腰こしパン

腰こしパン（こしパン）とは、ズボン・パンツを通常つうじょうより低ひくい位置いちで穿はくファッション。近年きんねんは腰こし穿はきまたは腰こし履はきとよばれる。若年じゃくねん男性だんせいが主おもな流行りゅうこう域いきで、学校がっこうの制服せいふくまたはジーンズ、ジャージなどで行おこなわれることが多おおい。

由来ゆらい・歴史れきし[編集へんしゅう]

英語えいごでは“dower”（down 下さがったという意味いみ）と呼よばれ、元々もともとは、ニュースクールのヒップホップ系けいファッションだった。その始はじまりには諸説しょせつあるが、囚人しゅうじん服ふくの風采ふうさいに由来ゆらいするとの説せつが有力ゆうりょく視しされている。囚人しゅうじん服ふくは、たいてい大おおきめの物ものが用意よういされており、自殺じさつ防止ぼうしや武器ぶきとして使用しようを防ふせぐ理由りゆうで、ベルトの着用ちゃくようが許ゆるされていなかったため、自然しぜんとずり落おちてきた。ヒップホップは抑圧よくあつされたアフリカ系けいやヒスパニック系けいの文化ぶんかであり、社会しゃかいへの反骨はんこつと受刑じゅけい者しゃへの羨望せんぼう、あるいは実体験じつたいけんから、囚人しゅうじんのスタイルを模もして、腰こしパンファッションが生うまれたと考かんがえられる。実際じっさいは貧困ひんこんから成長せいちょう後ごも着用ちゃくようできる大おおきなサイズの服ふくを買かい与あたえたところから定着ていちゃくした^[1]。

日本にっぽんにおいては、一部いちぶのヒップホップ系けいファッション、サーファーやスケーター^{[要よう曖昧あいまいさ回避かいひ]}の間あいだで1990年代ねんだい前半ぜんはんからされていたが、1990年代ねんだい後半こうはんに男子だんし中ちゅう高校生こうこうせいの間あいだで制服せいふくの着きこなしとして大だい流行りゅうこうした。関東かんとうから全国ぜんこくへ広ひろがり、茶髪ちゃぱつ・ピアス・ミニスカート・ルーズソックスと並ならび、校則こうそく違反いはんのファッションとして学校がっこうを悩なやませる社会しゃかい問題もんだいとなった。2000年ねん前後ぜんごの流行りゅうこうには、ドラゴンアッシュなどのJポップのミュージシャンの模倣もほうがあった^[2]。

また、近年きんねんでは女性じょせいにおいても学校がっこう指定していジャージ、スウェットなどで腰こしパンしている者ものも見受みうけられるようになり、男性だんせいに限かぎったものではなくなってきている。

着きこなし[編集へんしゅう]

ゆったり感かんを出だすファッションになるため、上衣うわぎもオーバーサイズをあわせることが多おおい。

ズボンからはみ出だす下着したぎは下着したぎ然しかと見みえないトランクスやボクサーパンツが用もちいられ、間違まちがっても白しろブリーフは着用ちゃくようしないことが暗黙あんもくの了解りょうかいとされている。下着したぎは他人たにんから見みえることを前提ぜんていに着用ちゃくようし、上着うわぎ、ズボンと一体いったいのファッションとして意識いしきされる^[1]一方いっぽうで、シャツを出だしたり、ダブつかせたりして下着したぎやベルト位置いちを見みせないファッションもある。下着したぎと同おなじく、ベルトも見みえやすくなるために意識いしきされる。

普通ふつうより下さげて穿はくため、ズボンの裾すそはそのままにして穿はくとひきずることになり、路面ろめんで磨耗まもうする。最近さいきんは脛ずねまで捲めくり上あげて引ひきずらないようにする場合ばあいも多おおい。裾すそが地面じめんに着つかないほど足たりないということは、まれである。

ズボンのシルエットは、初期しょきでは太ふとくルーズのものを穿はく傾向けいこうがあったが、最近さいきんでは細身ほそみも多おおく用もちいられる。

後うしろのポケットが大おおきいズボンは、普通ふつうにはいても下さがって見みえるように作つくられており、日本にっぽんでは、グッド・シャーロット、BUSTED、Mcfly、RIZEなどパンク系けいのバンドやそれらのファンも好このむ。また、スノーボードのウェアの着き方かたにも見みられる。

制服せいふく[編集へんしゅう]

腰こしパンは制服せいふくでの着きこなしにおいて、一般いっぱん的てきにみられる。学生がくせい服ふく・ブレザーどちらにおいてもなされている。腰こしパンの仕方しかたとしてはベルトをしない、またはベルト通どおし一いち杯はいの、幅広はばひろのベルトで尻しりに締しめたりする。

学生がくせいの腰こしパンは日本にっぽんのみならずアメリカにもみられ^[3]、モラトリアムファッションとされる。

批判ひはん[編集へんしゅう]

腰こしパンはルーズな印象いんしょうを与あたえ、茶髪ちゃぱつなどと並ならんで服装ふくそうの乱みだれとして問題もんだい視しする声こえもある。下着したぎが見みえ、汚きたないとされる。特とくに、制服せいふくの場合ばあいは規範きはん意識いしきを巡めぐっても批判ひはんされる場合ばあいもある^[4]。

条例じょうれいなどによる取とり締しまり[編集へんしゅう]

アメリカでは多おおくの学区がっくにおいて腰こしパンは禁止きんしされている。2007年ねん6月がつ、ルイジアナ州しゅうデルキャンブレでは下着したぎを見みせるようなズボンの着用ちゃくようが条例じょうれいで禁止きんしされた。アメリカ南部なんぶは右寄みぎよりな地域ちいきで、差別さべつ等とうもまだまだ残のこっていることも関係かんけいしていると思おもわれる。また、上半身じょうはんしん裸はだかで外出がいしゅつする者ものが多おおくいるためでもある^[5]。一方いっぽうで、バージニア州しゅう議会ぎかいは2005年ねん2月がつに腰こしパンを違法いほうとする条例じょうれいを制定せいていしようとしたが失敗しっぱいし、他た地域ちいきでは腰こしパン禁止きんし条例じょうれいは憲法けんぽう違反いはんとの判決はんけつもあり^[6]、物議ぶつぎをかもしている。

2009年ねん以前いぜんに、フロリダ州しゅうリビエラ・ビーチやミシガン州しゅうフリント、イリノイ州しゅうリンウッドの地方ちほう議会ぎかいでは、ずり下さげズボン禁止きんし条例じょうれいが可決かけつされている。特とくに、リビエラ・ビーチでは、2008年ねん 7月がつ15日にちに条例じょうれいによる規制きせいが施行しこうされて以来いらい、若者わかもの男性だんせい20人にんが起訴きそされた。フロリダ州しゅう裁判所さいばんしょは、裁判さいばんの通つうじて2009年ねん 4月がつ22日にち、禁止きんし条例じょうれいはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう違反いはんであるとの判断はんだんを下くだした。なお、裁判さいばんの過程かていで弁護べんご側がわは、デビッド・ベッカム、ヘンリー王子おうじらの写真しゃしんを提示ていじし、下着したぎを見みせるスタイルはいまやファッションの主流しゅりゅうとなっていると主張しゅちょうした^[7]。
2011年ねん 6月17日にち、腰こしパン姿すがたのニュー・メキシコ大学だいがくの学生がくせいがサンフランシスコ国際こくさい空港くうこうでUSエアウェイズ機きに搭乗とうじょうしようとしたところ、腰こしパンの是非ぜひについて航空こうくう会社かいしゃ係員かかりいんと口論こうろんになり、機長きちょうからの要請ようせいにより警察けいさつが学生がくせいを不法ふほう侵入しんにゅう容疑ようぎで身柄みがらを拘束こうそくした^[8]。
2012年ねん 4月がつ12日にち、アラバマ州しゅうの裁判所さいばんしょで、盗品とうひん譲受じょうじゅにより起訴きそされていた男おとこが腰こしパンで出廷しゅってい。法廷ほうてい侮辱ぶじょく罪ざいによりその場ばで、別べつに禁固きんこ3日にちがい渡いわたされた^[9]。