真如しんにょ

仏教ぶっきょう用語ようご 真如しんにょ
パーリ語ご	tathatā
サンスクリット語ご	tathatā
チベット語ご	དེ་བཞིན་ཉིད
中国ちゅうごく語ご	真如しんにょ (拼音: Zhēnrú)
日本語にほんご	真如しんにょ (ロろーマ字まじ: しんにょ)
英語えいご	thusness, suchness

真如しんにょ（しんにょ、巴ともえ, 梵: tathatā、蔵ぞう: de bzhin nyid）は、原義げんぎでは「あるがままであること」「そのような状態じょうたい」という意味いみであり、物事ものごとの真理しんり・実際じっさいのあり方かた (the way things are in truth or actuality)、無名むめいで無む個性こせいな現実げんじつ (nameless and characterless reality)のことである。

『金きむ剛つよし般若はんにゃ経けい』のサンスクリット本ほんに出でて、「真如しんにょ性せい」と訳やくされている。「真しん」とは真実しんじつ、「如」とは如常の意味いみである。諸法しょほうの体からだ性せい虚妄きょもうを離はなれて真実しんじつであるから真しんといい、常住じょうじゅうであり不変ふへん不ふ改あらためであるから如と言いうとされる。

真如しんにょはまた、法ほう、自性じしょう清浄せいじょう心しん、仏性ぶっしょう、法ほう身み、如来にょらい蔵ぞう、実相じっそう、法界ほうかい、法ほう性せい、円まどか成しげる実み性せいと同体どうたい異名いみょうであるとされる。

釈迦しゃか

釈迦しゃかは自身じしんのことをTathāgata（如来にょらい）と呼よんでおり、これは「こうして来きた人ひと (One who has thus come)」「こうして去さって行いった人ひと (One who has thus gone)」を意味いみし、また「そのような境地きょうちに達たっした者もの」とも解釈かいしゃくできる。

大乗だいじょう仏教ぶっきょう

一いち真如しんにょ

『大乗だいじょう起おこり信しん論ろん』に、「真生まさお未み分ぶんの一心いっしん」とあり、一真いっしん法界ほうかいには差別さべつがないことを言いう。

二に真如しんにょ

随ずい縁えん真如しんにょ・不変ふへん真如しんにょ

無明むみょうの縁えんにしたがって九きゅう界かいの妄法を起おこすのを随したがえ縁えん真如しんにょといい、随ずい縁えんして妄法となるがその真性しんせいは不変ふへんであるのを不変ふへん真如しんにょという。よって、随ずい縁えん真如しんにょであるから真如しんにょ即そく萬まん法ほうであり、不変ふへん真如しんにょであるから萬まん法ほう即そく真如しんにょである。これは華厳けごん教きょうの終おわり教きょう・天台てんだい教きょうの別べつ教きょう以上いじょうでいうことである。

空そら真如しんにょ・不空ふくう真如しんにょ

真如しんにょの究竟くっきょうして染しみ法ほうを離はなれることが明鏡めいきょうのようであるのを空そら真如しんにょといい、真如しんにょは一切いっさいの清浄せいじょう法ほうを備そなえているのが明鏡めいきょうにすべての様相ようそうを写うつすようなことを不ふ空そら真如しんにょという。これは『釈しゃく摩ま訶衍論ろん』の説せつである。

清浄せいじょう真如しんにょ・染しみ浄きよし真如しんにょ

これは随ずい縁えん真如しんにょ・不変ふへん真如しんにょの異名いみょうである。

有ゆう垢あか真如しんにょ・無垢むく真如しんにょ

衆生しゅじょうが具そなえている真如しんにょを有ゆう垢あか真如しんにょといい、諸仏しょぶつに顕あらわされているものを無垢むく真如しんにょという。『摩ま訶止観かん』に説とかれている。これは、『大乗だいじょう起おこり信しん論ろん』には在ざい纏まとい真如しんにょ・出で纏まとい真如しんにょと呼よばれている。

生なま空そら真如しんにょ・法ほう空そら真如しんにょ

人我じんがの空そらを顕あらわす真如しんにょを生なま空そら真如しんにょ、法ほう我がの空そらを顕あらわす真如しんにょを法ほう空そら真如しんにょといい、『唯識ゆいしき論ろん』に説とかれる。

依よ言げん真如しんにょ・離はなれ言げん真如しんにょ

真如しんにょの体からだは本来ほんらい言葉ことばにはできず、心しんに思おもうこともできないので、これを離はなれ言げん真如しんにょという。言葉ことばを仮設かせつすることでその相そうを表あらわすのを依よ言げん真如しんにょという。これは『大乗だいじょう起おこり信しん論ろん』の説せつ。

これを『華厳けごん大だい疏鈔』では、相あい待まち真如しんにょ、絶ぜっ待まち真如しんにょと呼よんでいる。

三さん真如しんにょ

1. 無む相あい真如しんにょ - 諸法しょほうの体からだに遍あまね計けい所ところ執とがないことを言いう。
2. 無む生なま真如しんにょ - 諸法しょほうが因縁いんねんによって生しょうじるから、実生みしょうはないことをいう。
3. 無性むしょう真如しんにょ - 諸法しょほうの真実しんじつの体からだは言葉ことばも想念そうねんもないから、妄情所しょ執との実み性せいがないのを言いう。

この三さん真如しんにょは『唯識ゆいしき論ろん』に説とかれる三さん無性むしょうによっている。

1. 善ぜん法ほう真如しんにょ - 真如しんにょが随ずい縁えんして善ぜん法ほうとなることを言いう。
2. 不善ふぜん法ほう真如しんにょ - 真如しんにょが縁えんにしたがって不善ふぜん法ほうになることを言いう。
3. 無む記法きほう真如しんにょ - 同おなじく無む記法きほうとなることを言いう。

『雑ざつ集しゅう論ろん』にある。

七なな真如しんにょ

1. 流転るてん真如しんにょ - 有為ゆうい法ほうが流転るてん（るてん）する実み性せいを言いう。
2. 実相じっそう真如しんにょ - 人ひと法ほう二に無我むがに顕あらわれる実み性せいを言いう。
3. 唯識ゆいしき真如しんにょ - 染しみ浄きよしの法ほうの唯識ゆいしきの実み性せいを言いう。
4. 安立あだち真如しんにょ - 苦く諦たいの実み性せいを言いう。
5. 邪よこしま行ぎょう真如しんにょ - 集しゅう諦たいの実み性せいを言いう。
6. 清浄せいじょう真如しんにょ - 滅めつ諦たいの実み性せいを言いう。
7. 正行まさゆき真如しんにょ - 道みち諦たいの実み性せいを言いう。

流転るてん・安立あだち・邪よこしま行ぎょうの三さん真如しんにょは仏ほとけにはいわない。実相じっそう・唯識ゆいしき・清浄せいじょうの三さん真如しんにょは根本ねもと智さとしの境さかいであり、他たの四よんは後こう得とく智さとしの境さかいである。

十じゅう真如しんにょ

宇宙うちゅう・万有ばんゆうに遍在へんざいする本来ほんらいたる真如しんにょは、固もとより絶対ぜったいであって分わかつべきではないが、その徳とく相しょうを顕あらわわし、またはこれを證しょう（証あかし）明あかりする歴程れきていに区別くべつがあることより分類ぶんるいすることがある。今いまは菩薩ぼさつの十じゅう地ちに真如しんにょを分ぶん證しょうするが、その勝徳かつのりにより見みて假立かりだちするものをいう。

1. 遍あまね行ぎょう真如しんにょ - 菩薩ぼさつの初はつ地ちに、人ひと執と・法ほう執と（主観しゅかんの我が、客観きゃっかんの物心ぶっしん現象げんしょうに対たいする執と見み）を断だんじて悟さとる、現象げんしょうの執とわれ（異い生せい性せい障さわ）を断滅だんめつして悟さとる真如しんにょ。
2. 最さい勝かち真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい二に地ちに、邪よこしま行ぎょう障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
3. 勝かち流りゅう真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい三さん地ちに、闇やみ鈍どん障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
4. 無む摂と受真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい四よん地ちに、微細びさい煩悩ぼんのう（現行げんこう）障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
5. 類るい無む別べつ真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい五ご地ちに、下乗げじょう（般）涅槃ねはん障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
6. 無む染しみ浄きよし真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい六ろく地ちに、麁相現行げんこう障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
7. 法ほう無む別べつ真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい七なな地ちに、細ほそ相しょう現行げんこう障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
8. 不ふ増減ぞうげん真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい八はち地ちに、無む相しょう中ちゅう作さく加か行ゆき障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
9. 智さとし自在じざい所しょ依よ真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい九きゅう地ちに、利他りた中ちゅう不ふ欲よく行ぎょう障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。
10. 業ごう自在じざい等とう所しょ依よ真如しんにょ - 菩薩ぼさつの第だい十じゅう地ちに、諸法しょほう中ちゅうに未み得とく自在じざい障さわを断だんじて悟さとる真如しんにょ。

関連かんれん項目こうもく

• 菩提ぼだい
• 如来にょらい
• 無為むい法ほう