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特別とくべつ支援しえん教育きょういく

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特別とくべつ支援しえん学校がっこう日本にっぽんでは、障害しょうがいしゃかならかよわないとならないというわけではない。(岐阜ぎふ県立けんりつ岐阜ぎふ希望きぼうおか特別とくべつ支援しえん学校がっこう

特別とくべつ支援しえん教育きょういく(とくべつしえんきょういく)は、日本にっぽん学校がっこう教育きょういくにおいて、障害しょうがいのある幼児ようじ児童じどう生徒せいと自立じりつ社会しゃかい参加さんかへの主体しゅたいてきみを支援しえんするための指導しどうおよ支援しえん意味いみする概念がいねん[1]英語えいご表記ひょうきはspecial needs education、またはspecial support education、exceptional student educationなど。

日本にっぽんにおける定義ていぎ[編集へんしゅう]

特別とくべつ支援しえん学校がっこうにおいて
視覚しかく障害しょうがいしゃ聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃ知的ちてき障害しょうがいしゃ精神せいしん障害しょうがいしゃ肢体したい不自由ふじゆうしゃまた病弱びょうじゃくもの身体しんたい虚弱きょじゃくしゃ)にたいし、幼稚園ようちえん小学校しょうがっこう中学校ちゅうがっこう高等こうとう学校がっこうじゅんずる教育きょういくほどこすとともに、障害しょうがいによる学習がくしゅううえまた生活せいかつうえ困難こんなん克服こくふく自立じりつはかるために必要ひつよう知識ちしき技能ぎのうさづけること(学校がっこう教育きょういくほうだい72じょう
小学校しょうがっこう中学校ちゅうがっこう高等こうとう学校がっこう幼稚園ようちえんにおいて
知的ちてき障害しょうがいしゃ精神せいしん障害しょうがいしゃ肢体したい不自由ふじゆうしゃ身体しんたい虚弱きょじゃくしゃ弱視じゃくしもの難聴なんちょうもの、その障害しょうがいのあるもので、特別とくべつ支援しえん学級がっきゅうにおいて教育きょういくおこなうことが適当てきとうもの[注釈ちゅうしゃく 1]、その教育きょういくうえ特別とくべつ支援しえん必要ひつようとする児童じどう生徒せいと幼児ようじ[注釈ちゅうしゃく 2]たいし、障害しょうがいによる学習がくしゅうじょうまた生活せいかつじょう困難こんなん克服こくふく自立じりつはかるために必要ひつよう教育きょういくおこなうこと(学校がっこう教育きょういくほうだい75じょう)。このなかにはアスペルガー症候群しょうこうぐん自閉症じへいしょう学習がくしゅう障害しょうがいAD/HDといった発達はったつ障害しょうがい子供こどもふくまれる[2]

経緯けいい[編集へんしゅう]

参考さんこう文部省もんぶしょう学制がくせいひゃくじゅうねん

明治めいじ昭和しょうわ初期しょき[編集へんしゅう]

1878ねん 京都きょうと盲唖もうあいん設立せつりつ
日本にっぽんめくらろう教育きょういくはじまり。
1891ねん 東京とうきょうたき乃川学園がくえん設立せつりつ
日本にっぽん知的ちてき障害しょうがい教育きょういくはじまり[注釈ちゅうしゃく 3]
1909ねん 千葉ちばけん勝山かつやま東京とうきょう養育よういくいん安房あわぶんいん開設かいせつ
日本にっぽんはつ身体しんたい虚弱きょじゃく病弱びょうじゃくのための恒常こうじょうてき教育きょういく施設しせつ
1921ねん 東京とうきょうかしわ学園がくえん設立せつりつ
日本にっぽん肢体したい不自由ふじゆう教育きょういくはじまり。
1940ねん 大阪おおさか市立しりつおもえひとし学校がっこう設立せつりつ
日本にっぽん最初さいしょ戦前せんぜん唯一ゆいいつ知的ちてき障害しょうがい収容しゅうようする学校がっこう
1941ねん 国民こくみん学校がっこうれい施行しこう規則きそく
身体しんたい虚弱きょじゃく精神せいしん薄弱はくじゃく其ノ心身しんしん異常いじょうアル児童じどうニシテ特別とくべつ養護ようご必要ひつようアリトみとめムルモノノため学級がっきゅうまた学校がっこう編制へんせいスルコトヲとく
→“養護ようご学校がっこう”の名称めいしょうひろまる。戦局せんきょく進行しんこうしたがい、特殊とくしゅ教育きょういくにかかる学校がっこう学級がっきゅう次第しだい閉鎖へいさされる。

戦後せんご特殊とくしゅ教育きょういく時代じだい[編集へんしゅう]

1946ねん 大和田おおわだ国民こくみん学校がっこう(東京とうきょう渋谷しぶや)に養護ようご学級がっきゅう開設かいせつ
戦後せんご最初さいしょ特殊とくしゅ学級がっきゅう復興ふっこう[3]
1947ねん 教育きょういく基本きほんほう学校がっこう教育きょういくほう公布こうふ
盲学校もうがっこうろう学校がっこうへの就学しゅうがく義務ぎむせいになる(施行しこうは1948年度ねんどから)。
1950ねん 山梨やまなし県立けんりつ盲学校もうがっこうめくらろう重複じゅうふく障害しょうがい教育きょういく開始かいし[3]
1950ねん 門司もじ市立しりつ白野江しらのえ養護ようご学校がっこう創設そうせつ
最初さいしょ公立こうりつ病弱びょうじゃく養護ようご学校がっこう[3]
1953ねん 文部もんぶ次官じかん通達つうたつ教育きょういくじょう特別とくべつあつかいをようする児童じどう生徒せいと判別はんべつ基準きじゅん
6種類しゅるい[注釈ちゅうしゃく 4]、4段階だんかい基準きじゅん[注釈ちゅうしゃく 5] と、教育きょういく措置そち[注釈ちゅうしゃく 6]しめされる(“分離ぶんり教育きょういく”の法的ほうてき根拠こんきょ)。
1956ねん 大阪おおさか府立ふりつ養護ようご学校がっこう愛知あいち県立けんりつ養護ようご学校がっこう創設そうせつ
最初さいしょ公立こうりつ肢体したい不自由ふじゆう養護ようご学校がっこう[3]
1957ねん 東京とうきょう都立とりつあおとり養護ようご学校がっこう創設そうせつ
最初さいしょ公立こうりつ精神せいしん薄弱はくじゃく当時とうじ養護ようご学校がっこう[3]
1958ねん めくらろう学校がっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう公布こうふ
1958ねん 仙台せんだい市立しりつどおりまち小学校しょうがっこう言語げんご障害しょうがい学級がっきゅう設置せっち[3]
このころから、小学校しょうがっこう吃音きつおんしょう矯正きょうせい目的もくてきとした「言葉ことば教室きょうしつ」や「言語げんご治療ちりょう教室きょうしつ」が設置せっちされはじめる。戦前せんぜんにも同種どうしゅ矯正きょうせいしょ設置せっちされていた[よう出典しゅってん]
1963ねん 精神せいしん薄弱はくじゃく養護ようご学校がっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう公布こうふ
文部省もんぶしょう事務次官じむじかん通達つうたつとして公布こうふされる。
1963ねん 大阪おおさか市立しりつ本田ほんだ小学校しょうがっこう弱視じゃくし学級がっきゅう設置せっち[3]
1978ねん 初等しょとう中等ちゅうとう教育きょういく局長きょくちょう通達つうたつ教育きょういくじょう特別とくべつ取扱とりあつかいをようする児童じどう生徒せいと教育きょういく措置そちについて」
いわゆる309ごう通達つうたつ教育きょういく措置そちとしての就学しゅうがく免除めんじょ就学しゅうがく猶予ゆうよ原則げんそくとして廃止はいしされる。
1979ねん 養護ようご学校がっこう義務ぎむ
学校がっこう教育きょういくほうちゅう養護ようご学校がっこうにおける就学しゅうがく義務ぎむおよ養護ようご学校がっこう設置せっち義務ぎむかんする部分ぶぶん施行しこう期日きじつさだめる政令せいれい」による。
同時どうじ訪問ほうもん教育きょういく制度せいど実施じっしされる[3]
このころから自閉症じへいしょう情緒じょうちょ障害しょうがいとして位置いちづけられ、特殊とくしゅ教育きょういく対象たいしょうとなる。
1987ねん 筑波つくば技術ぎじゅつ短期大学たんきだいがくひらきがく[3]
1993ねん 学校がっこう教育きょういくほう施行しこう規則きそく改正かいせい文部省もんぶしょう、「学校がっこう教育きょういくほう施行しこう規則きそくだい73じょう21だい1こう規定きていによる特別とくべつ教育きょういく課程かてい告示こくじ
つうきゅうによる指導しどう(いわゆる『ことばの教室きょうしつ』)の規定きてい制度せいど

特別とくべつ支援しえん教育きょういくへの転換てんかん[編集へんしゅう]

2001ねん
このはるから文部もんぶ科学かがくしょうは、旧来きゅうらいの“特殊とくしゅ教育きょういく”といういいかたえて、“特別とくべつ支援しえん教育きょういく”という呼称こしょう使用しようしている。
2004ねん8がつ 中央ちゅうおう教育きょういく審議しんぎかい特別とくべつ支援しえん教育きょういく推進すいしんするための制度せいどかたについて」中間なかままとめ
2005ねん12月8にち答申とうしんされた。
2006ねん3がつ 学校がっこう教育きょういくほう施行しこう規則きそく一部いちぶ改正かいせい
同年どうねん4がつ施行しこう)いわゆる「つうきゅうせい弾力だんりょく」がおこなわれた。
2006ねん6月15にち学校がっこう教育きょういくほうとう一部いちぶ改正かいせいする法律ほうりつあん可決かけつ成立せいりつ
6月21にち公布こうふされ、特別とくべつ支援しえん教育きょういく2007ねん4がつから正式せいしき実施じっしされることとなった。

理念りねん背景はいけい[編集へんしゅう]

理念りねん[編集へんしゅう]

文部もんぶ科学かがくしょう定義ていぎする「特別とくべつ支援しえん教育きょういく理念りねん[4] には、つぎげるような文言もんごんがある。

特別とくべつ支援しえん教育きょういくは、障害しょうがいのある幼児ようじ児童じどう生徒せいと自立じりつ社会しゃかい参加さんかけた主体しゅたいてき取組とりくみ支援しえんするという視点してんち、幼児ようじ児童じどう生徒せいといちにん一人ひとり教育きょういくてきニーズを把握はあくし、 そのてるちからたかめ、生活せいかつ学習がくしゅうじょう困難こんなん改善かいぜんまた克服こくふくするため、適切てきせつ指導しどうおよ必要ひつよう支援しえんおこなうものである。

また、特別とくべつ支援しえん教育きょういくは、これまでの特殊とくしゅ教育きょういく対象たいしょう障害しょうがいだけでなく、知的ちてきおくれのない発達はったつ障害しょうがいふくめて、特別とくべつ支援しえん必要ひつようとする幼児ようじ児童じどう生徒せいと在籍ざいせきするすべての学校がっこうにおいて実施じっしされるものである。

さらに、特別とくべつ支援しえん教育きょういくは、障害しょうがいのある幼児ようじ児童じどう生徒せいとへの教育きょういくにとどまらず、障害しょうがい有無うむやその個々ここちがいを認識にんしきしつつ様々さまざま人々ひとびときと活躍かつやくできる共生きょうせい社会しゃかい形成けいせい基礎きそとなるものであり、くに現在げんざいおよ将来しょうらい社会しゃかいにとって重要じゅうよう意味いみっている。

— 特別とくべつ支援しえん教育きょういく推進すいしんについて(通知つうち[1]

つまり、特別とくべつ支援しえん教育きょういくとは、たん障害しょうがいをどうおしえるか、どうまなばせるかではなく、障害しょうがいをひとつの個性こせいとしてもった、つまり「特別とくべつなニーズをもつども(children with special needs)」が、どう年齢ねんれいとともに成長せいちょう発達はったつしていくか、そのすべてにわたり、本人ほんにん主体性しゅたいせい尊重そんちょうしつつ、できる援助えんじょのかたちとはなにかんがえていこうとするみである。

背景はいけい[編集へんしゅう]

特別とくべつ教育きょういくてきニーズ」という概念がいねん世界せかいはじめて使用しようされるようになったのは1978ねんのことで、イギリスのマリー・ウォーノック(Mary Warnock)を議長ぎちょうとする障害しょうがいしゃ教育きょういく調査ちょうさ委員いいんかい報告ほうこくしょがイギリス議会ぎかい提出ていしゅつされたときからである。このウォーノック報告ほうこくけ、イギリス政府せいふ1981ねん教育きょういくほうで、特殊とくしゅ教育きょういく対象たいしょうとなるどもを、「障害しょうがい」のあるどもから、「特別とくべつ教育きょういくてきニーズ」のあるどもへと概念がいねん一大いちだい転換てんかんはかった。[5][6]

この「特別とくべつ教育きょういくてきニーズ(Special Needs on Education)、および特別とくべつなニーズ教育きょういく(Special Needs Education)の概念がいねんは、1994ねん6がつユネスコ主催しゅさいによる「特別とくべつなニーズ教育きょういくかんする世界せかい会議かいぎ」において採択さいたくされたサラマンカ声明せいめいへとれられ、開発途上国かいはつとじょうこくふく世界せかい各国かっこくへと波及はきゅうした。[7]

わがくににおいても、文部もんぶ科学かがくしょう発行はっこうの「特別とくべつ支援しえん教育きょういくについて」などの文書ぶんしょないにおいて、「障害しょうがい」から「支援しえん必要ひつようとしている」へと徐々じょじょ表現ひょうげんあらためられた。

したがって、特別とくべつ支援しえん教育きょういくたん特殊とくしゅ教育きょういく対象たいしょう拡大かくだい教育きょういく手法しゅほう発展はってん意味いみする概念がいねんではない。また、特別とくべつ支援しえん教育きょういく英語えいごさい翻訳ほんやくするさい、"Special Support Education"とする誤訳ごやく時折ときおりみられるが、まさしくは"Special Needs Education"である。

欧米おうべいのSpecial Needs educationとの相違そういてん[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくヨーロッパ諸国しょこくにおいて、日本にっぽんの「特別とくべつ支援しえん教育きょういく」に該当がいとうする概念がいねんはSpecial Needs educationである。ただし、広義こうぎのSpecial Needs educationの対象たいしょうは『通常つうじょう教育きょういく課程かていでは十分じゅうぶん教育きょういく効果こうかのぞめない』ものとして、障害しょうがいのある児童じどうかぎらず、学習がくしゅう能力のうりょくいちじるしくたか児童じどうギフテッド)や外国がいこくじん移民いみんふくまれる。

なお、学校がっこう特別とくべつ支援しえんおこなうだけでなく、小児科しょうにか子供こども病院びょういん自治体じちたい福祉ふくし窓口まどぐちとが連携れんけいして、就学しゅうがくまえ障害しょうがい発見はっけん早期そうき支援しえん開始かいしするという障害しょうがいのための早期そうき教育きょういくプランをくにもある。アメリカの個別こべつ教育きょういく計画けいかく (IEP)など、個々人ここじん障害しょうがい対応たいおうした自立じりつのための長期ちょうき教育きょういく計画けいかく障害しょうがい早期そうき教育きょういくはしらとなっている。日本にっぽんでも2005ねん施行しこう発達はったつ障害しょうがいしゃ支援しえんほうなどに「早期そうき発見はっけん」という言葉ことばまれている。

制度せいど内容ないよう[編集へんしゅう]

対象たいしょう拡大かくだい[編集へんしゅう]

きゅう学校がっこう教育きょういくほう規定きていされた特殊とくしゅ教育きょういく対象たいしょうとする障害しょうがいは、視覚しかく障害しょうがい聴覚ちょうかく障害しょうがい知的ちてき障害しょうがい精神せいしん障害しょうがい肢体したい不自由ふじゆう病弱びょうじゃくおよび『その障害しょうがい』に限定げんていされていた。『その障害しょうがい』の解釈かいしゃくについては、学校がっこう教育きょういくほう施行しこう規則きそく情緒じょうちょ障害しょうがい特殊とくしゅ学級がっきゅうでの指導しどう対応たいおう)・言語げんご障害しょうがいつうきゅうによる指導しどう対応たいおう)がげられるにとどまっていた。

2006ねん6がつ成立せいりつした改正かいせい学校がっこう教育きょういくほうでは、「その心身しんしん故障こしょうのあるもので、特殊とくしゅ学級がっきゅうにおいて教育きょういくおこなうことが適当てきとうなもの」が「その教育きょういくじょう特別とくべつ支援しえん必要ひつようとする児童じどう生徒せいとおよ幼児ようじ」という文言もんごんわった。さらに、学校がっこう教育きょういくほう施行しこう規則きそくで、通常つうじょう学級がっきゅうにおいて特別とくべつ教育きょういく課程かていによることができるものにLDADHD追加ついかされ、特別とくべつ支援しえん教育きょういく対象たいしょうふくまれるようになった。

めくらろう養護ようご学校がっこうから特別とくべつ支援しえん学校がっこう[編集へんしゅう]

2006ねん6がつ成立せいりつした改正かいせい学校がっこう教育きょういくほうによって、従前じゅうぜんめくらろう養護ようご学校がっこう2007ねん4がつ、「特別とくべつ支援しえん学校がっこう」に一本いっぽんされた[注釈ちゅうしゃく 7]。この名称めいしょう変更へんこうは、障害しょうがい種類しゅるいによらず一人ひとりいちにん特別とくべつ教育きょういくてきニーズにこたえていくという特別とくべつ支援しえん教育きょういく理念りねんもとづくが、めくら部門ぶもんろう部門ぶもん肢体したい不自由ふじゆう部門ぶもんなど、学校がっこうごとにしゅとして教育きょういくおこな障害しょうがいしゅめられる[8]

また、特別とくべつ支援しえん学校がっこう在籍ざいせきする幼児ようじ児童じどう生徒せいと教育きょういくほどこすだけでなく、地域ちいき幼稚園ようちえんしょうなか高等こうとう学校がっこう在籍ざいせきする幼児ようじ児童じどう生徒せいと教育きょういくかんする助言じょげん支援しえん、いわゆる「センターてき機能きのう」もになうよう定義ていぎされている[9]従来じゅうらい障害しょうがい[注釈ちゅうしゃく 8]くわえて、発達はったつ障害しょうがい[注釈ちゅうしゃく 9] などの子供こどもたちにも、地域ちいき学校がっこう総合そうごうてき全体ぜんたいてき配慮はいりょ支援しえんをしていくことになる。

特殊とくしゅ学級がっきゅうから特別とくべつ支援しえん教室きょうしつ[編集へんしゅう]

2005ねん12月にまとめられた「特別とくべつ支援しえん教育きょういく推進すいしんするための制度せいどかたについて」の答申とうしんでは、これまでの特殊とくしゅ学級がっきゅうにかわって、特別とくべつ支援しえん教室きょうしつというあたらしい制度せいど提唱ていしょうした(外部がいぶリンク参照さんしょう)。従来じゅうらい障害しょうがい教育きょういくささえてきた学校がっこう教育きょういくほうだい75じょう規定きていする障害しょうがい学級がっきゅう法制ほうせいじょうは「特殊とくしゅ学級がっきゅう」)と、学校がっこう教育きょういくほう施行しこう規則きそくだい73じょう規定きていするつうきゅうせいとを一本いっぽんし、「特別とくべつ支援しえん教室きょうしつ」とする方向ほうこうしめされたが、従来じゅうらい知的ちてき障害しょうがい学級がっきゅう情緒じょうちょ障害しょうがい学級がっきゅう難聴なんちょう学級がっきゅう弱視じゃくし学級がっきゅう病弱びょうじゃく学級がっきゅう肢体したい不自由ふじゆう学級がっきゅうといった特殊とくしゅ学級がっきゅう機能きのう維持いじすべきとの意見いけんがあることにもれている。

このため2006ねん6がつ成立せいりつした改正かいせい学校がっこう教育きょういくほうでは特殊とくしゅ学級がっきゅう特別とくべつ支援しえん学級がっきゅう名称めいしょう変更へんこうすることとし、在籍ざいせき一元化いちげんか先送さきおくりされた。しかし、参議院さんぎいん附帯ふたい決議けつぎでは「特別とくべつ支援しえん教室きょうしつにできるだけはや移行いこうするようじゅうふん検討けんとうおこなうこと」と宿題しゅくだいのこしている。

特別とくべつ支援しえん教室きょうしつでは、これまで通常つうじょう学級がっきゅう在籍ざいせきしていて、支援しえん対象たいしょうとされなかったLDADHD高機能こうきのう自閉症じへいしょうひとし対象たいしょうふくまれ、特別とくべつ支援しえんけることが予定よていされていた。そのためにこれまで存在そんざいしていた上記じょうき学校がっこう教育きょういくほうだい75じょう特殊とくしゅ学級がっきゅう廃止はいしされ、その対象たいしょうとなっていた子供こどもたちも特別とくべつ支援しえん教室きょうしつでの指導しどう対象たいしょうとなると想定そうていされていた。

特殊とくしゅ学級がっきゅうつうきゅうとして存在そんざいしていた障害しょうがい学級がっきゅうなどがくなることは実質じっしつてきには人員じんいん削減さくげんとなるのではないか、そのうえあらたにLDや吃音きつおんしょうひとし子供こどもたちへの専門せんもんてき支援しえん指導しどう可能かのうなのか不安ふあんこえがあがっている。文部もんぶ科学かがくしょうはLD、ADHDとう子供こども通常つうじょう学級がっきゅうでの存在そんざいぜん児童じどう生徒せいとの6.3%(吃音きつおんは1.2%)[注釈ちゅうしゃく 10]指摘してきしており、500にん規模きぼ学校がっこうで30にん存在そんざいすることになり、現在げんざい障害しょうがい学級がっきゅう在籍ざいせきする児童じどう生徒せいとわせて特別とくべつ支援しえん教育きょういく対象たいしょうとするとしている。

文部もんぶ科学かがくしょうは2006ねん省内しょうないに「特別とくべつ支援しえん教室きょうしつ」にかんする研究けんきゅうかいを3ねん計画けいかくげ、財務ざいむはいってモデル事業じぎょう展開てんかいしている。人的じんてき資源しげん確保かくほしながら、特別とくべつ支援しえん教室きょうしつ理念りねんちかづけられるのか、おやかいなど関連かんれん団体だんたい注視ちゅうししている。

教員きょういん免許めんきょ制度せいど変更へんこう[編集へんしゅう]

教員きょういん免許めんきょ制度せいどについても特別とくべつ支援しえん教育きょういくへの移行いこうわせて変更へんこうされることとなり、学校がっこうしゅ一本いっぽんした「特別とくべつ支援しえん学校がっこう免許めんきょじょう」(5つからなる「教育きょういく領域りょういき」が設定せっていされ、うち3領域りょういき知的ちてき障害しょうがいしゃ肢体したい不自由ふじゆうしゃ病弱びょうじゃくしゃ(身体しんたい虚弱きょじゃくしゃふくむ。)にかんするかく教育きょういく)が従前じゅうぜん養護ようご学校がっこう相当そうとう、「聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃかんする教育きょういく」の領域りょういき従前じゅうぜんろう学校がっこう相当そうとう、「視覚しかく障害しょうがいしゃかんする教育きょういく」の領域りょういき従前じゅうぜん盲学校もうがっこう相当そうとうとなる)となった。なお、すんで所得しょとく単位たんいのうち、かつての「養護ようご学校がっこう」に相当そうとうする領域りょういきは、現行げんこう免許めんきょじょう方式ほうしきにて申請しんせいする場合ばあいは、「知的ちてき障害しょうがいかんする教育きょういく」の領域りょういき単位たんいえられる。また、免許めんきょじょううえでの教育きょういく領域りょういきには規定きていされていないが、重複じゅうふく・LDとう領域りょういきとして、重複じゅうふく障害しょうがいおもに、知的ちてき障害しょうがいしたがえたる障害しょうがいとして併発へいはつしている重度じゅうど重複じゅうふく障害しょうがい)や発達はったつ障害しょうがい(おもに、知的ちてき障害しょうがいのない、かつて「軽度けいど発達はったつ障害しょうがい」としょうされていた領域りょういき)についても、教職きょうしょく課程かていうえ履修りしゅう必要ひつよう科目かもく規定きていされるようになった。

また、特別とくべつ支援しえん学校がっこう免許めんきょじょう取得しゅとく必要ひつよう法定ほうてい単位たんいとして、だいさんらんにて、取得しゅとくしない教育きょういく領域りょういきおよび、発達はったつ障害しょうがい重複じゅうふく障害しょうがいひとし上述じょうじゅつの「重複じゅうふく・LDとう領域りょういき」をす)にかんする「教育きょういく課程かていおよ指導しどうほうかんする科目かもくならびに「心理しんり生理せいり病理びょうりかんする科目かもく」の取得しゅとくようすることになった(ちなみに、だいいちらんは「基礎きそ理論りろんかんする科目かもく」、だいらん取得しゅとくする教育きょういく領域りょういきかんする「教育きょういく課程かていおよ指導しどうほうかんする科目かもくならびに「心理しんり生理せいり病理びょうりかんする科目かもく」、だいよんらんは「教育きょういく実習じっしゅう」となっている)。また、取得しゅとくしていない領域りょういき追加ついかする場合ばあいは、「しん教育きょういく領域りょういき」のだいらん部分ぶぶんにおいて、「教育きょういく課程かていおよ指導しどうほうかんする科目かもく」と「心理しんり生理せいりおよ病理びょうりかんする科目かもく」を包括ほうかつした、4単位たんい以上いじょう取得しゅとくにより、授与じゅよ申請しんせい可能かのうだが、きゅう養護ようご学校がっこう盲学校もうがっこうろう学校がっこう免許めんきょ保有ほゆうしゃが、「しん教育きょういく領域りょういき」を免許めんきょ追加ついかする場合ばあいは、前述ぜんじゅつの4単位たんい以上いじょう科目かもく習得しゅうとくくわえ、きゅうこうしゅ免許めんきょじょう取得しゅとく規定きていされていなかった、だいさんらん規定きていされた科目かもく履修りしゅう必要ひつようとなるケースもある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 言語げんご障害しょうがい情緒じょうちょ障害しょうがい自閉症じへいしょうとう該当がいとう
  2. ^ 発達はったつ障害しょうがい」が該当がいとう(これまで『LDADHD高機能こうきのう自閉症じへいしょうひとし』と表現ひょうげんしてきた障害しょうがい範囲はんいについて、文部もんぶ科学かがくしょう平成へいせい19ねん3月15にちづけ 初等しょとう中等ちゅうとう教育きょういくきょく特別とくべつ支援しえん教育きょういくめい通達つうたつで「発達はったつ障害しょうがいしゃ支援しえんほう定義ていぎにより、公文書こうぶんしょにおいては原則げんそくとして『発達はったつ障害しょうがい』と表記ひょうきする」としている。)
  3. ^ なお、これ以前いぜんにも1890ねん長野ながの松本まつもと尋常じんじょう小学校しょうがっこう1901ねん群馬ぐんま館林たてばやし小学校しょうがっこうで“特別とくべつ学級がっきゅう”が実験じっけんてき設置せっちされている。
  4. ^ めくらろう精神せいしん薄弱はくじゃく肢体したい不自由ふじゆう病弱びょうじゃく言語げんご障害しょうがい性格せいかく異常いじょう
  5. ^ 白痴はくち痴愚ちぐ魯鈍ろどん境界きょうかいせん
  6. ^ 就学しゅうがく免除めんじょ就学しゅうがく猶予ゆうよ養護ようご学校がっこう特殊とくしゅ学級がっきゅうあるいは通常つうじょう学級がっきゅう
  7. ^ 一本いっぽんについては知的ちてき精神せいしんてき障害しょうがいがある児童じどうと、めくらろう肢体したい不自由ふじゆうであっても知的ちてき問題もんだいがない児童じどうとの教育きょういく一体いったいにすることに疑問ぎもんていするこえや、一体いったいにするのは学校がっこう運営うんえい人件じんけん削減さくげんすることが本当ほんとう目的もくてきではないかなどの疑念ぎねんすくなからずある。[よう出典しゅってん]
  8. ^ 視覚しかく障害しょうがい聴覚ちょうかく障害しょうがい知的ちてき障害しょうがい肢体したい不自由ふじゆう病弱びょうじゃく情緒じょうちょ障害しょうがい
  9. ^ 文部もんぶ科学かがくしょうでは学習がくしゅう障害しょうがい(LD)、注意ちゅうい欠陥けっかんどうせい障害しょうがい(ADHD)、高機能こうきのう自閉症じへいしょうひとし総称そうしょうして「発達はったつ障害しょうがい」と定義ていぎしている。(『「発達はったつ障害しょうがい」の用語ようご使用しようについて』文部もんぶ科学かがくしょう
  10. ^ この6.3%という数字すうじ信頼しんらいせいについては賛否さんぴ両論りょうろんあり、かく地方自治体ちほうじちたい独自どくじっている調査ちょうさでは、数値すうちにばらつきがられる。これは、調査ちょうさするスタッフが学校がっこう教員きょういんであり、教員きょういん知識ちしきりょうによって数値すうちわり、またLD、ADHDとうがいわゆる「操作そうさてき定義ていぎ」であることからおこることである。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 特別とくべつ支援しえん教育きょういく推進すいしんについて(通知つうち”. 文部もんぶ科学かがくしょう. 2020ねん6がつ4にち閲覧えつらん
  2. ^ よくある質問しつもん(2014ねん7がつ1にちアーカイブ) - 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんWeb Archiving Project
  3. ^ a b c d e f g h i 藤井ふじいさとしなお(2004)へん特別とくべつ支援しえん教育きょういくとこれからの養護ようご学校がっこうミネルみねるァ書房ぁしょぼう
  4. ^ 特別とくべつ支援しえん教育きょういく推進すいしんについて(通知つうち)」2007ねん4がつ1にち文部もんぶ科学かがくしょう初等しょとう中等ちゅうとう教育きょういく局長きょくちょう通知つうち
  5. ^ Department for Education and Science:Special Educational Needs: Report of the Committee of Inquiry into the Education of Handicapped Children and Young People.London: HMSO,1978.
  6. ^ Department for Education and Employment: Excellence for all children -Meeting Special Educational Needs-. The Stationary Office U.K. 1997.
  7. ^ UNESCO:Final Report, World Conference on Special Needs Education: Access and Quality, 1995
  8. ^ 学校がっこう教育きょういくほうだい71じょうの2
  9. ^ 学校がっこう教育きょういくほうだい71じょうの3

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]