鷹司たかつかさ輔煕

凡例はんれい 鷹司たかつかさ 輔煕
時代じだい	江戸えど時代じだい末期まっき
生誕せいたん	文化ぶんか4年ねん11月7日にち（1807年ねん12月5日にち）
死没しぼつ	明治めいじ11年ねん（1878年ねん）7月がつ9日にち
改名かいめい	輔煕→ 随ずい楽らく（法名ほうみょう）
官位かんい	従したがえ一いち位い、関白かんぱく、右大臣うだいじん
主君しゅくん	仁孝天皇にんこうてんのう→孝明天皇こうめいてんのう→明治天皇めいじてんのう
氏族しぞく	鷹司たかつかさ家か
父母ちちはは	父ちち：鷹司たかつかさ政まさし通どおり、母はは：家いえ女房にょうぼう 嫡母ちゃくぼ：徳川とくがわ清子きよこ（徳川とくがわ治紀はるとしの娘むすめ）
兄弟きょうだい	鷹司たかつかさ輔煕、華園はなぞの摂と信しん、九条くじょう幸みゆき経けい、渋谷しぶや教きょう応おう、介かい子こ、興きょう子こ、麗子れいこ、標しめぎ子こ、積子せきこ、美津子みつこ
妻つま	一条いちじょう崇子たかこ（一条いちじょう忠良ただよしの娘むすめ）
子こ	徳大寺とくだいじ公純きんいと、輔政、茂子しげこ、故こ子こ、明子あきこ、治子はるこ、菊亭きくてい脩おさむ季き 養子ようし：煕ひろし通どおり

鷹司たかつかさ 輔煕（たかつかさ すけひろ、名なの表記ひょうきは輔凞、輔熈とも）は、江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ）の公卿くぎょう。孝明天皇こうめいてんのう時代じだいの関白かんぱく、藤原ふじわら氏し摂関せっかん家か鷹司たかつかさ家かの当主とうしゅ。東山ひがしやま天皇てんのうの男系だんけい五ご世せい子孫しそん（皇すめらぎ別べつ摂家せっけ）である。

生涯しょうがい

文化ぶんか4年ねん（1807年ねん）、関白かんぱく鷹司たかつかさ政まさし通どおりの子ことして誕生たんじょう。母ははは家いえ女房にょうぼう。嫡母ちゃくぼは水戸みと藩はん主あるじ徳川とくがわ治紀はるとしの四よん女じょ・清子きよこ。文化ぶんか14年ねん2月がつ（1817年ねん）元服げんぷく、叙位じょい。文政ぶんせい元年がんねん（1818年ねん）5月がつ従したがえ三さん位いとなり公卿くぎょうに列れっする。嘉よしみ永ひさし元年がんねん（1848年ねん）3月がつ内大臣ないだいじん、翌年よくねん正月しょうがつには従したがえ一いち位いに上のぼる。安政あんせい4年ねん（1857年ねん）2月がつ右大臣うだいじんに転てんずる。

落飾らくしょく、復帰ふっき、関白かんぱくへ

安政あんせい5年ねん（1858年ねん）、日米にちべい修好しゅうこう通商つうしょう条約じょうやく締結ていけつへの勅許ちょっきょをめぐり、朝廷ちょうていと幕府ばくふが対立たいりつするにおよび、水戸みと藩はんや福井ふくい藩はんの藩士はんしに説得せっとくされ、条約じょうやく勅許ちょっきょ不ふ同意どういおよび将軍しょうぐん継嗣けいし問題もんだいにおける一いち橋きょう派はの意見いけんに同意どういする。左大臣さだいじん近衛このえ忠ただし煕ひろしや内大臣ないだいじん三条さんじょう実万さねつむとともに献策けんさくして、水戸みと藩はんへ勅諚ちょくじょうを賜たまわるよう運動うんどうする（戊つちのえ午うまの密勅みっちょく）。このため、同年どうねん大老たいろうに就任しゅうにんした井伊いい直弼なおすけの安政あんせいの大獄たいごくの一環いっかんで、幕府ばくふの内うち請により翌よく安政あんせい6年ねん（1859年ねん）辞じ官かんを余儀よぎなくされた。やむを得えず同年どうねん5月がつ落飾らくしょくし随ずい楽らくの法名ほうみょうを称しょうする。

桜田さくらだ門外もんがいの変へんで井伊いい直弼なおすけ亡なき後あともしばらく謹慎きんしんを続つづけたが、文久ぶんきゅう2年ねん（1862年ねん）4月がつに宥免ゆうめんされ、謹慎きんしんを解とかれる。同どう5月がつ還俗げんぞくを命めいじられ、12月には新設しんせつの国事こくじ御用ごよう掛かけに補任ほにんされて朝政ちょうせいに復帰ふっきした。翌よく文久ぶんきゅう3年ねん（1863年ねん）には近衛このえ忠ただし煕ひろしの後のちを受うけて関白かんぱくに就任しゅうにんする。

幕末ばくまつ政局せいきょくと輔煕

関白かんぱく在任ざいにん中ちゅう、朝廷ちょうていは長州ちょうしゅう藩はんと結むすびついた尊王そんのう攘夷じょうい過激かげき派はの三条さんじょう実美みみ・姉あね小路こうじ公知こうちらが次第しだいに発言はつげん力りょくを拡大かくだいさせる。孝明天皇こうめいてんのうが将軍しょうぐん徳川とくがわ家茂いえもちを伴ともなっての賀茂かも神社じんじゃ・石清水八幡宮いわしみずはちまんぐう行幸ぎょうこうが行おこなわれ、文久ぶんきゅう3年ねん8月がつには大和やまと行幸ぎょうこう、譲位じょうい親おや征せいが企図きとされた。しかし、尊攘そんじょう派はの増長ぞうちょうに孝明天皇こうめいてんのうは不快ふかい感かんを表あらわし、公武こうぶ合体がったい派はの青あお蓮れん院いん宮みやらは、京都きょうと所司代しょしだい松平まつだいら容保かたもりおよび薩摩さつま藩はんと組くんで八はち月がつ十じゅう八はち日にちの政変せいへんを強行きょうこう。輔煕は関白かんぱくの座ざにありながらこの政局せいきょくに関与かんよできず、また三条さんじょう実美みみらの帰京ききょうを運動うんどうしたため、12月には島津しまつ久光ひさみつの建言けんげんにより関白かんぱくを免めんぜられた。

翌よく元治もとはる元年がんねん（1864年ねん）7月がつに起おきた禁門きんもんの変へんに際さいしては、鷹司たかつかさ邸ていは久坂くさか玄げん瑞みずや寺島てらしま忠三郎ちゅうざぶろうら長州ちょうしゅう藩はん兵へいが立たて篭こもり、会津あいづ・薩摩さつま・幕府ばくふ軍ぐんの攻撃こうげきを受うけて焼失しょうしつする。これにより鷹司たかつかさ家かは長州ちょうしゅう藩はんと気脈きみゃくを通つうじているとの嫌疑けんぎをかけられ、輔煕は参朝さんちょうを停止ていしされ謹慎きんしん処分しょぶんとなり、諸しょ大夫たいふの青木あおき吉よし順じゅんは京都きょうと町まち奉行ぶぎょうに逮捕たいほされた。

その後ご

慶応けいおう2年ねん（1866年ねん）暮くれの孝明天皇こうめいてんのう崩御ほうぎょ、および翌よく慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）睦むつみ仁じん親王しんのう（明治天皇めいじてんのう）の践祚せんそに伴ともなう大赦たいしゃにより赦免しゃめんされる。しかし同年どうねん12月がつの王政おうせい復古ふっこの大だい号令ごうれいで摂関せっかん職しょくが廃止はいし。再ふたたび参朝さんちょうを停止ていしさせられる。ただし、翌月よくげつ（慶応けいおう4年ねん（1868年ねん）正月しょうがつ）には解除かいじょされ、2月がつには新しん政府せいふの議定ぎていとなり、制度せいど事務じむ局きょく督とくに任にんぜられる。閏うるう4月がつには神祇官じんぎかん知事ちじとなり、9月には再ふたたび議定ぎてい。明治めいじ2年ねん（1869年ねん）には留守るす長官ちょうかん。12月、麝香じゃこう間あいだ祗候しこうを命めいぜられる。

明治めいじ5年ねん（1872年ねん）8月がつ、隠居いんきょ。子この輔政は早世そうせいしたため、九条くじょう尚しょう忠ただしの子こ煕ひろし通どおりを養子ようしとし、鷹司たかつかさ家かを継つがせた。同どう11年ねん（1878年ねん）7月がつに薨去こうきょ。享年きょうねん72。嵯峨野さがのの二尊院にそんいんに葬ほうむられた。

密みつ子こ

輔煕には政せい通どおりの子ことして秘匿ひとくされた長男ちょうなんと次男じなん（早世そうせい）がおり、その長男ちょうなんが総理そうり大臣だいじん西園寺さいおんじ公望きんもちの実父じっぷ徳大寺とくだいじ公純きんいとである。

輔煕の子こが養子ようしとして清華せいか家かの徳大寺とくだいじ家か、菊亭きくてい家かへと入はいり、更さらにそこから西園寺さいおんじ家かへと血筋ちすじが受うけ継つがれることになる。

家族かぞく・親族しんぞく

• 正室せいしつ：一条いちじょう崇子たかこ（一条いちじょう忠良ただよしの娘むすめ）
  • 十じゅう女じょ：治子はるこ - 三条さんじょう実美みみ室しつ
  • 九きゅう男なん：鷹司たかつかさ輔政
  • 十三男とみお：菊亭きくてい脩おさむ季き
• 家いえ女房にょうぼう
  • 三さん女じょ：茂子しげこ - 華園はなぞの澤さわ馨かおる室しつ
  • 六ろく女じょ：故こ子こ - 広こう如養女ようじょ
  • 八女やめ：明子あきこ - 伏見ふしみ宮みや貞さだ教きょう親王しんのう妃ひ
• 生母せいぼ不明ふめいの子女しじょ
  • 長男ちょうなん（密みつ子こ）：徳大寺とくだいじ公純きんいと - 徳大寺とくだいじ実みのる堅けん養子ようし。
• 養子ようし
  • 鷹司たかつかさ煕ひろし通どおり - 九条くじょう尚しょう忠ただしの子こ

ほか

系譜けいふ

東山ひがしやま天皇てんのう

中御門天皇なかみかどてんのう

桜さくら町まち天皇てんのう

桃園ももぞの天皇てんのう

後こう桃園ももぞの天皇てんのう

直ちょく仁じん親王しんのう

典てん仁じん親王しんのう

光ひかり格かく天皇てんのう

仁孝天皇にんこうてんのう

孝明天皇こうめいてんのう

明治天皇めいじてんのう

大正天皇たいしょうてんのう

昭和しょうわ天皇てんのう

太上天皇だじょうてんのう

今上きんじょう天皇てんのう

鷹司たかつかさ輔平

鷹司たかつかさ政まさし煕ひろし

鷹司たかつかさ政まさし通どおり

鷹司たかつかさ輔煕

• 係累けいるい縁者えんじゃが多数たすうに上のぼるため、東山ひがしやま天皇てんのう以降いこうの歴代れきだい天皇てんのうおよび関連かんれんする男系だんけい男子だんしの人物じんぶつを記載きさいした。そのため、母方ははかたの系図けいずは省略しょうりゃくしている。
• 高祖父こうそふの閑院宮みや直ただし仁じん親王しんのうは、東山ひがしやま天皇てんのうの第だい六ろく皇子おうじとして生うまれ、閑院宮家みやけを興おこした。
• 曾祖父そうそふの鷹司たかつかさ輔平は、閑院宮みや直ただし仁じん親王しんのうの第だい四よん王子おうじとして生うまれ、鷹司たかつかさ基はじめ輝てるの養子ようしとなり、鷹司たかつかさ家かを継承けいしょうした。

官かん歴れき

• 1817年ねん（文化ぶんか14年ねん） 元服げんぷく、叙位じょい
• 1818年ねん（文政ぶんせい元年がんねん）　従したがえ三さん位い
• 1848年ねん（嘉よしみ永なが元年がんねん）　内大臣ないだいじん
• 1849年ねん（嘉よしみ永なが2年ねん）　従したがえ一いち位い
• 1857年ねん（安政あんせい4年ねん）　右大臣うだいじん
• 1859年ねん（安政あんせい6年ねん） 辞職じしょく、落飾らくしょく
• 1862年ねん（文久ぶんきゅう2年ねん） 復帰ふっき、国事こくじ御用ごよう掛かけ
• 1863年ねん（文久ぶんきゅう3年ねん）　関白かんぱく
• 1864年ねん（元治もとはる元年がんねん） 辞職じしょく、謹慎きんしん

登場とうじょう作品さくひん

映画えいが

• 建国けんこく史し 尊王そんのう攘夷じょうい（1927年ねん、日活にっかつ） - 演えんじ：荒井あらい良平りょうへい

テレビドラマ

NHK大河たいがドラマ

• 徳川とくがわ慶喜よしのぶ（1998年ねん） - 演えんじ：北見きたみ敏之としゆき
• 新選しんせん組ぐみ!（2004年ねん） - 演えんじ：立川たちかわ三貴みき
• 篤あつし姫ひめ（2008年ねん） - 演えんじ：江良えら潤じゅん
• 龍馬りょうま伝でん（2010年ねん） - 演えんじ：井上いのうえ高志たかし
• 花はな燃もえゆ（2015年ねん） - 演えんじ：小須田こすだ康人やすひと

民放みんぽう

• 天皇てんのうの世紀せいき（1971年ねん、朝日放送あさひほうそう） - 演えんじ：高杉たかすぎ哲あきら平たいら

参考さんこう文献ぶんけん

• 『鷹司たかつかさ家か系譜けいふ』（宮内庁くないちょう書しょ陵りょう部ぶ所蔵しょぞう）
• 『公卿くぎょう人名じんめい大だい事典じてん』（野島のじま寿三郎じゅさぶろう編へん、日外にちがいアソシエーツ、1994年ねん、ISBN 4816912444）464ページ「鷹司たかつかさ輔煕」
• 『国史こくし大だい辞典じてん』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん）「鷹司たかつかさ輔煕」（執筆しっぴつ:武部たけべ敏夫としお）
• 『明治維新めいじいしん人名じんめい辞典じてん』（日本にっぽん歴史れきし学会がっかい編へん、吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1981年ねん）561ページ「鷹司たかつかさ輔凞」
• 八幡はちまん和郎かずお「今上きんじょう天皇てんのうに血統けっとうの近ちかい知しられざる『男系だんけい男子だんし』たち」『新潮しんちょう45』第だい36巻かん、第だい1号ごう、新潮社しんちょうしゃ、2017年ねん1月がつ18日にち。 

公職こうしょく
先代せんだい （新設しんせつ）	留守るす長官ちょうかん 1869年ねん	次代じだい 中御門なかみかど経けい之の
先代せんだい 白川しらかわ資し訓くん 神祇じんぎ事務じむ局きょく督とく	神祇官じんぎかん知事ちじ 1868年ねん	次代じだい 近衛このえ忠ただし房ぼう
先代せんだい （新設しんせつ）	制度せいど事務じむ局きょく督とく 1868年ねん	次代じだい （廃止はいし→）山内やまうち豊信とよしげ 議事ぎじ体裁ていさい取調とりしらべ総裁そうさい