連隊れんたい区く

連隊れんたい区く（れんたいく）は、大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐんの陸軍りくぐん管区かんくの一ひとつ。師し管かんまたは師し管区かんく内うちを数個すうこの連隊れんたい区くに分わけて置おかれた。各かく連隊れんたい区くは地名ちめいを冠かんした名称めいしょうで、連隊れんたい区く司令しれい部ぶを有ゆうし、この司令しれい部ぶが区域くいき内ないの徴兵ちょうへい・召集しょうしゅう・在郷ざいきょう軍人ぐんじん会かいに関かんする事務じむを所掌しょしょうした。

元もとの用字ようじは「聯隊れんたい區く」であり、「連れん」は代用だいよう表記ひょうきによる書換かきかえたもの。防衛庁ぼうえいちょう防衛ぼうえい研究所けんきゅうじょによる戦史せんし叢書そうしょ等ひとし、幾いくつかの史料しりょう・書籍しょせきは一貫いっかんして旧きゅう表記ひょうきを用もちいている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

初期しょき[編集へんしゅう]

前身ぜんしんは、1888年ねんに大隊だいたい区く司令しれい部ぶ条例じょうれい（明治めいじ21年ねん勅みことのり令れい第だい29号ごう）によって置おかれた大隊だいたい区くである。明治めいじ21年ねん鎮台ちんだいが廃止はいしされ師団しだんが創設そうせつされたときに、それまでの鎮台ちんだいの衛戍えいじゅ地域ちいきを大隊だいたい区くに分わけた。大隊だいたい区くは歩兵ほへい大隊だいたいに対応たいおうし、大隊だいたい区く司令しれい部ぶが置おかれたが、これは部隊ぶたいとしての大隊だいたいとは異ことなる役所やくしょである。この当時とうじすでに連隊れんたいはあり、1個いっこ連隊れんたいが2個こ大隊だいたいを管掌かんしょうしたが、連隊れんたいに対応たいおうする管区かんくはなかった。

大隊だいたい区くは、1896年ねん（明治めいじ29年ねん）3月がつの連隊れんたい区く司令しれい部ぶ条例じょうれい（明治めいじ29年ねん勅みことのり令れい第だい56号ごう）によって連隊れんたい区くと改あらためられた。このとき陸軍りくぐんは部隊ぶたいをほぼ倍増ばいぞうしたので、大隊だいたい区くのままなら管区かんくの数かずも倍増ばいぞうするはずであったが、対応たいおうする部隊ぶたいのレベルを一ひとつ引ひき上あげることで、新設しんせつの連隊れんたい区くに既存きそんの大隊だいたい区くの区割くわりをそのまま引ひき継つがせた。

連隊れんたい区くには連隊れんたい区く司令しれい部ぶが設もうけられ、おおむね歩兵ほへい連隊れんたいの所在地しょざいちに置おかれた。これも部隊ぶたいを指揮しきする連隊れんたい司令しれい部ぶとは別べつ組織そしきである。連隊れんたい区くの管轄かんかつ区域くいきは「陸軍りくぐん管区かんく表ひょう」（明治めいじ29年ねん勅みことのり令れい第だい24号ごう）に依よって定さだめられた。師し管かんはおおむね4個こ連隊れんたい区くに分わけられ、離島りとう等ひとしの一部いちぶ区域くいきには警備隊けいびたい区く（警備けいび隊たいについては警備けいび隊たい司令しれい部ぶ条例じょうれい（明治めいじ29年ねん勅みことのり令れい第だい55号ごう）他た別個べっこの法令ほうれいによる。置おかれた警備けいび隊たいの例れいとしては対馬つしま警備けいび隊たいなどがある。）が設置せっちされた。

連隊れんたい区くの名称めいしょうは、連隊れんたい区く司令しれい部ぶ所在地しょざいちの地名ちめいをとった。このとき日本にっぽんは台湾たいわんを植民しょくみん地ちとして手てに入いれていたが、連隊れんたい区くは置おかなかった。

旅たび管かんの設立せつりつ[編集へんしゅう]

1907年ねん（明治めいじ40年ねん）に連隊れんたい区く司令しれい部ぶ条例じょうれい（明治めいじ40年ねん軍令ぐんれい陸りく第だい6号ごう）・陸軍りくぐん管区かんく表ひょう（明治めいじ40年ねん軍令ぐんれい陸りく第だい3号ごう）が発はっせられると、新あらたに連隊れんたい区くと師し管かんの間あいだに位置いちする旅たび管かんが設もうけられる。東京とうきょうを中心ちゅうしんに関東かんとうを区域くいきとする第だい一いち師し管かんは第だい一いち旅たび管かんと第だい二に旅たび管かんに分わけられ、第だい一いち旅たび管かんは麻布あざぶ連隊れんたい区くと甲府こうふ連隊れんたい区くに分わかれた。1師し管かん4連隊れんたい区くルールは健在けんざいで、間あいだに旅たび管かんが加くわわり1師し管かん2旅たび管かん4連隊れんたい区くとなり、1旅たび管かんは2連隊れんたい区くを擁ようした。

改正かいせい前まえの警備隊けいびたい区くは小笠原おがさわら島とう・佐渡さど・隠岐おき・大島おおしま・五島ごしま・対馬つしまの6個こであったが、今次こんじの改正かいせいによって、沖縄おきなわ・対馬つしまの2個ことなり、他たは連隊れんたい区くに編入へんにゅうされた。台湾たいわんの他ほか、樺太からふともまた領土りょうどに加くわわったが、この時ときも管区かんくは設定せっていされなかった。

再さい改正かいせい[編集へんしゅう]

連隊れんたい区く司令しれい部ぶ令れい（大正たいしょう12年ねん勅みことのり令れい第だい267号ごう）によって連隊れんたい区く司令しれい部ぶ条例じょうれいは全部ぜんぶ改正かいせいされ、陸軍りくぐん管区かんく表ひょう（大正たいしょう14年ねん軍令ぐんれい陸りく第だい2号ごう）により再ふたたび管区かんく構成こうせいが改あらためられる。旅たび管かんと警備隊けいびたい区くは廃はいされ、内地ないちはすべて連隊れんたい区くに区分くぶんされた。樺太からふとは第だい七なな師し管かん旭川あさひかわ連隊れんたい区くに編入へんにゅう、台湾たいわん・朝鮮ちょうせんは管区かんくに編入へんにゅうされていない。以下いかに、参考さんこうとして昭和しょうわ5年ねん時点じてんの連隊れんたい区く一覧いちらん^[1]を示しめす。なお、表ひょう中ちゅうの脚注きゃくちゅうが示しめす市し名めい、郡ぐん名めいは、昭和しょうわ5年ねん当時とうじのものである。

連隊れんたい区く一覧いちらん
師し管かん名めい	連隊れんたい区く名めい	1	2	3	4	5
第だい1師し管かん	連隊れんたい区く名めい	麻布まふ	甲府こうふ	本郷ほんごう	佐倉さくら
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	（東京とうきょう）^[2]、（埼玉さいたま^[3]）	山梨やまなし、神奈川かながわ	（東京とうきょう^[4]）、（埼玉さいたま^[5]）	千葉ちば
第だい2師し管かん	連隊れんたい区く名めい	仙台せんだい	福島ふくしま	新発田しばた	高田たかだ
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	宮城みやぎ	福島ふくしま	（新潟にいがた^[6]）	（新潟にいがた^[7]）
第だい3師し管かん	連隊れんたい区く名めい	名古屋なごや	岐阜ぎふ	豊橋とよはし	静岡しずおか
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	（愛知あいち^[8]）	（岐阜ぎふ^[9]）	（愛知あいち^[10]）、（静岡しずおか^[11]）	（静岡しずおか^[12]）
第だい4師し管かん	連隊れんたい区く名めい	大阪おおさか	神戸こうべ	堺さかい	和歌山わかやま
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	（大阪おおさか^[13]）、（兵庫ひょうご^[14]）	（兵庫ひょうご^[15]）	（大阪おおさか^[16]）	和歌山わかやま
第だい5師し管かん	連隊れんたい区く名めい	広島ひろしま	福山ふくやま	浜田はまだ	山口やまぐち
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	（広島ひろしま^[17]）	（広島ひろしま^[18]）	（島根しまね^[19]）	（山口やまぐち^[20]）
第だい6師し管かん	連隊れんたい区く名めい	熊本くまもと	大分おおいた	都城みやこのじょう	鹿児島かごしま	沖縄おきなわ
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	熊本くまもと	（大分おおいた^[21]）	宮崎みやざき	鹿児島かごしま	沖縄おきなわ
第だい7師し管かん	連隊れんたい区く名めい	札幌さっぽろ	函館はこだて	釧路くしろ	旭川あさひかわ
	連隊れんたい区くに属ぞくした庁ちょう府県ふけん	（北海道ほっかいどう^[22]）	（北海道ほっかいどう^[23]）	（北海道ほっかいどう^[24]）	（北海道ほっかいどう^[25]）、樺太からふと
第だい8師し管かん	連隊れんたい区く名めい	青森あおもり	盛岡もりおか	秋田あきた	山形やまがた
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	青森あおもり	岩手いわて	秋田あきた	山形やまがた
第だい9師し管かん	連隊れんたい区く名めい	金沢かなざわ	富山とやま	敦賀つるが	鯖江さばえ
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	石川いしかわ	富山とやま、（岐阜ぎふ^[26]）	（福井ふくい ^[27]）、（滋賀しが ^[28]）、（岐阜ぎふ^[29]）	（福井ふくい^[30]）
第だい10師し管かん	連隊れんたい区く名めい	姫路ひめじ	鳥取とっとり	岡山おかやま	松江まつえ
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	（兵庫ひょうご^[31]）	（鳥取とっとり^[32]）、（兵庫ひょうご^[33]）	岡山おかやま	（島根しまね^[34]）、（鳥取とっとり^[35]）
第だい11師し管かん	連隊れんたい区く名めい	丸亀まるがめ	松山まつやま	徳島とくしま	高知こうち
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	香川かがわ	愛媛えひめ	徳島とくしま	高知こうち
第だい12師し管かん	連隊れんたい区く名めい	小倉おぐら	福岡ふくおか	大村おおむら	久留くる米よね
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	（福岡ふくおか^[36]）、（山口やまぐち ^[37]）	（福岡ふくおか^[38]）	長崎ながさき	（福岡ふくおか^[39]）、佐賀さが、（大分おおいた ^[40]）
第だい14師し管かん	連隊れんたい区く名めい	水戸みと	宇都宮うつのみや	高崎たかさき	松本まつもと
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	茨城いばらき	栃木とちぎ	群馬ぐんま	長野ながの
第だい16師し管かん	連隊れんたい区く名めい	京都きょうと	福知山ふくちやま	津つ	奈良なら
	連隊れんたい区くに属ぞくした府県ふけん	（京都きょうと^[41]）、（滋賀しが^[42]）	（京都きょうと^[43]）	三重みえ	奈良なら

注ちゅう1 - 見出みだしの数字すうじは便宜上べんぎじょう付与ふよしたもの
注ちゅう2 - 府県ふけん名めいがカッコにくくられたものはその一部いちぶが連隊れんたい区くに属ぞくしていたことを示しめす

兵事へいじ区くの設立せつりつ[編集へんしゅう]

1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）、陸軍りくぐん兵事へいじ部ぶ令れいが制定せいていされ、朝鮮ちょうせんと台湾たいわんにそれぞれ兵事へいじ区くが設もうけられた。法令ほうれいの名称めいしょうにもある通とおり兵事へいじ区くの官衙かんがは兵事へいじ部ぶで、長ちょうは兵事へいじ部長ぶちょう。所掌しょしょう事務じむはおおむね連隊れんたい区く司令しれい部ぶと同様どうようであったが、住民じゅうみんが兵役へいえきの対象たいしょうにならない植民しょくみん地ちでは、内地ないちに本籍ほんせきを持もちつつ植民しょくみん地ちに居住きょじゅうする人ひとが対象たいしょうであった。朝鮮ちょうせんは羅ら南みなみ・京きょう城じょう・平壌ぴょんやん・大邱たいきゅうなど6兵事へいじ区くに、台湾たいわんは台北たいぺい・台たい南みなみの2兵事へいじ区くに分わかれた。

1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）8月がつ1日にちから、師し管かんの名称めいしょうを改あらため、それまで師団しだん番号ばんごうと同おなじ番号ばんごうであったのをやめて所在しょざい値ちの地名ちめいからとった^[44]。1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）11月1日にち、陸軍りくぐん管区かんく表ひょう（昭和しょうわ16年ねん軍令ぐんれい陸りく第だい20号ごう）により、管区かんく範囲はんいが改あらためられ、北海道ほっかいどうを除のぞき1府県ふけん1連隊れんたい区くとなった。兵事へいじ事務じむの複雑ふくざつ化かから陸軍りくぐん兵務へいむ部ぶ令れい（昭和しょうわ16年ねん勅みことのり令れい第だい790号ごう）を制定せいていし、軍ぐん・師団しだん司令しれい部ぶに兵務へいむ部ぶを設もうけた。兵務へいむ部ぶは召募しょうぼ・在郷ざいきょう軍人ぐんじん・国防こくぼう思想しそうの普及ふきゅう・学校がっこう教練きょうれん・軍人ぐんじん援護えんご・職業しょくぎょう補導ほどうを所掌しょしょうし、連隊れんたい区く司令しれい官かん及および兵事へいじ部長ぶちょうに指示しじを与あたえ査察ささつを行おこなった。また、満州まんしゅうに於おける在留ざいりゅう邦人ほうじんの増加ぞうかとそれに伴ともなう徴兵ちょうへい事務じむ体制たいせいとして関東軍かんとうぐん管区かんくを設もうけ、管区かんく内ないを兵事へいじ区くに分わけた。兵事へいじ区くは新しん京きょう・奉天ほうてん・大連たいれん・哈爾賓まろうど・牡丹ぼたん江こう・斉ひとし斉ひとし哈爾・錦にしき州しゅうに設もうけた。

本土ほんど決戦けっせんに向むけた改正かいせい[編集へんしゅう]

1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）3月がつそれまでの連隊れんたい区く司令しれい部ぶは全すべて閉鎖へいさ、新あらたに臨時りんじ編成へんせいの連隊れんたい区く司令しれい部ぶが設置せっちされた。同おなじ範囲はんいで地区ちく司令しれい部ぶを併置へいちし、連隊れんたい区く司令しれい官かんが地区ちく司令しれい官かんを兼務けんむ。地区ちく司令しれい部ぶは同どう地域ちいきの防衛ぼうえいを担任たんにんした。司令しれい部ぶ要員よういんの若干じゃっかん名めいは双方そうほうを兼かねた。司令しれい官かんは中将ちゅうじょう又または少将しょうしょうで、6大だい都府県とふけんの司令しれい官かんは中将ちゅうじょうが任にんぜられた。

終戦しゅうせんに伴ともない「第だい一いち復員ふくいん官署かんしょ官制かんせい」（昭和しょうわ20年ねん勅みことのり令れい第だい676号ごう）により連隊れんたい区く司令しれい部ぶ令れいが、「昭和しょうわ二に十じゅう年ねん勅みことのり令れい第だい六ろく百ひゃく三さん十じゅう二に号ごう陸海りくかい軍ぐんノ復員ふくいんニ伴ともヒ不要ふようト為ためルベキ勅みことのり令れいノ廃止はいしニ関せきスル件けんニ基もとク陸軍りくぐん兵事へいじ部ぶ令れい廃止はいし等とうノ件けん」（昭和しょうわ21年ねん第だい一いち復員ふくいん省令しょうれい第だい6号ごう）により、陸軍りくぐん兵事へいじ部ぶ令れいは廃止はいしされた。