消滅 しょうめつ に失敗 しっぱい したというケースがある。
^ 「バック・トゥ・ザ・フューチャー 」には類似 るいじ の様子 ようす として、父親 ちちおや と結 むす ばれるはずだった母 はは が未来 みらい から来 き た自分 じぶん を好 す きになってしまったため、生 う まれるはずの自分 じぶん が消滅 しょうめつ し始 はじ める様 さま が描 えが かれる。
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^ 「富山 とみやま 省吾 しょうご インタビュー」『ゴジラVSキングギドラ コンプリーション』ホビージャパン 、2020年 ねん 3月 がつ 31日 にち 、66頁 ぺーじ 。ISBN 978-4-7986-2176-0 。
主要 しゅよう 概念 がいねん 単位 たんい と規格 きかく
時計 とけい 編 へん 年 ねん ・ 歴史 れきし 宗教 しゅうきょう ・ 神話 しんわ 哲学 てつがく 人間 にんげん の経験 けいけん と時間 じかん の利用 りよう 分野 ぶんや 別 べつ の時間 じかん
関連 かんれん 項目 こうもく