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坂上さかがみ氏し

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
坂上さかがみ氏し
於美阿志神社
祖神そしん阿知あち使し主ぬしを祭神さいじんとする於美阿おもね志こころざし神社じんじゃ
（奈良なら県けん高市たかいち郡ぐん明日香あすか村むら）
氏姓しせい 坂上さかがみ直じき
坂上さかがみ連れん
坂上さかがみ忌き寸すん
坂上さかがみ大だい忌き寸すん
坂上さかがみ大だい宿禰すくね
始祖しそ 阿知あち使し主ぬし
（後こう漢かん霊れい帝みかど後裔こうえい、東ひがし漢かん氏し祖そ）
出自しゅつじ 東ひがし漢かん氏し
氏し祖そ 坂上さかがみ志こころざし拏
種別しゅべつ 諸しょ蕃しげる
本ほん貫ぬき 大和やまと国こく添上そえかみ郡ぐん坂上さかがみ
著名ちょめいな人物じんぶつ 坂上さかがみ駒子こまこ
坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろ
坂上さかがみ是則これのり
坂上さかがみ望のぞむ城じょう
坂上さかがみ季き猛たけし
坂上さかがみ明あきら兼けん
坂上さかがみ頼よりゆき泰やすし
後裔こうえい 波多はた忌き寸すん
新家しんや忌き寸すん
田村たむら氏し（武家ぶけ）
平野ひらの氏し（地下ちか人じん）
末吉すえきち氏し（地下ちか人じん）
徳山とくやま氏し（武家ぶけ）
小島こじま氏し（武家ぶけ）
凡例はんれい / Category:氏し

坂上さかがみ氏し（さかのうえうじ）は、「坂上さかがみ」を氏しの名なとする氏族しぞく。略称りゃくしょうは「坂さか氏し（ばんし）」。姓せいはもと直じき、のちに連れん、忌き寸すん、大だい忌き寸すん、大だい宿禰すくね。渡来とらい系けい氏族しぞくである東ひがし漢かん氏しの阿知あち使し主ぬしを始祖しそとし、坂上さかがみ直志ただし拏を氏し祖そとして坂上さかがみ直ただし姓せいを称しょうした。


概要がいよう[編集へんしゅう]

代表だいひょう的てきな人物じんぶつに征夷大将軍せいいたいしょうぐんの坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろがおり[1]、田村たむら麻呂まろの後のちには史書ししょに見みえる中なかで陸奥むつ守まもるや陸奥みちのく介かい、鎮守ちんじゅ府ふ将軍しょうぐんや鎮守ちんじゅ府ふ副ふく将軍しょうぐんなど、陸奥みちのく国こくの高官こうかんが多おおく輩出はいしゅつされている[2]。『日本にっぽん三さん代だい実録じつろく』[注ちゅう 1]坂上さかがみ瀧たき守まもるの卒そつ伝でんに「坂さか氏し之の先さき、世よ伝でん将しょう種しゅ、瀧たき守まもる幹みき略りゃく、不ふ墜家風ふう」とあり、坂上さかがみ氏しが歩ふ射しゃや騎射きしゃなど武芸ぶげい（弓馬きゅうば）を家風かふうとし、世よに将はた種たねを伝つたえたことが明記めいきされている。小野おの氏しと並ならんで子孫しそんは代々だいだい、武門ぶもんを家業かぎょうとして朝廷ちょうていに仕つかえる[3][4][5]。

また清水寺きよみずでら別当べっとう、右みぎ兵衛ひょうえ督とく、大和やまと守まもる、明あかり法ほう博士はかせ、左衛門さえもん大尉たいい、検非違使けびいし大尉たいい等とうを世襲せしゅうした。

出自しゅつじ[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「東ひがし漢かん氏し」を参照さんしょう

『続ぞく日本にっぽん紀き』には坂上さかがみ苅田かりた麻呂まろが宝たから亀ひさし3年ねん（772年ねん）と延のべ暦れき4年ねん（785年ねん）の2度どにわたり、光ひかり仁じん天皇てんのうや桓武かんむ天皇てんのうに奉たてまつった上表じょうひょう文ぶんが伝つたわり、祖先そせんの阿知あち使し主ぬし（阿智あち王おう）が応神天皇おうじんてんのうの時代じだいに17県けんの人夫にんぷを率ひきいて百済くだらから日本にっぽんへと帰き従したがえし、大和やまと国こく高市たかいち郡ぐん檜前ひのくま村むら（現在げんざいの奈良なら県けん高市たかいち郡ぐん明日香あすか村むら）を賜たまわって居住きょじゅうしたとしている。『日本書紀にほんしょき』では東ひがし漢かん直じきの祖そ阿知あち使し主ぬしとその子こ都みやこ加か使し主ぬしが17県けんの党類とうるいを率ひきいて来き帰かえりとあり、『古事記こじき』にも倭やまと漢かん直じきの祖そ、阿知あち直じきとあることから記紀ききが成立せいりつした8世紀せいき初期しょきには東ひがし漢かん氏しの始祖しそが阿知あち使し主おもであると認識にんしきされていた。しかし記紀ききでは苅田かりた麻呂まろの上表じょうひょう文ぶんにある後のち漢かん霊れい帝みかどの後裔こうえいであることや、阿知あち使し主ぬしが百済くだらから日本にっぽんへと帰き従したがえした事ことについては触ふれられていない[6]。『古事記こじき』では阿知あち吉きち師し（あちきし）と書かいて阿おもね直ちょく岐と同どう一いち人にんになっている。漢かん氏しは百済くだら人じん系けいを含ふくんだかもしれないが、加か耶の一いち国安くにやす羅らを故こ地ちとする集団しゅうだんで、渡来とらい後ごは多数たすうの技能ぎのう・技術ぎじゅつを持もつ人々ひとびとと漢かん部ぶという部ぶを配下はいかに置おいて、大和やまとの飛鳥ひちょうを中心ちゅうしんに広ひろく分布ぶんぷした。書しょ、坂上さかがみ、民みんなどがその主おもな氏しだが、8世紀せいきになると倭やまと漢かんという総称そうしょうは使つかわれず、居住きょじゅう地ちにちなんで檜前ひのくま(檜ひのき隈くま)忌き寸すんと呼よばれるようになり、出自しゅつじも後こう漢かんの霊れい帝みかどの子孫しそんと称しょうした。阿知あち使し主ぬしは倭やまと漢かん氏しの発展はってんにつれて作つくられた渡来とらい伝承でんしょう,始祖しそ伝承でんしょう上じょうの人物じんぶつであり、子この都と加かも6世紀せいきの東ひがし漢かん直ちょく掬きくの名なを投影とうえいして作つくった名なである関せき晃あきら「倭やまと漢かん氏しの研究けんきゅう」(『史学しがく雑誌ざっし』62巻かん9号ごう)。『坂上さかがみ氏し系図けいず』によれば坂上さかがみ直ただし姓せいの氏し祖そは阿知あち使し主ぬしの孫まごで東ひがし漢かん氏しの坂上さかがみ直志ただし拏である[7]。

東ひがし漢かん氏しからの独立どくりつ[編集へんしゅう]

5世紀せいき末まつまでに阿智あち使し主ぬしの孫まごの代だいで[注ちゅう 2]分わかれ、6世紀せいき以降いこうも分裂ぶんれつを繰くり返かえして居住きょじゅう地ちの地名ちめいを氏名しめいにしたり、職掌しょくしょうを氏名しめいにして存在そんざいを主張しゅちょうしていくようになる[8]。『日本書紀にほんしょき』には「東ひがし漢かん坂上さかがみ直子なおこ麻呂まろ」[注ちゅう 3]や「倭やまと漢かん坂上さかがみ直ただし」[注ちゅう 4]の名ながみえ、坂上さかがみ氏しも6 - 7世紀せいきには東ひがし漢かん氏しから分わかれてはいたものの「東ひがし漢かん（倭やまと漢かん）」を冠かんしていることから、東ひがし漢かん氏しの支配しはい下かから独立どくりつしていたとまではみられていない。壬みずのえ申さるの乱らんでは大海人皇子おおあまのおうじ方かたとして坂上さかがみ国こく麻呂まろ、熊毛くまげ、老ろうなどの名ながみられ、乱らんで活躍かつやくしたことから天武天皇てんむてんのう11年ねん（682年ねん）に東ひがし漢かん氏しが連れん姓せいを賜たまわったことから坂上さかがみ氏しも坂上さかがみ直じきから坂上さかがみ連れんとし、天武天皇てんむてんのう14年ねん（685年ねん）には東ひがし漢かん氏しが忌き寸すん姓せいを賜たまわったことから坂上さかがみ忌き寸すんとしている[8]。

歴史れきし[編集へんしゅう]

飛鳥あすか時代ときよ[編集へんしゅう]

坂上さかがみ氏しの本拠地ほんきょちは大和やまと国こく添上そえかみ郡ぐん坂上さかがみである。

坂上さかがみ志こころざし拏の子この一人ひとりである坂上さかがみ駒子こまこの子こが坂上さかがみ弓ゆみ束たばで、坂上さかがみ首くび名めい、老ろう、大国たいこく。老ろう、国くに麻呂まろが壬みずのえ申さるの乱らんで大海人皇子おおあまのおうじ（後ごの天武天皇てんむてんのう）方かたとして活躍かつやくした。

奈良なら時代じだい[編集へんしゅう]

奈良なら時代じだい初期しょきに右みぎ衛士えじ大尉たいいへと昇のぼった坂上さかがみ大国たいこくは武官ぶかんにあり、坂上さかがみ氏しで武人ぶじんとしての活動かつどうが確認かくにんできる最初さいしょの人物じんぶつである。大国たいこくの子こである坂上さかがみ犬いぬ養やしなえは武人ぶじんの資質ししつを認みとめられて聖武天皇しょうむてんのうの寵愛ちょうあいが篤あつく、父ちちである大国たいこくを超こえる左ひだり衛士えじ督とくに昇のぼった。犬いぬ養やしなえの子こ坂上さかがみ苅田かりた麻呂まろは藤原仲麻呂ふじわらのなかまろの乱らんで仲なか麻呂まろの子こ訓くん儒麻呂まろを牡鹿おじか嶋しま足あしと共ともに射殺しゃさつし[注ちゅう 5]、この功こうにより苅田かりた麻呂まろは即日そくじつ正せい六ろく位い上じょうから従したがえ四よん位い下かと5階かい級きゅう昇叙しょうじょの上うえ、大だい忌き寸すんの姓せいを賜たまもの与あずかされ坂上さかがみ大だい忌き寸すんとなる。また、宇佐うさ八幡宮はちまんぐう神託しんたく事件じけんに際さいして道鏡どうきょうの姦計かんけいを告つげ、その排斥はいせきの功績こうせきにより、正せい四よん位い下か・陸奥むつ鎮守ちんじゅ将軍しょうぐんに叙任じょにんされている。氷上ひかみ川がわ継つぎの乱らんでは連座れんざして解かい官かんされるが、すぐに再ふたたび右みぎ衛士えじ督とくに復職ふくしょくしている。延のべ暦れき4年ねん（785年ねん）2月がつに従したがえ三さん位いに叙じょせられ公卿くぎょうに列れっし、同年どうねん6月がつに一族いちぞくは後こう漢かんの霊れい帝みかどの子孫しそんであるにもかかわらず、卑姓を帯おびていることを理由りゆうに改姓かいせいを上表じょうひょうし許ゆるされ、一族いちぞくの11姓せい16名めいが忌き寸すん姓せいから宿禰すくね姓せいへ改姓かいせいする（嫡流ちゃくりゅうの坂上さかがみ氏しは坂上さかがみ大だい宿禰すくね）。苅田かりた麻呂まろは参議さんぎにこそ昇のぼれなかったが、武人ぶじんを輩出はいしゅつする氏族しぞくとしての坂上さかがみ氏しの地位ちいを確立かくりつした[9][10]。

平安へいあん時代じだい以降いこう[編集へんしゅう]

田村たむら麻呂まろ以降いこうの坂上さかがみ氏しの動向どうこうであるが、田村たむら麻呂まろには坂上さかがみ大野おおの、坂上さかがみ広野こうや、坂上さかがみ浄きよし野の、坂上さかがみ正野まさの、そして桓武かんむ天皇てんのうの后きさきだった坂上さかがみ春子はるこらの多数たすうの子こがいたと伝つたわっているが、坂上さかがみ氏し宗家そうけの家督かとくを継ついだのは摂津せっつ国こく住吉すみよし郡ぐん平野ひらの庄しょう（大阪おおさか市し平野ひらの区く）の領主りょうしゅとなった坂上さかがみ大野おおのだった。しかし大野おおのは早世そうせいし、弟おとうとの坂上さかがみ広野こうやが平野へいや庄しょうと坂上さかがみ氏しの家督かとくを継つぐ。その後ご広野こうやも早死はやじににしたため、その弟おとうとの坂上さかがみ浄きよし野のが跡あとを継ついだ。浄きよし野のの次つぎの坂上さかがみ当とう道みちは、田村たむら麻呂まろ以来いらいの東北とうほく経営けいえいと父ちちあるいは伯父おじの広野こうや（当とう道みちは浄きよし野のの子ことも広野こうやの子こともされている）にはじまる平野ひらの庄しょうの経営けいえいに携り、子この坂上さかがみ好こう蔭かげは武人ぶじんとして東北とうほく地方ちほうで活躍かつやくするが、その子この坂上さかがみ是則これのり、孫まごの坂上さかがみ望のぞむ城じょうは歌人かじんとして名なをなし、その子孫しそんは代々だいだい、京都きょうとの検非違使けびいし庁ちょうに出仕しゅっしし明あかり法ほう博士はかせや検非違使けびいし大尉たいいを継承けいしょうした。

広野こうやの子こ（当とう道みちが広野こうやの子こなら当とう道みちの兄あに）の坂上さかがみ峯雄みねおは侍従じじゅうとして都とにあったが、孫まごの坂上さかがみ峯みね益えきも曾孫そうそんの坂上さかがみ行松ゆきまつも東北とうほく経営けいえいと都とでの任にんに就ついている。当とう道みちの後のちの平野ひらの庄しょうの経営けいえいについては、平野ひらの坂上さかがみ氏しの氏し寺てらの『長ちょう寶たから寺てら記き』によれば坂上さかがみ行松ゆきまつが継まましいだとされる。

坂上さかがみ行松ゆきまつ（坂上さかがみ行こう増ぞう）を祖そとする平野へいや坂上さかがみ氏しの宗家そうけは代々だいだい、京都きょうとの公家くげとの姻戚いんせき関係かんけいを維持いじし、明治めいじ時代じだいに東京とうきょうに移うつるまでは長ちょう寶たから寺てらの近ちかくに構かまえた屋敷やしきに住すんでいた。この平野ひらの氏しから末吉すえきち家かをはじめとする平野へいや七なな名家めいかが分わかれた、と各かく家いえは伝つたえている[11]。宗家そうけの平野ひらの庄しょうの坂上さかがみ氏しを支ささえ、代々だいだい「民みん部ぶ」を称しょうし、堺さかいと並ならぶ中世ちゅうせいの自治じち都市としの平野へいやを担になった。平野へいや七なな名家めいかは江戸えど時代じだいは幕府ばくふの代官だいかんとなり5万まん石せきを支配しはい地ちとする。東ひがし末吉すえきち家か（末吉すえきち勘兵衛かんべえ家か）、西にし末吉すえきち家か（末吉すえきち孫まご左衛門さえもん家いえ）に分わかれた末吉すえきち氏しの子孫しそんは、今日きょうも平野へいやの地ちに留とどまっている。

坂上さかがみ氏しの一覧いちらん[編集へんしゅう]

田村たむら麻呂まろ流りゅう[編集へんしゅう]

田村たむら麻呂まろ流りゅうのうち大野おおの系けい・広野こうや系けい・浄きよし野の系けいの三さん系統けいとうを坂上さかがみ氏し本家ほんけという[12]。

大野おおの系けい[編集へんしゅう]

坂上さかがみ大野おおのの子孫しそん。

広野こうや系けい[編集へんしゅう]

坂上さかがみ広野こうやの子孫しそん。
「平野ひらの殿どの」こと坂上さかがみ広野こうやの子孫しそんの平野ひらの氏しは、広野こうやの3代だい後ごの清水寺きよみずでら別当べっとう坂上さかがみ峯みね益えきの子この秋田あきた城じょう介かい権守ごんもり坂上さかがみ行松ゆきまつ（平野ひらの行こう増ぞう）にはじまる。摂津せっつ国こく平野ひらの庄しょう（大阪おおさか市し平野ひらの区く）一帯いったいを開発かいはつしたという名家めいか。
平野ひらの氏しの末裔まつえいの末吉すえきち氏しは、平野ひらの隼人はやと正せい利吉としきちの弟おとうとの平野ひらの利とし方かた（末吉すえきち勘兵衛かんべえ利り方かた）に始はじまる。平野へいや七なな名家めいかの筆頭ひっとうで、戦国せんごく時代じだいの自治じち都市とし「平野へいや」の執政しっせいを勤つとめた由緒ゆいしょある家柄いえがら。南蛮なんばん貿易ぼうえきや朱印しゅいん状じょう貿易ぼうえき、伏見ふしみ銀座ぎんざの運営うんえいにかかわり、江戸えど時代じだいは江戸えど幕府ばくふの代官だいかん職しょくを務つとめるなどした。
『続ぞく群ぐん書しょ類従るいじゅう』坂上さかがみ系図けいずによると、陸奥むつ権けん少しょう掾じょうの坂上さかがみ頼よりゆき遠とおは藤原ふじわら秀しげる郷きょうの孫まご藤原ふじわら千せん清きよしの養子ようしになったという[13]。
氏族しぞくは平野ひらの氏し、末吉すえきち氏し、土橋どばし氏し、辻つじ花はな氏し、成安なりやす氏し、西村にしむら氏し、三上みかみ氏し、井上いのうえ氏しなど。

浄きよし野の系けい[編集へんしゅう]

坂上さかがみ浄きよし野のの子孫しそん。
摂津せっつ守もりに任にんじられた清和せいわ源はじめ氏しの源満仲みなもとのみつなかが多田おおた盆地ぼんちに入部にゅうぶ、所領しょりょうとして開拓かいたくすると共ともに、多おおくの郎党ろうとうを養やしない武士ぶし団だんを形成けいせいし、武士ぶし団だんの中心ちゅうしんとして坂上さかがみ党とうの棟梁とうりょう坂上さかがみ頼よりゆき次じを摂津せっつ介かいに任にんじ、山本やまもと荘司しょうじに要請ようせいして西にし政所まんどころ、南みなみ政所まんどころ、東ひがし政所まんどころを統括とうかつして多田院ただいんの警衛けいえいにあたらせた[14]。34代だい坂上さかがみ頼よりゆき泰やすしが足利あしかが義輝よしてるに仕つかえたものの、同おなじ多田ただ御家人ごけにんの一人ひとりであった塩川しおかわ国こく満みつるに侵攻しんこうされ山本やまもと坂上さかがみ氏しは衰微すいびする。その後ご一いち時じ豊臣とよとみ秀吉ひでよしの親衛しんえいを務つとめるが、後のちに退すさ隠かくして町人ちょうにんとなり、山本やまもと膳ぜん太夫たゆうと号ごうして山本やまもとで庄屋しょうやや酒造しゅぞう、銀鉱ぎんこう採掘さいくつ、両替りょうがえ商しょうなどを営いとなみ、園芸えんげいをして余生よせいを過すごした。
紀伊きい国こくの在地ざいち領主りょうしゅ小島こじま氏しは坂上さかがみ望のぞむ城じょうの末裔まつえいという。大坂おおさかの陣じんで豊臣とよとみ方かたにつき本家ほんけは滅亡めつぼうしたが、庶流が後のちに大だい庄屋しょうやと成なった。
紀伊きいの山口やまぐち氏しは田村たむら麻呂まろの5世せいの孫まごである坂上さかがみ五郎ごろうの末裔まつえいの武士ぶし。紀伊きい山口西やまぐちにしに坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろの墓はかである「将軍しょうぐん塚づか」や山口西やまぐちにしは坂上さかがみ村むらとも呼よばれて、紀伊きい坂上さかがみ氏しの本ほん貫ぬき地ちであった（『和歌山わかやま県けん神社じんじゃ誌し』）[15]。山口やまぐち喜内きないが大坂おおさか夏なつの陣じんにて活躍かつやく。[16]
陸奥みちのく国こく田村たむら郡ぐんを支配しはいしていた戦国せんごく大名だいみょうの氏族しぞく田村たむら氏しは、陸奥みちのく国こく田村たむら郡ぐんに起おこり坂上さかがみ浄きよし野のの曾孫そうそんの田村たむら古こ哲あきらにはじまるという。奥州おうしゅう屈指くっしの大だい豪族ごうぞくで、伊達だて政まさし宗むねの正室せいしつ愛あい姫ひめを出だし、江戸えど時代じだいも仙台せんだい藩はん伊達だて家かの内分ないぶん分家ぶんけ大名だいみょうとして続つづいた。
氏族しぞくは山本やまもと氏し、町まち口こう氏し、小島こじま氏し、山口やまぐち氏し、田村たむら氏し、田母神たもかみ氏しなど。

山本やまもと荘司しょうじ家か坂上さかがみ氏し[編集へんしゅう]

今出川いまでがわ家か諸しょ大夫たいふ山本やまもと家か（町まち口こう家か）[編集へんしゅう]

明あかり法家ほうか坂上さかがみ氏し[編集へんしゅう]

正野まさの系けい[編集へんしゅう]

田村たむら麻呂まろの4男なんである正野まさのから5世せい孫まごの坂上さかがみ正ただし任にんは、河内かわうち国こくから摂津せっつ国こく豊島としま郡ぐん池田いけだに移住いじゅうして領主りょうしゅとなった[18]。正せい任にんを祖そとする池田いけだ坂上さかがみ氏しは、南北なんぼく朝あさ時代じだいに同族どうぞくの生地きじ氏しとともに南みなみ朝方あさがたにくみしたため没落ぼつらくした[18]。

広雄ひろお系けい[編集へんしゅう]

坂上さかがみ広雄ひろおの子孫しそん。
広雄ひろおの孫まごの坂上さかがみ安やすし主ぬしが相賀あいが氏しの祖そとなり、同おなじく孫まごの坂上さかがみ仲なか澄きよしが近江おうみ国こくに所領しょりょうを与あたえられて土着どちゃくして鎌倉かまくら幕府ばくふの御家人ごけにんとなり、坂上さかがみ尹いん澄きよしの時ときに生地きじ氏しを称しょうしている。高野山こうのやま下山げざん後ごの織田おだ秀信ひでのぶの継室けいしつとなったという伝承でんしょうに登場とうじょうする町野まちのの父ちち・生地きじ新しん左衛門尉さえもんのじょうをこの系統けいとうと考かんがえる説せつもある。紀伊きい国こく加太かだ庄しょう地頭じとう職しょく杉原すぎはら氏し盛もりは坂上さかがみ姓せいで、尹いん澄きよしの孫まごの友とも澄きよしが杉原すぎはら氏しを称しょうした。
主おもな氏族しぞくは相賀あいが氏し、生地きじ氏し、杉原すぎはら氏し。

系統けいとう不ふ詳しょうの坂上さかがみ氏し[編集へんしゅう]

系譜けいふ[編集へんしゅう]

  • 坂上さかがみ氏しの系譜けいふ

劉りゅう仁ひとし━劉りゅう太ふとし公おおやけ━（大略たいりゃく）━後ご漢かん霊れい帝みかど━延のべ王おう━石いし秋あき王おう━阿知あち使し主ぬし（阿知あち王おう）━都みやこ加か使し主ぬし（高貴こうき王おう）━坂上さかがみ志こころざし拏直━坂上さかがみ駒子こまこ直ただし━弓ゆみ束たば直じき━ 

首くび名めい直ただし━老ろう━大国たいこく━犬いぬ養やしなえ━苅田かりた麻呂まろ━田村たむら麻呂まろ

田村たむら麻呂まろ┳長男ちょうなん大野おおの━氏し高だか━樹じゅ並なみ
　　　　┣次男じなん広野ひろの┳峯雄みねお━峯みね益えき━行松ゆきまつ━高たか時とき
　　　　┃　　　　┗当とう道みち━広道ひろみち━國こく当とう━恒つね蔭かげ━範はん親おや━定てい成なり━範明のりあき━明あかり兼けん
　　　　┗三さん男なん浄きよし野の━当とう道みち━好こう蔭かげ━是則これのり━望もち城じょう━厚あつ範はん━範はん親おや━定てい成なり━範はん政せい━明あかり兼けん

末裔まつえいとされる氏族しぞく[編集へんしゅう]

その他た[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 『日本にっぽん三さん代だい実録じつろく』元もと慶けい五ご年ねん十じゅう一いち月がつ九きゅう日にち条じょう
  2. ^ 三さん腹はら（三さん家いえ）は兄あに腹ばら（長男ちょうなん）の山木やまき直ただし、中腹ちゅうふく（次男じなん）の志こころざし努つとむ直じき、弟おとうと腹ばら（三男さんなん）の爾なんじ波は伎直
  3. ^ 『日本書紀にほんしょき』欽明天皇てんのう三さん十じゅう一いち年ねん七なな月がつ条じょう及および敏さとし達たち天皇てんのう元年がんねん六ろく月がつ条じょう
  4. ^ 『日本書紀にほんしょき』推古天皇すいこてんのう二に十じゅう八はち年ねん十じゅう月がつ条じょう
  5. ^ 『続ぞく日本にっぽん紀き』天平てんぴょう宝たから字じ8年ねん9月がつ11日にち条じょう
  6. ^ 父ちち・範はん政せい（定てい成なり養子ようし・明あかり法ほう道どう中原なかはら氏しの祖その1人ひとり）が実家じっかの中原なかはら氏しに復姓ふくせいしているために「中原なかはら明あきら兼けん」名義めいぎの署名しょめいもあるが、この系統けいとうのみは「坂上さかがみ氏し」を名乗なのった
  7. ^ 現在げんざいの岩手いわて県けん東和とうわ町まちにある熊野くまの神社じんじゃ

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 太田おおた 1934, p. 2517.
  2. ^ 阿部あべ 2004, p. 63.
  3. ^ 高橋たかはし 1986, p. 3.
  4. ^ 桃もも崎さき 2018, pp. 247–250.
  5. ^ 桃もも崎さき 2018, pp. 257–258.
  6. ^ 高橋たかはし 1986, pp. 3–6.
  7. ^ 太田おおた 1934, p. 2514.
  8. ^ a b 高橋たかはし 1986, pp. 6–8.
  9. ^ 高橋たかはし 1986, pp. 9–31.
  10. ^ 桃もも崎さき 2018, pp. 251–253.
  11. ^ （長ちょう寶たから寺てら寺てら記き、末吉すえきち氏し家いえ譜ふ）[要よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう]
  12. ^ 坂上さかがみ 2001, p. 16.
  13. ^ 野口のぐち 2000, p. 209.
  14. ^ 村上むらかみ 2008, p. 4.
  15. ^ 『角川かどかわ地名ちめい辞典じてん』[要よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう]
  16. ^ 和歌山わかやま県けん神社じんじゃ庁ちょう 1995, p. [要ようページ番号ばんごう].
  17. ^ a b 『地下ちか家伝かでん』第だい24巻かん 三条さんじょう家か・西園寺さいおんじ家か・徳大寺とくだいじ家か・今出川いまでがわ家か（諸しょ大夫たいふ及および侍さむらい）
  18. ^ a b 阪上さかうえ 1974, p. 22.
  19. ^ a b 阿部あべ 2004, p. 64.
  20. ^ 武家ぶけ家伝かでん＿黒木くろき氏し （日本語にほんご）

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • “武家ぶけ家伝かでん＿黒木くろき氏し”. 風雲ふううん戦国せんごく史し-戦国せんごく武将ぶしょうの家紋かもん-. 播磨屋はりまや. 2017年ねん6月がつ11日にち閲覧えつらん。 （日本語にほんご）

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

神社じんじゃ
寺院じいん


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