陪審 ばいしん 制 せい (ばいしんせい、英 えい : jury trial, trial by jury )とは、陪審 ばいしん 員 いん が判決 はんけつ や事実 じじつ 認定 にんてい を行 おこな う合法 ごうほう 的 てき な手続 てつづ きのことである。これは、裁判官 さいばんかん または裁判官 さいばんかん 団 だん がすべての決定 けってい を下 くだ すベンチ・トライアル (bench trial)とは異 こと なる。
陪審 ばいしん 員 いん 裁判 さいばん は、多 おお くのコモン・ロー の司法 しほう 制度 せいど において、重大 じゅうだい な刑事 けいじ 事件 じけん のかなりの部分 ぶぶん で用 もち いられているが、すべてではない。アジアのコモン・ロー地域 ちいき (シンガポール 、パキスタン 、インド 、マレーシア など)では、陪審 ばいしん 員 いん が偏見 へんけん を持 も ちやすいという理由 りゆう で陪審 ばいしん 員 いん 裁判 さいばん を廃止 はいし している国 くに が多 おお い。また、多 おお くの大陸 たいりく 法 ほう 国 くに では、刑事 けいじ 事件 じけん については、陪審 ばいしん 員 いん や裁判 さいばん 員 いん が法 ほう 制度 せいど に組 く み込 こ まれている。米国 べいこく のみが、刑事 けいじ 事件 じけん 以外 いがい の様々 さまざま な事件 じけん で陪審 ばいしん 員 いん 裁判 さいばん を日常 にちじょう 的 てき に利用 りよう している。他 た のコモン・ロー法域 ほういき では、民事 みんじ 事件 じけん 全体 ぜんたい の中 なか でごく一部 いちぶ の事件 じけん (イングランド やウェールズ における悪質 あくしつ な起訴 きそ や誤 あやま った投獄 とうごく の訴訟 そしょう など)でのみ陪審 ばいしん 裁判 さいばん を採用 さいよう しているが、世界 せかい の他 ほか の地域 ちいき では、民事 みんじ 陪審 ばいしん 裁判 さいばん はほとんど行 おこな われていない。しかし、一部 いちぶ の大陸 たいりく 法 ほう 地域 ちいき では仲裁 ちゅうさい パネルが設置 せっち されており、法的 ほうてき な訓練 くんれん を受 う けていないメンバーが、仲裁 ちゅうさい パネルのメンバーの専門 せんもん 分野 ぶんや に関連 かんれん する特定 とくてい の主題 しゅだい 分野 ぶんや の事件 じけん を決定 けってい している。
陪審 ばいしん 裁判 さいばん は、大陸 たいりく 法 ほう 制度 せいど ではなくコモン・ロー制度 せいど の中 なか で発展 はってん してきたものであり、たとえ特定 とくてい の事件 じけん で実際 じっさい にはベンチ・トライアルが想定 そうてい されていたとしても、米国 べいこく の民事 みんじ 訴訟 そしょう 規則 きそく や刑事 けいじ 訴訟 そしょう 規則 きそく の性質 せいしつ に大 おお きな影響 えいきょう を与 あた えてきた。一般 いっぱん 的 てき に、適切 てきせつ に要求 ようきゅう されれば陪審 ばいしん 員 いん 裁判 さいばん を受 う けることができるため、事実 じじつ 認定 にんてい は複 ふく 数 すう 回 かい の審理 しんり ではなく1回 かい の裁判 さいばん に集中 しゅうちゅう し、裁判 さいばん の判決 はんけつ に対 たい する上訴 じょうそ 審査 しんさ は大幅 おおはば に制限 せいげん されている。コモン・ロー制度 せいど を持 も たない国 くに では、陪審 ばいしん 裁判 さいばん の重要 じゅうよう 性 せい ははるかに低 ひく い。
陪審 ばいしん には、刑事 けいじ 事件 じけん で被疑 ひぎ 者 しゃ を起訴 きそ するか否 ひ かを陪審 ばいしん 員 いん が決定 けってい する大 だい 陪審 ばいしん (だいばいしん、英 えい :grand jury、起訴 きそ 陪審 ばいしん )と、陪審 ばいしん 員 いん が刑事 けいじ 訴訟 そしょう や民事 みんじ 訴訟 そしょう の審理 しんり に参加 さんか する小 しょう 陪審 ばいしん (しょうばいしん、英 えい :petit jury、審理 しんり 陪審 ばいしん )がある。これらの名称 めいしょう は、伝統 でんとう 的 てき に大 だい 陪審 ばいしん は23人 にん 、小 しょう 陪審 ばいしん は12人 にん で構成 こうせい されていることによる。一般 いっぱん に陪審 ばいしん という場合 ばあい は小 しょう 陪審 ばいしん のことを指 さ す。
陪審 ばいしん 員 いん は一般 いっぱん 市民 しみん から無作為 むさくい で選 えら ばれ、刑事 けいじ 事件 じけん や民事 みんじ 事件 じけん の審理 しんり に立 た ち会 あ った後 のち 、陪審 ばいしん 員 いん のみで評議 ひょうぎ を行 おこな い、結論 けつろん である評決 ひょうけつ を下 くだ す。同様 どうよう に一般 いっぱん 市民 しみん が裁判 さいばん に参加 さんか する制度 せいど として参 さん 審 しん 制 せい や、日本 にっぽん で実施 じっし されている裁判 さいばん 員 いん 制度 せいど があるが、陪審 ばいしん 制 せい は裁判官 さいばんかん が評議 ひょうぎ に加 くわ わらず、陪審 ばいしん 員 いん のみで事実 じじつ 認定 にんてい と法 ほう の適用 てきよう を行 おこな う点 てん でこれらと異 こと なる。
陪審 ばいしん 制 せい はイギリス で古 ふる くから発展 はってん し、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 等 ひとし に受 う け継 つ がれたものである。
アメリカでは連邦 れんぽう や各州 かくしゅう の憲法 けんぽう で刑事 けいじ 陪審 ばいしん 及 およ び民事 みんじ 陪審 ばいしん が保障 ほしょう されており、年 とし に9万 まん 件 けん 以上 いじょう の陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われている。イギリスでも刑事 けいじ 陪審 ばいしん は行 おこな われているが、民事 みんじ 陪審 ばいしん はほとんど行 おこな われていない。その他 た 、オーストラリア 、カナダ 、韓国 かんこく 、デンマーク 、ニュージーランド 、ロシア 等 とう で陪審 ばいしん 制 せい が行 おこな われている。
日本 にっぽん でも戦前 せんぜん 、1928年 ねん (昭和 しょうわ 3年 ねん )から刑事 けいじ 陪審 ばいしん が実施 じっし されたが、1943年 ねん (昭和 しょうわ 18年 ねん )に施行 しこう 停止 ていし されたまま現在 げんざい に至 いた っている。
現在 げんざい 陪審 ばいしん 制 せい が実施 じっし されている主 おも な国 くに であるアメリカ(連邦 れんぽう 、各州 かくしゅう )及 およ びイギリス(イングランド 、ウェールズ )における一般 いっぱん 的 てき な陪審 ばいしん 審理 しんり の手続 てつづき は、以下 いか のとおりである[1] 。
陪審 ばいしん 員 いん の数 かず は、伝統 でんとう 的 てき には12人 にん であるが、法域 ほういき (国 くに や州 しゅう )[注 ちゅう 1] によって、これより少 すく ない人数 にんずう としているところもある。陪審 ばいしん 員 いん は、一般 いっぱん 市民 しみん の中 なか から無作為 むさくい で選任 せんにん され、宣誓 せんせい の後 のち 、法廷 ほうてい の中 なか に設 もう けられた陪審 ばいしん 員 いん 席 せき に着席 ちゃくせき して審理 しんり (対審 たいしん [注 ちゅう 2] )に立 た ち会 あ う。
ネバダ州 しゅう にある裁判所 さいばんしょ の陪審 ばいしん 員 いん 席 せき 。通常 つうじょう は陪審 ばいしん 員 いん 席 せき は左右 さゆう どちらかの壁際 かべぎわ にあり、法廷 ほうてい の中央 ちゅうおう に設 もう けられているのは珍 めずら しい。
陪審 ばいしん 員 いん の参加 さんか する審理 しんり においては、裁判官 さいばんかん は法廷 ほうてい を主催 しゅさい して訴訟 そしょう 指揮 しき (異議 いぎ の裁定 さいてい など)を行 おこな い、陪審 ばいしん 員 いん が偏見 へんけん を与 あた えられたり、不適切 ふてきせつ な証拠 しょうこ が法廷 ほうてい に持 も ち込 こ まれたりすることを防 ふせ ぐ。そして、裁判官 さいばんかん は、審理 しんり が終 お わった段階 だんかい で、陪審 ばいしん 員 いん に、どのような法 ほう が適用 てきよう されるべきかという詳細 しょうさい な説示 せつじ (英 えい :instruction, charge) を行 おこな う。陪審 ばいしん は、法廷 ほうてい に提出 ていしゅつ された証拠 しょうこ と、裁判官 さいばんかん の説示 せつじ を踏 ふ まえ、事実 じじつ 認定 にんてい とその事実 じじつ に対 たい する法 ほう の適用 てきよう の双方 そうほう について密室 みっしつ で評議 ひょうぎ した上 うえ で、評決 ひょうけつ (英 えい :verdict) を答申 とうしん する[注 ちゅう 3] 。民事 みんじ 陪審 ばいしん では、例 たと えば被告 ひこく の責任 せきにん の有無 うむ だけでなく損害 そんがい 賠償 ばいしょう 額 がく についても評決 ひょうけつ を答申 とうしん する。刑事 けいじ 事件 じけん では、陪審 ばいしん が有罪 ゆうざい ・無罪 むざい を答申 とうしん し、有罪 ゆうざい の場合 ばあい の量刑 りょうけい については裁判官 さいばんかん が決定 けってい するのが原則 げんそく である。評決 ひょうけつ は、伝統 でんとう 的 てき に全員 ぜんいん 一致 いっち であることが必要 ひつよう であるが、現在 げんざい では、法域 ほういき によって特別 とくべつ 多数決 たすうけつ (11対 たい 1や10対 たい 2など)を認 みと めるところもある。陪審 ばいしん 員 いん の意見 いけん が分 わ かれ、全員 ぜんいん 一致 いっち や特別 とくべつ 多数決 たすうけつ の条件 じょうけん を満 み たさない場合 ばあい は評決 ひょうけつ 不能 ふのう (英語 えいご 版 ばん ) (英 えい :hung jury) となり、新 あら たな陪審 ばいしん の選任 せんにん から裁判 さいばん をすべてやり直 なお す必要 ひつよう がある法域 ほういき が多 おお い。
評決 ひょうけつ が出 で た場合 ばあい 、裁判官 さいばんかん は、その評決 ひょうけつ に従 したが って判決 はんけつ を下 くだ す。ただし、陪審 ばいしん 員 いん の判断 はんだん が証拠 しょうこ を無視 むし した著 いちじる しく不適切 ふてきせつ なものであると判断 はんだん したときに、裁判官 さいばんかん が、陪審 ばいしん 員 いん の判断 はんだん によらず判決 はんけつ を下 くだ すことができる場合 ばあい がある(後述 こうじゅつ #アメリカの民事 みんじ 陪審 ばいしん における「法律 ほうりつ 問題 もんだい としての判決 はんけつ 」など)。
詳 くわ しくは各 かく 項目 こうもく を参照 さんしょう
陪審 ばいしん 員 いん だけが事実 じじつ 認定 にんてい を行 おこな う陪審 ばいしん 制 せい と異 こと なり、職業 しょくぎょう 裁判官 さいばんかん と民間 みんかん 人 じん (参 さん 審 しん 員 いん )がともに審理 しんり ・評議 ひょうぎ を行 おこな う制度 せいど のこと。主 おも にヨーロッパの大陸 たいりく 諸国 しょこく で採用 さいよう されている。参 まいり 審 しん 員 いん は、事件 じけん ごとに選 えら ばれる陪審 ばいしん 員 いん と異 こと なり、任期 にんき 制 せい である[2] 。
日本 にっぽん で2009年 ねん (平成 へいせい 21年 ねん )5月 がつ 21日 にち から施行 しこう された裁判 さいばん 員 いん 制度 せいど は、原則 げんそく として一般 いっぱん 市民 しみん から選 えら ばれた裁判 さいばん 員 いん 6名 めい と職業 しょくぎょう 裁判官 さいばんかん 3名 めい による合議 ごうぎ 体 たい により、一定 いってい の重大 じゅうだい な刑事 けいじ 事件 じけん の審理 しんり を行 おこな い、事実 じじつ 認定 にんてい 及 およ び量刑 りょうけい を判断 はんだん するものであり、参 さん 審 しん 制 せい に近 ちか い制度 せいど である。ただし、裁判 さいばん 員 いん が事件 じけん ごとに選 えら ばれる点 てん では参 まいり 審 しん 制 せい と異 こと なる[3] 。
イングランドにおける生成 せいせい ・発展 はってん [ 編集 へんしゅう ]
イングランド王 おう ヘンリー2世 せい (在位 ざいい 1154年 ねん -1189年 ねん )。今日 きょう の陪審 ばいしん 制 せい の原型 げんけい となる制度 せいど を設 もう けた。
陪審 ばいしん の起源 きげん は、少 すく なくとも9世紀 せいき 初頭 しょとう のフランク王国 おうこく で、国王 こくおう の権利 けんり を確認 かくにん するために地域 ちいき の重要 じゅうよう な者 もの に証言 しょうげん させた制度 せいど (Frankish Inquest) に遡 さかのぼ ることができる[4] 。カール大帝 たいてい の息子 むすこ 、ルートヴィヒ1世 せい が、829年 ねん に、国王 こくおう の権利 けんり について判断 はんだん する際 さい 、その地方 ちほう で最 もっと も優 すぐ れた、最 もっと も信頼 しんらい できる人物 じんぶつ 12人 にん に宣誓 せんせい の上 うえ 陳述 ちんじゅつ させるという制度 せいど を設 もう けた[5] 。この制度 せいど がノルマン・コンクエスト (11世紀 せいき )を経 へ てイングランド に伝 つた えられたとされる[6] 。なお、こうして大陸 たいりく からもたらされた制度 せいど とは別 べつ に、997年 ねん ころアングロ・サクソン の王 おう エゼルレッド2世 せい が、12人 にん の騎士 きし に、聖 きよし 物 ぶつ に対 たい して「いかなる無実 むじつ の者 もの も訴追 そつい することなく、いかなる有罪 ゆうざい の者 もの を隠 かく すことはない」との宣誓 せんせい をさせることとした法律 ほうりつ にも、陪審 ばいしん の一 ひと つの起源 きげん を遡 さかのぼ ることができるという説 せつ がある[7] 。
いずれにしても、現代 げんだい の陪審 ばいしん 制 せい の形成 けいせい については、12世紀 せいき のイングランド王 おう ヘンリー2世 せい の設 もう けた制度 せいど と、1215年 ねん のマグナ・カルタ が大 おお きく寄与 きよ したという点 てん で多 おお くの歴史 れきし 家 か が一致 いっち している[7] 。ヘンリー2世 せい は、司法 しほう 制度 せいど に対 たい する国王 こくおう の支配 しはい を及 およ ぼすために陪審 ばいしん を利用 りよう したと言 い われる[8] 。ヘンリー2世 せい は、土地 とち と相続 そうぞく の争 あらそ いを解決 かいけつ するためにアサイズ (assize) という訴訟 そしょう 類型 るいけい を設 もう けた。そこでは、自由 じゆう かつ法律 ほうりつ 上 じょう の資格 しかく のある男性 だんせい 12人 にん が集 あつ められ、宣誓 せんせい の下 した 、誰 だれ が真 しん の所有 しょゆう 者 しゃ ないし相続 そうぞく 人 じん であるかについて自 みずか らの知識 ちしき を述 の べた。これは今日 きょう の民事 みんじ 陪審 ばいしん の原型 げんけい といえる。ヘンリー2世 せい は、刑事 けいじ 裁判 さいばん でも、1166年 ねん のクラレンドン勅 みことのり 令 れい において、後 ご の大 だい 陪審 ばいしん に当 あ たる訴追 そつい 陪審 ばいしん を創設 そうせつ し、法律 ほうりつ 上 じょう の資格 しかく のある男 おとこ たちに、宣誓 せんせい の下 した 、犯罪 はんざい について疑 うたが わしい人物 じんぶつ を誰 だれ か知 し らないか報告 ほうこく させた。当時 とうじ 、こうして訴追 そつい された者 もの は神明 しんめい 裁判 さいばん にかけられていた[9] 。
マグナ・カルタ に署名 しょめい するジョン王 おう (在位 ざいい 1199年 ねん -1216年 ねん )。
1215年 ねん のマグナ・カルタ では、同輩 どうはい から成 な る陪審 ばいしん の判決 はんけつ によるのでなければ処罰 しょばつ されないという権利 けんり が宣言 せんげん された(39条 じょう )。これは、貴族 きぞく が王権 おうけん を制限 せいげん するためにジョン王 おう に認 みと めさせたものであった[10] [11] 。同 おな じ年 ねん 、第 だい 4ラテラン公 こう 会議 かいぎ で、教皇 きょうこう インノケンティウス3世 せい が、聖職 せいしょく 者 しゃ の神明 しんめい 裁判 さいばん への参加 さんか を禁 きん じたことにより、神明 しんめい 裁判 さいばん を行 おこな うことが難 むずか しくなったこともあって、それに代 か わるものとして陪審 ばいしん による審理 しんり が広 ひろ がっていった[12] 。
そのころの陪審 ばいしん の役割 やくわり は、まだ、証人 しょうにん として自 みずか らの知識 ちしき を述 の べるというものであった。証拠 しょうこ に基 もと づいて事実 じじつ 認定 にんてい を行 おこな うという現代 げんだい 的 てき 役割 やくわり を担 にな うようになったのは、14世紀 せいき ないし15世紀 せいき になってからである。もっとも、その後 ご も、17世紀 せいき ころまでは、陪審 ばいしん 員 いん は法廷 ほうてい に現 あらわ れた証拠 しょうこ のほかに個人 こじん 的 てき な知識 ちしき に基 もと づいて評決 ひょうけつ を下 くだ すことができ、その点 てん で中立 ちゅうりつ 性 せい は強 つよ く要求 ようきゅう されていなかった[13] 。
また、初期 しょき の陪審 ばいしん 制 せい においては、陪審 ばいしん 員 いん が、有罪 ゆうざい 評決 ひょうけつ を答申 とうしん するまで監禁 かんきん されるということも行 おこな われていた。星 ほし 室 しつ 裁判所 さいばんしょ では、有罪 ゆうざい 評決 ひょうけつ を出 だ すことを拒 こば んだ陪審 ばいしん 員 いん に対 たい し、土地 とち や財産 ざいさん を没収 ぼっしゅう して処罰 しょばつ したことが知 し られている。このような伝統 でんとう からの転換 てんかん 点 てん となったのが、1670年 ねん のブシェル事件 じけん (Bushel's Case ) であった。クエーカー であったウィリアム・ペン とウィリアム・ミードが集会 しゅうかい 煽動 せんどう 罪 ざい で訴追 そつい された際 さい 、有罪 ゆうざい 評決 ひょうけつ を出 だ すことを拒 こば んだ12人 にん の陪審 ばいしん 員 いん は、食 た べ物 もの や水 みず も与 あた えられずに2晩 ばん 監禁 かんきん され、それでも無罪 むざい 評決 ひょうけつ を撤回 てっかい しなかったため、罰金 ばっきん を納 おさ めるまでの間 あいだ 懲役 ちょうえき 刑 けい に処 しょ せられた。ブシェルをはじめとする4人 にん の陪審 ばいしん 員 いん は罰金 ばっきん を納 おさ めることを拒否 きょひ し、ヘイビアス・コーパス の訴 うった えを提起 ていき したところ、高等法院 こうとうほういん 王座 おうざ 部 ぶ の首席 しゅせき 判事 はんじ は、陪審 ばいしん は事実 じじつ の認定 にんてい について他 ほか からの干渉 かんしょう を受 う けないという画期的 かっきてき な判断 はんだん をしてブシェルらを釈放 しゃくほう した[14] 。
こうして、17世紀 せいき ころには、陪審 ばいしん は被告人 ひこくにん にとって、苛酷 かこく な刑罰 けいばつ からの防護 ぼうご 壁 かべ という重要 じゅうよう な位置付 いちづ けを与 あた えられるようになった。古 ふる くからのイングランドの刑罰 けいばつ は、重罪 じゅうざい 事件 じけん で有罪 ゆうざい になればほとんどが死刑 しけい に処 しょ せられていたが、中世 ちゅうせい から18世紀 せいき にかけての裁判 さいばん 記録 きろく には、陪審 ばいしん 員 いん が多 おお くの重罪 じゅうざい 事件 じけん の被告人 ひこくにん を無罪 むざい としたり、烙印 らくいん や鞭打 むちう ち程度 ていど で済 す む、より軽 かる い罪 つみ としたりしたことが記 しる されている[15] 。
アメリカにおける継受 けいじゅ [ 編集 へんしゅう ]
アメリカ も、植民 しょくみん 地 ち 時代 じだい からイギリスの陪審 ばいしん 制 せい を継受 けいじゅ し、13邦 くに ともに憲法 けんぽう で陪審 ばいしん 制 せい を保障 ほしょう していた[16] 。アメリカ植民 しょくみん 地 ち では、陪審 ばいしん 制 せい は、当初 とうしょ は重要 じゅうよう な地位 ちい を占 し めていたわけではないが、18世紀 せいき 半 なか ばにイギリスの支配 しはい に対 たい する批判 ひはん が高 たか まってくるにつれて、本国 ほんごく の圧制 あっせい に抵抗 ていこう する手段 しゅだん としての役割 やくわり を果 は たすようになった。植民 しょくみん 地 ち においては、イギリス国王 こくおう の任命 にんめい した検察官 けんさつかん が訴追 そつい を行 おこな い、国王 こくおう が任命 にんめい した裁判官 さいばんかん が裁判 さいばん を主宰 しゅさい していた中 なか 、陪審 ばいしん だけが同 おな じ植民 しょくみん 地 ち 人 じん から構成 こうせい されていたからである[17] 。1735年 ねん には、ニューヨーク植民 しょくみん 地 ち の総督 そうとく に対 たい する批判 ひはん 的 てき 記事 きじ により文書 ぶんしょ 煽動 せんどう 罪 ざい で起訴 きそ された新聞 しんぶん 出版 しゅっぱん 業者 ぎょうしゃ のジョン・ピーター・ゼンガー に、事実 じじつ 関係 かんけい に争 あらそ いがなかったにもかかわらず、ニューヨーク の陪審 ばいしん が無罪 むざい 評決 ひょうけつ を下 くだ した。また、イギリスは、植民 しょくみん 地 ち の貿易 ぼうえき を支配 しはい するため、植民 しょくみん 地 ち を出入 でい りする商品 しょうひん はイギリスの船舶 せんぱく で運 はこ ばなければならないなどとする航海 こうかい 条例 じょうれい に基 もと づく取締 とりしま りを行 おこな ったが、陪審 ばいしん はしばしば無罪 むざい 評決 ひょうけつ を出 だ した。これに対 たい し、イギリスは陪審 ばいしん 審理 しんり を用 もち いない特別 とくべつ 裁判所 さいばんしょ を設置 せっち したが、これに対 たい する不満 ふまん も、アメリカ独立 どくりつ 戦争 せんそう に向 む かう一 ひと つの要因 よういん となった。アメリカ独立 どくりつ 宣言 せんげん でも、イギリス国王 こくおう が「多 おお くの事件 じけん で、陪審 ばいしん による審理 しんり の利益 りえき を奪 うば ったこと」を非難 ひなん している[18] 。
ロサンゼルス における最初 さいしょ の女性 じょせい の陪審 ばいしん (1911年 ねん )。
1788年 ねん に発効 はっこう したアメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 憲法 けんぽう では、刑事 けいじ 陪審 ばいしん が保障 ほしょう された(3条 じょう 2節 せつ 3項 こう )。このとき民事 みんじ 陪審 ばいしん の保障 ほしょう が入 はい らなかったのは、陪審 ばいしん が地元 じもと の訴訟 そしょう 当事 とうじ 者 しゃ に有利 ゆうり に判断 はんだん しがちであるということが懸念 けねん されたためであるが、民事 みんじ 陪審 ばいしん の保障 ほしょう に対 たい する州 しゅう の要求 ようきゅう は強 つよ く、1791年 ねん の憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 条項 じょうこう (権利 けんり 章典 しょうてん )で刑事 けいじ 陪審 ばいしん 及 およ び民事 みんじ 陪審 ばいしん の権利 けんり が保障 ほしょう された(修正 しゅうせい 6条 じょう 、7条 じょう )。同時 どうじ に、大 だい 陪審 ばいしん も保障 ほしょう された(修正 しゅうせい 5条 じょう )[19] 。
当初 とうしょ は、陪審 ばいしん 員 いん になることができるのは十分 じゅうぶん な資力 しりょく のある白人 はくじん 男性 だんせい に限 かぎ られていたが、1868年 ねん に憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 14条 じょう が批准 ひじゅん された後 のち 、連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい は陪審 ばいしん 員 いん の資格 しかく を白人 はくじん 男性 だんせい に限 かぎ る州法 しゅうほう は修正 しゅうせい 14条 じょう の平等 びょうどう 保護 ほご 条項 じょうこう に違反 いはん するとして、人種 じんしゅ による差別 さべつ を禁止 きんし した[20] 。ただ、その後 ご も、陪審 ばいしん 員 いん 選任 せんにん の過程 かてい で黒人 こくじん が排除 はいじょ されるという実態 じったい は根強 ねづよ く残 のこ った。女性 じょせい も、1920年 ねん に選挙 せんきょ 権 けん が付与 ふよ されたものの、男性 だんせい と平等 びょうどう の条件 じょうけん で陪審 ばいしん 員 いん を務 つと めることができるようになったのは1975年 ねん になってからであった[21] 。
訪米 ほうべい 中 ちゅう に陪審 ばいしん 制 せい を観察 かんさつ したフランスのトクヴィル は、「陪審 ばいしん は、人民 じんみん に統治 とうち を行 おこな わせるための最 もっと も力強 ちからづよ い方法 ほうほう であるとともに、人民 じんみん に良 よ く統治 とうち することを教 おし えるための最 もっと も効果 こうか 的 てき な方法 ほうほう でもある」と述 の べた[22] 。
陪審 ばいしん 制 せい には、以下 いか のような意義 いぎ があると考 かんが えられている。
市民 しみん の常識 じょうしき や価値 かち 観 かん の反映 はんえい
例 たと えば、民事 みんじ 事件 じけん における被告 ひこく の責任 せきにん の有無 うむ や損害 そんがい 賠償 ばいしょう 額 がく についての判断 はんだん 、刑事 けいじ 事件 じけん における「正当 せいとう 防衛 ぼうえい 」や「合理 ごうり 的 てき 疑 うたが い」といった法 ほう 概念 がいねん の適用 てきよう に際 さい して、陪審 ばいしん は社会 しゃかい の感覚 かんかく を示 しめ すことができると指摘 してき されている[23] 。
権力 けんりょく や体制 たいせい に対 たい する抑制 よくせい 機能 きのう
前述 ぜんじゅつ のとおり、歴史 れきし 的 てき に、陪審 ばいしん 制 せい は権力 けんりょく の濫用 らんよう に対 たい する防護 ぼうご 壁 かべ としての位置付 いちづ けが与 あた えられてきた。
アメリカの連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい も、後述 こうじゅつ の判決 はんけつ (ダンカン判決 はんけつ )の中 なか で、刑事 けいじ 陪審 ばいしん の意義 いぎ について、「被告人 ひこくにん に、同輩 どうはい によって構成 こうせい される陪審 ばいしん による審理 しんり を受 う ける権利 けんり を与 あた えることは、被告人 ひこくにん に、不正 ふせい な、あるいは熱心 ねっしん すぎる検察官 けんさつかん や、(検察官 けんさつかん に)迎合 げいごう 的 てき な、あるいは偏 かたよ った、あるいは常識 じょうしき 外 はず れの裁判官 さいばんかん に対 たい する貴重 きちょう な防護 ぼうご 壁 かべ を与 あた えることとなる」と説明 せつめい している[24] 。
後述 こうじゅつ の#陪審 ばいしん による法 ほう の無視 むし も、このような役割 やくわり の最 もっと も顕著 けんちょ な例 れい として位置付 いちづ ける見方 みかた がある[25] 。
参加 さんか 型 がた 民主 みんしゅ 主義 しゅぎ
アメリカでは、陪審 ばいしん 制 せい は民主 みんしゅ 主義 しゅぎ の実現 じつげん にとって重要 じゅうよう であると考 かんが えられている。アレクシ・ド・トクヴィル は、著書 ちょしょ 『アメリカのデモクラシー 』で、陪審 ばいしん 制 せい を人民 じんみん による統治 とうち を確立 かくりつ するための重要 じゅうよう な方法 ほうほう と位置付 いちづ けている[26] 。
市民 しみん に対 たい する教育 きょういく 的 てき 効果 こうか
陪審 ばいしん 制 せい は、参加 さんか した市民 しみん に対 たい し司法 しほう 制度 せいど について学 まな ぶ機会 きかい を与 あた えるだけでなく、陪審 ばいしん 審理 しんり を題材 だいざい としたテレビ番組 ばんぐみ や映画 えいが などを通 とお して、一般 いっぱん 市民 しみん の司法 しほう 制度 せいど への理解 りかい を広 ひろ める効果 こうか があると指摘 してき されている[27] 。
裁判 さいばん の迅速 じんそく 化 か
陪審 ばいしん 制 せい の副次的 ふくじてき 効果 こうか として、集中 しゅうちゅう 審理 しんり により短期間 たんきかん で結論 けつろん を出 だ すことになり、裁判 さいばん の長期 ちょうき 化 か が避 さ けられるという利点 りてん がある。
一方 いっぽう 、陪審 ばいしん 制 せい に対 たい しては、陪審 ばいしん の事実 じじつ 認定 にんてい 能力 のうりょく ・法 ほう 適用 てきよう 能力 のうりょく に対 たい する疑問 ぎもん や、陪審 ばいしん 制 せい にかかるコストの面 めん から、次 つぎ のような批判 ひはん がある[28] 。
陪審 ばいしん 員 いん の持 も つ偏見 へんけん
陪審 ばいしん 審理 しんり は、陪審 ばいしん 員 いん の感情 かんじょう や偏見 へんけん に左右 さゆう されやすく、地域 ちいき 感情 かんじょう や歴史 れきし 的 てき 経緯 けいい などの点 てん で「よそ者 もの 」、「嫌 きら われ者 しゃ 」が不利 ふり になることも否定 ひてい できないとの批判 ひはん がある[注 ちゅう 4] 。
このような批判 ひはん に対 たい し、特 とく に無意識 むいしき の潜在 せんざい 的 てき な偏見 へんけん については、一概 いちがい に裁判官 さいばんかん よりも陪審 ばいしん の方 ほう が偏見 へんけん にさらされやすいとはいえないとの指摘 してき もされている[29] 。
なお、1966年 ねん に発表 はっぴょう された大 だい 規模 きぼ な調査 ちょうさ では、裁判官 さいばんかん に対 たい し、陪審 ばいしん の判断 はんだん について自分 じぶん であればどのように判断 はんだん したかを回答 かいとう してもらったところ、裁判官 さいばんかん と陪審 ばいしん の判断 はんだん が一致 いっち する率 りつ は、刑事 けいじ ・民事 みんじ 事件 じけん ともに75%を超 こ えていた。意見 いけん が分 わ かれる場合 ばあい には、刑事 けいじ 事件 じけん では陪審 ばいしん の方 ほう が無罪 むざい に傾 かたむ く傾向 けいこう が見 み られたが、民事 みんじ 事件 じけん では有意 ゆうい な傾向 けいこう は見 み られなかった。この結果 けっか については、意見 いけん が分 わ かれるのは事実 じじつ 認定 にんてい が難 むずか しく裁判官 さいばんかん でも判断 はんだん が微妙 びみょう な事件 じけん ではないか、また陪審 ばいしん の方 ほう が「合理 ごうり 的 てき 疑 うたが いを超 こ える証明 しょうめい 」について高 たか い要求 ようきゅう をしているからではないかといった指摘 してき がされている[30] 。
法 ほう 適用 てきよう 能力 のうりょく に対 たい する疑問 ぎもん
法律 ほうりつ の適用 てきよう (当 あ てはめ)は、法律 ほうりつ 家 か こそが最 もっと も訓練 くんれん を受 う けている分野 ぶんや であるにもかかわらず、それを陪審 ばいしん 員 いん に任 まか せてしまうことには問題 もんだい があるとの指摘 してき がある。例 たと えば、不法 ふほう 行為 こうい の領域 りょういき では、過失 かしつ の有無 うむ の判断 はんだん に当 あ たって、事故 じこ を防止 ぼうし するための費用 ひよう と、防止 ぼうし 策 さく によって得 え られる便益 べんえき (事故 じこ によって発生 はっせい し得 え る損失 そんしつ や、事故 じこ が発生 はっせい する確 かく 率 りつ )とを比較 ひかく すべきであるにもかかわらず、陪審 ばいしん 員 いん はそれを理解 りかい できず、個人 こじん 対 たい 企業 きぎょう の不法 ふほう 行為 こうい 訴訟 そしょう では、原告 げんこく の被害 ひがい と被告 ひこく の富裕 ふゆう さに突 つ き動 うご かされて、陪審 ばいしん 員 いん はあらゆる原告 げんこく の被害 ひがい を補償 ほしょう してあげようとしてしまうと批判 ひはん されている[31] 。
裁判 さいばん のパフォーマンス化 か
弁護士 べんごし は、陪審 ばいしん 員 いん の同情 どうじょう を引 ひ いたり心証 しんしょう を良 よ くしたりするために、しばしば劇的 げきてき な弁論 べんろん を行 おこな うため、弁護士 べんごし のパフォーマンスではないかとの批判 ひはん もされている[32] 。
もっとも、パフォーマンスといっても必 かなら ずしもテレビドラマや映画 えいが のような派手 はで な振 ふ る舞 ま いと同 おな じものではなく、論理 ろんり 的 てき かつ理解 りかい しやすい形 かたち で弁論 べんろん を組 く み立 たて て、陪審 ばいしん 員 いん を説得 せっとく する技術 ぎじゅつ が重視 じゅうし されているのではないかとの指摘 してき もされている[33] 。
また、実証 じっしょう 的 てき 研究 けんきゅう に基 もと づくと、陪審 ばいしん の判断 はんだん が弁護士 べんごし の巧拙 こうせつ によって左右 さゆう されたと考 かんが えられるのは多 おお くとも0.25%程度 ていど であるとの指摘 してき がされている[34] 。
陪審 ばいしん 審理 しんり にかかるコスト
陪審 ばいしん 員 いん に対 たい して支払 しはら われる日当 にっとう ・交通 こうつう 費 ひ [注 ちゅう 5] だけでなく、陪審 ばいしん 員 いん の召喚 しょうかん ・選任 せんにん 手続 てつづき から審理 しんり ・評決 ひょうけつ に至 いた るまでの過程 かてい で少 すく なからずコストがかかる。評決 ひょうけつ 不能 ふのう などで再 さい 審理 しんり を行 おこな わなければならない場合 ばあい には、当事 とうじ 者 しゃ の負担 ふたん も大 おお きい。
また、陪審 ばいしん 員 いん の側 がわ でも、仕事 しごと や学業 がくぎょう に影響 えいきょう が出 で るというデメリットがある。
アメリカでは、陪審 ばいしん 制 せい に対 たい する様々 さまざま な批判 ひはん があるが、陪審 ばいしん 制 せい へのアメリカ市民 しみん の信頼 しんらい 度 ど は、弁護士 べんごし 、裁判官 さいばんかん 、連邦 れんぽう 議会 ぎかい 、連邦 れんぽう 最高 さいこう 裁判所 さいばんしょ に対 たい する信頼 しんらい 度 ど よりも高 たか く、陪審 ばいしん 制 せい の廃止 はいし 論 ろん は強 つよ くない[35] 。
イギリスでは、自由 じゆう と民主 みんしゅ 主義 しゅぎ の守 まも り手 しゅ 、市民 しみん の常識 じょうしき の反映 はんえい といった陪審 ばいしん 制 せい の意義 いぎ を擁護 ようご する意見 いけん がある一方 いっぽう で、民衆 みんしゅう に多大 ただい な負担 ふたん を課 か しながら「熟練 じゅくれん した」犯罪 はんざい 者 しゃ らに制度 せいど をうまく利用 りよう する機会 きかい を与 あた えるだけの、高 こう コストで時代遅 じだいおく れのものになっているとか、陪審 ばいしん 制 せい 自体 じたい はよいとしても複雑 ふくざつ な事件 じけん やデリケートな事件 じけん には向 む かないといった批判 ひはん も強 つよ く、費用 ひよう と時間 じかん の観点 かんてん から、20世紀 せいき を通 つう じて陪審 ばいしん の適用 てきよう 範囲 はんい 及 およ び権限 けんげん は大 おお きく縮小 しゅくしょう された[36] 。
陪審 ばいしん が事実 じじつ 認定 にんてい と法 ほう の適用 てきよう を行 おこな う際 さい 、その前提 ぜんてい となる法 ほう は裁判官 さいばんかん の説示 せつじ に従 したが うこととされている[37] [注 ちゅう 6] 。しかし、陪審 ばいしん の評決 ひょうけつ は、結論 けつろん のみを示 しめ し、そこに至 いた る理由 りゆう を示 しめ さない一般 いっぱん 評決 ひょうけつ が原則 げんそく であるため(ただし#アメリカの民事 みんじ 陪審 ばいしん では個別 こべつ 評決 ひょうけつ もある)、陪審 ばいしん が故意 こい に法 ほう を無視 むし した評決 ひょうけつ を下 くだ すことが事実 じじつ 上 じょう 可能 かのう である。これを陪審 ばいしん による法 ほう の無視 むし (法 ほう の無効 むこう 化 か とも訳 やく す。jury nullification )という。典型 てんけい 的 てき なのが、被告人 ひこくにん の有罪 ゆうざい を立証 りっしょう する証拠 しょうこ が十分 じゅうぶん あるにもかかわらず、その行為 こうい を処罰 しょばつ する法 ほう 自体 じたい が正義 せいぎ に反 はん すると陪審 ばいしん が考 かんが えた場合 ばあい に、無罪 むざい の評決 ひょうけつ を出 だ すような場合 ばあい である。例 たと えば、前記 ぜんき のジョン・ピーター・ゼンガー事件 じけん 、禁酒 きんしゅ 法 ほう 時代 じだい にアルコール規制 きせい 法 ほう 違反 いはん で訴追 そつい された被告人 ひこくにん に無罪 むざい 評決 ひょうけつ が多 おお く出 だ された例 れい 、黒人 こくじん や公民 こうみん 権 けん 運動 うんどう の関係 かんけい 者 しゃ に対 たい する殺害 さつがい 等 とう で訴追 そつい された白人 はくじん 至上 しじょう 主義 しゅぎ 者 しゃ に、全員 ぜんいん 白人 はくじん の陪審 ばいしん が無罪 むざい 評決 ひょうけつ を出 だ した例 れい などが挙 あ げられている[38] 。
陪審 ばいしん による法 ほう の無視 むし は、民事 みんじ ・刑事 けいじ いずれでも起 お こり得 え るが、特 とく に刑事 けいじ 事件 じけん で陪審 ばいしん が十分 じゅうぶん な証拠 しょうこ にもかかわらず無罪 むざい 評決 ひょうけつ を下 くだ した場合 ばあい 、英 えい 米 べい 法 ほう では二 に 重 じゅう の危険 きけん の禁止 きんし [注 ちゅう 7] により検察官 けんさつかん の上訴 じょうそ は許 ゆる されないので、上級 じょうきゅう 審 しん が法 ほう 適用 てきよう の誤 あやま りを理由 りゆう に再 さい 審理 しんり を命 めい じるなどして訂正 ていせい する手段 しゅだん がない[39] 。
陪審 ばいしん による法 ほう の無視 むし については、法律 ほうりつ 問題 もんだい への陪審 ばいしん による不当 ふとう な介入 かいにゅう であり、当然 とうぜん 許 ゆる されないという否定 ひてい 的 てき な見方 みかた と、民間 みんかん 人 じん の価値 かち 観 かん を反映 はんえい することも法 ほう の健全 けんぜん な発展 はってん ・改革 かいかく にとって意味 いみ があるという肯定 こうてい 的 てき な見方 みかた がある[40] 。中 なか には、陪審 ばいしん には悪法 あくほう を無視 むし する権限 けんげん があるとして、積極 せっきょく 的 てき にこれを呼 よ びかける団体 だんたい もある[注 ちゅう 8] 。
アメリカの連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい の判決 はんけつ には、「陪審 ばいしん は、過酷 かこく な法 ほう を執行 しっこう することを拒否 きょひ することにより、より高次 こうじ の正義 せいぎ を与 あた えることもできる」という、陪審 ばいしん による法 ほう の無視 むし を想定 そうてい した表現 ひょうげん もある[41] 。一方 いっぽう 、連邦 れんぽう 控訴 こうそ 裁判所 さいばんしょ の判決 はんけつ には、「陪審 ばいしん による法 ほう の無視 むし は、説示 せつじ された法 ほう を適用 てきよう するという陪審 ばいしん 員 いん の宣誓 せんせい に違反 いはん するものである」として、法 ほう の支配 しはい の観点 かんてん から、陪審 ばいしん による法 ほう の無視 むし は望 のぞ ましくなく、陪審 ばいしん 員 いん が証拠 しょうこ の有無 うむ にかかわらず無罪 むざい としようとしていることが分 わ かった場合 ばあい には裁判官 さいばんかん はその陪審 ばいしん 員 いん を解任 かいにん できるとの判断 はんだん を示 しめ したものがある[42] [43] 。少 すく なくとも、陪審 ばいしん が法 ほう を無視 むし することができるということを、裁判官 さいばんかん が説示 せつじ の際 さい に述 の べるのは不 ふ 適当 てきとう であるという考 かんが え方 かた が一般 いっぱん 的 てき である[44] 。
陪審 ばいしん 員 いん が個人 こじん の知識 ちしき をもとに裁判 さいばん を行 おこな っていた古 ふる くの陪審 ばいしん とは異 こと なり、現代 げんだい の陪審 ばいしん は法廷 ほうてい に現 あらわ れた証拠 しょうこ のみによって判断 はんだん しなければならず、中立 ちゅうりつ 公平 こうへい 性 せい が強 つよ く要求 ようきゅう される。しかし、審理 しんり (トライアル)前 まえ や審理 しんり 中 ちゅう の報道 ほうどう によって将来 しょうらい の陪審 ばいしん 員 いん 又 また は現在 げんざい の陪審 ばいしん 員 いん に偏見 へんけん が与 あた えられると公平 こうへい な審理 しんり が妨 さまた げられるので、報道 ほうどう による陪審 ばいしん への影響 えいきょう をいかに防 ふせ ぐかが問題 もんだい となる。
イギリス(イングランド、ウェールズ)では、評決 ひょうけつ が下 くだ されるまでの間 あいだ 、事件 じけん に関 かん する報道 ほうどう を厳 きび しく制限 せいげん することにより、陪審 ばいしん への影響 えいきょう の防止 ぼうし を図 はか っている[45] 。すなわち、制定 せいてい 法 ほう やコモン・ロー により、マスメディア の事件 じけん 報道 ほうどう に対 たい し、重 おも い罰金 ばっきん (場合 ばあい によっては拘禁 こうきん )などの制裁 せいさい を伴 ともな う強 つよ い規制 きせい を課 か している。審理 しんり 前 まえ には、関係 かんけい 者 しゃ の名前 なまえ や予備 よび 審問 しんもん の日時 にちじ ・場所 ばしょ のような最低限 さいていげん の情報 じょうほう しか報道 ほうどう してはならない。予備 よび 審問 しんもん 等 とう は一般 いっぱん に公開 こうかい されているものの、その内容 ないよう を広 ひろ く伝 つた えることは規則 きそく によって禁 きん じられている。審理 しんり が始 はじ まった後 のち も、報道 ほうどう は手続 てつづき を正確 せいかく に伝 つた えるものでなければならず、現在 げんざい 又 また は将来 しょうらい の手続 てつづき (まだ審理 しんり が始 はじ まっていない別件 べっけん の手続 てつづき も含 ふく む)に害 がい を及 およ ぼすようなものであってはならない。これらに違反 いはん した場合 ばあい は法廷 ほうてい 侮辱 ぶじょく 罪 ざい による処罰 しょばつ の対象 たいしょう となり(実際 じっさい 上 じょう 、処罰 しょばつ されるのは審理 しんり に深刻 しんこく な影響 えいきょう を与 あた える実質 じっしつ 的 てき な危険 きけん がある場合 ばあい に限 かぎ られている)、時々 ときどき 、法廷 ほうてい 侮辱 ぶじょく 罪 ざい による処罰 しょばつ が行 おこな われる例 れい がある。スコットランド、アイルランドも概 おおむ ね同様 どうよう の規制 きせい を敷 し いており、オーストラリア、ニュージーランド、カナダでは、これより緩 ゆる やかな規制 きせい をしている[46] 。
これに対 たい し、アメリカでは、報道 ほうどう の自由 じゆう (憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 1条 じょう )の観点 かんてん から、マスメディアに対 たい する報道 ほうどう 規制 きせい には、厳 きび しい憲法 けんぽう 上 じょう の制約 せいやく が課 か せられている。もちろん、アメリカでもマスメディアによる陪審 ばいしん 員 いん への影響 えいきょう は問題 もんだい となり、連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい は、関係 かんけい 者 しゃ から事件 じけん に関 かん する様々 さまざま な情報 じょうほう がマスメディア に流 なが された事案 じあん で、被告人 ひこくにん の公平 こうへい な審理 しんり を受 う けるというデュー・プロセス の権利 けんり が侵害 しんがい されていると判断 はんだん し、裁判官 さいばんかん は適切 てきせつ な措置 そち を取 と るべきであったとした[47] 。しかし、連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい は、1976年 ねん のネブラスカプレス事件 じけん 判決 はんけつ で、マスメディアに対 たい する報道 ほうどう 禁止 きんし は表現 ひょうげん に対 たい する事前 じぜん 規制 きせい であることから、厳格 げんかく な審査 しんさ 基準 きじゅん で合憲 ごうけん 性 せい が審査 しんさ されるとしている[48] 。したがって、このような報道 ほうどう 禁止 きんし が憲法 けんぽう 上 じょう 許 ゆる されることはほとんど考 かんが えられないとされる[49] 。また、被告人 ひこくにん の前科 ぜんか や、まだ証拠 しょうこ 能力 のうりょく を認 みと められていない被告人 ひこくにん の自白 じはく などを報道 ほうどう することに刑事 けいじ 罰 ばつ を科 か す事後 じご 規制 きせい も、厳格 げんかく な審査 しんさ 基準 きじゅん で審査 しんさ される[49] 。さらに、報道 ほうどう による将来 しょうらい の陪審 ばいしん 員 いん に対 たい する影響 えいきょう を防 ふせ ぐために予備 よび 審問 しんもん 等 ひとし のトライアル前 ぜん 手続 てつづき を非公開 ひこうかい にすることも、限 かぎ られた場合 ばあい にしか認 みと められない。予備 よび 審問 しんもん 手続 てつづき へのアクセスには憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 1条 じょう の権利 けんり が及 およ ぶためである[50] 。
したがって、アメリカでは、報道 ほうどう による偏見 へんけん の流布 るふ を防 ふせ ぐための方法 ほうほう としては、弁護士 べんごし や検察官 けんさつかん のマスメディアに対 たい する発言 はつげん を制限 せいげん する法曹 ほうそう 倫理 りんり 規定 きてい が大 おお きな役割 やくわり を果 は たしている。ほとんどの州 しゅう では、アメリカ法律 ほうりつ 家 か 協会 きょうかい (ABA) が作成 さくせい した法曹 ほうそう 倫理 りんり 模範 もはん 規定 きてい の三 みっ つのバージョンのいずれかを採用 さいよう している。これは、記者 きしゃ 会見 かいけん やインタビューなど、弁護士 べんごし の法廷 ほうてい 外 がい でのメディアに対 たい する発言 はつげん を規制 きせい するものであり、これに違反 いはん すると懲戒 ちょうかい 処分 しょぶん を受 う けることとなる。連邦 れんぽう 司法省 しほうしょう でも、検察官 けんさつかん を含 ふく む職員 しょくいん を対象 たいしょう に同様 どうよう のルールを定 さだ めている[51] 。
また、偏見 へんけん を及 およ ぼすような報道 ほうどう がされた場合 ばあい に、陪審 ばいしん に偏見 へんけん を持 も ち込 こ まないため、次 つぎ のような手段 しゅだん が用意 ようい されている。
法廷 ほうてい 地 ち の変更 へんこう
報道 ほうどう による影響 えいきょう を受 う けていない地域 ちいき へ事件 じけん を移送 いそう するもの。もっとも、小 ちい さい州 しゅう などでは報道 ほうどう の影響 えいきょう が州 しゅう 全体 ぜんたい に広 ひろ まってしまい意味 いみ がない場合 ばあい もある[52] 。
陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ 団 だん の変更 へんこう
一部 いちぶ の州 しゅう では、法廷 ほうてい 地 ち はそのままで、陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ 団 だん を他 た の地域 ちいき から選 えら ぶことができる制度 せいど が設 もう けられているところもある[53] 。
延期 えんき 続行 ぞっこう
報道 ほうどう の影響 えいきょう が一時 いちじ 的 てき で、一定 いってい 期間 きかん 内 ない に収束 しゅうそく すると思 おも われる場合 ばあい には、訴訟 そしょう 手続 てつづき を延期 えんき 続行 ぞっこう することもあり得 え る[54] 。
陪審 ばいしん 員 いん の選任 せんにん 過程 かてい における審査 しんさ
陪審 ばいしん 員 いん の選任 せんにん 過程 かてい における予備 よび 尋問 じんもん と、それに基 もと づく忌避 きひ の手続 てつづき は、報道 ほうどう による影響 えいきょう を受 う け公平 こうへい な裁判 さいばん ができない陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ を取 と り除 のぞ くための重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たしている[55] 。
陪審 ばいしん 員 いん の報道 ほうどう 等 とう への接触 せっしょく 禁止 きんし
陪審 ばいしん 員 いん は、選任 せんにん された後 のち は、評決 ひょうけつ に至 いた るまで、事件 じけん に関 かん する報道 ほうどう を見聞 みき きしないよう求 もと められる[56] 。
陪審 ばいしん 員 いん の隔離 かくり
評議 ひょうぎ が1日 にち で終了 しゅうりょう しない場合 ばあい 、報道 ほうどう が過熱 かねつ しているような一部 いちぶ の刑事 けいじ 事件 じけん では、陪審 ばいしん 員 いん が隔離 かくり され、ホテルへの宿泊 しゅくはく や他者 たしゃ との接触 せっしょく の禁止 きんし を命 めい じられることもある。事実 じじつ 審理 しんり (トライアル)の期間 きかん 中 ちゅう を通 つう じて隔離 かくり されることはほとんどないが、評議 ひょうぎ 中 ちゅう に隔離 かくり されることは場合 ばあい によってあり得 え る。なお、O・J・シンプソン事件 じけん では陪審 ばいしん は8か月 げつ 半 はん の間 あいだ 隔離 かくり されたが、これは極 きわ めて例外 れいがい 的 てき な場合 ばあい である[57] 。
アメリカ では、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 第 だい 1条 じょう により、審理 しんり 前 まえ の報道 ほうどう が自由 じゆう に行 おこな われるのと同様 どうよう 、審理 しんり 後 ご に陪審 ばいしん 員 いん が評議 ひょうぎ の内容 ないよう を話 はな すのも自由 じゆう であり、評議 ひょうぎ の体験 たいけん 談 だん をタブロイド紙 し 、出版 しゅっぱん 社 しゃ 、テレビ局 てれびきょく などに売 う る者 もの さえいる。このため、注目 ちゅうもく を集 あつ める事件 じけん などでは、内幕 うちまく 話 ばなし を売 う ろうという思惑 おもわく によって陪審 ばいしん 員 いん の行動 こうどう がゆがめられてしまったり、記者 きしゃ が陪審 ばいしん 員 いん らに強引 ごういん に取材 しゅざい をしたりするという問題 もんだい もある。一部 いちぶ の裁判所 さいばんしょ では、例外 れいがい 的 てき に、報道 ほうどう 機関 きかん に対 たい し、陪審 ばいしん 員 いん からの取材 しゅざい 内容 ないよう についての規制 きせい を課 か すこともあるが、陪審 ばいしん 員 いん 自身 じしん に対 たい する規制 きせい を課 か すことはほとんど行 おこな われない[58] 。
一方 いっぽう 、イングランド 、ウェールズ 、北 きた アイルランド 、カナダ では、陪審 ばいしん 員 いん が評議 ひょうぎ の内容 ないよう を明 あき らかにすることは禁止 きんし されている。イングランド・ウェールズでは1981年 ねん 法廷 ほうてい 侮辱 ぶじょく 罪 ざい 法 ほう 8条 じょう により評議 ひょうぎ 内容 ないよう をき出 きだ したり漏 も らしたりする行為 こうい を罰 ばっ する明文 めいぶん 規定 きてい を設 もう けたが、これに対 たい しては陪審 ばいしん 制 せい についての学術 がくじゅつ 的 てき 研究 けんきゅう の妨 さまた げになっているとの声 こえ もある。オーストラリアでは、報道 ほうどう 機関 きかん が審理 しんり 終了 しゅうりょう 後 ご に陪審 ばいしん 員 いん に接近 せっきん する行為 こうい は法廷 ほうてい 侮辱 ぶじょく 罪 ざい で処罰 しょばつ されるが、陪審 ばいしん 員 いん 個人 こじん が自分 じぶん から無償 むしょう で話 はなし をすることは許 ゆる されている。ニュージーランドでも、判例 はんれい 法 ほう により、報道 ほうどう 機関 きかん が陪審 ばいしん 員 いん にインタビューをする行為 こうい は法廷 ほうてい 侮辱 ぶじょく 罪 ざい で処罰 しょばつ される[59] 。
英 えい 米 べい 法 ほう に与 あた えた影響 えいきょう [ 編集 へんしゅう ]
陪審 ばいしん 制 せい は、イギリスにおいてコモン・ロー (英 えい 米 べい 法 ほう )とともに長年 ながねん 発展 はってん してきたことから、陪審 ばいしん 制 せい がコモン・ローに与 あた えた影響 えいきょう は大 おお きい。主 おも に手続 てつづき 面 めん では、次 つぎ のような点 てん が指摘 してき されている[60] 。
陪審 ばいしん 員 いん にも分 わ かるように、法 ほう が極端 きょくたん に難 むずか しくなることが防 ふせ がれた。
陪審 ばいしん 員 いん の負担 ふたん 軽減 けいげん のため、集中 しゅうちゅう 審理 しんり が行 おこな われるようになった。
後述 こうじゅつ のサマリ・ジャッジメントのように、陪審 ばいしん 審理 しんり を不 ふ 必要 ひつよう に行 おこな わないために争点 そうてん を絞 しぼ り込 こ む手続 てつづき が発達 はったつ した。
集中 しゅうちゅう 審理 しんり における不意打 ふいう ちを防止 ぼうし するため、証拠 しょうこ 開示 かいじ (ディスカバリー)の手続 てつづき が発達 はったつ した。
陪審 ばいしん 員 いん に訴 うった えかけるため、法廷 ほうてい における尋問 じんもん 等 とう の技術 ぎじゅつ が発達 はったつ した。
伝聞 でんぶん 証拠 しょうこ 禁止 きんし の原則 げんそく のように、陪審 ばいしん 員 いん が判断 はんだん を誤 あやま らないための証拠 しょうこ 法 ほう が発達 はったつ した。
また、契約 けいやく 法 ほう の分野 ぶんや でも、次 つぎ のような点 てん で陪審 ばいしん 制 せい の影響 えいきょう が指摘 してき されている。
一定 いってい の種類 しゅるい の契約 けいやく には書面 しょめん と債務 さいむ 者 しゃ の署名 しょめい がなければ裁判 さいばん 上 じょう の救済 きゅうさい が与 あた えられないという詐欺 さぎ 防止 ぼうし 法 ほう は、17世紀 せいき のイギリスで、偽証 ぎしょう によって陪審 ばいしん をだます訴訟 そしょう 詐欺 さぎ を防 ふせ ぐために制定 せいてい されたとされる[61] 。
契約 けいやく の内容 ないよう については契約 けいやく 書 しょ の内容 ないよう によって立証 りっしょう すべきで、それ以外 いがい の証拠 しょうこ (口頭 こうとう の約束 やくそく 等 とう )は排除 はいじょ されるという 口頭 こうとう 証拠 しょうこ 排除 はいじょ 法則 ほうそく は、契約 けいやく から時間 じかん が経 た ってからの当事 とうじ 者 しゃ (特 とく に経済 けいざい 的 てき 弱者 じゃくしゃ の側 がわ )の供述 きょうじゅつ を、陪審 ばいしん が安易 あんい に受 う け入 い れてしまいやすいため、それを防 ふせ ぐために形成 けいせい されたとの説 せつ がある[62] 。
さらに、刑事 けいじ 法 ほう の分野 ぶんや でも、陪審 ばいしん 審理 しんり が面倒 めんどう でコストがかかるものになったことが、司法 しほう 取引 とりひき が発達 はったつ した一 ひと つの要因 よういん として挙 あ げられることがある[63] 。
アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく では、重罪 じゅうざい で訴追 そつい された者 もの は、陪審 ばいしん による審理 しんり を受 う ける憲法 けんぽう 上 じょう の権利 けんり を有 ゆう する。すなわち、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 憲法 けんぽう 第 だい 3条 じょう では、「すべての犯罪 はんざい の審理 しんり (トライアル)は陪審 ばいしん によって行 おこな われる。審理 しんり はその犯罪 はんざい が行 おこな われた州 しゅう で行 おこな われる。」と規定 きてい されており[64] 、さらに修正 しゅうせい 6条 じょう では「すべての犯罪 はんざい の訴追 そつい において、被告人 ひこくにん は、犯罪 はんざい の行 おこな われた州 しゅう 及 およ び地区 ちく の公平 こうへい な陪審 ばいしん による、迅速 じんそく かつ公開 こうかい の審理 しんり を受 う ける権利 けんり を有 ゆう する。」と規定 きてい している[65] 。これらの規定 きてい は、直接的 ちょくせつてき には連邦 れんぽう の裁判所 さいばんしょ に適用 てきよう されるものだが、修正 しゅうせい 14条 じょう 1節 せつ [66] のデュー・プロセス (適正 てきせい 手続 てつづき )に陪審 ばいしん 制 せい の保障 ほしょう も含 ふく まれることによって州 しゅう にも適用 てきよう されるとするのが連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい の判例 はんれい である(ダンカン対 たい ルイジアナ州 しゅう 事件 じけん [24] )。
合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう 上 じょう は、軽微 けいび な犯罪 はんざい については陪審 ばいしん 審理 しんり の権利 けんり はないとされ(ダンカン判決 はんけつ )、自由 じゆう 刑 けい の上限 じょうげん が6か月 げつ を超 こ えるか否 ひ かが基準 きじゅん とされている[67] 。すなわち、上限 じょうげん が6か月 げつ 以下 いか の自由 じゆう 刑 けい に当 あ たる罪 つみ の場合 ばあい には、陪審 ばいしん 審理 しんり は合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう 上 じょう 要求 ようきゅう されておらず、そのような事件 じけん では各州 かくしゅう が陪審 ばいしん 審理 しんり を許 ゆる すか否 ひ かを選択 せんたく できる。
合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう とは別 べつ に、ほとんどの州 しゅう の憲法 けんぽう でも、刑事 けいじ 陪審 ばいしん の権利 けんり を保障 ほしょう している。
なお、連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい は、被告人 ひこくにん は、有罪 ゆうざい か無罪 むざい かの点 てん だけでなく、制定 せいてい 法 ほう や量刑 りょうけい ガイドラインが原則 げんそく 的 てき に設 もう けている上限 じょうげん を超 こ えて被告人 ひこくにん の刑 けい を加重 かじゅう するための事実 じじつ についても、陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり を有 ゆう していると判断 はんだん した[68] 。
陪審 ばいしん 審理 しんり の放棄 ほうき [ 編集 へんしゅう ]
アメリカの刑事 けいじ 事件 じけん の大 だい 多数 たすう は、陪審 ばいしん の評決 ひょうけつ ではなく、司法 しほう 取引 とりひき によって決着 けっちゃく している。すなわち、被告人 ひこくにん がアレインメント(arraignment; 罪状 ざいじょう 認否 にんぴ 手続 てつづき )で有罪 ゆうざい の答弁 とうべん (plea of guilty) をする代 か わりに、検察官 けんさつかん は起訴 きそ する罪 つみ の数 かず を減 へ らす、軽 かる い罪 つみ で起訴 きそ する、裁判所 さいばんしょ に対 たい し軽 かる い刑 けい を求 もと めるといった取引 とりひき が行 おこな われる。被告人 ひこくにん が有罪 ゆうざい の答弁 とうべん をした場合 ばあい は、対審 たいしん (陪審 ばいしん 又 また は裁判官 さいばんかん による事実 じじつ 審理 しんり )の権利 けんり も放棄 ほうき されるため、裁判官 さいばんかん が量刑 りょうけい を決 き め判決 はんけつ を下 くだ すだけである。多 おお くの州 しゅう で、一 いち 審 しん に起訴 きそ された重罪 じゅうざい (felony) のうちトライアルに持 も ち込 こ まれるのは10%足 た らずである[69] (#統計 とうけい の項 こう も参照 さんしょう )。また、トライアルが行 おこな われる場合 ばあい でも、被告人 ひこくにん が陪審 ばいしん 審理 しんり を放棄 ほうき すると、裁判官 さいばんかん による審理 しんり (bench trial) が行 おこな われる。
ただし、合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう 上 じょう 、被告人 ひこくにん が陪審 ばいしん 審理 しんり を放棄 ほうき できる(裁判官 さいばんかん による審理 しんり を要求 ようきゅう できる)という無条件 むじょうけん の権利 けんり は与 あた えられておらず[70] 、連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ では検察 けんさつ 側 がわ の同意 どうい と裁判所 さいばんしょ の承認 しょうにん があった場合 ばあい のみ、被告人 ひこくにん は陪審 ばいしん 審理 しんり を放棄 ほうき できる[71] 。州 しゅう でも、陪審 ばいしん 審理 しんり の放棄 ほうき を無条件 むじょうけん で認 みと めているところは少 すく なく、裁判所 さいばんしょ 若 も しくは検察官 けんさつかん の同意 どうい 、又 また はその両方 りょうほう を必要 ひつよう としているところが多 おお い[72] 。
陪審 ばいしん 員 いん の人数 にんずう 及 およ び選任 せんにん 手続 てつづき [ 編集 へんしゅう ]
陪審 ばいしん 員 いん の人数 にんずう は、連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ では原則 げんそく として12人 にん であるが、当事 とうじ 者 しゃ 双方 そうほう が合意 ごうい したときはそれより少 すく ない構成 こうせい とすることができる[73] 。州 しゅう によっては、12人 にん より少 すく ない人数 にんずう としているところもあり、また被告人 ひこくにん に12人 にん 未満 みまん の構成 こうせい を選択 せんたく することを認 みと める州 しゅう もある[74] 。合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう 上 じょう 、6人 にん にまで減 へ らした構成 こうせい も許 ゆる されるとされるが[75] 、重罪 じゅうざい 事件 じけん で5人 にん の構成 こうせい とすることは被告人 ひこくにん の陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり を侵害 しんがい するもので、違憲 いけん であるとされた[76] 。
陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ への召喚 しょうかん 状 じょう
United State District Court Western Division Jury Summons June 2015
連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ では、陪審 ばいしん 員 いん の選任 せんにん 方法 ほうほう は連邦 れんぽう 制定 せいてい 法 ほう によって定 さだ められている。まず、有権者 ゆうけんしゃ 名簿 めいぼ その他 た の名簿 めいぼ をもとに、陪審 ばいしん 員 いん 抽選 ちゅうせん 器 き を用 もち いて陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ が無 む 作為 さくい に必要 ひつよう な数 かず だけ抽出 ちゅうしゅつ され、その候補者 こうほしゃ らには、陪審 ばいしん 員 いん の資格 しかく があるかを判断 はんだん するための書類 しょるい (juror qualification form) が送 おく られる。(1) 18歳 さい 以上 いじょう でその管轄 かんかつ 地域 ちいき に1年 ねん 以上 いじょう 居住 きょじゅう しているアメリカ市民 しみん ではない場合 ばあい 、(2) 英語 えいご の読 よ み書 か きができない場合 ばあい 、(3) 英語 えいご を話 はな せない場合 ばあい 、(4) 精神 せいしん 的 てき ・身体 しんたい 的 てき 疾患 しっかん のため陪審 ばいしん 員 いん の任務 にんむ を行 おこな うことができない場合 ばあい 、(5) 係属 けいぞく 中 ちゅう の刑事 けいじ 事件 じけん 又 また は重罪 じゅうざい の前科 ぜんか がある場合 ばあい は欠格 けっかく 事由 じゆう となり、裁判官 さいばんかん が欠格 けっかく 事由 じゆう の有無 うむ を判断 はんだん する[77] 。欠格 けっかく 事由 じゆう がない者 もの は、辞退 じたい が認 みと められる場合 ばあい を除 のぞ き、有 ゆう 資格 しかく 者 しゃ となり、その中 なか から必要 ひつよう な時期 じき に陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ が選 えら ばれ、召喚 しょうかん 状 じょう (summons) が発 はつ 付 ふ される[78] 。多 おお くの州 しゅう でも同様 どうよう の手続 てつづき をとっている[79] 。
こうして集 あつ められた陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ 団 だん (venire) の中 なか から陪審 ばいしん 員 いん を選 えら ぶ際 さい には、裁判官 さいばんかん 又 また は当事 とうじ 者 しゃ (検察官 けんさつかん ・弁護人 べんごにん )から陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ に対 たい する尋問 じんもん が行 おこな われる[80] 。これを予備 よび 尋問 じんもん (voir dire :ヴワー・ディア)という。その結果 けっか をもとに、各 かく 当事 とうじ 者 しゃ は、陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ が偏見 へんけん を持 も っているおそれがあるとして理由 りゆう 付 つ き忌避 きひ (challenge for cause) の申立 もうした てをすることができる。これには人数 にんずう の制限 せいげん はないが、裁判官 さいばんかん が申立 もうした てに根拠 こんきょ ありと認 みと めた場合 ばあい に限 かぎ り、その陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ は除外 じょがい される[81] 。また、各 かく 当事 とうじ 者 しゃ は、一定 いってい の数 かず に限 かぎ り理由 りゆう なし忌避 きひ (peremptory challenge) を求 もと めることができる[82] [注 ちゅう 9] 。州 しゅう 裁判所 さいばんしょ でも、おおむね同様 どうよう の手続 てつづき であるが、実際 じっさい の選任 せんにん 手続 てつづき のあり方 かた は州 しゅう によって異 こと なる[83] 。
評議 ひょうぎ 及 およ び評決 ひょうけつ [ 編集 へんしゅう ]
裁判官 さいばんかん は、審理 しんり が終 お わった段階 だんかい で、陪審 ばいしん に対 たい する説示 せつじ を行 おこな う。説示 せつじ の中 なか では、(1) 適用 てきよう すべき実体 じったい 法 ほう 、(2) どちらが立証 りっしょう 責任 せきにん を負 お うかや、立証 りっしょう 責任 せきにん が果 は たされるに必要 ひつよう な証拠 しょうこ の程度 ていど などの証拠 しょうこ 法 ほう の原則 げんそく 、(3) 評決 ひょうけつ に達 たっ するための手続 てつづき について説明 せつめい される[84] 。その後 ご 、陪審 ばいしん は法廷 ほうてい から評議 ひょうぎ 室 しつ (陪審 ばいしん 員 いん 室 しつ )に下 さ がり、非公開 ひこうかい で評議 ひょうぎ を行 おこな う。裁判官 さいばんかん 、訴訟 そしょう 当事 とうじ 者 しゃ を含 ふく め、陪審 ばいしん 員 いん 以外 いがい の者 もの は誰 だれ も評議 ひょうぎ の内容 ないよう を見聞 みき きすることはできない。評議 ひょうぎ は複数 ふくすう 日 び にわたることもある。その結果 けっか 、評決 ひょうけつ に達 たっ した場合 ばあい は、法廷 ほうてい に戻 もど り、陪審 ばいしん 員 いん 長又 ながまた は書記官 しょきかん が評決 ひょうけつ を読 よ み上 あ げる[85] 。
連邦 れんぽう 及 およ び各州 かくしゅう (6州 しゅう を除 のぞ く)では、陪審 ばいしん の有罪 ゆうざい 又 また は無罪 むざい の評決 ひょうけつ には全員 ぜんいん の一致 いっち が必要 ひつよう である。評決 ひょうけつ が成立 せいりつ しない場合 ばあい は評決 ひょうけつ 不能 ふのう (hung jury) となり、再度 さいど トライアルをやり直 なお さなければならない[86] 。合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう 上 じょう は、12人 にん の陪審 ばいしん 員 いん のうち10人 にん の多数決 たすうけつ による評決 ひょうけつ を認 みと める州法 しゅうほう も合憲 ごうけん とされたが[87] 、6人 にん の構成 こうせい の場合 ばあい には全員 ぜんいん 一致 いっち の評決 ひょうけつ でなければならず、5人 にん の多数決 たすうけつ による評決 ひょうけつ は違憲 いけん であるとされた[88] 。
刑事 けいじ 事件 じけん では、個々 ここ の事実 じじつ についての認定 にんてい を示 しめ す個別 こべつ 評決 ひょうけつ (special verdict) はどの法域 ほういき でも行 おこな われておらず、有罪 ゆうざい か無罪 むざい かの結論 けつろん を示 しめ す一般 いっぱん 評決 ひょうけつ (general verdict) である[89] 。
陪審 ばいしん から、評決 ひょうけつ に達 たっ することができないとの報告 ほうこく を受 う けた場合 ばあい 、裁判官 さいばんかん は、場合 ばあい によって再 さい 評議 ひょうぎ を命 めい じたり再考 さいこう を促 うなが す追加 ついか 説示 せつじ をしたりすることもできるが、最終 さいしゅう 的 てき には評決 ひょうけつ 不能 ふのう (hung jury) による審理 しんり 無効 むこう (mistrial) となり、新 あら たな陪審 ばいしん の選任 せんにん からの再 さい 審理 しんり (retrial) を行 おこな うこととなる[90] 。
評決 ひょうけつ 後 ご の手続 てつづき [ 編集 へんしゅう ]
陪審 ばいしん が有罪 ゆうざい の評決 ひょうけつ をした場合 ばあい 、裁判官 さいばんかん は量刑 りょうけい を行 おこな い、判決 はんけつ をい渡 いわた す。陪審 ばいしん は有罪 ゆうざい 又 また は無罪 むざい の判断 はんだん を行 おこな い、有罪 ゆうざい の場合 ばあい の量刑 りょうけい は裁判官 さいばんかん が判断 はんだん するのが原則 げんそく であるが、州 しゅう によっては、特 とく に死刑 しけい 事件 じけん など一部 いちぶ の事件 じけん で、陪審 ばいしん が死刑 しけい 適用 てきよう の当否 とうひ や刑期 けいき についての意見 いけん を述 の べることができるなど、陪審 ばいしん の判断 はんだん が量刑 りょうけい を決定 けってい ないし左右 さゆう することがある[91] 。
有罪 ゆうざい の評決 ひょうけつ の場合 ばあい 、裁判官 さいばんかん が被告人 ひこくにん の申立 もうした てに基 もと づき、必要 ひつよう な票数 ひょうすう が満 み たされているかを調 しら べるため、個々 ここ の陪審 ばいしん 員 いん に対 たい し評決 ひょうけつ に賛同 さんどう しているか否 ひ かを確認 かくにん すること (polling) が可能 かのう である[92] 。
陪審 ばいしん の無罪 むざい の評決 ひょうけつ を裁判官 さいばんかん が覆 くつがえ すことは許 ゆる されないが、陪審 ばいしん が有罪 ゆうざい の評決 ひょうけつ をした場合 ばあい に、裁判官 さいばんかん が被告人 ひこくにん の申立 もうした てに基 もと づき無罪 むざい 判決 はんけつ (judgment of acquittal) を下 くだ すことは許 ゆる されている[93] [注 ちゅう 10] 。
民事 みんじ 事件 じけん で陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり は、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 第 だい 7条 じょう で保障 ほしょう されている。すなわち、「コモン・ロー 上 うえ の訴訟 そしょう において、訴額 そがく が20ドルを超 こ えるときは、陪審 ばいしん による裁判 さいばん を受 う ける権利 けんり は維持 いじ (preserve) されなければならない。陪審 ばいしん によって認定 にんてい された事実 じじつ は、コモン・ローの準則 じゅんそく によるほか、合衆国 がっしゅうこく のいずれの裁判所 さいばんしょ においても再 さい 審理 しんり されることはない。」と定 さだ められている[94] 。
修正 しゅうせい 7条 じょう は、陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり を新 あら たに創設 そうせつ するものではなく、1791年 ねん (修正 しゅうせい 7条 じょう を含 ふく む権利 けんり 章典 しょうてん が批准 ひじゅん された年 とし )の時点 じてん のコモン・ローにおいて存在 そんざい した陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり を維持 いじ するものである。ここで、コモン・ローとは、アメリカがその時点 じてん でイギリス から受 う け継 つ いだ法 ほう 制度 せいど を意味 いみ する。1791年 ねん 当時 とうじ のイギリスでは、訴訟 そしょう はコモン・ローの訴訟 そしょう とエクイティ (衡平 こうへい 法 ほう )の訴訟 そしょう に分 わ かれていた。コモン・ローの訴訟 そしょう においては陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり が認 みと められていたが、エクイティの訴訟 そしょう では認 みと められていなかった。1938年 ねん に制定 せいてい された連邦 れんぽう 民事 みんじ 訴訟 そしょう 規則 きそく 2条 じょう は、「民事 みんじ 訴訟 そしょう という一 ひと つの訴訟 そしょう 形式 けいしき のみがある」と規定 きてい しており[95] 、コモン・ローの訴訟 そしょう とエクイティの訴訟 そしょう の区別 くべつ がなくなったが、今日 きょう でも、1791年 ねん 当時 とうじ コモン・ロー上 じょう のものであった訴訟 そしょう には陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり が認 みと められ、同 おな じくエクイティ上 じょう のものであった訴訟 そしょう には陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり がない。もっとも、連邦 れんぽう 民事 みんじ 訴訟 そしょう 規則 きそく によれば、裁判所 さいばんしょ が裁量 さいりょう で陪審 ばいしん を用 もち いることが許 ゆる されている[96] 。
ある制定 せいてい 法 ほう に基 もと づく訴訟 そしょう がコモン・ロー上 じょう のものかエクイティ上 じょう のものかを判断 はんだん するには、(1) まず、その訴訟 そしょう と、18世紀 せいき 当時 とうじ 、コモン・ローとエクイティが一緒 いっしょ になる前 まえ のイギリスの法廷 ほうてい で起 お こされていた訴訟 そしょう とを比較 ひかく して、どちらの類型 るいけい とより類似 るいじ するかを判断 はんだん する必要 ひつよう がある。(2) 次 つぎ に、求 もと められている救済 きゅうさい 方法 ほうほう を審査 しんさ し、その性質 せいしつ 上 じょう コモン・ロー上 じょう のものであるかエクイティ上 じょう のものであるかを判断 はんだん する必要 ひつよう がある[97] 。救済 きゅうさい 方法 ほうほう が、金銭 きんせん 賠償 ばいしょう だけである場合 ばあい には純粋 じゅんすい にコモン・ロー上 じょう のものであり、陪審 ばいしん の権利 けんり が認 みと められる。差止 さしとめ 命令 めいれい 、契約 けいやく 解除 かいじょ 、特定 とくてい 履行 りこう のような非 ひ 金銭 きんせん 的 てき 救済 きゅうさい はエクイティ上 じょう のものであるから、陪審 ばいしん ではなく裁判官 さいばんかん の判断 はんだん に委 ゆだ ねられる。連邦 れんぽう 最高裁 さいこうさい は、エクイティとコモン・ロー双方 そうほう の請求 せいきゅう がされているときは、コモン・ロー上 じょう の請求 せいきゅう について陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり は存続 そんぞく し、裁判官 さいばんかん がエクイティ上 じょう の請求 せいきゅう について判断 はんだん する前 まえ にコモン・ロー上 じょう の請求 せいきゅう について陪審 ばいしん による判断 はんだん を受 う けなければならないと判断 はんだん した[98] 。
刑事 けいじ 陪審 ばいしん と異 こと なり、修正 しゅうせい 14条 じょう のデュー・プロセス条項 じょうこう の内容 ないよう には含 ふく まれないと解 ほぐ されているため、民事 みんじ 事件 じけん で陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう 上 じょう の権利 けんり は、州 しゅう には及 およ ばない。もっとも、コロラド州 しゅう を除 のぞ く49州 しゅう において、州 しゅう 憲法 けんぽう で民事 みんじ 陪審 ばいしん の権利 けんり が保障 ほしょう されており、同 どう 州 しゅう においても憲法 けんぽう 上 じょう の保障 ほしょう ではないものの民事 みんじ 陪審 ばいしん が実施 じっし されている[99] 。
陪審 ばいしん 審理 しんり の要求 ようきゅう [ 編集 へんしゅう ]
連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ の民事 みんじ 事件 じけん では、刑事 けいじ 陪審 ばいしん と異 こと なり、いずれかの当事 とうじ 者 しゃ の要求 ようきゅう があった場合 ばあい に限 かぎ り陪審 ばいしん 審理 しんり (jury trial) が行 おこな われる。一方 いっぽう の当事 とうじ 者 しゃ が陪審 ばいしん 審理 しんり を要求 ようきゅう した場合 ばあい 、相手方 あいてがた は陪審 ばいしん 審理 しんり を望 のぞ まなくても拒否 きょひ できず陪審 ばいしん 審理 しんり が採用 さいよう される。陪審 ばいしん 審理 しんり を要求 ようきゅう するためには、最後 さいご の訴答書面 しょめん が送達 そうたつ されてから10日 とおか 以内 いない に陪審 ばいしん 審理 しんり を要求 ようきゅう する旨 むね の書面 しょめん を相手方 あいてがた に送達 そうたつ し、その後 ご 相当 そうとう の期間 きかん 内 ない にこれを裁判所 さいばんしょ に提出 ていしゅつ しなければならず、この手続 てつづき を行 おこな わない場合 ばあい は陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり を放棄 ほうき したものとして扱 あつか われる[100] 。その場合 ばあい は裁判官 さいばんかん による審理 しんり (bench trial) が行 おこな われる。もっとも、事実 じじつ 審理 しんり (対審 たいしん )前 まえ に訴 うった えが却下 きゃっか される場合 ばあい があるほか[注 ちゅう 11] 、裁判官 さいばんかん は、当事 とうじ 者 しゃ の申立 もうした てにより、重要 じゅうよう な事実 じじつ についての真 しん の争 あらそ いがないと判断 はんだん する場合 ばあい には、トライアルを行 おこな うまでもなく、サマリ・ジャッジメントという判決 はんけつ で一 いち 審 しん 手続 てつづき を終局 しゅうきょく させることができ[101] 、これらの場合 ばあい は当然 とうぜん 陪審 ばいしん 審理 しんり は行 おこな われない。またトライアル前 まえ に和解 わかい が成立 せいりつ して事件 じけん が終局 しゅうきょく することも多 おお い[102] (#統計 とうけい の項 こう も参照 さんしょう )。
陪審 ばいしん 員 いん の人数 にんずう 及 およ び選任 せんにん 手続 てつづき [ 編集 へんしゅう ]
イギリス以来 いらい の伝統 でんとう に従 したが い、アメリカの民事 みんじ 陪審 ばいしん も、12人 にん の陪審 ばいしん 員 いん で構成 こうせい されるのが原則 げんそく である。しかし、連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ における6人 にん 制 せい の民事 みんじ 陪審 ばいしん も、憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 7条 じょう には違反 いはん しないとされた[103] 。連邦 れんぽう 地裁 ちさい では、トライアル開始 かいし 時 じ の陪審 ばいしん 員 いん の人数 にんずう は、6名 めい 以上 いじょう 12名 めい 以下 いか の範囲 はんい で裁判所 さいばんしょ が必要 ひつよう と考 かんが える人数 にんずう とされ、トライアルの途中 とちゅう で欠員 けついん が出 で た場合 ばあい 、6名 めい 以上 いじょう 残 のこ っていれば補充 ほじゅう しなくても評決 ひょうけつ をすることができる。また、当事 とうじ 者 しゃ が合意 ごうい した場合 ばあい は5名 めい 以下 いか になっても評決 ひょうけつ をすることができる[104] 。州 しゅう 裁判所 さいばんしょ でも、場合 ばあい によって、6名 めい (あるいは5名 めい 以下 いか )の陪審 ばいしん を認 みと めているところが多 おお い[105] 。
民事 みんじ 陪審 ばいしん における陪審 ばいしん 員 いん の選任 せんにん 手続 てつづき は、前述 ぜんじゅつ の刑事 けいじ 陪審 ばいしん とおおむね同様 どうよう である。連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ では、理由 りゆう 付 つ き忌避 きひ のほかに、各 かく 当事 とうじ 者 しゃ は3名 めい ずつの理由 りゆう なし忌避 きひ を行使 こうし することができる[106] 。
評議 ひょうぎ 及 およ び評決 ひょうけつ [ 編集 へんしゅう ]
審理 しんり が終 お わってからの説示 せつじ から評議 ひょうぎ への流 なが れは前述 ぜんじゅつ の刑事 けいじ 陪審 ばいしん と同様 どうよう である[107] 。
ただし、連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ の場合 ばあい 、裁判官 さいばんかん は、当事 とうじ 者 しゃ の申立 もうした てに基 もと づき、合理 ごうり 的 てき な陪審 ばいしん であれば相手方 あいてがた に有利 ゆうり な判断 はんだん をするだけの証拠 しょうこ はないであろうと判断 はんだん するときは、陪審 ばいしん に評議 ひょうぎ を求 もと める前 まえ に法律 ほうりつ 問題 もんだい としての判決 はんけつ (judgment as a matter of law) を下 くだ して一 いち 審 しん 手続 てつづき を終局 しゅうきょく させることができる[108] 。
それ以外 いがい の場合 ばあい 、裁判官 さいばんかん は、陪審 ばいしん に対 たい して評議 ひょうぎ の上 うえ 評決 ひょうけつ を答申 とうしん するよう求 もと めるが、その際 さい には、原告 げんこく 勝訴 しょうそ か被告 ひこく 勝訴 しょうそ か、また原告 げんこく 勝訴 しょうそ の場合 ばあい は救済 きゅうさい 内容 ないよう (賠償 ばいしょう 額 がく 等 とう )についての結論 けつろん だけを答申 とうしん する一般 いっぱん 評決 ひょうけつ (general verdict) を求 もと めるのが一般 いっぱん 的 てき である[109] 。しかし、裁判所 さいばんしょ は、各 かく 争 そう 点 てん についての結論 けつろん をそれぞれ答申 とうしん する個別 こべつ 評決 ひょうけつ (special verdict) を求 もと めることもできる[110] 。
陪審 ばいしん の評決 ひょうけつ は全員 ぜんいん 一致 いっち であることが求 もと められるのが普通 ふつう であるが、連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ では、当事 とうじ 者 しゃ が合意 ごうい した場合 ばあい は全員 ぜんいん 一致 いっち でなくても評決 ひょうけつ をすることができる[104] 。州 しゅう 裁判所 さいばんしょ でも、場合 ばあい によって、全員 ぜんいん 一致 いっち を要求 ようきゅう しないところが多 おお い[105] 。
評決 ひょうけつ 後 ご の手続 てつづき [ 編集 へんしゅう ]
裁判官 さいばんかん は、評決 ひょうけつ に従 したが って判決 はんけつ を下 くだ すのが原則 げんそく である。しかし、裁判官 さいばんかん は、評決 ひょうけつ 後 ご であっても、当事 とうじ 者 しゃ の再度 さいど の申立 もうした てに基 もと づき、合理 ごうり 的 てき な陪審 ばいしん であれば相手方 あいてがた に有利 ゆうり な判断 はんだん をするだけの証拠 しょうこ はないであろうと判断 はんだん する場合 ばあい には、法律 ほうりつ 問題 もんだい としての判決 はんけつ によって、評決 ひょうけつ と異 こと なる結論 けつろん を下 くだ すことができる[111] 。また、法律 ほうりつ 問題 もんだい としての判決 はんけつ を下 くだ さない場合 ばあい でも、評決 ひょうけつ について証拠 しょうこ 上 うえ 余 あま りにも疑問 ぎもん があるときは、裁判官 さいばんかん は、当事 とうじ 者 しゃ の申立 もうした て又 また は職権 しょっけん により、再 さい 審理 しんり (new trial) を命 めい じることができる[112] [注 ちゅう 12] 。前述 ぜんじゅつ のサマリ・ジャッジメントや、法律 ほうりつ 問題 もんだい としての判決 はんけつ は、裁判官 さいばんかん が陪審 ばいしん をコントロールするための手段 しゅだん として重要 じゅうよう な意味 いみ を持 も つという意見 いけん がある[113] 。
アメリカの刑事 けいじ 事件 じけん では、多 おお くが司法 しほう 取引 とりひき で解決 かいけつ され、また取 と り下 さ げられる事件 じけん も多 おお いため、対審 たいしん (陪審 ばいしん 又 また は裁判官 さいばんかん による事実 じじつ 審理 しんり )が開 ひら かれる割合 わりあい はわずかである。また、民事 みんじ 事件 じけん でも、事件 じけん の大 だい 多数 たすう が和解 わかい 等 とう で終 お わるため、トライアルに至 いた る事件 じけん は少 すく なく、その中 なか でも陪審 ばいしん によるトライアルが行 おこな われるのは少数 しょうすう である[114]
連邦 れんぽう 地方裁判所 ちほうさいばんしょ と、州 しゅう の一般 いっぱん 管轄 かんかつ を有 ゆう する裁判所 さいばんしょ (地方裁判所 ちほうさいばんしょ に相当 そうとう )における刑事 けいじ ・民事 みんじ の各 かく 新 しん 受件数 すう 及 およ び陪審 ばいしん トライアルの件数 けんすう をそれぞれ合計 ごうけい すると、次 つぎ のようになっている(1999年 ねん のデータ)。
連邦 れんぽう 及 およ び州 しゅう 裁判所 さいばんしょ における新 しん 受件数 すう と陪審 ばいしん トライアル件数 けんすう (1999年 ねん )[115]
連邦 れんぽう 地裁 ちさい
州 しゅう の一般 いっぱん 管轄 かんかつ 裁判所 さいばんしょ
新 しん 受件数 すう
陪審 ばいしん トライアル
新 しん 受件数 すう
陪審 ばいしん トライアル
刑事 けいじ
59,923
3,268
4,924,710
54,625
民事 みんじ
260,271
4,000
7,171,842
33,125
合計 ごうけい
320,194
7,268
12,096,552
87,750
さらに、近年 きんねん 、トライアル(特 とく に陪審 ばいしん トライアル)の減少 げんしょう が指摘 してき されている[114] 。連邦 れんぽう 地方裁判所 ちほうさいばんしょ におけるトライアルの件数 けんすう と、その新 しん 受件数 すう に対 たい する割合 わりあい は次 つぎ のようになっており、陪審 ばいしん トライアルは件数 けんすう 、割合 わりあい ともに減少 げんしょう 傾向 けいこう にあることが窺 うかが われる[116] 。
同様 どうよう に、州 しゅう 裁判所 さいばんしょ でも陪審 ばいしん トライアルは減少 げんしょう 傾向 けいこう にある。州 しゅう 裁判所 さいばんしょ を対象 たいしょう とした調査 ちょうさ によれば、刑事 けいじ 事件 じけん (23州 しゅう のデータ)では、1976件 けん から2002年 ねん までの間 あいだ に、既済 きさい 件数 けんすう が急増 きゅうぞう する一方 いっぽう 、陪審 ばいしん ・裁判官 さいばんかん ともにトライアル件数 けんすう は減少 げんしょう し、うち重罪 じゅうざい 事件 じけん (13州 しゅう のデータ)について見 み ると、1976年 ねん には既済 きさい 件数 けんすう に対 たい するトライアルの件数 けんすう の割合 わりあい が約 やく 9%(陪審 ばいしん 5.2%、裁判官 さいばんかん 3.7%)であったのに対 たい し、2002年 ねん には約 やく 3%(陪審 ばいしん 2.2%、裁判官 さいばんかん 1.0%)まで減少 げんしょう していた[117] 。民事 みんじ 事件 じけん (22州 しゅう のデータ)でも、事件 じけん 数 すう の増加 ぞうか に対 たい しトライアルは減少 げんしょう し、うち一般 いっぱん 事件 じけん (10州 しゅう のデータ)について見 み ると、1992年 ねん に既済 きさい 件数 けんすう に対 たい するトライアルの件数 けんすう の割合 わりあい が約 やく 6%(陪審 ばいしん 1.8%、裁判官 さいばんかん 4.3%)であったのに対 たい し、2002年 ねん には約 やく 5.6%(陪審 ばいしん 1.3%、裁判官 さいばんかん 4.3%)となっている[118] 。
それでも、推計 すいけい によれば、毎年 まいとし 約 やく 500万 まん 人 にん のアメリカ人 じん が陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ として裁判所 さいばんしょ に出頭 しゅっとう し、うち約 やく 100万 まん 人 にん が陪審 ばいしん 員 いん に選任 せんにん されている。1999年 ねん に行 おこな われたアメリカ人 じん 1800人 にん を対象 たいしょう とした調査 ちょうさ では、24%が陪審 ばいしん 員 いん を経験 けいけん したことがあると答 こた えた。別 べつ の2004年 ねん の調査 ちょうさ では、47%が陪審 ばいしん 員 いん を経験 けいけん したことがあると答 こた え、また多 おお くが陪審 ばいしん 制 せい について肯定 こうてい 的 てき な見方 みかた をしていることが分 わ かった[119] 。
イングランド及 およ びウェールズ [ 編集 へんしゅう ]
イングランド 及 およ びウェールズ は、陪審 ばいしん 制 せい 発祥 はっしょう の地 ち であるにもかかわらず、アメリカと異 こと なり陪審 ばいしん 裁判 さいばん を受 う ける権利 けんり を保障 ほしょう した成文 せいぶん 憲法 けんぽう がないこともあり、次第 しだい に時間 じかん と費用 ひよう がかかりすぎるという考 かんが えから、陪審 ばいしん 審理 しんり が制限 せいげん されていった。特 とく に19世紀 せいき から20世紀 せいき にかけ、陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われない治安 ちあん 判事 はんじ 裁判所 さいばんしょ の管轄 かんかつ できる事件 じけん の範囲 はんい が徐々 じょじょ に拡大 かくだい するにつれ、実質 じっしつ 的 てき に陪審 ばいしん 審理 しんり は限定 げんてい されるようになったと指摘 してき されている[120] 。
イングランド及 およ びウェールズでは、陪審 ばいしん 員 いん は18歳 さい から75歳 さい までの有権者 ゆうけんしゃ 登録 とうろく された市民 しみん から無作為 むさくい に選 えら ばれる[121] 。
イギリスの陪審 ばいしん (1861年 ねん )
刑事 けいじ 事件 じけん のうち、一定 いってい の重大 じゅうだい な事件 じけん である正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい (indictable-only offence ) は治安 ちあん 判事 はんじ 裁判所 さいばんしょ における予備 よび 審問 しんもん の後 のち に必 かなら ず国王 こくおう 裁判所 さいばんしょ に送 おく られ、選択 せんたく 的 てき 起訴 きそ 犯罪 はんざい (offence triable either way ) は治安 ちあん 判事 はんじ により正式 せいしき 起訴 きそ 手続 てつづき 相当 そうとう と判断 はんだん された場合 ばあい は国王 こくおう 裁判所 さいばんしょ に送致 そうち される。治安 ちあん 判事 はんじ が略式 りゃくしき 起訴 きそ 手続 てつづき 相当 そうとう として自 みずか らの裁判所 さいばんしょ で裁判 さいばん することを決定 けってい した場合 ばあい でも、被告人 ひこくにん は国王 こくおう 裁判所 さいばんしょ における陪審 ばいしん 審理 しんり を選択 せんたく する権利 けんり がある。こうして国王 こくおう 裁判所 さいばんしょ に送 おく られた事件 じけん は、陪審 ばいしん により審理 しんり される[122] 。略式 りゃくしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい (summary offence ) については、治安 ちあん 判事 はんじ が裁判 さいばん を行 おこな い、陪審 ばいしん 審理 しんり は行 おこな われない[123] 。
ただし、2003年 ねん 刑事 けいじ 司法 しほう 法 ほう (Criminal Justice Act 2003 ) により、国王 こくおう 裁判所 さいばんしょ でも陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われない二 ふた つの例外 れいがい が設 もう けられた。一 ひと つは重大 じゅうだい 又 また は複雑 ふくざつ な詐欺 さぎ 事件 じけん について、審理 しんり にかかる期間 きかん や複雑 ふくざつ 性 せい から陪審 ばいしん 審理 しんり の負担 ふたん が大 おお きいと判断 はんだん した場合 ばあい には、裁判官 さいばんかん が陪審 ばいしん なしの審理 しんり を命 めい じることができるとするものである(ただし高等法院 こうとうほういん 首席 しゅせき 判事 はんじ の承認 しょうにん が必要 ひつよう )。この規定 きてい は立法 りっぽう 過程 かてい で大 おお きな論争 ろんそう を招 まね いたため、議会 ぎかい 両院 りょういん が認 みと めるまで施行 しこう されないこととされており、2008年 ねん 現在 げんざい 、政府 せいふ の努力 どりょく にもかかわらず、この規定 きてい の施行 しこう の目処 めど は立 た っていない[124] 。
もう一 ひと つは、陪審 ばいしん に対 たい する干渉 かんしょう (買収 ばいしゅう 、威 たけし 迫 さこ 等 ひとし )が疑 うたが われる事件 じけん で、陪審 ばいしん なしの審理 しんり を許 ゆる すものである。これは、陪審 ばいしん に対 たい する干渉 かんしょう について「現実 げんじつ 的 てき かつ差 さ し迫 せま った危険 きけん 」を示 しめ す証拠 しょうこ があり、警察 けいさつ による保護 ほご をもってしても、干渉 かんしょう が行 おこな われる十分 じゅうぶん な可能 かのう 性 せい があり、かつ陪審 ばいしん なしの審理 しんり が正義 せいぎ にかなう場合 ばあい に許 ゆる される[125] 。同 どう 規定 きてい は2006年 ねん 7月 がつ 24日 にち に施行 しこう され[126] 、最初 さいしょ に適用 てきよう されたのは2008年 ねん 2月 がつ であった[127] 。
このほか、2004年 ねん ドメスティック・バイオレンス処罰 しょばつ 及 およ び被害 ひがい 者 しゃ 法 ほう (en ) 17条 じょう から20条 じょう には、ドメスティック・バイオレンス で訴追 そつい された被告人 ひこくにん について、一部 いちぶ の訴因 そいん だけをサンプルとして陪審 ばいしん で審理 しんり し、有罪 ゆうざい の場合 ばあい には残 のこ りの訴因 そいん を裁判官 さいばんかん のみで審理 しんり するという規定 きてい が設 もう けられた。これらの規定 きてい は2007年 ねん 1月 がつ 8日 にち に施行 しこう された[128] 。
また、被告人 ひこくにん が以前 いぜん に同 どう 一 いち 犯罪 はんざい で裁判 さいばん を受 う け有罪 ゆうざい 判決 はんけつ 又 また は無罪 むざい 判決 はんけつ を受 う けたことを理由 りゆう として一事 いちじ 不 ふ 再 さい 理 り の申立 もうした てをした場合 ばあい も、裁判官 さいばんかん はその問題 もんだい を陪審 ばいしん なしで判断 はんだん する[129] 。
現在 げんざい 、刑事 けいじ 事件 じけん の事実 じじつ 審理 しんり (トライアル)の大 だい 多数 たすう は法曹 ほうそう 資格 しかく のない治安 ちあん 判事 はんじ により行 おこな われており、陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われるのは1%程度 ていど にすぎない。1997年 ねん の時点 じてん で、約 やく 186万 まん 人 にん の被告人 ひこくにん が治安 ちあん 判事 はんじ 裁判所 さいばんしょ で裁判 さいばん を受 う けるのに対 たい し、国王 こくおう 裁判所 さいばんしょ で裁判 さいばん を受 う けるのは約 やく 9万 まん 1300人 にん (正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい はその19%)で、そのうち無罪 むざい の答弁 とうべん をして陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う けるのは67%である。陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う けた者 もの のうち、無罪 むざい の評決 ひょうけつ を受 う けるのは40%である[130] 。
検死 けんし 官 かん は、(1) 刑務所 けいむしょ 又 また は警察 けいさつ の留置 とめおき 場 じょう で人 ひと が死亡 しぼう した場合 ばあい 、(2) 警察官 けいさつかん の職務 しょくむ 執行 しっこう に際 さい し人 ひと が死亡 しぼう した場合 ばあい 、(3) 労働 ろうどう における健康 けんこう と安全 あんぜん 等 とう に関 かん する法律 ほうりつ (en ) に当 あ てはまる死亡 しぼう の場合 ばあい 、又 また は(4)人 にん の死亡 しぼう が公衆 こうしゅう の健康 けんこう 若 も しくは安全 あんぜん に影響 えいきょう を及 およ ぼす場合 ばあい には、死因 しいん 審問 しんもん のため、陪審 ばいしん を召喚 しょうかん しなければならない[131] [132] 。
2004年 ねん 、イングランド・ウェールズにおける死者 ししゃ 51万 まん 4000人 にん のうち、2万 まん 8300件 けん について死因 しいん 審問 しんもん が行 おこな われ、そのうち570件 けん が陪審 ばいしん によって行 おこな われた[133] 。
1846年 ねん までは、イングランド及 およ びウェールズではすべてのコモン・ロー 上 うえ の民事 みんじ 事件 じけん は陪審 ばいしん によって審理 しんり されていた。しかし、1846年 ねん の法律 ほうりつ で州 しゅう 裁判所 さいばんしょ (County Court ) が新設 しんせつ され、そこでは当事 とうじ 者 しゃ が希望 きぼう した場合 ばあい で、5ポンドを超 こ える事件 じけん に限 かぎ って陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われることとされた。すると、州 しゅう 裁判所 さいばんしょ で陪審 ばいしん 審理 しんり を要求 ようきゅう する当事 とうじ 者 しゃ は実際 じっさい には少 すく なかった[134] 。この新 あたら しい制度 せいど が成功 せいこう をもって受 う け止 と められたことに加 くわ え、裁判官 さいばんかん の清廉 せいれん さと法 ほう 制度 せいど の専門 せんもん 化 か が次第 しだい に認識 にんしき されるようになったこともあって、1854年 ねん のコモン・ロー手続 てつづき 法 ほう (Common Law Procedure Act) で、高等法院 こうとうほういん 王座 おうざ 部 ぶ における訴訟 そしょう 当事 とうじ 者 しゃ が裁判官 さいばんかん 1名 めい のみの審理 しんり を選 えら べることとされた際 さい も、大 おお きな抵抗 ていこう なく受 う け入 い れられた[135] [136] 。その後 ご の80年間 ねんかん に、民事 みんじ 事件 じけん における陪審 ばいしん 審理 しんり の利用 りよう は着実 ちゃくじつ に減 へ っていった[137] 。1883年 ねん には、最高法院 さいこうほういん 規則 きそく で、陪審 ばいしん による証拠 しょうこ 調 しら べが不便 ふべん であるなど一定 いってい の場合 ばあい に、裁判官 さいばんかん の裁量 さいりょう により陪審 ばいしん 審理 しんり を行 おこな わないことが認 みと められた[138] 。
1933年 ねん の司法 しほう 運営 うんえい (雑則 ざっそく )法 ほう [注 ちゅう 13] 6条 じょう は、高等法院 こうとうほういん 王座 おうざ 部 ぶ における陪審 ばいしん 審理 しんり の権利 けんり を次 つぎ の事件 じけん に対 たい して保障 ほしょう する一方 いっぽう 、その他 た の事件 じけん については、高等法院 こうとうほういん 王座 おうざ 部 ぶ で審理 しんり されるいかなる訴訟 そしょう も、裁判所 さいばんしょ 又 また は裁判官 さいばんかん の裁量 さいりょう により、陪審 ばいしん で審理 しんり するか陪審 ばいしん なしで審理 しんり するかを命 めい じることができるとした。
この法律 ほうりつ は事実 じじつ 上 じょう 、イングランド及 およ びウェールズにおける民事 みんじ 陪審 ばいしん に終 お わりを告 つ げるものであった。
1966年 ねん の控訴 こうそ 院 いん の判決 はんけつ で、デニング裁判官 さいばんかん は、人身 じんしん 傷害 しょうがい の事件 じけん は損害 そんがい の算定 さんてい に技術 ぎじゅつ 的 てき な専門 せんもん 知識 ちしき と経験 けいけん が必要 ひつよう であるため陪審 ばいしん 審理 しんり にふさわしくないとの判断 はんだん を示 しめ した[139] 。その当時 とうじ 、既 すで に、当事 とうじ 者 しゃ が人身 じんしん 傷害 しょうがい の事件 じけん で陪審 ばいしん 審理 しんり を求 もと めることはほとんどなかったものの、民事 みんじ 事件 じけん の多 おお くを占 し める人身 じんしん 傷害 しょうがい の事件 じけん で陪審 ばいしん 審理 しんり が否定 ひてい されたことは、民事 みんじ 陪審 ばいしん の終焉 しゅうえん を決定的 けっていてき にした[140] 。ロンドン地下鉄 ちかてつ で発生 はっせい したキングズ・クロスの火災 かさい (en ) についての1990年 ねん の訴訟 そしょう では、訴訟 そしょう 当事 とうじ 者 しゃ が陪審 ばいしん 審理 しんり を求 もと めたが、事件 じけん の技術 ぎじゅつ 的 てき な性格 せいかく を理由 りゆう に拒否 きょひ された[141] 。
1981年 ねん 最高法院 さいこうほういん 法 ほう (Supreme Court Act 1981 ) 69条 じょう は、1933年 ねん 法 ほう 6条 じょう を改 あらた め、高等法院 こうとうほういん における民事 みんじ 陪審 ばいしん の適用 てきよう 範囲 はんい を更 さら に狭 せば めた。すなわち、陪審 ばいしん 審理 しんり を行 おこな わなければならない事件 じけん を、詐欺 さぎ 、名誉 めいよ 毀損 きそん 、悪意 あくい 訴追 そつい ・誣告 ぶこく 、不法 ふほう 監禁 かんきん の事件 じけん に限 かぎ り、かつ、これらの事件 じけん においても、トライアルに書面 しょめん や金銭 きんせん の計算 けいさん や科学 かがく 的 てき 調査 ちょうさ 、あるいは現場 げんば の調査 ちょうさ が必要 ひつよう で、陪審 ばいしん により行 おこな うには不都合 ふつごう であると裁判所 さいばんしょ が考 かんが える場合 ばあい には、陪審 ばいしん 審理 しんり を行 おこな わないことができるとされた[142] 。
今日 きょう 、イングランドとウェールズにおける民事 みんじ 事件 じけん のトライアルのうち、陪審 ばいしん によるものは1%未満 みまん であり、その多 おお くが名誉 めいよ 毀損 きそん 事件 じけん である[140] 。
陪審 ばいしん 員 いん の数 かず と評決 ひょうけつ [ 編集 へんしゅう ]
イングランド・ウェールズにおける陪審 ばいしん 員 いん の数 かず
裁判所 さいばんしょ
トライアル開始 かいし 時 じ
最少 さいしょう 人数 にんずう
可能 かのう な多数決 たすうけつ
根拠 こんきょ
国王 こくおう 裁判所 さいばんしょ
12
9
11-1, 10-2, 10-1, 9-1
Juries Act 1974, s.17
高等法院 こうとうほういん
12
9
11-1, 10-2, 10-1, 9-1
Juries Act 1974, s.17
州 しゅう 裁判所 さいばんしょ
8
7
7-1
County Courts Act 1974, s.67; Juries Act 1974, s.17(2)
死因 しいん 審問 しんもん
7 - 11
—
少数 しょうすう 意見 いけん が2名 めい 以内 いない
Coroners Act 1988, s.8(2)(a), s.12
何 なん らかの理由 りゆう で陪審 ばいしん 員 いん が解任 かいにん された場合 ばあい も、最少 さいしょう 人数 にんずう の陪審 ばいしん 員 いん が残 のこ っている限 かぎ りトライアルを続行 ぞっこう することができる。裁判官 さいばんかん は、陪審 ばいしん に対 たい し全員 ぜんいん 一致 いっち の評決 ひょうけつ を求 もと めるべきであり、何 なに があっても、2時 じ 間 あいだ 10分 ふん が経過 けいか するまでは、多数決 たすうけつ が可能 かのう であることを述 の べてはならない。これはもともと2時 じ 間 あいだ であったが、陪審 ばいしん に、評議 ひょうぎ 室 しつ に下 さ がってから落 お ち着 つ くための時間 じかん を与 あた えるために延長 えんちょう された[143] 。
スコットランドの最高法院 さいこうほういん
スコットランド の刑事 けいじ 事件 じけん は、(1) 最高法院 さいこうほういん (High Court of Justiciary )、(2) 州 しゅう 裁判所 さいばんしょ (Sheriff Court ) の正式 せいしき 手続 てつづき (solemn procedure)、(3) 同 おな じく州 しゅう 裁判所 さいばんしょ の略式 りゃくしき 手続 てつづき (summary procedure)、又 また は (4) 簡易 かんい 裁判所 さいばんしょ (District Court ) のいずれかに起訴 きそ され、審理 しんり される。このうち最高法院 さいこうほういん と州 しゅう 裁判所 さいばんしょ の正式 せいしき 手続 てつづき では陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われるが、他 た の二 ふた つでは裁判官 さいばんかん による審理 しんり が行 おこな われる[144] 。殺人 さつじん 罪 ざい と強姦 ごうかん 罪 ざい (その他 た ごく限 かぎ られた犯罪 はんざい )は最高法院 さいこうほういん に専属 せんぞく 的 てき 管轄 かんかつ があるので、陪審 ばいしん 審理 しんり が保障 ほしょう されている。その他 た の事件 じけん は、検察官 けんさつかん の選択 せんたく により、最高法院 さいこうほういん (量刑 りょうけい に制限 せいげん なし)、州 しゅう 裁判所 さいばんしょ の正式 せいしき 手続 てつづき (選択 せんたく できる量刑 りょうけい の上限 じょうげん が自由 じゆう 刑 けい 3年 ねん )、同 おな じく州 しゅう 裁判所 さいばんしょ の略式 りゃくしき 手続 てつづき (量刑 りょうけい の上限 じょうげん が3か月 げつ )又 また は簡易 かんい 裁判所 さいばんしょ (量刑 りょうけい の上限 じょうげん が60日 にち )に起訴 きそ される[145] [注 ちゅう 14] 。被告人 ひこくにん には正式 せいしき 手続 てつづき と略式 りゃくしき 手続 てつづき の選択 せんたく 権 けん はない[146] 。
スコットランドの刑事 けいじ 陪審 ばいしん の、イングランドなど他 た の法域 ほういき と比 くら べた場合 ばあい の特殊 とくしゅ 性 せい は、次 つぎ の3点 てん にある[147] 。
陪審 ばいしん 員 いん の人数 にんずう が15人 にん である。これは16世紀 せいき 末 まつ までに確立 かくりつ した伝統 でんとう である[148] 。
評決 ひょうけつ は、8対 たい 7の単純 たんじゅん 多数決 たすうけつ で行 おこな う。そのため、評決 ひょうけつ 不能 ふのう (hung jury) は生 しょう じない。ただし、審理 しんり の途中 とちゅう で陪審 ばいしん 員 いん が病気 びょうき 等 とう で欠 か けた場合 ばあい 、12人 にん 以上 いじょう 残 のこ っていれば審理 しんり を続行 ぞっこう することができるが、その場合 ばあい でも有罪 ゆうざい 評決 ひょうけつ を答申 とうしん するためには8人 にん の賛成 さんせい が必要 ひつよう であり、その賛成 さんせい が得 え られなければ無罪 むざい 評決 ひょうけつ となる[149] 。
有罪 ゆうざい (guilty)・無罪 むざい (not guilty) の評決 ひょうけつ のほかに「証明 しょうめい なし」(not proven) という特殊 とくしゅ な評決 ひょうけつ が認 みと められている。証明 しょうめい なしは無罪 むざい 評決 ひょうけつ と効果 こうか に違 ちが いはないが、「無罪 むざい 」が、被告人 ひこくにん が罪 つみ を犯 おか していないということ(無実 むじつ )を積極 せっきょく 的 てき に宣言 せんげん するものと考 かんが えられているのに対 たい し、「証明 しょうめい なし」は被告人 ひこくにん の有罪 ゆうざい が結果 けっか 的 てき に証明 しょうめい されなかったということを意味 いみ するにすぎないと考 かんが えられており、証明 しょうめい なしの評決 ひょうけつ はしばしば出 だ されている[150] 。
一方 いっぽう 、スコットランドの民事 みんじ 陪審 ばいしん は、1815年 ねん にイングランド から移入 いにゅう されたもので、陪審 ばいしん 員 いん の人数 にんずう や評決 ひょうけつ に必要 ひつよう な数 かず 、評決 ひょうけつ の種類 しゅるい などはイングランドと同様 どうよう である[151] 。民事 みんじ 陪審 ばいしん が行 おこな われるのは最高 さいこう 民事 みんじ 裁判所 さいばんしょ (Court of Session ) における一定 いってい の類型 るいけい の事件 じけん に限 かぎ られ、当事 とうじ 者 しゃ の希望 きぼう による。対象 たいしょう となるのは、人身 じんしん 傷害 しょうがい (死 し に至 いた った場合 ばあい を含 ふく む)に対 たい する損害 そんがい 賠償 ばいしょう の訴 うった え、名誉 めいよ 毀損 きそん の訴 うった え、過失 かしつ 又 また は準 じゅん 過失 かしつ の不法 ふほう 行為 こうい に基 もと づく訴 うった え、(現在 げんざい は実際 じっさい には行 おこな われていないが)一定 いってい の根拠 こんきょ に基 もと づく減額 げんがく の訴 うった えである(1988年 ねん 法 ほう 11節 せつ )。陪審 ばいしん 審理 しんり の期日 きじつ が指定 してい されるのは年 とし に200件 けん 程度 ていど であり、そのうち実際 じっさい に期日 きじつ が実施 じっし されるのは年 とし に50件 けん 程度 ていど である。陪審 ばいしん 審理 しんり が必要 ひつよう な事件 じけん では、エディンバラ及 およ びロージアン(イースト 、ウェスト 、ミッド )に居住 きょじゅう する者 もの の中 なか から36人 にん の陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ が召喚 しょうかん され、その中 なか から12人 にん の陪審 ばいしん 員 いん が選 えら ばれる。評決 ひょうけつ は全員 ぜんいん 一致 いっち 又 また は多数決 たすうけつ で行 おこな われる[152] [153] 。
北 きた アイルランド では、陪審 ばいしん 裁判 さいばん の役割 やくわり はおおむねイングランド、ウェールズと同 おな じである[154] 。もっとも、テロリスト であるとされる者 もの の犯行 はんこう については、1973年 ねん から、陪審 ばいしん 裁判 さいばん ではなく裁判官 さいばんかん のみの裁判所 さいばんしょ (ディプロック・コート、en )で行 おこな われた。これはアイルランド独立 どくりつ 戦争 せんそう の間 あいだ に陪審 ばいしん に対 たい する脅迫 きょうはく が多 おお く行 おこな われたことによる。安全 あんぜん 面 めん の改善 かいぜん に伴 ともな い、ディプロック・コートは2007年 ねん 7月 がつ に廃止 はいし されることとなった[155] 。
陪審 ばいしん 制 せい は、アメリカ・イギリス以外 いがい にも、イギリスの旧 きゅう 植民 しょくみん 地 ち などを中心 ちゅうしん に、世界 せかい の多 おお くの国 くに にある。2000年 ねん の時点 じてん で、次 つぎ の国 くに ・地域 ちいき に陪審 ばいしん 制 せい があることが報告 ほうこく されている。ただし、これらの中 なか には、特 とく に民事 みんじ 陪審 ばいしん については、制度 せいど ないし規定 きてい としてはあっても、実際 じっさい には全 まった く、あるいはほとんど用 もち いられていない国 くに ・地域 ちいき もある(その場合 ばあい 、民 みん ・刑 けい の符号 ふごう に[ ]を付 ふ す)[156] 。
ヨーロッパ
アフリカ
アジア及 およ び南太平洋 みなみたいへいよう
北米 ほくべい 、カリブ海 かりぶかい
南米 なんべい ・中米 ちゅうべい
以下 いか 、各国 かっこく における現行 げんこう の陪審 ばいしん 制 せい の例 れい を挙 あ げる。
オーストラリア
オーストラリア には、イギリス植民 しょくみん 地 ち 時代 じだい の19世紀 せいき に陪審 ばいしん 制 せい がもたらされた。
オーストラリアの刑事 けいじ 事件 じけん の大 だい 多数 たすう を占 し める、州 しゅう (又 また は領域 りょういき )の犯罪 はんざい については、正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい (indictable offence) と略式 りゃくしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい (summary offence) に分 わ かれる。正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい が州 しゅう の最上級 さいじょうきゅう 裁判所 さいばんしょ (最高裁判所 さいこうさいばんしょ )又 また は中級 ちゅうきゅう 裁判所 さいばんしょ (地方裁判所 ちほうさいばんしょ や郡 ぐん 裁判所 さいばんしょ )に正式 せいしき 起訴 きそ (国王 こくおう の名 な による起訴 きそ )された場合 ばあい は、12人 にん で構成 こうせい される陪審 ばいしん の審理 しんり を受 う ける。ある犯罪 はんざい が正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい であるか略式 りゃくしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい であるかは立法 りっぽう によって決 き められるが(明示 めいじ 的 てき に定 さだ められていない場合 ばあい は、通常 つうじょう 、刑 けい の上限 じょうげん が1年 ねん の自由 じゆう 刑 けい を超 こ える場合 ばあい に正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい となる)、正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい であっても、事案 じあん の軽重 けいちょう 、被疑 ひぎ 者 しゃ の希望 きぼう 、検察官 けんさつかん や治安 ちあん 判事 はんじ の意見 いけん 等 とう を考慮 こうりょ して、治安 ちあん 判事 はんじ 裁判所 さいばんしょ に略式 りゃくしき 起訴 きそ されることもある。この場合 ばあい は陪審 ばいしん 審理 しんり は行 おこな われない。ニューサウスウェールズ州 しゅう 、南 みなみ オーストラリア州 しゅう 、西 にし オーストラリア州 しゅう 、オーストラリア首都 しゅと 特別 とくべつ 地域 ちいき では、正式 せいしき 起訴 きそ された被告人 ひこくにん でも単独 たんどく 裁判官 さいばんかん による審理 しんり を選択 せんたく することができることとされている。近年 きんねん 、略式 りゃくしき 起訴 きそ される割合 わりあい が増加 ぞうか しており、陪審 ばいしん 審理 しんり は減少 げんしょう しつつある。
次 つぎ に、連邦 れんぽう の犯罪 はんざい (例 たと えば禁止 きんし 薬物 やくぶつ の輸入 ゆにゅう など)については、1901年 ねん に制定 せいてい されたオーストラリア連邦 れんぽう 憲法 けんぽう において、正式 せいしき 起訴 きそ された場合 ばあい の陪審 ばいしん 審理 しんり が保障 ほしょう されている。もっとも、どの犯罪 はんざい を正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい とするかは連邦 れんぽう 議会 ぎかい の裁量 さいりょう に委 ゆだ ねられており、どれほど重 おも い罪 つみ であっても、略式 りゃくしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい としたり、選択 せんたく 的 てき 正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい として個々 ここ の事件 じけん ごとに決 き めさせたりすることも可能 かのう であると解釈 かいしゃく されている。正式 せいしき 起訴 きそ がされた場合 ばあい には、被告人 ひこくにん には陪審 ばいしん 審理 しんり を放棄 ほうき する権利 けんり はないとするのが判例 はんれい である[157] 。
カナダ
カナダ では、イギリスの植民 しょくみん 地 ち 時代 じだい の18世紀 せいき 半 なか ばに陪審 ばいしん 制 せい が導入 どうにゅう された。1892年 ねん に制定 せいてい された刑法 けいほう 典 てん において、重大 じゅうだい 事件 じけん について陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける権利 けんり が承認 しょうにん された[158] 。1982年 ねん に制定 せいてい された成文 せいぶん 憲法 けんぽう (Charter of Rights and Freedoms ) でも、一定 いってい の重大 じゅうだい な犯罪 はんざい について陪審 ばいしん 審理 しんり の権利 けんり が保障 ほしょう された。ただし、多 おお くの選択 せんたく 的 てき 正式 せいしき 起訴 きそ 犯罪 はんざい については、検察官 けんさつかん (Crown attorney ) が陪審 ばいしん 審理 しんり を回避 かいひ することができ、陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われない事件 じけん が増 ふ えている[159] 。
韓国 かんこく
韓国 かんこく では、2008年 ねん から、重大 じゅうだい 犯罪 はんざい のうち被告人 ひこくにん が希望 きぼう した事件 じけん を対象 たいしょう に、陪審 ばいしん 制 せい に参 さん 審 しん 制 せい を組 く み合 あ わせた国民 こくみん 参与 さんよ 裁判 さいばん 制度 せいど を実施 じっし している。陪審 ばいしん 員 いん のみで評議 ひょうぎ を行 おこな い、原則 げんそく として全員 ぜんいん 一致 いっち で評決 ひょうけつ を行 おこな うが、意見 いけん が分 わ かれた場合 ばあい は裁判官 さいばんかん と協議 きょうぎ の上 うえ 、多数決 たすうけつ で評決 ひょうけつ を行 おこな う点 てん 、裁判官 さいばんかん は陪審 ばいしん の評決 ひょうけつ と異 こと なる判決 はんけつ をい渡 いわた すことができる(その場合 ばあい は判決 はんけつ 書 しょ に理由 りゆう を記載 きさい する)点 てん など、伝統 でんとう 的 てき な陪審 ばいしん 制 せい とは異 こと なる特徴 とくちょう がある[160] 。
デンマーク
デンマーク では、陪審 ばいしん 制 せい と参 さん 審 しん 制 せい が併用 へいよう されており、重大 じゅうだい 事件 じけん は裁判官 さいばんかん 3名 めい と陪審 ばいしん 員 いん 12名 めい の陪審 ばいしん 制 せい で審理 しんり されるのに対 たい し、軽 けい 罪 つみ 事件 じけん のうち自白 じはく 事件 じけん は裁判官 さいばんかん 1名 めい で、否認 ひにん 事件 じけん は裁判官 さいばんかん 1名 めい と参 さん 審 しん 員 いん 2名 めい の参 さん 審 しん 制 せい で審理 しんり が行 おこな われる[161] 。
ニュージーランド
ニュージーランド は、植民 しょくみん 地 ち 時代 じだい の1841年 ねん の立法 りっぽう によってイギリスから陪審 ばいしん 制 せい を継受 けいじゅ した[162] 。
現在 げんざい 、ニュージーランドでは、成文 せいぶん 憲法 けんぽう ではなくコモン・ロー の慣習 かんしゅう と1990年 ねん の権利 けんり 章典 しょうてん 法 ほう (Bill of Rights Act) に基 もと づいて陪審 ばいしん 制 せい が行 おこな われている。最高 さいこう 刑 けい が14年 ねん 以上 いじょう の自由 じゆう 刑 けい である犯罪 はんざい については陪審 ばいしん 審理 しんり が必要 ひつよう であり、最高 さいこう 刑 けい が3か月 げつ を超 こ える自由 じゆう 刑 けい の犯罪 はんざい については被告人 ひこくにん が陪審 ばいしん 審理 しんり を選 えら ぶ権利 けんり が与 あた えられている。ただし、警察官 けいさつかん に対 たい する暴行 ぼうこう 罪 ざい など、一定 いってい の犯罪 はんざい については陪審 ばいしん 審理 しんり が除外 じょがい されている。
民事 みんじ 事件 じけん では、上級 じょうきゅう 裁判所 さいばんしょ (High Court) において、負債 ふさい の返済 へんさい 請求 せいきゅう や金銭 きんせん 賠償 ばいしょう 請求 せいきゅう など一定 いってい の事件 じけん について一方 いっぽう 当事 とうじ 者 しゃ が陪審 ばいしん 審理 しんり を要求 ようきゅう することができる。しかし、陪審 ばいしん 審理 しんり を受 う ける絶対 ぜったい 的 てき な権利 けんり があるわけではなく、難 むずか しい法律 ほうりつ 問題 もんだい を含 ふく む場合 ばあい か、書面 しょめん 、計算 けいさん 関係 かんけい の証拠 しょうこ 調 しら べが長引 ながび いたり、科学 かがく 的 てき ・技術 ぎじゅつ 的 てき ・ビジネス的 てき ・専門 せんもん 的 てき な難 むずか しい問題 もんだい を含 ふく んでいたりして陪審 ばいしん で行 おこな うには不便 ふべん な場合 ばあい には、裁判官 さいばんかん のみの審理 しんり を命 めい じることができる。現在 げんざい では民事 みんじ 陪審 ばいしん が行 おこな われるのは年 とし に1件 けん か2件 けん 程度 ていど である[163] 。
ノルウェー
ノルウェー でも、デンマークと同様 どうよう 、陪審 ばいしん 制 せい と参 さん 審 しん 制 せい が併用 へいよう されている。1審 しん の地方裁判所 ちほうさいばんしょ では裁判官 さいばんかん 制 せい 又 また は参 まいり 審 しん 制 せい で行 おこな われ、2審 しん の高等 こうとう 裁判所 さいばんしょ では、法定 ほうてい 刑 けい が6年 ねん 以上 いじょう の否認 ひにん 事件 じけん が裁判官 さいばんかん 3名 めい と陪審 ばいしん 員 いん 10名 めい の陪審 ばいしん 制 せい で裁 さば かれるが、それ以外 いがい の事件 じけん は参 まいり 審 しん 制 せい 又 また は裁判官 さいばんかん 制 せい で裁 さば かれる[161] 。
ロシア
ロシア では、1864年 ねん にアレクサンドル2世 せい により陪審 ばいしん 制 せい が導入 どうにゅう されたが1917年 ねん に廃止 はいし され、人民 じんみん 参 さん 審 しん 制 せい が行 おこな われていた。1993年 ねん に一部 いちぶ 地域 ちいき で陪審 ばいしん 制 せい が復活 ふっかつ した後 のち 、2003年 ねん に全 ぜん 地区 ちく へ拡大 かくだい するとともに、参 さん 審 しん 制 せい は廃止 はいし された[164] 。
日本 にっぽん に陪審 ばいしん 制 せい が紹介 しょうかい されたのは幕末 ばくまつ から明治 めいじ 初年 しょねん にかけてであり、当初 とうしょ "jury"の訳語 やくご としては「立会 たちあい ノモノ」(福沢 ふくさわ 諭吉 ゆきち 『西洋 せいよう 事情 じじょう 』1866年 ねん )、「断 だん 士 し 」・「誓 ちかい 士 し 」(津田 つだ 真道 まみち 『泰西 たいせい 国法 こくほう 論 ろん 』1868年 ねん )、「陪坐聴審」(柳河 やなかわ 春 はる 三 さん 訳 やく 『知 ち 環 たまき 啓蒙 けいもう 』1864年 ねん )、「陪審 ばいしん (たちあひ)」(中村 なかむら 正直 まさなお 『共和 きょうわ 政治 せいじ 』1873年 ねん )などが用 もち いられていた。ボアソナード が刑法 けいほう 草案 そうあん ・治 ち 罪 ざい 法 ほう 草案 そうあん に「陪審 ばいしん 」を用 もち いたことなどから「陪審 ばいしん (ばいしん)」が定着 ていちゃく した[165] 。
明治 めいじ 憲法 けんぽう では陪審 ばいしん 制 せい は採用 さいよう されなかったが、1928年 ねん (昭和 しょうわ 3年 ねん )から1943年 ねん (昭和 しょうわ 18年 ねん )までの間 あいだ 、後述 こうじゅつ のとおり陪審 ばいしん 法 ほう の下 した に刑事 けいじ 事件 じけん で陪審 ばいしん 制 せい が行 おこな われた。1943年 ねん (昭和 しょうわ 18年 ねん )以来 いらい 、同 どう 法 ほう は施行 しこう 停止 ていし されている。
また、戦後 せんご のアメリカ統治 とうち 下 か であった沖縄 おきなわ 県 けん でも、1963年 ねん (昭和 しょうわ 38年 ねん )から1972年 ねん (昭和 しょうわ 47年 ねん )までの間 あいだ 、アメリカ民 みん 政府 せいふ 裁判所 さいばんしょ において、陪審 ばいしん 制 せい が実施 じっし されていた。
東京 とうきょう 地方裁判所 ちほうさいばんしょ にあった陪審 ばいしん 法廷 ほうてい
明治 めいじ 憲法 けんぽう 制定 せいてい に当 あ たって日本 にっぽん が参照 さんしょう したプロイセン 王国 おうこく 法 ほう には陪審 ばいしん 制 せい の規定 きてい があり、当初 とうしょ は日本 にっぽん でも陪審 ばいしん 制 せい の憲法 けんぽう での明文化 めいぶんか が議論 ぎろん されていたが、大久保 おおくぼ 利通 としみち 、木戸 きど 孝允 たかよし 、伊藤 いとう 博文 ひろぶみ らの海外 かいがい 使節 しせつ 団 だん は、帰国 きこく 後 ご の報告 ほうこく 書 しょ (1871年 ねん )で、陪審 ばいしん 制 せい を日本 にっぽん で実施 じっし することは難 むずか しく、かつ「不用 ふよう 」であるとした。結果 けっか 的 てき に、明治 めいじ 憲法 けんぽう では陪審 ばいしん 制 せい は採用 さいよう されなかった[166] 。
1909年 ねん (明治 めいじ 42年 ねん )の第 だい 26回 かい 帝国 ていこく 議会 ぎかい において、立憲 りっけん 政友 せいゆう 会 かい 議員 ぎいん から「陪審 ばいしん 制度 せいど 設立 せつりつ ニ関 せき スル建議 けんぎ 案 あん 」が提出 ていしゅつ され、衆議院 しゅうぎいん を通過 つうか したが、このときは陪審 ばいしん 制 せい は成立 せいりつ を見 み なかった[167] 。
その後 ご 、大正 たいしょう デモクラシー運動 うんどう が高揚 こうよう する中 なか 、1918年 ねん (大正 たいしょう 7年 ねん )に原 はら 敬 たかし 内閣 ないかく が成立 せいりつ すると、原 はら は陪審 ばいしん 制度 せいど 導入 どうにゅう に着手 ちゃくしゅ し、司法省 しほうしょう に置 お かれた陪審 ばいしん 法 ほう 調査 ちょうさ 委員 いいん 会 かい において法案 ほうあん が起草 きそう された。しかし、美濃部 みのべ 達吉 たつきち や枢密院 すうみついん は、裁判官 さいばんかん の資格 しかく を持 も たない者 もの の裁判 さいばん 関与 かんよ を認 みと める陪審 ばいしん 制 せい は明治 めいじ 憲法 けんぽう 24条 じょう に違反 いはん するなどと主張 しゅちょう して、陪審 ばいしん の評決 ひょうけつ が裁判官 さいばんかん を拘束 こうそく しないこととするなどの大幅 おおはば な修正 しゅうせい を求 もと めた。結局 けっきょく 、原内 はらうち 閣 かく を継 つ いだ高橋 たかはし 是清 これきよ 内閣 ないかく がこれらの修正 しゅうせい を受 う け入 い れ[168] 、1923年 ねん (大正 たいしょう 12年 ねん )の第 だい 46回 かい 帝国 ていこく 議会 ぎかい において陪審 ばいしん 法 ほう (大正 たいしょう 12年 ねん 4月 がつ 18日 にち 法律 ほうりつ 第 だい 50号 ごう 。以下 いか 条 じょう 数 すう のみを記載 きさい する。)が成立 せいりつ し、1928年 ねん (昭和 しょうわ 3年 ねん )10月 がつ 1日 にち から施行 しこう された。
この法令 ほうれい により初 はじ めて行 おこな われた陪審 ばいしん 裁判 さいばん は、1928年 ねん (昭和 しょうわ 3年 ねん )10月23日 にち に大分 おおいた 地方裁判所 ちほうさいばんしょ で開 ひら かれた殺人 さつじん 未遂 みすい 事件 じけん をめぐる裁判 さいばん である[169] 。
法定 ほうてい 刑 けい が死刑 しけい 又 また は無期 むき 懲役 ちょうえき ・無期 むき 禁錮 きんこ に当 あ たる刑事 けいじ 事件 じけん については原則 げんそく として陪審 ばいしん の評議 ひょうぎ に付 ふ すこととされ(2条 じょう 、法定 ほうてい 陪審 ばいしん 事件 じけん )、長期 ちょうき 3年 ねん を超 こ える有期 ゆうき 懲役 ちょうえき ・禁錮 きんこ に当 あ たる事件 じけん で、地方裁判所 ちほうさいばんしょ の管轄 かんかつ に属 ぞく するものについては、被告人 ひこくにん が請求 せいきゅう したときには陪審 ばいしん の評議 ひょうぎ に付 ふ すこととされた(3条 じょう 、請求 せいきゅう 陪審 ばいしん 事件 じけん )。この請求 せいきゅう 陪審 ばいしん は、日本 にっぽん 独自 どくじ の制度 せいど であった。
もっとも、被告人 ひこくにん が公判 こうはん 又 また は公判 こうはん 準備 じゅんび において公訴 こうそ 事実 じじつ を認 みと めた場合 ばあい は、陪審 ばいしん の評議 ひょうぎ に付 ふ することはできないとされた(7条 じょう )。また、被告人 ひこくにん は、法定 ほうてい 陪審 ばいしん 事件 じけん であっても陪審 ばいしん を辞退 じたい することができ、請求 せいきゅう 陪審 ばいしん 事件 じけん でいったん陪審 ばいしん を請求 せいきゅう した後 のち でも検察官 けんさつかん の陳述 ちんじゅつ の前 まえ であれば請求 せいきゅう を取 と り下 さ げることができた(6条 じょう )。
なお、法定 ほうてい 陪審 ばいしん 事件 じけん ・請求 せいきゅう 陪審 ばいしん 事件 じけん の要件 ようけん を具備 ぐび する場合 ばあい でも、(1) 大審院 だいしんいん の特別 とくべつ 権限 けんげん に属 ぞく する罪 ざい 、(2) 皇室 こうしつ に対 たい する罪 つみ 、内乱 ないらん に関 かん する罪 つみ 、外患 がいかん に関 かん する罪 つみ 、国交 こっこう に関 かん する罪 つみ 、騒擾 そうじょう の罪 つみ 、(3) 治安 ちあん 維持 いじ 法 ほう の罪 つみ 、(4) 軍機 ぐんき 保護 ほご 法 ほう 、陸軍 りくぐん 刑法 けいほう 又 また は海軍 かいぐん 刑法 けいほう の罪 つみ その他 た 軍機 ぐんき に関 かん し犯 おか した罪 つみ 、(5) 法令 ほうれい によって行 おこな う公選 こうせん に関 かん し犯 おか した罪 つみ については、陪審 ばいしん 裁判 さいばん の対象 たいしょう としないこととされた(4条 じょう 、陪審 ばいしん 不適 ふてき 事件 じけん )。
陪審 ばいしん 員 いん は12人 にん で(29条 じょう )、陪審 ばいしん 員 いん の資格 しかく としては、30歳 さい 以上 いじょう の男子 だんし で、直接 ちょくせつ 国税 こくぜい 3円 えん 以上 いじょう を納 おさ めており、読 よ み書 か きができるなどの要件 ようけん を満 み たしていることが必要 ひつよう であった(12条 じょう )。ほかに、引 ひ き続 つづ き2年間 ねんかん 以上 いじょう 同一 どういつ 市町村 しちょうそん に住居 じゅうきょ すること。ただし、禁治産者 きんちさんしゃ 、準 じゅん 禁治産者 きんちさんしゃ 、破産 はさん 者 しゃ で復権 ふっけん を得 え ない者 もの 、聾 ろう 者 しゃ 、唖 おし 者 しゃ 、盲者 もうしゃ 、懲役 ちょうえき 、6年 ねん 以上 いじょう の禁錮 きんこ 、旧 きゅう 刑法 けいほう の重罪 じゅうざい の刑 けい または重 じゅう 禁錮 きんこ の処 しょ せられた者 もの は陪審 ばいしん 員 いん にはなれない。
陪審 ばいしん 裁判 さいばん の手続 てつづき [ 編集 へんしゅう ]
陪審 ばいしん 事件 じけん については、公判 こうはん 前 まえ に公判 こうはん 準備 じゅんび 期日 きじつ の手続 てつづき が行 おこな われ(35条 じょう )、被告人 ひこくにん を尋問 じんもん した上 うえ (42条 じょう )、証人 しょうにん 尋問 じんもん 等 とう の証拠 しょうこ 調 しら べの決定 けってい が行 おこな われた(43条 じょう )。この時点 じてん で被告人 ひこくにん が事実 じじつ に間違 まちが いない旨 むね 陳述 ちんじゅつ すれば、陪審 ばいしん は中止 ちゅうし され、通常 つうじょう の審理 しんり に移行 いこう した(51条 じょう 、7条 じょう )。
公判 こうはん 期日 きじつ には陪審 ばいしん 員 いん 候補者 こうほしゃ 名簿 めいぼ から抽選 ちゅうせん で選 えら ばれた36人 にん の陪審 ばいしん 員 いん を呼 よ び出 だ した(27条 じょう 、57条 じょう )。その中 なか から検察官 けんさつかん と被告人 ひこくにん は理由 りゆう なく忌避 きひ することができ(64条 じょう 、65条 じょう 4項 こう )、忌避 きひ されなかった者 もの の中 なか から12人 にん が陪審 ばいしん 員 いん となった(67条 じょう )。
立命館大学 りつめいかんだいがく 末川 すえかわ 記念 きねん 会館 かいかん に移築 いちく されて残 のこ る、京都 きょうと 地方裁判所 ちほうさいばんしょ の陪審 ばいしん 法廷 ほうてい 。
その後 ご 、公判 こうはん 手続 てつづき が行 おこな われ、裁判 さいばん 長 ちょう による陪審 ばいしん 員 いん の心得 こころえ の諭告 ゆこく (ゆこく)、陪審 ばいしん 員 いん の宣誓 せんせい (69条 じょう )、検察官 けんさつかん による被告 ひこく 事件 じけん の陳述 ちんじゅつ 、被告人 ひこくにん 尋問 じんもん 、証拠 しょうこ 調 しら べ 、論告 ろんこく ・弁論 べんろん (76条 じょう )、裁判 さいばん 長 ちょう の陪審 ばいしん に対 たい する説示 せつじ 、犯罪 はんざい 構成 こうせい 事実 じじつ の有無 うむ についての問 と い(77条 じょう )と進行 しんこう した。陪審 ばいしん は、裁判 さいばん 長 ちょう から「問 とい 書 しょ 」を受 う け取 と ると、評議 ひょうぎ 室 しつ に入 はい り(81条 じょう 、82条 じょう )、評議 ひょうぎ の上 うえ 、「然 しか り」又 また は「然 しか らず」との答申 とうしん をすることとされた(88条 じょう )。犯罪 はんざい 構成 こうせい 事実 じじつ を肯定 こうてい するには陪審 ばいしん 員 いん の過半数 かはんすう の意見 いけん によることが必要 ひつよう であった(91条 じょう )。評議 ひょうぎ が終 お わるまでは、裁判 さいばん 長 ちょう の許可 きょか がなければ評議 ひょうぎ 室 しつ から出 で たり他人 たにん と話 はなし をしたりすることができず、公判 こうはん が数日 すうじつ にまたがる場合 ばあい は裁判所 さいばんしょ に設置 せっち された陪審 ばいしん 員 いん 宿舎 しゅくしゃ に宿泊 しゅくはく しなければならなかった(83条 じょう 、84条 じょう )。
裁判所 さいばんしょ は、陪審 ばいしん の有罪 ゆうざい の答申 とうしん を採択 さいたく する場合 ばあい には、情状 じょうじょう に関 かん する事実 じじつ の尋問 じんもん ・証拠 しょうこ 調 しら べ[注 ちゅう 15] 、第 だい 2次 じ の論告 ろんこく ・弁論 べんろん (96条 じょう )を経 へ た上 うえ 、法令 ほうれい を適用 てきよう して有罪 ゆうざい の言渡 いいわた しをし(97条 じょう 2項 こう )、無罪 むざい の答申 とうしん を採択 さいたく する場合 ばあい には無罪 むざい の言渡 いいわた しをする(同 どう 条 じょう 3項 こう )。しかし、裁判所 さいばんしょ は、陪審 ばいしん の答申 とうしん を不当 ふとう と認 みと めるときは、他 た の陪審 ばいしん の評議 ひょうぎ に付 ふ すること(陪審 ばいしん の更新 こうしん )ができた(95条 じょう )。
陪審 ばいしん の答申 とうしん を採択 さいたく して事実 じじつ の判断 はんだん をした判決 はんけつ に対 たい しては、控訴 こうそ をすることはできなかった(101条 じょう )。なお、大審院 だいしんいん への上告 じょうこく はできた(102条 じょう )。
陪審 ばいしん 制 せい の停止 ていし [ 編集 へんしゅう ]
多額 たがく の陪審 ばいしん 費用 ひよう が被告人 ひこくにん の負担 ふたん とされることが多 おお かったこと[170] 、陪審 ばいしん を選択 せんたく した場合 ばあい は控訴 こうそ によって事実 じじつ 認定 にんてい を争 あらそ うことはできなかったことなどから、被告人 ひこくにん が法定 ほうてい 陪審 ばいしん 事件 じけん で陪審 ばいしん を辞退 じたい したり、請求 せいきゅう 陪審 ばいしん 事件 じけん でいったん陪審 ばいしん を請求 せいきゅう しても請求 せいきゅう を取 と り下 さ げる例 れい が多 おお かった。裁判官 さいばんかん が陪審 ばいしん 員 いん の答申 とうしん に拘束 こうそく されないこと(陪審 ばいしん の更新 こうしん )も、陪審 ばいしん 制 せい の意義 いぎ を骨抜 ほねぬ きにするものであった。1928年 ねん (昭和 しょうわ 3年 ねん )から1942年 ねん (昭和 しょうわ 17年 ねん )までの間 あいだ に、法定 ほうてい 陪審 ばいしん 事件 じけん 2万 まん 5097件 けん のうち、実際 じっさい に陪審 ばいしん に付 ふ されたのは448件 けん 、請求 せいきゅう 陪審 ばいしん 事件 じけん で請求 せいきゅう があった43件 けん のうち、実際 じっさい に陪審 ばいしん に付 ふ されたのは12件 けん であった[171] 。1941年 ねん (昭和 しょうわ 16年 ねん )と1942年 ねん (昭和 しょうわ 17年 ねん )には、陪審 ばいしん 審理 しんり は1件 けん ずつしか行 おこな われなかった[172] 。
また、第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん が激化 げきか するにつれ、市町村 しちょうそん では徴兵 ちょうへい 業務 ぎょうむ の負担 ふたん が重 おも くなり、陪審 ばいしん 員 いん 名簿 めいぼ の作成 さくせい が難 むずか しくなってきたことから、市町村 しちょうそん から陪審 ばいしん 制 せい 停止 ていし の要望 ようぼう が出 だ された[173] 。こうして、1943年 ねん (昭和 しょうわ 18年 ねん )4月 がつ 1日 にち に陪審 ばいしん 法 ほう ノ停止 ていし ニ関 せき スル法律 ほうりつ によって陪審 ばいしん 制 せい が停止 ていし されることになった。同 どう 法 ほう は附則 ふそく 3項 こう において「今次 こんじ ノ戦争 せんそう 終了 しゅうりょう 後 ご 再 さい 施行 しこう スル」と規定 きてい していたが、再 さい 施行 しこう されないまま今日 きょう に至 いた っている。
この制度 せいど によって484件 けん が陪審 ばいしん に付 ふ され(うち24件 けん は陪審 ばいしん の更新 こうしん によるもので、実質 じっしつ 事件 じけん 数 すう は460件 けん )、うち81件 けん に無罪 むざい 判決 はんけつ が出 で た[174] 。
復活 ふっかつ 論 ろん と裁判 さいばん 員 いん 制度 せいど [ 編集 へんしゅう ]
終戦 しゅうせん 後 ご 、占領 せんりょう 軍 ぐん は日本 にっぽん における陪審 ばいしん 制 せい の復活 ふっかつ を強 つよ くは主張 しゅちょう せず[175] 、1947年 ねん (昭和 しょうわ 22年 ねん )4月 がつ 16日 にち 公布 こうふ の裁判所 さいばんしょ 法 ほう (同年 どうねん 5月 がつ 3日 にち 施行 しこう )では、別 べつ に法律 ほうりつ で刑事 けいじ 事件 じけん の陪審 ばいしん 制 せい を設 もう けることを妨 さまた げないと規定 きてい されるにとどまった(同 どう 法 ほう 3条 じょう 3項 こう )。
1999年 ねん (平成 へいせい 11年 ねん )7月 がつ に設置 せっち された司法 しほう 制度 せいど 改革 かいかく 審議 しんぎ 会 かい で国民 こくみん の司法 しほう 参加 さんか が取 と り上 あ げられることとなり、陪審 ばいしん 制 せい に関 かん する議論 ぎろん が急 きゅう 浮上 ふじょう したが、同 どう 審議 しんぎ 会 かい の最終 さいしゅう 意見 いけん 書 しょ で、職業 しょくぎょう 裁判官 さいばんかん と市民 しみん が共 とも に評議 ひょうぎ ・評決 ひょうけつ を行 おこな う、参 さん 審 しん 制 せい に近 ちか い裁判 さいばん 員 いん 制度 せいど の採用 さいよう が決 き まった[176] 。
アメリカ統治 とうち 下 か にあった沖縄 おきなわ 県 けん [ 編集 へんしゅう ]
米 べい 国民 こくみん 政府 せいふ 裁判所 さいばんしょ で行 おこな われた陪審 ばいしん 員 いん の抽選 ちゅうせん
当時 とうじ の沖縄 おきなわ 県 けん では、高等 こうとう 弁務 べんむ 官 かん を長 ちょう とするアメリカ民 みん 政府 せいふ と、その下 した に置 お かれた琉球 りゅうきゅう 政府 せいふ があった。1963年 ねん 3月8日 にち 、「アメリカ民 みん 政府 せいふ 刑事 けいじ 裁判所 さいばんしょ 」(1958年 ねん 7月 がつ 21日 にち 布告 ふこく 第 だい 8号 ごう )及 およ び「刑法 けいほう 並 なら びに訴訟 そしょう 手続 てつづき 法典 ほうてん 」(1955年 ねん 3月 がつ 16日 にち 布令 ふれい 第 だい 144号 ごう )が改正 かいせい され、アメリカ民 みん 政府 せいふ 裁判所 さいばんしょ における刑事 けいじ 裁判 さいばん について、大 だい 陪審 ばいしん と小 しょう 陪審 ばいしん が導入 どうにゅう された。また、1964年 ねん 5月21日 にち 、「アメリカ民 みん 政府 せいふ 民事 みんじ 裁判所 さいばんしょ 」(1958年 ねん 7月 がつ 21日 にち 布告 ふこく 第 だい 9号 ごう )が改正 かいせい され、アメリカ民 みん 政府 せいふ 裁判所 さいばんしょ における民事 みんじ 裁判 さいばん について陪審 ばいしん 制 せい が導入 どうにゅう された。以後 いご 、刑事 けいじ ・民事 みんじ の陪審 ばいしん 制 せい が1972年 ねん の施政 しせい 権 けん 返還 へんかん まで行 おこな われた[177] 。
これは、在住 ざいじゅう のアメリカ人 じん やアメリカ人 じん 弁護士 べんごし からの陪審 ばいしん 裁判 さいばん への要求 ようきゅう があったためであるとされる。もっとも、純粋 じゅんすい にアメリカ人 じん だけが関与 かんよ する制度 せいど ではなく、(1) 陪審 ばいしん 員 いん の資格 しかく としてはアメリカ国籍 こくせき を要求 ようきゅう せず、単 たん に「三 さん 月 がつ 間 あいだ 琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう 内 ない に居住 きょじゅう した者 もの 」とされていたことから、琉球 りゅうきゅう 住民 じゅうみん を含 ふく め居住 きょじゅう 者 しゃ の全 すべ てが陪審 ばいしん 員 いん として参加 さんか することができた(ただし英語 えいご の読 よ み書 か きのできない者 もの は除 のぞ かれた)。また、(2) 刑事 けいじ ・民事 みんじ 事件 じけん ともに、当事 とうじ 者 しゃ がアメリカ人 じん の事件 じけん に限定 げんてい せず、「高等 こうとう 弁務 べんむ 官 かん が合衆国 がっしゅうこく の安全 あんぜん 、財産 ざいさん または利害 りがい に影響 えいきょう を及 およ ぼすと認 みと める(特 とく に)重大 じゅうだい な事件 じけん 」についてはアメリカ民 みん 政府 せいふ 裁判所 さいばんしょ の裁判 さいばん 権 けん が及 およ んでいたことから、居住 きょじゅう の者 もの が当事 とうじ 者 しゃ の事件 じけん も陪審 ばいしん による審理 しんり を受 う けることができた[177] 。
制度 せいど の概要 がいよう は次 つぎ のとおりである[177] 。
大 だい 陪審 ばいしん
アメリカ民 みん 政府 せいふ 高等 こうとう 裁判所 さいばんしょ において、重罪 じゅうざい (死刑 しけい 又 また は1年 ねん を超 こ える懲役 ちょうえき に当 あ たる罪 つみ )については大 だい 陪審 ばいしん による正式 せいしき 起訴 きそ (インダイトメント)を受 う ける権利 けんり が保障 ほしょう された。被疑 ひぎ 者 しゃ が権利 けんり を放棄 ほうき した場合 ばあい は、検察官 けんさつかん による簡易 かんい 起訴 きそ が行 おこな われた。大 だい 陪審 ばいしん は6名 めい 以上 いじょう 9名 めい 以下 いか で構成 こうせい された。
刑事 けいじ (小 しょう )陪審 ばいしん
アメリカ民 みん 政府 せいふ 高等 こうとう 裁判所 さいばんしょ において、微罪 びざい 以外 いがい のすべての犯罪 はんざい について小 しょう 陪審 ばいしん による裁判 さいばん を受 う ける権利 けんり が保障 ほしょう された。被告人 ひこくにん が罪状 ざいじょう 認否 にんぴ 手続 てつづき で無罪 むざい 答弁 とうべん 等 とう をした場合 ばあい は原則 げんそく として陪審 ばいしん 審理 しんり が行 おこな われるが、被告人 ひこくにん が権利 けんり を放棄 ほうき した場合 ばあい は裁判官 さいばんかん による審理 しんり が行 おこな われた。刑事 けいじ ・民事 みんじ とも小 しょう 陪審 ばいしん は12名 めい で構成 こうせい された(これに加 くわ え予備 よび 員 いん も選任 せんにん された)。
評決 ひょうけつ は有罪 ゆうざい か否 ひ かの一般 いっぱん 評決 ひょうけつ であり、全員 ぜんいん 一致 いっち であることを要 よう した。無罪 むざい 評決 ひょうけつ に対 たい しては二 に 重 じゅう の危険 きけん の禁止 きんし から上訴 じょうそ できず、有罪 ゆうざい 評決 ひょうけつ に対 たい しては、手続 てつづき 的 てき 瑕疵 かし や法律 ほうりつ 違反 いはん についての上訴 じょうそ が許 ゆる されていた。
民事 みんじ 陪審 ばいしん
民事 みんじ 陪審 ばいしん は、アメリカ民 みん 政府 せいふ 民事 みんじ 裁判所 さいばんしょ において行 おこな われた。
この制度 せいど により1963年 ねん から1972年 ねん までの間 あいだ に行 おこな われた陪審 ばいしん 裁判 さいばん は、刑事 けいじ ・民事 みんじ 合 あ わせておよそ10件 けん 程度 ていど と推定 すいてい されている(この間 あいだ の全 ぜん 事件 じけん 数 すう は103件 けん (刑事 けいじ 89件 けん 、民事 みんじ 14件 けん )であった)[177] [注 ちゅう 16] 。
^ 法域 ほういき (英 えい :jurisdiction) とは、ある法体 ほうたい 系 けい によって支配 しはい されている領域 りょういき をいい、単一 たんいつ 国家 こっか の場合 ばあい は国家 こっか の領域 りょういき と法域 ほういき が一致 いっち するが、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく の場合 ばあい は連邦 れんぽう と各州 かくしゅう それぞれが独立 どくりつ した法体 ほうたい 系 けい を形成 けいせい しているため、それぞれが法域 ほういき に当 あ たる。参照 さんしょう :浅香 あさか (2000: 3)。
^ トライアル (trial) とは、刑事 けいじ 事件 じけん 及 およ び民事 みんじ 事件 じけん において、事実 じじつ 認定 にんてい を行 おこな う陪審 ばいしん 又 また は裁判官 さいばんかん の前 まえ で、証人 しょうにん 尋問 じんもん 等 ひとし の証拠 しょうこ 調 しら べを行 おこな うとともに、双方 そうほう 当事 とうじ 者 しゃ が弁論 べんろん を行 おこな う英 えい 米 べい 法 ほう 上 じょう の手続 てつづき である。
^ 陪審 ばいしん は事実 じじつ 認定 にんてい だけでなく、認定 にんてい した事実 じじつ に、説示 せつじ された法 ほう を適用 てきよう する作業 さぎょう も行 おこな う。浅香 あさか (2000: 100)、丸山 まるやま (1990: 9)。
^ そのような批判 ひはん がされた例 れい として、日本人 にっぽんじん 留学生 りゅうがくせい 射殺 しゃさつ 事件 じけん の刑事 けいじ 裁判 さいばん で、日本人 にっぽんじん 留学生 りゅうがくせい を射殺 しゃさつ した男性 だんせい に12人 にん 全員 ぜんいん の一致 いっち で無罪 むざい 評決 ひょうけつ が出 だ された事例 じれい がある。
^ アメリカの場合 ばあい 、ほとんどの法域 ほういき で、陪審 ばいしん 員 いん には1日 にち 数 すう 十 じゅう ドル程度 ていど の日当 にっとう と交通 こうつう 費 ひ が支払 しはら われる。浅香 あさか (2000: 111)。連邦 れんぽう 裁判所 さいばんしょ の場合 ばあい 、日当 にっとう は1日 にち 40ドル (28 U.S.C. §1871 (b)(1))。
^ 例外 れいがい として、アメリカの州 しゅう のうち、インディアナ州 しゅう 、メリーランド州 しゅう 、ジョージア州 しゅう では陪審 ばいしん が法 ほう と事実 じじつ の双方 そうほう を決 き めるとの憲法 けんぽう の規定 きてい があるが、いずれの州 しゅう の判例 はんれい もその規定 きてい を限定 げんてい 的 てき に解釈 かいしゃく しており、陪審 ばいしん が恣意 しい 的 てき に裁判官 さいばんかん の説示 せつじ を離 はな れて法律 ほうりつ 判断 はんだん を行 おこな うことは認 みと めていない。Leipold, Anderew D. (1997). “Race-based Jury nullification: Rebuttal (Part A)”. John Marshall Law Review 30 : 923.
^ アメリカでは、合衆国 がっしゅうこく 憲法 けんぽう 修正 しゅうせい 5条 じょう (日本語 にほんご 訳 やく /原文 げんぶん )で保障 ほしょう されている。
^ そのような活動 かつどう を行 おこな うアメリカの団体 だんたい として、FIJA が知 し られている。参照 さんしょう :FIJAウェブサイト 。
^ 死刑 しけい 求刑 きゅうけい 事件 じけん では双方 そうほう 20人 にん ずつ、それ以外 いがい の重罪 じゅうざい 事件 じけん (自由 じゆう 刑 けい の上限 じょうげん が1年 ねん を超 こ える)では被告人 ひこくにん 側 がわ が10人 にん で検察 けんさつ 側 がわ が6人 にん 、軽 けい 罪 つみ 事件 じけん (罰金 ばっきん 刑 けい 又 また は自由 じゆう 刑 けい の上限 じょうげん が1年 ねん 以下 いか )では双方 そうほう 3人 にん ずつの理由 りゆう なし忌避 きひ を行使 こうし することができる。
^ 無罪 むざい 判決 はんけつ による審理 しんり の終了 しゅうりょう は陪審 ばいしん の評決 ひょうけつ 前 まえ にも可能 かのう である。Ibid. (591-592)。
^ 例 たと えば、原告 げんこく の訴状 そじょう に、求 もと める救済 きゅうさい 内容 ないよう を基礎 きそ 付 つ けるだけの主張 しゅちょう が記載 きさい されていない場合 ばあい 、被告 ひこく の申立 もうした てによって訴 うった えは却下 きゃっか (dismiss) される。連邦 れんぽう 民事 みんじ 訴訟 そしょう 規則 きそく Rule 12 (b)(6)、浅香 あさか (2000: 70)。
^ 再 さい 審理 しんり を命 めい じるか否 ひ かは、裁判官 さいばんかん の裁量 さいりょう が大 おお きい。丸山 まるやま (1990: 90)。
^ Administration of Justice (Miscellaneous Provisions) Act 1933。後述 こうじゅつ の1981年 ねん 最高法院 さいこうほういん 法 ほう 69条 じょう により改正 かいせい 。
^ ただし州 しゅう 裁判所 さいばんしょ の略式 りゃくしき 手続 てつづき で選択 せんたく 可能 かのう な量刑 りょうけい は、The Crime and Punishment (Scotland) Act 1997 s.13により、倍 ばい の6か月 げつ になった(2000年 ねん の時点 じてん で未 み 施行 しこう )。
^ 情状 じょうじょう に関 かん する事実 じじつ の尋問 じんもん ・証拠 しょうこ 調 しら べは、陪審 ばいしん の答申 とうしん 後 ご に行 おこな うこととされていた(大審院 だいしんいん 昭和 しょうわ 4年 ねん 10月 がつ 19日 にち 判決 はんけつ ・刑 けい 集 しゅう 8巻 かん 537頁 ぺーじ )。
^ なお、このうちの1件 けん 、普天間 ふてんま 事件 じけん に陪審 ばいしん 員 いん として参加 さんか した伊佐 いさ 千尋 ちひろ は、この裁判 さいばん を題材 だいざい としてノンフィクション『逆転 ぎゃくてん 』を執筆 しっぴつ した。そこでの実名 じつめい の使用 しよう がプライバシー権 けん の侵害 しんがい となるか否 ひ かが後 のち に訴訟 そしょう で争 あらそ われ(ノンフィクション「逆転 ぎゃくてん 」事件 じけん )、その最高裁 さいこうさい 判決 はんけつ はプライバシーに関 かん するリーディングケースとなった。
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