出陣しゅつじん学徒がくと壮行そうこう早慶そうけい戦せん

1943年ねん 出陣しゅつじん学徒がくと壮行そうこう早慶そうけい戦せん

出陣しゅつじん学徒がくと壮行そうこう早慶そうけい戦せん
慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく 早稲田大学わせだだいがく 1 10
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R 慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 早稲田大学わせだだいがく 1 0 4 2 0 0 3 0 × 10
開催かいさい日時にちじ	1943年ねん10月がつ16日にち (1943-10-16)
開催かいさい球場きゅうじょう	戸塚とつか球場きゅうじょう
開催かいさい地ち	日本にっぽん

出陣しゅつじん学徒がくと壮行そうこう早慶そうけい戦せん（しゅつじんがくとそうこうそうけいせん）は、早稲田大学わせだだいがく野球やきゅう部ぶ・慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく野球やきゅう部ぶにより1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）10月16日にちに、早稲田大学わせだだいがくの戸塚とつか球場きゅうじょうで行おこなわれた野球やきゅうの試合しあい。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん期間きかんにおけるアマチュア野球やきゅう最後さいごの試合しあいとして知しられ、別名べつめいを「最後さいごの早慶そうけい戦せん」という。

試合しあいから65年ねん目めとなる2008年ねんには相次あいついで舞台ぶたい化か、映画えいが化かされ、関連かんれんする書籍しょせきも刊行かんこうされた。

東京とうきょう六ろく大学だいがく野球やきゅうの中止ちゅうし

日にち中ちゅう戦争せんそう（支ささえ那な事変じへん）の開始かいしに伴ともない強つよまっていた戦時せんじ色しょくは1941年ねんの太平洋戦争たいへいようせんそう開戦かいせんによりさらに強つよまっていた。敵国てきこくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで生うまれた野球やきゅうは軍事ぐんじ教練きょうれんに関係かんけいがないこともあって、敵性てきせいスポーツとして弾圧だんあつの対象たいしょうとなっており、中等ちゅうとう学校がっこう野球やきゅう・都市とし対抗たいこう野球やきゅうは1942年ねん限かぎりで中止ちゅうしに追おい込こまれた。

そして東京とうきょう六ろく大学だいがく野球やきゅうでも平日へいじつの試合しあい開催かいさい禁止きんしから始はじまって1940年ねんから秋季しゅうきリーグ戦せんは各校かくこう1回戦かいせん総そう当あたり、1日にち3カード実施じっし＝約やく1か月げつで日程にっていを消化しょうかさせられるという縮小しゅくしょう状態じょうたいに追おい込こまれていた。

そして1942年ねん10月25日にちの秋季しゅうきリーグ戦せん・早大そうだいvs立大りつだい戦せんを最後さいごに、1943年ねん4月がつ7日にちにはついに文部省もんぶしょうがリーグ解散かいさん令れいを強行きょうこうした。この為ため、東京とうきょう六ろく大学だいがく野球やきゅう加盟かめい校こうは次第しだいに活動かつどう停止ていしに追おい込こまれてしまったものの、早大そうだいと慶大けいだいの両校りょうこうは辛かろうじて練習れんしゅうを続つづけていた。

試合しあい開催かいさいまでの苦難くなん

小泉こいずみ信三しんぞう

飛田ひだ穂みのる洲しゅう

太平洋戦争たいへいようせんそうの開始かいし直後ちょくごは華々はなばなしい戦果せんかを挙あげていた日本にっぽん軍ぐんも、そのうちに各地かくちで敗退はいたいを繰くり返かえしていくようになった。1943年ねんには日本にっぽん近海きんかいでアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの潜水せんすい艦かんが日本にっぽんの資源しげん輸送ゆそう船せんを襲おそうようになるなど、すでに戦局せんきょくも深刻しんこくなものになっており、10月には法文学部ほうぶんがくぶ系けい学生がくせいの徴兵ちょうへい延期えんき停止ていしの命令めいれいが下くだるまでになった（学徒がくと出陣しゅつじんの項こう参照さんしょう）。

「ひとたび戦地せんちに赴おもむけば、生いきて故郷こきょうの、そして学舎がくしゃの土どを踏ふむことは叶かなわないかもしれない、せめて最後さいごに試合しあいを、出来できるならば早稲田わせだと試合しあいをしたい……」

こうした思おもいから、慶大けいだい野球やきゅう部ぶ主将しゅしょう阪井さかい盛一もりいちは部長ぶちょう平井ひらい新しんを通つうじて塾長じゅくちょう小泉こいずみ信三しんぞうに早慶そうけい戦せんの開催かいさいを申もうし出でた。このとき文部省もんぶしょうからの通達つうたつにより、対外たいがい試合しあいの実施じっしは大学だいがく総長そうちょうの方針ほうしんに任まかせられていたのである。

「出陣しゅつじんする学徒がくとたちに何なにか餞はなむけを、それには早慶そうけい戦せんがふさわしい……」

そう考かんがえた小泉こいずみはこの申もうし出でを快諾かいだく、阪井さかい・平井ひらいは連盟れんめい理事りじの早大そうだい野球やきゅう部ぶ顧問こもん飛田ひだ穂みのる洲しゅう（同どう部ぶ初代しょだい監督かんとく）を訪おとずれ、学生がくせい野球やきゅうの聖地せいち：明治めいじ神宮じんぐう野球やきゅう場じょうで早慶そうけい戦せんを行おこなうことについて申もうし入いれた。小泉こいずみのこの一いち戦せんにかける決意けついは固かたく、文部省もんぶしょうを通とおさねばならない神宮球場じんぐうきゅうじょうの使用しようについては自分じぶんが交渉こうしょうに当あたっても良よい、とまで言いった。この申もうし出でに早大そうだい野球やきゅう部ぶは大おおいに喜よろこび、慶大けいだい野球やきゅう部ぶも急遽きゅうきょ帰郷ききょう中ちゅうの選手せんしゅを呼よび戻もどして練習れんしゅうを再開さいかいした。

ところが試合しあい実現じつげんに大おおきな障壁しょうへきが立たちはだかった。早大そうだい当局とうきょくが難色なんしょくを示しめしたのである。軍部ぐんぶや文部省もんぶしょうの弾圧だんあつに抗こうしきれず、試合しあいの申もうし出でを応諾おうだく出来できないでいたのである。そうしているうちに学徒がくと出陣しゅつじんの日ひは迫せまる。早大そうだい野球やきゅう部ぶは飛田ひだだけでなく部長ぶちょう外岡とのおか茂しげる十郎じゅうろう、マネージャー相田あいだ暢とおる一いちらが大学だいがく当局とうきょくを必死ひっしに説得せっとくするが大学だいがく当局とうきょくは煮にえ切きらない態度たいどを見みせ続つづける。実じつはこの年としの春はるにも慶應義塾けいおうぎじゅくから早慶そうけい戦せん開催かいさいの申もうし出でがあったが、同様どうように大学だいがく当局とうきょくの反対はんたいに遭あい実現じつげんできずに終おわっていた。田中たなか穂積ほづみ総長そうちょうが難色なんしょくを示しめし、外岡とのおからが必死ひっしの説得せっとく工作こうさくを行おこない報國ほうこく隊たいの部隊ぶたい長ちょう会議かいぎで挙行きょこう賛成さんせいが過半数かはんすうを上回うわまわる結果けっかとなっても、結局けっきょく田中たなか総長そうちょうが開催かいさいを許ゆるさなかったのである。

こうした事情じじょうを察さっして慶大けいだい側がわも、「試合しあい場じょうが神宮じんぐうで都合つごうが悪わるければ日吉ひよしの慶大けいだいグラウンドでも早大そうだいの戸塚とつか球場きゅうじょうでも構かまわない」との配慮はいりょを見みせた。それでも早大そうだい当局とうきょくは、戸塚とつか球場きゅうじょうで実施じっしして事故じこでも起おきたら誰だれが責任せきにんを取とるのか、と一向いっこうに試合しあい実施じっしを認みとめない。ついに早大そうだい野球やきゅう部ぶは大学だいがくの反対はんたいを押おし切きり野球やきゅう部ぶとして責任せきにんを持もって試合しあいを挙行きょこうすることを決意けついした。それでも、軍部ぐんぶ・官僚かんりょうの機嫌きげんを取とり何なにとしても挙行きょこうを阻はばもうとする大学だいがく側がわとの厳きびしいやりとりは、結局けっきょく試合しあい当日とうじつまで及およんだ。

圧力あつりょくを跳はね返がえしての試合しあい強行きょうこう

試合しあい当日とうじつの10月がつ16日にちが間近まぢかに迫せまっても、早大そうだい当局とうきょくは試合しあいを許可きょかしなかった。ところが新聞しんぶんに10月がつ16日にち13時じ試合しあい開始かいしとの記事きじが出でた。出だし抜ぬかれた形かたちになった早大そうだい当局とうきょくは、試合しあい開始かいしを午前ごぜん8時じからとし正午しょうごまでには試合しあいを終おえるよう早大そうだい野球やきゅう部ぶに要求ようきゅうした。ひとたび開始かいしにこぎ着つけたのだから選手せんしゅたちがこれに応おうじるはずもなく、練習れんしゅうを行おこない慶大けいだい野球やきゅう部ぶと応援おうえん学生がくせいたちを迎むかえ入いれるうちに、正午しょうごに試合しあいが開始かいしされた。この試合しあいは一般いっぱんには公開こうかいせず両校りょうこう学生がくせいと部員ぶいんの家族かぞく、野球やきゅう部ぶOBなど関係かんけい者しゃのみに開放かいほうされた。戸塚とつか球場きゅうじょうに着ついた小泉こいずみ塾長じゅくちょうは早大そうだい側がわによる特別とくべつ席せきへの案内あんないを「私わたしは学生がくせいと一緒いっしょの方ほうが楽たのしいのです」（『早稲田大学わせだだいがく野球やきゅう部ぶ五ご十じゅう年ねん史し』）と断ことわり学生がくせい席せきに着席ちゃくせきした。

出場しゅつじょうメンバーとスコア

慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく
打順だじゅん	守備しゅび	選手せんしゅ名めい	出身しゅっしん校こう	卒業そつぎょう後ご・戦後せんごの主おもな進路しんろ
1	（左ひだり）	矢野やの鴻ひろし次じ	下関しものせき商業しょうぎょう	戦後せんごに復学ふくがく。大洋たいよう漁業ぎょぎょう
2	（二に）	山県やまがた将すすむ泰やすし	広島ひろしま商業しょうぎょう	戦後せんごに復学ふくがく。植うえ良りょう組ぐみ→大昭和製紙だいしょうわせいし
3	（捕と）	阪井さかい盛一もりいち（主将しゅしょう）	滝川たきがわ中なか	慶大けいだい野球やきゅう部ぶ監督かんとく（1949年ねん - 1955年ねん）
4	（中なか）	別当べっとう薫かおる	甲きのえ陽よう中なか	戦後せんごに復学ふくがく。全ぜん大阪おおさか→大阪おおさかタイガース→毎日まいにちオリオンズ
5	（右みぎ）	大島おおしま信雄のぶお	岐阜ぎふ商業しょうぎょう	戦後せんごに復学ふくがく。大塚おおつか産業さんぎょう→松竹しょうちくロビンス→中日ちゅうにちドラゴンズ
6	（一いち）	長尾ながお芳夫よしお	東邦とうほう商業しょうぎょう	愛知あいち産業さんぎょう→電電でんでん東海とうかい
7	（投とう）	久保木くぼき清きよし	広島ひろしま商業しょうぎょう	戦後せんごに復学ふくがく。山崎やまざき産業さんぎょう→大昭和製紙だいしょうわせいし→読売よみうりジャイアンツ→電電でんでん東京とうきょう→日本にっぽん鉱業こうぎょう佐賀さが関せき
	投とう	高松たかまつ利夫としお	東京とうきょう市し商しょう	菊水きくすいクラブ→大映だいえいスターズ
	代打だいだ	加藤かとう進すすむ	愛知あいち一いち中なか	戦後せんごに復学ふくがく。藤倉ふじくら電線でんせん→愛知あいち産業さんぎょう→中日ちゅうにちドラゴンズ
8	（遊ゆう）	河内かわうち卓司たくし	広島ひろしま一いち中なか	戦後せんごに復学ふくがく。大洋たいよう漁業ぎょぎょう→毎日まいにちオリオンズ→高橋たかはし・トンボユニオンズ
9	（三さん）	増山ますやま桂一郎けいいちろう	敦賀つるが商業しょうぎょう	戦後せんごに復学ふくがく。大塚おおつか産業さんぎょう→大映だいえいスターズ→日本石油にほんせきゆ

	1	2	3	4	5	6	7	8	9	R
慶応義塾大学けいおうぎじゅくだいがく	0	1	0	0	0	0	0	0	0	1
早稲田大学わせだだいがく	1	0	4	2	0	0	3	0	X	10

早稲田大学わせだだいがく
打順だじゅん	守備しゅび	選手せんしゅ名めい	出身しゅっしん校こう	卒業そつぎょう後ご・戦後せんごの主おもな進路しんろ
1	（二に）	森もり武雄たけお	岐阜ぎふ商業しょうぎょう	大日本土木だいにほんどぼく→岐阜ぎふ商業しょうぎょう野球やきゅう部ぶ監督かんとく→川島かわしま紡績ぼうせき→岐阜ぎふカンツリー倶楽部くらぶ
2	（捕と）	伴ばん勇いさむ資し	福岡ふくおか工業こうぎょう	西日本鉄道にしにっぽんてつどう→西鉄にしてつライオンズ→東急とうきゅう→大映だいえい→柳川やながわ商業しょうぎょう・国士舘大学こくしかんだいがく野球やきゅう部ぶ監督かんとく
3	（左ひだり）	近藤こんどう清きよし	岐阜ぎふ商業しょうぎょう	1945年ねん4月がつ28日にち、神風かみかぜ特攻隊とっこうたい員いんとして出撃しゅつげきし、沖縄おきなわで戦死せんし
4	（一いち）	笠原かさはら和夫かずお（主将しゅしょう）	市岡いちおか中なか	大野おおの大喜だいぎクラブ→北新きたしん化学かがく→全ぜん大阪おおさか→南海なんかいホークス→高橋たかはし・トンボ・大映だいえいユニオンズ
5	（中なか）	吉江よしえ一行いっこう	磐城いわき中ちゅう	1945年ねん10月がつ3日にち、戦病死せんびょうし
6	（投とう）	岡本おかもと忠之ただゆき	扇町おうぎまち商業しょうぎょう	戦後せんごに復学ふくがくして主将しゅしょうを務つとめ、1947年ねんに藤倉ふじくら電線でんせんに入社にゅうしゃ。1948年ねん、結核けっかくにより死去しきょ
7	（三さん）	鶴田つるた鉦かね二郎じろう	岡崎おかざき中なか	戦後せんごに復学ふくがく
8	（右みぎ）	伊藤いとう利夫としお	岐阜ぎふ中ちゅう	大日本土木だいにほんどぼく→近鉄きんてつパールス→阪急はんきゅうブレーブス→岐阜ぎふ高校こうこう野球やきゅう部ぶ監督かんとく
9	（遊ゆう）	永谷ながたに利幸としゆき	平安へいあん中ちゅう	中ちゅう支ささえ戦線せんせんで戦死せんし

試合しあいは早大そうだい打線だせんが慶大けいだいの久保木くぼき投手とうしゅを打うち崩くずして10-1で勝利しょうりした。

試合しあい後ごの記念きねん写真しゃしん

早大そうだい当局とうきょくが開催かいさいになかなか応おうじないことから、試合しあい実現じつげんの可能かのう性せいが薄うすいと見みた慶大けいだいは選手せんしゅたちを一旦いったん故郷こきょうに帰かえしていた（家族かぞくたちと最後さいごの別わかれをさせるため）。学徒がくと出陣しゅつじんギリギリの段階だんかいで試合しあいができそうなことがわかり急遽きゅうきょ選手せんしゅを呼よび戻もどしたものの、慶大けいだいにしてみれば練習れんしゅう不足ふそくにエース大島おおしまの故障こしょうがあり、この結果けっかは致いたし方かたないところでもあった。

しかし、両校りょうこうは勝敗しょうはいを度外視どがいしして思おもう存分ぞんぶん野球やきゅうを楽たのしんだ。戸塚とつか球場きゅうじょうに応援おうえんに詰つめかけた学生がくせいたちもそれは同おなじであった。両校りょうこうから校歌こうか・応援おうえん歌かとともに「ありがとう」「戦場せんじょうで会あおう」の声こえが交かわされる。慶大けいだい生せいが『都との西北せいほく』を、早大そうだい生せいが『若わかき血ち』を歌うたい上あげるうちに両校りょうこうのエール交換こうかんが終おわると、どこからともなく「海うみ行いかば 水漬みずく屍かばね」の歌声うたごえ、それはやがて球場きゅうじょう全体ぜんたいに鳴なり響ひびいたのである。

早大そうだい野球やきゅう部ぶは大学だいがく当局とうきょくとの交渉こうしょうに苦闘くとうしながらも、この日ひのためにグラウンドを整備せいびし、便所べんじょにいたるまで綺麗きれいに磨みがき上あげて慶大けいだいを迎むかえた。慶大けいだいもこれに応こたえ、小泉こいずみ塾長じゅくちょうが座布団ざぶとん代かわりの新聞紙しんぶんしをきれいに畳たたみ、ポケットに詰つめ込こんで立たち上あがると、学生がくせいたちも紙かみくず一ひとつ残のこさず清掃せいそうして戸塚とつか球場きゅうじょうを後のちにしたのである。

その後ご

還かえらざる学友がくゆうの碑いしぶみ
（慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく三田みたキャンパス）

試合しあいから5日にち後ごの10月21日にちには激はげしい雨あめの中なか、明治めいじ神宮じんぐう外苑がいえん競技きょうぎ場じょう（現げん国立こくりつ競技きょうぎ場じょう）で出陣しゅつじん学徒がくと壮行そうこう式典しきてんが挙行きょこうされ、多おおくの学生がくせいたちが出征しゅっせいし、両校りょうこうの野球やきゅう部員ぶいんにも戦死せんしした者ものが出でた（上記じょうきスターティングメンバーでは早大そうだいの近藤こんどう・永谷ながたにが戦死せんし、吉江よしえも戦争せんそうで患わずらい故郷こきょうで闘病とうびょうの末すえに亡なくなり、ベンチにいた控ひかえ捕手ほしゅの壺井つぼい重治しげはる、控ひかえ投手とうしゅの桜さくら内ない一いちを含ふくむ5名めいが戦没せんぼつ）。

1945年ねん8月がつ15日にち、終戦しゅうせんの後のち、ニッポンの野球やきゅうの復活ふっかつを告つげたのは同年どうねん10月28日にちに開催かいさいされた明治めいじ神宮じんぐう野球やきゅう場じょうでの全ぜん早慶そうけい戦せんであった。戦争せんそう中ちゅう、飛田ひだ・吉江よしえら早大そうだい野球やきゅう部ぶの関係かんけい者しゃが必死ひっしになって野球やきゅう用具ようぐを保管ほかんし続つづけたことが、戦後せんごの野球やきゅう復活ふっかつを早はやめる原動力げんどうりょくとなった。そして両校りょうこうの野球やきゅう部員ぶいんたちも出征しゅっせい先さきから、また内外ないがいの疎開そかい先さきから東京とうきょうへ戻もどり、再ふたたびグラウンドに立たった。

1946年ねんからは東京とうきょう六ろく大学だいがくリーグ戦せんも再開さいかい、神宮じんぐうの青空あおぞらに再ふたたび球たま音おんが谺こだまするようになった。

この試合しあいの記録きろくについては、長ながい間あいだ参加さんか者しゃ、観戦かんせん者しゃの証言しょうげんでしか語かたられていなかったが、早稲田わせだ野球やきゅう部ぶ第だい9代だい主将しゅしょうの浅沼あさぬま誉ほまれ夫おっとの長男ちょうなんがこの試合しあいを観戦かんせんしスコアブックを記録きろく、保存ほぞんしていており、2005年ねんに初はじめて公表こうひょうされ、これまでに伝つたえられてきた試合しあいの記録きろくと食くい違ちがっていた事ことが判明はんめいしている。

あの早慶そうけい戦せんで最後さいごにはならなかった。しかし、あの日ひの試合しあいに関かかわった人ひとたちは、『もう二度にどと生いきて野球やきゅうをやれまい』と悲壮ひそうな思おもいで、そして本当ほんとうにこれが最後さいごになるだろうという覚悟かくごを定さだめ置おいていた。そのため、戦後せんごとなっても1943年ねんのあの日ひ闘たたかった早慶そうけい戦せんをいつしか「最後さいごの早慶そうけい戦せん」と云いうようになった。

メディア化か

• 小説しょうせつ『英霊えいれいたちの応援おうえん歌か』（神山かみやま圭介けいすけ、1978年ねん、文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう）
• 映画えいが『英霊えいれいたちの応援おうえん歌か 最後さいごの早慶そうけい戦せん』（1979年ねん、監督かんとく：岡本おかもと喜八きはち、主演しゅえん：永島ながしま敏行としゆき）

  上記じょうきの小説しょうせつを原作げんさくとする映画えいが。東京とうきょう12チャンネル（現げん・テレビ東京てれびとうきょう）開局かいきょく15周年しゅうねん記念きねん映画えいがとして製作せいさくされた。この映画えいがでは試合しあいや早大そうだい野球やきゅう部ぶの練習れんしゅうシーンのロケーションに戸塚とつか球場きゅうじょう（安部あべ球場きゅうじょう）が使用しようされている。

• 舞台ぶたい『ラストゲーム 最後さいごの早慶そうけい戦せん』（2008年ねん6月がつ、主演しゅえん：D-BOYS）
• 映画えいが『ラストゲーム 最後さいごの早慶そうけい戦せん』（2008年ねん8月がつ、監督かんとく：神山かみやま征二郎せいじろう、主演しゅえん：渡辺わたなべ大まさる）

  この映画えいがでは戸塚とつか球場きゅうじょうにイメージが似にているということで長野ながの県けんの上田うえだ城跡じょうせき公園こうえん野球やきゅう場じょうをロケ地ちとして使用しようした。

• 『1943年ねん晩秋ばんしゅう 最後さいごの早慶そうけい戦せん』（早稲田大学わせだだいがく大学だいがく史し資料しりょうセンター・慶應義塾けいおうぎじゅく福澤ふくさわ研究けんきゅうセンター共編きょうへん、2008年ねん11月、教育きょういく評論ひょうろん社しゃ）

  この試合しあいの観戦かんせん者しゃが記録きろくしたスコアブックを元もとにした早稲田大学わせだだいがくと慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがくによる共同きょうどう研究けんきゅう書しょ。

• この他ほかにも『英霊えいれいたちの応援おうえん歌か』の文庫本ぶんこぼん化か、笠原かさはら・松尾まつお俊治しゅんじ共著きょうちょによる『最後さいごの早慶そうけい戦せん』（ベべースボすぼール・マガジン社るまがじんしゃ）の復刊ふっかんなど、試合しあいから65年ねん目めの節目ふしめを迎むかえた2008年ねんは「最後さいごの早慶そうけい戦せん」を後世こうせいに語かたり継つごうという活発かっぱつな動うごきがみられた。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 飛田ひだ穂みのる洲しゅう 『球道きゅうどう半はん世せい記き』（博ひろし友とも社しゃ、1951年ねん）
• 神山かみやま圭介けいすけ著ちょ『英霊えいれいたちの応援おうえん歌か：最後さいごの早慶そうけい戦せん』（文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、2008年ねん）ISBN 4-16-735406-3
• 笠原かさはら和夫かずお、松尾まつお俊治しゅんじ著ちょ『最後さいごの早慶そうけい戦せん : 学徒がくと出陣しゅつじん還かえらざる球たま友ともに捧ささげる』（ベべースボすぼール・マガジン社るまがじんしゃ、2008年ねん）ISBN 978-4-583-10106-4「学徒がくと出陣しゅつじん最後さいごの早慶そうけい戦せん：還かえらざる英霊えいれいに捧ささげる」（恒文社こうぶんしゃ、1980年ねん）の増ぞう訂てい
• 蒔田まきた陽平ようへい：ノベライズ、古田ふるた求もとむ：脚本きゃくほん『ラストゲーム 最後さいごの早慶そうけい戦せん』（角川書店かどかわしょてん、2008年ねん）ISBN 9784043907014