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アラビア

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アラビア
اللغة العربية
「アラビア」といたアラビアナスフたい
発音はつおん IPA: [alːuɣatu‿lʕarabiːja]
はなされるくに アラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽうアルジェリアイエメンイスラエルイラクイランエジプトエリトリアオマーンカタールガンビアクウェートコモロサウジアラビア西にしサハラシリアスーダンソマリアソマリランドふくむ)、チャドチュニジアパレスチナガザ地区ちくヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちく)、バーレーンマリモーリタニアモロッコヨルダンリビアレバノン
地域ちいき 西にしアジアアフリカ
話者わしゃすう やく2おく3500まんにん
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい アラビア文字もじ
ギリシャ文字もじ(キプロス)
ラテン文字もじ(キプロス)
公的こうてき地位ちい
公用こうよう

アラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽうアルジェリアイエメンイラクエジプトエリトリアオマーンカタールクウェートコモロサウジアラビア西にしサハラシリアスーダンソマリアソマリランドチャドチュニジアパレスチナこくバーレーンモーリタニアモロッコヨルダンリビアレバノン


国際こくさい機関きかん: 国際こくさい連合れんごうアラブ連盟れんめいイスラム協力きょうりょく機構きこうアフリカ連合れんごう
少数しょうすう言語げんごとして
承認しょうにん
キプロス
統制とうせい機関きかん エジプトの旗 アラビアアカデミー
言語げんごコード
ISO 639-1 ar
ISO 639-2 ara
ISO 639-3 araマクロランゲージ
個別こべつコード:
arq — アラビアアルジェリア方言ほうげん
aao — アラビアサハラ方言ほうげん
bbz — Babalia Creole Arabic
abv — アラビアバーレーン方言ほうげん
shu — アラビアチャド方言ほうげん
acy — アラビアキプロス方言ほうげん
adf — アラビアドファール方言ほうげん
avl — Eastern Egyptian Bedawi Arabic
arz — アラビアエジプト方言ほうげん
afb — アラビア湾岸わんがん方言ほうげん
ayh — アラビアハドラマウト方言ほうげん
acw — アラビアヒジャーズ方言ほうげん
ayl — アラビアリビア方言ほうげん
acm — アラビアイラク方言ほうげん
ary — アラビアモロッコ方言ほうげん
ars — アラビアナジュド方言ほうげん
apc — North Levantine Arabic
ayp — North Mesopotamian Arabic
acx — アラビアオマーン方言ほうげん
aec — アラビアサイード方言ほうげん
ayn — アラビアきたイエメン方言ほうげん
ssh — アラビアシフフ方言ほうげん
ajp — South Levantine Arabic
arb — フスハー
apd — アラビアスーダン方言ほうげん
pga — Sudanese Creole Arabic
acq — アラビアみなみイエメン方言ほうげん
abh — Tajiki Arabic
aeb — アラビアチュニジア方言ほうげん
auz — Uzbeki Arabic
アラビア公用こうようくに地域ちいき
みどり:アラビア唯一ゆいいつ公用こうよう
あお:アラビアがいくつかの公用こうようひと
水色みずいろ:アラビア地域ちいき/マイノリティ言語げんご
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アラビア(アラビアご、剌比اللغة العربية, al-lughah al-ʿarabīyah, アッ=ルガ・アル=アラビーヤ, 実際じっさい発音はつおん:アッ=ルガトゥ・ル=アラビーヤ、略称りゃくしょうالعَرَبِيَّة, al-al-lughah al-ʿarabīyah [ʔalʕaraˈbij.ja] ( 音声おんせいファイル))は、アフロ・アジア語族ごぞくセムぞくする言語げんごひとつ。

おも西にしアジアきたアフリカアラブ世界せかいはなされている。ISO 639による言語げんごコードは、2ar 、3araあらわされる。

世界せかいで3番目ばんめおおくのくに地域ちいき使用しようされている言語げんごであり、アラビア半島はんとうやその周辺しゅうへんサハラ砂漠さはらさばく以北いほくのアフリカ北部ほくぶ領域りょういき中心ちゅうしんに27かこく公用こうようとされている。また、国連こくれん公用こうようにおいては、から追加ついかされた唯一ゆいいつ言語げんごでもある。

概要がいよう

「アラビア」は、もともとアラビア半島はんとうはなされていたが、きたアフリカやイラク、シリア方面ほうめんまでひろがった。現代げんだいにおいて使用しようされているアラビアは、つぎの2つにおおきく分類ぶんるいされている。

  • 文語ぶんごむかしのアラビア、もしくはクルアーンに使用しようされている):フスハー正則せいそくアラビア現代げんだい標準ひょうじゅんアラビア (MSA[注釈ちゅうしゃく 1]) とも。古典こてんアラビア基盤きばんとし、現代げんだい世界せかい対応たいおうする語彙ごいおおきくくわえたもの)
  • 口語こうごアーンミーヤ各地かくち方言ほうげんかれる)

フスハー

フスハー正則せいそくアラビア)はアラブ諸国しょこく共通きょうつうであり、アラビア文字もじかれる。起源きげん西暦せいれき4世紀せいきごろのアラビア半島はんとうにさかのぼるといわれ、イスラーム文明ぶんめい出現しゅつげん拡大かくだいにともなってきたアフリカにまで使用しよう地域ちいきひろがり、現在げんざいまで言語げんごとしておおきくわらずに使つかわれている。

イスラーム聖典せいてんであるクルアーン古典こてんアラビアかれているが、これはムハンマドがいたヒジャーズ地方ちほうのアラビアをかなり反映はんえいしているとかんがえられる。クルアーン記述きじゅつによれば、イスラームをつたえるためにかみえらんだのがアラビアだったことから、ムスリムはこれを「アッラー言葉ことば」としてとらえている。クルアーン(コーラン)はアラビア詠唱えいしょうして音韻おんいんをふむようにかれ、またアラビア原典げんてんがアッラーが人類じんるいあたえたオリジナルばんとされるため、翻訳ほんやく教義きょうぎじょう原則げんそくきんじられる[注釈ちゅうしゃく 2]。クルアーンの勉強べんきょう暗誦あんしょう敬虔けいけんなイスラム教徒きょうと必須ひっす義務ぎむとされるが、クルアーンをまなぶためには必然ひつぜんてきにアラビアめなくてはならず、アフリカからトルコインド東南とうなんアジアにかけてのイスラムけんでは、アラビアがイスラム知識ちしきじんそう共通きょうつうとして通用つうようしている。

マカーマート』〈わけ平凡社へいぼんしゃ東洋文庫とうようぶんこぜん3かん〉のような古典こてんられる言葉ことばは、とくにオスマン帝国ていこく時代じだい一時期いちじき衰退すいたいしたが、はな言葉ことばつづけてもちいられていた。文語ぶんご近代きんだいになってより簡単かんたんなものとしてなおされ、近代きんだい以降いこうあたらしい概念がいねん対応たいおうする新語しんご大量たいりょう追加ついかされることで、現代げんだいにおいて使用しようされている現代げんだい標準ひょうじゅんアラビア成立せいりつした[1]。こうしてフスハーはアラビアにおいて公的こうてきめん代表だいひょうする言語げんごとなり、宗教しゅうきょう関係かんけいのほかに、学術がくじゅつ関係かんけい書籍しょせき雑誌ざっし新聞しんぶんなどの文章ぶんしょうはもちろん、公的こうてきでの会話かいわやテレビニュースなどのあらたまったにおいても使用しようされるようになった[2]公的こうてき言語げんごであるためアラビア教育きょういくもすべてフスハーでおこなわれているが、ぎゃくえばフスハーは学校がっこうで「ならう」アラビアである。文語ぶんごであり、あくまでも公式こうしき使用しようされるものであるため、日常にちじょう会話かいわにおいてフスハーが使用しようされることはない。

方言ほうげん

一方いっぽう方言ほうげん日常にちじょう会話かいわもちいられるはな言葉ことばす。現代げんだいはな言葉ことばとしてのアラビアは、くに地域ちいきによってことなる地域ちいき変種へんしゅ(ラハジャ)にかれ、これには正字せいじほうい。日常にちじょう会話かいわはこのはな言葉ことばはなされるが、私信ししんなどではこれを文字もじして表現ひょうげんする。また、大衆たいしゅうけの小説しょうせつ演劇えんげき詩歌しか現代げんだい口語こうごしょ変種へんしゅかれる。 

湾岸わんがん方言ほうげんヒジャーズ方言ほうげんイラク方言ほうげんシリア方言ほうげん英語えいごばんレバノン方言ほうげんパレスチナ方言ほうげんエジプト方言ほうげんスーダン方言ほうげんマグリブ方言ほうげん英語えいごばんハッサニヤ方言ほうげんなどに大別たいべつされ、それぞれの地域ちいきのなかでもちがいがある。地域ちいきによっては、宗派しゅうはごとにはなされるアラビア差異さいがあるなどする。また、生活せいかつ形態けいたいによっても、地域ちいきえてそれぞれ共通きょうつう特徴とくちょうがある。遊牧民ゆうぼくみん方言ほうげん農村のうそん方言ほうげん都市とし方言ほうげんの3つにけられる。

現代げんだいアラブ世界せかいでの現代げんだい標準ひょうじゅんアラビア方言ほうげん関係かんけいは、中世ちゅうせいカトリック教会きょうかい地域ちいきにおけるラテン語らてんごロマンス諸語しょご関係かんけいている。後者こうしゃ前者ぜんしゃから派生はせいし、フランス語ふらんすごイタリアスペインなどおおくの変種へんしゅかれていること。前者ぜんしゃ日常にちじょうとしては死語しごであるが、公的こうてきはな言葉ことば言葉ことばとして通用つうようし、後者こうしゃ基本きほんてきかれることはまれであることが、その理由りゆうである。このことから、言語げんごがくにおいてアラビア言語げんご使つか典型てんけいてきれいとされる。

エジプト方言ほうげん、シリア方言ほうげん、レバノン方言ほうげんなどはマスメディア多用たようされるためアラブ世界せかい各地かくち理解りかいされる一方いっぽうことなる地域ちいき同士どうし住民じゅうみんでは方言ほうげんでの会話かいわ支障ししょうることもある。また、言葉ことば日常にちじょうはなされることはほぼ皆無かいむであり、き・演説えんぜつ報道ほうどう番組ばんぐみでの使用しよう限定げんていされる。したがって、ネイティヴが現地げんちでスムーズな日常にちじょう会話かいわおこなうためには当地とうちはな言葉ことば習得しゅうとくする必要ひつようがあり、きも習得しゅうとくする場合ばあいには現代げんだい標準ひょうじゅんアラビアかさねて学習がくしゅうしなければならない。

アラビア特徴とくちょう

おおくの単語たんごは、みっつの子音しいん語根ごこんとして分析ぶんせきすることができる。そこに、母音ぼいん接頭せっとう接尾せつびせっちゅうけて、語彙ごい派生はせいしたり、活用かつようしたりする。形態けいたいろんまとには屈折くっせつである。

文字もじ

アラビア表記ひょうきには、通常つうじょうアラビア文字もじもちいられる。フスハーはアラビア文字もじによる正書法せいしょほうち、アーンミーヤ文字もじするさい一般いっぱんにアラビア文字もじもちいられる。ただし、マルタラテン文字もじによる正書法せいしょほうつ。以下いかは、アラビア文字もじおも特徴とくちょうである。

  • 文字もじ一覧いちらんアラビア文字もじこう参照さんしょう。それぞれの独立どくりつがた左右さゆう文字もじつながっていく(ただし例外れいがいが6文字もじある)。
  • みぎからひだりへとむ。数字すうじひだりからみぎつづられる。
  • おおくの書体しょたい存在そんざいする。「イスラームの書法しょほう」を参照さんしょう
  • 文語ぶんごフスハー)はもっぱらアラビア文字もじあらわされる。アラビア文字もじアブジャド慣用かんよう名称めいしょうアルファベット)は従来じゅうらいアブジャドにおけるだい1番目ばんめ子音しいんであった声門せいもん閉鎖へいさおん声門せいもん破裂はれつおんとしてのアリフ(後世こうせいにハムザ(ء)として分離ぶんりされたもの)とじゃく文字もじアリフ(ا)を同時どうじに1番目ばんめくか、じゃく文字もじアリフをلا(ラーム・アリフ)として終盤しゅうばんくかで28文字もじかぞえるか・29文字もじかぞえるかの学説がくせつかれる。
  • 大文字おおもじ小文字こもんじ区別くべつはない。ラテン文字もじ転写てんしゃでは人名じんめいなどの語頭ごとう大文字おおもじかれるが、転写てんしゃ都合つごうじょうによるもので、もとのアラビアでは固有名詞こゆうめいし語頭ごとうなんらかのちがかたちくということはされない。
  • 口語こうごアーンミーヤ)には正書法せいしょほうがない。
  • アラビア文字もじには母音ぼいんしめ文字もじ存在そんざいせず、アブジャドふくまれる子音しいんのみでつづられる。ちょう母音ぼいん一部いちぶじゃく文字もじあらわすためのアリフ(ا)やじゃく文字もじばれる半母音はんぼいんのワーウ(و)ならびにヤー(ي)をもちいるがこれらは母音ぼいんではなく母音ぼいん子音しいんというあつかいとなる。母音ぼいん情報じょうほうがわおぎなってまなければならないが、不便ふべんしょうじることからウマイヤあさ発音はつおん記号きごう開発かいはつされた。クルアーン(コーラン)やてい年齢ねんれい児童じどう書籍しょせきには正確せいかく発音はつおんしめすために母音ぼいん符号ふごうなどの符号ふごうシャクル)が付記ふきされる。書道しょどう作品さくひんにおいても、母音ぼいん符号ふごう装飾そうしょくねて付記ふきされることがおおい。まれに、成人せいじん対象たいしょう小説しょうせつであっても誤読ごどくけるため自著じちょ母音ぼいん符号ふごう付記ふきする作家さっかもいる。

発音はつおん

文法ぶんぽう

  • 定冠詞ていかんし前置詞ぜんちし存在そんざいし、名詞めいし形容詞けいようし(アラビアでは名詞めいし分類ぶんるいされる)はかく主格しゅかくぞくかく対格たいかく)・せい男性だんせい女性じょせい)・かず単数たんすうそうすう複数ふくすう)によって変化へんかする。
  • 女性じょせいがた男性だんせい女性じょせい複数ふくすうがたには基本きほんとなる規則きそくがたがあるもののそれ以外いがいにもとりうるかたち無数むすう存在そんざいするため、個別こべつ記憶きおくしなければならないものがおおい。たとえば、مُدَرِّسٌ (mudarrisun, 先生せんせい) の複数ふくすうがた規則きそくがたであり、語尾ごび-ūnaけて、مُدَرِّسُونَ (mudarrisūna) になるが、صَدِيقٌṣadīqun, 友人ゆうじん)の複数ふくすう不規則ふきそくがたであるため、صَدِيقُونَ (ṣadīqūna) とはならず、أَصْدِقَاءُ ('aṣdiqā'u) になる。
  • 動詞どうし3人称にんしょう男性だんせい単数たんすう完了かんりょうがた原形げんけいとし、語根ごこんじゅん配列はいれつ辞典じてんでは、そのかたちくことになる。原型げんけい基本きほんがただいいちがたともいう。これにくわえて、だいがたからだいじゅうがたまでの派生はせいがた存在そんざいするが、現代げんだいアラビア原則げんそくとしてだいじゅうがたまでもちい、だいじゅういちがた以降いこういろ変化へんかなどといったかぎられた場合ばあいにしかもちいられず、だいきゅうがた原則げんそくとして色彩しきさい人体じんたい障害しょうがいかんする意味いみ単語たんごである(ただし、派生はせいがた西欧せいおう学者がくしゃ考案こうあんした学習がくしゅう概念がいねんであり、アラビア母語ぼごとするものもちいない)。ハンス・ヴェーアによる『現代げんだい文語ぶんごアラビア辞典じてん』をはじめとして、おおくの辞書じしょ語根ごこんじゅんかたり配列はいれつされているため、派生はせいがた動詞どうし辞書じしょ参照さんしょうするには、動詞どうしからその語根ごこんすなわち原形げんけい抽出ちゅうしゅつしなければならず、これが、アラビア母語ぼごとしないはつ学者がくしゃにとっての辞書じしょきを困難こんなんにしている。

方言ほうげん

アラビアしょ方言ほうげん分布ぶんぷ

言語げんご分布ぶんぷ

アラビア話者わしゃ分布ぶんぷみどりはアラビア話者わしゃ多数たすうめる地域ちいきうすみどり少数しょうすうのアラビア話者わしゃ居住きょじゅうする地域ちいき

現代げんだい標準ひょうじゅんアラビア公用こうようとする国家こっか

アジア
アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽう - イエメンの旗 イエメン共和きょうわこく - イラクの旗 イラク共和きょうわこく -オマーンの旗 オマーンこく -
カタールの旗 カタールこく - クウェートの旗 クウェートこく - サウジアラビアの旗 サウジアラビア王国おうこく - シリアの旗 シリア・アラブ共和きょうわこく -
バーレーンの旗 バーレーン王国おうこく - パレスチナの旗 パレスチナこく - ヨルダンの旗 ヨルダン・ハシミテ王国おうこく - レバノンの旗 レバノン共和きょうわこく
アフリカ
アルジェリアの旗 アルジェリア民主みんしゅ人民じんみん共和きょうわこく - エジプトの旗 エジプト・アラブ共和きょうわこく - エリトリアの旗 エリトリアこく - コモロの旗 コモロ連合れんごう -
西サハラの旗 西にしサハラ - ジブチの旗 ジブチ共和きょうわこく - スーダンの旗 スーダン共和きょうわこく - ソマリアの旗 ソマリア - ソマリランドの旗 ソマリランド - チャドの旗 チャド共和きょうわこく - チュニジアの旗 チュニジア共和きょうわこく -
モーリタニアの旗 モーリタニア・イスラム共和きょうわこく - モロッコの旗 モロッコ王国おうこく - リビアの旗 リビアこく

アラビア公用こうようとしている国家こっかのうち、アラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽう、イエメン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、バーレーン、パレスチナ、ヨルダン、レバノン、エジプト、リビア、チュニジアにおいては国民こくみんのほとんどがアラブじん構成こうせいされており、公用こうようとしてのフスハーと日常にちじょうとしてのアーンミーヤのみを使用しようしている。これはイスラム教徒きょうと以外いがいのアラブじん同様どうようで、たとえばレバノンにはマロンなどのキリスト教徒きりすときょうと多数たすう存在そんざいするが、民族みんぞくてきにはアラブじんであるためそのほとんどはフスハーとアラビアレバノン方言ほうげんはなす。アルジェリアにおいては国民こくみん大半たいはんがアラビアはなすものの、カビールなどのベルベル諸語しょご話者わしゃ存在そんざいする。レバノン、アルジェリアではきゅう宗主そうしゅ国語こくごフランス語ふらんすごつうじる。ただし同国どうこく公用こうようはアラビアのみとなっている[3]。アラブじん多数たすううえベルベルじんがかなりのすう存在そんざいするのは隣国りんごくのモロッコにおいても同様どうようであるが、モロッコでは公用こうようはアラビアとベルベルの2言語げんご体制たいせいとなっている[4]。モロッコと領有りょうゆうけんあらそっている西にしサハラではアラビアともスペイン使つかわれる。イラクにおいては北部ほくぶクルドじん居住きょじゅうしているためにクルド公用こうようとなっているが、アラビア話者わしゃ多数たすうめている[5]。モーリタニアはアラビア使用しようするムーアじん多数たすうめ、アラビア公用こうようとなっているが、南部なんぶ中心ちゅうしんにアラビア使用しようしない黒人こくじんおおく、またきゅうフランスりょうだったためフランス語ふらんすご影響えいきょうりょくつよい。スーダンもアラブけい多数たすうめるものの、西部せいぶフールじんなどのようにアラビア使用しようしない民族みんぞくおお存在そんざいし、紛争ふんそうえない。公用こうようはアラビア英語えいご言語げんご使用しようとなっている。

こうしたアラブじん多数たすうめる国家こっかたいし、住民じゅうみんのほとんどがソマリはなソマリじんであるソマリアや、おなじくアファルじんイッサじん多数たすうめるジブチ、スワヒリちかコモロおも使用しようするコモロなどのような、日常にちじょうとしてアラビアをほとんど使用しようしない地域ちいきにおいてもアラビア公用こうようとされることがある。これはこれら諸国しょこくがアラブ諸国しょこくとの経済けいざいてき文化ぶんかてきむすびつきがつよく、またイスラム教徒きょうとがほとんどであるため典礼てんれいよう言語げんごであるフスハーを理解りかいできるものがおお存在そんざいするためである。

アラビア公用こうようとしている国家こっか増加ぞうか傾向けいこうにある。これは、かつてイギリスやフランスの植民しょくみんだったアラブじん国家こっか独立どくりつ公用こうよう英語えいごフランス語ふらんすごからアラビア変更へんこうする傾向けいこうつよいためである。とくにアフリカにおいては、アラビアけん以外いがいのほとんどのしん独立どくりつこくきゅう宗主そうしゅこく公用こうよう使用しよう継続けいぞくしていることと明確めいかく対比たいひをなしている。こうした公用こうようえはアラブじん国家こっかすべてでおこなわれたものの、その深度しんど速度そくどにはくにによってちがいがみられた。きゅうえいりょう諸国しょこくではほとんどのくに公用こうようのアラビアえが実施じっしされたものの、きゅうフランスりょう諸国しょこくではモロッコやモーリタニアのように公用こうようフランス語ふらんすごとアラビアの2言語げんごとする国家こっかがいくつか存在そんざいし、アルジェリアのように積極せっきょくてき言語げんごえがおこなわれたくにとの差異さい目立めだった。またアルジェリアにおいても、教育きょういく課程かていのアラビアすすんだものの官僚かんりょうなど政府せいふ指導しどうそうフランス語ふらんすご話者わしゃによって占有せんゆうされている状況じょうきょう打破だはすることはできなかった[6]。アラビア教育きょういくによって大衆たいしゅうのアラビアすすんだものの、エリートそうフランス語ふらんすご話者わしゃのままだったため、この言語げんご話者わしゃあいだ階層かいそうてき対立たいりつしょうじた[7]。さらにアルジェリアにおけるアラビアイスラム主義しゅぎむすびついていたために、イスラム主義しゅぎ台頭たいとうまね[8]、1990年代ねんだいアルジェリア内戦ないせんへとつながっていくこととなった。

現代げんだい口語こうごアラビア公用こうようとするくに

マルタ共和きょうわこくマルタは、現代げんだいアラビア語口かたりくちいち変種へんしゅである。語彙ごいなどのめんでヨーロッパ諸語しょごとくイタリアからの借用しゃくようおおく、またラテン文字もじつづられる[9]現代げんだいアラビア語口かたりくち諸語しょごなか国家こっか公用こうようとなっているのはマルタ・アラビアのみである。

イスラエルにおけるアラビア状況じょうきょう

イスラエルにおけるアラビア自治体じちたい分布ぶんぷ

英国えいこく委任いにん統治とうちりょう時代じだいのパレスチナにおいては、英語えいご、アラビア、ならびにヘブライの3かこく公用こうようとされた。そして、1948ねんのイスラエル建国けんこくは、アラビアとヘブライのみがイスラエルの公用こうようとされ[10]英語えいご公用こうようではなくなった。しかしながら、ユダヤけいイスラエルじん児童じどう生徒せいと対象たいしょうとした初等しょとう教育きょういくならびに中等ちゅうとう教育きょういく機関きかんにおいては、公用こうようであるアラビアよりも公用こうようではない英語えいご教育きょういく重視じゅうししている。アラブけいイスラエルじん児童じどう生徒せいと対象たいしょうとした初等しょとう教育きょういくならびに中等ちゅうとう教育きょういく機関きかんにおいては、ユダヤけいイスラエルじんよりもアラビアやアラブ文学ぶんがくなどにてられるときあいだすうおおい。また、イスラエルにおける雇用こよう条件じょうけんにおいて、おおくの場合ばあいは「ヘブライ英語えいごはなせること」が語学ごがくてき条件じょうけんとしてされており、公用こうようであるアラビアまった理解りかいできなくても、イスラエル社会しゃかいにおいてはとく問題もんだいされない。それ、イスラエルにおけるアラビアは、公式こうしきには公用こうようであるにもかかわらず、事実じじつじょうはアラブけいイスラエルじんというマイノリティのみがもちいる言語げんごになっている。イスラエルのアラブじんのかなりが、アラビアのほかにヘブライ使用しようすることができる[11]。また、現在げんざいのイスラエルにおける通貨つうか切手きってなどは、ヘブライ、アラビア、ならびに、英語えいごの3かこく記載きさいされる。このような状況じょうきょう建国けんこく以来いらい70ねんちかつづいてきたが、ベンヤミン・ネタニヤフ政権せいけん2017ねん5月7にちにアラビア公用こうようからはずして国語こくごへと格下かくさげし、ヘブライのみを公用こうようとする閣議かくぎ決定けっていおこなった。この閣議かくぎ決定けっていたいし、同国どうこくのアラブじん政党せいとうからはつよ反発はんぱつこった[12]

その諸国しょこくにおけるアラビア

トルコかくけんにおけるアラビア母語ぼごとする住民じゅうみん割合わりあい1965ねん統計とうけい
イラン各州かくしゅうにおけるアラビア母語ぼごとする住民じゅうみん割合わりあい2010ねん統計とうけい

イスラム教いすらむきょうにおいてアラビア典礼てんれいよう言語げんごとなっており、アラビアのもの以外いがいクルアーンとしてあつかわれないため、礼拝れいはいにおいてはかならずアラビアによってクルアーンをとなえることとなる。ただしクルアーンが翻訳ほんやくされたものが注釈ちゅうしゃくしょとしておおくの言語げんごけんにおいて出版しゅっぱんされているため、イスラム教徒きょうとにとってアラビア礼拝れいはいにおいて必要ひつようであっても、内容ないよう理解りかいまではかならずしも必要ひつようではない。このためアラビアができないイスラム教徒きょうと非常ひじょうおお存在そんざいする。ただしクルアーンの内容ないようくわしくるためにはアラビア知識ちしき不可欠ふかけつであり、このためイスラム教いすらむきょう諸国しょこくにおいては熱心ねっしん信徒しんと中心ちゅうしんうすひろくアラビア話者わしゃ存在そんざいする。

このほか、少数しょうすう民族みんぞくとしてアラブじん居住きょじゅうしている地域ちいきにおいてもアラビア使用しようされている。トルコ南東なんとうハタイけんマルディンけんスィイルトけんシャンルウルファけん、イランの南西なんせいにあるフーゼスターンしゅうにはアラブじんおおみ、アラビアおおはなされている[13]

アラビア公用こうようとする国際こくさい機関きかん

アラビア世界せかいで4番目ばんめ話者わしゃ人口じんこうち、さらにその話者わしゃいち地方ちほうしゅうじゅうしているため、言語げんごとしておおきな影響えいきょうりょくつ。このため、アラビアおおくの国際こくさい機関きかんにおいて公用こうようとされている。なかでもアラブ連盟れんめいはアラブじん国家こっか地域ちいき協力きょうりょく機構きこうであるため、アラビア唯一ゆいいつ公用こうようとなっている。イスラム協力きょうりょく機構きこうも、イスラム教いすらむきょう典礼てんれいよう言語げんごがアラビアでありイスラム教いすらむきょうけんのほとんどにアラビアひろまっているためにアラビア影響えいきょうりょくおおきく、英語えいごフランス語ふらんすごとともに公用こうようひとつとなっている。アフリカ連合れんごうにおいても、大陸たいりく北部ほくぶ中心ちゅうしんにアラビア諸国しょこく一大いちだい勢力せいりょくたもっているため、英語えいごフランス語ふらんすごポルトガルスワヒリとともに公用こうようとされている。アラビア使用しよう諸国しょこくかずおおくひとつの文明ぶんめいけん形成けいせいしているため、国際こくさい連合れんごうにおいても1973ねんにアラビア公用こうよう追加ついかされ[14]英語えいごフランス語ふらんすごロシア中国ちゅうごくスペインとともに6つの公用こうようのひとつとされている。

言語げんごへの影響えいきょう

アラビア起源きげんとする語彙ごい

「アル」ではじまる言葉ことばおおいのは、al-定冠詞ていかんしだからである。

影響えいきょうけたしょ言語げんご

アラビアからおおきな影響えいきょうけた言語げんごおお存在そんざいする。

とくきたアフリカ西にしアフリカひがしアフリカ海岸かいがんにおいては、それまで文字もじっていなかった言語げんごイスラム教いすらむきょうおよびその典礼てんれいよう言語げんごであるアラビア影響えいきょうけて語法ごほう整備せいびし、文字もじ導入どうにゅうしたケースがおお存在そんざいする。ハウサソマリなどはこうした言語げんごであり、現代げんだいでは表記ひょうきほうラテン文字もじあらためられたものの、アラビアからの借用しゃくよう非常ひじょうおお存在そんざいしている。インド洋いんどよう季節風きせつふう交易こうえきによってアラブじん商人しょうにんおおおとずれたひがしアフリカの海岸かいがんにおいては、バントゥー諸語しょご語幹ごかん語彙ごいの35%から40%にものぼる大量たいりょうのアラビアからの借用しゃくようれたスワヒリが16世紀せいきごろまでには成立せいりつし、地域ちいき商業しょうぎょう言語げんごとしてひろ使用しようされるようになった。

このほか、ペルシアトルコふくテュルク諸語しょごスペインヒンドゥスターニーマレーなどの言語げんごふるくから独自どくじ文字もじっていたが、イスラム教いすらむきょう伝播でんぱによってアラビア文字もじ使用しようするようになり、同時どうじ大量たいりょう語彙ごいがアラビアから流入りゅうにゅうした。これらの言語げんご現代げんだいでもアラビアからの借用しゃくようおおい。ただしペルシアのぞき、現在げんざいはそれぞれべつ文字もじ表記ひょうきされている。

統制とうせい機関きかん

アラビア統制とうせい機関きかんとしては、もっとふるダマスカス・アラビアアカデミー(1919ねん創立そうりつ[15]や、カイロにあるアラブ学院がくいん1932ねん創立そうりつ[15]をはじめ、いくつかの国家こっかもうけられたアラビアアカデミーがその役割やくわりになっている。こうした統制とうせい機関きかん科学かがく分野ぶんやのぞいて外国がいこくからの借用しゃくようをできるだけ制限せいげんし、あらたな概念がいねんたいしては単語たんご意味いみ拡張かくちょうなどアラビアない対応たいおうによって処理しょりする傾向けいこうつよ[16]

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ Modern Standard Arabic
  2. ^ 関連かんれんする記事きじタフスィールがある。

出典しゅってん

  1. ^ 「イスラーム世界せかいのことばと文化ぶんか」(世界せかいのことばと文化ぶんかシリーズ)p84-85 佐藤さとうつぎだか岡田おかだ恵美子えみこ編著へんちょ 早稲田大学わせだだいがく国際こくさい言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ 成文せいぶんどう 2008ねん3がつ31にち初版しょはんだい1さつ
  2. ^ 「イスラーム世界せかいのことばと文化ぶんか」(世界せかいのことばと文化ぶんかシリーズ)p85-86 佐藤さとうつぎだか岡田おかだ恵美子えみこ編著へんちょ 早稲田大学わせだだいがく国際こくさい言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ 成文せいぶんどう 2008ねん3がつ31にち初版しょはんだい1さつ
  3. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/algeria/data.html#section1 「アルジェリア基礎きそデータ」日本国にっぽんこく外務省がいむしょう 2017ねん6がつ21にち閲覧えつらん
  4. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/morocco/data.html 「モロッコ基礎きそデータ」日本国にっぽんこく外務省がいむしょう 2017ねん6がつ21にち閲覧えつらん
  5. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/data.html#section1 「イラク基礎きそデータ」日本国にっぽんこく外務省がいむしょう 2017ねん6がつ21にち閲覧えつらん
  6. ^ 「アルジェリアをるための62しょう」p357 私市きさいちせいねん編著へんちょ 明石書店あかししょてん 2009ねん4がつ30にち初版しょはんだい1さつ
  7. ^ 「アルジェリアをるための62しょう」p153 私市きさいちせいねん編著へんちょ 明石書店あかししょてん 2009ねん4がつ30にち初版しょはんだい1さつ
  8. ^ 「アルジェリアをるための62しょう」p358 私市きさいちせいねん編著へんちょ 明石書店あかししょてん 2009ねん4がつ30にち初版しょはんだい1さつ
  9. ^ 「アラビア世界せかい 歴史れきし現在げんざい」p415-416 ケース・フェルステーヘちょ 長渡ながわたりいちやく 三省堂さんせいどう 2015ねん9がつ20日はつかだい1さつ
  10. ^ http://mfa.gov.il/MFA_Graphics/MFA%20Gallery/Documents%20languages/FactsJapanese08.pdf 「イスラエルの情報じょうほう」p142 イスラエル外務省がいむしょう 2017ねん6がつ21にち閲覧えつらん
  11. ^ 「イスラエルをるための60しょう」p342 立山たてやま良司りょうじ編著へんちょ 明石書店あかししょてん 2012ねん7がつ31にち初版しょはんだい1さつ 
  12. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3127540 「イスラエル、アラビア公用こうようからはず法案ほうあん閣議かくぎ決定けってい」AFPBB 2017ねん05がつ08にち 2017ねん6がつ21にち閲覧えつらん
  13. ^ 『イランをるための65しょう』 岡田おかだ久美子くみこ北原きたはら圭一けいいち鈴木すずきたまさと編著へんちょ 明石書店あかししょてん  2009ねん11がつ20日はつか p.74 ISBN 9784750319803
  14. ^ http://www.unic.or.jp/info/un/charter/membership_language/ 「加盟かめいこく公用こうよう」 国際こくさい連合れんごう広報こうほうセンター 2017ねん6がつ21にち閲覧えつらん
  15. ^ a b 「アラビア世界せかい 歴史れきし現在げんざい」p345 ケース・フェルステーヘちょ 長渡ながわたりいちやく 三省堂さんせいどう 2015ねん9がつ20日はつかだい1さつ
  16. ^ 「アラビア世界せかい 歴史れきし現在げんざい」p348-354 ケース・フェルステーヘちょ 長渡ながわたりいちやく 三省堂さんせいどう 2015ねん9がつ20日はつかだい1さつ

参考さんこう文献ぶんけん

  • 現代げんだいアラビア入門にゅうもん黒柳くろやなぎ恒男つねお飯森いいもり嘉助かすけ大学だいがく書林しょりん
  • 『アラビア入門にゅうもん池田いけだおさむ岩波書店いわなみしょてん絶版ぜっぱん

関連かんれん項目こうもく

外部がいぶリンク