Folding@home

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
Folding@home
作者さくしゃ ビジェイ・S・パンデ
開発元かいはつもと Pande Laboratory, ソニー, NVIDIA, ATI, Joseph Coffland, Cauldron Development[1]
初版しょはん 2000ねん10がつ1にち (23ねんまえ) (2000-10-01)
最新さいしんばん
7.6.21 / 2020ねん10がつ23にち (3ねんまえ) (2020-10-23)[2]
対応たいおうOS Microsoft Windows, macOS, Linux
プラットフォーム IA-32, x86-64, ARM
対応たいおう言語げんご 英語えいご
種別しゅべつ 分散ぶんさんコンピューティング
ライセンス プロプライエタリ [3]
公式こうしきサイト foldingathome.org
テンプレートを表示ひょうじ

Folding@home(フォールディング・アット・ホーム[4]、FAH、F@hともばれる)は、タンパク質たんぱくしつ動的どうてきなふるまいをシミュレートすることで、科学かがくしゃ様々さまざま疾患しっかんたいするあたらしい治療ちりょうほう開発かいはつできるよう支援しえんすることを目的もくてきとした分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトである。

これにはタンパク質たんぱくしつフォールディングタンパク質たんぱくしつうごきのプロセスがふくまれており、ボランティアのパソコンじょう実行じっこうされる分子ぶんし動力どうりょくがくシミュレーションに依存いぞんしている。Folding@homeは、2000ねん10がつ1にちビジェイ・パンデ教授きょうじゅ指揮しきのもと、スタンフォード大学だいがく発足ほっそくした。2019ねん以降いこうは、セントルイス・ワシントン大学だいがく医学部いがくぶ拠点きょてんき、パンデ教授きょうじゅもとおしであるグレッグ・ボーマン博士はかせ指揮しきしている。

このプロジェクトは、分散ぶんさんコンピューティングや科学かがく研究けんきゅうおこなうために、グラフィックス処理しょり装置そうち(GPU)、中央ちゅうおう処理しょり装置そうち(CPU)、Raspberry PiのようなARMプロセッサを利用りようする。このプロジェクトでは、従来じゅうらいのコンピューティング手法しゅほうからパラダイムシフトした統計とうけいてきシミュレーション手法しゅほう採用さいようしている。クライアント・サーバモデルのネットワーク・アーキテクチャの一環いっかんとして、ボランティアのマシンはそれぞれシミュレーションの一部いちぶ(ワークユニット、WU)をり、計算けいさんにより完成かんせいさせ、プロジェクトのデータベースサーバかえし、そこでユニットが全体ぜんたいのシミュレーションにまとめられる。ボランティアは自分じぶん貢献こうけんをウェブサイト「Folding@home」じょう確認かくにんすることができるため、参加さんか競争心きょうそうしん刺激しげきし、長期ちょうきてき貢献こうけんうながしている。

Folding@homeは、世界せかい最速さいそく計算けいさんシステムのひとつである。COVID-19パンデミック影響えいきょうでプロジェクトへの関心かんしんたかまるなか、2020ねん3がつ下旬げじゅんにはほんプロジェクトの演算えんざん能力のうりょくやく1.22 E(エクサ)FLOPS(フロップス)[5][6]、2020ねん4がつ中旬ちゅうじゅんにはやく2.43 EFLOPSを達成たっせい[7][8][9]世界せかいはつのエクサフロップ・コンピューティング・システムとなり、TOP500ぜんスーパーコンピュータ合算がっさん上回うわまわ能力のうりょく獲得かくとくした。 研究けんきゅうしゃは、計算けいさんコストのかかるタンパク質たんぱくしつりたたみにかんする原子げんしレベルのシミュレーションを、従来じゅうらいすうせんばいなが時間じかんわたって実行じっこうすることが可能かのうとなった。Pande Labは、2000ねん10がつ1にち発足ほっそく以来いらい、225の科学かがく研究けんきゅう論文ろんぶん発表はっぴょうしてきた[10]。このプロジェクトのシミュレーション結果けっかは、実験じっけん結果けっかとよく一致いっちしている。

背景はいけい[編集へんしゅう]

たたまえたたタンパク質たんぱくしつ不安定ふあんていランダムコイル状態じょうたいはじまり、本来ほんらい状態じょうたい立体りったいはいわる。

タンパク質たんぱくしつは、おおくの生物せいぶつがくてき機能きのう不可欠ふかけつ構成こうせい要素ようそであり、生物せいぶつ細胞さいぼううち事実じじつじょうすべてのプロセスに関与かんよしている。 タンパク質たんぱくしつおおくの場合ばあい酵素こうそとして機能きのうし、細胞さいぼうシグナル伝達でんたつ分子ぶんし輸送ゆそう細胞さいぼう周期しゅうき制御せいぎょなどの生化学せいかがく反応はんのうおこなっている。 構造こうぞう要素ようそとして、いくつかのタンパク質たんぱくしつは、細胞さいぼう骨格こっかく一種いっしゅである抗体こうたいとして機能きのうし、タンパク質たんぱくしつ免疫めんえきシステム関与かんよしている。 タンパク質たんぱくしつがこれらの役割やくわりたすまえに、タンパク質たんぱくしつ機能きのうてきさん次元じげん構造こうぞうりたたまれなければならない。 このプロセスは、しばしば自然しぜん発生はっせいてきおこなわれ、アミノ酸あみのさん配列はいれつない相互そうご作用さようアミノ酸あみのさんとその周囲しゅういアミノ酸あみのさんとの相互そうご作用さよう依存いぞんする。 タンパク質たんぱくしつたたみ(フォールディング)は、タンパク質たんぱくしつもっともエネルギーてき有利ゆうり構造こうぞう、すなわち天然てんねん状態じょうたい(立体りったいはい)をつけるための探索たんさくによって推進すいしんされる。 このように、タンパク質たんぱくしつのフォールディングを理解りかいすることは、タンパク質たんぱくしつなにをしているのか、どのように機能きのうしているのかを理解りかいするじょう非常ひじょう重要じゅうようであり、計算けいさん生物せいぶつがくひじりはいかんがえられてる。 フォールディングは、混雑こんざつした細胞さいぼう環境かんきょうなかおこなわれているにもかかわらず、通常つうじょうはスムーズにおこなわれている。 しかし、タンパク質たんぱくしつ化学かがくてき性質せいしつやその要因よういんにより、タンパク質たんぱくしつあやまってたたまれ(ミスフォールディングばれる)、あやまった経路けいろりたたまれてしまい、かたちくずれてしまうことがある。 あやまってたたまれたタンパク質たんぱくしつ細胞さいぼうのメカニズムで破壊はかいしたり、さいフォールディングしたりしないかぎり、タンパク質たんぱくしつはその凝集ぎょうしゅうし、様々さまざま消耗しょうもうせい疾患しっかんこす可能かのうせいがある。 これらのプロセスを研究けんきゅうする実験じっけんしつでの実験じっけんは、範囲はんい原子げんしレベルでの詳細しょうさいかぎられているため、科学かがくしゃたちは、物理ぶつりがくもとづいた計算けいさんモデルを使用しようして実験じっけん補完ほかんし、タンパク質たんぱくしつのフォールディング、ミスフォールディング、凝集ぎょうしゅうのより完全かんぜん全体ぜんたいぞう提供ていきょうしようとしている。

タンパク質たんぱくしつ立体りったいはいコンフィギュレーション空間くうかん英語えいごばん(タンパク質たんぱくしつ形状けいじょうのセット)の複雑ふくざつさと計算けいさん能力のうりょく限界げんかいから、ぜん原子げんし分子ぶんし動力どうりょくがくシミュレーションでは研究けんきゅうできるタイムスケールが大幅おおはば制限せいげんされている。 ほとんどのタンパク質たんぱくしつ通常つうじょうミリびょう単位たんいりたたまれるのにたいして、2010ねん以前いぜんのシミュレーションではナノびょうからマイクロびょうのタイムスケールにしか到達とうたつできなかった。 タンパク質たんぱくしつのフォールディングのシミュレーションには、汎用はんようスーパーコンピュータ使用しようされてきたが、このようなシステムは本質ほんしつてきにコストがたかく、おおくの研究けんきゅうグループで共有きょうゆうされているのが一般いっぱんてきであった。 さらに、動力どうりょくがくモデルの計算けいさん連続れんぞくてきおこなわれるため、従来じゅうらい分子ぶんしシミュレーションをこれらのアーキテクチャにつよスケーリングすることは非常ひじょう困難こんなんといえる(問題もんだいおおきさにたいして多数たすうのプロセッサを適応てきおうすることがむずかしくなる)。 さらに、タンパク質たんぱくしつりたたみはかくりつてきなプロセス(すなわちランダム)であり、時間じかん経過けいかとともに統計とうけいてき変化へんかする可能かのうせいがあるため、りたたみプロセスを包括ほうかつてきるために長時間ちょうじかんのシミュレーションをおこなうことは計算けいさんてき困難こんなんであった。

Folding@homeでは、ここで図示ずししたようなマルコフ状態じょうたいモデル使用しようして、タンパク質たんぱくしつ初期しょきのランダムにコイルじょうかれた状態じょうたい(ひだり)から本来ほんらいの3次元じげん構造こうぞう(みぎ)へと凝縮ぎょうしゅくするさいこりうる形状けいじょうやフォールディング経路けいろをモデルしている。

タンパク質たんぱくしつのフォールディングはいちこるものではない。 そのわりに、タンパク質たんぱくしつは、タンパク質たんぱくしつのエネルギー地形ちけいにおける局所きょくしょてきねつ力学りきがくてき自由じゆうエネルギー最小さいしょうである様々さまざまなかあいだてき構造こうぞう状態じょうたい待機たいきしているあいだに、フォールディングに時間じかんだい部分ぶぶんついやしている(場合ばあいによっては96%ちかく)。 適応てきおうてきサンプリング英語えいごばんとしてられるプロセスをつうじて、これらの立体りったいはいはFolding@homeによって、一連いちれんのシミュレーション軌道きどう出発しゅっぱつてんとして使用しようされる。 シミュレーションがよりおおくの立体りったいはい発見はっけんすると、それらの立体りったいはいから軌道きどう再開さいかいされ、この周期しゅうきてきなプロセスからマルコフ状態じょうたいモデル(MSM)が徐々じょじょ作成さくせいされる。 MSMは離散りさん時間じかん英語えいごばんマスター方程式ほうていしきモデルであり、生体せいたい分子ぶんし構造こうぞうとエネルギーランドスケープを、ことなる構造こうぞうとそのあいだみじか遷移せんい集合しゅうごうとして記述きじゅつする。 適応てきおうサンプリングマルコフ状態じょうたいモデルほうは、局所きょくしょてきなエネルギー最小さいしょう自体じたい内部ないぶでの計算けいさんけることができるため、シミュレーションの効率こうりつ大幅おおはば向上こうじょうさせ、みじか独立どくりつしたシミュレーション軌道きどう統計とうけいてき集約しゅうやく可能かのうにするため、分散ぶんさんコンピューティング(GPUGRIDふくむ)にてきしている。 マルコフ状態じょうたいモデルの構築こうちくようする時間じかんは、並列へいれつシミュレーションの実行じっこう回数かいすう、すなわち利用りよう可能かのうなプロセッサのかず反比例はんぴれいする。 いいかえれば、線形せんけい並列へいれつ実現じつげんし、全体ぜんたい直列ちょくれつ計算けいさん時間じかんやく4けた短縮たんしゅくすることができる。 完成かんせいしたMSMには、タンパク質たんぱくしつあい空間くうかん(タンパク質たんぱくしつがとることのできるすべての立体りったいはい)とそのあいだ遷移せんいのサンプル状態じょうたいすうまんふくまれている場合ばあいがある。 このモデルはフォールディングイベントとフォールディング順序じゅんじょ(すなわち経路けいろ)をしめしており、研究けんきゅうしゃあと動力どうりょくがくてきクラスタリングを使用しようして、そうでなければ非常ひじょう詳細しょうさいなモデルのあらされた表現ひょうげんることができる。 これらのMSMをもちいて、タンパク質たんぱくしつがどのようにしてあやまってりたたまれるかをあきらかにし、シミュレーションと実験じっけん定量ていりょうてき比較ひかくすることができる。

2000ねんから2010ねんあいだに、Folding@homeが研究けんきゅうしてきたタンパク質たんぱくしつながさは4ばい増加ぞうかし、タンパク質たんぱくしつフォールディングシミュレーションのタイムスケールは6けた増加ぞうかした。 2002ねんには、Folding@homeはマルコフ状態じょうたいモデルを使用しようしてすうヶ月かげつあいだやく100まんCPUにちぶんのシミュレーションをおこない、2011ねんにはMSMの並列へいれつおこない、合計ごうけい1000まんCPU時間じかん計算けいさん必要ひつようとした。 2010ねん1がつには、Folding@homeはMSMを使用しようして、1.52ミリびょうあいだに32ざんもとのNTL9タンパク質たんぱくしつがゆっくりとりたためる動力どうりょくがくのシミュレーションをおこなった。 このモデルは、実験じっけんてきなフォールディング速度そくど予測よそく一致いっちするタイムスケールでありながら、以前いぜん達成たっせいされたものよりもせんばいながいものであった。 このモデルは、それぞれが2けたみじか多数たすう個別こべつ軌道きどうから構成こうせいされており、タンパク質たんぱくしつのエネルギー地形ちけいをこれまでにないレベルで詳細しょうさい調しらべることができた。 2010ねん、Folding@homeの研究けんきゅうしゃであるグレッグ・ボーマン(Gregory Bowman)は、オープンソースのMSMBuilderソフトウェアの開発かいはつ理論りろん実験じっけん定量ていりょうてき一致いっち達成たっせいしたことにより、米国べいこく学会がっかいからトーマス・クーン(Thomas Kuhn)パラダイムシフトしょう受賞じゅしょうした。 かれ研究けんきゅうたいして、パンデ(Pande)は、「タンパク質たんぱくしつRNAのフォールディングにかんする最先端さいせんたん理論りろんモデルをすために、分野ぶんや定義ていぎし、分野ぶんやえる計算けいさん手法しゅほう開発かいはつした」として、2012ねんにMichael and Kate Bárány Award for Young Investigatorsを、また、「アンサンブル測定そくてい単一たんいつ分子ぶんし測定そくてい両方りょうほう意味いみさい検討けんとう刺激しげきし、パンデの努力どりょくはシミュレーション方法ほうほうろんへの先駆せんくてき貢献こうけんとなった」として、2006ねんにはIrving Sigal Young Investigator Awardを受賞じゅしょうしている。

生物せいぶつ医学いがく研究けんきゅうへのおう用例ようれい[編集へんしゅう]

タンパク質たんぱくしつあやまったたたみ(ミスフォールディング)は、アルツハイマーびょうがん(がん)、クロイツフェルト・ヤコブびょう嚢胞のうほうせい線維せんいしょう、ハンチントンびょうかまじょう赤血球せっけっきゅうせい貧血ひんけつ、およびIIがた糖尿とうにょうびょうふく様々さまざま疾患しっかん原因げんいんとなりる。 HIVインフルエンザなどのウイルスによる細胞さいぼう感染かんせんには、細胞さいぼうまくうえでのタンパク質たんぱくしつのフォールディング現象げんしょう関与かんよしている。 タンパク質たんぱくしつのミスフォールディングがよりよく理解りかいされれば、タンパク質たんぱくしつのフォールディングを調節ちょうせつする細胞さいぼう自然しぜん能力のうりょく増強ぞうきょうする治療ちりょうほう開発かいはつすることができる。 このような治療ちりょうほうには、特定とくていタンパク質たんぱくしつさんせい変化へんかさせたり、ミスフォールディングしたタンパク質たんぱくしつ破壊はかいしたり、あるいはフォールディングプロセスを補助ほじょするために人工じんこう分子ぶんし使用しようすることがふくまれる。 計算けいさん分子ぶんしモデリングと実験じっけん解析かいせきわせは、そうやく迅速じんそくやコスト削減さくげんなど、分子ぶんし医学いがく未来みらい合理ごうりてき医薬品いやくひん設計せっけいほう根本こんぽんてき形作かたちづく可能かのうせいめている。 Folding@homeの最初さいしょの5年間ねんかん目標もくひょうは、フォールディングの理解りかい前進ぜんしんさせることであったが、現在げんざい目標もくひょうは、ミスフォールディングと関連かんれん疾患しっかんとくにアルツハイマーびょう理解りかいである。

Folding@homeじょう実行じっこうされるシミュレーションは、実験じっけんしつでの実験じっけん併用へいようされるが、研究けんきゅうしゃはこれらのシミュレーションを利用りようして、実験じっけんしつ環境かんきょう(in vitro)でのフォールディングが、本来ほんらい細胞さいぼう環境かんきょうでのフォールディングとどのようにことなるのかを研究けんきゅうすることができる。 これは、実験じっけんてき観察かんさつすることが困難こんなんなフォールディングやミスフォールディング、そしてそれらと疾患しっかんとの関係かんけい研究けんきゅうするじょう有利ゆうりである。 たとえば、2011ねんのFolding@homeでは、リボソーム出口いでぐちトンネルないでのタンパク質たんぱくしつのフォールディングをシミュレーションし、自然しぜんめや混雑こんざつがフォールディングプロセスにどのような影響えいきょうあたえるかを、科学かがくしゃ理解りかいするのに役立やくだてた。 さらに、科学かがくしゃ通常つうじょう化学かがくてき変性へんせいざいはたらかせ、タンパク質たんぱくしつ安定あんていネイティブ状態じょうたいからアンフォールド(展開てんかい)させている。 変性へんせいざいタンパク質たんぱくしつさいフォールディングにどのような影響えいきょうあたえるかは一般いっぱんてきにはられておらず、これらの変性へんせい状態じょうたいに、フォールディングの挙動きょどう影響えいきょうあたえる可能かのうせいのある残余ざんよ構造こうぞうふくまれるかどうかを実験じっけんてき判断はんだんすることは困難こんなんである。 2010ねんにFolding@homeは、GPUを使つかってプロテインL英語えいごばんフォールディング状態じょうたいをシミュレーションし、実験じっけん結果けっかつよ一致いっちする崩壊ほうかい速度そくど推定すいていした。

このプロジェクトからられただい規模きぼなデータセットは、要求ようきゅうおうじて研究けんきゅうしゃ自由じゆう利用りようできるようになっており、Folding@homeのウェブサイトからアクセスできるものもある。 パンデ研究けんきゅうしつは、Blue Geneスーパーコンピュータのようなほか分子ぶんし動力どうりょくがくシステムと協力きょうりょくしており、Folding@homeの主要しゅようなソフトウェアを研究けんきゅうしゃ共有きょうゆうしていて、Folding@homeの恩恵おんけいけたアルゴリズムが科学かがく分野ぶんや役立やくだ可能かのうせいがある。 2011ねんには、Folding@homeのMSMやその並列へいれつ手法しゅほうをベースに、だい規模きぼコンピュータクラスタスーパーコンピュータうえでの分子ぶんしシミュレーションの効率こうりつとスケーリングを向上こうじょうさせることを目的もくてきとしたオープンソースのCopernicusソフトウェアをリリースした。 Folding@homeでられたすべての科学かがくてき知見ちけん要約ようやくは、発表はっぴょうにFolding@homeのウェブサイトに掲載けいさいされる。

アルツハイマーびょう[編集へんしゅう]

アルツハイマーびょうは、のうないのアミロイドβべーたタンパク質たんぱくしつ断片だんぺん凝集ぎょうしゅう関連かんれんしている(みぎ)。 研究けんきゅうしゃたちは、Folding@homeを使つかって、この病気びょうき原因げんいんをよりよく理解りかいするために、この凝集ぎょうしゅうプロセスをシミュレートした。

アルツハイマーびょうは、高齢こうれいしゃおお発症はっしょうし、認知にんちしょう半数はんすう以上いじょうめる難治なんじせい神経しんけい変性へんせい疾患しっかんである。 正確せいかく原因げんいん不明ふめいだが、この病気びょうきタンパク質たんぱくしつミスフォールディング疾患しっかんとして同定どうていされている。 アルツハイマーびょうは、アミロイドβべーたペプチド(Aβべーたりゃくす)がのAβべーたペプチドと一緒いっしょにミスフォールディングして凝集ぎょうしゅうすることによってこされる有毒ゆうどく凝集ぎょうしゅうたい関連かんれんしている。 これらのAβべーた凝集ぎょうしゅうたいは、アルツハイマーびょう病理びょうりがくてきマーカーである老人ろうじんまだら(神経しんけい突起とっきまだら))に成長せいちょうする。 これらの凝集ぎょうしゅうたい均一きんいつ性質せいしつっているため、Xせん結晶けっしょう構造こうぞう解析かいせきかく磁気じき共鳴きょうめい(NMR)などの実験じっけんてき手法しゅほうでは、その構造こうぞう特徴とくちょうあきらかにすることが困難こんなんであった。 また、Aβべーた凝集ぎょうしゅうたい原子げんしシミュレーションは、そのおおきさと複雑ふくざつさから、計算けいさんりょう非常ひじょうおおくなる。

Aβべーた凝集ぎょうしゅうふせぐことは、アルツハイマーびょう治療ちりょうやく開発かいはつするじょう有望ゆうぼう方法ほうほうであると、NaeemとFaziliは文献ぶんけん調査ちょうさ英語えいごばんべている。 2008ねん、Folding@homeは、すうじゅうびょう単位たんい時間じかんスケールでAβべーた凝集ぎょうしゅうのダイナミクスを原子げんしレベルで詳細しょうさいにシミュレーションした。 これまでの研究けんきゅうでは、やく10マイクロびょうのシミュレーションしかできなかった。 Folding@homeは、これまでの研究けんきゅうよりも6けたなが時間じかんスケールでAβべーたのフォールディングをシミュレーションすることができた。 研究けんきゅうしゃたちは、この研究けんきゅう結果けっか利用りようして、構造こうぞうない分子ぶんしあいだ相互そうご作用さようおも原因げんいんとなるβべーたヘアピン特定とくていした。 この研究けんきゅうは、パンデ研究けんきゅうしつ将来しょうらい凝集ぎょうしゅう研究けんきゅうのために、また凝集ぎょうしゅうプロセスを安定あんていさせる可能かのうせいのあるちいさなペプチドをつけるためのさらなる研究けんきゅうのために準備じゅんびをするのに役立やくだった。

2008ねん12月、Folding@homeは、Aβべーた凝集ぎょうしゅうたい毒性どくせい阻害そがいするとおもわれるいくつかのちいさな薬物やくぶつ候補こうほ発見はっけんした。 2010ねんには、タンパク質たんぱくしつフォールディング機構きこうセンター(Center for Protein Folding Machinery)との緊密きんみつ協力きょうりょくのもと、これらの薬物やくぶつ候補こうほ生体せいたい組織そしきでの試験しけん開始かいしされた。 2011ねん、Folding@homeは、Aβべーた凝集ぎょうしゅうたい形成けいせい安定あんていさせるとおもわれるいくつかの変異へんいのシミュレーションを完成かんせいさせた。 これらの変異へんいは、病気びょうき治療ちりょうやく開発かいはつ役立やくだ可能かのうせいがあり、Aβべーたオリゴマーかく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこうほうによる実験じっけんてき研究けんきゅうおおきく貢献こうけんしている。 そのとし後半こうはん、Folding@homeは、様々さまざま天然てんねん酵素こうそがAβべーた構造こうぞうとフォールディングみにどのような影響えいきょうあたえるかを決定けっていするために、様々さまざまなAβべーたフラグメントのシミュレーションを開始かいしした。

ハンチントンびょう[編集へんしゅう]

ハンチントンびょうは、タンパク質たんぱくしつかえしや凝集ぎょうしゅうともな神経しんけい変性へんせいせい遺伝いでんせい疾患しっかんである。 ハンチントンタンパク質たんぱくしつ英語えいごばんN末端まったんにあるグルタミンアミノ酸あみのさん過剰かじょうかえしが凝集ぎょうしゅうこし、その挙動きょどう完全かんぜんには解明かいめいされていないが、ほん疾患しっかんともな認知にんち機能きのう低下ていかにつながるとかんがえられている。 凝集ぎょうしゅうたい同様どうように、その構造こうぞう実験じっけんてき決定けっていすることは困難こんなんである。 科学かがくしゃたちは、Folding@homeをもちいて、ハンチントンタンパクしつ凝集ぎょうしゅうたい構造こうぞう研究けんきゅうし、凝集ぎょうしゅうたいがどのように形成けいせいされるかを予測よそくし、凝集ぎょうしゅうたい形成けいせいめるための合理ごうりてき医薬品いやくひん設計せっけいほう支援しえんしている。 ハンチントンタンパクしつのN17フラグメントは、この凝集ぎょうしゅう促進そくしんし、いくつかのメカニズムが提案ていあんされているが、このプロセスにおける正確せいかく役割やくわりはほとんど不明ふめいである。 Folding@homeは、このフラグメントとのフラグメントのシミュレーションをおこない、疾患しっかんにおける役割やくわりあきらかにしてきた。2008ねんからは、アルツハイマーびょう薬物やくぶつ設計せっけいほうをハンチントンびょう応用おうようしている。

がん(がん)[編集へんしゅう]

既知きちのがんの半分はんぶん以上いじょうは、細胞さいぼう周期しゅうき制御せいぎょし、DNA損傷そんしょうした場合ばあい細胞さいぼうのシグナルをす、すべての細胞さいぼう存在そんざいするがん抑制よくせいタンパク質たんぱくしつであるp53突然変異とつぜんへんい関与かんよしている。 p53の特定とくてい変異へんいは、これらの機能きのう破壊はかいし、異常いじょう細胞さいぼう成長せいちょう抑制よくせいせずに継続けいぞくさせ、結果けっかとして腫瘍しゅよう発生はっせいさせる。 これらの突然変異とつぜんへんい解析かいせきは、p53関連かんれんがん根本こんぽん原因げんいん説明せつめいするのに役立やくだつ。 2004ねんには、Folding@homeを使用しようして、みずぜん原子げんしシミュレーションにおけるp53のタンパク質たんぱくしつりょうからだのリフォールディングの最初さいしょ分子ぶんし動力どうりょくがく研究けんきゅうおこなった。 このシミュレーションの結果けっか実験じっけん結果けっか一致いっちし、以前いぜんられなかったりょうたいのリフォールディングについての洞察どうさつられた。 これは、分散ぶんさんがた計算けいさんプロジェクトによるがんにかんするはつ査読さどく論文ろんぶんとなった。 翌年よくねん、Folding@homeは、特定とくていタンパク質たんぱくしつ安定あんていせい重要じゅうようアミノ酸あみのさん特定とくていするあたらしい方法ほうほう開発かいはつし、p53の変異へんい研究けんきゅう使用しようした。 この方法ほうほうは、がんを促進そくしんする突然変異とつぜんへんい特定とくていすることに成功せいこうし、方法ほうほうでは実験じっけんてき測定そくていすることができなかった特定とくてい突然変異とつぜんへんい影響えいきょう決定けっていすることができた。

Folding@homeは、高分子こうぶんしクラウディングした化学かがくてきストレスのおお環境かんきょうで、タンパク質たんぱくしつのフォールディングをたすけることで、細胞さいぼう生存せいぞん不可欠ふかけつ役割やくわりたすねつショックタンパクしつであるタンパク質たんぱくしつシャペロン研究けんきゅうにも使用しようされている。 急速きゅうそく成長せいちょうするがん細胞さいぼう特定とくていのシャペロンに依存いぞんしており、いくつかのシャペロンは化学かがく療法りょうほう抵抗ていこうせい重要じゅうよう役割やくわりたしている。 これらの特定とくていのシャペロンを阻害そがいすることは、効率こうりつてき化学かがく療法りょうほうくすり開発かいはつや、がんのひろがりをおさえるための潜在せんざいてき作用さようじょかんがえられている。 パンデ研究けんきゅうしつでは、Folding@homeをもちいて、タンパク質たんぱくしつフォールディング機構きこうセンター(Center for Protein Folding Machinery)と緊密きんみつ連携れんけいし、がん細胞さいぼう関与かんよするこれらのシャペロンを阻害そがいする薬剤やくざいつけたいとかんがえている。 また、研究けんきゅうしゃたちは、Folding@homeを使つかって、Srcキナーゼ英語えいごばんという酵素こうそや、がんをふくおおくの病気びょうき関与かんよしている可能かのうせいのあるおおきなタンパク質たんぱくしつであるエングレイルド英語えいごばんホメオドメイン一部いちぶかたちなど、がんに関連かんれんするほか分子ぶんし研究けんきゅうにもんでいる。 2011ねん、Folding@homeは、がん細胞さいぼう表面ひょうめん受容じゅようたい結合けつごうすることで、イメージングスキャン癌腫がんしゅ識別しきべつすることができるちいさなノッティンタンパク質たんぱくしつEETIの動力どうりょくがくのシミュレーションを開始かいしした。

インターロイキン2(IL-2)は、免疫めんえきけいT細胞さいぼう病原びょうげんたい腫瘍しゅよう攻撃こうげきするのをたすけるタンパク質たんぱくしつである。 しかし、はい水腫すいしゅなどのじゅうあつし副作用ふくさようのため、がん治療ちりょうやくとしての使用しよう制限せいげんされている。 IL-2はT細胞さいぼうとはことなるかたちはい細胞さいぼう結合けつごうするため、この結合けつごう機構きこうちがいを理解りかいすることが研究けんきゅう課題かだいとなっている。 2012ねんには、Folding@homeは、免疫めんえきけい役割やくわりに300ばい以上いじょう効果こうかがありながら、副作用ふくさようすくない変異へんいがたのIL-2の発見はっけん支援しえんした。 実験じっけんでは、この変異へんいがたのIL-2は、腫瘍しゅよう成長せいちょう阻害そがいするというてんで、天然てんねんのIL-2よりも有意ゆういすぐれていた。 製薬せいやく会社かいしゃはこの変異へんいたい分子ぶんし関心かんしんしめしており、アメリカ国立こくりつ衛生えいせい研究所けんきゅうじょは、治療ちりょうやくとしての開発かいはつ加速かそくさせるために、様々さまざま腫瘍しゅようモデルをもちいて試験しけんおこなっている。

不完全ふかんぜんこつ形成けいせい[編集へんしゅう]

ほね形成けいせい不全ふぜんしょうは、脆性ぜいせいこつ疾患しっかんとしてられており、致死ちしてきになる可能かのうせいのある不治ふち遺伝いでんせいこつ疾患しっかんである。 この病気びょうきひとは、機能きのうてき結合けつごうこつ組織そしきつくることができない。 この疾患しっかんは、様々さまざま構造こうぞうてき役割やくわりたし、哺乳類ほにゅうるいもっとおお存在そんざいするタンパク質たんぱくしつであるIがたコラーゲン突然変異とつぜんへんいもっと一般いっぱんてき原因げんいんとなっている。 この突然変異とつぜんへんいは、コラーゲンの三重みえらせん構造こうぞう変形へんけいこし、自然しぜん破壊はかいされなければ、ほね組織そしき異常いじょう弱体じゃくたいこす。 2005ねん、Folding@homeは、それまでのシミュレーション手法しゅほう改良かいりょうしたあたらしい量子力学りょうしりきがくてき手法しゅほうをテストした。 研究けんきゅうしゃは、Folding@homeをコラーゲンのフォールディングとりたたみのミスフォールディングの研究けんきゅう使用しようしてきたが、アルツハイマーびょうハンチントンびょう研究けんきゅう比較ひかくすると、この研究けんきゅうはパイロットプロジェクトとしての関心かんしんたかいようである。

ウイルス[編集へんしゅう]

Folding@homeは、インフルエンザHIVなどの一部いちぶウイルス認識にんしきして生体せいたい細胞さいぼう侵入しんにゅうするのをふせ研究けんきゅう支援しえんしている。 2011ねん、Folding@homeは、HIVの重要じゅうよう構成こうせい要素ようそである酵素こうそRNase H動力どうりょくがくのシミュレーションを開始かいしし、酵素こうそ活性かっせいするくすり設計せっけいこころみた。 また、Folding@homeは、ウイルス感染かんせん幅広はばひろ生物せいぶつがくてき機能きのう不可欠ふかけつなイベントであるまく融合ゆうごう英語えいごばん研究けんきゅうにも利用りようされている。 この融合ゆうごうには、ウイルス融合ゆうごうタンパク質たんぱくしつコンフォメーション変化へんかタンパク質たんぱくしつドッキング英語えいごばん関与かんよしているが、融合ゆうごう背後はいごにある正確せいかく分子ぶんしメカニズムはほとんどわかっていない。 融合ゆうごう現象げんしょうは、すうひゃくマイクロびょうあいだに50まん以上いじょう原子げんし相互そうご作用さようすることもある。 このような複雑ふくざつさから、一般いっぱんてきなコンピュータシミュレーションでは、すうじゅうナノびょうあいだやく1まん原子げんし相互そうご作用さようすることになるが、これはすうけたちがいある。 まく融合ゆうごうのメカニズムを予測よそくするモデルの開発かいはつは、こうウイルスやくもちいてこのプロセスを標的ひょうてきにする方法ほうほう科学かがくてき理解りかいするのに役立やくだつだろう。 2006ねんには、マルコフ状態じょうたいモデルとFolding@homeネットワークを応用おうようして、融合ゆうごうの2つの経路けいろ発見はっけんし、そののメカニズムにかんする知見ちけんた。

2007ねん、パンデ研究けんきゅうしつは、しょうとしてられるしょう細胞さいぼう詳細しょうさいなシミュレーションをFolding@homeでおこなったのち融合ゆうごうちゅう構造こうぞう変化へんかトポロジー測定そくていするあたらしい計算けいさん方法ほうほう導入どうにゅうした。 2009ねんには、研究けんきゅうしゃたちはFolding@homeを使つかって、ウイルスを宿主しゅくしゅ細胞さいぼうにくっつけ、ウイルスの侵入しんにゅうたすけるタンパク質たんぱくしつであるインフルエンザヘマグルチニン英語えいごばん変異へんい研究けんきゅうした。 ヘマグルチニンの変異へんいは、ヘマグルチニンが宿主しゅくしゅ細胞さいぼう表面ひょうめん受容じゅようたい分子ぶんしにどの程度ていどうまく結合けつごうするかに影響えいきょうあたえ、これによってウイルスかぶ宿主しゅくしゅ生物せいぶつどの程度ていど感染かんせんするか決定けっていされる。 ヘマグルチニンの変異へんい影響えいきょうかんする知識ちしきは、こうウイルスやく開発かいはつ役立やくだつ。 2012ねん現在げんざい、Folding@homeは、バージニア大学だいがくでの実験じっけん研究けんきゅう補完ほかんしながら、ヘマグルチニンのフォールディングと相互そうご作用さようのシミュレーションをつづけている。

2020ねん3がつ、Folding@homeは、治療ちりょうほう発見はっけんコロナウイルスのパンデミックについての詳細しょうさい研究けんきゅうおこなっている世界中せかいじゅう研究けんきゅうしゃ支援しえんするプログラムを開始かいしした。 プロジェクトのだいいち段階だんかいでは、SARS-CoV-2ウイルス、および関連かんれんするSARS-CoVウイルスからの薬剤やくざい可能かのうタンパク質たんぱくしつ標的ひょうてきをシミュレートしているが、これらについては、利用りよう可能かのうなデータが大幅おおはば増加ぞうかしている。[11][12][13]

薬剤やくざい設計せっけい[編集へんしゅう]

薬物やくぶつは、標的ひょうてき分子ぶんしじょう特定とくてい位置いち結合けつごうし、標的ひょうてき無効むこうにしたり、コンフォメーション変化へんかこしたりするなど、所望しょもう変化へんかこすことで機能きのうする。 理想りそうてきには、薬物やくぶつ非常ひじょう特異とくいてき作用さようし、生物せいぶつがくてき機能きのう阻害そがいすることなく標的ひょうてきにのみ結合けつごうすることがのぞましい。 しかし、2つの分子ぶんしどこでどのように強固きょうこ結合けつごうするかを正確せいかく決定けっていすることは困難こんなんである。 計算けいさん能力のうりょく限界げんかいがあるため、現在げんざいインシリコ(in silico)ほう通常つうじょう正確せいかく速度そくど両立りょうりつさせなければならない。 たとえば、計算けいさんコストのかかる自由じゆうエネルギー計算けいさんわりに、迅速じんそくタンパク質たんぱくしつドッキング英語えいごばん使用しようするなどである。 Folding@homeの計算けいさん性能せいのうにより、研究けんきゅうしゃ両方りょうほう方法ほうほう使用しようし、その効率こうりつせい信頼しんらいせい評価ひょうかすることができる。 コンピュータ支援しえんそうやくは、そうやくのスピードアップとコスト削減さくげんにつながる可能かのうせいがある。 2010ねん、Folding@homeは、MSMと自由じゆうエネルギー計算けいさんもちいて、Xせん結晶けっしょう構造こうぞう解析かいせきによって実験じっけんてき決定けっていされた結晶けっしょう構造こうぞうから、ヴィリン英語えいごばんタンパク質たんぱくしつのネイティブ状態じょうたいを1.8オングストローム(Å)の二乗にじょう平均へいきん平方根へいほうこん誤差ごさ(RMSD)以内いない予測よそくした。 この精度せいどは、本質ほんしつてき構造こうぞうされていないタンパク質たんぱくしつふくむ、将来しょうらいタンパク質たんぱくしつ構造こうぞう予測よそく手法しゅほう意味いみつ。 科学かがくしゃたちは、Folding@homeを利用りようして、最後さいご手段しゅだんくすり英語えいごばんであるバンコマイシンや、ペニシリンなどの抗生こうせい物質ぶっしつ分解ぶんかいするβべーた-ラクタマーゼ研究けんきゅうすることで、薬剤やくざいたいせい研究けんきゅうおこなってきた。

化学かがく活性かっせいは、タンパク質たんぱくしつ活性かっせい部位ぶい沿って発生はっせいする。 従来じゅうらい薬物やくぶつ設計せっけいほうでは、標的ひょうてきタンパク質たんぱくしつが1つの剛体ごうたい構造こうぞう存在そんざいすると仮定かていして、この部位ぶい強固きょうこ結合けつごうし、その活性かっせい阻害そがいする。 しかし、このアプローチが有効ゆうこうはたらくのは、ぜんタンパク質たんぱくしつやく15%にぎない。 タンパク質たんぱくしつにはアロステリックサイトが存在そんざいし、てい分子ぶんし結合けつごうすることでタンパク質たんぱくしつ構造こうぞう変化へんかさせ、最終さいしゅうてきにはタンパク質たんぱくしつ活性かっせい影響えいきょうあたえる。 これらの部位ぶい魅力みりょくてきそうやく標的ひょうてきであるが、その位置いち特定とくていするには非常ひじょう計算けいさんコストがかかる。 2012ねんには、Folding@homeとMSMをもちいて、βべーた-ラクタマーゼ、インターロイキン-2RNase Hの3つの医学いがくてき関連かんれんのあるタンパク質たんぱくしつのアロステリックサイトを同定どうていした。

既知きち抗生こうせい物質ぶっしつやく半分はんぶんは、細菌さいきんリボソームはたらきを阻害そがいするもので、メッセンジャーRNAタンパク質たんぱくしつ翻訳ほんやくすることでタンパク質たんぱくしつなま合成ごうせいおこなう、おおきくて複雑ふくざつ生化学せいかがくてき機械きかいである。 マクロライドけい抗生こうせい物質ぶっしつはリボソーム出口でぐちトンネルをふさぎ、細菌さいきん必須ひっすタンパク質たんぱくしつ合成ごうせいさまたげる。 2007ねん、パンデ研究けんきゅうしつは、あたらしい抗生こうせい物質ぶっしつ研究けんきゅう設計せっけいのための助成じょせいきんけた。 2008ねんには、Folding@homeを使つかって、このトンネルの内部ないぶと、特定とくてい分子ぶんしがどのように影響えいきょうするかを研究けんきゅうした。 リボソームの完全かんぜん構造こうぞうは2011ねん時点じてん決定けっていされており、Folding@homeでは、リボソームタンパクしつ英語えいごばん機能きのうおおくがほとんど解明かいめいされていないため、リボソームタンパクしつのシミュレーションもおこなっている。

市民しみん科学かがくしゃによる貢献こうけん[編集へんしゅう]

参加さんかパターン[編集へんしゅう]

分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトと同様どうように、Folding@homeはオンライン市民しみん科学かがくプロジェクトである。 こうしたプロジェクトでは、専門せんもんではない人々ひとびとがコンピュータ処理しょり能力のうりょく提供ていきょうしたり、プロの科学かがくしゃ作成さくせいしたデータの分析ぶんせき手伝てつだったりする。 参加さんかしゃはほとんど、あるいはあきらかな報酬ほうしゅうらない。

市民しみん科学かがくしゃ動機どうきについての研究けんきゅうおこなわれてきたが、これらの研究けんきゅうのほとんどは、参加さんかしゃ利他りたてき理由りゆうから参加さんかする動機どうきっていることを発見はっけんしている。[14][15][16][17] つまり、科学かがくしゃたすけたい、研究けんきゅう発展はってん貢献こうけんしたいとかんがえていることがわかった。 市民しみん科学かがく参加さんかしゃおおくは、研究けんきゅうのテーマに根底こんていにある興味きょうみち、自分じぶん興味きょうみのある分野ぶんやのプロジェクトへとせられていく。

Folding@homeもそのてんではわりはなく、最近さいきん(2018)、400にん以上いじょう参加さんかしゃ対象たいしょうおこなわれた調査ちょうさでは、研究けんきゅう貢献こうけんしたいとかんがえていること、また、おおくの参加さんかしゃには、Folding@homeの科学かがくしゃ調査ちょうさしている病気びょうき罹患りかんした友人ゆうじん親戚しんせきがいることがあきらかになった。[18]

Folding@homeは、コンピュータハードウェアの愛好あいこう(「オーバークロッカー」とばれることもある)の参加さんかしゃあつめている。 これらのグループは、プロジェクトにかなりの専門せんもん知識ちしきをもたらし、高度こうど処理しょり能力のうりょくつコンピュータを構築こうちくすることができる。[19] 分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトでは、このようなタイプの参加さんかしゃあつまり、プロジェクトは改造かいぞうされたコンピュータの性能せいのうをベンチマークするために使用しようされることがおおく、この趣味しゅみのこのような側面そくめんは、プロジェクトの競争きょうそうてき性質せいしつによって対応たいおうされている。 個人こじんやチームは、だれもっとおおくのコンピュータ処理しょり装置そうち(CPU)を処理しょりできるかをきそうことができる。

このFolding@homeにかんする最新さいしん研究けんきゅうでは、オンライングループのインタビューと民族みんぞくてき観察かんさつおこない、ハードウェア愛好あいこうのチームが、処理しょり出力しゅつりょく最大さいだいするためのベストプラクティスを共有きょうゆうしながら一緒いっしょ作業さぎょうすることができることがしめされた。 このようなチームは、言語げんごとオンライン文化ぶんか共有きょうゆうし、実践じっせんコミュニティになることができる。 このような参加さんかパターンは、分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトでも観察かんさつされている。[20][21]

Folding@homeの参加さんかしゃのもうひとつの重要じゅうよう観察かんさつてんは、男性だんせいおおいことである。[18] これは分散ぶんさんがたプロジェクトでも観察かんさつされている。 さらに、参加さんかしゃおおくはコンピュータやテクノロジーを使つかった仕事しごとやキャリアに従事じゅうじしている。[18][22][23]

Folding@homeの参加さんかしゃ全員ぜんいんがハードウェアの愛好あいこうというわけではない。 おおくの参加さんかしゃは、改造かいぞうされていないマシンでプロジェクトのソフトウェアを実行じっこうし、競争きょうそうてき参加さんかしている。 Folding@homeには10まんにん以上いじょう参加さんかしゃがいる。 しかし、参加さんかしゃのうち、どの程度ていど割合わりあいがハードウェア愛好あいこうなのかを把握はあくすることは困難こんなんである。 しかし、プロジェクト管理かんりしゃによれば、処理しょり能力のうりょくめんでは愛好あいこうコミュニティの貢献こうけんほうおおきいとかたっている。[24]

パフォーマンス[編集へんしゅう]

2004ねん4がつから2012ねん10がつまでのFolding@homeと最速さいそくスパコンの計算けいさん能力のうりょく。2007ねん6がつから2011ねん6がつまでのあいだ、Folding@home(あか)はTOP500最速さいそくスパコン(くろ)を上回うわまわっていたが、2011ねん11月にはきょうに、2012ねん6がつにはBlue Gene/Qかれた。

スーパーコンピュータのFLOPS性能せいのうは、従来じゅうらいLINPACKベンチマークを実行じっこうすることで評価ひょうかされる。 この短期たんきてきなテストでは、LINPACKがスーパーコンピュータのハードウェアに効率こうりつてきにマップされるため、じつ世界せかいのタスクでの持続じぞくてきなパフォーマンスを正確せいかく反映はんえいすることは困難こんなんである。 コンピューティングシステムはアーキテクチャや設計せっけいことなるため、直接ちょくせつ比較ひかくすることは困難こんなんである。 これにもかかわらず、FLOPSはスーパーコンピューティングで使用しようされる主要しゅよう速度そくど指標しひょうであることにわりはない。[25][検証けんしょうよう引用いんようぶん必要ひつよう] 対照たいしょうてきに、Folding@homeは、ワークユニット(作業さぎょう単位たんい)が完了かんりょうするのにかかる時間じかん測定そくていすることで、じつ経過けいか時間じかん英語えいごばん使用しようしてFLOPSを決定けっていする。[26]

2007ねん9がつ16にち、PlayStation 3の参加さんかもあり、Folding@homeプロジェクトは、ネイティブ 1ペタFLOPS(参考さんこう: エクサスケール・コンピューティング)をえる持続じぞくてき性能せいのう正式せいしき達成たっせいし、あらゆる種類しゅるい計算けいさんシステムではじめての達成たっせいとなった。 当時とうじTop500最速さいそくのスパコンはBlueGene/Lで0.280ペタFLOPSであった。 翌年よくねんの2008ねん5がつ7にちにはネイティブ 2ペタFLOPSをえる持続じぞく性能せいのう達成たっせいし、2008ねん8がつにはネイティブ 3ペタFLOPS、2008ねん9がつ28にちにはネイティブ 4ペタFLOPSのマイルストーンを達成たっせいした。 2009ねん2がつ18にちには、Folding@home がネイティブペタFLOPS 5ペタFLOPSを達成たっせいし、この5つのレベルを達成たっせいした最初さいしょ計算けいさんプロジェクトとなった。 これにたいして、2008ねん11月の最速さいそくスーパーコンピュータはIBMRoadrunnerで1.105ペタFLOPSであった。 2011ねん11がつ10日とおかのFolding@homeの性能せいのうは、6ネイティブペタFLOPSをえ、これはx86の8ペタFLOPSちかくに相当そうとうする。2013ねん5がつ中旬ちゅうじゅんには、Folding@homeは7ネイティブペタFLOPSをえ、14.87 x86ペタFLOPSに相当そうとうする。その、6月21にちには8ネイティブペタFLOPSを達成たっせいし、同年どうねん9がつ9にちには9ネイティブペタFLOPSを達成たっせい、17.9 x86 ペタFLOPSを達成たっせいした。2016ねん5がつ11にち、Folding@homeは100 x86 ペタFLOPSの達成たっせいけてうごしたと発表はっぴょうした。[27]

2020ねんのコロナウイルスパンデミックによる意識いしきたかまりと、市民しみん科学かがくしゃのプロジェクトへの参加さんかから、さらなる利用りよう拡大かくだいした。 2020ねん3がつ20日はつか、Folding@homeはTwitterをつうじて、470ネイティブペタFLOPS以上いじょう稼働かどうしていることを発表はっぴょうした(958 x86ペタFLOPSに相当そうとう)。[28] 同年どうねん3がつ25にちまでに768ペタFLOPS、つまり1.5 x86エクサFLOPSにたっし、はつのエクサFLOPコンピューティングシステムとなった[29]

ポイント[編集へんしゅう]

分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトと同様どうように、Folding@home は、クレジットシステムをつうじてプロジェクトへのユーザのコンピューティング貢献こうけん定量ていりょうてき評価ひょうかする。 ポイントは、プロジェクトがリリースされるまえに、そのプロジェクトからの1つ以上いじょうのワークユニット(作業さぎょう単位たんい)を公式こうしきのリファレンスマシンじょうでベンチマークすることによって決定けっていされる。 かくユーザは、すべてのワークユニットを完成かんせいさせた場合ばあいにこれらの基本きほんポイントをることができるが、秘密ひみつのパスキーを登録とうろくすることで、計算けいさん難易なんいたかいユニットや科学かがくてき優先ゆうせん順位じゅんいたかいユニットを確実かくじつかつ迅速じんそく完成かんせいさせた場合ばあいには、ワークユニットの成功せいこうりつが80%をえることや、10以上いじょう有効ゆうこうなワークユニットを送信そうしんするなどの条件じょうけん[30]きでボーナスポイントを追加ついかることができる。[注釈ちゅうしゃく 1] また、ユーザは複数ふくすうのマシンじょうのクライアントからの作業さぎょうたいしてもクレジットをることができる。 このポイントシステムは、あたえられたクレジットと科学かがくてき結果けっか価値かち一致いっちさせるこころみである。

ユーザは自分じぶん貢献こうけんをチームにたいして登録とうろくすることができ、メンバー全員ぜんいんのポイントを合算がっさんすることができる。 ユーザは自分じぶんのチームをげることも、既存きそんのチームに参加さんかすることもできる。 場合ばあいによっては、チームは、インターネットフォーラムのようなコミュニティ主導しゅどうのヘルプや勧誘かんゆう情報じょうほうげんつこともある。 ポイントは、プロジェクトのためにもっとおおくの計算けいさんをするために、個人こじんとチームのあいだ友好ゆうこうてき競争きょうそう促進そくしんすることができ、フォールディングコミュニティに利益りえきをもたらし、科学かがく研究けんきゅう加速かそくさせることができる。 個人こじんとチームの統計とうけいは、Folding@home のウェブサイトに掲載けいさいされる。

ユーザがあたらしいチームを結成けっせいしなかったり、既存きそんのチームに参加さんかしなかったりすると、そのユーザは自動的じどうてきに「デフォルト」チームのメンバーになる。 この「デフォルト」チームのチーム番号ばんごうは「0」で、統計とうけい情報じょうほうは、この「デフォルト」チームとして特別とくべつ命名めいめいされたチームのために蓄積ちくせきされる。

ソフトウェア[編集へんしゅう]

ユーザーがわのFolding@homeソフトウェアは、ワークユニット、コア、クライアントという3つの主要しゅようなコンポーネントから構成こうせいされている。

ワークユニット[編集へんしゅう]

ワークユニット(Work units, 作業さぎょう単位たんい)とは、クライアントに処理しょり依頼いらいするタンパク質たんぱくしつデータのことである。 作業さぎょう単位たんいは、マルコフモデル英語えいごばんにおける状態じょうたいあいだのシミュレーションの断片だんぺんである。 ワークユニットがダウンロードされ、ボランティアのコンピュータで完全かんぜん処理しょりされたのち、それはFolding@homeのサーバーにもどされ、ボランティアにクレジットポイントがあたえられる。 このサイクルは自動的じどうてきかえされる。 すべてのワークユニットには期限きげんがあり、この期限きげんえた場合ばあい、ユーザーはクレジットを取得しゅとくできず、自動的じどうてきべつ参加さんかしゃさい発行はっこうされる。 タンパク質たんぱくしつのフォールディングは連続れんぞくてきおこなわれ、おおくのワークユニットは前任ぜんにんしゃから生成せいせいされるため、妥当だとう期間きかん経過けいかしてもワークユニットが返却へんきゃくされない場合ばあいは、シミュレーションプロセス全体ぜんたい正常せいじょう進行しんこうするようになっている。 これらの期限きげん関係かんけいじょう、Folding@homeの最小さいしょうシステム要件ようけんは、Pentium III 450 MHz CPUとStreaming SIMD Extensions(SSE)である。 しかし、高性能こうせいのうクライアントようのワークユニットは、単一たんいつプロセッサクライアントようのワークユニットよりもはるかにみじか期限きげん設定せっていされており、それは科学かがくてき利益りえきだい部分ぶぶんがシミュレーションを迅速じんそく完了かんりょうすることに依存いぞんしているためである。

一般いっぱん公開こうかいまえに、ワークユニットはいくつかの品質ひんしつ保証ほしょう段階だんかいて、問題もんだいのあるものが完全かんぜん利用りよう可能かのうにならないようにする。 これらのテスト段階だんかいには、Folding@home全体ぜんたいでの最終さいしゅうてき完全かんぜんリリースのまえに、内部ないぶテスト、ベータテスト、および高度こうどテストがふくまれる。 Folding@homeのワークユニットは、処理しょりちゅうにまれにエラーが発生はっせいする場合ばあいのぞき、通常つうじょういちだけ処理しょりされる。 もしこれが3にんことなるユーザに発生はっせいした場合ばあい、そのユニットは自動的じどうてき配布はいふから除去じょきょされる。 Folding@homeサポートフォーラムは、問題もんだいのあるハードウェアに起因きいんする問題もんだい不良ふりょうのワークユニットに起因きいんする問題もんだい区別くべつするために使用しようすることができる。

コア[編集へんしゅう]

「FahCores(ファーコア)」とばれ、しばしば「Core(コア)」とりゃくされる特殊とくしゅ分子ぶんし動力どうりょくがくプログラムは、バックグラウンドプロセスとしてワークユニットじょう計算けいさん実行じっこうする。 Folding@homeのコアのだい部分ぶぶんは、手動しゅどう最適さいてきされたアセンブリ言語げんごコードとハードウェアの最適さいてきからなる、もっと高速こうそくもっと一般いっぱんてき分子ぶんし動力どうりょくがくソフトウェアパッケージのひとつであるGROMACSをベースにしている。 GROMACSはオープンソースのソフトウェアで、パンデ研究けんきゅうしつとGROMACSの開発かいはつしゃとは協力きょうりょく関係かんけいっているが、Folding@homeではデータの妥当だとうせい確保かくほするためにクローズドソースのライセンスを使用しようしている(すなわちソースコードを公開こうかいしていない)。 あまりアクティブではないコアには、ProtoMol(あたらしいアルゴリズムのテストにく)とSHARPENがある。 かつてFolding@homeはAMBER、CPMD、Desmond、TINKERを使用しようしてきたが、これらのコアは引退いんたいしており、現役げんえきではなくなっている。 これらのコアのなかには、周囲しゅうい溶媒ようばい(通常つうじょうみず)を原子げんし単位たんいでモデルする明示めいじてき溶媒ようばい計算けいさんおこなうものもあれば、溶媒ようばい数学すうがくてき連続れんぞくたいとしてあつか暗黙あんもく溶媒ようばい計算けいさんおこなうものもある。 コアはクライアントから分離ぶんりされており、クライアントの更新こうしん必要ひつようとせずに科学かがくてき手法しゅほう自動的じどうてき更新こうしんできるようになっている。 コアは定期ていきてきアプリケーション・チェックポインティング英語えいごばん作成さくせいし、中断ちゅうだんされても起動きどうにその時点じてんから作業さぎょう再開さいかいできるようにしている。

クライアント[編集へんしゅう]

Fedora 25じょう実行じっこうするFolding@homeクライアント

Folding@homeの参加さんかしゃは、パーソナルコンピュータクライアントプログラムをインストールする。 ユーザは、バックグラウンドでのソフトウェアコンポーネントを管理かんりするクライアントと対話たいわする。 ユーザはクライアントをつうじて、たた処理しょり一時いちじ停止ていししたり、イベントログをひらいたり、作業さぎょう進捗しんちょくじょうきょう確認かくにんしたり、個人こじん統計とうけい情報じょうほう表示ひょうじしたりすることができる。 コンピュータ・クライアントは、通常つうじょうのコンピュータの使用しよう影響えいきょうあたえないように、非常ひじょうひく優先ゆうせんバックグラウンド継続けいぞくてき実行じっこうされ、アイドル処理しょり能力のうりょく使用しようする。 CPUの最大さいだい使用しようりょうは、クライアントの設定せってい調整ちょうせいできる。 クライアントは、Folding@homeサーバ接続せつぞくし、ワークユニットを取得しゅとくし、クライアントの設定せってい、オペレーティングシステム、および基礎きそとなるハードウェアアーキテクチャにてきしたコアをダウンロードすることができる。 処理しょり、ワークユニットは、Folding@homeサーバにもどされる。 コンピュータ・クライアントは、ユニプロセッサ・システムマルチコア・プロセッサ・システム、グラフィックス・プロセッシング・ユニットわせて調整ちょうせいされている。 かくハードウェアアーキテクチャ英語えいごばん多様たようせい処理しょり性能せいのうにより、Folding@homeは、おおくの種類しゅるいのシミュレーションをタイムリーに(すうねんではなくすう週間しゅうかんから数ヶ月すうかげつで)効率こうりつてき完了かんりょうさせることができ、これは科学かがくてき価値かちたかいものである。 これらのクライアントをわせることで、研究けんきゅうしゃは、これまで計算けいさんむことが現実げんじつてきかんがえられていた生物せいぶつ医学いがくてき問題もんだい研究けんきゅうすることが可能かのうになる。

プロのソフトウェア開発かいはつしゃは、クライアントがわとサーバーがわ両方りょうほうで、Folding@homeのコードのだい部分ぶぶん担当たんとうしている。 開発かいはつチームには、NvidiaATISony、Cauldron Developmentのプログラマーがふくまれている。 クライアントは、Folding@homeの公式こうしきウェブサイトまたはその商用しょうようパートナーからのみダウンロードすることができ、Folding@homeのコンピュータファイルとのみやりとりする。 クライアントは、Folding@homeのデータサーバー(ポート8080、代替だいたいとして80を使用しよう)にデータをアップロードしたりダウンロードしたりし、通信つうしんは2048ビットのデジタル署名しょめい使用しようして検証けんしょうされる。 クライアントのグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)はオープンソースであるが、クライアントはセキュリティと科学かがくてき整合せいごうせい理由りゆうプロプライエタリなソフトウェアである。

しかし、プロプライエタリなソフトウェアを使用しようすることのこの合理ごうりせいは、ライセンスは遡及そきゅうてき法的ほうてき領域りょういき強制きょうせいりょくつことができるかもしれないが、実行じっこう可能かのうバイナリファイル改変かいへん(パッチ適用てきようとしてもられる)を実質じっしつてきふせぐことができないため、議論ぎろん余地よちがある。 同様どうように、バイナリのみの配布はいふでは、インターネット経由けいゆでダウンロードされているあいだちゅうあいだしゃ攻撃こうげき[31]第三者だいさんしゃによるバイナリのさい配布はいふによって、バイナリ状態じょうたいのまま(つまりパッチをてられたまま)[32]、あるいは変更へんこうのバイナリをぎゃくコンパイル[33]してさいコンパイルすることによって[34][35]実行じっこうバイナリコードの悪意あくいのある変更へんこうふせぐことができない。 このような変更へんこうは、バイナリファイルとトランスポートチャネルが署名しょめいされていて、受信じゅしんしゃやシステムがデジタル署名しょめい検証けんしょうできる場合ばあいには可能かのうであるが、かならずしもそうとはかぎらない。[36] いずれにしても、Folding@home の場合ばあい、クライアント・ソフトウェアによって処理しょりされる入力にゅうりょくデータと出力しゅつりょく結果けっか両方りょうほうがデジタル署名しょめいされているので、作業さぎょう完全かんぜんせいは、クライアント・ソフトウェア自体じたい完全かんぜんせいから独立どくりつして検証けんしょうすることができる。

Folding@homeでは、ネットワークのためにCosmソフトウェアライブラリを使用しようしている。 Folding@homeは2000ねん10がつ1にちげられ、生体せいたい分子ぶんしシステムを対象たいしょうとした最初さいしょ分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトであった。 最初さいしょのクライアントはスクリーンセーバーで、コンピュータが使用しようされていないときに実行じっこうされた。 2004ねんには、パンデ研究けんきゅうしつデビッド・P・アンダーソン英語えいごばん共同きょうどうで、オープンソースのBOINCフレームワークじょう補助ほじょてきなクライアントをテストした。 このクライアントは2005ねん4がつにクローズドベータばんとしてリリースされたが、この方法ほうほう実行じっこう不可能ふかのうとなり、2006ねん6がつ棚上たなあげされた。

グラフィックス・プロセッシング・ユニット[編集へんしゅう]

グラフィックス・プロセッシング・ユニット(Graphics Processing Units = GPU)の特殊とくしゅなハードウェアは、ビデオゲームなどの3Dグラフィックス・アプリケーションのレンダリングを高速こうそくするように設計せっけいされており、あるしゅ計算けいさんではCPUを大幅おおはば上回うわまわ性能せいのう発揮はっきする。 GPUは、もっと強力きょうりょく急速きゅうそく成長せいちょうしているコンピューティングプラットフォームの1つであり、おおくの科学かがくしゃ研究けんきゅうしゃは、グラフィックス・プロセッシング・ユニットじょうでの汎用はんようコンピューティング(GPGPU)追求ついきゅうしている。 しかし、GPUハードウェアは、グラフィックス以外いがいのタスクに使用しようするのはむずかしく、通常つうじょう大幅おおはばなアルゴリズムのさい構築こうちくと、基礎きそとなるアーキテクチャの高度こうど理解りかい必要ひつようとする。 このようなカスタマイズは、ソフトウェア開発かいはつリソースがかぎられている研究けんきゅうしゃにとってはなおさら困難こんなんである。

Folding@homeでは、オープンソースのOpenMMライブラリを使用しようしている。 このライブラリは、2つのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)レベルをブリッジ設計せっけいパターン使用しようして、分子ぶんしシミュレーション・ソフトウェアの基礎きそとなるハードウェア・アーキテクチャにインターフェースする。 OpenMMベースのGPUシミュレーションでは、ハードウェアの最適さいてき追加ついかされたことで、大幅おおはば変更へんこう必要ひつようとせず、手作業てさぎょうでチューニングされたGPUコードとほぼ同等どうとう性能せいのう実現じつげんし、CPUの実装じっそう大幅おおはば上回うわまわ性能せいのう発揮はっきする。

2010ねん以前いぜんは、GPGPUコンシューマーグレードのハードウェアの計算けいさん信頼しんらいせいはほとんどられておらず、GPUメモリに内蔵ないぞうされたあやま検出けんしゅつ訂正ていせいがないことにかんする状況じょうきょう証拠しょうこにより、信頼しんらいせい懸念けねんしょうじた。 2010ねん、Folding@home ネットワークじょうの2まんだい以上いじょうのホストを対象たいしょうとしただい規模きぼなGPU科学かがくてき精度せいどテストでは、テストされたGPUの3ぶんの2のメモリサブシステムでソフトエラー英語えいごばん検出けんしゅつされた。 これらのエラーはボードアーキテクチャとつよ相関そうかんしているが、ソフトウェアがわのエラー検出けんしゅつなどのハードウェアの特性とくせい注意ちゅういはらっているかぎり、信頼しんらいせいたかいGPUコンピューティングはおおいに実現じつげん可能かのうであると結論けつろんづけている。

Folding@homeのだいいち世代せだいのGPUクライアント(GPU1)が2006ねん10がつ2にち公開こうかいされ、CPUベースのGROMACSと比較ひかくして、いくつかの計算けいさんで20~30ばい高速こうそく実現じつげんした。 これは、GPUが分散ぶんさんコンピューティングや主要しゅよう分子ぶんし動力どうりょくがく計算けいさん使用しようされたはじめてのこころみであった。 GPU1は研究けんきゅうしゃGPGPUソフトウェアの開発かいはつかんする重要じゅうよう知識ちしき経験けいけんあたえたが、2008ねん4がつ10日とおかDirectX科学かがくてき不正確ふせいかくさに対応たいおうして、だい2世代せだいのクライアントであるGPU2にがれた。 GPU2の導入どうにゅう、GPU1は6がつ6にち正式せいしき引退いんたいした。 GPU1にくらべて、GPU2はより科学かがくてき信頼しんらいせい生産せいさんせいたかく、ATICUDA対応たいおうNvidia GPUじょう動作どうさし、より高度こうどなアルゴリズム、よりおおきなタンパク質たんぱくしつタンパク質たんぱくしつシミュレーションのリアルタイム可視かしをサポートしていた。 これにつづき、2010ねん5がつ25にちにはだい3世代せだいのFolding@homeのGPUクライアント(GPU3)がリリースされた。 GPU3は、GPU2との後方こうほう互換ごかんせいちながらも、より安定あんていせい効率こうりつせい柔軟じゅうなんせいすぐれた科学かがくてき能力のうりょくち、OpenCLフレームワークのうえにOpenMMを使用しようしていた。 これらのGPU3クライアントはオペレーティングシステムLinuxmacOSをネイティブにはサポートしていなかったが、Nvidiaのグラフィックカードを搭載とうさいしたLinuxユーザーはWineソフトウェアアプリケーションをかいしてGPU3を実行じっこうすることができた。 GPUは、Folding@homeのFLOPSなかもっと強力きょうりょくなプラットフォームであることにわりはない。 2012ねん11がつ現在げんざい、GPUクライアントは、プロジェクト全体ぜんたいのx86 FLOPSスループットの87%をめている。

LinuxでのNvidiaとAMDのグラフィックスカードのネイティブサポートは、CUDAではなくOpenCLを使用しようするFahCore 17で導入どうにゅうされた。

PlayStation 3[編集へんしゅう]

2007ねん3がつから2012ねん11がつまで、Folding@homeはPlayStation 3計算けいさん能力のうりょく利用りようしていた。 その開始かいしにおいて、メインのストリーミングCellプロセッサ(Cell Broadband Engine)は、いくつかの計算けいさんでPCの20ばい速度そくど実現じつげんし、Xbox 360のようなほかのシステムにはない処理しょり能力のうりょく発揮はっきしていた。 PS3 の高速こうそくせい効率こうりつせいは、アムダールの法則ほうそくもとづいて最適さいてきする価値かちのあるほか機会きかいをもたらし、計算けいさん効率こうりつ全体ぜんたいてき精度せいどあいだのトレードオフをおおきくえ、より複雑ふくざつ分子ぶんしモデルをわずかな計算けいさんコストで使用しようできるようにした。 これにより Folding@homeは、方法ほうほうでは計算けいさんじょう不可能ふかのうであった生物せいぶつ医学いがくてき計算けいさん実行じっこうできた。

PS3クライアントは、ソニーとパンデ研究けんきゅうしつ共同きょうどう開発かいはつにより開発かいはつされ、2007ねん3がつ23にちにスタンドアロンのクライアントとしてリリースされた。 このリリースにより、「Folding@home」は、PS3を利用りようしたはじめての分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトとなった。 翌年よくねん2がつ5にちにはプロジェクト参加さんかしゃが100まんにん突破とっぱ[37]、9月18にちには、PS3クライアントが「Life with PlayStation英語えいごばん」のチャネルに登場とうじょう、11月6にちにはグッドデザインしょう金賞きんしょう受賞じゅしょうした[38][39]導入どうにゅう当時とうじは、計算けいさん種類しゅるいえば、CPUの柔軟じゅうなんせいとGPUの高速こうそくせい中間ちゅうかん位置いちしていた。 ただし、パソコンうえ動作どうさするクライアントとはことなり、「Folding@home」を起動きどうしたPS3では操作そうさおこなうことができなかった。 PS3の統一とういつされたコンソール環境かんきょうは、テクニカルサポート容易よういにし、「Folding@home」をより使つかいやすくした。 また、PS3にはGPUへのデータストリーミング機能きのうがあり、現在げんざいタンパク質たんぱくしつ動力どうりょくがく原子げんしレベルでリアルタイムに可視かしするために使用しようされていた。

ソニーは、2012ねん11月6にち、「Life with PlayStation」で提供ていきょうしているPS3クライアント「Folding@home」およびそののサービスのサポートを終了しゅうりょうした。 Folding@home」は、5ねん7ヶ月かげつあいだで1,500まんにん以上いじょうのユーザーが1おく時間じかん以上いじょう計算けいさんりょう提供ていきょうし、病気びょうき研究けんきゅうおおきく貢献こうけんしてきた。 パンデ研究けんきゅうしつとのはないの結果けっか、ソニーはこのプロジェクトを終了しゅうりょうすることを決定けっていした。 パンデは、PlayStation 3のクライアントを、このプロジェクトにとって「ゲームチェンジャー」だとかんがえていた。

マルチコア処理しょりクライアント[編集へんしゅう]

Folding@homeは、最新さいしんマルチコア・プロセッサ並列へいれつ計算けいさん能力のうりょく利用りようすることができ、複数ふくすうのCPUコアを同時どうじ使用しようすることで、シミュレーション全体ぜんたいをはるかにはや完了かんりょうさせることができる。 おな時間じかんでよりながいシミュレーション軌道きどう実行じっこうし、まただい規模きぼなシミュレーションをおおくの別々べつべつのプロセッサに分散ぶんさんするという従来じゅうらい困難こんなん軽減けいげんするために、この方法ほうほう科学かがくてきにも価値かちのある方法ほうほうである。 Journal of Molecular Biology英語えいごばん掲載けいさいされた2007ねん論文ろんぶんでは、マルチコア処理しょり依存いぞんすることで、実験じっけんてきなフォールディングと一致いっちしたビリンタンパク質たんぱくしつ一部いちぶのフォールディングを、シングルプロセッサクライアントで可能かのうなものよりもやく10ばいながくシミュレーションしたと報告ほうこくされた。

2006ねん11月、だいいち世代せだい対称たいしょうがたマルチプロセシング(SMP)クライアントがオープンベータテストよう公開こうかいされ、これはSMP1とばれた。 このクライアントは、並列へいれつ処理しょりMessage Passing Interface(MPI)通信つうしんプロトコルを使用しようしていたが、当時とうじのGROMACSコアは複数ふくすうスレッドでの使用しよう想定そうていしていなかった分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトでMPIを使用しようしたはじめてのこころみであった。 クライアントはLinuxやmacOSなどのUnixベースのOSでは問題もんだいなく動作どうさしたものの、Windowsでは問題もんだいがあった。 2010ねん1がつ24にち、SMPクライアントのだい世代せだいであり、SMP1の後継こうけいとなるSMP2がオープンベータとしてリリースされ、複雑ふくざつなMPIは、より信頼しんらいせいたかスレッドベースの実装じっそうえられた。

SMP2は、異常いじょうおおきく、計算けいさん集約しゅうやくてきで、科学かがくてき優先ゆうせん非常ひじょうたかタンパク質たんぱくしつをシミュレートするように設計せっけいされた、Big Advanced(bigadvまたはBAとも)ワークユニットの特別とくべつなカテゴリのトライアルをサポートしていた。 これらのユニットは、もともと最低さいてい8のCPUコアを必要ひつようとしていたが、2012ねん2がつ7にちに16のCPUコアにげられた。 標準ひょうじゅんてきなSMP2ワークユニットよりもハードウェア要件ようけんえたことにくわえて、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)インターネットの帯域たいいきはばなどのシステムリソースが必要ひつようとなった。 その見返みかえりとして、これらを実行じっこうするユーザは、SMP2のボーナスポイントシステム以上いじょうの20%たか報酬ほうしゅうあたえられた。 bigadvカテゴリでは、以前いぜんはスーパーコンピュータのクラスタ使用しようしなければならず、Folding@homeじょうではのどこでも実行じっこうできなかったような、とく要求ようきゅうきびしいシミュレーションを長時間ちょうじかん実行じっこうすることができた。 ところが、bigadvユニットを実行じっこうできるハードウェアをっているおおくのユーザは、からCPUコアの最小さいしょう増加ぞうかしたときに、そのハードウェアがbigadvワークユニットには適格てきかくとみなされ、通常つうじょうのSMPワークユニットしか実行じっこうできなくなってしまった。 このことはプログラムに多額たがく資金しきん投資とうししたおおくのユーザーをいらたせ、bigadvの目的もくてきでハードウェアが使用しようできなくなってしまった。 その結果けっか、パンデは2014ねん1がつにbigadvプログラムを2015ねん1がつ31にち終了しゅうりょうすることを発表はっぴょうした。

V7クライアント[編集へんしゅう]

Windows 7うえ実行じっこうされたノービスモードのV7クライアントのサンプル画面がめん。 V7では、さまざまなコントロールやユーザーの詳細しょうさい情報じょうほうくわえて、その状態じょうたい計算けいさん進捗しんちょくじょうきょう、ETA(終了しゅうりょうまでの予測よそく時間じかん)、クレジットポイント、識別しきべつ番号ばんごう説明せつめいなどのワークユニットの情報じょうほう表示ひょうじされた。

V7クライアントは、Folding@homeクライアントソフトのだい7世代せだいとなる最新さいしんばんで、WindowsmacOSLinux OSよう以前いぜんのクライアントを全面ぜんめんてきえ、統一とういつしたものである。 2012ねん3がつ22にちにリリースされたV7は、以前いぜんのクライアントと同様どうように、バックグラウンドでFolding@homeを非常ひじょうひく優先ゆうせん動作どうささせることができ、のアプリケーションが必要ひつようおうじてCPUリソースを使用しようできるようになっている。 それは、インストール、起動きどう操作そうさ初心者しょしんしゃにとってよりユーザーフレンドリーになるように設計せっけいされており、以前いぜんのクライアントよりも研究けんきゅうしゃ科学かがくてき柔軟じゅうなんせい提供ていきょうしている。 V7では、Trac使用しようしてバグチケットを管理かんりし、ユーザが開発かいはつプロセスをてフィードバックを提供ていきょうできるようにしている。

V7は、マルチコアに対応たいおうした1個いっこのCPUスロットと、対応たいおうGPUごとにGPUスロットをもうけ、複数ふくすうのCPUコアを利用りようするように設計せっけいされた。

V7は、4つの統合とうごうされた要素ようそから構成こうせいされている。 ユーザは通常つうじょう、FAHControlと名付なづけられたV7のオープンソースGUIを使用しようして操作そうさする。 これには、初心者しょしんしゃけ、上級じょうきゅうしゃけ、およびエキスパートけのユーザ・インタフェースモードがあり、1だいのコンピュータから多数たすうのリモート・フォールディング・クライアントを監視かんし設定せってい、および制御せいぎょする機能きのうそなえている。 FAHControlは、かくFAHSlot(たんにスロットとばれる)を管理かんりするFAHClientというバックエンドアプリケーションにたいして指示しじをする。 かくスロットは、単独たんどくでワークユニットのダウンロード、シミュレーション処理しょり、その結果けっかのアップロードをおこなうことができる。 かつては別個べっこであった、Folding@home V6ユニプロセッサばん、SMPばん、GPUコンピュータクライアントのわりとして機能きのうする。 そしてPS3のビューアをしたFAHViewerは、現在げんざい処理しょりちゅうタンパク質たんぱくしつのリアルタイム3Dレンダリングを表示ひょうじする。

Google Chrome[編集へんしゅう]

2014ねんには、Google ChromeChromiumのWebブラウザようのクライアントがリリースされ、ユーザがFolding@homeをWebブラウザで実行じっこうできるようになった。 このクライアントでは、ChromiumベースのWebブラウザに搭載とうさいされているGoogle Native Client(NaCl)機能きのう利用りようして、ユーザーのマシンじょうサンドボックスでFolding@homeのコードをネイティブにちか速度そくど実行じっこうしていた。 NaClの段階だんかいてき廃止はいしとFolding@homeでの変更へんこうにより、Webクライアントは2019ねん6がつ恒久こうきゅうてきにシャットダウンされた。

Android[編集へんしゅう]

2015ねん7がつAndroid 4.4 KitKat以降いこう搭載とうさいした端末たんまつ対象たいしょうとしたAndroid携帯けいたい電話でんわけのクライアントがGoogle Play公開こうかいされた。 その、2018ねん2がつ16にち、ソニーと共同きょうどう提供ていきょうしていたAndroidクライアントがGoogle Playから削除さくじょされた。将来しょうらいてきにはオープンソースの代替だいたいばん提供ていきょうする計画けいかく発表はっぴょうされた。

分子ぶんしシミュレータとの比較ひかく[編集へんしゅう]

Rosetta@home[編集へんしゅう]

Rosetta@homeは、タンパク質たんぱくしつ構造こうぞう予測よそく目的もくてきとした分散ぶんさんコンピューティングプロジェクトであり、もっと正確せいかくさん構造こうぞう予測よそくひとつである。 Rosettaのソフトウェアからられる立体りったいはい状態じょうたい利用りようして、Folding@homeシミュレーションの出発しゅっぱつてんとしてマルコフ状態じょうたいモデルの初期しょき利用りようすることができる。 ぎゃくに、(Rosettaの)構造こうぞう予測よそくアルゴリズムは、ねつ力学りきがくてきモデルと運動うんどうろんてきモデル、およびタンパク質たんぱくしつフォールディングシミュレーションのサンプリングの側面そくめんから改善かいぜんすることができる。 Rosettaは最終さいしゅうてきなフォールディング状態じょうたい予測よそくするだけで、どのようにフォールディングが進行しんこうするかを予測よそくするものではないため、Rosetta@homeとFolding@homeは補完ほかんてきなものであり、まったことなる分子ぶんし問題もんだい対応たいおうする。

Anton[編集へんしゅう]

Anton分子ぶんし動力どうりょくがくシミュレーションのために構築こうちくされた専用せんようのスーパーコンピュータである。 2011ねん10がつ時点じてんで、AntonとFolding@homeは2つのもっと強力きょうりょく分子ぶんし動力どうりょくがくシステムであった。 Antonは、2010ねんにミリびょう領域りょういきたっした単一たんいつ分子ぶんし軌道きどうのように、非常ひじょう計算けいさんコストのかかる単一たんいつの(ながい)分子ぶんし軌道きどう生成せいせいする能力のうりょくにおいてユニークであった。 このようななが軌跡きせきは、いくつかのタイプの生化学せいかがくてき問題もんだいとく役立やくだつ。 しかし、Antonは解析かいせきにマルコフ状態じょうたいモデル(MSM)を使用しようしていない。 2011ねん、パンデ研究けんきゅうしつは、2つの100µsのAntonシミュレーションからMSMを構築こうちくし、Antonの従来じゅうらい解析かいせきではえなかった代替だいたいのフォールディング経路けいろ発見はっけんした。 その結果けっかかぎられたかずなが軌道きどうから構築こうちくされたMSMと、おおくのみじか軌道きどうから構築こうちくされたMSMのあいだには、ほとんどちがいがないと結論けつろんづけた。 2011ねん6がつ、Folding@homeは、Antonと比較ひかくした手法しゅほうをより適切てきせつ判断はんだんするために、Antonシミュレーションのサンプリングを追加ついかした。 ただし、Folding@homeのみじか軌道きどう分散ぶんさんコンピューティングや並列へいれつ手法しゅほうてきしているのとはことなり、なが軌道きどうタンパク質たんぱくしつ位相いそう空間くうかん十分じゅうぶんにサンプリングするために適応てきおうてきサンプリングを必要ひつようとしない。 このため、Antonのシミュレーション手法しゅほうとFolding@homeのシミュレーション手法しゅほうわせることで、この空間くうかんのより完全かんぜんなサンプリングが可能かのうになる可能かのうせいがある。

歴史れきし[編集へんしゅう]

  • 2000ねん10がつ1にち、プロジェクトを開始かいし
  • 2007ねん3がつ22にちPlayStation 3(PS3)に対応たいおう[40]。3にちには700T(テラFLOPS以上いじょう演算えんざん能力のうりょく獲得かくとくし、従来じゅうらい1ねん以上いじょうかかっていた複雑ふくざつなシミュレーションがすう週間しゅうかん完了かんりょうした[41]
  • 2007ねん9がつ16にち分散ぶんさんコンピューティング史上しじょうはつとなる1P(ペタ)FLOPSに到達とうたつ(1秒間びょうかんに1000ちょうかい演算えんざん能力のうりょく)。
  • 2007ねん9がつ24にち、PS3クライアントのみの合計ごうけい当時とうじのスーパーコンピュータの能力のうりょく匹敵ひってきする1PFLOPSに到達とうたつ[42]
  • 2007ねん11月1にち世界一せかいいち強力きょうりょく分散ぶんさんコンピューティングネットワークとしてギネス世界せかい記録きろく認定にんてい[43][44]
  • 2008ねん11月9にち現在げんざいけい4.247PFLOPS、うちGPU処理しょり能力のうりょくは2.226PFLOPS、PS3による処理しょり能力のうりょくは1.733PFLOPS。
  • 2012ねん3がつ23にち現在げんざいけい5.427PFLOPS。
  • 2012ねん10がつ22にち、PS3クライアントの終了しゅうりょう発表はっぴょう(2012ねん11月6にち終了しゅうりょうべ1500まんにんのユーザーが参加さんかした)[45]
  • 2015ねん1がつ13にちAndroid 4.4以上いじょう搭載とうさいのスマートフォン/タブレットけクライアントアプリをリリース。当初とうしょXperiaシリーズのみ対応たいおう、のち条件じょうけんたす機種きしゅにも対応たいおう
  • 2016ねん1がつ6にち現在げんざいけい80.79PFLOPS、うちGPUの処理しょり能力のうりょくは78PFLOPS(96%)。GPUはNVIDIAのFermiが8わりめる。
  • 2020ねん2がつ27にち新型しんがたコロナウイルス感染かんせんしょう(COVID-19)にたいするみを発表はっぴょう[46]
  • 2020ねん3がつ25にち分散ぶんさんコンピューティング史上しじょうはつとなる1E(エクサ)FLOPS(1秒間びょうかんに100きょうかい演算えんざん能力のうりょく)に到達とうたつ
  • 2020ねん4がつ、2.4EFLOPS(毎秒まいびょう240きょうかい到達とうたつ。これは世界せかいTOP500合計ごうけい上回うわまわ能力のうりょく

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ボーナスポイントが有効ゆうこうなのかは、Folding@home Bonus Statusページでユーザーめいかパスキーを入力にゅうりょくすることで確認かくにんすることができる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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  45. ^ 「Life with PlayStation®」終了しゅうりょうのおらせ
  46. ^ Greg Bowman (2020ねん2がつ27にち). “Folding@home takes up the fight against COVID-19 / 2019-nCoV”. Folding@home. 2020ねん4がつ4にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]