動物どうぶつ園えん

サンディエゴ動物どうぶつ園えんの入場にゅうじょう口こう

動物どうぶつ園えん（どうぶつえん）とは、生いきた動物どうぶつを飼育しいく・研究けんきゅうし、一般いっぱんに公開こうかいする施設しせつ。一般いっぱんに陸上りくじょうの動物どうぶつを中心ちゅうしんとして扱あつかうものを指さす。水中すいちゅうの動物どうぶつを中心ちゅうしんとして扱あつかうものは特とくに水族館すいぞくかんとされ、動物どうぶつ園えんの特殊とくしゅな形態けいたいとしてサファリパークや移動いどう動物どうぶつ園えん、鳥類ちょうるい園えん、クマ牧場ぼくじょうなどがある。

なお、植物しょくぶつ園えんが併設へいせつされた施設しせつを動植物どうしょくぶつ園えん（どうしょくぶつえん）ということもある。

機能きのう

餌えさの魚さかなを追おって水みずに飛とび込こんだ瞬間しゅんかんのホッキョクグマ（旭川あさひかわ市し旭山あさひやま動物どうぶつ園えん）

国際こくさい的てきには動物どうぶつ園えんには、レクリエーション、教育きょういく、種たねの保存ほぞん、調査ちょうさ研究けんきゅうの4つの機能きのうがあると理解りかいされている。

1. レクリエーション - 動物どうぶつ園えんは市民しみんが生いきた野生やせい生物せいぶつを直接ちょくせつ見みられる場所ばしょであり、知的ちてき好奇心こうきしんの充足じゅうそく感かんや非ひ日常にちじょう空間くうかんでの開放かいほう感かんを呼よび起おこす要素ようそももつ。レクリエーション機能きのうを発揮はっきするためには、展示てんじ動物どうぶつの選択せんたく、展示てんじ施設しせつの構造こうぞうと展示てんじ方法ほうほう、利用りよう料金りょうきんの設定せってい、園内えんないの施設しせつの整備せいび（食堂しょくどうやトイレ）など総合そうごう的てきな対応たいおうが必要ひつようとなる。
2. 教育きょういく（環境かんきょう教育きょういく） - 国際こくさい自然しぜん保護ほご連合れんごう(IUCN)の「世界せかい保全ほぜん戦略せんりゃく World Conservation Strategy 1980」では、動物どうぶつ園えんの担になうべき教育きょういく上じょうの役割やくわりとして「野生やせい動物どうぶつの展示てんじは、丹念たんねんに用意よういされた教育きょういく計画けいかくに基もとづき、その展示てんじ種しゅが生態せいたい系けいの中なかで果はたす役割やくわりを理解りかいさせるものでなければならない」としている。
3. 種たねの保存ほぞん - 国際こくさい自然しぜん保護ほご連合れんごう(IUCN)、国際こくさい連合れんごう環境かんきょう計画けいかく(UNEP)、世界せかい自然しぜん保護ほご基金ききん(WWF)による「世界せかい環境かんきょう保全ほぜん戦略せんりゃく」では「動物どうぶつ園えんや水族館すいぞくかんは、種たねの保存ほぞんや遺伝子いでんしの多様たよう性せいの保存ほぞん、さらには環境かんきょう学習がくしゅうの面めんでも貢献こうけんできる」との勧告かんこくを行おこなっている。
4. 調査ちょうさ研究けんきゅう - 動物どうぶつ園えんには多様たような生いきた野生やせい生物せいぶつがいて、野生やせい下かでの観察かんさつでは得えることができない情報じょうほうも多おおい。野生やせい生物せいぶつに関かかわる繁殖はんしょくや行動こうどうなど学問がくもんの発展はってんに寄与きよしている。

しかしながら実際じっさいには、動物どうぶつ園えんを訪おとずれる人ひとの 70% 以上いじょうは、保護ほごについて何なにも学まなんでおらず、動物どうぶつ園えんの種たねのうち、保全ほぜん繁殖はんしょくプログラムに参加さんかしているのはわずか 3% 、動物どうぶつ園えんが保全ほぜん活動かつどうに費ついやしているのは予算よさんの 3% 未満みまんと言いうのが実態じったいである。

飼育しいく下か寿命じゅみょう・健康けんこう比較ひかく

野生やせい下かでは、成獣せいじゅうになるまでに外敵がいてきに襲おそわれたり、病気びょうきなどによって死亡しぼうするものも多おおく、成獣せいじゅうになってからでも生息せいそく環境かんきょうや同様どうような事情じじょうによって、最大さいだい寿命じゅみょうをまっとうすることができないことが多おおいが、飼育しいく下か動物どうぶつは野生やせいと比くらべると長生ながいきである。この身体しんたい的てき想定そうてい外がいの寿命じゅみょうのために、長年ながねんの食事しょくじで歯はがすり減へったことで虫歯むしばになることが稀まれにある。なぜなら虫歯むしばは糖分とうぶんで歯はのエナメル質しつがとける病気びょうきであり、野生やせいの動物どうぶつは食事しょくじと寿命じゅみょうの関係かんけいから虫歯むしばになることはほぼないが、草食そうしょく動物どうぶつが食たべる草木くさき、肉食にくしょく動物どうぶつが食たべる生肉せいにくには、ほとんど糖分とうぶんが入はいっていないからである。

歴史れきし

1835年ねん当時とうじのロンドン動物どうぶつ園えん

紀元前きげんぜん1000年ねん頃ごろのエジプト、インド、中国ちゅうごくなどには王侯おうこう貴族きぞくが個人こじん的てきな興味きょうみや娯楽ごらく、さらに権力けんりょくの象徴しょうちょうとして動物どうぶつコレクションをもっていたことが知しられている（周しゅうの時代じだいの文ぶん王おうが作つくった霊れい囿など）。初期しょきのこのような施設しせつは、主おもに王侯おうこうが所有しょゆうし、政治せいじ的てきに修好しゅうこう関係かんけいを結むすぶ、あるいは影響えいきょう下かに置おいたり植民しょくみん地ちとして支配しはいした国くに・地域ちいきから珍めずらしい動物どうぶつを集あつめてきた私的してきなものにすぎなかった。飼育しいく展示てんじ施設しせつは上流じょうりゅう階級かいきゅうが集あつめたメナジェリー、見世物みせもの小屋こやから発達はったつした。

一般いっぱん市民しみんと係かかわりをもつ自然しぜん科学かがくの場ば、教育きょういくの場ばとしての動物どうぶつ園えんは15世紀せいき以降いこうにヨーロッパで生うまれたもので、大だい航海こうかい時代じだいに数々かずかずの探検たんけんから得えられた膨大ぼうだいな資料しりょうとその研究けんきゅうのための学会がっかいの発足ほっそくなど科学かがく的てき土壌どじょうが出来できたことが背景はいけいにあった。

1752年ねん開設かいせつのオーストリアのシェーンブルン動物どうぶつ園えんは、シェーンブルン宮殿きゅうでんの動物どうぶつコレクションを一般いっぱん公開こうかいして始はじまった施設しせつで、世界せかい最古さいこの動物どうぶつ園えんとされている。

近代きんだいの動物どうぶつ園えんは単たんなる見世物みせものではなく、教育きょういく・研究けんきゅう施設しせつとしての役割やくわりを強つよく持もつべきであると考かんがえられている。つまり、生いきた動物どうぶつを生いきたまま収蔵しゅうぞうする博物館はくぶつかんとしての性格せいかくが強つよい。最初さいしょの科学かがく的てき動物どうぶつ園えんであるイギリスのロンドン動物どうぶつ園えんは1828年ねんにロンドン動物どうぶつ学会がっかいの研究けんきゅう資料しりょう収集しゅうしゅう施設しせつとして創設そうせつされたが、その研究けんきゅう費用ひよう調達ちょうたつの方途ほうととして同年どうねんに一般いっぱん公開こうかいされた。動物どうぶつ園えんは英語えいごでは zoological garden(s)（動物どうぶつ学がく的てき庭園ていえん）というが、これを縮ちぢめて zoo と呼よぶこともロンドン動物どうぶつ園えんから始はじまった。

1907年ねん、動物どうぶつ商しょうであったドイツのカール・ハーゲンベックがハンブルクに動物どうぶつを野生やせいのままに展示てんじするような動物どうぶつ園えんを作つくった。檻おりの中なかに閉とじ込こめるのではなく、野生やせいの生態せいたいのままに観察かんさつできるやり方かたを「ハーゲンベック方式ほうしき」（無む柵しがらみ放ひ養やしなえ式しき展示てんじとも）という。ハーゲンベックが作つくった動物どうぶつ園えんがドイツ語ごで Zoologischer Garten と言いったことから、動物どうぶつ園えんで英語えいごの正式せいしき表記ひょうきに Zoological Park を採用さいようしているところもいくつかある。

動物どうぶつの展示てんじ

展示てんじされている動物どうぶつ

ドルトムント動物どうぶつ園えんにて、泳およぐトラの様子ようす。

主おもに、陸上りくじょうに生息せいそくする比較的ひかくてき大型おおがたの哺乳類ほにゅうるいや鳥類ちょうるいといった動物どうぶつが多おおい。園えんによっては、昆虫こんちゅう館かんや水族館すいぞくかんなどを併設へいせつして、昆虫こんちゅう類るいや水棲すいせい動物どうぶつ（爬虫類はちゅうるい、魚類ぎょるい、両生類りょうせいるいなど）を展示てんじしている場合ばあいがある。

比較的ひかくてき身近みぢかにあるものとしては「こども動物どうぶつ園えん」として、低てい年齢ねんれいの子供こどもを対象たいしょうにニワトリやアヒル、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの家畜かちくを放はなし飼がいにして動物どうぶつに触ふれることのできる小型こがたの施設しせつが多おおく存在そんざいし、大型おおがたの施設しせつでも、同様どうようのコーナーを持もつ園えんもある。

また、クマ牧場ぼくじょうや北きたきつね牧場ぼくじょうのように単一たんいつの人気にんき動物どうぶつを扱あつかった展示てんじ施設しせつもある。

展示てんじ方法ほうほう

• 形体けいたい展示てんじ - 剥製はくせいや標本ひょうほん・絵えや写真しゃしんなどで生物せいぶつを見みせる展示てんじ。
• 生体せいたい展示てんじ - 生いきた個体こたいの展示てんじ。
• 分類ぶんるい展示てんじ（分類ぶんるい学がく的てき展示てんじ） - 同おなじ種類しゅるいの生物せいぶつをひとまとめにして、見比みくらべることができるようにした展示てんじ。
• 地理ちり学がく展示てんじ（地理ちり学がく的てき展示てんじ） - 同おなじ地域ちいきに生息せいそくする生物せいぶつをひとまとめにして、見比みくらべることができるようにした展示てんじ。
• 無む柵しがらみ放ひ養やしなえ式しき展示てんじ（ハーゲンベック方式ほうしき・パノラマ展示てんじ） - 堀ほり（モート）を使用しようしたモート式しき展示てんじなど、従来じゅうらいの檻おりや柵しがらみなどの遮蔽しゃへい物ぶつを使用しようした展示てんじではなく、生物せいぶつを直接ちょくせつ観賞かんしょう出来できるようにした展示てんじ。
• 単一たんいつ展示てんじ- 同一どういつの種類しゅるいの生物せいぶつだけを、同おなじ施設しせつ内ないで展示てんじすること。
• 混合こんごう展示てんじ - 複数ふくすうの種類しゅるいの生物せいぶつを、同おなじ施設しせつ内ないで展示てんじすること。
• 形態けいたい展示てんじ - 生物せいぶつの身体しんたい的てき特徴とくちょうを見みせるだけの、生物せいぶつがただ生いきているだけの展示てんじ。
• 生態せいたい展示てんじ - ランドスケープ・イマージョンなどを使用しようして野生やせい生物せいぶつの生息せいそく環境かんきょうを再現さいげんし、環境かんきょうエンリッチメントなどを考慮こうりょした展示てんじ。
• 行動こうどう展示てんじ（行動こうどう学がく的てき展示てんじ） - その動物どうぶつの特技とくぎや特長とくちょうなどの能力のうりょくを、自然しぜんに誘発ゆうはつさせて観賞かんしょう者しゃに見みせるように工夫くふうした展示てんじ。

各国かっこくの動物どうぶつ園えん

イギリス

イギリスでは1828年ねんに民間みんかんの研究けんきゅう組織そしきである動物どうぶつ学がく協会きょうかいによってロンドン動物どうぶつ園えんが設立せつりつされ、リチャード・オーウェンやチャールズ・ダーウィンなど多おおくの研究けんきゅう者しゃが研究けんきゅうに利用りようするなどセンター的てき役割やくわりを果はたしてきた。ロンドン動物どうぶつ園えんは動物どうぶつを可能かのうな限かぎり自然しぜんに近ちかい状態じょうたいで展示てんじすることをコンセプトとしている。ロンドン動物どうぶつ園えんでは1853年ねんに世界せかい初はつの水族館すいぞくかんとなるフィッシュハウスをオープンし、1881年ねんには昆虫こんちゅう飼育しいく施設しせつを公開こうかいした。

ドイツ

ドイツの動物どうぶつ園えんでは1990年代ねんだいに経営けいえい組織そしきの改編かいへんが進すすみ、1999年ねんにはチューリッヒ動物どうぶつ園えんが協会きょうかい形式けいしきから公益こうえき株式会社かぶしきがいしゃ（日本にっぽんに存在そんざいしない会社かいしゃ形態けいたい）に移行いこうしたほか、1994年ねんにはハノーファー動物どうぶつ園えんが市立しりつ有限ゆうげん会社かいしゃに移行いこうした。

ドイツでは動物どうぶつ園えんに水みず族ぞく展示てんじ施設しせつや昆虫こんちゅう展示てんじ施設しせつを併設へいせつしていることも多おおい。ベルリン動物どうぶつ園えんは1913年ねんに水族館すいぞくかんを公開こうかいしたが、この建物たてものは1階かいに淡水たんすいや海水かいすいにすむ生物せいぶつ、2階かいに両生りょうせい爬虫類はちゅうるいのテラリウム、3階かいに昆虫こんちゅうの施設しせつを置おき、同どう一いち施設しせつに水みず族ぞくと両生りょうせい爬虫類はちゅうるいと昆虫こんちゅうをあわせて展示てんじする形態けいたいはドイツ語どいつご圏けんの動物どうぶつ園えんにも普及ふきゅうした。また、ドイツ語ご圏けんの動物どうぶつ園えんではアスレチックやすべり台だいなどの無料むりょう遊具ゆうぐを併設へいせつしていることも多おおい。

ドイツ語ご圏けんの動物どうぶつ園えんは社団しゃだん法人ほうじんドイツ動物どうぶつ園えん連盟れんめい（VdZ）を構成こうせいし、欧州おうしゅう動物どうぶつ園えん水族館すいぞくかん協会きょうかい（EAZA）や世界せかい動物どうぶつ園えん水族館すいぞくかん協会きょうかい（WAZA）を主導しゅどうする立場たちばにある。社団しゃだん法人ほうじんドイツ動物どうぶつ園えん連盟れんめい VdZ （Verband der Zoologischen Gärten e.V.）は世界せかい最古さいこの動物どうぶつ園えん協会きょうかいとされ、1887年ねんに社団しゃだん法人ほうじんドイツ動物どうぶつ園長えんちょう連盟れんめい VDZ （Verband Deutscher Zoodirekton e.V.）として創設そうせつされ（2014年ねんに名称めいしょう変更へんこう）、ドイツのほかスイス、 オーストリアなどの動物どうぶつ園えんも参加さんかしている。このほかにドイツ動物どうぶつ園えん連盟れんめいとは別べつに比較的ひかくてき小ちいさい動物どうぶつ園えんが加盟かめいする社団しゃだん法人ほうじんドイツ動物どうぶつ園えん協会きょうかい DTG（Deutsche Tierpark-Gesellschaft e.V.）がある。

アメリカ

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは1865年ねんにセントラルパークの一角いっかくに動物どうぶつ園えんが開設かいせつされてはいたが、1874年ねんにできたフィラデルフィア動物どうぶつ園えんがアメリカ最初さいしょの動物どうぶつ園えんと称しょうされている。アメリカにはトラやライオンなどの保護ほごされた動物どうぶつだけで経営けいえいされている公益こうえき慈善じぜん団体だんたいによる動物どうぶつ園えんもある。

米国べいこくでは動物どうぶつ園えん、サーカス、観光かんこう牧場ぼくじょう、一部いちぶの動物どうぶつ保護ほご施設しせつなどは動物どうぶつ展示てんじ業者ぎょうしゃ （animal exhibitors） とされ、米国べいこく農務のうむ省しょう（USDA）傘下さんかの動植物どうしょくぶつ検疫けんえき局きょくAPHIS（Animal and Plant Health Inspection Service）から許可きょかを得える必要ひつようがあり動物どうぶつ福祉ふくし法ほうに基もとづく査察ささつの対象たいしょうとなる。

アメリカ動物どうぶつ園えん協会きょうかい（ZAA）には動物どうぶつ園えんの認証にんしょう制度せいどがある。ただし、ZAA認証にんしょうの動物どうぶつ園えんには、比較的ひかくてき狭せまい敷地しきちでトラやライオン、クマなどを飼育しいくする市役所しやくしょ直営ちょくえいの動物どうぶつ園えんがあるなど問題もんだい点てんも指摘してきされており、ZAA認証にんしょうの民営みんえい動物どうぶつ園えんには動物どうぶつ保護ほご活動かつどうを行おこなう全米ぜんべい人道じんどう協会きょうかい（HSUS）から厳きびしく批判ひはんされている動物どうぶつ園えんもある。一方いっぽう、北米ほくべいを中心ちゅうしんとする動物どうぶつ園えんや水族館すいぞくかんで組織そしきされる動物どうぶつ園えん水族館すいぞくかん協会きょうかいAZAには厳きびしい認証にんしょう基準きじゅんがあるが、加盟かめい施設しせつは米国べいこく農務のうむ省しょう（USDA）が認可にんかする動物どうぶつ展示てんじ業者ぎょうしゃの1割わりにも満みたないといわれている。

米国べいこくでは入園にゅうえん料りょうを無料むりょうとし、動物どうぶつショーや子供こども動物どうぶつ園えん、遊具ゆうぐなどを別べつ料金りょうきんとする動物どうぶつ園えんが数多かずおおく存在そんざいする。動物どうぶつ園えんに水みず族ぞく展示てんじ施設しせつや昆虫こんちゅう展示てんじ施設しせつを併設へいせつしていることも多おおい。

平均へいきんして30ha以上いじょうの敷地しきち面積めんせきを持もつ動物どうぶつ園えんが多おおく、広大こうだいな展示てんじ場じょうで多おおくの動物どうぶつを飼育しいくし、生息せいそく地ちを再現さいげんした展示てんじ方法ほうほうが特徴とくちょうである。

日本にっぽん

法令ほうれい上じょうは博物館はくぶつかん（場合ばあいによっては動物どうぶつ愛護あいご管理かんり法ほう上うえ、「第だい一種いっしゅ動物どうぶつ取扱とりあつかい業ぎょう」）の一種いっしゅとされる。

上野動物園うえのどうぶつえん正門せいもん（1952年ねん）

日本にっぽんでは江戸えど時代じだいの寛政かんせい年間ねんかんに「孔雀くじゃく茶屋ちゃや」「鹿しか茶屋ちゃや」など珍めずらしい動物どうぶつを飼育しいくしている施設しせつがあったが、主おもに茶代ちゃだいを利益りえきとする店みせの宣伝せんでん目的もくてきであり、動物どうぶつの収集しゅうしゅうを目的もくてきとするものではなかった。

日本にっぽんの多おおくの動物どうぶつ園えんは20ha以下いかの敷地しきち面積めんせきであることが多おおい。

日本にっぽん最初さいしょの動物どうぶつ園えんは恩賜おんし上野動物園うえのどうぶつえんで、上野うえのに移転いてんした博物館はくぶつかん（後ごの東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかん）の附属ふぞく施設しせつとして1882年ねん（明治めいじ15年ねん）に開園かいえんした。これより以前いぜんに福澤ふくさわ諭吉ゆきちが著書ちょしょの『西洋せいよう事情じじょう・初はつ編へん』（1866年ねん（慶応けいおう2年ねん））の中なかで「動物どうぶつ園えんには生いきながら禽獣きんじゅう魚ぎょ虫むしを養やしなえへり」と紹介しょうかいしている。動物どうぶつ園えんという呼称こしょうはZoological Gardensの訳わけで、これが初出しょしゅつという説せつがある（それまでは禽獣きんじゅう園えんと呼よばれていた）。

その後ご、全国ぜんこくの各かく地方ちほう都市としに動物どうぶつ園えんが開園かいえんしたが、太平洋戦争たいへいようせんそう中なかにはほとんどの動物どうぶつ園えんが閉鎖へいさ状態じょうたいとなり、戦後せんごに徐々じょじょに再開さいかいされていく。1970年代ねんだいまで教育きょういく施設しせつとしても子供こども連づれを中心ちゅうしんに親したしまれ、またこの頃ころは移動いどう動物どうぶつ園えんも多おおかった。だが1980年代ねんだい以降いこうは余暇よか活動かつどうの多様たよう化かや出生しゅっしょう率りつの低下ていか（少子化しょうしか）等とうの理由りゆうによって入場にゅうじょう者しゃが減へり、閉園へいえんに至いたる園えんも出でた。

そうした環境かんきょう下かで行動こうどう展示てんじ等とうによって成功せいこうした例れいの一ひとつに旭川あさひかわ市し旭山あさひやま動物どうぶつ園えんが挙あげられている。

動物どうぶつ園えんの展示てんじ動物どうぶつの餌えさとなる野菜やさいや果物くだものは、農家のうかが流通りゅうつうに乗のらない規格きかく外がいのものを卸おろす。ササや野草やそうなどの人間にんげんの食用しょくようではない作物さくもつは動物どうぶつ園えんが専せん門もんに利用りようする業者ぎょうしゃから取とり扱あつかっている。また、来らい園えん者しゃから果物くだものや木この実みを寄付きふされるパターンもある。

日本にっぽんの展示てんじ飼育しいくの形態けいたいは、長ながらく人ひとと動物どうぶつが同おなじ空間くうかんで関かかわる「直接ちょくせつ飼育しいく法ほう」であり、欧米おうべいで確立かくりつした後述こうじゅつする動物どうぶつ福祉ふくしに着目ちゃくもくした「準じゅん間接かんせつ飼育しいく法ほう」が採用さいようされるようになるのは、90年代ねんだいに入はいってからである。

課題かだい

動物どうぶつ福祉ふくし

動物どうぶつ園えんを訪おとずれる人ひとの 80% 以上いじょうが、動物どうぶつは飼育しいく下かで幸しあわせに暮くらしていると信しんじる一方いっぽう、動物どうぶつ園えんの動物どうぶつの 90% 以上いじょうは、自然しぜんな行動こうどうをするには小ちいさすぎる囲がこいの中なかで暮くらしており、動物どうぶつ園えんの動物どうぶつの 50% 以上いじょうにストレスやうつ病びょうの兆候ちょうこうが見みられるという実態じったいがある。

動物どうぶつ園えんの飼育しいく環境かんきょうは、動物どうぶつにとって狭せまく、ストレスになったり飼育しいく員いんの取とり扱あつかいが不適切ふてきせつであったりするという、動物どうぶつの権利けんり面めんからの指摘してき・批判ひはんがある。動物どうぶつ解放かいほうを掲かかげるアニマル・リベレーター・ネットは「収容しゅうよう所しょ」と呼称こしょうしている。このため、自然しぜん環境かんきょうへのより科学かがく的てきな理解りかいを深ふかめるとともに、動物どうぶつ福祉ふくしの観点かんてんから、飼育しいく・展示てんじ方法ほうほうの見直みなおしが進すすめられている。飼育しいく対象たいしょうの動物どうぶつが野生やせいで暮くらしていた環境かんきょう（植生しょくせいや地形ちけいの再現さいげん、群むれる動物どうぶつの単たん頭あたまを避さける等ひとし）を整備せいびしたり、野生やせいでの捕獲ほかくでなく、なるべく飼育しいく下かで繁殖はんしょくした個体こたいを収集しゅうしゅうしたり、過度かどの擬人ぎじん化か（服ふくを着きせる等ひとし）を禁止きんししたり、ライオン等ひとしの肉食にくしょく動物どうぶつに対たいして鳥獣ちょうじゅうを丸まるごと与あたえる屠ほふ体からだ（とたい）給餌きゅうじをしたり、ふれあいを廃止はいししたりなどの配慮はいりょがされるようになっている。

経営けいえい難なん

2016年ねん8月がつには『Yahoo!ニュース』オリジナル記事きじとして「『動物どうぶつ園えん』は何なにのためにあるのか 苦境くきょうで問とわれる存在そんざい意義いぎ」という見出みだしの特集とくしゅう記事きじが組くまれ、動物どうぶつ園えんの経営けいえい難なんについて触ふれられた。その記事きじによると以下いかの通とおりである。

木下きのした直之なおゆきによると、日本にっぽんでは、高度こうど経済けいざい成長せいちょう期きの1950年代ねんだいから1960年代ねんだいに多数たすうの動物どうぶつ園えんが作つくられた。戦後せんご復興ふっこうのなかで、地方自治体ちほうじちたいが子こども向むけの娯楽ごらく施設しせつとして設もうけたものが多おおかったという。その流ながれをくみ、2016年ねんでもおよそ8割わりが公共こうきょう施設しせつで、大半たいはんは市営しえいである。しかし1990年代ねんだい以降いこう、レジャーの多様たよう化かなどで来き園えん者しゃ数すうが伸のび悩なやむようになり、自治体じちたいの財政難ざいせいなんが深刻しんこく化かするとともに、動物どうぶつ園えんは「お荷物にもつ」扱あつかいされるようになった。木下きのしたはその背景はいけいとして、多おおくの自治体じちたいで動物どうぶつ園えんの存在そんざい意義いぎが明確めいかくではなかったことを挙あげる。

また、自治体じちたい職員しょくいんとして動物どうぶつ園えんに勤務きんむしていたことがある帝京科学大学ていきょうかがくだいがくの佐渡さわたり友とも陽ひ一いち講師こうしは「日本にっぽんの動物どうぶつ園えんは入園にゅうえん料りょうが安やすい」と指摘してきする。日本にっぽんの公立こうりつの動物どうぶつ園えんは、一般いっぱんの大人おとなが500円えん前後ぜんこうで、高たかくても1000円えん以下いか。それに対たいして欧米おうべいやオーストラリアの動物どうぶつ園えんは、安やすくても1000円えん台だいで、多おおくは2000円えんから3000円えんだという。佐渡さどは「日本にっぽんの動物どうぶつ園えんもかつては独立どくりつ採算さいさんでしたが(中略ちゅうりゃく)今いまの動物どうぶつ園えんは、大雑把おおざっぱに言いうと3分ぶんの1が受益じゅえき者しゃ負担ふたんで、残のこり3分ぶんの2が税金ぜいきんという仕組しくみです」と解説かいせつしている。

その他たの課題かだい

• スペースと財政ざいせいの制約せいやくと余剰よじょう動物どうぶつへの対処たいしょ。
• 事故じこ（大型おおがた草食そうしょく動物どうぶつによる飼育しいく員いんへの危害きがい）。
• 飼育しいく員いんを殺傷さっしょうした事故じこを起おこした動物どうぶつの処遇しょぐう。
• 経営けいえいの問題もんだいによって多数たすうの動物どうぶつが死亡しぼうし、死しの動物どうぶつ園えんとよばれたスラバヤ動物どうぶつ園えんなどの例れい。
• 戦争せんそう時じの食糧難しょくりょうなん、洪水こうずいなどの被災ひさい。

動物どうぶつを解放かいほうする動うごき

ヒト以外いがいの動物どうぶつに権利けんりを認みとめる動うごきが近年きんねん活発かっぱつになっている。アルゼンチンでは2016年ねんにチンパンジー、2019年ねんにオランウータンを動物どうぶつ園えんから釈放しゃくほうし、保護ほご区くに移うつすよう命めいじた。2017年ねんにはコロンビアの最高さいこう裁判所さいばんしょが、メガネグマを動物どうぶつ園えんから釈放しゃくほうして自然しぜん保護ほご区くへの移送いそうを命めいじた。2022年ねんには、米べいニューヨーク州しゅうでは控訴こうそ裁判所さいばんしょが、知能ちのうが高たかいことで有名ゆうめいなアジアゾウの「ハッピー」をブロンクス動物どうぶつ園えんから釈放しゃくほうすべきかどうかについて、判断はんだんを下くだす予定よていとなっている。

関連かんれん項目こうもく

• 動物どうぶつ園えんの一覧いちらん
• 日本にっぽんの動物どうぶつ園えん一覧いちらん
• 移動いどう動物どうぶつ園えん
• 水族館すいぞくかん
• 植物しょくぶつ園えん
• 人間にんげん動物どうぶつ園えん
• ふれあい動物どうぶつ園えん
• アニマルテーマパーク
• バーチャル動物どうぶつ園えん
• 動物どうぶつの異常いじょう行動こうどうのリスト
• 種たねの保存ほぞん計画けいかく - 加盟かめい動物どうぶつ園えんは、希少きしょう動物どうぶつの保護ほご・繁殖はんしょくのための活動かつどうを行おこなっている。
  • 冷凍れいとう動物どうぶつ園えん - 動物どうぶつ由来ゆらいの遺伝いでん情報じょうほうを保存ほぞんする。
• 獣医じゅうい、獣医じゅうい学がく、動物どうぶつ学がく
• 古賀こが賞しょう、繁殖はんしょく賞しょう
• 動物どうぶつ脱出だっしゅつ対応たいおう - 動物どうぶつ園えんから脱走だっそうした場合ばあいの対応たいおう。

外部がいぶリンク

• 公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん日本動物園水族館協会にほんどうぶつえんすいぞくかんきょうかい
• 東京とうきょう都と 動物どうぶつ園えん・水みず族ぞく園えん
• 世界せかいの動物どうぶつ園えん&水族館すいぞくかん（繁体字はんたいじ中国語ちゅうごくご）