転義てんぎ

転義てんぎ法ほう（てんぎほう）あるいは転義てんぎ（てんぎ）とは、修辞しゅうじ技法ぎほうの一種いっしゅで、言葉ことばを文字通もじどおりの使つかい方かたあるいは標準ひょうじゅん的てきな使つかい方かたとは別べつの方法ほうほうで用もちいることを指さす学術がくじゅつ的てきな用語ようご。

日本語にほんごで通常つうじょう「比喩ひゆ」「比喩ひゆ的てき用法ようほう」あるいは「喩たとえ」などと呼よばれているものは、およそこれに相当そうとうする。洒落しゃれも転義てんぎ法ほうに含ふくまれる。

概説がいせつ

転義てんぎ法ほうにはメトニミー、メタファー、アレゴリー、シネクドキなどがある（後述こうじゅつ）。

tropeの意味いみの変遷へんせん

古典こてん修辞しゅうじ学がくでは、転義てんぎ法ほうの意味いみのtropeは、文中ぶんちゅうの言葉ことばの配列はいれつ（パターン）の変更へんこうを伴ともなう修辞しゅうじ技法ぎほうを指さす「scheme」とともに、修辞しゅうじ技法ぎほうを大おおきく二分にぶんするものだった。

現代げんだいではtropeは「言葉ことばのあや」「文ぶん彩いろどり」「修辞しゅうじ」という意味いみにも使つかわれる。これは「en:figure」と同おなじ意味いみで、つまり「修辞しゅうじ技法ぎほう」のことである。

語源ごげん

tropeの語源ごげんは、ギリシャ語ごのτροπή, tropē（転てん、変更へんこう）およびτρέπω, trepō（転てんじること、指示しじすること、変かわること）である。

種類しゅるい

• 直喩ちょくゆ（明あかり喩たとえ） - 日本語にほんごでは「ように」をつけて比喩ひゆであることを表あらわす。例れい：雪ゆきのように白しろい
• 隠喩いんゆ（メタファー） - 類似るいじした特徴とくちょうを持もった異種いしゅのものの並置へいちによる対象たいしょうまたは概念がいねんの説明せつめい。例れい：「勇気ゆうきある人ひと」→「ライオンのハートを持もつ人ひと」
• 換喩かんゆ（メトニミー） - 近接きんせつ性せいによる転義てんぎ法ほう。例れい：「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょうの決定けってい」→「ホワイトハウスの決定けってい」
• 提ひさげ喩たとえ（シネクドキー） - 部分ぶぶんと全体ぜんたい。換喩かんゆおよびメタファーと関連かんれんしたもので、関連かんれんする概念がいねんを持もった何なにかを言及げんきゅうすることによる言葉ことば遊あそびを生うみだす。
• 寓ぐう喩たとえ（アレゴリー） - 全文ぜんぶん、さらには話はなしの全すべてを通とおして一貫いっかんして使つかわれるメタファー。例れい：「国家こっかという船ふねはロビイストの嵐あらしよりさらにひどい嵐あらしを抜ぬけて航海こうかいした」

• 皮肉ひにく（アイロニー） - 標準ひょうじゅん的てきな意味いみの正せい反対はんたいの意味いみ付づけによる転義てんぎ法ほうを生うむ。例れい：「かなりの」→「ちょっとした」
• 異義いぎ復ふく言ごと（アンタナクラシス） - 単一たんいつの言葉ことばをそれぞれ異ことなる意味いみで繰くり返かえす転義てんぎ法ほう。ある種しゅの駄洒落だじゃれで、他たの駄洒落だじゃれ同様どうように、スローガンの中なかでよく見みかける。
• 誇張こちょう法ほう
• 撞着どうちゃく語法ごほう
• 緩なる叙法じょほう
• 迂まが言げん法ほう
• アンチテーゼ（対照たいしょう法ほう、対句ついく法ほう）

詳細しょうさいは「メタファー」を参照さんしょう

関連かんれん用語ようご

• スキーマ(Scheme)
• Trope (literature)
• Tropological reading
• 類推るいすい
• 格言かくげん
• 寓話ぐうわ

関連かんれん文献ぶんけん

• George Lakoff & Mark Johnson著ちょ・渡部わたなべ 昇一しょういち,楠瀬くすのせ 淳三じゅんぞう,下谷しもたに 和幸かずゆき（訳わけ）（1986）『レトリックと人生じんせい』大修館書店たいしゅうかんしょてん.
• 山梨やまなし 正明まさあき （1988）『比喩ひゆと理解りかい』(認知にんち科学かがく選書せんしょ)東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい.
• Janet Martin Soskice著ちょ・小松こまつ 加代子かよこ（訳わけ）（1992）『メタファーと宗教しゅうきょう言語げんご』玉川大学たまがわだいがく出版しゅっぱん部ぶ.
• Wolfgang Harnisch著ちょ・広石ひろいし 望のぞむ（訳わけ）（1993）『イエスのたとえ物語ものがたり―隠喩いんゆ的てきたとえ解釈かいしゃくの試こころみ』日本にっぽん基督教きりすときょう団だん出版しゅっぱん局きょく.ISBN 4818401293.
• 小原おはら 克博かつひろ　（1994）「神かみ理解りかいへの隠喩いんゆ的てきアプローチ」、『基督教きりすときょう研究けんきゅう』第だい56巻かん第だい1号ごう[1].
• 中村なかむら 明あきら （1995）『比喩ひゆ表現ひょうげん辞典じてん』角川書店かどかわしょてん.
• 瀬戸せと 賢一けんいち　（1995）『メタファー思考しこう』講談社こうだんしゃ現代新書げんだいしんしょ.
• 辻つじ 幸夫ゆきお （2001）『ことばの認知にんち科学かがく事典じてん』大修館書店たいしゅうかんしょてん.
• 石川いしかわ　淑子としこ （2001）『ことばと意味いみ―隠喩いんゆ・広告こうこくを通とおして』 リーベル出版しゅっぱん.
• Northrop Frye著ちょ・山形やまがた 和美かずみ（訳わけ）（2001）『力ちからに満みちた言葉ことば―隠喩いんゆとしての文学ぶんがくと聖書せいしょ』叢書そうしょ・ウニベルシタス、法政大学ほうせいだいがく出版しゅっぱん局きょく. ISBN 4588007262.
• 辻つじ 幸夫ゆきお （2002）『認知にんち言語げんご学がくキーワード事典じてん』研究けんきゅう社しゃ.
• 谷口たにぐち 一美かずみ （2003）『認知にんち意味いみ論ろんの新しん展開てんかい―メタファーとメトニミー』研究けんきゅう社しゃ.
• 瀬戸せと 賢一けんいち （2005）『よくわかる比喩ひゆ―ことばの根ねっこをもっと知しろう』研究けんきゅう社しゃ.
• 橋本はしもと 功いさお・八木橋やぎはし宏ひろし勇いさむ（2006）「聖書せいしょのメタファー分析ぶんせき」『人文じんぶん科学かがく論集ろんしゅう』vol.40.[2].
• 楠くすのき見み 孝こう （2007）『メタファー研究けんきゅうの最前線さいぜんせん』 ひつじ書房しょぼう.
• 山梨やまなし 正明まさあき （2007）『比喩ひゆと理解りかい (コレクション認知にんち科学かがく)』東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱん会かい.
• 橋本はしもと 功いさお・八木橋やぎはし宏ひろし勇いさむ（2007）「メタファとメトニミの相互そうご作用さよう : 聖書せいしょを読よみ解とく認知にんちメカニズム」『人文じんぶん科学かがく論集ろんしゅう』vol.41. [3].
• Raymond W. Gibbs Jr.著ちょ・井上いのうえ逸いつ兵へい・辻つじ 幸夫ゆきお（監修かんしゅう）、小野おの 滋しげる・出原いではら 健一けんいち・八木やぎ 健太郎けんたろう（訳わけ）『比喩ひゆと認知にんち： 心しんとことばの認知にんち科学かがく』研究けんきゅう社しゃ. ISBN 4327378135
• 山梨やまなし 正明まさあき(編集へんしゅう) （2008）『概念がいねん化かと意味いみの世界せかい 認知にんち意味いみ論ろんのアプローチ 』研究けんきゅう社しゃ.
• 橋本はしもと 功いさお・八木橋やぎはし宏ひろし勇いさむ（2011）『聖書せいしょと比喩ひゆ : メタファで旧約きゅうやく聖書せいしょの世界せかいを知しる』　慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく出版しゅっぱん会かい. ISBN 978-4766417661.
• 中村なかむら和夫かずお編著へんちょ （2013）『英字えいじ新聞しんぶんにみる現代げんだい英文えいぶん比喩ひゆ集しゅう』 櫂かい歌か（とうかい）書房しょぼう　ISBN 978-4-434-17921-1.

外部がいぶリンク

• 連想れんそう・比喩ひゆ - 脳のう科学かがく辞典じてん