川本かわもと信彦のぶひこ

川本かわもと 信彦のぶひこ かわもと のぶひこ
生誕せいたん	(1936-03-03) 1936年ねん3月3日にち（88歳さい） 日本にっぽん・東京とうきょう都と
教育きょういく	東北大学とうほくだいがく・大学院だいがくいん
業績ぎょうせき
専門せんもん分野ぶんや	自動車じどうしゃエンジニア 自動車じどうしゃ内燃ないねん機関きかん
所属しょぞく機関きかん	本田技研工業ほんだぎけんこうぎょう
勤務きんむ先さき	本田ほんだ技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ 無限むげんホンダ（出向しゅっこう） 本田技研ほんだぎけん本社ほんしゃ
プロジェクト	ホンダF1
成果せいか	F1選手権せんしゅけん 3勝しょう F1エンジンサプライヤー69勝しょう ホンダ・NSXの開発かいはつ

川本かわもと 信彦のぶひこ（かわもと のぶひこ、1936年ねん3月3日にち - ）は、日本にっぽんの自動車じどうしゃ技術ぎじゅつ者しゃ。本田技研工業ほんだぎけんこうぎょう（ホンダ）の第だい4代だい社長しゃちょう。東京とうきょう都と出身しゅっしん。麻布まふ高校こうこう卒そつ。東北大学とうほくだいがく大学院だいがくいん精密せいみつ工学科こうがっか修了しゅうりょう。

ホンダF1の草創そうそう期きから携たずさわってきた一人ひとりで、第だい2期きホンダF1時代じだいには総そう責任せきにん者しゃを務つとめた。また、ホンダ・レーシング・ディベロップメント（HRD）や、無限むげんホンダ（現げん:M-TEC）設立せつりつ者しゃの一人ひとりとしても名なを連つらねている。

来歴らいれき

ホンダF1創設そうせつ時代じだい

1963年ねんに大学院だいがくいんを修了しゅうりょうし本田技研工業ほんだぎけんこうぎょうに入社にゅうしゃ。入社にゅうしゃ理由りゆうは軽けい飛行機ひこうき技術ぎじゅつ者しゃ応募おうぼ広告こうこくを見みて応募おうぼした。入社にゅうしゃ当初とうしょは後のちにホンダの3代目だいめ社長しゃちょうとなる久米くめ是ただし志こころざしの助手じょしゅとして、ホンダ初はつの四よん輪りん市販しはん車しゃ「型式けいしき：AS280（後ごの商品しょうひん名めい；S500）」「型式けいしき：AK250（後ごの商品しょうひん名めい；T360）」のエンジン開発かいはつに携たずさわる。

1964年ねん、当時とうじのF2用もちい1,000ccエンジンを久米くめと共ともに開発かいはつ、翌よく1965年ねんからヨーロッパF2に参戦さんせんするブラバムチームに供給きょうきゅうを開始かいし。1966年ねんには久米くめ・川本かわもとの手てがけたF2エンジンを搭載とうさいしたブラバムチームの車くるまがF2で開幕かいまく11連勝れんしょうを飾かざる。この頃ころF2エンジン開発かいはつの傍かたわら、入交いりまじり昭一郎しょういちろうらと共ともに生なま沢さわ徹とおるが運転うんてんするS600のチューンアップを手てがけたりもしている。

1967年ねん、ホンダF1のエンジン責任せきにん者しゃに就任しゅうにん、水冷すいれい3,000ccエンジンの設計せっけいを任まかされるが、この頃ころ本田ほんだ宗そう一郎いちろうが空冷くうれいエンジンによるF1参戦さんせん計画けいかく（詳くわしくはホンダ・RA302を参照さんしょう）を提唱ていしょうしたため、水冷すいれいエンジンの開発かいはつが後回あとまわしにされるなどの不運ふうんが重かさなりレースの成績せいせきは芳かんばしくなかった。

1968年ねん一いち杯はいで第だい1期きF1参戦さんせんを終了しゅうりょうすると、市販しはん車しゃの設計せっけい部門ぶもんに移動いどうしホンダ・1300やライフ（初代しょだい）などのエンジン設計せっけいを担当たんとうする。しかし、レース車両しゃりょうを手てがけたいという思おもいは強つよく、1972年ねん（1970年ねんとの説せつもある）の年末ねんまつにはコスワースへの転職てんしょくを画策かくさくしロンドンに渡わたり、帰国きこく後ごすぐにホンダに辞表じひょうを提出ていしゅつした。その後ご2ヶ月かげつほど出社しゅっしゃしなかったものの（その間あいだ自宅じたくでレース用ようエンジンの設計せっけい図ずを描えがいていた）、最終さいしゅう的てきに久米くめ是ただし志こころざしに慰留いりゅうされる形かたちでコスワースへの転職てんしょくを断念だんねんした。

その後ご1973年ねんに、ホンダに在籍ざいせきしながら本田ほんだ博俊ひろとしらと共ともに株式会社かぶしきがいしゃ『無限むげん』（現げん：M-TEC）を創業そうぎょう。同年どうねんにはFJ1300向むけのエンジンを開発かいはつして無限むげんから供給きょうきゅうを開始かいしする（この時ときメカニックとして無限むげんに出向しゅっこうした人物じんぶつに市田いちだ勝己かつみ（現げん・株式会社かぶしきがいしゃケーヒン専務せんむ）がいた）。1976年ねんには本田ほんだ技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょの取締役とりしまりやくになる。

第だい2期きホンダF1時代じだい

1978年ねんには四よん輪りんレースへの本格ほんかく復帰ふっきを狙ねらってF2用ようの2,000ccエンジン（ホンダ・RA260E）の開発かいはつを開始かいしし、1980年ねんシーズンの半なかばからヨーロッパF2選手権せんしゅけんへ供給きょうきゅう。翌よく1981年ねんにはジェフ・リースがラルト・ホンダに乗のりシリーズチャンピオンを獲得かくとくする。同年どうねん5月がつには本田ほんだ技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょの副ふく社長しゃちょうに昇格しょうかく。続つづいて1983年ねんにはF1用ようの1,500ccターボエンジン（ホンダ・RA163E）を開発かいはつしてスピリットへ供給きょうきゅう（1983年ねんシーズンのみ）、第だい2期きF1参戦さんせんをスタートさせる。同年どうねんの最終さいしゅう戦せんからはウィリアムズにもエンジン供給きょうきゅうを開始かいし。1983年ねんにホンダ本社ほんしゃの常務じょうむに就任しゅうにんしたことから、翌よく1984年ねんの夏なつにはF1エンジンの責任せきにん者しゃを桜井さくらい淑よし敏さとしに託たくす。

1986年ねんには本田ほんだ技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょの社長しゃちょうに就任しゅうにん、ホンダの製品せいひん開発かいはつの総そう責任せきにん者しゃとなる。1989年ねんにはホンダ本社ほんしゃの専務せんむに昇格しょうかく。翌よく1990年ねんにホンダの第だい4代だい社長しゃちょうに就任しゅうにん。

1992年ねん7月がつ、｢初期しょきの目標もくひょうを達成たっせいした｣ことを理由りゆうとして、同どうシーズン最終さいしゅう戦せんをもってホンダのF1参戦さんせんを終了しゅうりょうすると表明ひょうめい。実情じつじょうは1990年ねん末すえにF1撤退てったいは決定けっていされており、マクラーレンチーム側がわにも伝つたえていた。しかしホンダ社内しゃないでは、参戦さんせん継続けいぞくを訴うったえる社員しゃいんも多おおかった。

一方いっぽうで市販しはん車しゃの分野ぶんやでは、ホンダ初はつの国産こくさんスーパースポーツカーとも評ひょうされる「ホンダ・NSX」の開発かいはつを企画きかくし、1990年ねんの発売はつばいにこぎ着つけるまで尽力じんりょくしている。

第だい3期きホンダF1時代じだい

1998年ねん3月、2000年ねんからの第だい3期きホンダF1の参戦さんせん予定よていを発表はっぴょう。英国えいこくにホンダ・レーシング・ディベロップメント（HRD）を設立せつりつし、エンジンだけでなくシャシーも含ふくめた『オールホンダ』によるF1参戦さんせんの意思いしを表明ひょうめい。そして同年どうねんに社長しゃちょうを退任たいにんし、取締役とりしまりやく相談役そうだんやくに退しりぞいた。しかし、翌よく1999年ねんには後任こうにんの吉野よしの浩行ひろゆきが、諸しょ事情じじょうによりこの方針ほうしんを撤回てっかい、B・A・Rへのエンジン供給きょうきゅう（サプライヤー）の形かたちでF1に復帰ふっきする方針ほうしんに転換てんかんした。

エピソード

• 社長しゃちょう就任しゅうにん後ごも現場げんばのF1チームとの関係かんけいは深ふかく､アイルトン・セナからも大おおきな信頼しんらいを寄よせられており､良よき相談そうだん相手あいてだったことでも知しられている。1989年ねん末まつに、セナが国際こくさい自動車じどうしゃスポーツ連盟れんめい（FISA）から厳罰げんばつ（執行しっこう猶予ゆうよつきスーパーライセンス停止ていし処分しょぶん）を受うけ、引退いんたいをほのめかした際さいには、自みずからセナに電話でんわをかけ『君きみが辞やめるならホンダも撤退てったいする』と伝つたえ慰留いりゅうし、セナは『自分じぶんの進退しんたいはMr.カワモトに任まかせる』と全権ぜんけんを川本かわもとに委ゆだねたともいわれる。
• 当時とうじの会社かいしゃ業績ぎょうせきからはやむを得えない判断はんだんだが、第だい2期きF1活動かつどうからの撤退てったいを社内しゃないの反対はんたいを振ふり切きり決定けっていしたのは、社長しゃちょうである川本かわもとであった。しかし、現場げんば出身しゅっしんである川本かわもとはF1を愛あいしており、業績ぎょうせきの回復かいふくした際さいはF1へ復帰ふっきするタイミングを計はかっていたといわれ、第だい3期き参戦さんせんを積極せっきょく的てきに推進すいしんしたのも川本かわもとであった。
• 元もと々ホンダは、社内しゃないで「（本田ほんだ宗そう一郎いちろう率ひきいる）本田技研ほんだぎけんと（藤沢ふじさわ武夫たけお率ひきいる）藤沢ふじさわ商会しょうかい」と呼よばれるほど、開発かいはつ・技術ぎじゅつ部門ぶもんと販売はんばい部門ぶもんの間あいだで指揮しき系統けいとうが二分にぶんされており（これはかつてのトヨタ自動車とよたじどうしゃの「工こう販分離ぶんりモデル」を参考さんこうにしたと言いわれている）、部門ぶもん間あいだを跨またいで運営うんえいに注文ちゅうもんをつけることはタブーとされてきた。そのため社長しゃちょう（歴代れきだい技術ぎじゅつ系けいから選えらばれている）が販売はんばい部門ぶもんのやり方かたに口くちを出だすことも憚はばかられていたが、川本かわもとがそのタブーを破やぶり、社長しゃちょうの元もとに開発かいはつ部門ぶもんと販売はんばい部門ぶもんの指揮しき系統けいとうを一本いっぽん化かしたとされる。

外部がいぶリンク

• ホンダF1公式こうしきサイト
• 本田技研ほんだぎけん F1サイト