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TRAPPIST-1b

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
TRAPPIST-1b
TRAPPIST-1bの想像図 (2023年3月時点の観測データに基づいたもの)
TRAPPIST-1bの想像そうぞう
(2023ねん3がつ時点じてん観測かんそくデータにもとづいたもの)
星座せいざ みずがめ
分類ぶんるい 太陽系たいようけいがい惑星わくせい
地球ちきゅうがた惑星わくせい
発見はっけん
発見はっけんねん 2016ねん[1]
発見はっけんしゃ Michaël Gillon et al.
TRAPPIST
発見はっけん方法ほうほう トランジットほう[1]
現況げんきょう 確認かくにん
軌道きどう要素ようそ性質せいしつ
軌道きどうちょう半径はんけい (a) 0.01154775 ± 0.000000057 au[2]
(1,727,543 ± 9 km)
はなれしんりつ (e) 0.00622 ± 0.00304[2]
公転こうてん周期しゅうき (P) 1.51087637 ± 0.00000039 [3]
軌道きどう傾斜けいしゃかく (i) 89.728 ± 0.165°[4]
きんてん引数ひきすう (ωおめが) 336.86 ± 34.24°[2]
のぼり交点こうてんけい (Ωおめが) 203.12 ± 34.34°[2]
TRAPPIST-1[1]惑星わくせい
位置いち
もと:J2000.0[5]
あかけい (RA, αあるふぁ)  23h 06m 29.3684052886s[5]
あかぬき (Dec, δでるた) −05° 02′ 29.031690445″[5]
固有こゆう運動うんどう (μみゅー) あかけい: 930.879 ミリびょう/とし[5]
あかぬき: -479.403 ミリびょう/とし[5]
とししゅう視差しさ (πぱい) 80.4512 ± 0.1211ミリびょう[5]
誤差ごさ0.2%)
距離きょり 40.54 ± 0.06 光年こうねん[ちゅう 1]
(12.43 ± 0.02 パーセク[ちゅう 1]
物理ぶつりてき性質せいしつ
直径ちょっけい 14,235.7 km
半径はんけい 1.116+0.014
−0.012
R[4]
表面積ひょうめんせき 6.353×108 km2
体積たいせき 1.506×1012 km3
質量しつりょう 1.374 ± 0.069 M[4]
平均へいきん密度みつど 0.987+0.048
−0.050
ρろー[4]
(5.425+0.265
−0.272
g/cm3[4]
放射ほうしゃたば 4.153+0.161
−0.159
S[4]
表面ひょうめん重力じゅうりょく 1.102 ± 0.052 g[4]
(10.80 ± 0.51 m/s2[4]
脱出だっしゅつ速度そくど 12.400 ± 0.292 km/s[4]
表面ひょうめん温度おんど 503 K(230 ℃)[6]
平衡へいこう温度おんど (Teq) 391.8 ± 5.5 K(118.7 ± 5.5 ℃)[3]
年齢ねんれい 76 ± 22 おくねん[7]
大気たいきあつ 有意ゆうい大気たいき検出けんしゅつされず[6]
カタログでの名称めいしょう
K2-112b
2MASS J23062928-0502285 b
Template (ノート 解説かいせつ■Project

TRAPPIST-1b地球ちきゅうからみずがめ方向ほうこうやく40光年こうねんはなれた位置いちにある赤色あかいろ矮星 TRAPPIST-1公転こうてんしている太陽系たいようけいがい惑星わくせいである。2016ねんTRAPPIST望遠鏡ぼうえんきょうによるトランジットほうでの観測かんそくから発見はっけんされた[8][9]

発見はっけん特徴とくちょう

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おおきさの比較ひかく
地球ちきゅう TRAPPIST-1b
地球 Exoplanet

TRAPPIST-1b は、その外側そとがわ公転こうてんする TRAPPIST-1cTRAPPIST-1d同時どうじに、チリラ・シヤ天文台てんもんだいにある望遠鏡ぼうえんきょうTRAPPISTによるトランジットほう観測かんそくから発見はっけんされた[8]。トランジットほうでは、惑星わくせいしゅほし手前てまえ周期しゅうきてき通過つうか(トランジット)することで発生はっせいするしゅほしのわずかなげんこう検出けんしゅつすることで惑星わくせい発見はっけんする。この研究けんきゅう結果けっかは、科学かがく雑誌ざっしネイチャーの2016ねん5がつごう掲載けいさいされた[8]

しゅほしからの距離きょり地球ちきゅうからつきまでの距離きょりやく4ばいしかないやく 0.0115 auやく173まん km)で、わずか1にちはん公転こうてんしており、TRAPPIST-1けい発見はっけんされている7惑星わくせいのうち、もっと内側うちがわ公転こうてんしている。しゅほし TRAPPIST-1 が木星もくせいクラスという非常ひじょう小型こがたちょう低温ていおん矮星のため[8]大気たいき存在そんざいなどを考慮こうりょしない平衡へいこう温度おんど英語えいごばんやく 392 Kやく 119 )とされていた[3]後述こうじゅつの2017ねんから2018ねんおこなわれたスピッツァー宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう観測かんそく結果けっかもちいた複数ふくすう研究けんきゅうでは、暴走ぼうそう温室おんしつ効果こうかにより TRAPPIST-1b の大気たいきちゅう温度おんどすうひゃく℃からせんすうひゃく℃にもなる可能かのうせいしめされたが[2]2023ねんジェイムズ・ウェッブ宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうによる観測かんそく結果けっかけて表面ひょうめん温度おんどは 503 K(230 ℃)と算出さんしゅつされた[6]

TRAPPIST-1b の物理ぶつりてきパラメーターは発見はっけん幾度いくどとなくおこなわれてきた観測かんそく改良かいりょうつづけられ、2021ねん発表はっぴょうされた研究けんきゅうでは半径はんけい地球ちきゅうの1.116ばい質量しつりょう地球ちきゅうの1.374ばいである岩石がんせきしつ地球ちきゅうがた惑星わくせいとされている[4]質量しつりょうについては当初とうしょ地球ちきゅうの1.38ばい[10]や、0.85ばい[11]などとも推定すいていされていた。2018ねん公表こうひょうされた研究けんきゅうでは、惑星わくせい密度みつど火星かせいよりややおおきい程度ていどしかない 3.98 g/cm3計算けいさんされたことから、最大さいだい質量しつりょうの 5% が揮発きはつせい物質ぶっしつ構成こうせいされている可能かのうせい考慮こうりょされた。しゅほしからけるエネルギーりょう地球ちきゅうよりもかなりおおいことから、この密度みつど説明せつめいするために金星かなぼしのような分厚ぶあつ大気たいき可能かのうせいしめされたが[2]、2021ねん研究けんきゅう密度みつど地球ちきゅうよりややちいさい程度ていどの 5.425 g/cm3上方かみがた修正しゅうせいされた[4]

大気たいき

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同時どうじしゅほし手前てまえ通過つうかする TRAPPIST-1b と TRAPPIST-1c想像そうぞう[12]

2016ねん5月4にち、TRAPPIST-1b はその外側そとがわ公転こうてんする TRAPPIST-1c ととも同時どうじしゅほし手前てまえ通過つうかした。その様子ようすハッブル宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうによって観測かんそくされ、大気たいき成分せいぶん分析ぶんせきおこなわれた。その結果けっか詳細しょうさい大気たいき成分せいぶん判明はんめいしなかったが、すくなくとも巨大きょだいガス惑星わくせいられるような水素すいそなどでたされた膨張ぼうちょうされた大気たいきっていないと判明はんめいした[13][14]表面ひょうめん平衡へいこう温度おんどが 750 - 1000 K(477 - 727 ℃)であると仮定かていして、2018ねん2がつ発表はっぴょうされたスピッツァー宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうによる観測かんそく結果けっかにより、TRAPPIST-1b に大気たいきあつが 101 - 104 bar にもなるあつ水蒸気すいじょうき大気たいきがあれば、当時とうじ算出さんしゅつされた TRAPPIST-1b の密度みつど地球ちきゅうよりもややちいさいことを説明せつめいできると推測すいそくされた。この研究けんきゅうではTRAPPIST-1けい唯一ゆいいつ、TRAPPIST-1b が揮発きはつせい物質ぶっしつたされた大気たいきによる暴走ぼうそう温室おんしつ効果こうかこりうる可能かのうせい排除はいじょされない惑星わくせいであるとされた[2]

2023ねん2がつジェイムズ・ウェッブ宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょう搭載とうさいされている「ちゅう赤外線せきがいせん観測かんそく装置そうち (MIRI)」による TRAPPIST-1b の観測かんそく結果けっか公表こうひょうされた[6]。この観測かんそくは TRAPPIST-1b がしゅほしうしろにかくれる直前ちょくぜん出現しゅつげんした直後ちょくごきるしゅほしひかり変化へんか観測かんそくするしょく測光そっこう (Secondary eclipse photometry) とばれる手法しゅほうおこなわれ、小型こがた岩石がんせきしつ太陽系たいようけいがい惑星わくせいから放出ほうしゅつされるひかり赤外線せきがいせんとして検出けんしゅつすることに成功せいこうしたはじめての事例じれいであると報告ほうこくされた[15]。この研究けんきゅうでは TRAPPIST-1b は可視かしこうあかるくえるほどではないが、赤外線せきがいせんでは以前いぜん予想よそうよりもはるかにあかるくえており、従来じゅうらい算出さんしゅつされていた平衡へいこう温度おんどよりもやく 100 K たかい 503 K(230 ℃)にまで表面ひょうめん加熱かねつされていると判明はんめいした[6][15]表面ひょうめんがこれほど高温こうおんであるとひかり散乱さんらんさせることができるほどのあつ大気たいきつことができないとかんがえられている[16][17]しょく測光そっこう観測かんそくデータを分析ぶんせきした結果けっかでも、TRAPPIST-1b はほぼくろたいのような天体てんたいで、ねつ循環じゅんかんしょうじさせるような大気たいき存在そんざいしないと結論けつろんけられた[6][15]。TRAPPIST-1b に大気たいき存在そんざいしない理由りゆうとしては、まだしゅほしいまよりもあかるかったとかんがえられる形成けいせい直後ちょくごうしなわれたか、またはしゅほしからの強力きょうりょくフレアによって大気たいき消失しょうしつされていったという可能かのうせいもっとたかいとされている[17]。しかし、研究けんきゅうチームをひきいた Thomas Greene は、ねつ循環じゅんかんにほとんど関与かんよしないような非常ひじょううす大気たいきが TRAPPIST-1b に存在そんざいしている可能かのうせいはまだのこされているとしている[16]

画像がぞう

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ とししゅう視差しさびょう)より計算けいさん光年こうねんは1÷とししゅう視差しさびょう)×3.2615638より計算けいさん

出典しゅってん

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  1. ^ a b c Jean Schneider. “Planet TRAPPIST-1 b”. The Extrasolar Planet Encycloapedia. Paris Observatory. 2018ねん3がつ7にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e f g Grimm, Simon L.; Demory, Brice-Olivier; Gillon, Michael et al. (2018). “The nature of the TRAPPIST-1 exoplanets”. Astronomy and Astrophysics 613 (A68): 21. arXiv:1802.01377. Bibcode2018A&A...613A..68G. doi:10.1051/0004-6361/201732233. 
  3. ^ a b c Delrez, Laetitia; Gillon, Michael; H.M.J, Amaury; Brice-Oliver Demory, Triaud; de Wit, Julien; Ingalls, James; Agol, Eric; Bolmont, Emeline; Burdanov, Artem; Burgasser, Adam J.; Carey, Sean J.; Jehin, Emmanuel; Leconte, Jeremy; Lederer, Susan; Queloz, Didier; Selsis, Franck; Grootel, Valerie Van (9 January 2018). "Early 2017 observations of TRAPPIST-1 with Spitzer". arXiv:1801.02554v1 [astro-ph.EP]。
  4. ^ a b c d e f g h i j k Agol, Eric; Dorn, Caroline; Grimm, Simon L. et al. (2021). “Refining the transit timing and photometric analysis of TRAPPIST-1: Masses, radii, densities, dynamics, and ephemerides”. The Planetary Science Journal 2 (1): 38. arXiv:2010.01074. Bibcode2021PSJ.....2....1A. doi:10.3847/PSJ/abd022. 1. 
  5. ^ a b c d e f Result for TRAPPIST-1b”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2018ねん3がつ7にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c d e f Greene, Thomas P.; Bell, Taylor J.; Ducrot, Elsa; Dyrek, Achrène; Lagage, Pierre-Olivier; Fortney, Jonathan J. (2023). “Thermal Emission from the Earth-sized Exoplanet TRAPPIST-1 b using JWST”. Nature. arXiv:2303.14849. doi:10.1038/s41586-023-05951-7. 
  7. ^ Burgasser, Adam J.; Mamajek, Eric E. (2017). “On the Age of the TRAPPIST-1 System”. The Astrophysical Journal 845 (2): 110. arXiv:1706.02018. Bibcode2017ApJ...845..110B. doi:10.3847/1538-4357/aa7fea. ISSN 1538-4357. 
  8. ^ a b c d Gillon, Michaël; Jehin, Emmanuël; Lederer, Susan M. et al. (2016). “Temperate Earth-sized planets transiting a nearby ultracool dwarf star” (PDF). Nature 533 (7602): 221-224. arXiv:1605.07211. doi:10.1038/nature17448. ISSN 0028-0836. http://www.eso.org/public/archives/releases/sciencepapers/eso1615/eso1615a.pdf. 
  9. ^ ちょう低温ていおんの矮星のまわりに、生命せいめい存在そんざいしうる地球ちきゅうサイズの惑星わくせい3つを発見はっけん”. AstroArts (2016ねん5がつ9にち). 2018ねん3がつ7にち閲覧えつらん
  10. ^ Janna K. Barstow; Patrick G. J. Irwin (7 June 2016). "Habitable worlds with JWST: transit spectroscopy of the TRAPPIST-1 system?". arXiv:1605.07352v2 [astro-ph.EP]。
  11. ^ Gillon, Michaël; Triaud, Amaury H. M. J.; Demory, Brice-Olivier et al. (2017). “Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1” (PDF). Nature 542 (7642): 456-460. doi:10.1038/nature21360. ISSN 0028-0836. http://www.eso.org/public/archives/releases/sciencepapers/eso1706/eso1706a.pdf. 
  12. ^ Artist's view of planets transiting red dwarf star in TRAPPIST-1 system Artist's view of planets transiting red dwarf star in TRAPPIST-1 system”. Spacetelescope. 2018ねん3がつ7にち閲覧えつらん
  13. ^ 地球ちきゅうサイズのけいがい惑星わくせい大気たいきはつ観測かんそく”. AstroArts (2016ねん7がつ25にち). 2018ねん3がつ7にち閲覧えつらん
  14. ^ de Wit, Julien; Wakeford, Hannah R.; Gillon, Michaël; Lewis, Nikole K.; Valenti, Jeff A.; Demory, Brice-Olivier; Burgasser, Adam J.; Burdanov, Artem et al. (2016). “A combined transmission spectrum of the Earth-sized exoplanets TRAPPIST-1 b and c”. Nature 537 (7618): 69-72. doi:10.1038/nature18641. ISSN 0028-0836. 
  15. ^ a b c NASA's Webb Measures the Temperature of a Rocky Exoplanet”. Webb Spacw Telescope. STScI (2023ねん3がつ27にち). 2023ねん4がつ6にち閲覧えつらん
  16. ^ a b Tereza Pultarova (2023ねん3がつ27にち). “James Webb Space Telescope finds no atmosphere on Earth-like TRAPPIST-1 exoplanet”. Space.com. 2023ねん4がつ6にち閲覧えつらん
  17. ^ a b Leah Crane (2023ねん3がつ27にち). “JWST finds the planet TRAPPIST-1b may not have an atmosphere”. New Scientist. 2023ねん4がつ6にち閲覧えつらん
  18. ^ This Weird Planetary System Seems Like Something From Science Fiction”. NBC News. 2018ねん3がつ7にち閲覧えつらん
  19. ^ PIA22093: TRAPPIST-1 Planet Lineup - Updated Feb. 2018”. PhotoJournal. Jet Propulsion Laboratory/NASA (2018ねん2がつ5にち). 2023ねん4がつ6にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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