東映とうえいポルノ

東映とうえいポルノ（とうえいポルノ）は、日本にっぽんの大手おおて映画えいが会社かいしゃである東映とうえいが1960年代ねんだい後半こうはんから製作せいさくを開始かいししたエロティックな映画えいがの総称そうしょう。

初出しょしゅつと見みられるのは『週刊しゅうかん朝日あさひ』1971年ねん11月26日にち号ごうの池いけ玲子れいこのインタビュー記事きじで、「東映とうえいポルノの看板かんばんスター池いけ玲子れいこ」と小見出こみだしがあり、『週刊しゅうかん映画えいがニュース』1971年ねん12月4日にち号ごうに「東映とうえいポルノ映画えいが」と書かかれている。

『近代きんだい映画えいが』（近代映画社きんだいえいがしゃ）1972年ねん3月がつ号ごうの「ポルノ女優じょゆうの身上しんじょう調査ちょうさ」という記事きじにも「日活にっかつポルノ対たい東映とうえいポルノ」という小見出こみだしがある。以降いこうも、"東映とうえいポルノ"という言葉ことばは多おおくの文献ぶんけんで使つかわれている。

製作せいさくの始はじまりは1967年ねん頃ごろ、終了しゅうりょうは東映とうえいを含ふくめた大手おおて映画えいが会社かいしゃが一本いっぽん立だて興行こうぎょうに移行いこうした1970年代ねんだいの終おわりと見みられる。

"ポルノ"という言葉ことばは、この"東映とうえいポルノ"から生うまれた言葉ことばとされ、荒木あらき一郎いちろうは「"日活にっかつロマンポルノ"は、"東映とうえいポルノ"のまねをした」と述のべている。

東映とうえいの社しゃ史し等ひとし、東映とうえい発展はってん史しに関かんする資料しりょうにも、東映とうえいポルノの記載きさいはほとんどされず、これまで研究けんきゅう的てき価値かちは看過かんかされてきたが、"戦たたかう女性じょせい"というイメージを切きり口くちとして日本にっぽん映画えいが史しを俯瞰ふかんしてみると重要じゅうような存在そんざいとする評価ひょうかもあり、"東映とうえいポルノ"は多おおくの先駆せんく的てき業績ぎょうせきを生うんでいる。

概要がいよう

"東映とうえいポルノ"の仕掛しかけ人じんは、東映とうえい任侠にんきょう映画えいが、実録じつろく映画えいがと同様どうよう、当時とうじの東映とうえい取締役とりしまりやく兼けん京都きょうと撮影さつえい所しょ所長しょちょう・岡田おかだ茂しげるプロデューサー（のち、同社どうしゃ社長しゃちょう）である。

エロティック路線ろせんの映画えいがは、キワモノとして大手おおての映画えいが会社かいしゃも現実げんじつには早はやくから作つくっていたが、1960年代ねんだい初はじめから倒産とうさんした新しん東宝とうほうと、その関連かんれんプロなどがより刺激しげき性せいの高たかい作品さくひんを次々つぎつぎと製作せいさく・配給はいきゅうした。これら"エロ映画えいが"といっていたジャンルの呼称こしょうは、一定いっていのファンを集あつめて市場いちばが形成けいせいされると"ピンク映画えいが"という名前なまえで定着ていちゃくしていった。

「映画えいが商人しょうにん」とも揶揄やゆされる岡田おかだは、任侠にんきょう映画えいがが爆発ばくはつ的てき人気にんきを得えていた時期じきもその人気にんきは長ながく続つづかないのではと考かんがえていて、"任侠にんきょう路線ろせん"に続つづく鉱脈こうみゃくを探さがしていた。岡田おかだは"ピンク映画えいが"に目めを付つけ、1966年ねん「男おとこの世界せかいの覗のぞき見み」が任侠にんきょう映画えいがなら、今度こんどは「女おんなの世界せかいを覗のぞき見みる」という発想はっそうから"エロ映画えいが"の製作せいさくを決きめ、企画きかく課長かちょう・翁長おなが孝雄たかおを呼よび『大奥おおおく㊙物語ものがたり』や『尼寺あまでら㊙物語ものがたり』といった「マル秘ひシリーズ」を自みずからの発案はつあんで仕掛しかけていく。

これ以前いぜんにも東映とうえい東京とうきょう撮影さつえい所しょ（以下いか、東映とうえい東京とうきょう）所長しょちょう時代じだいの1963年ねんに佐久間さくま良子りょうこ主演しゅえんで『五番ごばん町まち夕ゆう霧きり楼ろう』や、1964年ねんに小川おがわ真由美まゆみ・緑みどり魔子まこ主演しゅえんで『二に匹ひきの牝めす犬けん』（渡邊わたなべ祐介ゆうすけ監督かんとく）を、東映とうえい京都きょうと撮影さつえい所しょ（以下いか、東映とうえい京都きょうと）に戻もどった同年どうねんに中島なかじま貞夫さだおに『くノ一いち忍法にんぽう』、1966年ねんには"文芸ぶんげいエロ路線ろせん"と称しょうし『四畳半よじょうはん物語ものがたり 娼婦しょうふしの』（成澤なりさわ昌あきら茂しげる監督かんとく）といったエロティシズム要素ようそを含ふくんだ映画えいがを岡田おかだは撮とらせており、既すでにその萌芽ほうがが見みられていた。

川本かわもと三郎さぶろうは『二に匹ひきの牝めす犬けん』を東映とうえいポルノの先鞭せんべんを付つけた映画えいがと評価ひょうかしている。

この時期じきの東映とうえいは任侠にんきょう映画えいが以外いがいは全まったく当あたらなかったが、『大奥おおおく㊙物語ものがたり』が大だいヒットしたことで岡田おかだはメジャー会社かいしゃ初はつの「エロ映画えいが」量産りょうさんに舵かじを切きった。

"東映とうえいポルノ"は、後述こうじゅつする石井いしい輝男てるお監督かんとくの『徳川とくがわ女系じょけい図ず』（1968年ねん）から、とする文献ぶんけんが多おおいが、『大奥おおおく㊙物語ものがたり』の脚本きゃくほん・掛かけ札さつ昌裕まさひろが「岡田おかださんの意向いこうでエロスの要素ようそを強調きょうちょうした。これがいわゆる東映とうえいのエロ路線ろせんのハシリ」と話はなしているため、『大奥おおおく㊙物語ものがたり』（1967年ねん）から説明せつめいする。

大奥おおおく㊙物語ものがたり

岡田おかだが企画きかく、キャスティングからタイトル付づけまで全すべて担当たんとうした『大奥おおおく㊙物語ものがたり』は、今日きょう続つづく大奥おおおくもの（大奥おおおくに関かんする作品さくひんの一覧いちらん）や「女性じょせい時代じだい劇げき」の実質じっしつ的てき元祖がんそとなった作品さくひん。

詳細しょうさいは「大奥おおおく㊙物語ものがたり」を参照さんしょう

本ほん作さくは1967年度ねんどの日本にっぽん映画えいが配給はいきゅう収入しゅうにゅうでベストテン10位いの大だいヒットを記録きろく、東映とうえいとしても久ひさしぶりの時代じだい劇げきの大だいヒットとなった。1978年ねんの『柳生やぎゅう一族いちぞくの陰謀いんぼう』公開こうかいの際さい、東映とうえいは〈『丹下たんげ左ひだり膳ぜん 飛燕ひえん居合いあい斬ぎり』（1966年ねん、萬屋よろずや錦之介きんのすけ主演しゅえん・五ご社しゃ英雄えいゆう監督かんとく）以来いらい12年ねんぶりの本格ほんかく時代じだい劇げき〉と宣伝せんでんしたが、実際じっさいはこの間あいだ、この『大奥おおおく㊙物語ものがたり』を始はじめ、多おおくのポルノ時代じだい劇げきを製作せいさくしている。

これを受うけ、岡田おかだは『㊙物語ものがたり』のシリーズ化かを指示しじするが、翁長おなが孝雄たかおプロデューサーは、これら添そえ物ものが成人せいじん指定してい映画えいがになっては、メインの任侠にんきょう映画えいがの観客かんきゃくが見みに来こなくなると危惧きぐした。

当時とうじの東映とうえいのメインは任侠にんきょう映画えいがだった。続つづく『続ぞく大奥おおおく㊙物語ものがたり』『尼寺あまでら㊙物語ものがたり』では、翁長おながが「エロ」要素ようそを極力きょくりょく抑おさえたためとも不入ふいりに終おわる。企画きかく部長ぶちょう・渡邊わたなべ達人たつひとは、「一般いっぱん映画えいがに戻もどした方ほうがいいんじゃないでしょうか」と岡田おかだに進言しんげんするが、岡田おかだは「中途半端ちゅうとはんぱなことしてたからアカンのや」とメジャー映画えいが会社かいしゃとして初はじめて成人せいじん指定してい映画えいが参入さんにゅうを図はかる。

東映とうえいが成人せいじん映画えいがに参入さんにゅうしたことで、大映だいえい、松竹しょうちく、日活にっかつも追随ついずいした。日活にっかつロマンポルノ第だい一いち弾だん『色いろ暦れき大奥おおおく秘話ひわ』は東映とうえい大奥おおおくのパクリ 。当時とうじ日活にっかつは『戦争せんそうと人間にんげん』という名作めいさくを作つくっていたため、なぜいまさら東映とうえいのマネをするのかと社内外しゃないがいからたたかれた。

石井いしい輝男てるおエログロ映画えいが

当時とうじピンク映画えいがが、表立おもてだって宣伝せんでんもしないのに隆盛りゅうせいを極きわめ、ソロバンをはじいてみると、松竹しょうちくの年間ねんかん配給はいきゅうよりも総体そうたいで上回うわまわることが分わかり、今度こんどは懐刀ふところがたなの天尾てんのお完かん次じプロデューサーを呼よび「ピンク映画えいがだけに儲もうけさせることはないぞ。こっちにはお得意とくいの時代じだい劇げきの衣装いしょうがある。あれを活いかそう。大手おおての東映とうえいが豪華ごうかなエロ時代じだい劇げきを作つくろう。天尾てんのお、おまえやれ」「おれが石井いしい輝男てるおに撮とらせる。おまえはピンク女優じょゆうをかき集あつめてこい。裸はだかでいくんじゃ」と指示しじした。

東映とうえいは時代じだい劇げきで黄金おうごん時代じだいを築きずいただけに、東映とうえい京都きょうとには豪華ごうかな衣装いしょうが数すう10億おく円えんあるといわれた。これが実質じっしつ的てきな「東映とうえいポルノ」のスタートとなる。当時とうじは大蔵おおくら映画えいが、国くに映うつなどの独立どくりつプロがこうしたエロ映画えいがを製作せいさくしていて大手おおて五ご社しゃが手てを染そめることは大おおきな抵抗ていこう感かんがあったが、岡田おかだは易々いいと一線いっせんを越こえていく。

時代じだい劇げきから任侠にんきょう映画えいがへの路線ろせん変更へんこうに成功せいこうした岡田おかだは、その成功せいこう要因よういんを"不良ふりょう性せい感度かんど"にあると考かんがえた。「急速きゅうそくなテレビの普及ふきゅうで女性じょせい・子供こども層そうはお茶ちゃの間あいだのテレビに奪取だっしゅされた。それなら〈ご家族かぞくそろって東映とうえい映画えいが〉の看板かんばんを降おろし、テレビからこぼれ落おちた不良ふりょう的てきな成人せいじん男性だんせいに狙ねらいを絞しぼった企画きかくを中心ちゅうしんに据すえよう」と考かんがえた岡田おかだは、「任侠にんきょう映画えいがだけでは彼かれらを満足まんぞくさせきれない、"不良ふりょう性せい感度かんど"の強つよい任侠にんきょう映画えいがに善良ぜんりょうな映画えいがを付つけても観客かんきゃくは戸惑とまどうだろう。成人せいじん男性だんせいが喜よろこぶ不良ふりょう性せいのあるものは...エロだ!」と、新あらたなメイン観かん客層きゃくそうを想定そうていした。

杉作すぎさくJ太郎たろうが「当時とうじ、東映とうえいの映画えいが館かんに女性じょせいは皆無かいむでした。それは岡田おかださんが、意図いと的てきに女性じょせい客きゃくを切きり捨すてた映画えいがを作つくってきたから。そういう『男おとこだけでいい世界せかい』を描えがく時代じだいは、おそらくもう二度にどと来こないでしょう。それは岡田おかださんの大おおいなるギャンブルが残のこしてくれた遺産いさんなんです」と解説かいせつする極端きょくたんな"男性だんせい路線ろせん"の始はじまりであった。結果けっか、東映とうえいの専属せんぞく女優じょゆうは次々つぎつぎに東映とうえいを去さっていった。

岡田おかだの指揮しきするエロ路線ろせんのうち、色いろの濃こくないグロのつかない方ほうを翁長おなが孝雄たかおプロデューサーが、グロの強つよい方ほうを天尾てんのお完かん次じプロデューサーが担当たんとうした。

岡田おかだが指示しじした好色こうしょく路線ろせんとしてのスタートは、山田やまだ風かぜ太郎たろう原作げんさくの映画えいが化かで、エロ忍者にんじゃ映画えいが『忍しのびの卍まんじ』（鈴木すずき則のり文ぶん監督かんとく、1968年ねん）だったのだが、これも東映とうえいの女優じょゆうが脱ぬがなかった為ために興行こうぎょう的てきに失敗しっぱいした。東映とうえい専属せんぞくの女優じょゆうはなかなか脱ぬいでくれなかった。

この反省はんせいから好色こうしょく路線ろせんをエスカレートさせ、石井いしい輝男てるおに作つくらせたのが1968年ねんの豪華ごうか絢爛けんらんたる色欲しきよく大だい絵巻えまき『徳川とくがわ女系じょけい図ず』であった。

『徳川とくがわ女系じょけい図ず』製作せいさく発表はっぴょう会見かいけんで岡田おかだは「人間にんげんの二に大だい欲求よっきゅうである食しょくと性せい、とりわけ性愛せいあいを正ただしい方向ほうこうへ持もって行いくことこそ、娯楽ごらく映画えいが製作せいさく者しゃに課かせられた重要じゅうような義務ぎむである」と抱負ほうふを述のべた。本ほん作さくはメジャー映画えいが会社かいしゃとして初はつの成人せいじん指定してい映画えいがで、本ほん作さくの企画きかくもタイトルも岡田おかだの考案こうあんによるもので、石井いしいに充あてた企画きかく書しょには「群小ぐんしょうピンク映画えいがを撃滅げきめつせよ」と書かかれ、この作品さくひんからノースターでピンク女優じょゆうを大量たいりょう投入とうにゅう、実質じっしつ的てきな「エロ映画えいが路線ろせん」は本ほん作さくからであった。石井いしいは当時とうじ『網走あばしり番外地ばんがいち』という高倉たかくら健けん主演しゅえんの超ちょう人気にんきシリーズを手掛てがけていたが、もう飽あき飽あきしていて「何なにか別べつの事ことをやりたい」と岡田おかだの要請ようせいに応こたえた。

『徳川とくがわ女系じょけい図ず』は1968年ねんのゴールデンウィークのメイン映画えいがとして封切ふうぎられたことでピンク映画えいが界かいを震撼しんかんさせた。しかし結果けっか的てきに話題わだいにもなり奇跡きせきの大だいヒットを記録きろく、3000万まん円えんの製作せいさく費ひでたちまち一いち億おく円えん以上いじょう、三さん億おく円えん稼かせいだといわれる。『徳川とくがわ女系じょけい図ず』は㊙はタイトルに付ついていないが「マル㊙シリーズ」第だい四よん弾だんだったという見方みかたもあり、本来ほんらい、岡田おかだが目指めざした「大奥おおおくもの」の完成かんせい形がたはここにあったが、この路線ろせんは映画えいが史しの裏街道うらかいどうを歩あゆむ。石井いしいは岡田おかだの意図いとを大胆だいたんに表現ひょうげん、ヌード、セックスだけでなく、拷問ごうもん、処刑しょけい等ひとし、グロテスクな描写びょうしゃを取とり入いれ、その後ごもエログロをエスカレートさせていく。

東映とうえい社長しゃちょう・大川おおかわ博ひろしは映画えいがのお目付めつけ役やくである映倫えいりんの維持いじ委員いいん会かい委員いいん長ちょうを務つとめていたが、岡田おかだは「社長しゃちょうは委員いいん長ちょうであるにしろ、私わたしはプロデューサーだ」と"岡田おかだ路線ろせん"を突つっ走ぱしり、ここから再三さいさんに渡わたり映倫えいりんと揉もめ、映倫えいりんを困こまらせた。

同年どうねん9月がつ28日にち公開こうかいの『徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し』は、冒頭ぼうとうから首くびが飛とぶ!胴どうを斬きる!衝撃しょうげきの三さん段だん斬ぎり!が展開てんかいされる東映とうえい初はつの「SM映画えいが」で、東ひがしの団だん鬼おに六ろく、西にしの辻村つじむら隆たかしといわれたSM界かいの巨匠きょしょうが緊縛きんばく指導しどうに付ついて、地獄じごく絵図えずそのままに、サディズムの極限きょくげんを追求ついきゅうして徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ十じゅう四よん種しゅが繰くり広ひろげられる、その見世物みせもの性せいたるや今いまどきのSMビデオにも劣おとらない。清純せいじゅん派はとして売うり出だしたはずの橘たちばなますみが"空中くうちゅう海老えび吊つり"にされ、水みずをかけられ悲鳴ひめいを上あげ撮影さつえいが中断ちゅうだんする凄惨せいさんな現場げんばだったといわれる。

映画えいが評論ひょうろん家かの佐藤さとう忠男ただおが『キネマ旬報きねまじゅんぽう』に本ほん作さくを「日本にっぽん映画えいがの最低さいてい線せんへの警告けいこく」と題だいして「エロ・グロと人格じんかく的てき侮辱ぶじょくのイメージを羅列られつしていける神経しんけいにほとんど嘔吐おうと感かんが込こみ上あげる」「ピンク映画えいが専せん門もんのプロダクションが作つくる映画えいがでもここまで愚劣ぐれつでない」などと酷評こくひょうした。

大高おおだか宏ひろし雄ゆうは「商業しょうぎょう主義しゅぎ的てきな製作せいさくの姿勢しせいは、企業きぎょう映画えいがだから会社かいしゃ内外ないがいで容認ようにんできるとして、そこからさらに逸脱いつだつした超ちょう＝商業しょうぎょう主義しゅぎとでも言いいたい製作せいさくの恐おそれるべき発展形はってんけいがそこにあった」と評ひょうしている。

『徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し』は、B級きゅうスターのみの出演しゅつえんにも関かかわらず、1968年ねんの年間ねんかん配給はいきゅう収入しゅうにゅうベストテンにランクされ、同おなじ東映とうえいで鶴田つるた浩二こうじや高倉たかくら健けん、藤ふじ純子じゅんこら出演しゅつえんの任侠にんきょう映画えいが『人生じんせい劇場げきじょう 飛車ひしゃ角かくと吉良きら常つね』（内田吐夢うちだとむ監督かんとく）を上回うわまわるコストパフォーマンスの高たかさだった。当時とうじの東映とうえいの二に枚まい看板かんばん・鶴田つるた浩二こうじ、高倉たかくら健けんのギャラは、一本いっぽん500万まん円えんだったため、スターを使つかわないエロ映画えいががこれだけ儲もうかるのであれば、経営けいえい者しゃとしては続つづけざるを得えないのは当然とうぜんだった。

「東映とうえいポルノ」は、東映とうえいの歴史れきしと大おおきく関かかわりがあり、場合ばあいによっては生うまれなかったジャンルでもある。

当時とうじ、映画えいがに全まったく興味きょうみがない東映とうえい社長しゃちょう・大川おおかわ博ひろしの息子むすこ・大川おおかわ毅あつし専務せんむが映画えいがで儲もうけた利益りえきをボウリング場じょう経営けいえいやプロ野球やきゅうの経営けいえいに注入ちゅうにゅうし、大川おおかわ親子ちかこは映画えいが製作せいさく部門ぶもんを縮小しゅくしょう、或あるいは松竹しょうちくに委ゆだねて、東映とうえいをボウリング場じょうを柱はしらとする総合そうごうレジャー産業さんぎょうに事業じぎょう転換てんかんさせようとしていた。映画えいが会社かいしゃは映画えいがの好すきな人間にんげんの集団しゅうだんだけに、社員しゃいんから総そうスカンを食くい、一いち年ねんで東映とうえいの社員しゃいんが200人にん辞やめるなど東映とうえい内ないがゴタゴタした。こうした東映とうえい内紛ないふんを『週刊文春しゅうかんぶんしゅん』1968年ねん5月がつ6日にち号ごうが「東映とうえい大奥おおおく㊙物語ものがたりの出所しゅっしょ・大川おおかわ一族いちぞくを憤慨ふんがいさせた怪文書かいぶんしょ」と題だいして報ほうじたため大騒おおさわぎとなった。

東映とうえい社内しゃないでは『忠臣蔵ちゅうしんぐら』に例たとえ、吉良上野介きらこうずけのすけが大川おおかわ親子ちかこで、浅野内匠頭あさのたくみのかみが五島ごしま昇のぼる、岡田おかだと今田いまだ智さとし憲けんの東西とうざい両りょう撮影さつえい所長しょちょうが二に人にん大石おおいし内蔵助くらのすけとしてムホンを期待きたいする声こえが上あがった。当時とうじの企画きかくの主導しゅどう権けんは東西とうざい両りょう撮影さつえい所長しょちょうが握にぎっていたため、岡田おかだと今田いまだには強つよい権限けんげんが持もたされていた。また五島ごしま昇のぼるが岡田おかだを東急とうきゅうグループに移籍いせきさせるという噂うわさや、岡田おかだと仲なかのよい松竹しょうちくの白井しらい昌夫まさお専務せんむが引退いんたいする自身じしんの後釜あとがまに岡田おかだを引ひき抜ぬくなどの噂うわさが流ながれ、製作せいさく実務じつむを担当たんとうする岡田おかだら活動かつどう屋や重役じゅうやくが、大川おおかわ毅あつしに反旗はんきを翻ひるがえし別べつ会社かいしゃを作つくるのではといわれ、労組ろうそ攻勢こうせいも加くわわり、会社かいしゃ業務ぎょうむ運営上うんえいじょうの批判ひはんが猛烈もうれつに高たかまった。

このことから大川おおかわ博ひろし社長しゃちょうは、政権せいけん委譲いじょうを考かんがえていた息子むすこの安全あんぜんか会社かいしゃの安泰あんたいか二者択一にしゃたくいつに迫せまられ、『徳川とくがわ女系じょけい図ず』公開こうかい直後ちょくごの1968年ねん5月がつ17日にちに首脳しゅのう陣じんを一新いっしんする大幅おおはば人事じんじを発表はっぴょう。この人事じんじは映画えいが界かい過去かこの歴史れきしに例れいを見みない異動いどうで、"東映とうえい未曾有みぞうの大だい手術しゅじゅつ"などと評ひょうされ、業界ぎょうかいでは驚おどろきの声こえが上あがった。大川おおかわ社長しゃちょうは毅あつしを辞やめさせる腹はらづもりだったが、岡田おかだと今田いまだから「辞やめさせるのは簡単かんたんですが、復ふく社しゃとなると面倒めんどうです。取締役とりしまりやくで残のこされては」という進言しんげんを受うけ入いれ、大川おおかわ毅あつし専務せんむは平ひら重役じゅうやくに格下かくさげされ、大川おおかわ博ひろしの娘むすめ婿むこで東京とうきょう六ろく大学だいがくのヒーローだった吉田よしだ治雄はるお事業じぎょう部長ぶちょうは退社たいしゃした。この人事じんじで岡田おかだが初代しょだい・マキノ満男みつお、二に代目だいめ・坪井つぼい与あずか（與あずか）専務せんむに次ついで東映とうえい三さん代目だいめの製作せいさくの最高さいこう責任せきにん者しゃ・企画きかく製作せいさく本部ほんぶ長ちょうに就任しゅうにん（兼けん京都きょうと撮影さつえい所長しょちょう）、今田いまだ智さとし憲けんは営業えいぎょうの最高さいこう責任せきにん者しゃ・営業えいぎょう本部ほんぶ長ちょう兼けん興行こうぎょう部長ぶちょうに就任しゅうにんした。

岡田おかだと今田いまだが花道かどうにせり出だした。

同時どうじに東映とうえいで文芸ぶんげいものを企画きかくしていた坪井つぼい与あずか（與あずか）専務せんむが映画えいが製作せいさく担当たんとうを下くだり、テレビ本部ほんぶ長ちょう兼けん教材きょうざい映うつ機き本部ほんぶ長ちょうに就任しゅうにんしたため、岡田おかだの指揮しきする暴力ぼうりょくとエロが一層いっそう強化きょうかされることになった。

岡田おかだは企画きかく製作せいさく本部ほんぶ長ちょう就任しゅうにんの記者きしゃ会見かいけんで「東映とうえいの製作せいさく方針ほうしんは大衆たいしゅうがすぐ食くいつくような興味きょうみ本位ほんいの三流さんりゅう作品さくひんで、あくまで大衆たいしゅう週刊しゅうかん誌しの感覚かんかくで、エロでも何なんでもやる。したがって製作せいさく宣伝せんでん関係かんけい者しゃにはテレるな、ええカッコするなと指示しじしている。やくざ物ぶつは『飛車ひしゃ角かく』以来いらい六ろく年ねんになるが時代じだい劇げきに替かわる鉱脈こうみゃくだったわけだから今後こんごとも強化きょうかする方針ほうしんだ。エロについては映倫えいりんの限界げんかいというものがあるが、ギリギリの線せんでやるつもりだ。日活にっかつのようにエロ二に本立ほんだてではなく、ウチでは活劇かつげきとエロの二本立にほんだてがよい成績せいせきを挙あげている。映画えいが観客かんきゃくは固定こていしていると言いうが、東映とうえいは、それ以外いがいの層そうを積極せっきょく的てきに獲えるというより固定こてい数すうの中なかのマジョリティを狙ねらう。企画きかくもそれによって自おのずと方向ほうこうづけられる。若わかいタレントが育そだつのは映画えいがでは時間じかんがかかる。その証拠しょうこに若山わかやま富三郎とみさぶろうがやっとスターになった。東西とうざい両りょう撮影さつえい所しょとも新しん・部長ぶちょう・課長かちょうが次第しだいに力ちからを付つけている。これをいかに善導ぜんどうしていくか、それが私わたしにとって最大さいだいの任務にんむだ」などと抱負ほうふを述のべた。

また映画えいが部門ぶもんが縮小しゅくしょうされると『キネマ旬報きねまじゅんぽう』で報ほうじられたことから、大川おおかわ社長しゃちょうは映画えいが部門ぶもんの強化きょうかを図はかるべく、1968年ねん8月がつ31日にち付づけで東映とうえいに製作せいさく本部ほんぶと営業えいぎょう本部ほんぶを一貫いっかんしたそれまでなかった「映画えいが本部ほんぶ」を新設しんせつし、その本部ほんぶ長ちょうに岡田おかだを就任しゅうにんさせた。「映画えいが本部ほんぶ」は映画えいがの製作せいさく・配給はいきゅう・興行こうぎょうまでを完全かんぜんに統轄とうかつするもので、自分じぶんで作つくった商品しょうひんを自分じぶんで売うる、売うれる物ものを作つくる、自分じぶんで売うれないと思おもう物ものは作つくらないでよいという権限けんげんを持もたされた。大川おおかわは「大衆たいしゅうが求もとめる刺激しげきの強つよい映画えいがを作つくることで企業きぎょうを安定あんていさせることが先決せんけつ命題めいだいで、岡田おかだ映画えいが本部ほんぶ長ちょうがその命題めいだいに沿そって徹底てっていした企画きかくを立たてている。岡田おかだ本部ほんぶ長ちょうの権限けんげんは、いわば一ひとつの映画えいが会社かいしゃの社長しゃちょうの立場たちばに匹敵ひってきする。自分じぶんの思おもい通どおりに意思いし統一とういつができるわけで大変たいへんな権限けんげんです」と述のべた。

東映とうえいの看板かんばん女優じょゆう・佐久間さくま良子りょうこが大川おおかわ社長しゃちょうに企画きかくを直談判じかだんぱんしても大川おおかわから「岡田おかだ君くんと相談そうだんして決きめなさい」と差さし戻もどされる程ほどで、映画えいが製作せいさくは岡田おかだに丸まる投なげされた。

大川おおかわから「岡田おかだ君くん、お前まえは東映とうえい映画えいがの社長しゃちょうだ」と煽おだてられていたといわれる。

岡田おかだは1971年ねん1月がつに映画えいが本部ほんぶ長ちょう兼けんテレビ本部ほんぶ長ちょうに就任しゅうにんし、映像えいぞう製作せいさく部門ぶもんの全権ぜんけんを掌握しょうあく、このポストのまま東映とうえい社長しゃちょうに就任しゅうにんしたため、1968年ねん9月がつ以降いこう、東映とうえいで岡田おかだを飛とび越こして企画きかくが成立せいりつしたり、岡田おかだと関係かんけいないところで東映とうえいで映画えいがが製作せいさくされることはないので注意ちゅういが必要ひつようである。

1968年ねん9月がつ以降いこう東映とうえいでは、岡田おかだ好このみの映画えいがしか製作せいさくされなかった。また1971年ねんの社長しゃちょう就任しゅうにん以降いこう、長ながく重役じゅうやくを置おかないワンマン体制たいせいを敷しき、他社たしゃが路線ろせん変更へんこうなど重要じゅうよう案件あんけんに大変たいへんな騒動そうどうと会議かいぎを伴ともなう中なか、東映とうえいは岡田おかだの一言ひとことで全部ぜんぶ決きまった。

石井いしい輝男てるおが1968年ねんの『徳川とくがわ女系じょけい図ず』を皮切かわきりに1969年ねんの『江戸川えどがわ乱歩らんぽ全集ぜんしゅう 恐怖きょうふ奇形きけい人間にんげん』まで、一いち年ねん半はんの間あいだにハイペースで東映とうえい京都きょうと撮影さつえい所しょで撮とった9本ほんのエログロ映画えいがを今日きょう"性愛せいあい路線ろせん" "異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"と呼よぶことが多おおいが、本来ほんらいは、これら9本ほんのエログロ映画えいがは、岡田おかだ茂しげるが提唱ていしょうした五いつつの路線ろせんから成なる。岡田おかだは「路線ろせんが確立かくりつしなければ単発たんぱつで当あてても儲もうからない」という考かんがえを持もっており、「刺激しげきや異常いじょうを扱あつかった映画えいがをいい加減かげんには作つくらない。手数てかずをかけて作つくる。たとえ映画えいが界かいに悪漢あっかん視しされてもやるからには一方いっぽうの旗頭はたがしらになってやる」「どんなに悪者わるもの扱あつかいされようと大衆たいしゅうが喜よろこぶものを作つくるだけ。笑わらわせる、泣なかせる、握にぎらせる（手てに汗あせを）映画えいがを作つくりたい」と世間せけんから叩たたかれても強気つよきの姿勢しせいを見みせ、ヤクザとエロを続つづける決意けついを述のべた。この次々つぎつぎ新しん路線ろせんを創つくり出だしては失敗しっぱいと成功せいこうを繰くり返かえして、東映とうえいの危機ききを乗のり越こえ、東映とうえいの繁栄はんえいをき上ずきあげた岡田おかだの実力じつりょくと人間にんげん的てき信用しんようが、後のちに東映とうえい社長しゃちょうの後継こうけい者しゃとして最さい適任てきにんと内外ないがいともに拍手はくしゅを持もって迎むかえられる大おおきな要件ようけんとなって生いきた。石井いしいは当時とうじはフリーで、東映とうえいとは本数ほんすう契約けいやくだった。路線ろせんの途中とちゅうに日活にっかつで正統せいとう的てきな任侠にんきょう映画えいが『昇のぼり竜りゅう鉄火てっか肌はだ』を撮とっているのはこのため。石井いしい自身じしん「『徳川とくがわ女系じょけい図ず』以後いごの企画きかくは私わたしの発案はつあんではありません」、後述こうじゅつする石井いしい排斥はいせき運動うんどうが起おきた際さいには「このシリーズはボクが一人ひとりでつくっているんじゃないんで、文句もんくがあれば企画きかくを立たてた会社かいしゃにぶつけて欲ほしいです」と東映とうえいに責任せきにん転嫁てんかしている。岡田おかだは「わりに早はやい時期じきに、監督かんとくや脚本きゃくほん家かの東映とうえい専属せんぞくをやめ、みんなフリーにした。深作ふかさく欣二きんじ、佐藤さとう純じゅん彌わたる、中島なかじま貞夫さだお、降旗ふるはた康男やすお、それ以外いがいもずいぶんいる」と述のべており、東映とうえいの監督かんとくと思おもわれている著名ちょめいな監督かんとくは、最初さいしょは社員しゃいんで東映とうえい専属せんぞくであっても1960年代ねんだい後半こうはんからは、ほとんどがフリーである。フリーだと当然とうぜん社員しゃいんよりギャラは高たかく、どこの会社かいしゃで映画えいがを撮とろうと自由じゆうだが、自身じしんの企画きかくを東映とうえいで通とおす権限けんげんはないため、東映とうえいの主おもな作品さくひんで監督かんとく企画きかくの映画えいがはあまりない。企画きかくを岡田おかだなり各かくプロデューサーに持もち込こみ、最終さいしゅう的てきにジャッジするのは岡田おかだである。またプロデューサーや映画えいがスタッフ、俳優はいゆうは大半たいはんが東映とうえいの社員しゃいんであるため、フリーの監督かんとくが東映とうえい以外いがいで監督かんとくをする場合ばあい、東映とうえいのスタッフや俳優はいゆうを使つかうときは、東映とうえいの許可きょかが必要ひつようになる。他社たしゃの映画えいが製作せいさくに東映とうえいの社員しゃいんを持もって行いかれるとその間あいだ東映とうえいでの映画えいが製作せいさくに支障ししょうが出でるからである。石井いしいは「専属せんぞくだと予算よさんや配役はいやく、日程にっていなど、条件じょうけんが悪わるくて意いに染しまないものでもやらなければならない。フリーだと、こちらの考かんがえに合あわないものは断ことわることが出来できます。大会たいかい社しゃの組織そしきにいると予算よさん編成へんせいとかがルーズですね。企業きぎょう家かとしてソロバンの立たつことがフリー監督かんとくでは不可欠ふかけつです」などと述のべている。

岡田おかだは1968年ねんの『徳川とくがわ女系じょけい図ず』から始はじまるエロ路線ろせんの映画えいがを、"刺激しげき性せい路線ろせん"とネーミング。石井いしい作品さくひん『温泉おんせんあんま芸者げいしゃ』『徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し』と、1968年ねん夏なつの時点じてんで既すでに1969年ねんの正月しょうがつ映画えいがとして岡田おかだが企画きかく準備じゅんびしていた石井いしい作品さくひん仮かりタイトル『妖婦ようふ百ひゃく人にん』(『残酷ざんこく・異常いじょう・虐待ぎゃくたい物語ものがたり 元禄げんろく女系じょけい図ず』)や、石井いしい作品さくひんだけではなく公開こうかいが1969年ねん1月がつになった中島なかじま貞夫さだお監督かんとくの『にっぽん'69 セックス猟奇りょうき地帯ちたい』など、1968年ねん後半こうはんのエロ映画えいが全すべてを"刺激しげき性せい路線ろせん"と提唱ていしょうした。これに続つづく東映とうえい新しん路線ろせんとして1968年ねん暮くれに岡田おかだが発表はっぴょうしたのが、1969年ねんの東映とうえい新しん路線ろせん"性愛せいあいもの"シリーズ"性愛せいあい路線ろせん"であった。このとき発表はっぴょうした1969年ねん"性愛せいあい路線ろせん"東映とうえいラインナップは、『異常いじょう・残酷ざんこく・虐待ぎゃくたい物語ものがたり・元禄げんろく女系じょけい図ず』（『残酷ざんこく・異常いじょう・虐待ぎゃくたい物語ものがたり 元禄げんろく女系じょけい図ず』）『異常いじょう性愛せいあい記録きろく ハレンチ』『㊙女子大じょしだい生せい・妊娠にんしん・中絶ちゅうぜつ』（『㊙女子大じょしだい生せい 妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ』）『㊙トルコ風呂とるこぶろ・指先ゆびさきの魔術まじゅつ師し』『婦人ふじん科か秘ひ聞・下半身かはんしん相談そうだん』『元禄げんろくいれずみ師し・責ぜめ絵え』（『徳川とくがわいれずみ師し 責ぜめ地獄じごく』）『温泉おんせんポン引女中ちゅう』『不良ふりょうあねご伝でん』『やざぐれのお万まん』（『やさぐれ姐あね御ご伝つて 総括そうかつリンチ』？）などだった。『残酷ざんこく・異常いじょう・虐待ぎゃくたい物語ものがたり 元禄げんろく女系じょけい図ず』が二ふたつの路線ろせんに被こうむるが、『㊙女子大じょしだい生せい 妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ』は小西こにし通雄みちお監督かんとくで、当時とうじの映画えいが誌しに荒井あらい美よし三雄みつお監督かんとくの『温泉おんせんポン引女中ちゅう』を"性愛せいあい路線ろせん第だい七なな作さく"と紹介しょうかいした記述きじゅつが見みられることから、"性愛せいあい路線ろせん"も石井いしい作品さくひんだけを指さすものではなく、1969年ねんに製作せいさくする東映とうえいエロ映画えいがの全すべてを指さしていた。つまり公開こうかいが1969年ねんにかかっても1968年ねんに製作せいさくしたエロ映画えいがの全すべてが"刺激しげき性せい路線ろせん"、1969年ねんに製作せいさくを予定よていしていた東映とうえいエロ映画えいがは全すべて"性愛せいあい路線ろせん"と最初さいしょは呼よんだ。石井いしいは1969年ねんの『キネマ旬報きねまじゅんぽう』4月がつ下旬げじゅん号ごうで「今年ことしは岡田おかだ氏しと二人ふたり一緒いっしょで悪役あくやくでいこうということで、いわゆるオーソドックスな線せんだけではなく、そういう方面ほうめん（性愛せいあい路線ろせん）に活路かつろがあるのではないかという考かんがえ方かたでやっているのです。若わかい人ひとにも同おなじ考かんがえの人ひとがいるわけで、大おおいにそういう人達ひとたちを糾合きゅうごうして、企業きぎょう内ないハレンチ派はをつくって、今年ことしは大おおいにハレンチ派はを伸のばしていこうと思おもっているわけです」と述のべた。2018年ねん現在げんざいはあまり使つかわれないが、当時とうじは"ハレンチ"という言葉ことばが広ひろく使つかわれた。

1969年ねん4月がつ『徳川とくがわいれずみ師し 責ぜめ地獄じごく』の撮影さつえい中ちゅう、由美ゆみてる子こが逆さかさ片足かたあし吊つりで一いち日にち中ちゅう吊つるされるなどの異常いじょうな撮影さつえいで失踪しっそうし（代役だいやくが片山かたやま由美子ゆみこ）、これを切きっ掛かけに撮影さつえい所しょを冒涜ぼうとくしたと東映とうえい京都きょうとの助監督じょかんとくたちによる石井いしいボイコット運動うんどうが起おきた。このとき助監督じょかんとくたちが作成さくせいした告発こくはつ文ぶんに"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"という言葉ことばが使つかわれ、この騒動そうどうは新聞しんぶんや週刊しゅうかん誌し、テレビの全国ぜんこくニュースにも大おおきく取とり上あげられ、論争ろんそうを起おこす大だい問題もんだいに発展はってんしたため、"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん""残虐ざんぎゃく異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"といった言葉ことばが拡散かくさんした。"異常いじょう性愛せいあい"という言葉ことばは1969年ねん2月がつ21日にち公開こうかいの"性愛せいあい路線ろせん"の第だい二に弾だん『異常いじょう性愛せいあい記録きろく ハレンチ』で、映画えいがのタイトルとしても初はじめて使用しようされたものと見みられ、この"異常いじょう性愛せいあい"という言葉ことばと"路線ろせん"をくっ付づけ、東映とうえい京都きょうとの助監督じょかんとくたちが"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"という言葉ことばを最初さいしょに使つかったものと推察すいさつされる。岡田おかだが提唱ていしょうしていたのは"性愛せいあい路線ろせん"で"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"と言いったことはなく、石井いしい作品さくひんの常連じょうれん女優じょゆう・賀川かがわゆき絵えは「私わたし達たちは"性愛せいあい路線ろせん"と言いわれていましたよ。"異常いじょう"はついてなかった（笑）」と述のべている。岡田おかだはこの排斥はいせき運動うんどうに反論はんろんし「体制たいせい打破だはということだ。昔むかし、存在そんざいしたようなファンは、今いまはテレビにかじりついている。だから、昔むかしのファンに受うけたような旧きゅう体制たいせいの映画えいがを作つくっていたのでは、現代げんだいの映画えいが観客かんきゃくをつなぎ止とめることはでけんわ」と一蹴いっしゅうした。他社たしゃに類似るいじ昨さく品しなが増ふえ、商売しょうばいがやりにくくなったため、荒井あらい美よし三雄みつお監督かんとくの『温泉おんせんポン引女中ちゅう』を最後さいごに、石井いしい作品さくひんでいえば『徳川とくがわいれずみ師し 責ぜめ地獄じごく』を最後さいごに"性愛せいあい路線ろせん"から手てを引ひき、「70年ねん安保あんぽを控ひかえて映画えいがも時代じだいに即応そくおうした強度きょうどの暴力ぼうりょくが受うけるはず」と岡田おかだが次つぎに打うち出だしたのが、"刺激しげき暴力ぼうりょく路線ろせん" "ゲバルト路線ろせん"『やくざ刑罰けいばつ史し 私刑しけい！』だった。石井いしいも「"ひっぱがし"を6本ほんも作つくったので、もう飽あきた」と話はなした。"ゲバルト路線ろせん"は、石井いしいボイコット運動うんどうの前まえから構想こうそうがあり、1969年ねんに性愛せいあい路線ろせん"として打うち出だした第だい二に弾だんで2月がつに公開こうかいした『異常いじょう性愛せいあい記録きろく ハレンチ』が興きょう収おさむ1億おく5000万まん円えんまでガクッと落おち、各社かくしゃエロ映画えいがが氾濫はんらんしブームも下火したびになったため、先さきを見越みこして"性愛せいあい路線ろせん"から"ゲバルト路線ろせん" "暴力ぼうりょく私刑しけい路線ろせん"に方向ほうこう転換てんかんしたともいわれる。1969年ねん3月がつ14日にちにあった東映とうえい定例ていれい会見かいけんで岡田おかだが「セックス路線ろせんも少すこしマンネリになので刺戟しげき路線ろせんというようなものに変かえてゆく」と発表はっぴょうした。しかし"ゲバルト路線ろせん"は警視庁けいしちょうから「70年ねん安保あんぽを控ひかえて鬱積うっせきする青少年せいしょうねんのエネルギーがゲバルトに向むかう。エロ映画えいがより悪わるい」という見方みかたがあったとされ、"ゲバルト路線ろせん"は『やくざ刑罰けいばつ史し 私刑しけい！』1本ほんだけで終おわり、続つづいて打うち出だされたのが"実話じつわ路線ろせん"。これが本物ほんものの阿部あべ定じょうを引ひっ張ぱり出だしたことでも知しられる『明治めいじ・大正たいしょう・昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』。「阿部あべ定じょう事件じけん」「小平こだいら事件じけん」「日本にっぽん閣かく事件じけん」「高橋たかはしお伝でん」など、ショッキングな事件じけんをそのままオムニバスで映画えいが化かすると発表はっぴょうし、東映とうえいは阿部あべ定じょうを記者きしゃ会見かいけんにも出席しゅっせきさせ、物凄ものすごい数かずの報道陣ほうどうじんが集あつまり、ヤクザ映画えいがやこれまでの"刺激しげき路線ろせん"が一段いちだんとエスカレートするのではと評ひょうされ、良識りょうしき論争ろんそうを引ひき起おこした。『明治めいじ大正たいしょう昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』公開こうかい時じの新聞しんぶん広告こうこくに"実録じつろく路線ろせん第だい一いち弾だん"と書かかれたものがあり、『やくざ刑罰けいばつ史し 私刑しけい！』と『明治めいじ大正たいしょう昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』は、1970年代ねんだいの東映とうえい実録じつろく路線ろせんをいち早はやく開拓かいたくしたとの評価ひょうかもある。『明治めいじ・大正たいしょう・昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』はヒットし、掛かけ札さつ昌裕まさひろは「ずっとそれをシリーズでやることになったんですよ、『説教せっきょう強盗ごうとう』ってサブタイトルまでついていたんですけど、何なにか石井いしいさんが違ちがう方向ほうこうに行いきたいというのがあったんでしょうね」と述のべており、"実話じつわ路線ろせん"は続つづく予定よていだったと見みられる。大手おおて映画えいが会社かいしゃは経営けいえいが軒並のきなみ"火ひの車くるま"状態じょうたいで、"任侠にんきょう路線ろせん"と"エログロ路線ろせん"の大当おおあたりにより、東映とうえい一いち社しゃのみ黒字くろじを毎年まいとし出だし続つづけ、1960年代ねんだい後半こうはんは配はい収おさむトップの座ざを守まもり続つづけた。1969年ねん上半期かみはんきの五ご社しゃの総そう配はい収おさむのうち、東映とうえいの配はい収おさむはシェア40.3%になった。1960年代ねんだい後半こうはんに映画えいが製作せいさくだけで黒字くろじを出だしていたのは東映とうえいだけで、東宝とうほう以外いがいの松竹しょうちく、日活にっかつ、大映だいえいは東映とうえいのマネをしようと必死ひっしの努力どりょくを続つづけた。

1969年ねん8月がつ、石井いしい監督かんとくの『明治めいじ・大正たいしょう・昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』公開こうかい前まえに岡田おかだが「『明治めいじ・大正たいしょう・昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』と11月に公開こうかいを予定よていしているエロチック・アニメーション『㊙劇げき浮世絵うきよえ捕物とりもの帳ちょう』（『㊙劇画げきが 浮世絵うきよえ千せん一いち夜や』）を最後さいごに"刺激しげき路線ろせん"にピリオドを打うつ」と発表はっぴょうした。この二本立にほんだては新聞しんぶん広告こうこくに「シャム双生児そうせいじと春本しゅんぽん浮世絵うきよえでお楽たのしみ」と惹句が書かかれた当時とうじエロ映画えいがへの風当かぜあたりが強つよくなり、警視庁けいしちょうは婦人ふじん団体だんたいからエロ映画えいがの取締とりしまりを強化きょうかするよう突上つきあげを食くらい、映倫えいりんに審査しんさの強化きょうかを要請ようせいしていた。

撤退てったい理由りゆうとして岡田おかだは「至極しごくカンタンな理屈りくつ。70年ねん対策たいさく。明年みょうねんは安保あんぽと万博ばんぱくの年とし。万博ばんぱくの影響えいきょうは大たいしたことないが、怖こわいのは安保あんぽ闘争とうそうだ。世よの中なかが上うえへ下したへの大騒おおさわぎをしているときに、ハダカにムチを打うったり、逆さかさ吊つりにするようなシンドイものは敬遠けいえんされるのではないか」と話はなした。また岡田おかだは「もし（"性愛せいあい路線ろせん"を）復活ふっかつするなら、ひとまず静しずまった明後年みょうごねん（1971年ねん）」と話はなし、その代かわりに江戸川えどがわ乱歩らんぽや夢野ゆめの久作きゅうさくなどの全集ぜんしゅうがベストセラーになっていることにヒントを得えて、"怪奇かいきロマン路線ろせん"を敷しくとし、現状げんじょうへの欲求よっきゅう不満ふまんの鬱積うっせきがこうした怪奇かいき幻想げんそうに走はしらせているのだし明年みょうねんの思想しそうの主流しゅりゅうの一ひとつ」と述のべた。石井いしい監督かんとくの次回じかい作さくを急せきょ切換きりかえての第だい一いち弾だんを『パノラマ島とう奇き譚たん』と発表はっぴょうし、「江戸川えどがわ乱歩らんぽの有名ゆうめいな原作げんさくを中心ちゅうしんに他たの作品さくひんも加味かみする。こうしたものは松竹しょうちくがすでに丸山まるやま明宏あきひろで手てがけたことがあるが、単たんなる幻想げんそうではなく、もっとリアルな内容ないようにする」と説明せつめいした。

また「江戸川えどがわ乱歩らんぽの作品さくひんをかたっぱしから映画えいがにする」と合あわせて発表はっぴょうし、"怪奇かいきロマン路線ろせん"は本ほん作さく一本いっぽんではなく、路線ろせん化かされる予定よていで、次つぎ作さくを予定よていしていたのは『地獄じごく』であった（内容ないようが大おおきく変かわり1999年ねんに『地獄じごく』として映画えいが化か）。

当時とうじのマスメディアからは「従来じゅうらいの路線ろせんをオブラートで包つつんだ形かたちになるのだろう。しかし数々かずかずのフンドシ女優じょゆうを怪奇かいきロマンに切きり替かえられるのか」「『恐怖きょうふ・畸形人間にんげん』という題だいからも想像そうぞうされるように畸形人間にんげんのオンパレード。怪奇かいき幻想げんそうといえば聞きこえはいいが、要ようするに乱歩らんぽブームにあやかったエログロ路線ろせんの一いち変種へんしゅ。つまり畸形映画えいがというわけだ」「配役はいやくは霊感れいかん女優じょゆうの北条ほうじょうきく子こが乱歩らんぽの霊れいを呼よび、そのお告つげで決きめるという。ヒロインは北条ほうじょうきく子こと御託宣ごたくせんが下くだったらどないするねン」などとおちょくられた。

石井いしい輝男てるお監督かんとくの"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"と総称そうしょうされる9本ほんのうち、最後さいごの3本ほんは、路線ろせんといっても1本ほんだけで終おわったが、それぞれ、"ゲバルト路線ろせん"『やくざ刑罰けいばつ史し 私刑しけい！』、"実話じつわ路線ろせん"『明治めいじ・大正たいしょう・昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』、"怪奇かいきロマン路線ろせん"『江戸川えどがわ乱歩らんぽ全集ぜんしゅう 恐怖きょうふ奇形きけい人間にんげん』であった。

1969年ねん10月がつ15日にち公開こうかいの『日本にっぽん暗殺あんさつ秘録ひろく』を"ゲバルト路線ろせん"第だい一いち弾だんとする文献ぶんけんもある。『江戸川えどがわ乱歩らんぽ全集ぜんしゅう 恐怖きょうふ奇形きけい人間にんげん』は興行こうぎょうで惨敗ざんぱいし、"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"も惨みじめな終了しゅうりょうを迎むかえた。

この時期じきテレビから無料むりょうで巻まき散ちらされる日常にちじょう的てきで軽かるいエロが大だいウケし、特とくに同どう時期じき放送ほうそうされた「野球やきゅう拳けん」のコーナーが大だいウケした日本にほんテレビ『コント55号ごうの裏番組うらばんぐみをぶっとばせ!』が開始かいしされ、爆発ばくはつ的てきな人気にんきを得えた。当時とうじの大衆たいしゅうが求もとめていたのは、石井いしいが描えがいた濃厚のうこうで泥臭どろくさい性愛せいあい絵図えずではなく、もっと軽かるいエロだったという見方みかたもある。

石井いしいのエログロ映画えいが『徳川とくがわ女系じょけい図ず』の大だい成功せいこうは、邦画ほうが五ご社しゃに大おおきな影響えいきょうを及およぼし 、テレビの普及ふきゅうによる観客かんきゃく減げんに喘あえいでいた映画えいが各社かくしゃは揃そろってエロ映画えいがを番組ばんぐみに乗のせることで命脈めいみゃくを保たもとうと試こころみた。テレビ側がわもこの事態じたいを静観せいかんせず、映画えいががエロで集客しゅうきゃくするなら、テレビもエロを追おうという発想はっそうで映画えいがに対抗たいこうした。

テレビ界かいは1969年ねん秋あきの番組ばんぐみ改編かいへん期きで、一層いっそうお色気いろけシーンを増量ぞうりょうさせた。テレビにまで影響えいきょうを及およぼした"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"はテレビによって命脈めいみゃくを絶たたれたのである。"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"は打うち上あげ花火はなびのように一瞬いっしゅんで燃もえ尽つきた日本にっぽん映画えいがの徒花あだばなだった。

しかし1980年代ねんだいに入はいり、アメリカから「カルト映画えいが」の概念がいねんが入はいって来きて復活ふっかつ、リアルタイムを知しらない新あたらしい映画えいがファンの間あいだで口くちコミで評判ひょうばんが広ひろがり、以後いご20年ねんに渡わたって名画めいが座ざの定番ていばん作品さくひんとなった。

『江戸川えどがわ乱歩らんぽ全集ぜんしゅう 恐怖きょうふ奇形きけい人間にんげん』は日本にっぽん映画えいがをカルトな視点してんから観みるその先駆さきがけといわれ、石井いしい輝男てるおの再さい評価ひょうか及および復活ふっかつの起爆きばく剤ざいとなった。『江戸川えどがわ乱歩らんぽ全集ぜんしゅう 恐怖きょうふ奇形きけい人間にんげん』の併映へいえい作さくだった『㊙劇画げきが 浮世絵うきよえ千せん一いち夜や』が公開こうかい後ごに警視庁けいしちょう保安ほあん一いち課かから、「刑法けいほうにふれる疑うたがいがあり、カットしない場合ばあいは断固だんこ取とり締しまる」とキツい警告けいこくがあり、東映とうえいはカットに応おうじたが、大手おおての東映とうえいが独立どくりつプロの危険きけんな映画えいがを買かって、むざむざアミに引ひっ掛かかるという失態しったいを演えんじ、官憲かんけんの直接ちょくせつ介入かいにゅうによる作品さくひんのカットという悪わるい前例ぜんれいを残のこし、映画えいが界かいにとって大おおきなマイナスとなった。

東映とうえい社長しゃちょうの大川おおかわ博ひろしは勲くん二に等とう瑞宝章ずいほうしょうという大臣だいじん級きゅうの勲章くんしょうを受うけ、1969年度ねんどの教育きょういく映画えいが祭さいで功労こうろう章あきらも受うけたことから「これでは国民こくみんの名なにおいて贈おくられた勲章くんしょうが泣なく」などと批判ひはんされた。

大川おおかわは映画えいが作づくりに口くちを出ださず、岡田おかだは自由じゆうな映画えいが作づくりをさせてくれる大川おおかわに、「現場げんばにいてどんなにありがたかったことか」と話はなしており、エログロ映画えいがの終了しゅうりょうはこの影響えいきょうもあったかもしれない。"性愛せいあい路線ろせん"も1969年ねん夏なつあたりから、興行こうぎょう成績せいせきが落おちており、高倉たかくら健けんの独立どくりつ説せつも沸わき上あがり、任侠にんきょう路線ろせんを任まかせていた俊しゅん藤ふじ浩ひろし滋しげるが「会社かいしゃを離はなれて製作せいさくした方ほうが能率のうりつ的てき」と爆ばく弾だん発言はつげん。刺激しげき暴力ぼうりょく路線ろせん"に力ちからを入いれる岡田おかだと俊しゅん藤ふじとの対立たいりつが始はじまっていた。

1969年ねん暮くれの時点じてんでは1970年ねん8月がつに『地獄じごく』 (1999年ねんの『地獄じごく』はこれの内容ないようを大おおきく変かえたもの)を公開こうかいして一連いちれんの“性愛せいあい路線ろせん”を終了しゅうりょうさせるという構想こうそうがあった。

石井いしいは『地獄じごく』の製作せいさく準備じゅんびをしていたが、石井いしいが次つぎに与あたえられた企画きかくは、岡田おかだから売うり出だしを頼たのまれた大型おおがた新人しんじん・渡瀬わたせ恒彦つねひこのデビュー主演しゅえん作さく『殺ころし屋や人別にんべつ帳ちょう』。東映とうえいはしばらく成人せいじん映画えいが路線ろせんを凍結とうけつし、石井いしいが東映とうえいで『地獄じごく』を撮とる機会きかいが与あたえられることはなかった。

“性愛せいあい路線ろせん”の提唱ていしょう者しゃである岡田おかだは、『読売新聞よみうりしんぶん』夕刊ゆうかん1970年ねん3月がつ7日にち付づけの『現代げんだいの映画えいがとセックス』という記事きじで、“性愛せいあい路線ろせん”が下火したびになったとするインタビューに答こたえ、「続つづけてやっているとどうしてもグロになってしまうもんだから。でも映画えいがにエロチシズムの要素ようそは残のこしておく必要ひつようがあると思おもう。お客きゃくの要求ようきゅうにこたえる意味いみでもね。石井いしい輝男てるおも当初とうしょハダカはユーモアとして表現ひょうげんしたんだが、連続れんぞくして作つくっていると、ハダカの表現ひょうげんには制約せいやくがあるから、サド、マゾ、ホモの異常いじょう性愛せいあいに傾かたむき、グロテスクな方向ほうこうに進すすまざるを得えなかった。そんなときに『江戸川えどがわ乱歩らんぽ全集ぜんしゅう　恐怖きょうふ奇形きけい人間にんげん』と『㊙劇画げきが 浮世絵うきよえ千せん一いち夜や』に対たいして警視庁けいしちょうの取とり締しまり強化きょうか宣言せんげんと映倫えいりんへの警告けいこくがあった。われわれが自主じしゅ規制きせいの建たて前まえとして作つくった映倫えいりんを追おい込こんではいかん。それは意識いしきします。だから今度こんど作つくるとなると初心しょしんに帰かえって一いちから始はじめることが必要ひつようだ。ユーモアのある艶笑えんしょうものですな。ただこれは力ちからのある監督かんとくでないと出来できないんだ」と“性愛せいあい路線ろせん”を終了しゅうりょうさせた理由りゆうを話はなした。

『読売新聞よみうりしんぶん』は「ビジネスとして作つくり始はじめた“性愛せいあい路線ろせん”がエスカレートして提唱ていしょう者しゃの手てに負おえなくなって来きたらしい。お客きゃくの方ほうが食傷しょくしょう気味ぎみで見みせ物もの的てきなエロを見限みかぎったという理由りゆうもあろうが、このへんに現代げんだいのセックス状じょう況きょうの奇き怪あやさが現あらわれているようである」と解説かいせつしている。

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詳細しょうさいは「㊙劇画げきが 浮世絵うきよえ千せん一いち夜や」を参照さんしょう

温泉おんせん芸者げいしゃシリーズとポルノ

1968年ねん、岡田おかだの企画きかくで始はじめた"温泉おんせん芸者げいしゃシリーズ"、"温泉おんせんもの"、"芸者げいしゃもの"の、第だい一いち作さくのタイトル『温泉おんせんふんどし芸者げいしゃ』は映倫えいりんからクレームが来きてボツ企画きかくに。結局けっきょく『温泉おんせんあんま芸者げいしゃ』（1968年ねん6月がつ28日にち公開こうかい）から6本ほん作つくられた。

東映とうえいの"温泉おんせん芸者げいしゃシリーズ"は、1963年ねん『温泉おんせん芸者げいしゃ』（叶かのう順子じゅんこ主演しゅえん・富本とみもと壮たけし吉きち監督かんとく）から始はじまる大映だいえいの"温泉おんせんシリーズ"を真似まねたものといわれる。

外注がいちゅうのピンク女優じょゆうを大量たいりょう起用きようした『徳川とくがわ女系じょけい図ず』がピンク業界ぎょうかいから反撥はんぱつを受うけたため、岡田おかだプロデュースのシリーズ第だい3作さく1968年ねん『温泉おんせんあんま芸者げいしゃ』（石井いしい輝男てるお監督かんとく）からは自前じまえのヌード女優じょゆうを育成いくせいしてエロ路線ろせんを充実じゅうじつさせた。

映画えいがの舞台ぶたいとなった温泉おんせんは観光かんこう地ちとして売うり出だせるため、ロケ大だい歓迎かんげいのタイアップ作戦さくせんで、安上やすあがりの上うえ、スタッフ・キャストは至いたれり尽ことごとくせりだったといわれる 。ところが段々だんだん興行こうぎょう成績せいせきが落おち、肝心かんじんの温泉おんせん地ちもロケお断ことわりとなり、苦肉くにくの策さくで鈴木すずき則のり文ぶんの静岡しずおかの実家じっかのコネを使つかい、伊豆いずで撮影さつえいされたのが第だい4作さく『温泉おんせんみみず芸者げいしゃ』（1971年ねん7月がつ公開こうかい、鈴木すずき則のり文ぶん監督かんとく）。この『温泉おんせんみみず芸者げいしゃ』に於おいてプロデューサーの天尾てんのお完かん次じが海外かいがいの雑誌ざっしのグラビアから"ポルノグラフィ"という言葉ことばを見みつけて、"ポルノ"という言葉ことばを日本にっぽんで初はじめて使つかった。本ほん作さくで主演しゅえんデビュー作さくとなった当時とうじ16歳さいの池いけ玲子れいこを成人せいじんの履歴りれき書しょに100%捏造ねつぞうし、池いけを売うり出だすため、あれこれ思案しあんし「日本にっぽん初はつのポルノ女優じょゆう」というキャッチコピーを付つけた。

今日きょうSEX映像えいぞうの代名詞だいめいしとして日本にっぽんで定着ていちゃくする、"ポルノ"という言葉ことばは、このとき東映とうえいが作つくった造語ぞうご。

"ポルノグラフィ"という言葉ことばは、文学ぶんがく、絵画かいが、写真しゃしん等ひとしの官能かんのう表現ひょうげんの一いち分野ぶんやとして存在そんざいはしていたが、知しる人ひとのみが知しる異端いたんの業界ぎょうかい用語ようごで一般いっぱんには知しられてなかった。勿論もちろん、"ポルノグラフィ"を"ポルノ"と略りゃくしたのもこの時ときが最初さいしょである。池いけは"ポルノ"という言葉ことばを聞きいて「全然ぜんぜんいやらしくないし、すっごく可愛かわいい感かんじがする」と喜よろこんでいたという。

この『温泉おんせんみみず芸者げいしゃ』で池いけとともにデビューしたのが、やはり天尾てんのおと鈴木すずきがスカウトした杉本すぎもと美樹みきで、岡田おかだ社長しゃちょうから「二人ふたりを自前じまえのポルノ女優じょゆうとして育そだてろ」と指示しじがあった。"ポルノ"という言葉ことばはスポーツ新聞しんぶんから、夕刊ゆうかん紙し、週刊しゅうかん誌しなどに拡散かくさんされ、川上かわかみ宗薫そうくんや梶山かじやま季之としゆきといった作家さっかの官能かんのう小説しょうせつには"ポルノ小説しょうせつ"という言葉ことばが付つけられた。

日活にっかつも東映とうえいのアイデアを拝借はいしゃくして"日活にっかつロマンポルノ"という言葉ことばを作つくり、東映とうえいの『温泉おんせんみみず芸者げいしゃ』公開こうかいから4か月げつ後ごの1971年ねん11月20日にちに『団地だんち妻つま 昼下ひるさがりの情事じょうじ』『色いろ暦れき大奥おおおく秘話ひわ』を"日活にっかつロマンポルノ"第だい一いち弾だんとして封切ふうきり「ポルノ映画えいが」という名称めいしょうが一気いっきに普及ふきゅう、"ポルノ"という言葉ことばが日本にっぽんに広ひろく認知にんちされ定着ていちゃくしていった。この"日活にっかつロマンポルノ"最初さいしょの二に作品さくひんはそれぞれ「団地だんち妻つまシリーズ」「色いろ暦れき大奥おおおくシリーズ」として量産りょうさんされるが、日活にっかつの大奥おおおく物ぶつは東映とうえいの大奥おおおく物ぶつ（大奥おおおくに関かんする作品さくひんの一覧いちらん）のパクリである。

東映とうえいも1972年ねんのゴールデンウィーク映画えいが『徳川とくがわセックス禁止きんし令れい 色情しきじょう大名だいみょう』から岡田おかだの強つよい意向いこうで看板かんばんに「東映とうえいポルノ路線ろせん」と書かかせた。

『温泉おんせんみみず芸者げいしゃ』は、岡田おかだが天尾てんのおと鈴木すずきをタコのよく獲えれる海岸かいがんに行いかせ、タイトルも最初さいしょは『温泉おんせんタコ壺つぼ芸者げいしゃ』であったが、「考かんがえたけど、タコ壺つぼは弱よわい。みみずにしろ」と岡田おかだが言いってきて、鈴木すずきが「もうタコ壺つぼを使つかって撮影さつえいしてますよ」と反論はんろんしたが「中身なかみはいいからタイトルだけはみみずで行いけ」と『温泉おんせんみみず芸者げいしゃ』にタイトルを変更へんこうした。

また映画えいがの「クライマックスは“セックス対決たいけつ”で行いこう」「その方ほうが作品さくひんが締しまる。温泉おんせん芸者げいしゃで“勝負しょうぶしたら締しまる”」という岡田おかだ理論りろんを指示しじし、東映とうえいポルノの“セックス対決たいけつ”という伝統でんとうはここからスタートした。

東映とうえいの"温泉おんせん芸者げいしゃシリーズ"は、その後ご1973年ねん『温泉おんせんおさな芸者げいしゃ』（鷹森たかもり立たて一いち監督かんとく）、1975年ねん『東京とうきょうふんどし芸者げいしゃ』（野田のだ幸男ゆきお監督かんとく）が製作せいさくされるもパワーダウンしシリーズ終了しゅうりょう。日活にっかつロマンポルノの"温泉おんせん芸者げいしゃモノ"も次第しだいになくなり、ジャンルとして絶滅ぜつめつしている。

セックスドキュメント

1969年ねんにルポライターの竹中たけなか労ろうが岡田おかだに持もち込こんできた“時代じだいの風俗ふうぞくドキュメント”という企画きかくを元もとに中島なかじま貞夫さだおが、当時とうじの日本にっぽんの性せい風俗ふうぞくとアングラ文化ぶんかをやらせなしのドキュメンタリーで撮影さつえい、「セックスドキュメントシリーズ」としてシリーズ化かされ『にっぽん'69 セックス猟奇りょうき地帯ちたい』など計けい4本ほん、他たの監督かんとくで3本ほんの計けい7本ほんが製作せいさくされた。

詳細しょうさいは「セックスドキュメントシリーズ」を参照さんしょう

実録じつろく犯罪はんざい映画えいがは古ふるくから作つくられてきたが、東映とうえいの実録じつろく犯罪はんざい映画えいがは"東映とうえいポルノ路線ろせん"を源流げんりゅうとする。東映とうえいは大手おおて映画えいが会社かいしゃで最もっとも積極せっきょく的てきに実録じつろく犯罪はんざい映画えいがに手てを出だした。

1969年ねん『明治大めいじだい正せい昭和しょうわ 猟奇りょうき女おんな犯罪はんざい史し』は、阿部あべ定じょう事件じけん初はつの映像えいぞう化かで阿部あべ定じょう本人ほんにんも映画えいがに出演しゅつえんし歴史れきし的てき映像えいぞうを残のこした。

1968年ねん、小松川こまつがわ事件じけんを映画えいが化かした大島おおしま渚なぎさ監督かんとく『絞しぼ死刑しけい』で脚本きゃくほんを共とも作さくした深ふか尾道おのみち典てんが実録じつろく犯罪はんざいに拘かかわり、東映とうえいで新橋しんばし第一だいいちホテル歯科しか女医じょい殺人さつじん事件じけんを『女医じょいの愛欲あいよく日記にっき』（1973年ねん）として脚本きゃくほん監督かんとく、立教大学りっきょうだいがく助教授じょきょうじゅ教おしえ子ご殺害さつがい事件じけんの映画えいが化か『女子大じょしだい生せい失踪しっそう事件じけん 熟なれた匂におい』（1974年ねん、荒井あらい美よし三雄みつお監督かんとく）、滋賀銀行しがぎんこう9億おく円えん横領おうりょう事件じけんの映画えいが化か『史上しじょう最大さいだいのヒモ 濡ぬれた砂丘さきゅう』（1974年ねん、依田よだ智さとし臣しん監督かんとく）の脚本きゃくほんを手掛てがけた。

1975年ねんの『実録じつろく三さん億おく円えん事件じけん 時効じこう成立せいりつ』は、岡田おかだ社長しゃちょうの号令ごうれいで製作せいさくされた三さん億おく円えん事件じけん映画えいが。

1976年ねん『戦後せんご猟奇りょうき犯罪はんざい史し』も大久保おおくぼ事件じけん、西口にしぐち彰あきら事件じけんを最初さいしょに映像えいぞう化かした作品さくひんである。

スケバン映画えいが

日本にっぽんに於おける"不良ふりょうグループ"ものの先駆せんくは、やはり岡田おかだが梅宮うめみや辰夫たつおを売うり出だすため、マーロン・ブランドの主演しゅえん映画えいが『乱暴らんぼう者しゃ』などをヒントに作つくらせた1968年ねんから始はじまる『不良ふりょう番長ばんちょう』シリーズといわれるが、『不良ふりょう番長ばんちょう』シリーズのヒットに目めを付つけ、その女性じょせい版ばんを作つくったのは東映とうえいが最初さいしょではなく、日活にっかつが1969年ねんに作つくった『女おんな番長ばんちょう 仁義じんぎ破やぶり』（長谷川はせがわ照子てるこ主演しゅえん・江崎えざき実生みしょう監督かんとく）。

これを皮切かわきりに日活にっかつは1970年ねん『野良猫のらねこロック』をシリーズ化かして突如とつじょ女おんな番長ばんちょうブームが起おきた。この『野良猫のらねこロック』シリーズは第だい1作さくのみホリプロが製作せいさくした関係かんけいで主演しゅえんが和田わだアキ子あきこで、2作さく目めから5作さく目めが梶かじ芽衣子めいこだった。梶かじはこの後のち、東映とうえいに移籍いせきするが『野良猫のらねこロック』シリーズには東映とうえいで当あてた『女囚じょしゅうさそりシリーズ』の萌芽ほうがが見みられる。

東映とうえいも『野良猫のらねこロック』シリーズと同どう時期じきに東ひがし撮つまみで大信田おおしだ礼子あやこ主演しゅえん「ずべ公こう番長ばんちょうシリーズ」を、京きょう撮つまみで大原おおはら麗子れいこ、夏なつ純子じゅんこ、市し地ち洋子ようこ主演しゅえんで『三さん匹ひきの牝めす蜂はち』（1970年ねん6月がつ公開こうかい）を製作せいさく。

東映とうえいの女おんな番長ばんちょう映画えいがは、岡田おかだが「石井いしい輝男てるおのエログロ映画えいがが終おわり、ヤクザ映画えいが以外いがいにもう1本ほんラインがないと興行こうぎょうが弱よわい、若者わかもののラインを何なにとか確立かくりつしたい」と号令ごうれいをかけシリーズ化かさせた。

東映とうえいの番長ばんちょう映画えいがは、男おとこ版ばんも女おんな版ばんも岡田おかだの企画きかく。『三さん匹ひきの牝めす蜂はち』は、中島なかじま貞夫さだおが脚本きゃくほんを担当たんとうしており、中島なかじまの1966年ねんの映画えいが『893愚連隊ぐれんたい』との類似るいじ性せいも指摘してきされ、住所じゅうしょ不定ふてい、無職むしょくのチンピラ娘むすめ三さん人にんが、万博ばんぱくで賑にぎわう大阪おおさかを舞台ぶたいにウロチョロ悪事あくじをやらかし、やがて暴力団ぼうりょくだんと真正面ましょうめんからぶつかる話はなしで、「スケバン」「女おんな番長ばんちょう」という設定せっていでこそないが"スケバンもの"の一ひとつといえる。

ここでのピチピチした若わかい女おんなたちの活躍かつやくぶりが1970年ねん9月がつ公開こうかいの『ずべ公こう番長ばんちょう』シリーズに引ひき継つがれる。同どうシリーズは、大信田おおしだら、ずべ公おおやけたちが毎回まいかいビキニ、ミニスカ、ホットパンツなど、流行りゅうこうのハレンチファッションに身みを包つつみ"元祖がんそコスプレ"とも評ひょうされる。同どうシリーズは、二に作さく目め以降いこう、どんどんエロ要素ようそは希薄きはくとなり、ずべ公おおやけたちによる男おとこ顔負かおまけの荒あらっぽい女おんなの活劇かつげき映画えいがに変化へんかした。

その後ご女おんな番長ばんちょうシリーズは池いけ玲子れいこや杉本すぎもと美樹みき、山内やまうちえみこらが主演しゅえんして多数たすう製作せいさくされるが、1970年ねん10月がつ27日にち公開こうかいの『女おんな番長ばんちょうブルース(すけばん) 牝めす蜂はちの逆襲ぎゃくしゅう』で初はじめて"女おんな番長ばんちょう"をすけばん（スケバン）と読よませた。

"すけばん（スケバン）"という言葉ことばが映像えいぞう作品さくひんで用もちいられたのはこれが最初さいしょ。封切ふうきり時じの映画えいがポスターに「女おんな番長ばんちょう」の下したに"すけばん"とルビが振ふられている。

これ以前いぜんの他社たしゃの『女おんな番長ばんちょう〇〇』という映画えいがは、"女おんな番長ばんちょう"と書かいて"おんなばんちょう"と読よんでいた。

元もとは岡田おかだが命名めいめいした『牝めす蜂はちの逆襲ぎゃくしゅう』というタイトルで製作せいさくを進すすめていたが、当時とうじの取材しゅざい中ちゅうに耳みみにした"スケバン"という言葉ことばの鮮度せんどは捨すてがたいと監督かんとくの鈴木すずき則のり文ぶんが"女おんな番長ばんちょう"と書かいて"すけばん（スケバン）"と読よませることを発案はつあんし『女おんな番長ばんちょう(すけばん)ブルース 牝めす蜂はちの逆襲ぎゃくしゅう』というタイトルに変更へんこうしたと話はなしているが、映画えいが界かいを引退いんたいしていた『女おんな番長ばんちょうブルース 牝めす蜂はちの逆襲ぎゃくしゅう』の助監督じょかんとくで脚本きゃくほんも担当たんとうした皆川みなかわ隆之たかゆきがインタビューで、「東京とうきょうで『不良ふりょう番長ばんちょう』をやっていたので『女おんな番長ばんちょう』にして、そのまま読よんでも語呂ごろが悪わるいと、いろいろ考かんがえて『スケコマシ』の『スケ』を使つかって『スケバン』にした」「ぼくの造語ぞうごなんです」などと話はなし、『スケバン』という言葉ことばを作つくったのは自分じぶんと述のべている。

東映とうえいのスケバン映画えいがは他社たしゃのスケバン映画えいがと比くらべポルノ性せいが高たかかった。

毛並けなみのいい映画えいが会社かいしゃ・東宝とうほうも東映とうえいの女おんな番長ばんちょうシリーズを研究けんきゅうし1972年ねん『混血こんけつ児じリカ』（製作せいさく：近代きんだい映画えいが協会きょうかい、監督かんとく：中平なかひら康やすし、脚本きゃくほん：新藤しんどう兼人かねと、原作げんさく：凡天太郎たろう）という珍品ちんぴんスケバン映画えいがを撮とった。女おんな番長ばんちょうシリーズ7作さく目め『女おんな番長ばんちょう 玉突たまつき遊あそび』（1974年ねん公開こうかい）で、同どう作さくに主演しゅえんする新人しんじんポルノスター発掘はっくつに、東映とうえいと日本にほんテレビの共催きょうさいで、ポルノ女優じょゆうテレビオーディションが開催かいさいされ、三さん回かいに渡わたる審査しんさを経へて1973年ねん7月がつ7日にち、最終さいしゅう審査しんさが日本にほんテレビの『土曜どようイレブン』生放送なまほうそうで全国ぜんこく放送ほうそうされた。内容ないようが内容ないようだけに応募おうぼ者しゃも少すくなかったが、井原いはら高こう忠ただし、阿久あく悠ゆう、大竹おおたけ省二しょうじ、天尾てんのお完かん次じ、鈴木すずき則のり文ぶん、多々良たたら圭けい、荒木あらき一郎いちろうら審査しんさ員いんと司会しかい者しゃが、ブラジャーを取とるのを強要きょうようしたり、セクハラ質問しつもんを浴あびせたり、現在げんざいではまず有あり得えない放送ほうそうだったといわれる。合格ごうかく者しゃは佐分利さぶり聖子せいこと叶かのう優子ゆうこだった。

篠原しのはらとおる原作げんさく・杉本すぎもと美樹みき主演しゅえんの1974年ねん『0課かの女おんな 赤あかい手錠てじょう』は （野田のだ幸男ゆきお監督かんとく）長ながい年月としつきを掛かけて再さい評価ひょうかされた。

1971年ねんに大映だいえいが消滅しょうめつし日活にっかつもロマンポルノに移行いこうするため、東映とうえいのみで"スケバン映画えいが"の製作せいさくは続つづいたが、製作せいさくペースが鈍にぶったのは、やはり岡田おかだ社長しゃちょうがブルース・リー映画えいがを観みて、カンフー映画えいがブームの到来とうらいを予測よそくし、千葉ちば真一しんいちや山下やましたタダシ、志穂美しほみ悦子えつこらを使つかって和製わせいカラテ映画えいがの製作せいさくを始はじめたことだった。

これによりそれまでスケバン映画えいがが独占どくせんしてきた実録じつろく映画えいがのB面めん番組ばんぐみ枠わくを和製わせいカラテ映画えいがが奪うばってしまった。

カラテ映画えいががその後ごも『地上ちじょう最強さいきょうのカラテ』などのカラテドキュメンタリー路線ろせんまで、思おもいのほか長ながく続つづき"スケバン映画えいが"は遂ついに浮上ふじょうできなかった。出番でばんを失うしなった山内やまうちえみこらスケバン女優じょゆうの多おおくはテレビ部門ぶもんに送おくり込こまれた。1977年ねん『地獄じごくの天使てんし 紅あかい爆音ばくおん』で1970年代ねんだいの"スケバン映画えいが"は終了しゅうりょうしたとされる。同どう作さくは売うり出だし中ちゅうの歌手かしゅ・内藤ないとうやす子この宣伝せんでん媒体ばいたいに利用りようされたが、劇場げきじょう公開こうかいと同時どうじに内藤ないとうが大麻たいま所持しょじで逮捕たいほされ映画えいが生命せいめいを絶たたれた。その後ご"スケバン映画えいが"は、1975年ねんに連載れんさいが始はじまった和田わだ慎二しんじの漫画まんが『スケバン刑事けいじ』を実写じっしゃ化かしたスケバン刑事けいじ#実写じっしゃ化か作品さくひんが1980年代ねんだい後半こうはんに東映とうえいでテレビドラマ化か、映画えいが化かされ大だいブームを起おこした。

恐怖きょうふ女子じょし高校こうこうシリーズ

女おんな番長ばんちょうシリーズの三さん本ほん目め『女おんな番長ばんちょうゲリラ』（1972年ねん8月がつ12日にち公開こうかい）の直後ちょくご、女おんな番長ばんちょうシリーズの池いけ玲子れいこや杉本すぎもと美樹みき主演しゅえんで別線べつせんシリーズ「恐怖きょうふ女子じょし高校こうこうシリーズ」がスタートし、計けい4本ほん作つくられた。本ほんシリーズは女子高じょしこうを舞台ぶたいとした"学園がくえん系けい"女おんな番長ばんちょう映画えいがで、セせーラらー服ふくで仁義じんぎを切きり、ヤクザ映画えいが並なみばりのスケバングループ抗争こうそう劇げきを展開てんかいする。決闘けっとうスタイルが全裸ぜんらに胴着どうぎの剣道けんどうスタイルや、トップレス制服せいふくフェンシング対決たいけつとか、ある種しゅ、後のちに東映とうえいが映像えいぞう化かして大当おおあたりを取とった『スケバン刑事けいじ』に直結ちょっけつする破天荒はてんこうさを持もち、"女おんな番長ばんちょうワールド"の極北きょくほくとの評価ひょうかもある。本ほんシリーズには『ハレンチ学園がくえん』の影響えいきょうが見みられる。フランスの映画えいが配給はいきゅう会社かいしゃ「江戸えど映画えいが」(Edo Eiga) が東映とうえいから8本ほんの映画えいがを買かい付つけ、この内うち、本ほんシリーズの2作さく目め『恐怖きょうふ女子じょし高校こうこう 暴行ぼうこうリンチ教室きょうしつ』が、巻頭かんとうタイトルロールのみ1973年ねんの石井いしい輝男てるお監督かんとく『やさぐれ姐あね御ご伝つて 総括そうかつリンチ』を引ひっ付つけて、どぎついセックスシーンを付つけ加くわえ、字幕じまくをフランス語ふらんすごで政治せいじ的てき内容ないように変更へんこうし、『カマレの娘むすめたち（The Girls of Kamare）』第だい二に題名だいめい『夏なつのパンティ』（Une petite culotte pour l'été）というタイトルで1974年ねん12月から1975年ねん3月がつまでパリ・カルチエ・ラタンの映画えいが館かん・ステュディオ・ガランド（Studio Galande）で上映じょうえいされ大だいヒットしたという。

東映とうえい㊙ポルノ大会たいかい

1971年ねん大映だいえいの崩壊ほうかいで作品さくひん不足ふそくに悩なやむ映画えいが館かんに日活にっかつロマンポルノが流ながれていくのを食くい止とめるために、岡田おかだは同年どうねん12月がつから「東映とうえい㊙ポルノ大会たいかい」と銘打めいうち、東京とうきょう第だい一いちプロ、向井むかいプロなどの独立どくりつプロの作品さくひんを買かい取とって配給はいきゅうを行おこなう。これを封切ふうきり二に本立ほんだてでは保たもたないローカル館かんの番組ばんぐみ補充ほじゅうに投入とうにゅうした。「東映とうえい㊙ポルノ大会たいかい」は1973年ねん、「㊙ナウポルノ」と改称かいしょうされた。

女囚じょしゅうさそりシリーズ

梶かじ芽衣子めいこの代表だいひょう作さくとして知しられる「女囚じょしゅうさそりシリーズ」は、篠原しのはらとおる原作げんさくの映画えいが化かであるが、元もとは梶かじ主演しゅえんの女おんな版ばん"網走あばしり番外地ばんがいち"として企画きかくされたもので、"ポルノ路線ろせん"の一いち作さくであった。第だい1作さくのみ梶かじもヌードになる他ほか、女囚じょしゅうの集団しゅうだん入浴にゅうよくシーンなど裸はだかがふんだんに登場とうじょうする。

梶かじはクールなイメージで"復讐ふくしゅうする女おんな"を強烈きょうれつに演えんじて、それまでの日本にっぽん映画えいがに存在そんざいしなかったヒロイン像ぞうを確立かくりつした。

梶かじ芽衣子めいこ版ばん「さそり」は70年代ねんだい最高さいこうのアウトロー・ヒロインとして屹立きつりつし、今いまなお不変ふへんの輝かがやきを誇ほこると評ひょうされる。

70年代ねんだいに入はいると女優じょゆうの主おもな活躍かつやくの場ばは完全かんぜんにテレビになり、映画えいがで独自どくじのパーソナリティを開花かいかさせた若手わかて女優じょゆうは、梶かじと桃井ももいかおり、秋吉あきよし久美子くみこなどごく数すう人にんに限かぎられた。

また組合くみあい活動かつどう家かだった監督かんとくの伊藤いとう俊也としやの反はん体制たいせい的てきな演出えんしゅつも高たかい評価ひょうかを受うけた。伊藤いとうは「石井いしい輝男てるおも野田のだ幸男ゆきおも深作ふかさく欣二きんじも、東映とうえいの全すべてを否定ひていして映画えいがを撮とった」「"NO"という意思いしが、国家こっかをも打うち抜ぬくといった観念かんねんを劇げき構造こうぞうに織おり込こもうと考かんがえた」などと話はなしている。当時とうじ東映とうえいは労働ろうどう組合くみあいに対たいする締しめ付づけが強つよく、伊藤いとうはハチマキをして組合くみあい運動うんどうをしながら映画えいがを撮とった。

シリーズ全体ぜんたいに流ながれる体制たいせいへの反抗はんこうと復讐ふくしゅうというテーマが当時とうじの時代じだい背景はいけいにマッチした。第だい1作さく『女囚じょしゅう701号ごう/さそり』、第だい2作さく『女囚じょしゅうさそり 第だい41雑居ざっきょ房ぼう』の大だいヒットは『仁義じんぎなき戦たたかい』に先立さきだつものであり、東映とうえいに女性じょせいアクションの新あたらしい軸じくを作つくった。伊藤いとうはシリーズ化かにあたり、全すべての話はなしを連続れんぞくさせたいと考かんがえていたため、3作さくで全すべてをやりきり、会社かいしゃからは好条件こうじょうけんで続投ぞくとうを依頼いらいされたが降板こうばんした。降板こうばん理由りゆうは世間せけんで噂うわさされた梶かじとの不仲ふなか説せつではないという。元々もともと梶かじは当時とうじ結婚けっこんを考かんがえていた人ひとがいて1作さく目めで引退いんたいするつもりだった。ところが予想よそう以上いじょうの大だいヒットで岡田おかだ社長しゃちょうや俊しゅん藤ふじ浩ひろし滋しげるらの説得せっとくを受うける形かたちで、なし崩くずし的てきに出演しゅつえんを続つづけたと話はなしている。梶かじの歌うたう主題歌しゅだいか『怨うらみ節ぶし』も大だいヒットしたが、当時とうじは映画えいがの主題歌しゅだいかはまだ定着ていちゃくしていなかったという。

「女囚じょしゅうさそりシリーズ」は、第だい4作さくで梶かじ主演しゅえん、監督かんとくが長谷部はせべ安春やすはるに代かわり、第だい5作さくで主演しゅえんは多岐川たきがわ裕美ひろみに交代こうたいし監督かんとくが小平こだいら裕ひろし、第だい6作さくでは主演しゅえんが夏樹なつき陽子ようこになり興行こうぎょう的てきに失敗しっぱいし1970年代ねんだいのシリーズは終了しゅうりょうした。第だい5作さくで裸はだかになることに過敏かびんになっていた多岐川たきがわが「違ちがう演出えんしゅつ方法ほうほうもあるんじゃないですか?」と監督かんとくに意見いけんしてごね、浅香あさか光代みつよが怒いかり、根岸ねぎし季衣としえも「脱ぬがない」と言いい出だし、裸はだかのために呼よんだゴールデンハーフの高村たかむらルナも「じゃあ私わたしも脱ぬがない」と紛糾ふんきゅう。結局けっきょく多岐川たきがわの主張しゅちょうが通とおりソフトな演出えんしゅつになり、それを聞きいた第だい6作さくの夏樹なつき陽子ようこも「脱ぬがない」と言いい出だしたという。しかし第だい5作さくでは当時とうじ大人気だいにんきだった范文雀すずめが予想よそう外がいに脱ぬいでくれて驚おどろいたと監督かんとくの小平こだいらは話はなしている。

女囚じょしゅうを扱あつかった映画えいがとしては、同おなじ東映とうえいが1965年ねんに女おんな版ばん"網走あばしり番外地ばんがいち"のような『おんな番外地ばんがいち 鎖くさりの牝めす犬けん』（緑みどり魔子まこ主演しゅえん）を、大映だいえいが1968年ねんから1969年ねんにかけて"秘録ひろくもの"として、安田やすだ道代みちよ主演しゅえんで、江戸えど時代じだいの女おんな牢ろうを舞台ぶたいにした『秘録ひろくおんな牢ろう』（1968年ねん）などを製作せいさくしている。

世界せかい的てきには1971年ねん、ロジャー・コーマン製作せいさく、ジャック・ヒル監督かんとく、パム・グリア出演しゅつえんの『残酷ざんこく女おんな刑務所けいむしょ』が、女囚じょしゅう映画えいがにセックス要素ようそを注入ちゅうにゅうし大だいヒット、以降いこう続々ぞくぞくと女囚じょしゅう映画えいがが作つくられた。特とくにダイアン・ソーン主演しゅえんのエクスプロイテーション映画えいが「イルザシリーズ」は、世界せかい的てきに大だいヒットした。

詳細しょうさいは「女囚じょしゅうさそりシリーズ」を参照さんしょう

東映とうえい洋画ようが

1960年代ねんだい後半こうはんからピンク洋画ようが（洋ようピン）の人気にんきが出でて、こちらも中小ちゅうしょうの配給はいきゅう会社かいしゃで利益りえきを挙あげていた事ことに目めを付つけた岡田おかだは、エロ路線ろせんの拡大かくだいを狙ねらい1972年ねん5月がつ、東映とうえいに洋画ようが部ぶ（東映とうえい洋画ようが）を新設しんせつし洋画ようが配給はいきゅう業ぎょうへ進出しんしゅつした。

詳細しょうさいは「東映とうえい洋画ようが」を参照さんしょう

東映とうえいニューポルノ

「東映とうえいポルノ路線ろせん」は1968年ねんの『徳川とくがわ女系じょけい図ず』以来いらい、5年ねん半はんで120本ほんを超こす作品さくひんが作つくられ「ヤクザ路線ろせん」と並ならぶ看板かんばん路線ろせんの地位ちいを占しめたが、1973年ねん頃ごろから営業えいぎょう成績せいせきが急落きゅうらく。特とくに1974年ねん2月がつに公開こうかいした多岐川たきがわ裕美ひろみの主演しゅえんデビュー作さくとして知しられる『聖せい獣しし学園がくえん』は「想像そうぞうできない不入ふいり」で、「ストリップ映画えいがは所詮しょせんキワモノだよ!」と岡田おかだ社長しゃちょうが宣言せんげんし、この年とし6月がつに公開こうかいされたシャロン・ケリーと梅宮うめみや辰夫たつおのセックス戦せんが展開てんかいされる『色情しきじょうトルコ日記にっき』をもって撤退てったいを表明ひょうめいした。

しかし地方ちほうでは当時とうじ東映とうえいでも3本立ほんだてがあり、「仁義じんぎなき戦たたかいシリーズ」などのヒット作さくのロングラン態勢たいせい確立かくりつのため3週しゅう目め以降いこうの併映へいえいに加くわえたり、春休はるやすみや夏休なつやすみに展開てんかいした「東映とうえいまんがまつり」や「特撮とくさつ大会たいかい」を早はやく切きり上あげて大人おとな向むけ番組ばんぐみを欲ほしがる下番かばん線せん（地方ちほう館かん）のために、1973年ねん春はるから「300万まん（製作せいさく費ひ）映画えいが」の独立どくりつプロの「ピンク映画えいが」を模倣もほうした「500万まん（製作せいさく費ひ）映画えいが」が作つくられた。

「500万まんポルノ」という名称めいしょうは1975年ねんの文献ぶんけんにも見みられる。

「アニメなんか見みたくねえ」という筋金入すじがねいりの東映とうえいの観客かんきゃくは多おおかった。

先さきの「東映とうえい㊙ポルノ大会たいかい」が東京とうきょう第だい一いちプロ、向井むかいプロ、JAAなどの独立どくりつプロの作品さくひんを買かい取とって配給はいきゅうし、1973年ねん「㊙ナウポルノ」と改称かいしょうされたが、他社たしゃからの買かい取とりではなく、この年とし京きょう撮つまみ本体ほんたいで製作せいさくされた成人せいじん映画えいがを「東映とうえいニューポルノ」と呼よぶ。どうせなら自分じぶんのところで作つくった方ほうがいいとの岡田おかだ社長しゃちょうの判断はんだんである。

「東映とうえいニューポルノ」は2015年ねん現在げんざいデータベースにも記載きさいのない本田ほんだ達男たつお監督かんとくの『情欲じょうよくのぞき窓まど』が嚆矢こうしとされ50分ふん、あるいは60分ふん前後ぜんこうの中篇ちゅうへんが1974年ねんまで20数すう本ほん製作せいさくされたとされる。

元々もともと「500万まんポルノ」は、テレビ映画えいがが製作せいさくされていない間あいだに、空あいたスタッフを導入どうにゅうして、下番かばん線せん用ようの安やすい映画えいがを作つくろうとして出発しゅっぱつ、あくまでテレビ一いち話わ分ぶんとして発想はっそうされ、そのため上映じょうえい時間じかんは50分ふん、撮影さつえい日数にっすうは実働じつどう7日間にちかんなどと限定げんていされていた。

2013年ねん7月がつに東京とうきょうラピュタ阿佐ヶ谷あさがやで史上しじょう初はつとなる「東映とうえいニューポルノ」特集とくしゅう上映じょうえいが組くまれたが、その際さい立教大学りっきょうだいがく助教授じょきょうじゅ教おしえ子ご殺害さつがい事件じけんを扱あつかった『女子大じょしだい生せい失踪しっそう事件じけん 熟なれた匂におい』（1974年ねん、荒井あらい美よし三雄みつお監督かんとく）などが上映じょうえい中止ちゅうしとなったとされる。

1974年ねんの暮くれから公開こうかいされたフランス映画えいが『エマニエル夫人ふじん』が大だいヒットし、同どう作さくの配給はいきゅう元もとは、当時とうじまだ弱小じゃくしょうの日本ヘラルド映画にっぽんへらるどえいがで、上映じょうえい館かんは狭せまい劇場げきじょうが多おおく、満員まんいんで入場にゅうじょうをお断ことわりされるお客きゃくが続出ぞくしゅつし「エロにあぶれた男おとこたちは必かならずエロに戻もどってくる!」と、東映とうえいは1975年ねん正月しょうがつの『怪かい猫ねこトルコ風呂とるこぶろ』『赤あか線せん㊙地帯ちたい』（宮下みやした順子じゅんこ主演しゅえん・向井むかい寛ひろし監督かんとく）『下した苅かり半次郎はんじろう㊙観音かんのんを探さがせ』（森崎もりさき由紀ゆき主演しゅえん・原田はらだ隆司たかし監督かんとく）から「ポルノ路線ろせん」を再開さいかいさせた。

1975年ねん、京きょう撮つまみで製作せいさくされた『玉たま割わり人じんゆき』は、監督かんとくの牧口まきぐち雄二ゆうじが製作せいさく費ひは500万まんだったと話はなしている。

この後のち1970年代ねんだい後半こうはん、角川かどかわ映画えいがと組くんで「大作たいさく1本立ほんだて」を始はじめるまでは散発さんぱつ的てきに主おもに二番館にばんかん向むけとして「東映とうえいポルノ」は製作せいさくが続つづいた。

東映とうえい本体ほんたいは1979年ねんの『天使てんしの欲望よくぼう』（監督かんとく：関本せきもと郁夫いくお）をもってポルノから一応いちおう再さい撤退てったいしたものの、1980年代ねんだい半なかばまで関連かんれん会社かいしゃの「東映とうえいセントラル」を通とおして、主しゅとして獅子ししプロ作品さくひんなどのピンク映画えいが及および洋ようピンを買取かいとり配給はいきゅうしていた。

トルコ渡わたり鳥どり

先さきの「東映とうえいニューポルノ」は、京きょう撮つまみのポルノ増強ぞうきょう路線ろせんであったが、東ひがし撮つまみでも対抗たいこうしなければならないと指名しめいされたのが「不良ふりょう番長ばんちょうシリーズ」を1972年ねん12月に終了しゅうりょうした野田のだ幸男ゆきお監督かんとく。野田のだが打うち出だした企画きかくが、本物ほんものの風俗ふうぞく経験けいけん者しゃを主演しゅえんにしたセミドキュメント『トルコ渡わたり鳥どり』だったと書かかれた文献ぶんけんもあるが、本ほん作さくは1972年ねん11月7日にち公開こうかいの「セックスドキュメントシリーズ」第だい四よん作さく『セックスドキュメント トルコの女王じょおう』のプロデューサー・吉田よしだ達いたるがセックスドキュメントシリーズのスピンオフとして打うち出だした"新しんトルコ・シリーズ"の一本いっぽんである。

1975年ねんの関本せきもと郁夫いくお監督かんとく『札幌さっぽろ・横浜よこはま・名古屋なごや・雄琴おごと・博多はかた トルコ渡わたり鳥どり』も同おなじ"新しんトルコ・シリーズ"の一本いっぽんである。同どう作さくの製作せいさくに向むけて、東映とうえいは雑誌ざっしに大々的だいだいてきに「主演しゅえん女優じょゆう募集ぼしゅう（経験けいけん者しゃに限かぎる）」との広告こうこくを打うち、過激かげきな企画きかくをアピールしたが、出演しゅつえん希望きぼう者しゃは集あつまらず、企画きかくは軌道きどう修正しゅうせいされ、急遽きゅうきょ新人しんじん女優じょゆうを起用きようしての製作せいさくに変更へんこうになった。

『トルコ渡わたり鳥どり』に、3人にんの新人しんじんポルノ女優じょゆう、荒木あらきミミ、岡田おかだ奈津子なつこ、山川やまかわレイカをデビューさせる。

1973年ねん3月がつ、当時とうじ16歳さいの山川やまかわレイカを主演しゅえんに、荒木あらきミミ、岡田おかだ奈津子なつこ出演しゅつえんの『㊙昇天しょうてんトルコ風呂とるこぶろ』（監督かんとく：野田のだ幸男ゆきお）の撮影さつえいを始はじめた。

東映とうえいは山川やまかわを"史上しじょう最年少さいねんしょうのポルノ女優じょゆう"というキャッチフレーズで売うり出だしマスコミでも話題わだいとなった。ところが東映とうえいが調子ちょうしに乗のって映画えいがの宣伝せんでんを兼かね、TBSの大人おとな向むけ深夜しんや番組ばんぐみに出演しゅつえんさせ、前景気まえげいきを煽あおろうと山川やまかわを脱ぬがせ反響はんきょうを呼よんだが、この番組ばんぐみを見みた視聴しちょう者しゃから「18歳さい未満みまん入場にゅうじょうお断ことわりの成人せいじん指定してい映画えいがに年齢ねんれいもいかぬ16歳さいの少女しょうじょを出演しゅつえんさせていいものだろうか」との投書とうしょが新聞しんぶん記事きじになった。

当時とうじ日活にっかつロマンポルノが警視庁けいしちょうに摘発てきはつされたこともあって（日活にっかつロマンポルノ事件じけん）、この記事きじにびっくりした東映とうえいが八はち分ふん通どおり完成かんせいしていた映画えいがの製作せいさくを中止ちゅうしした。

この1973年ねんは『仁義じんぎなき戦たたかい』の大だいヒットで、東映とうえいは「実録じつろく路線ろせん」という待望たいぼうの新あたらしい鉱脈こうみゃくを掴つかんだところで、同どう時期じきに岡田おかだ社長しゃちょうが実録じつろく映画えいがの決定けってい版ばんともいうべき『山口組やまぐちぐみ三さん代目だいめ』の映画えいが化かを正式せいしきに決定けっていし、高倉たかくら健けんの主役しゅやく起用きようを決きめ、製作せいさくを発表はっぴょうした途端とたん、山口組やまぐちぐみの大だい幹部かんぶ・山本やまもと健一けんいちが常習じょうしゅうとばく容疑ようぎで兵庫ひょうご県警けんけいから指名しめい手配てはいされ、製作せいさくを強行きょうこうすれば当局とうきょくを刺激しげきするのは必至ひっしな状況じょうきょうになった。加くわえて1973年ねん6月がつ4日にちから始はじまる日活にっかつロマンポルノ裁判さいばんを控ひかえて、当局とうきょくは日本にっぽん映画えいが界かいに対たいして牽制けんせいし、東映とうえいは大だいベストセラーになっていた奈良なら林はやし祥さちの『How To Sex』の製作せいさくも警視庁けいしちょうからクレームを受うけ製作せいさくを中止ちゅうしした。

『㊙昇天しょうてんトルコ風呂とるこぶろ』は映画えいがの内容ないようもヤクザの情婦じょうふになった山川やまかわがトルコ風呂とるこぶろで荒稼あらかせぎ、殿山とのやま泰司やすじ、小松こまつ方正ほうせいといった、その道みちのベテランを相手あいてに泡あわ踊おどり、二輪車にりんしゃ、大車輪だいしゃりんといったフルコースを披露ひろうする、現在げんざいでは製作せいさくされることはまずない内容ないようだった。1975年ねんに山川やまかわが18歳さいになり公開こうかいしても問題もんだいにならないという見解けんかいで公開こうかいを決定けってい、映画えいがは未み完成かんせいだったため、ストーリーの辻褄つじつまを合あわせるため編集へんしゅうでごまかし『青春せいしゅんトルコ日記にっき 処女しょじょすべり』と改題かいだいして公開こうかいした。公開こうかい年月日ねんがっぴは1975年ねん4月がつ19日にちとなっているため、同年どうねん4月がつ5日にちに公開こうかいされた『大だい脱獄だつごく』（高倉たかくら健けん主演しゅえん・石井いしい輝男てるお監督かんとく）と『ウルフガイ 燃もえろ狼おおかみ男おとこ』（千葉ちば真一しんいち主演しゅえん・山口やまぐち和彦かずひこ監督かんとく）併映へいえいの地方ちほう下番かばん線せん用ようと思おもわれる。他たに公開こうかい年月日ねんがっぴは1975年ねん5月がつ14日にちで『札幌さっぽろ・横浜よこはま・名古屋なごや・雄琴おごと・博多はかた トルコ渡わたり鳥どり』（芹せり明香あすか主演しゅえん・関本せきもと郁夫いくお監督かんとく）、『玉たま割わり人じんゆき』（潤じゅんますみ主演しゅえん・牧口まきぐち雄二ゆうじ監督かんとく）との併映へいえいだったという説せつもある。

山川やまかわは本ほん作さく撮影さつえい以降いこう、映画えいが界かいから足あしを洗あらい、ファッションモデルの道みちを歩あゆみ始はじめ資生堂しせいどうのPR誌し『花はな椿つばき』にも登場とうじょうしたばかりだったが、寝耳ねみみに水みずの本ほん作さくの公開こうかいでマスコミが殺到さっとうした。山川やまかわは逃にげるようにフランスへ留学りゅうがくし、その後ごの消息しょうそくは不明ふめいといわれる。

「東映とうえいポルノ」は岡田おかだ茂しげるが提唱ていしょうした「不良ふりょう性せい感度かんど」の一いち路線ろせんであったが、1970年代ねんだい後半こうはん、劇場げきじょう版ばん『宇宙うちゅう戦艦せんかんヤマト』の配給はいきゅうを手掛てがけて大だいヒットさせ、角川かどかわ映画えいがとも手てを組くみ、外部がいぶ作品さくひんの配給はいきゅうに本腰ほんごしを入いれ始はじめ、「不良ふりょう性せい感度かんど」は作品さくひんから失うしなわれていった。

しかし「不良ふりょう性せい感度かんど」の遺伝子いでんしと伝統でんとうは、1980年代ねんだいに東映とうえいセントラルに、1990年代ねんだいには東映とうえいVシネマに受うけ継つがれた。

影響えいきょう

1968年ねん、石井いしい輝男てるお監督かんとくのエログロ映画えいが『徳川とくがわ女系じょけい図ず』の大だいヒットにより、大手おおて映画えいが会社かいしゃの性せいモラルの防波堤ぼうはていが一気いっきに決壊けっかい、日本にっぽん映画えいがをエロで埋うめ尽つくした。

テレビの攻勢こうせいで観客かんきゃく減げんに悩なやんでいた邦画ほうが大手おおて各社かくしゃは、東映とうえいに追随ついずいせざる事態じたいに追おい込こまれ、次々つぎつぎとエロ路線ろせんに傾斜けいしゃしていく。大映だいえい、日活にっかつ、松竹しょうちくもヌード映画えいがの製作せいさくを開始かいしし、日本にっぽん映画えいが界かいは「ハレンチ・ブーム」に沸わいた。

東映とうえいの"エロ映画えいが"には、独立どくりつプロ系けい成人せいじん映画えいがから多おおくの女優じょゆうが出演しゅつえんし、ピンク女優じょゆうの五ご社しゃ進出しんしゅつの先駆さきがけとなり、以後いご、独立どくりつプロのキャストや手法しゅほうを取とり込こむ東映とうえいのやり方かたに各社かくしゃが追随ついずいした。

また各社かくしゃとも大部屋おおべやでくすぶっていた新人しんじん女優じょゆうを「脱ぬげば売うり出だしてやる」と甘言かんげんで篭絡ろうらく、要員よういん確保かくほしてヌード映画えいがの量産りょうさん体制たいせいを敷しいた。安田やすだ道代みちよ、水木みずき正子まさこ、渥美あつみマリ、南みなみ美川みかわ洋子ようこ、八代やしろ順子じゅんこが大映だいえいの、荒井あらい千津子ちづこ、松岡まつおかきっこ、藤田ふじた憲子のりこが松竹しょうちくのヌード要員よういんであった。

日活にっかつは吉永よしなが小百合さゆりや浅丘あさおかルリ子るりこら本格ほんかく派は女優じょゆうへの配慮はいりょからエログロ路線ろせん進出しんしゅつを躊躇ちゅうちょしたが、東映とうえいポルノに追随ついずいせるを得えず、1968年ねん7月がつ公開こうかいの『女おんな浮世うきよ風呂ふろ』（井田いだ深ふかし監督かんとく）でピンク女優じょゆうを大挙たいきょ出演しゅつえんさせエロ映画えいがに舵かじを切きる。ここで生贄いけにえにされたのが大部屋おおべやでくすぶっていた太田おおた雅子まさこ、のちの梶かじ芽衣子めいこだった。

残のこる東宝とうほうははっきりエログロへ移行いこうすることはなかったが、これは同社どうしゃが傘下さんかにATGを抱かかえ、実質じっしつ的てきにエロ路線ろせんの代かわりになっていたからである。

1969年ねんには洋ようピン（洋画ようがピンク）も異常いじょう性愛せいあいを題材だいざいにしたハダカ攻勢こうせいを強つよめた。これら影響えいきょうは映画えいが界かいのみならず音楽おんがく界かい・歌謡かようポップスにまで及およぼした。

ポスターに裸はだかを載のせて当あたったこともあって、三朝みさされい子こら続々ぞくぞくとレコードジャケットでヌードを披露ひろうする歌手かしゅが登場とうじょう。それまでフレンチ歌謡かようを歌うたって燻いぶっていた奥村おくむらチヨが、愛欲あいよく路線ろせん『恋こいの奴隷どれい』（1969年ねん）の宣伝せんでんでセミヌードを公開こうかいしたり、辺見へんみマリが1969年ねん11月に「ジュ・テーム」亜流ありゅう盤ばん「ダニエル・モナムール」で曲きょくだけでなく、「ジュ・テーム」のプロモーションまでパクってデビューすると「日本にっぽんのレコード界かいもいよいよ、映画えいがについてエロ・グロ時代じだいに突入とつにゅう」といわれた。

1970年代ねんだいに入はいると渥美あつみマリらによる露骨ろこつなエロ歌謡かようが量産りょうさんされ、エロ化かの流ながれは『23時じショー』などの深夜しんや番組ばんぐみにも及およぼし、更さらに山本やまもとリンダや夏木なつきマリらによる“セクシーアクション歌謡かよう”やピンク・レディーなど、その後ごの音楽おんがく界かいにも影響えいきょうを及およぼした。

"東映とうえいのピンキー&バイオレンス"のスピードアップは、映画えいが界かい全体ぜんたいを揺ゆるがす衝撃しょうげきと集客しゅうきゃく力りょくだった。性せいの自由じゆう化かの風潮ふうちょうのなかで、エロスが映画えいがの救世主きゅうせいしゅとなっていく。

ここまで岡田おかだの先見せんけんの明あかりが特筆とくひつされるが、さらに続つづく『徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し』を「異常いじょう性愛せいあい路線ろせん」としてシリーズ化か、『徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し』は1968年ねんの年間ねんかん配はい収おさむベストテンにランクされる。これを受うけ、岡田おかだは"エロ映画えいが"を"任侠にんきょう映画えいが"と並なべて興行こうぎょうの重要じゅうよう週間しゅうかんに配置はいちしていくが、当時とうじの映画えいがは二本立にほんだてが一般いっぱん的てきであったので、こうした"エロ映画えいが"が"任侠にんきょう映画えいが"と二に本立ほんだてになることで、ストイシズムを謳うたう"任侠にんきょう映画えいが"の魅力みりょくが際立きわだつという一いち面めんもあった。

1968年ねん秋あきに岡田おかだが製作せいさくから営業えいぎょうまでを一貫いっかんして統括とうかつする営業えいぎょう本部ほんぶを新しん編成へんせいしその長ちょうとなると"エロ路線ろせん"が本格ほんかく化かした。岡田おかだは、"不良ふりょう性せい感度かんど濃厚のうこうな東映とうえい映画えいが"と明快めいかいに東映とうえいカラーを打うち出だして適てき確かくに観客かんきゃくを掴つかまえていく。　"岡田おかだチルドレン"鈴木すずき則のり文ぶん、中島なかじま貞夫さだお、内藤ないとう誠まこと、関本せきもと郁夫いくお、牧口まきぐち雄二ゆうじらも流ながれに加くわわり、多おおくのエロ映画えいがが量産りょうさんされた。石井いしいや鈴木すずき、中島なかじまの作品さくひんが雑多ざったなのは、岡田おかだのせいである。

さらにこれら作品さくひんのタイトルバックの多おおくに岡田おかだの名前なまえを出だし、東映とうえい全体ぜんたいでこの路線ろせんに力ちからを入いれていることをアピールした。また岡田おかだ自みずから凄すさまじい「映画えいがタイトル」を編あみ出だし観客かんきゃくを呼よび込こんだ。"東映とうえいポルノ"は、大半たいはんが岡田おかだ命名めいめいによる。『エロ将軍しょうぐんと二に十じゅう一いち人にんの女おんな妾わらわ』『徳川とくがわセックス禁止きんし令れい・色情しきじょう大名だいみょう』『現代げんだいポルノ伝でん 先天せんてん性せい淫婦いんぷ』『残酷ざんこく・異常いじょう・虐待ぎゃくたい物語ものがたり 元禄げんろく女系じょけい図ず』『ポルノの帝王ていおう』『ポルノの女王じょおう にっぽんSEX旅行りょこう』『温泉おんせんポン引びき女中じょちゅう』『色情しきじょうトルコ日記にっき』『未亡人みぼうじんごろしの帝王ていおう』など　こうしたタイトルが醍醐味だいごみの一ひとつである。

『エロ将軍しょうぐんと二に十じゅう一いち人にんの女おんな妾わらわ』も最初さいしょはエロは付ついていなかった。

岡田おかだが付つけた"エロ"という言葉ことばは倖田こうだ來らい未ひつじが2004年ねん頃ごろから人気にんきが出でて、"エロカッコいい"とか日常にちじょう的てきに使つかわれるようになったが、当時とうじは口くちに出だす言葉ことばでなかった。

『徳川とくがわセックス禁止きんし令れい・色情しきじょう大名だいみょう』はポルノ大作たいさくと銘打めいうたれ、1972年ねんのゴールデンウィークに全国ぜんこく200館かん以上いじょうの映画えいが館かんで封切ふうぎられた。

1960年代ねんだい末まつの日本にっぽん映画えいがは瀕死ひんしの状態じょうたいで、暴力ぼうりょくとエログロに特とく化かした映画えいが作づくりに邁進まいしんする東映とうえいだけがかろうじて映画えいが製作せいさくで黒字くろじを出だしていた。

不動産ふどうさんやレジャー産業さんぎょうで損失そんしつを補おぎなっていた東宝とうほうや松竹しょうちくに対たいして、大映だいえいと日活にっかつは製作せいさく本位ほんいに偏重へんちょうしていて落おち込こみが酷ひどく1970年ねん4月がつ全面ぜんめん提携ていけいしてダイニチ映うつ配はいを設立せつりつした。大映だいえいが渥美あつみマリや八並やつなみ映子えいこ、川崎かわさきあかねらで『十じゅう代だいの妊娠にんしん』などエロ映画えいがを量産りょうさんし、15歳さいの関根せきね恵子けいこを『おさな妻つま』でヌードにして人気にんきを上あげ、松坂まつさか慶子けいこが『夜よるの診察しんさつ室しつ』（監督かんとく：帯おび盛もり迪すすむ彦）でスターになりかかったところで倒産とうさんした。

日活にっかつも『ハレンチ学園がくえん』や夏なつ純子じゅんこ主演しゅえんの『女子じょし学園がくえんシリーズ』などのエロ要素ようそを含ふくむ映画えいがを製作せいさくした後のち、1971年ねん11月「日活にっかつロマンポルノ」をスタートさせ成人せいじん映画えいが路線ろせんに転てんじた。東映とうえい、日活にっかつのなりふりかまわぬポルノ路線ろせんにより、ピンク映画えいがに大おおきな打撃だげきを与あたえ、弱小じゃくしょう"エロダクション"は淘汰とうたされた。

東映とうえいの"好色こうしょく路線ろせん"、"エロ路線ろせん"に参加さんかした人物じんぶつとしてプロデューサーで天尾てんのお完かん次じ、監督かんとくで石井いしい輝男てるお、鈴木すずき則のり文ぶん、中島なかじま貞夫さだお、関本せきもと郁夫いくお、皆川みなかわ隆之たかゆき、志村しむら正浩まさひろ、牧口まきぐち雄二ゆうじら、脚本きゃくほん家かで掛かけ札さつ昌裕まさひろら、女優じょゆうでは池いけ玲子れいこ、杉本すぎもと美樹みき、ハニー・レーヌ、片山かたやま由美子ゆみこ、橘たちばなますみ、山内やまうちえみこ、叶かのう優子ゆうこ、潤じゅんますみら、男優だんゆうでは、山城やましろ新伍しんご、川谷かわたに拓三たくぞう、吉田よしだ輝男てるお、小池こいけ朝雄あさお、若杉わかすぎ英二えいじ、名和なわ宏ひろし、成瀬なるせ正ただし孝こうらが多おおくの作品さくひんに出演しゅつえんしている。

評価ひょうか

1960年代ねんだいから1970年代ねんだいは、松竹しょうちくヌーヴェルヴァーグやATGが全盛ぜんせいで、メッセージ色しょくが強つよい映画えいがが花盛はなざかりの時代じだいに、メッセージの全まったく無ない映画えいがを陣頭じんとう指揮しきで量産りょうさんした岡田おかだ茂しげるの戦たたかいは並大抵なみたいていことではなかった、と東映とうえいファンの杉作すぎさくJ太郎たろうは評価ひょうかしている。

1999年ねんに杉作すぎさくJ太郎たろうと植うえ地ち毅あつしがこれらのエロ映画えいがと、エロ要素ようそを含ふくんだバイオレンス＆アクション映画えいがを"東映とうえいピンキー・バイオレンス"と名付なづけ『東映とうえいピンキー・バイオレンス浪漫ろうまんアルバム』という書しょを出だした。これ以降いこう、この"東映とうえいピンキー・バイオレンス"という言葉ことばでこれらを紹介しょうかいすることもある。『東映とうえいピンキー・バイオレンス浪漫ろうまんアルバム』の中なかでも"東映とうえいポルノ"という言葉ことばが何なん度ども使つかわれている。

主要しゅようプロデューサー

• 岡田おかだ茂しげる
• 翁長おなが孝雄たかお
• 天尾てんのお完かん次じ
• 三村みつむら敬三けいぞう（三村みつむら敬一けいいち）

主要しゅよう監督かんとく

• 石井いしい輝男てるお
• 鈴木すずき則のり文ぶん
• 中島なかじま貞夫さだお
• 関本せきもと郁夫いくお
• 皆川みなかわ隆之たかゆき
• 志村しむら正浩まさひろ
• 牧口まきぐち雄二ゆうじ
• 伊藤いとう俊也としや
• 山口やまぐち和彦かずひこ
• 鳥居とりい元宏もとひろ

主要しゅよう脚本きゃくほん家か

• 掛かけ札さつ昌裕まさひろ
• 鴨井かもい達いたる比ひ古いにしえ
• 松田まつだ寛ひろし夫おっと

主要しゅよう男優だんゆう

• 丹波たんば哲郎てつろう
• 天知あまち茂しげる
• 梅宮うめみや辰夫たつお
• 渡瀬わたせ恒彦つねひこ
• 山城やましろ新伍しんご
• 金子かねこ信雄のぶお
• 川谷かわたに拓三たくぞう
• 吉田よしだ輝男てるお
• 渡辺わたなべ文雄ふみお
• 小池こいけ朝雄あさお
• 若杉わかすぎ英二えいじ
• 名和なわ宏ひろし
• 伴とも直弥なおや
• 宮内みやうち洋ひろし
• 志賀しが勝まさる
• 室田むろた日出男ひでお
• 大泉おおいずみ滉ひろし
• 由利ゆり徹とおる
• 成瀬なるせ正ただし孝こう
• 藤木ふじき孝たかし
• 荒木あらき一郎いちろう

主要しゅよう女優じょゆう

• 池いけ玲子れいこ
• 杉本すぎもと美樹みき
• ハニー・レーヌ
• 山内やまうちえみこ
• 賀川かがわ雪絵ゆきえ
• 橘たちばなますみ
• 片山かたやま由美子ゆみこ
• 梶かじ芽衣子めいこ
• 多岐川たきがわ裕美ひろみ
• 夏樹なつき陽子ようこ
• 三崎みさき奈美なみ
• ひし美びゆり子こ
• 丘おかナオミ
• サンドラ・ジュリアン
• クリスチナ・リンドバーグ
• シャロン・ケリー
• 芹せり明香あすか
• 渡辺わたなべやよい
• 一いちの瀬せらレナ
• 大原おおはら麗子れいこ
• 大信田おおしだ礼子あやこ
• 緑みどり魔子まこ
• 三原みはら葉子ようこ
• 渚なぎさまゆみ
• 内藤ないとうやす子こ
• 五月さつきみどり
• 泉いずみピン子こ
• 浅香あさか光代みつよ
• 李り礼あや仙せん
• 宮園みやその純子じゅんこ
• 花柳はなやぎ幻舟げんしゅう
• 女屋おなや実和子みわこ

参考さんこう文献ぶんけん

• 「対談たいだん：石井いしい輝男てるお×井沢いざわ淳あつし 性せいと残酷ざんこくのかなたに」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』1969年ねん4月がつ下旬げじゅん号ごう。 
• 「〔トップに聞きく〕 岡田おかだ茂しげる常務じょうむ 東映とうえい映画えいがのエネルギーを語かたる」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』1969年ねん6月がつ下旬げじゅん号ごう。 
• キネマ旬報きねまじゅんぽう 編へん『ピンク映画えいが白書はくしょ』キネマ旬報きねまじゅんぽう、1969年ねん。 
• 『対談たいだん：石井いしい輝男てるお×井沢いざわ淳あつし 性せいと残酷ざんこくのかなたに』1969年ねん12月。 
• 『サンデさんでー毎日まいにち』 1974年ねん3月がつ24日にち号ごう、毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ。 
• 「〔顔かおと言葉ことば〕 東映とうえい500万まん円えんポルノの仕事しごと 深ふか尾道おのみち典てん」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』1975年ねん1月がつ新年しんねん特別とくべつ号ごう。 
• 佐藤さとう忠男ただお、吉田よしだ智恵ちえ男おとこ『日本にっぽん映画えいが女優じょゆう史し』芳賀はが書店しょてん、1975年ねん。 
• 『ロードショー』 1976年ねん3月がつ号ごう、集英社しゅうえいしゃ。 
• 関本せきもと郁夫いくお『映画えいが人じん烈れつ伝でん』青あお心しん社しゃ、1980年ねん。 
• 『東映とうえい映画えいが三さん十じゅう年ねん—あの日ひ、あの時とき、あの映画えいが』東映とうえい、1981年ねん。 
• 鈴木すずき義昭よしあき『ピンク映画えいが水すい滸伝—その二に十じゅう年ねん史し』青あお心しん社しゃ、1983年ねん。 
• 村井むらい實みのる『ポルノ映画えいがおもしろ雑学ざつがく読本とくほん』サンデー社しゃ、1983年ねん。 
• 山根やまね貞男さだお『活劇かつげきの行方ゆくえ』草くさ思おもえ社しゃ、1984年ねん。ISBN 4-7942-0196-6。 
• 「映画えいが40年ねん全ぜん記録きろく」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』1986年ねん2月がつ13日にち増刊ぞうかん号ごう。 

• 渡邊わたなべ達人たつひと『私わたしの東映とうえい30年ねん』1991年ねん。 
• 松島まつしま利行としゆき『風雲ふううん映画えいが城じょう』 下した、講談社こうだんしゃ、1992年ねん。ISBN 4-06-206226-7。 
• 石井いしい輝男てるお、福間ふくま健二けんじ『石井いしい輝男てるお映画えいが魂たましい』ワイズ出版しゅっぱん、1992年ねん。ISBN 4-948735-08-6。 
• 東映とうえい『クロニクル東映とうえい：1947-1991』 1巻かん、東映とうえい、1992年ねん。 
• 東映とうえい『クロニクル東映とうえい：1947-1991』 2巻かん、東映とうえい、1992年ねん。 
• 桑原くわばら稲いね敏さとし『切きられた猥褻わいせつ ー映倫えいりんカット史し』読売新聞社よみうりしんぶんしゃ、1993年ねん。ISBN 4-643-93082-9。 
• 『ベスト・オブ・キネマ旬報きねまじゅんぽう 〈下した(1967―1993)〉』キネマ旬報きねまじゅんぽう、1994年ねん。ISBN 978-4873761015。 
• 町山まちやま智浩ともひろ『エド・ウッドとサイテー映画えいがの世界せかい〈映画えいが秘宝ひほう1〉』洋よう泉いずみ社しゃ、1995年ねん。ISBN 4-89691-169-5。 
• 『悪あく趣味しゅみ邦画ほうが劇場げきじょう〈映画えいが秘宝ひほう2〉』洋よう泉いずみ社しゃ、1995年ねん。ISBN 978-4-89691-170-1。 
• 桂かつら千穂ちほ『にっぽん脚本きゃくほん家かクロニクル』青あお人じん社しゃ、1996年ねん。ISBN 4-88296-801-0。 
• 筒井つつい武文たけふみ・多田ただ功いさお『女おんな獄門ごくもん帖じょう 引ひき裂さかれた尼僧にそう』ワイズ出版しゅっぱん、1996年ねん。 
• 『セクシー・ダイナマイト猛もう爆ばく撃げき』洋よう泉いずみ社しゃ、1997年ねん。ISBN 4-89691-258-6。 
• 『ぴあシネマクラブ 邦画ほうが編へん 1998-1999』ぴあ、1998年ねん。ISBN 4-89215-904-2。 
• 杉作すぎさくJ太郎たろう、植うえ地ち毅あつし（編著へんちょ）『東映とうえいピンキー・バイオレンス浪漫ろうまんアルバム』徳間書店とくましょてん、1999年ねん。ISBN 4-19-861016-9。 
• 俊しゅん藤ふじ浩ひろし滋しげる、山根やまね貞男さだお『任侠にんきょう映画えいが伝でん』講談社こうだんしゃ、1999年ねん。ISBN 4-06-209594-7。 
• 松島まつしま利行としゆき『日活にっかつロマンポルノ全ちょん史ふみ―名作めいさく・名優めいゆう・名めい監督かんとくたち』講談社こうだんしゃ、2000年ねん。ISBN 4-06-210528-4。 
• 岡田おかだ茂しげる『悔くいなきわが映画えいが人生じんせい：東映とうえいと、共ともに歩あゆんだ50年ねん』財界ざいかい研究所けんきゅうじょ、2001年ねん。ISBN 4-87932-016-1。 
• 川崎かわさき宏ひろし『狂くるおしい夢ゆめ不良ふりょう性せい感度かんどの日本にっぽん映画えいが: 東映とうえい三角さんかくマークになぜ惚ほれた!?』青あお心しん社しゃ、2003年ねん。ISBN 978-4-87892-266-4。 
• 中島なかじま貞夫さだお『遊ゆう撃げきの美学びがく 映画えいが監督かんとく中島なかじま貞夫さだお』ワイズ出版しゅっぱん、2004年ねん。ISBN 4-89830-173-8。 
• 岡田おかだ茂しげる『波瀾万丈はらんばんじょうの映画えいが人生じんせい：岡田おかだ茂しげる自伝じでん』角川書店かどかわしょてん、2004年ねん。ISBN 4-04-883871-7。 
• 鹿島かしま茂しげる『甦よみがえる昭和しょうわ脇役わきやく名画めいが館かん』講談社こうだんしゃ、2005年ねん。ISBN 4-06-213137-4。 
• 『Hotwax 日本にっぽんの映画えいがとロックと歌謡かよう曲きょく vol. 1』シンコーミュージック・エンタテイメント、2005年ねん。ISBN 978-4-401-75100-6。 
• 『Hotwax 日本にっぽんの映画えいがとロックと歌謡かよう曲きょく vol. 2』シンコーミュージック・エンタテイメント、2005年ねん。ISBN 978-4-401-75101-3。 
• 佐藤さとう忠男ただお『増補ぞうほ版ばん 日本にっぽん映画えいが史し3』岩波書店いわなみしょてん、2006年ねん。ISBN 4-00-026579-2。 
• 『Hotwax 日本にっぽんの映画えいがとロックと歌謡かよう曲きょく vol. 8』シンコーミュージック・エンタテイメント、2007年ねん。ISBN 978-4-401-75116-7。 
• 佐藤さとう忠男ただお（編へん）『日本にっぽんの映画えいが人じん：日本にっぽん映画えいがの創造そうぞう者しゃたち』日外にちがいアソシエーツ、2007年ねん。ISBN 978-4-8169-2035-6。 
• 『流行はやり歌かに隠かくされたタブー事件じけん史し』宝島社たからじましゃ〈別冊べっさつ宝島たからじま1499〉、2008年ねん。ISBN 978-4-7966-6178-2。 
• 藤木ふじきTDC『アダルトビデオ革命かくめい史し』幻冬舎げんとうしゃ、2009年ねん。ISBN 978-4-344-98125-6。 
• 樋口ひぐち尚文なおふみ『ロマンポルノと実録じつろくやくざ映画えいが 禁きんじられた70年代ねんだい日本にっぽん映画えいが』平凡社へいぼんしゃ、2009年ねん。ISBN 978-4-582-85476-3。 
• 鈴木すずき則のり文ぶん『トラック野郎やろう風雲ふううん録ろく』国書刊行会こくしょかんこうかい、2010年ねん。ISBN 978-4-336-05234-6。 
• 鈴木すずき義昭よしあき『昭和しょうわ桃色ももいろ映画えいが館かん まぼろしの女優じょゆう、伝説でんせつの性せい豪ごう、闇やみの中なかの活動かつどう屋やたち』社会しゃかい評論ひょうろん社しゃ、2011年ねん。ISBN 978-4-7845-0964-5。 
• 「欲望よくぼうする映画えいが カツドウ屋や、岡田おかだ茂しげるの時代じだい」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』2011年ねん7月がつ上旬じょうじゅん号ごう。 その他たの『キネマ旬報きねまじゅんぽう』の記事きじは出典しゅってんを参照さんしょう。
• 「映画えいが訃報ふほう 東映とうえい不良ふりょう性せい感度かんど路線ろせんの父ちち 岡田おかだ茂しげる逝去せいきょ」『映画えいが秘宝ひほう』、洋よう泉いずみ社しゃ、2011年ねん7月がつ。 
• 「東映とうえい不良ふりょう性せい感度かんど映画えいがの世界せかい」『映画えいが秘宝ひほう』、洋よう泉いずみ社しゃ、2011年ねん8月がつ。  その他たの『映画えいが秘宝ひほう』の記事きじは出典しゅってんを参照さんしょう。
• 文化ぶんか通信つうしん社しゃ 編へん『映画えいが界かいのドン 岡田おかだ茂しげるの活動かつどう屋や人生じんせい』ヤマハミュージックメディア、2012年ねん。ISBN 978-4-636-88519-4。 
• 日下部くさかべ五朗ごろう『シネマの極道ごくどう 映画えいがプロデューサー一いち代だい』新潮社しんちょうしゃ、2012年ねん。ISBN 978-4-10-333231-2。 
• 春日かすが太一たいち『仁義じんぎなき日本にっぽん沈没ちんぼつ 東宝とうほうVS.東映とうえいの戦後せんごサバイバル』新潮社しんちょうしゃ〈新潮しんちょう新書しんしょ〉、2012年ねん。ISBN 978-4-10-610459-6。 
• 鈴木すずき則のり文ぶん『東映とうえいゲリラ戦記せんき』筑摩書房ちくましょぼう、2012年ねん。ISBN 978-4-480-81838-6。 
• 『鮮烈せんれつ!アナーキー日本にっぽん映画えいが史し 1959-1979』洋よう泉いずみ社しゃ〈映画えいが秘宝ひほうEX〉、2012年ねん。ISBN 978-4-86248-918-0。 
• 春日かすが太一たいち『あかんやつら 東映とうえい京都きょうと撮影さつえい所しょ血ち風ふう録ろく』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、2013年ねん。ISBN 4-16-376810-6。 
• 二階堂にかいどう卓也たくや『ピンク映画えいが史し』彩いろどり流りゅう社しゃ、2014年ねん。ISBN 978-4-7791-2029-9。 
• 上妻あがつま祥浩よしひろ『大映だいえいセクシー女優じょゆうの世界せかい』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2014年ねん。ISBN 978-4-309-27536-9。 
• 荒木あらき一郎いちろう『まわり舞台ぶたいの上うえで』文ぶん遊ゆう社しゃ、2016年ねん。ISBN 978-4-89257-120-6。 
• 黒沢くろさわ, 清きよし、四方田よもだ, 犬いぬ彦、吉見よしみ, 俊哉としや ほか 編へん『日本にっぽん映画えいがは生いきている 第だい四よん巻かん スクリーンのなかの他者たしゃ』岩波書店いわなみしょてん、2010年ねん。ISBN 978-4-00-028394-6。 
• 『日本にっぽん不良ふりょう映画えいが年代ねんだい記き』洋よう泉いずみ社しゃ、2016年ねん。ISBN 978-4-89257-120-6。 
• 斉藤さいとう守彦もりひこ『映画えいがを知しるための教科書きょうかしょ　1912～1979』洋よう泉いずみ社しゃ、2016年ねん。ISBN 978-4-8003-0698-2。 
• 楊紅雲くも「任侠にんきょう映画えいが路線ろせんにおける東映とうえいの成功せいこう : テレビに対抗たいこうした映画えいが製作せいさく (1963-1972年ねん) を中心ちゅうしんに」『多元たげん文化ぶんか』第だい4号ごう、名古屋大学なごやだいがく国際こくさい言語げんご文化ぶんか研究けんきゅう科か国際こくさい多元たげん文化ぶんか専攻せんこう、2004年ねん3月がつ、191-202頁ぺーじ、doi:10.18999/muls.4.191、ISSN 13463462、NAID 120000974864、2021年ねん12月1日にち閲覧えつらん。