ゾル人(ゾルじん)は、日本のテレビアニメ・シリーズ (作品)である『超時空騎団サザンクロス』(全23話) に登場する架空の異星人。 本作品を含む他の2作品 超時空要塞マクロス・ 機甲創世記モスピーダ を加えた上で、アメリカ合衆国や南米諸国連合 ( UNASUR ) , さらにはフランスで再編集・翻案されたシリーズ作品として放送された『ロボテック・シリーズ』では、プロトカルチャー (マクロスシリーズ) の末裔であり、“ ロボテック・マスターズ ”こと「ティロル人」 (Tirolian) として、新たに定義を付け加えられて登場する。
超時空騎団サザンクロス における設定[編集]
惑星グロリエの先住種族である。太陽系外に脱出した地球人類が、開発拠点惑星「リベルテ」に次いで惑星グロリエへ殖民を開始して約20年ほど経過した後、西暦2120年[注 1]その衛星軌道上に突如大艦隊を組んで現れる。
サザンクロス軍側は、開拓惑星を侵略しに来た異星人 [注 2]と推定される存在に対して、ロルフ・エマーソン参謀総長(副司令)以下が慎重な対応を決めた直後に、前線指揮官 マウリ・セキーシマ大尉 [注 3]の勇み足による先制攻撃をきっかけとして、戦端が開かれる。
種族の概要[編集]
人種的特徴としては、一見地球人類と見間違うほど類似した外見だが、長身痩躯で紫の虹彩を持ち、銀色或いは緑色等の多様な分光スペクトル分類を持つ髪色、そして白い肌を持つなど北方人種の特色を多く残している。
生命の花という植物のエネルギーを利用した文明を築いていたが、地球人が殖民をするよりも遥か以前、おおよそ約500年前に、厳しい惑星環境に加えて内紛による更なる環境の悪化から、当時の彼らの母星であった、惑星「グロリエ」[注 4]を出て、近隣惑星「ファイ」(Phai / φ)に移住した。
しかし、移住後の惑星ファイのスペクトル分類の差異による恒星光の波長や惑星環境の相違のため、「生命の花」の開花をもたらすことができず、この花の原種(プロト・ゾル)を定期的に入手して、バイオマス・エネルギーを活性化させる必要があり、惑星グロリエにその一部が戻ってきた。
当時放送された映像フィルム本編では放映打ち切りの事情もあって、その起源が明かされることは遂に無かったが、当時のアニメ雑誌などで発表された設定では、実は太古の昔において、時空の歪みで惑星グロリエに飛ばされた地球人類の一部が、独自の発達を遂げた突然変異したもの(ミュータント)だとされた。[1][2]
文化・社会制度[編集]
彼らの社会は生命の花の原種である「プロトゾル」 [注 5]の喪失によりバイオマス・エネルギーの再生産が不可能となり、備蓄のみに頼る状況のため、統制を維持する方法の1つとして 前記「生命の花の生理作用」を用いて個人の感情や意思を制限し、階級制度を導入している。
さらに優れたクローン作成技術を応用して、全ての市民が 一卵性三生児であり、少なくとも社会生活での重要な意思決定の場面では、三人が常に一つの個人として各々「情報・判断・行動」を分担して社会行動をする。[注 6]また年長者の命令は絶対であるとの教えから長老と呼ばれる高齢指導者の支配力が強いという特徴がある。
本編中で言及された指導者[3]を除く階級または職制区分は以下のとおり。
官僚又は軍人[編集]
身分呼称
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原語の意味
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概要
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クリエール[4]
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貴族である戦士 (仏: Courriere) |
原意はラテン語で 規範、基準を示す語、また フランス語では「宮廷差し回しの女性使者」を意味し、暗喩的に官僚の意味でも用いられる語である。「ランディング・フリゲート」や「バイオロイド」などで前線に出ることもあるが、 “飽くまでも指揮官としての出陣” であり、日本での武士や職業軍人に近く、後述のアンフェタードを中心とする民兵とは区別される。 本編で名前が出る代表的な人物として ファイド/ファイダ/ファイズ (Faido, Faida, Faizu) 。 [注 7] がある。 特に三人兄弟のうち、ファイド(カルノ)は ムジカら三人姉妹の共同連帯者(許婚者との予備同居生活を想起させる最小単位の社会共同体)になることを上層部より決定され、この決定を拒否するムジカを異端視した。 さらに、その隠された嫉妬の感情の発現に自身でも気づかずに、その敵意をサザンクロス軍や彼らに従って投降し難民になろうとするゾル同胞の民間人の射殺などの形であらわにした。
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クレアチュール
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技術者 (仏: Creature) |
ヴィーダ/ヴィーラ/ヴィーア (Vieda, Viera, Vieea) ほか。 ヴィーアのみ女性体で、残り2人は男性体である。
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状況監察官
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設定資料上は「情報監視官」[4] |
ミゲア/ミゲレ/ミゲル ( Miguea, Miguere , Miguel) ほか。 ミゲアのみ女性体で、残り2人は男性体である。
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身分呼称
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原語の意味
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概要
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パトリキ バッキ人 〔びと〕
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羅: Patricii の訛り , Bakki . |
貴族かつ文民の市民を指す彼らの身分階級の呼称の一つ。 ムジカ・ノヴァ は バッキ人のシャンタール(音楽家の意味。 ラテン語 の "Chantal" 、「歌い手」から)と呼ばれた。(第20話)
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アンフェタード
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仏: Unfettered |
3人で一個人を形成する彼らの社会で、兄弟姉妹を亡くしたもの、あるいは指導者たちの規範に反した者が前記の兄弟姉妹の中に出たために、三位一体を解かれたものの呼称。 原意は ラテン語 および フランス語で 「足枷を取り去られた, 拘束を受けない, 束縛されない, 自由な」を意味する語。 だが、三位一体を解かれたその時点から一般市民の生活からは隔離され、「不完全者の収容施設」に送られ、そこで一生を送ることになる。 皮肉にもゾル人の資源不足が深刻化した時点で鎮静薬を注射され、戦闘訓練もろくに行われないまま、地上掃討作戦の下級兵士 (民兵) として投入されたことで。末期のゾル人の追い込まれた状況をよく表現していた。(第22話)
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ロボテックシリーズにおける設定[編集]
ロボテックシリーズの世界においては、ゾル人(The Zor)は、プロトカルチャーの末裔であり、ゼントラーディ人に対する主人と、超科学技術「OTM」の管理者を意味する、別名「ロボテック・マスターズ」(Robotech Masters)或いは 「ティロリアン」(Tirolian)と呼ばれ、「超時空要塞マクロス」本編で未登場の監察軍に相当する。[5]
こちらの翻案シリーズに於いても同様に、生命の花に依存した文明を築いており、「ヴァリヴェール」[6] 恒星系の第4惑星であり、豊富な鉱物資源を有する巨大な 環 (天体) を持ち、青緑から紫の帯域幅の分光スペクトルを持つ木星規模のガス惑星「ファントマ」[7] から遠く離れている第3の月、衛星 ティロル (架空の衛星) [8] を 現在の 母星としている。
日本版でいう定義のプロトカルチャーの末裔であり、生命の花を利用したエネルギー(同様にプロトカルチャー (資源)[9]と呼ばれる)を利用したゼントラーディ人を製造し、このエネルギーの入手先がインビッド母星であったことから長きにわたって彼らと敵対関係にある。
人物描写の追加[編集]
アンフェタード ( 仏: Unfettered ) に関して、ロボテックシリーズの第二世代編である ロボテック:マスターズ[10](別名「ロボテック:サザンクロス」[11])では、登場するゾル人の描写に大幅な加筆がなされている。以下に一例を挙げる。
氏名
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声優
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概要
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ラテル (Latelle)
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平松 広和 |
第55話「御伽の国のダーナ」 ("Dana In Wonderland") に登場。[12]
一卵性三生児の兄弟たちがゾル民族特有の道徳基準に反する考えを抱いてしまった為に人権を剥奪され、兄弟たちは負傷兵士のクローニング補修の臓器提供者にされ、一方で、たった独り残されたラテルは、三位一体が崩れた「不完全者個体」として収容施設で単純作業をこなす日々を送っていた。 ダーナ少尉はゾル艦内に侵入し、ゼントラーディと星間混血児の才能であるゼントラーディ語に堪能 (プロトカルチャーの末裔であるゾル人の言語と “ ある程度の” 互換性がある [注 8])な才能を活かして不完全者収容施設の民間人に接触した。 薄々彼女がサザンクロス軍の兵士であることに気付きながらも、会話をする内に好意を持ち、母艦内のダーナの部下たちの居場所を教える。最終的にダーナの脱出を案内する途中、ゾル兵士に見つかり、新生児養育施設の赤子とダーナを共に庇う形でゾルの兵士に裏切り者として射殺される。
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ジェシェア、ジェシカ、ジェシノ [13] ( Jesshea,Jessica and Jessinno)
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小金澤篤子/木藤聡子 ジェーン・ローズ (Jane Roes) |
第55話「御伽の国のダーナ」("Dana In Wonderland")に登場した「女医」。 [12]シーン・フィリップ二等兵を「診察」した上で、感情の表出形態のゾル人基準からの逸脱度合いを判断し、敵兵と見破りゾル官憲に通報した。
なお、架空の文書からの引用を用いる作風が有名な『ジャック・マッキニー』両名(Jack McKinney 、ブライアン・デイリーBrian Daley とジェームズ・ルセーノ James Luceno の共同執筆ペンネーム)の小説版に於いては、三人姉妹中、シーン二等兵を「診察」したオレンジ色の髪の毛をした 1名 のみ「スプリーラ」【 Spreella 】とファーストネームの言及があるが、他の二人の姉妹については言及がない。 [14]
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ゾア・プライム (Zor Prime)
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ポール・セント・ピーター (Paul St. Peter) |
翻案元原作に登場する サイフリート・ヴァイス に相当する人物。 回収された敵バイオロイドに搭乗していたパイロット。サザンクロス軍の軍事警察内の諜報部のデータから 惑星グロリエ の 第2衛星アルス基地の兵士で、基地が襲撃された際に敵に捕らえられ洗脳されていた模様であると判断され、ロルフ参謀長官の指示下、元・友軍兵士という事で、監視の意味も含めてダーナ小隊の預かりとなった。
- ロボテック版では、プロトカルチャーの生き残りとして、かつてのゾル人の著名な科学者「ゾア・デリルダ」[15] の情報を探るために製造された特殊な製法のクローン「ゾア プライム」[16] であり、かつ捕らわれた地球人(グロリエ人)に偽装して送り込まれたスパイという複雑な設定を持った登場人物として登場する。[17]
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氏名
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概要
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ゾア・デリルダ ( Zor Derelda )
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オリジナルの ゾア・デリルダ は、超古代星間文明人 プロトカルチャーの末裔である衛星・ティロル (Tirol) の主要国家 テイレシア (Tiresia ,古希: Τειρεσίας, Teiresiās, ラテン語: Tiresias)の科学者であった。 ゾア・デリルダ はインビッド (Invid)の原初の故郷である「ツプツム」(Tzuptum)恒星系の惑星「オプテラ」(Optera)において、49万7,500 年前(年代根拠)に生命の花からプロトカルチャー(資源)という強力なエネルギーを抽出する技法を発見し、これを利用して巨人族ゼントラーディ人 [注 9] を生み出した創造主として、ゾル人たちの歴史の中に永く伝えられていた。 ゾア・デリルダの発明したプロトカルチャーの濫用やゼントラーディを利用したロボテックマスターズの帝国主義を見兼ねたゾアが支配達に対し反逆。 ゾア・デリルダは唯一のプロトカルチャー・マトリクスを奪い、「シアン・マクロス級・超時空要塞」のネームシップである一番艦「マクロス」[18](後の 「SDF-1 マクロス」) とゾア自身を警護するゼントラーディ兵による親衛隊 [注 10] を引き連れて逃亡する。 結果としてこのプロトカルチャー・マトリクスの損失により、支配達は「生命の花」から「プロトカルチャー(資源)」を抽出する技術を失い、第二世代 (超時空騎団サザンクロス)で見られる資源不足の原因となる。 逃亡中のゾア率いる艦隊は、ハイドニットの母星である人工天体「ヘイデン4」 ( Hayden IV ) を訪れた際に、人工惑星を制御する人工知能「アウェーナス」(The Awareness 、「意識」の意味)と接触する。 また、逃亡中ゾアの手により多くの惑星に生命の花の種が蒔かれ、多くの惑星で生命の花の原種とは違う派生種が咲くようになる。 その後、ゾアの率いる親衛隊艦隊は、銀河の果ての惑星にてゾア自身を目的としたインビッドの待ち伏せ攻撃(奇襲)を受ける。 ゼントラーディ辺境艦隊のゾア親衛隊「ブリタイ・クリダニク」は、ゾア・デリルダを庇い健闘するも、インビッドのバトルウォーマーは「ショック・トルーパー」(原作における大型砲搭載・強化型「グラブ」に相当)の加粒子砲により右目を負傷。 結果としてこの「ショック・トルーパー」の加粒子砲攻撃の熱傷によりゾア・デリルダは死去する。 だがゾア・デリルダは、ある目的を以て自らの死亡前に 唯一のプロトカルチャー・マトリクスを積んだ「超時空要塞」を事前に設定された恒星系の第三惑星の座標へ向け脱出させていた。 「ゾア・デリルダ」は、自らの身体と意識そのものをマトリックス活性化の 暗号鍵 として 支配達からの濫用を防ぐ為に封印した。 この難解な封印鍵により、支配達は生命の花の秘密を知るために「ゾア・デリルダ」本人の意識と記憶を発掘(サルベージ)レストアする必要を感じ、これを探るために、特別な手法で製造されたクローンを作成する。 これが第2世代の物語 マスターズ 本編に登場する「ゾア・プライム」(Zor Prime)である。
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英文字読みについて[編集]
英文字綴り " Zor " の正しい日本語発音は「ゾア」。
ニール・R・ジョーンズによるジェイムスン教授シリーズに登場する、ゾル人(Zoromes)と、英文字綴りは異なるものの、片仮名表記が一致し、設定の長寿或いは不死に関して共通性もみられるが、参照の有無については不明。
- ^ 今井科学発行の販売促進用小冊子「超時空情報 Vol.8」の記載では、「西暦2120年、植民惑星「グロリエ」 (英: The planet Grorie) を巡り・・・」と記載。また、秋田書店出版の 月刊マイアニメ 4月号 第52頁 新番組情報 超時空シリーズ 第3彈!「超時空騎団サザンクロス 制作発表会」でも西暦2120年と補足言及。
- ^ 後にバイオロイドの操縦士の正体が「バイオヒューマン」と名付けられたサイボーグであると判明し、軍上層部は敵の正体を人類の宇宙進出時に退廃し脱落した宇宙海賊と誤判断。
- ^ ロボテック版では マウリ・コモド (Maury Komodo)と改名されている。
- ^ 飽くまでも入植してきた地球からの宇宙移民者たちからの名称であり、ゾル人自らがこの惑星に、どのような名称を与えていたのかは、少なくとも本編フィルム上では言及されていない。
- ^ ロボテックシリーズにおいては プロトカルチャー(資源) の喪失。
- ^ 近代映画社 月刊「ジ・アニメ」1984年11月号 第64頁]
長谷川 康雄:「三位一体 とはいっても日常生活では ひとりづつ なんです。何か大きな問題がおきたときに3人で相談−テレパシーによって、情報、判断、行動という形で解決するんです。いわばゾルは一卵性の三つ子です。」(後略)
- ^ ロボテック版では カルノ/カルナ/カルア (Karno, Karna, Karua) と改名されている。
- ^ しかし
ラテル : 僕は君が・・・好きになってしまったのかな・・・
ダーナ : あら、この船の仲間たちのところに留まりたいの? そういうことならば、私たちの処へは連れてはいけないわ。
Latelle: I may have come to like you.
Dana: Oh my, do you want to stay with your people on board this ship? If you want so, I can'not take you to us.
という会話もなされており、必ずしも言葉が通じていないか、あるいは双方の言語で同じ単語の語彙(ごい)が、違う意味に変化している可能性がある。
- ^ それまでガス惑星 「ファントマ」の豊富な資源は衛星ティロルの10倍以上の重力によって手をつけることは不可能と考えられていたが、この新たな技術を利用し創造された巨人族「ゼントラーディ」を採掘に利用することによって、これまで希土類元素につき、入手が極めて困難だった、 フォールド航法 に不可欠なモノポール鉱等の資源が入手可能になる。 超時空ゼミナール暗黒編 Vol.1
- ^ 「ゾアの弟子達」 (The Disciples of Zor) と呼ばれる。
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