六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん

六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん
天安門てんあんもん広場ひろば、1988年ねん5月がつ
別名べつめい	（第だい二に次じ）天安門てんあんもん事件じけん 六ろく四よん事件じけん 八はち九きゅう民みん運うん 八はち九きゅう学がく運うん Tiananmen Square protests of 1989 Tiananmen Massacre
起因きいん	改革かいかく派はの胡耀邦こようほう元もと党とう総そう書記しょきの死し
関係かんけい者しゃ	大学生だいがくせい、労働ろうどう者しゃ、市民しみん 中国共産党ちゅうごくきょうさんとう、中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐん
指導しどう者しゃ	鄧小平ひらた（党とう軍事ぐんじ委員いいん会かい主席しゅせき） 陳ちん雲くも（党とう顧問こもん委員いいん会かい主任しゅにん） 楊尚昆ようしょうこん（国家こっか主席しゅせき） 李り鵬ほう（国務こくむ院いん総理そうり） 劉華清りゅうかせい（党とう軍事ぐんじ委員いいん会かい副ふく秘書ひしょ長ちょう） 遅おそ浩ひろし田た（解放かいほう軍ぐん総そう参謀さんぼう長ちょう） 李り錫すず銘めい（北京ぺきん市し党とう委員いいん会かい書記しょき）
場所ばしょ	中国ちゅうごく 北京ぺきん市し長安ながやす街がい・天安門てんあんもん広場ひろば
日付ひづけ	1989年ねん4月がつ15日にち - 1989年ねん6月がつ4日にち
結果けっか	中国ちゅうごくの一般いっぱん民衆みんしゅう及および解放かいほう軍ぐん兵士へいしが死傷ししょうした 趙ちょう紫むらさき陽ひは総そう書記しょきほか全ぜん役職やくしょくを解任かいにんされ 江沢民こうたくみんが総そう書記しょき・最高さいこう指導しどう者しゃに抜擢ばってき 中国ちゅうごくは西側にしがわ諸国しょこくから経済けいざい制裁せいさいを受うけた

六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん
各種かくしゅ表記ひょうき
繁体字はんたいじ：	六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん
簡体字かんたいじ：	六ろく四天安门事件
拼音：	liùsì tiānānmén shìjiàn
発音はつおん：	リゥスー ティエンアンメン シィージェン
日本語にほんご読よみ：	ろくしてんあんもんじけん
英文えいぶん：	June 4 Tiananmen Incident

六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん
戦争せんそう：中国ちゅうごくの民主みんしゅ化か運動うんどう
年月日ねんがっぴ：1989年ねん4月がつ14日にち-6月4日にち
場所ばしょ：天安門てんあんもん広場ひろば
結果けっか：中国ちゅうごくの一般いっぱん民衆みんしゅう及および解放かいほう軍ぐん兵士へいしが死傷ししょうした 趙ちょう紫むらさき陽ひは総そう書記しょきほか全ぜん役職やくしょくを解任かいにんされ、江沢民こうたくみんが総そう書記しょき・最高さいこう指導しどう者しゃに抜擢ばってき 中国ちゅうごくは西側にしがわ諸国しょこくから経済けいざい制裁せいさいを受うけた
交戦こうせん勢力せいりょく
中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの民主みんしゅ化かデモ隊たい	中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく 人民じんみん解放かいほう軍ぐん
指導しどう者しゃ・指揮しき官かん
王おう丹まこと ウーアルカイシ 劉りゅう剛つよし 柴しば玲れい 周しゅう鋒ほこさき鎖くさり 翟偉民みん 梁りょう擎暾 王おう正ただし雲くも 鄭てい旭光きょっこう 馬うま少すくな方かた 楊涛 王おう治おさむ新しん 封ふう従したがえ徳とく 王おう超ちょう華はな 王おう有ゆう才ざい 張ちょう志こころざし清きよし 張ちょう伯はく笠かさ 張ちょう銘めい 熊くま煒 熊くま焱	鄧小平ひらた (党とう軍事ぐんじ委員いいん会かい主席しゅせき) 李り鵬ほう (国務こくむ院いん総理そうり) 楊尚昆ようしょうこん (国家こっか主席しゅせき) 陳ちん雲くも (党とう顧問こもん委員いいん会かい主任しゅにん)
戦力せんりょく
	戦車せんしゃ
損害そんがい
参加さんか者しゃの逮捕たいほ・武力ぶりょく鎮圧ちんあつ 死者ししゃ数すうの説せつは多数たすうあり	中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐん戒厳かいげん部隊ぶたいの多おおくの兵士へいしが死傷ししょう

六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん（ろくしてんあんもんじけん）は、1989年ねん6月4日にちに中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく・北京ぺきん市しの天安門てんあんもん広場ひろばを占拠せんきょしていた民主みんしゅ化かを求もとめるデモ隊たいに対たいし、中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんが実力じつりょく行使こうしし、多数たすうの死傷ししょう者しゃを出だした事件じけんである。通常つうじょう、単たんに「天安門てんあんもん事件じけん」と呼称こしょうする場合ばあいはこの事件じけんを指さすが、四よん五ご天安門てんあんもん事件じけんと区別くべつするため「第だい二に次じ天安門てんあんもん事件じけん」と呼よばれることもある。

解説かいせつ

中国ちゅうごくの周辺しゅうへん国こくでは、2年ねん前まえの同どう時期じきに台湾たいわんの中華民国ちゅうかみんこくではのち民主みんしゅ化か前まえの一いち歩ほ前進ぜんしんの戒厳かいげん令れい解除かいじょや、韓国かんこくの光州こうしゅう事件じけんから始はじまった民主みんしゅ化か闘争とうそうの末すえの民主みんしゅ化か宣言せんげんが立たて続つづけに起おこり、東ひがしアジアの広範囲こうはんいで民主みんしゅ化かの波なみが押おし寄よせていた。

民主みんしゅ化かとその成功せいこうが勢いきおいづいた波なみが遅おくれて到達とうたつした中国ちゅうごく国内こくないでも若者わかものの民主みんしゅ化か運動うんどうの高たかまりが広ひろがり、民主みんしゅ化かを求もとめるデモは、改革かいかく派はだった胡耀邦こようほう元もと党とう総そう書記しょきの死しがきっかけとなった。胡耀邦こようほうの葬儀そうぎまでに、政治せいじ改革かいかくを求もとめる学生がくせいを中心ちゅうしんに約やく10万まん人にんの人々ひとびとが天安門てんあんもん広場ひろばに集あつまった。

抗議こうぎ運動うんどう自体じたいは、胡耀邦こようほうが死去しきょした1989年ねん4月がつ15日にちから自然しぜん発生はっせい的てきに始はじまった。抗議こうぎの参加さんか者しゃたちは統制とうせいがなされておらず、指導しどう者しゃもいなかったが、中なかには中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの党員とういん、トロツキスト、左派さはの毛沢東もうたくとう主義しゅぎ者しゃ、通常つうじょうは政府せいふの構造こうぞう内部ないぶの権威けんい主義しゅぎと経済けいざいの変革へんかくを要求ようきゅうする声こえ に反対はんたいしていた改革かいかく派はの自由じゆう主義しゅぎ者しゃも含ふくまれていた。また、デモへの支援しえんは外国がいこくの西側にしがわ諸国しょこくからも行おこなわれ、米べい中央ちゅうおう情報じょうほう局きょく（CIA）は、学生がくせい活動かつどう家かたちの間あいだに情報じょうほう提供ていきょう者しゃのネットワークを構築こうちくし、反はん政府せいふ運動うんどうの形成けいせいに積極せっきょく的てきな協力きょうりょくを見みせ、タイプライターやファックスなどさまざまな機材きざいを提供ていきょうしたとされる。のちに、CIAは英えいMI6とともに何人なんにんかの反はん体制たいせい派は指導しどう者しゃの密みつ出国しゅっこくに関与かんよすることになる。

デモは最初さいしょは天安門てんあんもん広場ひろばで、そして広場ひろば周辺しゅうへんに集中しゅうちゅうしていたが、のちに上海しゃんはい市しを含ふくめた国くに中ちゅうの都市としに波及はきゅうしていった。鄧小平ひらた中ちゅう軍ぐん委い主席しゅせきの決定けっていにより5月がつ19日にちに北京ぺきん市しに戒厳かいげん令れいが布告ふこくされ、武力ぶりょく介入かいにゅうの可能かのう性せいが高たかまったため、趙ちょう紫むらさき陽ひ総そう書記しょきや知識ちしき人じんたちは学生がくせいたちに対たいし、デモの平和へいわ的てき解散かいさんを促うながしたが、学生がくせいたちの投票とうひょうでは強硬きょうこう派はが多数たすうを占しめ、デモ継続けいぞくを強行きょうこうしたため首都しゅと機能きのうは麻痺まひに陥おちいった。1989年ねん6月がつ4日にち未明みめい、中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんは兵士へいしと戦車せんしゃで北京ぺきんの通とおりに移動いどうして、デモ隊たいの鎮圧ちんあつを開始かいしした。

衝突しょうとつのあと、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう当局とうきょくは広範囲こうはんいに亘わたって抗議こうぎ者しゃとその支持しじ者しゃの逮捕たいほを実行じっこうし、外国がいこくの報道ほうどう機関きかんを国くにから締しめ出だし、自国じこくの報道ほうどう機関きかんに対たいしては事件じけんの報道ほうどうを厳格げんかくに統制とうせいさせた。戒厳かいげん令れい布告ふこくに反対はんたいした趙ちょう紫むらさき陽ひは、総そう書記しょきほか全ぜん役職やくしょくを解任かいにんされ、2005年ねんに死去しきょするまで、自宅じたく軟禁なんきん下かに置おかれた。

1989年ねん夏なつ以降いこう、一般いっぱんに「天安門てんあんもん事件じけん」という場合ばあいはこの事件じけんを指さす。他たの天安門てんあんもん事件じけん、特とくに1976年ねん4月がつ5日にちに周しゅう恩来おんらい総理そうりが死去しきょしたときに発生はっせいした四よん五ご天安門てんあんもん事件じけん（第だい一いち次じ天安門てんあんもん事件じけん）と区別くべつするため「第だい二に次じ天安門てんあんもん事件じけん」と呼よばれることもある。

略りゃくした通称つうしょうは六ろく四よん、また中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく内ないの検索けんさくエンジンにて、「六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん」というキーワードを検索けんさくすると接続せつぞく不可能ふかのうになることから、「5月35日にち（5月がつ31日にち＋4日にち）」、「VIIV（ローマ数字すうじの6と4を並ならべたもの）」や、「8²（8の2乗じょうを表あらわす数学すうがく記法きほうで、その値ねが64＝6月4日にち）」などを、隠語いんごとして使つかうことがある。「1989年ねん」は「民みん国こく78年ねん」、「平成へいせい元年がんねん」と変換へんかんすることもある。

抗議こうぎ者しゃに対たいする武力ぶりょく弾圧だんあつにより、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうは国内こくないだけでなく国際こくさい社会しゃかいから痛烈つうれつな批判ひはんを浴あびた。死者ししゃ数すうについては、中国ちゅうごく当局とうきょくは319人にんとしているが、他国たこくの情報じょうほうでは、数すう百ひゃく人にんから数すう千せん人にん、あるいは1万まん人にんにのぼるとするものもある。

事件じけん概要がいよう

「百花ひゃっか斉ひとし放ひ・百家はっけ争そう鳴な」

1985年ねん3月がつにソビエト連邦れんぽう共産党きょうさんとう書記しょき長ちょうに就任しゅうにんしたミハイル・ゴルバチョフは、「ペレストロイカ」を表明ひょうめいした。これはソビエト共産党きょうさんとうによる一いち党とう独裁どくさい制せいが続つづく中なかで、言論げんろんの自由じゆうへの弾圧だんあつや思想しそう・良心りょうしんの自由じゆうが阻害そがいされたことや、官僚かんりょうによる腐敗ふはいが徐々じょじょに進すすみ、硬直こうちょく化かした国家こっか運営うんえいを立たて直なおすことが目的もくてきであった。ソビエト連邦れんぽうが民主みんしゅ化かを進すすめるなか、同おなじく1949年ねんの建国けんこく以来いらい、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの一いち党とう独裁どくさい下かにあった中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでも、1986年ねん5月がつに中国共産党ちゅうごくきょうさんとう中央ちゅうおう委員いいん会かい総そう書記しょきの胡耀邦こようほうが「百花ひゃっか斉ひとし放ひ・百家はっけ争そう鳴な」を再さい提唱ていしょうして言論げんろんの自由じゆう化かを推進すいしん。胡えびすは国民こくみんから「開明かいめいの指導しどう者しゃ」と謳うたわれ、政治せいじ改革かいかくへの期待きたいや支持しじが高たかまった。

これに対たいして鄧小平ひらたら党内とうないの長老ちょうろうグループを中心ちゅうしんとした保守ほしゅ派はは、「百花ひゃっか斉ひとし放ひ・百家はっけ争そう鳴な」路線ろせんの推進すいしんは、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる一いち党とう独裁どくさいを揺ゆるがすものであり、ひいては自分じぶんたちの地位ちいや利権りけんを損そこなうものとして反発はんぱつした。

同年どうねん9月がつに行おこなわれた六ろく中ちゅう全会ぜんかいでは、国民こくみんからの支持しじを受うけて、胡えびすが押おし進すすめようとした政治せいじ改革かいかくは棚上たなあげされ、逆ぎゃくに保守ほしゅ派は主導しゅどうの「精神せいしん文明ぶんめい決議けつぎ」が採択さいたくされ、胡えびすは長老ちょうろうグループや李り鵬ほうらの保守ほしゅ派はの批判ひはんの矢面やおもてにさらされた。

12月に、北京ぺきん他た地方ちほう都市としで学生がくせいデモが発生はっせいすると保革ほかくの対立たいりつは激化げきかし、胡えびすは1987年ねん1月がつ16日にちの政治せいじ局きょく拡大かくだい会議かいぎで、鄧小平たいら党内とうないの長老ちょうろうグループや保守ほしゅ派はによって辞任じにんを強要きょうようされ、事実じじつ上じょう失脚しっきゃくした。

同月どうげつには胡えびすの後任こうにんとして、改革かいかく派はながら穏健おんけん派はと目めされた趙ちょう紫むらさき陽ひ総理そうりが総そう書記しょき代行だいこうに就任しゅうにん、同年どうねん11月がつの第だい13期き1中ちゅう全会ぜんかいで総そう書記しょきに選出せんしゅつされた。趙ちょうには経済けいざい・政治せいじの両りょう改革かいかくのいずれにも、反はん自由じゆう化かの影響えいきょうが及およばないよう指示しじを出だしたが、鄧小平へいが1988年ねん夏なつから始はじめた公定こうてい価格かかく制度せいどの廃止はいしが物価ぶっか上昇じょうしょうを招まねき、提起ていき者しゃの趙ちょう紫むらさき陽ひは、経済けいざいの主導しゅどう権けんを保守ほしゅ派はの李り鵬ほう国務こくむ院いん総理そうり（首相しゅしょう）らに渡わたすことになる。

胡耀邦こようほう死去しきょ

初期しょきのデモ

胡えびすは失脚しっきゃく後ごも政治せいじ局きょく委員いいんの地位ちいにとどまったが、北京ぺきん市内しないの自宅じたくで警察けいさつの監視かんしのもと外部がいぶとの接触せっしょくを断たたれるなど事実じじつ上じょうの軟禁なんきん生活せいかつを送おくり、1989年ねん4月がつ8日にちの政治せいじ局きょく会議かいぎに出席しゅっせき中ちゅう心筋梗塞しんきんこうそくで倒たおれ、4月がつ15日にちに死去しきょした。

胡えびすが中国ちゅうごくの民主みんしゅ化かに積極せっきょく的てきであったことから、翌よく16日にちには中国ちゅうごく政せい法ほう大学だいがくを中心ちゅうしんとした民主みんしゅ化か推進すいしん派はの学生がくせいたちによる胡えびすの追悼ついとう集会しゅうかいが行おこなわれた。また、これを契機けいきとして同日どうじつと17日にちに、同おなじく民主みんしゅ化か推進すいしん派はの大学生だいがくせいを中心ちゅうしんとしたグループが北京ぺきん市内しないで民主みんしゅ化かを求もとめた集会しゅうかいを行おこなった。

これらの集会しゅうかいはいずれも小規模しょうきぼに行おこなわれたが、翌よく18日にちには北京ぺきんの複数ふくすうの大学だいがくの学生がくせいを中心ちゅうしんとした1万まん人にん程度ていどの学生がくせいが北京ぺきん市内しないでデモを行おこなったのち、民主みんしゅ化かを求もとめて天安門てんあんもん広場ひろばに面めんする人民大会堂じんみんだいかいどう前まえで座すわり込こみのストライキを始はじめた。同時どうじに別べつのグループが中国共産党ちゅうごくきょうさんとう本部ほんぶや党とう要人ようじんの邸宅ていたくなどがある中ちゅう南海なんかいの正門せいもんである新しん華はな門もんに集あつまり、警備けいび隊たいと小競こぜり合あいを起おこした。

翌よく19日にちには北京ぺきん市し党とう委員いいん会かいの機関きかん紙しである『北京ぺきん日報にっぽう』が批判ひはん的てきに報ほうじたが、4月がつ21日にちの夜よるには10万まん人にんを越こす学生がくせいや市民しみんが天安門てんあんもん広場ひろばにおいて民主みんしゅ化かを求もとめるデモを行おこなうなど、急激きゅうげきに規模きぼを拡大かくだいしていった。

翌よく22日にちにはデモ隊たいに「保守ほしゅ派はの中心ちゅうしん人物じんぶつの1人ひとり」と目めされた李り鵬ほう国務こくむ院いん総理そうりとの面会めんかいを求もとめた声明せいめいが出だされると、文化ぶんか大だい革命かくめい期きに学生がくせいたちに痛いたい目めに遭あわせられていた八はち大だい長老ちょうろうたちはこれを「動乱どうらん」として強硬きょうこうに対処たいしょすることで一致いっちした。同日どうじつ午前ごぜん10時じ、人民大会堂じんみんだいかいどうで胡耀邦こようほう同志どうし追悼ついとう大会たいかいが開催かいさいされた。

四よん・二に六ろく社説しゃせつ

学生がくせいを中心ちゅうしんとした民主みんしゅ化かや汚職おしょく打倒だとうを求もとめるデモは、4月がつ22日にちには西安しーあんや長ちょう沙すな、南京なんきんなどの一部いちぶの地方ちほう都市としにも広ひろがっていったが、全土ぜんどに広ひろがっていったのは、その後ごに学生がくせいらが天安門てんあんもん広場ひろばでカンパを集あつめ始はじめたころからである。

西安しーあんでは車両しゃりょうや商店しょうてんへの放火ほうかが、武漢ぶかんでは警官けいかん隊たいと学生がくせいとの衝突しょうとつが発生はっせいした。

趙ちょう紫むらさき陽ひは田た紀き雲くもらの忠告ちゅうこくにもかかわらず、「国外こくがいに動揺どうようを見みせられない」として北朝鮮きたちょうせんへの公式こうしき訪問ほうもんを予定よてい通どおり行おこなうことを決きめ、李り鵬ほうに「追悼ついとう会かいは終おわったので学生がくせいデモを終おわらせる、すぐに授業じゅぎょうに戻もどすこと、暴力ぼうりょく、破壊はかい行為こういには厳きびしく対応たいおうすること、学生がくせいたちと各かく階層かいそうで対話たいわを行おこなうこと」とする3項目こうもく意見いけんを託たくした。

しかし、出国しゅっこくしてすぐの4月がつ25日にち、李り鵬ほうや李り錫すず銘めい北京ぺきん市し党とう委い書記しょき、陳ちん希のぞみ同どう北京ぺきん市長しちょうら保守ほしゅ派はが事実じじつを誇張こちょうした報告ほうこくを受うけ、鄧小平こだいらの談話だんわを下地したじに中国ちゅうごく中央ちゅうおう電でん視し台だいのニュース番組ばんぐみ「新聞しんぶん聯れん播」で発表はっぴょうされ、続つづいて翌日よくじつの4月がつ26日にち付づけの人民日報じんみんにっぽう1面めんトップに、「旗幟きし鮮明せんめいに動乱どうらんに反対はんたいせよ」と題だいされた社説しゃせつ（四よん・二に六ろく社説しゃせつ）が掲載けいさいされた。

北朝鮮きたちょうせん訪問ほうもん前まえに趙ちょう紫むらさき陽ひが示しめした「3項目こうもく意見いけん」は全まったく反映はんえいされず、社説しゃせつは胡耀邦こようほうの追悼ついとうを機きに全国ぜんこくで起おこっている学生がくせいたちの活動かつどうを「ごく少数しょうすうの人間にんげんが下心したごころを持もち」、「学生がくせいを利用りようして混乱こんらんを作つくり出だし」「党とうと国家こっか指導しどう者しゃを攻撃こうげきし」「公然こうぜんと憲法けんぽうに違反いはんし、共産党きょうさんとうの指導しどうと社会しゃかい主義しゅぎ制度せいどに反対はんたいする」と位置いちづけたことで学生がくせいたちの反感はんかんを買かい、趙ちょう紫むらさき陽ひら改革かいかく派はと李り鵬ほうら保守ほしゅ派はが対立たいりつするきっかけともなった。

上海しゃんはい市しの週刊しゅうかん誌しである『世界せかい経済けいざい導しるべ報ほう』は胡耀邦こようほうの追悼ついとうをテーマとした座談ざだん会かいを開ひらき、その中なかで参加さんか者しゃが胡えびすの解任かいにんを批判ひはんしたり名誉めいよ回復かいふくを要求ようきゅうする発言はつげんを報ほうじた。校正こうせい刷ずりの段階だんかいで内容ないようを把握はあくした上海しゃんはい市しは、党とう委員いいん会かい書記しょき（当時とうじ）の江沢民こうたくみんが宣伝せんでん担当たんとうの曽慶そげい紅べに市し党とう委い副ふく書記しょきと陳ちん至いたる立りつ市し党とう委い宣伝せんでん部長ぶちょうに命めいじ、問題もんだいの箇所かしょを削除さくじょするよう命令めいれいを出だした。

社長しゃちょうである欽本立ほんたてはこの要求ようきゅうを拒否きょひしたため、同紙どうしは発行はっこう停止ていしとなった。前出ぜんしゅつの四よん・二に六ろく社説しゃせつ発表はっぴょう後ごに市しの党とう幹部かんぶ1万まん人にんを集あつめて勉強べんきょう会かいを開ひらいた対応たいおうと共ともに評価ひょうかされ、江沢民こうたくみんが党とう総そう書記しょきに選えらばれる要因よういんとなった。

中国共産党ちゅうごくきょうさんとうは、人民日報じんみんにっぽうや国営こくえいテレビなどのメディアを使つかって事態じたいを沈静ちんせい化かするように国民こくみんに呼よびかけたものの、『世界せかい経済けいざい導しるべ報ほう』事件じけんなどもあって活動かつどうは逆ぎゃくに拡大かくだいをみせ、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうは学生がくせいだけでなくジャーナリストの反感はんかんをも買かった。

4月がつ29日にち午後ごごに、袁木国務こくむ院いん報道ほうどう官かん、何なに東あずま昌あきら国家こっか教育きょういく委員いいん会かい副ふく主任しゅにんと北京ぺきん市しの幹部かんぶが高校生こうこうせいと会見かいけんした。李り鵬ほうから四よん・二に六ろく社説しゃせつを擁護ようごするよう指示しじを受うけていた袁木は党内とうないに腐敗ふはいがあることを認みとめたものの、「大だい多数たすうの党とう幹部かんぶはすばらしい」と述のべ、『世界せかい経済けいざい導しるべ報ほう』事件じけんがあった直後ちょくごにもかかわらず「検閲けんえつ制度せいどなど無ない」と否定ひていし、「デモは一部いちぶの黒幕くろまくに操あやつられている」と高姿勢こうしせいを続つづけた。この模様もようが夜よるに放送ほうそうされると、学生がくせいは抗議こうぎデモに繰くり出だした。

デモの拡大かくだい

趙ちょう紫むらさき陽ひ（左ひだり）

趙ちょう紫むらさき陽ひは4月がつ30日にちに北朝鮮きたちょうせんから帰国きこくし、翌よく5月がつ1日にちの常務じょうむ委員いいん会かいで秩序ちつじょの回復かいふくと政治せいじ改革かいかくのどちらを優先ゆうせんさせるかで李り鵬ほう首相しゅしょうと対立たいりつしたが、5月4日にちの五ご・四よん運動うんどう70周年しゅうねん記念きねん日びまでにデモを素早すばやく抑おさえることで一致いっちした。

五ご・四よん運動うんどうの70周年しゅうねん記念きねん日びである前日ぜんじつ5月がつ3日にちに開ひらかれた式典しきてんでは、北京ぺきんの学生がくせい・市民しみんら約やく10万まん人にんが再ふたたび民主みんしゅ化かを求もとめるデモと集会しゅうかいを行おこなった。趙ちょう紫むらさき陽ひは学生がくせいの改革かいかく要求ようきゅうを「愛国あいこく的てき」であると評価ひょうかし、午後ごごからはアジア開発銀行あじあかいはつぎんこう理事りじ総会そうかいでも同様どうように肯定こうてい的てきな発言はつげんをした。学生がくせい運動うんどう終息しゅうそくに期待きたいが持もたれ、党内とうない部ぶの評価ひょうかはまずまずだった。

鄧小平たいらや保守ほしゅ派はの長老ちょうろうも歩あゆみ寄よりを見みせたが、5月13日にちから始はじまったハンガーストライキが「四よん・二に六ろく社説しゃせつ」から柔軟じゅうなん路線ろせんへの転換てんかんを破綻はたんさせた。ゴルバチョフ訪中ほうちゅう前まえに活動かつどうを収束しゅうそくさせることで鄧、楊尚昆ようしょうこん（国家こっか主席しゅせき）、趙ちょうの3人にんは一致いっちしたが、袁木（国務こくむ院いん報道ほうどう官かん）ら保守ほしゅ派はが送おくり込こんだ政府せいふ側がわ代表だいひょうの尊大そんだいな態度たいどに学生がくせい側がわの態度たいどは硬化こうかし、さらに学生がくせい側がわも「四よん・二に六ろく社説しゃせつ」の撤回てっかいに固執こしつしたためハンガーストライキの終結しゅうけつは困難こんなんとなった。

この頃ころ全土ぜんどから天安門てんあんもん広場ひろばに集あつまる学生がくせいや労働ろうどう者しゃなどのデモ隊たいの数かずは50万まん人にん近ちかくになり、公安こうあん（警察けいさつ）による規制きせいは効きかなくなり、天安門てんあんもん広場ひろばは次第しだいに市民しみんが意見いけんを自由じゆうに発表はっぴょうできる場ばへと変貌へんぼうしていった。併あわせてイギリスの植民しょくみん地ちであった香港ほんこん、日本にっぽんやアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなどの諸しょ外国がいこくに留学りゅうがくした学生がくせいによる国外こくがいでの支援しえん活動かつどうも活発かっぱつ化かしていった。

この民主みんしゅ化か運動うんどうの指導しどう者しゃは、漢かん民族みんぞく出身しゅっしんの大学生だいがくせいである王おう丹まことや柴しば玲れい、ウイグル族ぞく出身しゅっしんのウーアルカイシ（吾われ爾しか開ひらけ希まれ）などで、5月18日にち午前ごぜんに李り鵬ほう、李り鉄映てつえい、閻明復ふく、陳ちん希のぞみ同どうらが彼かれらと会見かいけんした。まず李り鵬ほうが「会見かいけんの目的もくてきはハンストを終おわらせる方法ほうほうを考かんがえることだ」と発言はつげんすると、ウーアルカイシは「実質じっしつ的てきな話はなし合あいをしたい。我々われわれは李り鵬ほうを招待しょうたいしたのであって、議題ぎだいは我々われわれが決きめる」と反論はんろんした。

学生がくせい側がわは「学生がくせい運動うんどうを愛国あいこく的てきなものとすること」と、「学生がくせいと指導しどう者しゃの対話たいわを生放送なまほうそうで放送ほうそうすること」を要求ようきゅうしたが、李り鵬ほうは「この場ばで答こたえることは適当てきとうではないし、2つの条件じょうけんはハンスト終結しゅうけつと関連付かんれんづけるべきではない」と話はなし、会見かいけんは物別ものわかれに終おわった。李り鵬ほうを激はげしく非難ひなんする姿すがたが全ぜん世界せかいにテレビにより流ながされたことで注目ちゅうもくを集あつめることとなった。

ゴルバチョフ訪中ほうちゅう

ゴルバチョフ夫妻ふさい

このような状況じょうきょう下かで、5月15日にちには「改革かいかく派は」として世界せかい的てきに知しられ、ソビエト国内こくないの改革かいかくを進すすめていたミハイル・ゴルバチョフ書記しょき長ちょうが、冷戦れいせん時代じだいの1950年代ねんだいより続つづいていた中ちゅうソ対立たいりつの終結しゅうけつを表明ひょうめいするために、当初とうしょの予定よてい通どおり北京ぺきんを公式こうしき訪問ほうもんした。

中国共産党ちゅうごくきょうさんとうは、ゴルバチョフと鄧小平たいら共産党きょうさんとう首脳しゅのう部ぶとの会談かいだんを通つうじて中ちゅうソ関係かんけいの正常せいじょう化かを確認かくにんすることで、「中ちゅうソ間あいだの雪解ゆきどけ」を世界せかいに向むけて発信はっしんしようとして綿密めんみつに受うけ入いれ準備じゅんびを進すすめていたが、天安門てんあんもん広場ひろばをはじめとする北京ぺきん市内しないの要よう所要しょよう所しょが民主みんしゅ化かを求もとめるデモ隊たいで溢あふれており、当局とうきょくによる交通こうつう規制きせいを行おこなうことが不可能ふかのうな状況じょうきょうになっていた。

このため、ゴルバチョフ一行いっこうの市内しないの移動いどうにさえ支障ししょうを来きたしたばかりか、天安門てんあんもん広場ひろばでの歓迎かんげい式典しきてんが中止ちゅうしされるなど、多おおくの公式こうしき行事ぎょうじが中止ちゅうしになったり開催かいさい場所ばしょを変更へんこうしておこなわれることとなった。

ゴルバチョフと会見かいけんに臨のぞんだ趙ちょう紫むらさき陽ひは当日とうじつ、人民大会堂じんみんだいかいどうでの会見かいけんで記者きしゃを前まえに、「最終さいしゅう決定けってい権けんが鄧小平たいらにある」ことを明あかしたが、学生がくせいたちの矛先ほこさきを鄧小平たいらに向むけたとされ、第だい13期き4中ちゅう全会ぜんかいで「罪状ざいじょう」に数かぞえられることとなった。

外国がいこくメディアの報道ほうどうの多おおくは、自国じこくの民主みんしゅ化かを進すすめるゴルバチョフの訪中ほうちゅうと、中国ちゅうごくにおける一連いちれんの民主みんしゅ化か運動うんどうを絡からめたものになった。また、この訪中ほうちゅうを受うけて両国りょうこく間あいだの関係かんけいが正常せいじょう化かされることとなったものの、デモ隊たいの多おおくがゴルバチョフを「改革かいかく派はの一員いちいん」「民主みんしゅ主義しゅぎの大使たいし」として歓迎かんげいする一幕ひとまく が報道ほうどうされるなど、結果けっか的てきには中国共産党ちゅうごくきょうさんとうのメンツが完全かんぜんに潰つぶされる結果けっかになった。

ゴルバチョフは、この様ような結果けっかになることを予想よそうしてあえて訪中ほうちゅう時期じきを変更へんこうせず、また中国共産党ちゅうごくきょうさんとうもゴルバチョフの訪中ほうちゅう予定よてい日びをあえて変更へんこうしないことで、長年ながねん対立たいりつしてきたソ連それんに対たいするメンツを保たもつとともに、国内こくないの「平静へいせい」を内外ないがいにアピールしようとした狙ねらいがあったと言いわれている。ゴルバチョフは、当初とうしょの予定よてい通どおり5月がつ17日にちに北京ぺきん首都しゅと国際こくさい空港くうこうから帰国きこくした。

戒厳かいげん令れい布告ふこく

この頃ころの中国共産党ちゅうごくきょうさんとう指導しどう部ぶは、保守ほしゅ派はの長老ちょうろうによって総そう書記しょきの座ざに選えらばれたものの、民主みんしゅ化かを求もとめる学生がくせいらの意見いけんに同情どうじょう的てきな態度たいどを取とった改革かいかく派はの趙ちょう紫むらさき陽ひ総そう書記しょきや胡啓立こけいりつ書記しょきなどと、李り鵬ほう首相しゅしょうや姚依林よういりん副ふく首相しゅしょうらの強硬きょうこう派はに分わかれたが、5月17日にちにゴルバチョフが北京ぺきんを離はなれるまでの間あいだは、この様ような事態じたいに対たいして事ことを荒立あらだてるような政治せいじ的てきな動うごきを見みせなかった。

5月16日にち夜よる、趙ちょう紫むらさき陽ひ、李り鵬ほう、胡啓立こけいりつ、喬石きょうせき、姚依林よういりんの5人にんの政治せいじ局きょく常務じょうむ委員いいん会かいが開ひらかれ、学生がくせいたちの要求ようきゅうする「四よん・二に六ろく社説しゃせつ」の修正しゅうせいについて話はなし合あわれ、趙ちょう紫むらさき陽ひは修正しゅうせいに賛成さんせい、李り鵬ほうは反対はんたいしたため、決着けっちゃくしなかった。

戒厳かいげん令れいの布告ふこくを決定けっていした鄧小平ひらた

5月17日にち午後ごごに改あらためて、党とう長老ちょうろうで事実じじつ上じょうの最高さいこう権力けんりょく者しゃである鄧小平ひらた中ちゅう軍ぐん委い主席しゅせきに加くわえ楊尚昆ようしょうこん国家こっか主席しゅせきを含ふくめた会議かいぎが鄧小平こだいらの自宅じたくで行おこなわれたところ、戒厳かいげん令れいの布告ふこくについて趙ちょう紫むらさき陽ひと胡啓立こけいりつが反対はんたい、李り鵬ほうと姚依林よういりんが賛成さんせい、喬石きょうせきが中立ちゅうりつの意見いけんを表明ひょうめいし、5人にんの政治せいじ局きょく常務じょうむ委員いいん会かいは割われた。

政治せいじ局きょく常務じょうむ委員いいんではない楊尚昆ようしょうこんが賛成さんせいを表明ひょうめいした後のち、政治せいじ局きょく常務じょうむ委員いいん会かいによる投票とうひょうをすることなく、鄧小平たいらは以下いかのように発言はつげんし戒厳かいげん令れいの布告ふこくを決定けっていした。

「事態じたいの進展しんてんを見みればわかるように、4月がつ26日にち付づけ社説しゃせつの判断はんだんは正ただしかった。学生がくせいデモが未いまだ沈静ちんせい化かしない原因げんいんは党内とうないにある。 すなわち、趙ちょう（紫むらさき陽よう）が5月4日にちにアジア開発銀行あじあかいはつぎんこうの総会そうかいで行おこなった演説えんぜつが原因げんいんなのだ。今いまここで後退こうたいする姿勢しせいを示しめせば、事態じたいは急激きゅうげきに悪化あっかし、統制とうせいは完全かんぜんに失うしなわれる。よって、北京ぺきん市内しないに軍ぐんを展開てんかいし、戒厳かいげん令れいを敷しくこととする。」 — 鄧小平ひらた

これに対たいし、趙ちょう紫むらさき陽ひは以下いかのように述のべ、戒厳かいげん令れいの発動はつどうを拒否きょひしたため、鄧小平たいらは李り鵬ほう、楊尚昆ようしょうこん、喬石きょうせきの3人にんを戒厳かいげん令れい実施じっしの責任せきにん者しゃに任命にんめいした。

「決定けっていを下くださないよりは下くだした方ほうが良よいけれども、今回こんかいの決定けっていが招まねくであろう深刻しんこくな事態じたいを大変たいへん憂慮ゆうりょしている。総そう書記しょきとして、この決定けってい内容ないようを推進すいしんし、効果こうか的てきに実行じっこうすることは私わたしには難むずかしい。」 — 趙ちょう紫むらさき陽ひ

5月19日にち午前ごぜん5時じ頃ごろ、趙ちょう紫むらさき陽ひは当時とうじ党とう中央ちゅうおう弁べん公おおやけ庁ちょう主任しゅにんを務つとめていた温ゆたか家宝かほうを連つれて、ハンガーストライキを続つづける学生がくせいを見舞みまう中なかで涙なみだを見みせ、学生がくせいたちの愛国あいこく精神せいしんを褒ほめ称となえ、「諸君しょくんはまだ若わかいのだから命いのちを粗末そまつにしてはいけない」と、迫せまりつつあった流血りゅうけつの惨事さんじを避さけるために、学生がくせいたちにハンストの中止ちゅうしを促うながしたが、学生がくせいたちには真意しんいが十分じゅうぶんに伝つたわらなかった。

しかし、趙ちょう紫むらさき陽ひの演説えんぜつは学生がくせいたちに歓迎かんげいされ、拍手はくしゅは止やまなかった。5月20日にち、鄧小平たいらは自宅じたくで非公式ひこうしき会合かいごうを開ひらき、趙ちょう紫むらさき陽ひの解任かいにんを事実じじつ上じょう決定けっていした。その後ご、6月19日にちの政治せいじ局きょく拡大かくだい会議かいぎで「動乱どうらんを支持しじし、党とうを分裂ぶんれつさせた」として、趙ちょう紫むらさき陽ひは党内とうない外がいの全ぜん役職やくしょくを解任かいにんされ自宅じたく軟禁なんきん下かに置おかれ、これ以降いこう政治せいじの表おもて舞台ぶたいから姿すがたを消けした。

5月19日にち午後ごご10時じ、党とう中央ちゅうおう、国務こくむ院いんが中央ちゅうおうと北京ぺきん市し党とう政せい軍ぐん幹部かんぶ大会たいかいを開ひらき、戒厳かいげん令れい布告ふこくの発表はっぴょうを行おこなった。党とう中央ちゅうおう、全人代ぜんじんだい、国務こくむ院いん、中央ちゅうおう軍事ぐんじ委員いいん会かい、中央ちゅうおう顧問こもん委員いいん会かい、中央ちゅうおう紀律きりつ検査けんさ委員いいん会かい、全ぜん国政こくせい協きょうと北京ぺきん市しの副ふく部長ぶちょう級きゅうの幹部かんぶおよび、党とう中央ちゅうおう弁べん公おおやけ庁ちょう、国務こくむ院いん弁べん公おおやけ庁ちょうの局長きょくちょうクラスが出席しゅっせきした。趙ちょう紫むらさき陽ひは「体調たいちょう不良ふりょう」により欠席けっせきすることが大会たいかいを主催しゅさいする喬石きょうせきから伝つたえられ、趙ちょう紫むらさき陽ひに割わり振ふられていた講話こうわは楊尚昆ようしょうこん国家こっか主席しゅせきが担当たんとうした。まず李り錫すず銘めい北京ぺきん市し党とう委い書記しょきが北京ぺきん市しの状況じょうきょうを説明せつめいし、続つづいて李り鵬ほうが戒厳かいげん令れいの必要ひつよう性せいを訴うったえる講話こうわを行おこなった。

これ以降いこうは保守ほしゅ派はによって戒厳かいげん令れい体制たいせいの強化きょうかが行おこなわれることになったものの、23日にちには戒厳かいげん令れい布告ふこくに抗議こうぎするために北京ぺきん市内しないで100万まん人にん規模きぼのデモが行おこなわれるなど、事態じたいは沈静ちんせい化かしないばかりか益々ますます拡大かくだいして行いく。また、政府せいふによる戒厳かいげん令れいの布告ふこくを受うけて、日本にっぽんやフランスをはじめとする多おおくの西側にしがわ諸国しょこくの政府せいふは、自じ国民こくみんの国外こくがい脱出だっしゅつを促うながすようになった。

こうした中なか、カナダを訪問ほうもん中ちゅうの全人代ぜんじんだい常務じょうむ委員いいん長ちょうの万里ばんりが、「改革かいかくを促うながす愛国あいこく行動こうどう」と学生がくせい運動うんどうを評ひょうした発言はつげんを5月17日にち付づけで新華社しんかしゃが報ほうじたことで、学生がくせいたちだけでなく社会しゃかい全体ぜんたいに希望きぼうが生うまれた。全人代ぜんじんだい常務じょうむ委員いいんらが万里ばんりの出国しゅっこく前まえに6月がつ20日にち前後ぜんこうとなっていた常務じょうむ委員いいん会かいの繰上くりあげ開催かいさいに奔走ほんそうし、李り鵬ほう解任かいにん要求ようきゅうや戒厳かいげん令れい反対はんたいの機運きうんが高たかまりかけたものの、万里ばんり自身じしんは北京ぺきんには戻もどらず「病気びょうき療養りょうよう」のため上海しゃんはいに入はいり、江沢民こうたくみんを説得せっとく役やくとして変心へんしんさせた。

2日にち後ご、万里ばんりは党とう中央ちゅうおうの決定けっていに対たいし一転いってんして「支持しじ」を表明ひょうめいする。

ブリティッシュコロンビア大学だいがくに置おかれた民主みんしゅの女神めがみのレプリカ

武力ぶりょく介入かいにゅうが避さけられない状況じょうきょうとなったことで、知識ちしき人じんらは学生がくせいたちに撤収てっしゅうを促うながしたものの、地方ちほうから集結しゅうけつした強硬きょうこう派はが多数たすうを占しめた学生がくせい側がわの話はなし合あいで反対はんたい票ひょうが9割わりを超こえたため、撤収てっしゅうは不可能ふかのうとなった。

5月30日にちには、天安門てんあんもん広場ひろばの中心ちゅうしんに、ニューヨーク市しの「自由じゆうの女神めがみ」を模もした「民主みんしゅの女神めがみ」像ぞうが北京ぺきん美術びじゅつ学院がくいんの学生がくせいによって作つくられ、その後ごこの像ぞうは、民主みんしゅ化か活動かつどうのシンボルとして世界中せかいじゅうのメディアで取とり上あげられた。また、この頃ころ香港ほんこんや中華民国ちゅうかみんこく（台湾たいわん）、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなど、国外こくがいの華僑かきょうによる民主みんしゅ化か推進すいしん派は支援しえんの活動かつどうが活発かっぱつになっていた。

報道ほうどう管制かんせい

戒厳かいげん令れいの布告ふこくを受うけて厳きびしい報道ほうどう管制かんせいが敷しかれ、日本にっぽんやイギリス、西にしドイツなどの西側にしがわ諸国しょこくのテレビ局てれびきょくによる生なま中継ちゅうけいのための回線かいせんは中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによって次々つぎつぎと遮断しゃだんされていたものの、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの CNN は、依然いぜんとして世界せかい各国かっこくへ向むけた生なま中継ちゅうけいを続つづけていた。

これに業ごうを煮にやした中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの上層じょうそう部ぶは、CNNが生放送なまほうそうを行おこなっていた最中さいちゅうに現場げんばに係官かかりかんと警察官けいさつかんを派遣はけんして、放送ほうそうを中止ちゅうしするよう要求ようきゅうしたが、テレビカメラが回まわり続つづけていたために、特派とくは員いんのバーナード・ショーらCNNのスタッフと係員かかりいんのやり取とりも、そのまま生なま中継ちゅうけいされ、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる報道ほうどう管制かんせいの実態じったいが世界中せかいじゅうに発信はっしんされた。

なおその後ごの西側にしがわメディアによる報道ほうどうは、主おもにビデオテープ収録しゅうろくによる録画ろくが中継ちゅうけいと、固定こてい電話でんわや公衆こうしゅう電話でんわを使用しようした、音声おんせいによる生なま中継ちゅうけいによって行おこなわれるようになった。また、民主みんしゅ化か推進すいしん派はが香港ほんこんや台湾たいわんなど、国外こくがいの民主みんしゅ化か推進すいしん派はの支援しえん者しゃやメディアに対たいして、ファクシミリを使つかって、北京ぺきん市内しないや政府せいふ内部ないぶの状況じょうきょうを逐一ちくいち報告ほうこくしていたといわれている。

武力ぶりょく弾圧だんあつ

強硬きょうこう派はの立場たちばをとり、「北京ぺきんの虐殺ぎゃくさつ者しゃ」と呼よばれた李り鵬ほう首相しゅしょう

A建国けんこく橋きょうを占拠せんきょする人民じんみん解放かいほう軍ぐんの戦車せんしゃ

6月がつに入はいると、地方ちほうから続々ぞくぞくと人民じんみん解放かいほう軍ぐんの部隊ぶたいが北京ぺきんに集結しゅうけつしていることが西側にしがわのメディアによって報ほうじられたこともあり、人民じんみん解放かいほう軍ぐんによる武力ぶりょく弾圧だんあつが近ちかいとの噂うわさが国内こくないだけでなく外国がいこくのメディアによっても報ほうじられるようになる。

実際じっさいに6月がつ3日にちの夜よる遅おそくには、天安門てんあんもん広場ひろばの周辺しゅうへんに人民じんみん解放かいほう軍ぐんの装甲そうこう兵員へいいん輸送ゆそう車しゃが集結しゅうけつし始はじめ、完全かんぜん武装ぶそうした兵士へいしが配置はいちに着ついたことが西側にしがわの外交がいこう官かんや報道陣ほうどうじんによって確認かくにんされた。

その後ご6月がつ3日にちの夜中よなかから6月がつ4日にち未明みめいにかけて、戒厳かいげん令れい実施じっしの責任せきにん者しゃである李り鵬ほう首相しゅしょうの指示しじによって、人民じんみん解放かいほう軍ぐんの装甲車そうこうしゃを含ふくむ完全かんぜん武装ぶそうされた部隊ぶたいが、天安門てんあんもん広場ひろばを中心ちゅうしんにした民主みんしゅ化か要求ようきゅうをする大学生だいがくせいを中心ちゅうしんとした民衆みんしゅうに対たいして投入とうにゅうされた。

現地げんち取材しゅざいしていたNHK記者きしゃの加藤かとう青あお延のべ（後ご、NHK専門せんもん解説かいせつ委員いいん）によれば、6月3日にちには下記かきのようなことが起おきていた。

• 外国がいこくメディアの前まえで、全まったく武装ぶそうのない「あかちゃん兵へい」と言いわれる弱々よわよわしい新兵しんぺいたちが行進こうしんを始はじめ、暴徒ぼうと化かしたデモ隊たいに襲撃しゅうげきされ、衣服いふくを剥はぎ取とられた。（加藤かとうは、これは中国ちゅうごく政府せいふが「平和へいわ的てきにデモを鎮しずめようとしたが出来できなかったので、やむを得えず発砲はっぽうした」という大義名分たいぎめいぶんを作つくるためにおこなったことだと考かんがえている。）
• その頃ころ、逆ぎゃくの方向ほうこうから「戦車せんしゃ男おとこ」のような白しろシャツ部隊ぶたいが次々つぎつぎと天安門てんあんもん広場ひろばに隣接りんせつする人民大会堂じんみんだいかいどうに入はいっていった。
• 6月3日にち午後ごご9時じ、装甲車そうこうしゃが一斉いっせいに天安門てんあんもん広場ひろばに進撃しんげきを開始かいし。この装甲車そうこうしゃは道みちにバリケードを築きずいていたデモ隊たいと武力ぶりょく衝突しょうとつし、デモ隊たいに多数たすうの死者ししゃが出でた。加藤かとうは発砲はっぽうした弾たまに当あたって倒たおれる女性じょせいを目撃もくげきしている。デモ隊たいも火炎瓶かえんびんで応戦おうせんし、装甲車そうこうしゃが次々つぎつぎに炎上えんじょう。デモ隊たいは炎上えんじょうした装甲車そうこうしゃから飛とび出だす人民じんみん解放かいほう軍ぐんを殴なぐりつけ、撲殺ぼくさつした兵士へいしに油あぶらを付つけて燃もやし、歩道橋ほどうきょうから兵士へいしの死体したいをぶら下さげるなどした。

複数ふくすうの外国がいこくメディアや大使館たいしかんからの公電こうでんによれば、解放かいほう軍ぐんの進行しんこうは一旦いったんは数かずで勝まさる民衆みんしゅうによって阻止そしされたものの、その後ごこれらの部隊ぶたいは中国共産党ちゅうごくきょうさんとう首脳しゅのう部ぶの命令めいれいに忠実ちゅうじつに、市街地しがいちで民衆みんしゅうに対たいして無む差別さべつに発砲はっぽうしたと伝つたえられた。

この際さいに、中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんのトラックは、事前じぜんに民衆みんしゅうに襲撃しゅうげきされており、武器ぶきや弾薬だんやくの一部いちぶが奪うばわれていた。現場げんばで取材しゅざいしていた加藤かとう青あお延のべが侯徳健こうとくけん（「天安門てんあんもん四君子しくんし」の1人ひとりで歌手かしゅ・作曲さっきょく家か）から聞きいたところ、軍ぐんが労働ろうどう者しゃのデモ隊たいに対たいして発砲はっぽうし、それに対たいして「友達ともだちを殺ころすのか！」と激怒げきどした労働ろうどう者しゃたちが逆襲ぎゃくしゅうして軍ぐんから武器ぶきを奪うばったのだという。加藤かとうによれば、武器ぶきを運はこぶトラックは兵士へいしたちとは別べつに運行うんこうされており、デモ隊たいがトラックの運転うんてん手しゅと格闘かくとうして武器ぶきを奪うばうことがあった。現場げんばに居いた四君子しくんしの一人ひとりである高こう新しんの証言しょうげんによると、当時とうじの天安門てんあんもん広場ひろばには、鉄てつパイプ、火炎瓶かえんびん、ライフル1丁ちょう、機関きかん銃じゅう1丁ちょうがあった。その高こう新しんは六ろくカ月かげつ間あいだにわたって拘留こうりゅうされ、その間あいだに太陽たいようを見みることができたのは一いち度どだけだった。現場げんばで取材しゅざいしていた朝日新聞社あさひしんぶんしゃの外報がいほう部ぶ記者きしゃ永なが持もち裕紀ゆうきのように「学生がくせいたちはジュースの空あき瓶びんや叩たたくとペシャリとなりそうな竹たけの棒ぼうくらいしか持もっていない」と言いっているものもおり、民衆みんしゅうの武装ぶそう状態じょうたいは証言しょうげんにより甚はなはだ差さがある。労働ろうどう者しゃデモ隊たいが奪うばってきた武器ぶきは侯徳健こうとくけん・劉りゅう暁あきら波なみたちが「こんなものは私わたし達たちの戦たたかいには必要ひつようがない」と言いって外国がいこくメディアの前まえで武器ぶきを破壊はかいしてしまった。

根強ねづよく残のこる懐疑かいぎ論ろん

横浜市立大学よこはましりつだいがく名誉めいよ教授きょうじゅの矢吹やぶき晋すすむは、1989年ねん12月4日にちの『読売新聞よみうりしんぶん』夕刊ゆうかん上じょうで天安門てんあんもん広場ひろばでの虐殺ぎゃくさつは不確ふたしかな噂うわさやデマに基もとづく誤報ごほうだと指摘してきした。一いち晩ばん中ちゅう現場げんばに居いたスペイン国営こくえいテレビの極東きょくとう支局しきょく特派とくは員いんファン・レストレポ記者きしゃも同おなじく、本国ほんごくのマドリードに送おくったテープが恣意しい的てきに編集へんしゅうされ、広場ひろばでの虐殺ぎゃくさつという歪いがんだ事実じじつが報道ほうどうされてしまったと述のべている。

しかし、大量たいりょうの虐殺ぎゃくさつが広場ひろばでなかったとはいえ広場ひろばでの数すう名めいの死者ししゃや多おおくの重軽傷じゅうけいしょう者しゃ、そして広場ひろば以外いがいで少すくなくとも300人にん以上いじょうが殺害さつがいされたと言いう欧米おうべい側がわの記録きろくがある。天安門てんあんもん広場ひろばで取材しゅざいしていた前述ぜんじゅつの永えい持もちも「天安門てんあんもん広場ひろばは新しん中国ちゅうごくの中心ちゅうしんも中心ちゅうしん。そこを血ちで染そめるようなことは流石さすがにせず、虐殺ぎゃくさつは広場ひろばの他ほかの地域ちいきの北京ぺきん市街しがいで多おおく行おこなわれた」と証言しょうげんしており、天安門てんあんもん広場ひろば以外いがいでは軍ぐんが民衆みんしゅうに対たいして攻撃こうげきを行おこなっていたことは複数ふくすうの証言しょうげんがある。

広場ひろばへ続つづく道路どうろでの武力ぶりょく鎮圧ちんあつは数時間すうじかん続つづき、6月4日にち未明みめい以降いこうも天安門てんあんもん広場ひろばに残のこった民衆みんしゅうの一部いちぶは、最終さいしゅう的てきに人民じんみん解放かいほう軍ぐんの説得せっとくに応おうじて広場ひろばから退去たいきょした。現場げんばで取材しゅざいしていた加藤かとうが後のちに侯徳健こうとくけんから聞きいた話はなしでは、状況じょうきょうは以下いかのごとくであった。

• 侯徳健こうとくけんが広場ひろばにいた民衆みんしゅうに状況じょうきょうを説明せつめいし、退去たいきょするか残のこるか問とうたところ、退去たいきょすることとなった。
• その最中さいちゅうに人民じんみん解放かいほう軍ぐんの兵士へいしたち数すう千せん名めいが銃じゅうを持もって広場ひろばに入はいってきた。
• 柴しば玲れいを先頭せんとうに広場ひろばから民衆みんしゅうが退去たいきょし始はじめたところで銃声じゅうせいが聞きこえた。誰だれもいない、民衆みんしゅうが使つかっていたスピーカーめがけて発砲はっぽうしていた。
• 最後さいごまで残のこっていた学生がくせいたちは武装ぶそう警察けいさつに棍棒こんぼうで殴なぐり倒たおされ、1人ひとりが骨折こっせつで立たち上あがれなくなり、侯徳健こうとくけんが病院びょういんに連つれて行いった。
• 広場ひろばで一人ひとりも死者ししゃが出でなかったかどうかは侯徳健こうとくけんも分わからない（広場ひろばが広ひろすぎて状況じょうきょうが把握はあくできなかったため）。少すくなくとも大だい虐殺ぎゃくさつはなかった。加藤かとうの取材しゅざいによれば数すう名めいの学生がくせいが死亡しぼうした。加藤かとうは記念きねん碑ひへの銃じゅう痕こんも確認かくにんした。
• 広場ひろば前まえの長安ながやす街がいでは、民衆みんしゅうが装甲車そうこうしゃを攻撃こうげきしていた。

また、スペインの放送ほうそう局きょくが撮影さつえいした映像えいぞうによると、学生がくせいを含ふくむ民衆みんしゅうに対たいして軍ぐんからの退去たいきょ命令めいれいは行おこなわれていたが、多おおくの学生がくせいを含ふくむ民衆みんしゅうはまだ広場ひろばに残のこっていた。

なお、学生がくせい運動うんどうのリーダー達たちの一部いちぶは、武力ぶりょく突入とつにゅう前まえにからくも現場げんばから撤収てっしゅうし、支援しえん者しゃらの手引てびきにより中国ちゅうごく国外こくがいへ亡命ぼうめいした。1995年ねんに製作せいさくされたアメリカのドキュメンタリー映画えいが「天安門てんあんもんTHE GATE OF HEAVENLY PEACE」の中なかで、学生がくせい側がわリーダーの柴しば玲れいはインタビューに対たいし、「流血りゅうけつを期待きたいしていた（其实我わが们期待きたい的てき就是流血りゅうけつ）。中国共産党ちゅうごくきょうさんとう政府せいふを追おい詰つめて人民じんみんを虐殺ぎゃくさつさせなければ、民衆みんしゅうは目覚めざめない。」と発言はつげんした。現場げんばに居いなかった柴しば玲れいは広場ひろばで戦車せんしゃが学生がくせいを押おしつぶしたと泣なきながら証言しょうげんしたが、最後さいごまで現場げんばに残のこって学生がくせいが脱出だっしゅつするためのトラックを手配てはいしていた侯徳健こうとくけん（台湾たいわんから亡命ぼうめいしてきた有名ゆうめい作曲さっきょく家か）は、広場ひろばでは虐殺ぎゃくさつは起おきなかったと証言しょうげんしている。また、学生がくせい側がわリーダーの一人ひとりだったウーアルカイシも広場ひろばで千せん人にんが殺ころされたと証言しょうげんしたが、侯徳健こうとくけんや加藤かとう青あお延のべによれば死者ししゃは数すう名めいだったという。

なお、これは前述ぜんじゅつのごとく、天安門てんあんもん広場ひろばでの死者ししゃは出でなかったが、周辺しゅうへんでは多数たすうの死者ししゃが出でたという認識にんしきが正ただしいと思おもわれる。なお、加藤かとうは死傷ししょう者しゃ数すうについては政府せいふ発表はっぴょうでは319人にんだが、民衆みんしゅうの間あいだでは「100万まん人にんが殺ころされた」と信しんじられていたという。政府せいふ発表はっぴょうですらズレが有あり、加藤かとうはおそらく民衆みんしゅうの噂うわさの死者ししゃ数すうは過大かだいであり、1990年ねんの中国ちゅうごく公安こうあん省しょうの報告ほうこくの「死者ししゃ523人にん、負傷ふしょう者しゃ11570人にん、政府せいふ側がわの軍ぐん・警察けいさつの負傷ふしょう者しゃ6240人にん」というのがおそらく真実しんじつに近ちかいのではないかとしている。

映像えいぞう外部がいぶリンク
男性だんせいと戦車せんしゃの動画どうが（CNNによる動画どうが）

画像がぞう外部がいぶリンク
男性だんせいと戦車せんしゃの接近せっきん場面ばめんを拡大かくだいした画像がぞう（ジェフ・ワイドナー撮影さつえい）

中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんの59式しき戦車せんしゃ

武力ぶりょく鎮圧ちんあつの模様もようは、イギリスのBBCや香港ほんこんの亜あ洲しゅう電でん視し、アメリカのCNNを始はじめとする、中国ちゅうごく国内外こくないがいのテレビ局てれびきょくによって世界中せかいじゅうに中継ちゅうけいされた。その映像えいぞうは無む差別さべつ発砲はっぽうによる市民しみんの虐殺ぎゃくさつと看做みなされ、世界中せかいじゅうから多おおくの非難ひなんが中国ちゅうごく政府せいふに浴あびせられた。

武力ぶりょく鎮圧ちんあつのために進行しんこうする中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんの戦車せんしゃの前まえに1人ひとりの若者わかものが飛とび出だして戦車せんしゃの進路しんろ方向ほうこうの前まえに立たち、その戦車せんしゃの走行そうこうを阻止そししようとした男性だんせい「無名むめいの反逆はんぎゃく者しゃ」の映像えいぞうも放映ほうえいされた（Tank Man - 戦車せんしゃ男おとこ）。ただし、この事件じけんは外国がいこくメディアの眼めの前まえでわざわざ行おこなわれ、男性だんせいはデモ隊たいが叫さけんでいたスローガンを叫さけばずに終始しゅうし無言むごんであるなど不思議ふしぎなものであった。戦車せんしゃ男おとこを目撃もくげきしたNHK記者きしゃの加藤かとう青あお延のべは「服装ふくそうが政府せいふ側がわの人物じんぶつのように見みえ、戦車せんしゃが人ひとを引ひかないことをアピールするための自作じさく自演じえんの中国ちゅうごく政府せいふの行動こうどうであろう」としている。加藤かとうの取材しゅざいによればこれは6月がつ5日にちに隣接りんせつする長安ながやす街がいの外国がいこく取材しゅざい陣じんの前まえでおきた出来事できごとである。男性だんせいは身元みもと不明ふめいだがデモ隊たいではなく中国ちゅうごく政府せいふ側がわの人間にんげんだと思おもわれる。中国ちゅうごく政府せいふの自作じさく自演じえんで「戦車せんしゃは民衆みんしゅうを引ひかないよ」というパフォーマンスとして行おこなわれたものである。加藤かとうは中国ちゅうごく政府せいふの宣伝せんでん担当たんとう者しゃから「戦車せんしゃが人ひとを引ひかないということが重要じゅうようなのですよ」という話はなしを聞きいている。6月4日にちに「デモ隊たいが中国ちゅうごく政府せいふ中枢ちゅうすう部ぶの中なか南海なんかいを襲おそう、中ちゅう南海なんかいが危あぶない」という司令しれいを受うけた人民じんみん解放かいほう軍ぐんが中ちゅう南海なんかい前まえのデモ隊たいに戦車せんしゃが突つっ込こみ、民衆みんしゅうを轢ひき殺ころしてしまい、11人にん死亡しぼう、両足りょうあし切断せつだんの重傷じゅうしょう者しゃ2名めいを出だしていた。これは民衆みんしゅうの間あいだでは「戦車せんしゃに1万まん人にんもの民衆みんしゅうが轢ひき殺ころされたそうだ」というデマになって広ひろまっていた。そのデマを鎮しずめるためにおこなったものだろうと加藤かとうは考かんがえている。

また、AFP通信つうしんによると、2014年ねん6月がつに機密きみつ解除かいじょされたアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく連邦れんぽう政府せいふの公文書こうぶんしょの中なかに、当時とうじの天安門てんあんもん広場ひろばの様子ようすを目撃もくげきしたとされる匿名とくめいの人物じんぶつの話はなしが記載きさいされている。それによれば、楊尚昆ようしょうこんの甥おいが指揮しきした、河北かほく省しょう石いし家か庄しょうから招集しょうしゅうされた第だい27集団しゅうだん軍ぐん（北京ぺきん軍ぐん区く所属しょぞく）に属ぞくする非ひ北京ぺきん語ご話者わしゃの兵士へいしたちは、「人々ひとびとの集あつまりに遭遇そうぐうすると、それが誰だれであろうとも笑わらいながら無差別むさべつに発砲はっぽうしていた」と、武力ぶりょく弾圧だんあつが多おおくの死者ししゃを出だすことを意図いとした「残虐ざんぎゃく」なものだったと主張しゅちょうした内容ないようだった。しかし公開こうかいされた機密きみつ文書ぶんしょの原文げんぶんでは、この匿名とくめいの情報じょうほう提供ていきょう者しゃは事件じけん発生はっせい当時とうじは現場げんばでなく北京ぺきん市内しないのホテルの一室いっしつに滞在たいざいしており、第だい27集団しゅうだん軍ぐんの虐殺ぎゃくさつ行為こういに関かんする一連いちれんの情報じょうほうは「確認かくにんの取とれない噂うわさ」であるとしている。また、当時とうじ現場げんば付近ふきんに居いたワシントンポストの北京ぺきん支局しきょく長ちょうジェイ・マシューズは、 「何なん百ひゃく人にんもの外国がいこく人じんジャーナリストは天安門てんあんもんとは別べつの地域ちいきか、或あるいは天安門てんあんもん広場ひろばから離はなれたホテルに避難ひなんしていたので、広場ひろば中央ちゅうおうでの様子ようすを目撃もくげきする事ことは出来できなかった」 と指摘してきしている。マシューズは広場ひろばでの虐殺ぎゃくさつについても、 「ウーアルカイシは銃撃じゅうげきで200名めいの学生がくせいが倒たおれたと言いうが、彼かれは既すでに数時間すうじかん前まえに現場げんばから脱出だっしゅつしていた。伝聞でんぶんや噂うわさではなく現場げんばからの確たしかな証言しょうげんから判断はんだんすれば、広場ひろばでは誰だれも死しんでおらず広場ひろばに通つうじる道路どうろで散発さんぱつ的てきな死者ししゃが出でた」と述のべている。

天安門てんあんもん事件じけんを取材しゅざいしたジャーナリストの相馬そうま勝まさるは、天安門てんあんもん広場ひろばの付近ふきんの路地ろじを通とおる途中とちゅう、広場ひろばから逃にげてきたという眼鏡めがねをかけた血ちまみれの学生がくせいが市民しみんを前まえにして、「奴やつらは3歳さいの赤あかん坊ぼうを撃うったんだ。同級生どうきゅうせいの女子じょし学生がくせいをいま病院びょういんに送おくってきたところだ。彼女かのじょは死しんだ。血ちだらけになって…。同級生どうきゅうせいのなかには体からだを吹ふき飛とばされた者ものもいる。奴やつらは鬼おにだ」と涙なみだながらに訴うったえているのを目撃もくげきした（この学生がくせいの白しろいワイシャツは赤あかい血ちで染そまっていたという）。相馬そうまがその学生がくせいの言葉ことばをメモに残のこしてから天安門てんあんもん広場ひろばへと進すすむ途中とちゅう、相馬そうまの姿すがたを見みた中年ちゅうねんの男性だんせいから「お前まえは日本人にっぽんじんの記者きしゃか？」と話はなしかけられた。男性だんせいは茫然ぼうぜん自失じしつした様子ようすで、「軍ぐんが撃うった。こんなことは許ゆるされない。中国ちゅうごくはもう終おわりだ。鄧小平たいらを許ゆるさない」と語かたったという。

事件じけん当時とうじ、鄧小平たいらは「20万まん人にんぐらいの血ちの犠牲ぎせいはかまわない。中国ちゅうごくでは100万まん人にんといえども小ちいさな数かずにすぎない」「中国ちゅうごくに西欧せいおう的てき民主みんしゅ主義しゅぎを持もち込こめば、国内こくないは混乱こんらんし、難民なんみんが周辺しゅうへん地域ちいきに何なん億おく人にんも流出りゅうしゅつするだろう」と述のべたと伝つたえられている。

アメリカの人権じんけん組織そしきである「アジア・ウォッチ」のリサーチ・ディレクターであるロビン・マンローは、9月23日にちの香港ほんこん『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙しに、自分じぶん自身じしんが広場ひろばに最後さいごまで居残いのこり、そして学生がくせいとともに撤退てったいしていった様子ようすについて、 「そこにはパニックを示しめすようなものはなく、なにか虐殺ぎゃくさつが起おこったことを示しめすような微かすかな兆候ちょうこうさえもなかった」 と語かたっている。マンローは広場ひろばではなく他ほかの場所ばしょで起おきた虐殺ぎゃくさつに注目ちゅうもくすべきだと問題もんだい提起ていきしている。

死傷ししょう者しゃ

中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの公式こうしき発表はっぴょうでは、「動乱どうらんで319人にんが死亡しぼう（民間みんかん人じんと軍ぐん、警察けいさつの合計ごうけい）」となっているが、この事件じけんによる死傷ししょう者しゃについては、上記じょうきの中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる報道ほうどう規制きせいにより、客観きゃっかん的てきな確定かくていが不可能ふかのうであり、数すう百ひゃく人にんから数すう万まん人にんに及およぶなど、複数ふくすうの説せつがあり、死者ししゃ数すうは定さだかではない。

ジェームズ・R・リリーは自みずからの著書ちょしょの中なかで、天安門てんあんもん広場ひろばから完全かんぜんにデモ隊たいが放逐ほうちくされた後のちに、人民じんみん解放かいほう軍ぐんの手てによって死体したいが集あつめられ、その場ばで焼却しょうきゃくされたと述のべている。また、約やく300名めいの民主みんしゅ活動かつどう家かがパリに亡命ぼうめいした。

1989年ねん6月がつ4日にちに作成さくせいされ1999年ねん6月がつ1日にちに公開こうかいされた米べい外交がいこう公電こうでんでは、現場げんばに居いた市民しみんが感情かんじょう的てきに怒おこって「天安門てんあんもん広場ひろばで10000人にんが殺ころされた」と主張しゅちょうした事ことを報告ほうこくしている。

中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐんの63式しき装甲そうこう兵員へいいん輸送ゆそう車しゃ

56式しき自動じどう歩ふ槍やりと銃剣じゅうけん（上うえ）

1989年ねん6月がつ5日にちに作成さくせいされ、2017年ねん12月23日にちに機密きみつ解除かいじょされた英国えいこく政府せいふの公文書こうぶんしょでは、「最低さいていに見積みつもっても一般いっぱん市民しみんの死者ししゃは10000人にん以上いじょうが中国ちゅうごく軍ぐんにより殺害さつがいされた。」と報告ほうこくしている。公文書こうぶんしょは当時とうじの駐ちゅう中国ちゅうごくアラン・ドナルド英えい大使たいし(en:Alan Donald)が6月がつ5日にちに本国ほんごく政府せいふへ送おくった外交がいこう機密きみつ電報でんぽうである。

ドナルド大使たいしによると、「中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく国務こくむ院いん委員いいんを務つとめる親したしい友人ゆうじんから聞きいた」情報じょうほうであり、この情報じょうほう源げんとされる人物じんぶつを事件じけん以前いぜんから信頼しんらいしており、「事実じじつと憶測おくそくと噂うわさを慎重しんちょうに区別くべつ」して書かいたという。文書ぶんしょには「鎮圧ちんあつにあたったのは山西さんせい省しょうを主力しゅりょくとする第だい27軍ぐん」「1時じ間あいだの退去たいきょ期限きげんを通告つうこくしたが、実際じっさいには5分ふん後ごにはAPC（装甲そうこう兵員へいいん輸送ゆそう車しゃ）による攻撃こうげきが始はじまりひき殺ころされ、大だい多数たすうは広場ひろばから離はなれる途中とちゅうで犠牲ぎせいに遭あった」「学生がくせいたちは腕うでを組くんで対抗たいこうしようとしたが、兵士へいしたちを含ふくめてひき殺ころされてしまった。そしてAPCは何なん度ども何なん度ども遺体いたいをひき、『パイ』を作つくり、ブルドーザーが遺体いたいを集あつめていった。遺体いたいは焼却しょうきゃくされ、ホースで排水溝はいすいこうに流ながされていった」「負傷ふしょうした女子じょし学生がくせい4人にんが命乞いのちごいをしたが、中国ちゅうごく軍ぐんに銃剣じゅうけんで刺さされてしまった」と記載きさいされている。フランス人じんの中国ちゅうごく研究けんきゅう家かジャンピエール・カベスタンも、最近さいきん機密きみつ解除かいじょされた米国べいこくの文書ぶんしょも類似るいじした死者ししゃ数すうを割わり出だしており、当時とうじの英えい大使たいしによるこの推定すいてい値ちには信憑しんぴょう性せいがあると述のべている。しかし、中国ちゅうごく系けい英字えいじメディアサイト"SupChina"の編集へんしゅう者しゃアンソニー・タオ(Anthony Yixing Tao)は、2017年ねん12月に自社じしゃサイトの記事きじにおいて「10000人にんという数字すうじは匿名とくめいの、しかも米国べいこく側がわの発表はっぴょうした情報じょうほうだけが根拠こんきょであって信用しんよう出来できない」と反論はんろんを述のべている。

クレア・バーリンスキーは、ソ連それんの公文書こうぶんしょに収おさめられているソ連それん共産党きょうさんとう政治せいじ局きょくが受うけ取とった情報じょうほう報告ほうこくでは3000人にんの抗議こうぎ者しゃが殺ころされたと見積みつもられていると述のべている。

1989年ねん6月がつ22日にちに作成さくせいされ1999年ねん6月がつ1日にちに公開こうかいされた米べい外交がいこう公電こうでんは、それまでの混乱こんらんした情報じょうほうを整理せいりする目的もくてきで時とき系列けいれつで記述きじゅつされており、銃撃じゅうげきの主おもな被害ひがいは従来じゅうらいの報告ほうこくとは違ちがって広場ひろばではなく広場ひろばに続つづく道路どうろで発生はっせいしたとしている。死亡しぼう者しゃ数すうは当初とうしょの予測よそくであった3000人にんを下回したまわる可能かのう性せいが高たかく、中国ちゅうごく赤十字せきじゅうじの発表はっぴょうである死者ししゃ2600人にんが妥当だとうな数字すうじとしている。ただし、当時とうじの天安門てんあんもん事件じけんに関かんする報道ほうどうでピューリッツァー賞しょうを受賞じゅしょうしたニコラス・クリストフによれば、2600という数字すうじは行方ゆくえ不明ふめいになった学生がくせいが2600人にん居いるという噂うわさが死亡しぼうした学生がくせいの数かずだと勘違かんちがいされて出来できた根拠こんきょの無ない数字すうじであり、中国ちゅうごく紅べに十じゅう字じ会かいは2600という数字すうじを即座そくざに撤回てっかいしているとされている。

1989年ねん7月がつに作成さくせいされ2011年ねん6月がつに公開こうかいされた米べい外交がいこう公電こうでんによれば、広場ひろばに進行しんこうした兵士へいしの大だい部分ぶぶんは銃じゅうではなく暴徒ぼうと鎮圧ちんあつ用ようの木きの棒ぼうの様ような物もので武装ぶそうしており、群衆ぐんしゅうに向むけた大量たいりょう発砲はっぽうは見みられなかったとされる。現場げんばに居いたチリの外交がいこう官かんは広場ひろばで大だい規模きぼな銃撃じゅうげきは無なかったと証言しょうげんしている。これは兵士へいしが非ひ武装ぶそうの市民しみんがいる広場ひろばに突撃とつげきしたという複数ふくすうの記者きしゃの証言しょうげんと矛盾むじゅんするし、死者ししゃの数かずは1000人にんを遥はるかに下回したまわる事ことを示唆しさしている。

1989年ねん7月がつ12日にちに作成さくせいされ2011年ねん8月がつ30日にちに公開こうかいされた米べい外交がいこう公電こうでんによれば、現場げんばに居いたチリの外交がいこう官かんであるカルロス・ガロの証言しょうげんでは広場ひろばに入はいった兵士へいしは棍棒こんぼうで武装ぶそうしており大だい規模きぼな発砲はっぽうは起おきなかったとしている。広場ひろばにゆっくりと入はいって行いった装甲車そうこうしゃが広場ひろばのテントを踏ふみつける頃ころにはテントは既すでに無人ぶにんだった様ように見みえた。学生がくせいが撤収てっしゅうした後のちの広場ひろばに人民じんみん解放かいほう軍ぐんのヘリコプターが降おりてきて大おおきなプラスチックの袋ふくろを上うえに引ひっ張ぱり上あげていたが、彼かれはその中身なかみが負傷ふしょう者しゃや遺体いたいではなくゴミだと思おもった。彼かれは大だい規模きぼな銃撃じゅうげきを目撃もくげきしなかったが、広場ひろばに負傷ふしょう者しゃが大勢おおぜい集あつまって来きた事ことから人民じんみん解放かいほう軍ぐんによって数すう百ひゃく人にんが殺害さつがいされた事ことに疑うたがいは無ないと判断はんだんした。

1990年ねん3月がつ26日にちに作成さくせいされウィキリークスが2011年ねん8月がつに公開こうかいした米べい外交がいこう公電こうでんには、現場げんばで鎮圧ちんあつにあたった人民じんみん解放かいほう軍ぐん38軍ぐんに所属しょぞくした兵士へいしの母親ははおやとされる人物じんぶつによる匿名とくめいでの証言しょうげんが記載きさいされている。彼女かのじょの証言しょうげんによれば、38軍ぐんは当初とうしょは空中くうちゅうに威嚇いかく射撃しゃげきをしていたが、学生がくせいの襲撃しゅうげきを受うけて仲間なかまの兵士へいしが数すう百ひゃく人にんも行方ゆくえ不明ふめいになったか、或あるいはおそらく殺害さつがいされたという情報じょうほうが部隊ぶたいに伝つたわると38軍ぐんの兵士へいし達たちは興奮こうふんした。その状況じょうきょうで出だされた発砲はっぽう命令めいれいに従したがい群衆ぐんしゅうに向むけ機銃きじゅう掃射そうしゃを行おこない、1000人にん以上いじょうの市民しみんが殺害さつがいされた。兵士へいしは死体したいにガソリンを掛かけて燃もやし、その死体したいをヘリコプターで運はこび去さったという。一連いちれんの証言しょうげんについて公電こうでん作成さくせい者しゃは文末ぶんまつで、「彼女かのじょの証言しょうげんが伝聞でんぶんとは思おもわないが、時間じかんが経過けいかしており相当そうとうな誇張こちょうが含ふくまれる」「我々われわれには目撃もくげき情報じょうほうが少すくなく誇張こちょうされた天安門てんあんもんの情報じょうほうが循環じゅんかんしている」とコメントしている。

2019年ねん5月がつ29日にち、当時とうじ在ざい中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく日本国にっぽんこく大使館たいしかんにて情報じょうほう収集しゅうしゅうを統括とうかつしていた笠原かさはら直樹なおき1等とう陸りく佐たすく（防衛ぼうえい駐ちゅう在官ざいかん） による詳細しょうさいなメモが残のこっていたことが分わかった。それによると、死傷ししょう者しゃ数すうは不明ふめいであるが、「実弾じつだん発射はっしゃはほぼ間違まちがいない」、「解放かいほう軍ぐんによる射撃しゃげきにて市民しみんが逃にげ出だす」、「戦車せんしゃが射撃しゃげきしながら天安門てんあんもん広場ひろばに突入とつにゅうし、広場ひろばにいた学生がくせいを一掃いっそう」など書かかれており、血ちまみれで倒たおれる女性じょせいの姿すがた、APC（装甲そうこう兵員へいいん輸送ゆそう車しゃ）にてひき殺ころされたり、一斉いっせい発砲はっぽうする兵士へいしなど当時とうじの流血りゅうけつの北京ぺきんの状況じょうきょうが判明はんめいした。

中国ちゅうごく出身しゅっしんの政治せいじ学者がくしゃである朱しゅ建たて栄さかえは、天安門てんあんもん事件じけんは人民じんみん解放かいほう軍ぐんの出動しゅつどう途中とちゅうに起おこった発砲はっぽう事件じけんに過すぎず、虐殺ぎゃくさつはなかったと主張しゅちょうしている。また、日本にっぽんの歴史れきし学者がくしゃである村田むらた忠ただし禧も「実際じっさいには89年ねん6月がつの天安門てんあんもん広場ひろばでは『残虐ざんぎゃくな殺戮さつりく』とか『虐殺ぎゃくさつ』と称しょうすべき事態じたいは発生はっせいしなかった」「89年ねんの中国ちゅうごくの学生がくせい運動うんどうを一いち面めん的てきに美化びかすることは問題もんだいである。そもそも自分じぶんたちの要求ようきゅうを実現じつげんさせるために『ハンスト』という、生命せいめいを武器ぶきにして相手あいてに譲歩じょうほを迫せまる方法ほうほうは、とても民主みんしゅ的てき手続てつづきを踏ふんだものではない。生命せいめいを武器ぶきに相手あいてに自分じぶんたちの条件じょうけんを飲のませる方法ほうほうであって、一種いっしゅの脅迫きょうはくである」「文革ぶんかく期きにも行おこなわれた極左きょくさ行動こうどうに他たならない。それを『平和へいわ的てき』『理性りせい的てき』な行動こうどうであった、と持もち上あげるのは、あまりに『お人好ひとよし』な評価ひょうかといえる」と主張しゅちょうしている。また、大西おおにし広ひろは天安門てんあんもん事件じけんにおける中国ちゅうごく政府せいふの対応たいおうを「現在げんざいわれわれが考かんがえ直なおさなければならないことは、鄧小平こだいらの決断けつだんによるあの弾圧だんあつがなければ現在げんざいの中国ちゅうごくの経済けいざい発展はってんはない、というおそらく厳然げんぜんたる事実じじつである。……あのときの鄧小平こだいらの決断けつだんは『冷酷れいこく』ではあっても正ただしいものであった。そして、このことはまさに『この国くにに最終さいしゅう的てきな責任せきにんをもつ』ということが鄧小平たいらにはできて、われわれにはできなかったということを示しめしている」と礼賛らいさんする発言はつげんを行おこなっている。

国内こくないにおける反応はんのう

批判ひはん

事件じけん後ご、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによって民主みんしゅ化か活動かつどうの中心ちゅうしん的てき存在そんざいの1人ひとりと目めされた王おう丹まことなどの「反はん体制たいせい派は」と目めされる人物じんぶつに対たいする一斉いっせい検挙けんきょが行おこなわれた。そのような中なかで、「中国ちゅうごくのサハロフ」と呼よばれる物理ぶつり学者がくしゃの方ほう励之夫妻ふさいがアメリカ大使館あめりかたいしかんに駆かけ込こみ、政治せいじ亡命ぼうめいを申請しんせいした（その後ご亡命ぼうめい）ほか、ウーアルカイシや柴しば玲れいなどの民主みんしゅ化か活動かつどうの中心ちゅうしん人物じんぶつが香港ほんこんなどを経由けいゆして西側にしがわ諸国しょこくへ亡命ぼうめいした。

また、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう首脳しゅのう部ぶの強硬きょうこう派はが密ひそかに行いった自じ国民こくみんの虐殺ぎゃくさつに対たいする批判ひはんが行おこなわれ、批判ひはんビラの配布はいふや、香港ほんこんや中華民国ちゅうかみんこく、アメリカなどの国外こくがいの支援しえん者しゃを経由けいゆした事件じけん時じの隠かくし撮とり写真しゃしんの流出りゅうしゅつが行おこなわれた。

中国ちゅうごく中央ちゅうおう電でん視し台だいのニュース番組ばんぐみ「新聞しんぶん聯れん播」の司会しかい者しゃである薛飛と杜もり憲けんは、喪服もふくをイメージさせる服装ふくそうで6月がつ4日にちの放送ほうそうに臨のぞんだ。訃報ふほうを伝つたえるような速度そくどでニュース原稿げんこうを読よみ、抗議こうぎを表あらわしたという。杜もり憲けんは1992年ねんに中央ちゅうおう電でん視し台だいを退社たいしゃし、2000年ねんから香港ほんこんのフェニックステレビでアナウンサー業ぎょうを再開さいかいさせている。

中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる監視かんし統制とうせい

上記じょうきの様ように、西側にしがわ諸国しょこくだけでなく、東側ひがしがわ諸国しょこくを含ふくむ世界せかい各国かっこくでは、この事件じけんは報道ほうどうされたものの、国内こくないにおいては、事件じけん後ごには、平常へいじょう時じにも増まして情報じょうほう統制とうせいが強化きょうかされたため、事件じけんに対たいする詳細しょうさいな報道ほうどうはほとんど行おこなわれなくなった。

2024年ねん時点じてんでも、以下いかのような当局とうきょくぐるみでの当とう事件じけんの情報じょうほう操作そうさが行おこなわれている。

• 当とう事件じけんの名称めいしょうや当とう事件じけんの発生はっせい日び「6月がつ4日にち」、画像がぞうなどに対たいする人工じんこう知能ちのうや機械きかい学習がくしゅうの声紋せいもん・画像がぞう認識にんしき技術ぎじゅつを利用りようしたグレート・ファイアウォールによる自動じどうネット検閲けんえつ。これにより、香港ほんこんや澳門まかおを除のぞく中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく内ないの検索けんさくエンジン（Yahoo!やGoogle、MSNなど）では、「六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん」などの特定とくていのキーワードで検索けんさくすると、接続せつぞく不可能ふかのうになる。このことから、当とう事件じけんを意味いみする「5月がつ35日にち（5月がつ31日にち＋4日にち）」、VIIV（ローマ数字すうじの64）や、「8²（=64）」などの隠語いんごを生うんだ。また、Twitterやhotmail、ウィキペディアも接続せつぞく遮断しゃだん された。
• インターネット配信はいしんや国内こくない向むけの衛星えいせい放送ほうそうなどで海外かいがいメディアが天安門てんあんもん事件じけんを報ほうじると突如とつじょ放送ほうそうを停止ていしさせる。
• 外国がいこく人じんカメラマンが6月がつ4日にち前後ぜんこうに天安門てんあんもん広場ひろばを撮影さつえいしようとすると、目めの前まえで傘かさを開ひらいて天安門てんあんもんを写うつさせないようにする。
• 当とう事件じけんにおける学生がくせい運動うんどうの主要しゅようメンバーであった劉りゅう暁あきら波なみのノーベル平和へいわ賞しょう受賞じゅしょうの際さい、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう政府せいふは2010年ねん10月がつ下旬げじゅん以降いこうに、ノルウェーにある欧州おうしゅう各国かっこくの大使館たいしかんに対たいし、12月10日にちにオスロ市庁舎しちょうしゃにて行おこなわれるノーベル平和へいわ賞しょう授賞じゅしょう式しきの式典しきてんに参加さんかしないよう求もとめる書簡しょかんを送おくった。書簡しょかんでは式典しきてん当日とうじつに劉りゅう暁あきら波なみを支持しじする声明せいめいを発表はっぴょうしないようにも求もとめた。また、北京ぺきんにおいても数すうカ国かこくの外交がいこう官かんに対たいして、同様どうようの要請ようせいを行おこなった。
• 事件じけん日びの6月がつ4日にち前後ぜんこうには検閲けんえつが強化きょうかされ、事件じけんを想起そうきさせる画像がぞうや言動げんどうも削除さくじょされる。特とくに戦車せんしゃは事件じけんを想起そうきさせることから新規しんきの投稿とうこう画像がぞうが削除さくじょされ、ビエネッタの形かたちが戦車せんしゃに似にているという理由りゆうでインフルエンサー李り佳けい琦（Austin）による配信はいしんが遮断しゃだんされた事例じれいもある。

そのため、本件ほんけん以降いこうに学校がっこう教育きょういくを受うけた世代せだいは、事実じじつをほとんど知しらないとも報ほうじられている、しかしながら、留学りゅうがくや過剰かじょうな検閲けんえつによりかえって若者わかものが天安門てんあんもん事件じけんを知しったり、政府せいふ当局とうきょくによる隠蔽いんぺいや弾圧だんあつ体質たいしつに気きづくなどしているケースもある。なお、日本にっぽんではその厳きびしい検閲けんえつを逆手さかてに取とり、天安門てんあんもん事件じけん関連かんれんの言葉ことばを加くわえることで、自作じさくした作品さくひんの中国ちゅうごくからの無断むだん転載てんさい対策たいさくを行おこなう者ものもいる。

当とう事件じけんの結果けっか、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく国内こくないの民主みんしゅ化か運動うんどうは一気いっきに下火したびとなるが、本件ほんけんで中国共産党ちゅうごくきょうさんとうに失望しつぼうして決別けつべつした活動かつどう家かは多おおく、石平いしだいらを始はじめとした活動かつどう家かが、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく外がいで活動かつどうを続つづけることになる。なお、その後ご石平いしだいらは日本にっぽんに帰化きかしている。天安門てんあんもん事件じけん以降いこう、天安門てんあんもん広場ひろばには顔かお認識にんしきが可能かのうな大量たいりょうの監視かんしカメラが設置せっちされ、活動かつどう家かは音声おんせい認識にんしきによる盗聴とうちょうやDNA収集しゅうしゅうで徹底的てっていてきに追跡ついせきと特定とくていを行おこなわれている。

最終さいしゅう的てきに事態じたいを掌握しょうあくした強硬きょうこう派はと、その一派いっぱがその後ご現在げんざいに至いたるまで実権じっけんを握にぎり続つづけているために、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによるこの事件じけんに対たいする反省はんせいや謝罪しゃざいの姿勢しせいの表明ひょうめいだけでなく、この事件じけんに対たいする検証けんしょう報道ほうどうは、これまで一切いっさい行おこなわれておらず、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう政府せいふ最大さいだいのタブーの一ひとつでもある 。中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく国防こくぼう部ぶ部長ぶちょうの遅おそ浩ひろし田たは、1996年ねんにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくを訪おとずれた際さいに、「天安門てんあんもん広場ひろばでは1人ひとりも殺ころされなかった」と発言はつげんして、世界せかい各国かっこくから反発はんぱつを受うけた。事件じけんから30周年しゅうねんを迎むかえた2019年ねん6月がつには国営こくえいの環たまき球だま時報じほうは「ワクチンとして将来しょうらいどんな政治せいじ的てき動揺どうようにも対処たいしょできる免疫めんえき力りょくを中国ちゅうごくに与あたえた」と事件じけんに言及げんきゅうする異例いれいの論説ろんせつを発表はっぴょうし、中国ちゅうごく国防こくぼう部ぶ部長ぶちょうの魏たかし鳳おおとり和かずも訪問ほうもん先さきのシンガポールで「騒乱そうらんを治おさめるために正ただしい対応たいおうをした。中国ちゅうごくは安定あんていと発展はってんを享受きょうじゅしている」と異例いれいの言及げんきゅうを行おこなった。

2021年ねん発刊はっかんの『党とう史し』は、天安門てんあんもん事件じけんの犠牲ぎせい者しゃには言及げんきゅうせず、「制裁せいさいした各国かっこくに闘争とうそうを挑いどみ、日本にっぽんに率先そっせんして制裁せいさいを取とり消けさせた」と記しるしており、『読売新聞よみうりしんぶん』は「歴史れきしを自みずからに都合つごう良よく解釈かいしゃくする姿勢しせいの表あらわれと言いえる」と評ひょうしている。

世界せかいの反応はんのう

イギリス領りょう香港ほんこんの反応はんのう

香港ほんこんで毎年まいとし行おこなわれるヴィクトリアパークのキャンドル集会しゅうかい（2015年ねんの写真しゃしん）

この事件じけんに対たいして最もっとも早はやく反応はんのうしたのは、その住人じゅうにんの大半たいはんが華僑かきょうで、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくへの「返還へんかん」を8年ねん後ごに控ひかえたイギリス領りょう香港ほんこんである。このような非ひ民主みんしゅ主義しゅぎ的てきな行為こういをする中国共産党ちゅうごくきょうさんとうに対たいして、抗議こうぎデモが起おこった。

1989年ねん6月がつ5日にちには、香港ほんこんのほぼすべての学校がっこうや企業きぎょう、政府せいふ機関きかんが公式こうしきに譴責けんせき・哀悼あいとうを行おこなっている。たとえば学校がっこうでは、小学校しょうがっこうなども含ふくめ校長こうちょうや教師きょうしが泣なきじゃくりながら声明せいめいを読よみ上あげ、学生がくせいを率ひきいて黙祷もくとうをしている。テレビやラジオ、新聞しんぶん、雑誌ざっしなどのメディアもこれを報道ほうどうしている。おそらく中国共産党ちゅうごくきょうさんとうに打撃だげきを与あたえるためか、6月5日にちの早朝そうちょうに、香港ほんこん全土ぜんどにある中国銀行ちゅうごくぎんこうグループの各かく銀行ぎんこうから、一いち日にちのうちに50億おく香港ほんこんドルが引ひき出だされている。また後述こうじゅつのように香港ほんこん市民しみんに海外かいがい移住いじゅう者しゃが増ふえ、香港ほんこん企業きぎょうも海外かいがいに本社ほんしゃを移転いてんする動うごきも出でた。

同日どうじつに香港ほんこんの議会ぎかいが、武力ぶりょく鎮圧ちんあつに対たいする譴責けんせきを全会ぜんかい一致いっちで採択さいたく。その宣言せんげんは中国ちゅうごくへの「返還へんかん」後ごの今いまでも撤回てっかいしておらず有効ゆうこうであり、香港ほんこんと中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの基本きほん的てきな政治せいじ思想しそうの差さを示しめしている。なお、事件じけんを契機けいきに、香港ほんこん市民しみん支援しえん愛国あいこく民主みんしゅ運動うんどう連合れんごう会かい（支ささえ連れん会かい）が結成けっせいされ、今いまなお中華ちゅうか圏けん最大さいだいの民主みんしゅ化か運動うんどう組織そしきとして活動かつどうしており、1997年ねんに香港ほんこんがイギリスより中国ちゅうごくへ返還へんかん後ごも、同どう組織そしきによって事件じけんで犠牲ぎせいになった学生がくせいらを悼いたむ集会しゅうかいが、毎年まいとし香港ほんこん島とうのヴィクトリアパークで開催かいさい、2007年ねん6月がつ4日にちには5万まん5千せん人にんの参加さんか者しゃを集あつめた。2012年ねん6月がつ4日にち、約やく18万まん人にんの参加さんか者しゃを集あつめて歴年れきねんの記録きろくを破やぶった。

また、この事件じけんを受うけて、香港ほんこん人じんのイギリス・カナダ・オーストラリアなどのイギリス連邦れんぽう諸国しょこくや、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなどへの移住いじゅうブームに火ひがついた。その後ご、宗主そうしゅ国こくのイギリスと中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの間あいだで結むすばれた「返還へんかん後ご50年間ねんかんは現状げんじょう維持いじ」という一いち国こく二に制度せいどにより、政治せいじ的てきに安定あんていしていた香港ほんこんを評価ひょうかして、多おおくの移民いみんが香港ほんこんに戻もどった。

だがこの事件じけんは、1997年ねん以降いこうの香港ほんこん憲法けんぽうにあたる、香港ほんこん基本きほん法ほうの起草きそう委員いいんの多おおくが委員いいんを辞退じたいしたことや、「全国ぜんこく人民じんみん代表だいひょう大会たいかい」の香港ほんこん代表だいひょうが「六ろく四よん事件じけんが香港ほんこんの人々ひとびとの心しんを大おおきく傷きずつけた」と発言はつげんしたことなどが象徴しょうちょうするような、現在げんざいの香港ほんこん人じんの中国共産党ちゅうごくきょうさんとうに対たいする不信ふしん感かんの原点げんてんとも言いわれる。この影響えいきょうで2008年ねんの北京ぺきんオリンピックの聖火せいかリレーでも中国共産党ちゅうごくきょうさんとうへの抗議こうぎ活動かつどうが起おきている。

また事件じけん当日とうじつから6日にちにかけて明報めいほうや新晩報しんばんほうなどの香港ほんこんメディアは情報じょうほうが錯綜さくそうしたことから、「軍ぐん同士どうしの衝突しょうとつが起おきた」、「鄧小平しょうへい氏しの死亡しぼう」などの様々さまざまな未み確認かくにん情報じょうほうを報道ほうどうした。

なお、香港ほんこんでは2020年ねん9月がつの新しん学期がっき以降いこうの高校こうこうの必修ひっしゅう教科書きょうかしょから、天安門てんあんもん事件じけんなど中国共産党ちゅうごくきょうさんとうにとって都合つごうの悪わるい項目こうもくが削除さくじょされることになった。これは一いち国こく二に制度せいどに基もとづき、自由じゆうと民主みんしゅ主義しゅぎが根付ねついている香港ほんこんの歴史れきしと文化ぶんかを否定ひていすることで、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの価値かち観かんを植うえ付つけて香港ほんこんの若者わかものが反はん政府せいふ活動かつどうに傾かたむく土壌どじょうを排除はいじょする思惑おもわくがあるとみられる。

中華民国ちゅうかみんこく（台湾たいわん）の反応はんのう

中華民国ちゅうかみんこく総統そうとうの李り登輝とうきは6月がつ4日にちの夜よるに、「中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの非ひ人道じんどう性せいは必かならず歴史れきしに裁さばかれる。中国共産党ちゅうごくきょうさんとうが武力ぶりょくを行使こうしして民主みんしゅ化か運動うんどうを弾圧だんあつしたことに抗議こうぎするため、私わたしは中華民国ちゅうかみんこく政府せいふと人民じんみんを代表だいひょうし、最もっとも悲痛ひつうな思おもいで、自由じゆうを愛あいし、人権じんけんを重視じゅうしする世界中せかいじゅうのすべての国くにと人々ひとびとに、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの残虐ざんぎゃく行為こういを最もっとも厳きびしい方法ほうほうで非難ひなんし、中国ちゅうごくにいる同胞どうほうにあらゆる支援しえんを提供ていきょうし、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうと完全かんぜんに決別けつべつするよう呼よびかけたい」との声明せいめいを出だした。中華民国ちゅうかみんこく国防こくぼう部ぶは同日どうじつ、「休息きゅうそくを中断ちゅうだんして国防こくぼうに復帰ふっきし、国軍こくぐんの全ぜん将校しょうこうと兵士へいしは戦争せんそう準備じゅんびと派兵はへいに入はいること」を命めいじた。

中華民国ちゅうかみんこく行政ぎょうせい院いんは中国ちゅうごく民主みんしゅ化か運動うんどうを支援しえんするため、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく旅券りょけんを手放てばなした外国がいこく人じん留学生りゅうがくせいや学者がくしゃに対たいして中華民国ちゅうかみんこく旅券りょけんを発給はっきゅうし、授業じゅぎょう料りょうや生活せいかつ費ひを支給しきゅうするなどの4つの特別とくべつ措置そちを発表はっぴょうした。1989年ねん6月がつ7日にち、中華民国ちゅうかみんこく行政ぎょうせい院長いんちょうの李り煥、中国ちゅうごく国民党こくみんとう秘書ひしょ長ちょうの宋そう楚瑜そゆ、中華民国ちゅうかみんこく立法りっぽう委員いいんの李り勝まさる峰ほう、中国人ちゅうごくじん権けん協会きょうかいの杭くい立りつ武たけしらが台北たいぺいの国立こくりつ国父こくふ紀き念ねん館かん前まえで追悼ついとうの意いを表あらわした。

野党やとう民主進歩党みんしゅしんぽとうの林はやし義雄よしおらが、学生がくせいによる中国ちゅうごく民主みんしゅ化か運動うんどうを支援しえんし、今年ことしの選挙せんきょに向むけて党勢とうせいを高たかめるため、300時じ間あいだのハンガー・ストライキを開始かいしした。 台湾たいわんのレコード会社かいしゃ4社しゃ（UFOレコード、ロックレコード、コーデン・レコード、ポリグラム）の100人にん以上いじょうの歌手かしゅが『歴史れきし的てき傷口きずぐち』をレコーディングした。

国際こくさい社会しゃかいの反応はんのう

詳細しょうさいは「六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけんに対たいする反応はんのう」を参照さんしょう

民主みんしゅ主義しゅぎ国こくである西側にしがわ諸国しょこくの政府せいふが次々つぎつぎと、事件じけんにおける中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる武力ぶりょく弾圧だんあつについての声明せいめいを発表はっぴょうした。アメリカ、イギリス、フランス、西にしドイツを含ふくむ各国かっこくは、武器ぶきを持もたぬ市民しみんを手当てあてたり次第しだいに大だい虐殺ぎゃくさつした蛮行ばんこうに対たいして譴責けんせきあるいは抗議こうぎを発表はっぴょうし、G7による対たい中ちゅう首脳しゅのう会議かいぎの停止ていし、武器ぶき輸出ゆしゅつの禁止きんし、世界銀行せかいぎんこうによる中国ちゅうごくへの融資ゆうしの停止ていしなどの外交がいこう制裁せいさいを実施じっしした。

1989年ねん6月がつ4日にちの武力ぶりょく制圧せいあつ後ごの国内こくない情勢じょうせいが安定あんてい的てきでないことから、日本にっぽんをはじめとした西側にしがわの外国がいこく企業きぎょうが一時いちじ的てきに中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくから社員しゃいんを引ひき上あげる事態じたいに至いたる。事件じけん後ご、日本にっぽんでは外務がいむ報道ほうどう官かん談話だんわや官房かんぼう長官ちょうかん談話だんわを発表はっぴょうして、この流血りゅうけつ事件じけんに対たいする事態じたいの悪化あっか防止ぼうしを中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく政府せいふに求もとめた。加くわえて6月がつ20日はつかにODAによる対たい中ちゅう経済けいざい援助えんじょの凍結とうけつを発表はっぴょうし、翌よく1990年ねんから予定よていされる「第だい3次じ円えん借款しゃっかん」並ならびに「中日ちゅうにち友好ゆうこう環境かんきょう保全ほぜんセンターの建設けんせつ」など一部いちぶの対たい中ちゅうODAを保留ほりゅうとする見直みなおしが行おこなわれた。

同年どうねん7月がつの第だい15回かい先進せんしん国こく首脳しゅのう会議かいぎ（アルシュ・サミット）では、議長ぎちょう国こくフランスをはじめとした西側にしがわ諸国しょこくが残虐ざんぎゃく行為こういを厳きびしく非難ひなんした。日本にっぽんの宇野うの宗佑そうすけ内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは対たい中ちゅう円えん借款しゃっかんを凍結とうけつする一方いっぽうで、外務がいむ大臣だいじんの三塚みつづか博ひろしと共ともに「中国ちゅうごくの孤立こりつはさせない」とサミットで主張しゅちょう して他たの西側にしがわ諸国しょこくと距離きょりを置おき、サミット前まえにも対たい中ちゅう制裁せいさい反対はんたい派はの中曽根なかそね康弘やすひろ元もと総理そうり、鈴木すずき善幸ぜんこう元もと総理そうり、竹下たけした登のぼる前ぜん総理そうりと会談かいだんした。日本にっぽんが中国ちゅうごく孤立こりつ化かに強つよく反対はんたいした背景はいけいには対たい中ちゅう貿易ぼうえきを重視じゅうししている経済けいざい界かいの要請ようせいやサミット直後ちょくごに第だい15回かい参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょが控ひかえているにもかかわらず、当時とうじの宇野うの内閣ないかくは総理そうりの女性じょせいスキャンダル発覚はっかくで窮地きゅうちに陥おちいっており、サミットを政権せいけん浮揚ふように利用りようしたい首相しゅしょう官邸かんていの卑劣ひれつかつ軽率けいそつ極きわまりない思惑おもわくもあったとされる。実際じっさいに宇野うのは対たい中ちゅう非難ひなん声明せいめいの素案そあんに記述きじゅつされていた「中国ちゅうごくにおける野蛮やばんな鎮圧ちんあつ」に難色なんしょくを示しめし、その結果けっか「激はげしい抑圧よくあつ」に修正しゅうせいされ、「中国ちゅうごく当局とうきょくが孤立こりつ化かを避さけ、協力きょうりょく関係かんけいへの復帰ふっきをもたらす条件じょうけんをつくり出だすよう期待きたいする」との一文いちぶんも加筆かひつされたことが後年こうねん（2020年ねん）の外務省がいむしょう外交がいこう文書ぶんしょの公開こうかいにより明あきらかになっている。総理そうり退任たいにん後ごの1990年ねん5月がつ7日にちに宇野うのが訪中ほうちゅうした際さいにも中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの江沢民こうたくみんから、このサミットでの対応たいおうに感謝かんしゃされている。

1989年ねん7月がつ21日にち、アメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領だいとうりょうは鄧小平ひらたに送おくった書簡しょかんで「親愛しんあいなる鄧小平しょうへい殿どの。先日せんじつのサミットの先進せんしん国こく首脳しゅのう会議かいぎの共同きょうどう宣言せんげんの草案そうあんには中国ちゅうごくを過度かどに非難ひなんする文言もんごんがありましたが、アメリカと日本にっぽんが取とり除のぞきました。米べい議会ぎかいは中国ちゅうごくとの経済けいざい関係かんけいを断たち切きることを求もとめていますが、私わたしは波風なみかぜを立たてないよう全力ぜんりょくを尽つくします。今いまは厳きびしい時期じきですが米べい中ちゅうは世界せかいの平和へいわと両国りょうこくの繁栄はんえいの為ため共ともに前進ぜんしんしましょう」と述のべていた。

ポーランドのヴロツワフに建立こんりゅうされた慰霊いれい碑ひ

2008年ねんにワシントンD.C.で天安門てんあんもん事件じけんの19周年しゅうねんを記念きねんして行おこなわれた写真しゃしん展てん

1990年ねん7月がつの第だい16回かい先進せんしん国こく首脳しゅのう会議かいぎでは、日本にっぽんの海部かいふ俊樹としき総理そうりが対たい中ちゅう円えん借款しゃっかんの再開さいかいに言及げんきゅう、国内こくない・西側にしがわ諸国しょこく共どもに多様たような議論ぎろんがある中なかで、西側にしがわの現職げんしょく政府せいふ首脳しゅのうとして事件じけん後ご初はじめて同年どうねん8月がつに訪中ほうちゅうした。また、1992年ねん8月がつに中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく政府せいふの要請ようせいを受うけ、10月に宮沢みやざわ内閣ないかくが「天皇てんのう皇后こうごう両りょう陛下へいかの中国ちゅうごく御ご訪問ほうもん」を閣議かくぎ決定けってい、同月どうげつに天皇てんのう皇后こうごう夫妻ふさいが中国ちゅうごくを訪問ほうもんし、西側にしがわ各国かっこくで国際こくさいニュースとなる。

天安門てんあんもんに集あつまる一般いっぱん市民しみんを最初さいしょは非難ひなんしていたシンガポールのリー・クアンユーは、武器ぶきを持もたない一般いっぱん市民しみんの騒動そうどうに対たいしては最低限さいていげんの治安ちあん目的もくてきの対応たいおうを期待きたいしていたため、「今回こんかいの中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの対応たいおうに衝撃しょうげきを受うけるとともに悲かなしみを受うけた」とニューヨーク・タイムズ紙しのインタビューに応こたえた。

1997年ねんに江沢民こうたくみんの訪米ほうべいが実現じつげんし、1998年ねん6月がつには民主党みんしゅとうのビル・クリントン大統領だいとうりょうが訪中ほうちゅう。米国べいこくをはじめとする各国かっこくも時期じきをおいて中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくとの外交がいこう関係かんけいの回復かいふくを行おこなっていった。しかし、この事件じけんが中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる一いち党とう独裁どくさいとその異常いじょう性せいを示しめす例れいであるとして、その後ごの西側にしがわ諸国しょこくを中心ちゅうしんとする諸しょ外国がいこくにおける同国どうこくの評価ひょうかを下さげる、大おおきな原因げんいんの1つとなった。

2007年ねん6月がつ1日にち、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国務省こくむしょう副ふく報道ほうどう官かんのトム・ケーシーが、「民主みんしゅ化か運動うんどう（六ろく四よん天安門てんあんもん事件じけん）に参加さんかした」ことを理由りゆうに現在げんざいも身柄みがらを拘束こうそくされている人々ひとびとを釈放しゃくほうし、併あわせて事件じけんの再さい調査ちょうさを行おこなうように中国共産党ちゅうごくきょうさんとう政府せいふに要請ようせいした。また、2009年ねん6月がつ3日にちにアメリカのヒラリー・クリントン国務こくむ長官ちょうかんは、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう政府せいふに「過去かこの事件じけんを検証けんしょうし、死者ししゃや行方ゆくえ不明ふめい者しゃについての報告ほうこくを行おこなうように」と要求ようきゅうし、事件じけんの検証けんしょうや拘束こうそく中ちゅうの人権じんけん活動かつどう家かを釈放しゃくほうするよう求もとめた。

2019年ねん5月がつ30日にち、アメリカ国務省こくむしょうのオルタガス報道ほうどう官かんは記者きしゃ会見かいけんにて、間まもなく30周年しゅうねんを迎むかえる中国ちゅうごくの天安門てんあんもん事件じけんについて「徹底てっていした虐殺ぎゃくさつ行為こういだった。罪つみのない命いのちが失うしなわれた痛いたましい事実じじつを忘わすれない。抗議こうぎ参加さんか者しゃや遺族いぞくらへの弾圧だんあつがいまだ続つづいている」と批判ひはんした。4日にち、アメリカのマイク・ポンペオ国務こくむ長官ちょうかんも天安門てんあんもん事件じけんを批判ひはんしたこともあわせて、中国ちゅうごく外務省がいむしょうの耿爽報道ほうどう官かんは「先生せんせい気取きどりで民主みんしゅや人権じんけんを掲かかげて他国たこくに内政ないせい干渉かんしょうしているバカな人間にんげんのゴミ山やまの戯言ざれごと」と猛もう反発はんぱつして「中国ちゅうごくは発展はってんした。政府せいふの当時とうじの行動こうどうは完全かんぜんに正ただしかった」と事件じけんを正当せいとう化かした。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくと同おなじ東側ひがしがわ諸国しょこくの東ひがしドイツ、北朝鮮きたちょうせん、チェコスロバキア、キューバ、ルーマニアや友好国ゆうこうこくのパキスタンと多数たすうのアフリカ諸国しょこくが中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる武力ぶりょく弾圧だんあつを支持しじした。例外れいがい的てきに、同おなじ社会しゃかい主義しゅぎ国こくでも領土りょうど問題もんだいなどで中国ちゅうごくと緊張きんちょう関係かんけいにあったベトナムは事件じけんを報道ほうどうするも直接ちょくせつコメントしなかった。フィリピンは事件じけんに遺憾いかんの意いを表明ひょうめいした。

指名しめい手配てはいされた21名めいの中心ちゅうしん人物じんぶつ

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく政府せいふより指名しめい手配てはいされたものは21人にん。うち、亡命ぼうめい生活せいかつを送おくっているのは14人にんいる。

• 王おう丹まこと - 名簿めいぼ第だい1位い
• ウーアルカイシ - 名簿めいぼ第だい2位い
• 劉りゅう剛つよし - 名簿めいぼ第だい3位い、逮捕たいほ、投獄とうごくを経へて米国べいこくに亡命ぼうめい
• 柴しば玲れい
• 周しゅう鋒ほこさき鎖くさり
• 翟偉民みん
• 梁りょう擎暾
• 王おう正ただし雲くも
• 鄭てい旭光きょっこう
• 馬うま少すくな方かた
• 楊涛
• 王おう治おさむ新しん
• 封ふう従したがえ徳とく
• 王おう超ちょう華はな
• 王おう有ゆう才ざい
• 張ちょう志こころざし清きよし
• 張ちょう伯はく笠かさ
• 張ちょう銘めい
• 熊くま煒
• 熊くま焱

劉りゅう暁あきら波はのノーベル平和へいわ賞しょう受賞じゅしょう

2010年ねん10月がつ8日にち、劉りゅう暁あきら波なみのノーベル平和へいわ賞しょう受賞じゅしょうが発表はっぴょうされた。ノルウェー・ノーベル委員いいん会かいは、劉りゅう暁あきら波はの受賞じゅしょう理由りゆうは「中国ちゅうごくにおける基本きほん的てき人権じんけんのために長年ながねん、非ひ暴力ぼうりょく的てきな闘たたかいをしてきた」ことであると発表はっぴょうした。また、劉りゅう暁あきら波はへの授与じゅよの決定けっていは「有罪ゆうざい確定かくてい時じの今年ことし2月がつには不可避ふかひの状況じょうきょうになっていた」こと、「選考せんこうは全会ぜんかい一致いっちであった」ことなどであると発表はっぴょうした。劉りゅう暁あきら波はは、「この受賞じゅしょうは天安門てんあんもん事件じけんで犠牲ぎせいになった人々ひとびとの魂たましいに贈おくられたものだ」と語かたり、涙なみだを流ながしたとされる。

国外こくがいへの影響えいきょう

アフリカのリビアで起おこった2011年ねんの騒乱そうらんでは、カダフィ大佐たいさが「天安門てんあんもん広場ひろばでは、戦車せんしゃによって人々ひとびとが蹂躙じゅうりんされて中国ちゅうごくの統一とういつが保たもたれた。国家こっかの統一とういつのためならどんなこともする」と述のべ、反はん体制たいせい派はに対たいする虐殺ぎゃくさつと民主みんしゅ化かの弾圧だんあつなどを正当せいとう化かした。

それに対たいし、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく外交がいこう部ぶは困惑こんわくするも「リビアができるだけ早はやく社会しゃかいの安定あんていと正常せいじょうな秩序ちつじょを回復かいふくするよう強つよく希望きぼうする」として、カダフィの発言はつげんについては批判ひはんしなかった。なお、当時とうじの中国ちゅうごくは首都しゅとトリポリとカダフィ大佐たいさの故郷こきょうスルトを結むすぶ鉄道てつどうの建設けんせつなどリビアで複数ふくすうの権益けんえきを抱かかえ、内戦ないせんを受うけて軍艦ぐんかんや輸送ゆそう機きなどを派遣はけんして中国人ちゅうごくじん労働ろうどう者しゃ3万まん人にんをリビアから退避たいひさせており、中国ちゅうごく国内こくないではアラブの春はるに影響えいきょうされた中国ちゅうごくジャスミン革命かくめいも起おき、中国ちゅうごく政府せいふにはカダフィ政権せいけんへの武器ぶき供与きょうよ疑惑ぎわくも追及ついきゅうされていた。

2016年ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょう選挙せんきょに出馬しゅつばした共和党きょうわとうのドナルド・トランプ大統領だいとうりょう候補こうほが、天安門てんあんもん事件じけんの弾圧だんあつを肯定こうていするかのような過去かこの発言はつげん をCNNのテレビ討論とうろん会かいで追及ついきゅうを受うけて天安門てんあんもん事件じけんを「暴動ぼうどう」と表現ひょうげんした際さいには「まるで中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの指導しどう者しゃ」「中国共産党ちゅうごくきょうさんとうによる抑圧よくあつに反対はんたいする者ものへの侮辱ぶじょくだ」「アメリカの価値かち観かんの敵てき」であるとして王おう丹まこと、魏ぎ京きょう生せい やウーアルカイシ ら天安門てんあんもん事件じけんに関係かんけいした民主みんしゅ化か運動うんどう家かが抗議こうぎを行おこなっている。

南米なんべいのベネズエラでは、2017年ねんにベネズエラ国家こっか警備けいび隊たいの中国ちゅうごく製せい装甲車そうこうしゃVN-4の前まえに立たってニコラス・マドゥロ独裁どくさい政権せいけんに抗議こうぎする女性じょせいの映像えいぞうが全ぜん世界せかいに流ながれた際さいは天安門てんあんもん事件じけんを想起そうきさせるとして話題わだいになって、「無名むめいの反逆はんぎゃく者しゃ」にあやかって「ラ・ダーマ（あの女性じょせい）」と呼よばれた。

日本にっぽんでは1989年ねんの7月がつに参議院さんぎいん選挙せんきょを控ひかえていたため、当時とうじの日本にっぽん共産党きょうさんとうはこの事件じけんにおいてイメージダウンに繋つながった。選挙せんきょ期間きかん中ちゅうは他た党とうから演説えんぜつにおいて、『資本しほん主義しゅぎか社会しゃかい主義しゅぎか、体制たいせい選択せんたくの勝負しょうぶはついた』といったネガティブ・キャンペーンが行おこなわれ、反共はんきょう攻撃こうげきに利用りようされた。そのため、従来じゅうらい日本にっぽん共産党きょうさんとうを支持しじした有権者ゆうけんしゃが日本にっぽん社会党しゃかいとうや（社会しゃかい、公明こうめい、民社みんしゃ、連合れんごうが推薦すいせんする）連合れんごうの会かいに票ひょうが流ながれてしまい、第だい15回かい参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょでは改選かいせん前まえ8に対たいして改選かいせん後ご5へと議席ぎせき数すうを大幅おおはばに減へらした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 安江やすえ伸夫のぶお. (2019). 天安門てんあんもん事件じけん三さん〇年ねん: 中国ちゅうごく 「人権じんけん・民主みんしゅ・憲政けんせい」 の挫折ざせつ. 放送ほうそうレポート, (279), 56-61.
• 石平いしだいら『中国ちゅうごく大だい逆流ぎゃくりゅう 絶望ぜつぼうの「天安門てんあんもん20年ねん」と戦慄せんりつの未来みらい像ぞう』ベストセラーズ、2009年ねん6月がつ4日にち。ISBN 978-4-584-13162-6。 
• 宗鳳そうほう鳴な『趙ちょう紫むらさき陽ひ 中国共産党ちゅうごくきょうさんとうへの遺言ゆいごんと「軟禁なんきん」15年余ねんよ』高岡たかおか正ただし展てん訳わけ、ビジネス社しゃ、2008年ねん8月がつ5日にち。ISBN 978-4-8284-1441-6。 
• Zhang Liang (January 2001). The Tiananmen Papers. PublicAffairs. ISBN 978-1-58648-122-3 
  • 張ちょう良りょう『天安門てんあんもん文書ぶんしょ』アンドリュー・J・ネイサン・ペリー・リンク監修かんしゅう、山田やまだ耕こう介かい・高岡たかおか正ただし展てん訳わけ、文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、2001年ねん11月。ISBN 4-16-358130-8。 
  • 張ちょう良りょう『中國ちゅうごく六ろく四よん真相しんそう』 上じょう・下した、明鏡めいきょう出版しゅっぱん社しゃ、2010年ねん5月がつ。ISBN 962-8744-36-4。 
• ジェームズ・R・リリー『チャイナハンズ―― 元もと駐ちゅう中ちゅう米国べいこく大使たいしの回想かいそう1916～1991』西倉にしくら一いち喜き 訳わけ、草くさ思おもえ社しゃ、2006年ねん3月がつ10日とおか。ISBN 4-7942-1427-8。 
• 海辺うみべ和彦かずひこ『日本にっぽん大使館たいしかん付づけ駐在ちゅうざい武官ぶかん』徳間書店とくましょてん、1993年ねん。ISBN 978-4198600440。 
• 毎日新聞まいにちしんぶん社会しゃかい部ぶ『ウサギの耳みみとハトの夢ゆめ: 日本にっぽんの核かくと情報じょうほう戦略せんりゃく』リベルタ出版しゅっぱん、1995年ねん。ISBN 9784947637321。 
• 濱本はまもと良一りょういち、信太しだ謙三けんぞう、櫻井さくらい澄夫すみお他た編へん　(2020)証言しょうげん　天安門てんあんもん事件じけんを目撃もくげきした日本人にっぽんじんたち

関連かんれん項目こうもく

「天安門てんあんもんの母はは」の創設そうせつ者しゃの丁子ちょうじ霖。遺影いえいは亡なくなった息子むすこの蔣捷連れん。

• 趙ちょう紫むらさき陽ひ
• 中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐん
  • 中国ちゅうごく人民じんみん解放かいほう軍ぐん陸軍りくぐん
  • 徐じょ勤つとむ先さき
• 中国ちゅうごく民主みんしゅ化か運動うんどう
• 無名むめいの反逆はんぎゃく者しゃ
• ジェフ・ワイドナー - 無名むめいの反逆はんぎゃく者しゃ（Tank Man）を撮影さつえいした AP通信つうしんのカメラマン。
• 蔡衍明あきら
• 劉りゅう暁あきら波なみ
• 水上みずかみ勉つとむ - 事件じけん当時とうじ、北京ぺきん飯店はんてんに宿泊しゅくはくしていて一部始終いちぶしじゅうを目撃もくげきした。著書ちょしょ『心筋梗塞しんきんこうそくの前後ぜんご』に記述きじゅつあり。
• 天安門てんあんもんの母はは(en:Tiananmen Mothers) - 事件じけんで殺害さつがいされた大学生だいがくせいたちの母親ははおやらでつくる遺族いぞく組織そしき。
• 天安門てんあんもん、恋人こいびとたち - 2006年ねんの中国ちゅうごく・フランス合作がっさく映画えいが。
• 香港ほんこん市民しみん支援しえん愛国あいこく民主みんしゅ運動うんどう連合れんごう会かい - 天安門てんあんもん事件じけん以後いごに香港ほんこんで追悼ついとう集会しゅうかいを主催しゅさいしている団体だんたい。
• 大量たいりょう虐殺ぎゃくさつ#大量たいりょう虐殺ぎゃくさつとされる例れい
• 四よん五ご天安門てんあんもん事件じけん（第だい一いち次じ天安門てんあんもん事件じけん）
• 永島ながしま雪夫ゆきお - 人民じんみん解放かいほう軍ぐんに撃うたれた写真しゃしん週刊しゅうかん誌しFOCUSの日本人にっぽんじんカメラマン。
• 天皇てんのう訪中ほうちゅう

外部がいぶリンク

• 天安門てんあんもん事件じけん（執筆しっぴつ者しゃ：中嶋なかじま嶺みね雄つよし） - Yahoo!百科ひゃっか事典じてん at Archive.is (archived 2013-06-25)
• 世界せかい大だい百科ひゃっか事典じてん 第だい2版はん『天安門てんあんもん事件じけん』 - コトバンク
• THE TIANANMEN PAPERS （英語えいご） - 『天安門てんあんもん文書ぶんしょ』の原著げんちょ。
• 関連かんれん写真しゃしん集しゅう （英語えいご） - 残虐ざんぎゃくなものがあるので注意ちゅうい。
• 関連かんれん動画どうが集しゅう - YouTube - 残虐ざんぎゃくなものがあるので注意ちゅうい。
• 天安門てんあんもん事件じけん 武力ぶりょく鎮圧ちんあつ - NHK放送ほうそう史し （日本語にほんご）　
• ＮＨＫスペシャル　天安門てんあんもん・激動げきどうの40年ねん - NHK放送ほうそう史し （日本語にほんご）
• ＮＨＫスペシャル　天安門てんあんもん事件じけん　運命うんめいを決きめた５０日にち - NHK放送ほうそう史し （日本語にほんご）
• 中国ちゅうごく・天安門てんあんもん事件じけん。軍ぐんによる制圧せいあつ、学生がくせいらが撤退てったいするまで広場ひろばに残のこり取材しゅざいを続つづけた記者きしゃの当日とうじつレポートを再さい配信はいしん - YouTube（TBS NEWS） （日本語にほんご）
• ARCHIVE: Tanks roll into Tiananmen Square (4 June 1989) - YouTube - BBC Newsnight （英語えいご）
• BBC新しん闻档案あん节选：六ろく四よん清きよし场报道どう - YouTube - BBC News 中ちゅう文ぶん （中国ちゅうごく語ご）
• How NBC Covered Tiananmen Square In 1989 - YouTube - NBC News Now （英語えいご）
• Archive: Chinese troops fire on protesters in Tiananmen Square - YouTube - BBC News （英語えいご）
• A2 Le Journal 20H : émission du 4 juin 1989 - INA （フランス語ふらんすご）
• 20h Antenne 2 du 04 juin 1989 | Manifestations de la place Tian'anmen | Archive INA - YouTube - INA Actu （フランス語ふらんすご）