インド・ヨーロッパ祖語そご

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印欧語いんおうごぞく拡散かくさん

インド・ヨーロッパ祖語そご(インド・ヨーロッパそご、えい: Proto-Indo-EuropeanPIE)は、インド・ヨーロッパ語族ごぞく印欧語いんおうごぞく)のしょ言語げんご共通きょうつう祖先そせん祖語そご)として理論りろんてき構築こうちくされた仮説かせつじょう言語げんごである。しるしおう祖語そご(いんおうそご、いんのうそご)ともしょうされる。

この言語げんご成立せいりつから崩壊ほうかいまでの期間きかん先史せんし時代じだいたり、文字もじ存在そんざいせず、すべ口伝くでんにより子孫しそんへとがれたため、直接ちょくせつ記録きろく一切いっさいのこっていない。そのため、派生はせいした言語げんごからの推定すいていによりさいすすめられている。 クルガン仮説かせつによれば6000ねんまえロシア南部なんぶで、アナトリア仮説かせつによれば9000ねんまえアナトリアで、はらしるしおうけい民族みんぞくによってはなされていた。(インド・ヨーロッパぞく#みなもときょうについての研究けんきゅう参照さんしょう

ラテン語らてんごギリシアサンスクリットなどのかく古典こてん言語げんごをはじめ、英語えいごフランス語ふらんすごドイツロシアなどヨーロッパはなされている言語げんごだい部分ぶぶん[注釈ちゅうしゃく 1]トルコ東部とうぶからイランインド大陸たいりくスリランカにわたるクルドペルシアウルドゥーヒンディーシンハラなどの言語げんごは、いずれもこのしるしおう祖語そごから派生はせいして成立せいりつしたとされる。

崩壊ほうかいしるしおう祖語そご豊富ほうふ接尾せつびをもつ屈折くっせつであったとされる。これは印欧語いんおうごぞくしょ言語げんご同士どうし比較ひかくさいによる推定すいていによる。印欧語いんおうごぞく言語げんごは、屈折くっせつてき語形ごけい変化へんかだい部分ぶぶんうしなったものもおおいが、英語えいごふくめて依然いぜんすべ屈折くっせつである。しかし近年きんねん内的ないてきさいとその形態素けいたいそ解析かいせきにより、よりふる段階だんかいしるしおう祖語そごではセム祖語そごのように語幹ごかんうち母音ぼいん交替こうたいともな屈折くっせつこっていた可能かのうせいきわめてたかいことが判明はんめいした。

発見はっけんさい[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そごは18世紀せいきに、ラテン語らてんご古典こてんギリシアサンスクリットといった、当時とうじられていたインドおよびヨーロッパしょ言語げんご共通きょうつう起源きげんをなすものとして提案ていあんされた。当初とうしょ言語げんごからへだたっていたアナトリアトカラ印欧語いんおうごふくめられず、のどおん理論りろん考慮こうりょされていなかった。しかしりょうかたり存在そんざいあきらかになり、またヒッタイトのどおん存在そんざい確認かくにんされると、崩壊ほうかいの1000ねんほどまえにまずアナトリアが、つづいてトカラ分化ぶんかしたというかたち理論りろんてきまれることになった。現在げんざいではしるしおう祖語そご性質せいしつ歴史れきし原郷はらごう再建さいけんするさい、これら2存在そんざい考慮こうりょされている。

しるしおう祖語そご文字もじたなかったため直接ちょくせつ証拠しょうこ存在そんざいせず、音韻おんいんおよび語形ごけいすべむすめ言語げんごをもとにした比較ひかくさい構と内的ないてきさい構によるものである。なお、しるしおう祖語そご単語たんごには、それが再建さいけんされたかたちであることをしめすために「*」(アステリスク)がされる。印欧語いんおうごぞくぞくする言語げんご単語たんごおおくは、祖語そごのひとつのがたをもとに一定いってい音韻おんいん変化へんか法則ほうそくによって派生はせいしたものとかんがえられている。

単語たんごれい: *wódr̥みず)、*k̑wṓnいぬ)、*tréyes(3、男性だんせいがた

語族ごぞくとの関連かんれん[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そご語族ごぞくとの関係かんけいについては諸説しょせつあるものの、しるしおう祖語そごよりもさらに時代じだいさかのぼるためにいずれも推測すいそくによる部分ぶぶんおおきく、したがってこれらの仮説かせつ妥当だとうせい問題もんだいとなる。インド・ヨーロッパ語族ごぞく語族ごぞくとの類似るいじてんとして、以下いかげられる。

ここから、以下いかのような仮説かせつがある。

展開てんかい[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そごからむすめ言語げんご分化ぶんかするさいむすめ言語げんごおうじた音韻おんいん変化へんか法則ほうそくにより音韻おんいん体系たいけい変化へんかした。 主要しゅよう音韻おんいん変化へんか法則ほうそくには以下いかのものがある。

音韻おんいん[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そご以下いかのような音素おんそ体系たいけいゆうしていたと推測すいそくされている。むすめ言語げんごにおいて祖語そご音素おんそがどのように変化へんかしたかは、インド・ヨーロッパ語族ごぞく音韻おんいん法則ほうそく英語えいごばんおよインド・ヨーロッパ語族ごぞくかく言語げんご項目こうもく参照さんしょうされたい。

子音しいん[編集へんしゅう]

  りょう唇音しんおん 舌尖ぜっせんおん 口蓋こうがい 軟口蓋なんこうがいおん えんくちびる のどおん
無声むせい閉鎖へいさおん p t k
ゆうごえ閉鎖へいさおん b d ǵ g
ゆう閉鎖へいさおん ǵʰ gʷʰ
鼻音びおん m n
摩擦音まさつおん s h₁, h₂, h₃
ながれおん半母音はんぼいん w r, l y

このひょうでは、近年きんねん出版しゅっぱんぶつにおいてもっと一般いっぱんてき表記ひょうきほう採用さいようした。うえきのʰゆうおんしめす。またのどおん理論りろんでは、上表じょうひょうゆうごえ閉鎖へいさおん咽頭いんとうおともしくは放出ほうしゅつおんで、ゆうごえゆうおん無声むせいゆうおんだった可能かのうせいもあるとしている。

  • ケルト祖語そご、バルト・スラヴ祖語そごアルバニア、イラン祖語そごでは、ゆうごえゆう閉鎖へいさおん(ǵʰgʷʰ)はゆうごえおん(bdǵg)と同化どうかした。(ちゅう: ケルト祖語そごではgʷʰ同化どうかせず、gʷʰgに、b同化どうかした。)
  • ゲルマン祖語そごではグリムの法則ほうそくにより、無声むせい閉鎖へいさおん摩擦音まさつおんに、ゆうごえおん無声むせいおんに、ゆうごえゆうおん無声むせいゆうおん変化へんかした。
  • 印欧語いんおうごぞくのうちとくふるいくつかの言語げんごでは、グラスマンの法則ほうそく、バルトロマエの法則ほうそくにより、特定とくてい状況じょうきょうおび位置いち変化へんかした。

りょう唇音しんおん[編集へんしゅう]

りょう唇音しんおんpbの3つとされ、包括ほうかつ記号きごうPあらわされるが、りょう唇音しんおん出現しゅつげん頻度ひんどきわめてひくい。放出ほうしゅつおんをもつ言語げんごりょうくちびる放出ほうしゅつおんたない傾向けいこうがあるため、りょう唇音しんおん出現しゅつげん頻度ひんどひくさはのどおん理論りろん論拠ろんきょとされる。

舌尖ぜっせんおん[編集へんしゅう]

再建さいけんにより、t, d, の3つの歯音しおん一般いっぱん同定どうていされている。これらの子音しいん包括ほうかつ記号きごうTあらわされる。

ある研究けんきゅうしゃは、子音しいんクラスターTK祖語そご段階だんかいおと転換てんかんとなっていると主張しゅちょうしている。根拠こんきょ以下いかとおり。

  • 大地だいち」を意味いみするかたりはヒッタイトで"dagan"、ギリシアで"khthōn"である。
    祖語そごでは*ǵʰðōm、その古形こけいは*dʰǵʰoms再建さいけんされる。
  • 怪物かいぶつ」を意味いみするかたりはヒッタイトで"hartagas"、ギリシアで"arktos"である。
    祖語そごでは*hrkþos、その古形こけいは*hrtgos再建さいけんされる。

一方いっぽう、*dʰégʷʰ(「く」の、ゲルマン祖語そごひるあらわす"*dagaz"と同根どうこん)のサンスクリットでの語形ごけいは、「かれく」とするときkṣā́yat(< *dʰgʷʰ‐éh₁‐)なのにたいし、「かれている」とするときdáhati(< *dʰégʷʰ‐e‐)である。これについては、母音ぼいん交替こうたい程度ていどによっておと転移てんい語形ごけいない語形ごけい存在そんざいするとしている。

したおん[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そごしたおんとして、軟口蓋なんこうがいかた口蓋こうがいおと軟口蓋なんこうがいおん軟口蓋なんこうがいえんくちびるおとの3系統けいとう再建さいけんされている。これはケントゥムサテム比較ひかくにより発見はっけんされた。

  • 軟口蓋なんこうがいかた口蓋こうがいおん(ǵǵʰの3しゅ。「k'g'g'ʰ」、「g̑、g̑ʰ」、「kĝĝʰ」とも表記ひょうきされる)は、口蓋こうがいした軟口蓋なんこうがい閉鎖へいさおん([kʲ][gʲ])と推定すいていされ、サテムでは摩擦音まさつおんとなっている。
  • 軟口蓋なんこうがいおん(kg)
  • 軟口蓋なんこうがいえんくちびるおん(gʷʰ。「ku̯、gu̯、gu̯h」とも)。

うえきのʷは、えんくちびる、つまり軟口蓋なんこうがい閉鎖へいさおん調音ちょうおんするさいくちびるまるめることをしめしている([kʷ]は、英語えいごqueenqu部分ぶぶんられるおとおとである)。ケントゥムでは軟口蓋なんこうがいかた口蓋こうがいおと軟口蓋なんこうがいおん同化どうかしたのにたいし、サテムでは軟口蓋なんこうがいえんくちびるおと軟口蓋なんこうがいおん同化どうかした。

普通ふつう軟口蓋なんこうがいおん(kg)と口蓋こうがいおとえんくちびるおととの関係かんけいについて、この普通ふつう軟口蓋なんこうがいおんの2しゅ軟口蓋なんこうがいおんからいつ独立どくりつした音素おんそとなったかが議論ぎろんまととなっている。ある音声おんせいてき条件下じょうけんかでは前者ぜんしゃ後者こうしゃ中和ちゅうわするため、結果けっかほとんどの場合ばあい普通ふつう軟口蓋なんこうがいおんおととして出現しゅつげんするのである。このおとがいつこるのかは正確せいかくには特定とくていされていないが、sまたはuののち、もしくはrのまえ中和ちゅうわこることがひろみとめられている。さて、印欧語いんおうごがくもの多数たすう崩壊ほうかい直前ちょくぜんにはすでに3つの軟口蓋なんこうがいおん系統けいとうみとめられていたとするが、一方いっぽうコルトラントをふく少数しょうすう学派がくはは、普通ふつう軟口蓋なんこうがいおんはサテム分岐ぶんき、その一部いちぶから発展はってんしたとしている。これは1894ねんアントワーヌ・メイエによりとなえられたせつである。

しるしおう祖語そご時点じてんすでに3系統けいとう軟口蓋なんこうがいおん弁別べんべつされていたとするせつ証拠しょうことしては、アルバニアアルメニアルウィがしばしば言及げんきゅうされる。アルメニアとアルバニアでは普通ふつう軟口蓋なんこうがいおん軟口蓋なんこうがいえんくちびるおと一定いっていじょうきょうでは弁別べんべつされ、またルウィには3系統けいとう軟口蓋なんこうがいおん反映はんえいされたとみられる3種類しゅるい音素おんそz(<*、おそらく[ts])、k(<*k)、ku(<*、おそらく[kʷ])が存在そんざいするのである。しかし、一方いっぽうコルトラントはこの証拠しょうこ重要じゅうようせい疑問ぎもんていしている[2]普通ふつう軟口蓋なんこうがいおん単独たんどく音素おんそとなった時期じきについては、音素おんそ分析ぶんせきされた種々しゅじゅおと本来ほんらいどのように分布ぶんぷしていたかが類推るいすい展開てんかいでは不明瞭ふめいりょうになるうえ、またこの問題もんだい確固かっことした結論けつろんせるほど直近ちょっきん事例じれいではなく、また証拠しょうこ十分じゅうぶん存在そんざいしない。そのため、この論争ろんそう終局しゅうきょくてき解決かいけつする見込みこみはない。

摩擦音まさつおん[編集へんしゅう]

s、および有声音ゆうせいおんおととしてのzのどおん理論りろんによれば、いくつかの摩擦音まさつおんがあったとされるが、実際じっさいおとについては意見いけん対立たいりつがある。また、tおよびdおとおととしての摩擦音まさつおんþð存在そんざいしていた。

のどおん[編集へんしゅう]

h₁h₂h₃」、これらの包括ほうかつ記号きごうとしてのH (もしくは「ə₁ə₂ə₃」とə)は、理論りろんじょうのどおん音素おんそである。これらのおとについては意見いけんかれるところだが、h₁ʔh同化どうかしたものである証拠しょうこいくつかつかっているほか、h₂口蓋垂こうがいすい摩擦音まさつおんまたは咽頭いんとう摩擦音まさつおんで、h₃えんくちびるともなっていたことは一般いっぱんみとめられ、「ʔʕʕʷ」、または「xχかい」がしばしば候補こうほとしてげられている。「印欧語いんおうごシュワー」としてられるəは、子音しいんあいだのどおんについてひろもちいられる。

鼻音びおんながれおん[編集へんしゅう]

rlmnの4しゅと、その母音ぼいんしたおとられている。包括ほうかつ記号きごうR

半母音はんぼいん[編集へんしゅう]

wyとも表記ひょうきされる)の2しゅと、その母音ぼいんしたおとuiられている。

母音ぼいん[編集へんしゅう]

  • たん母音ぼいん: aeiou
  • ちょう母音ぼいん: āēō
    :(コロン)がマクロンわって母音ぼいん長短ちょうたんしめすために使つかわれることもある。(れいa:e:o:).
  • 重母音じゅうぼいん:  aiauāiāueieuēiēuoiouōiōu
  • 子音しいん音素おんそ母音ぼいんしたおとui
    代償だいしょう延長えんちょうのため、īūr̥̄l̥̄m̥̄nのようなちょう母音ぼいん祖語そごがたちゅうあらわれる。

a長短ちょうたんともに)はh₂がeのぜんまたはのちつづいた語形ごけいから変化へんかしたものであることがしばしばしめされている。マイヤホーファーしるしおう祖語そごにおいてaおよびā実際じっさいh₂かならともなっていたのではないかとしている。

母音ぼいん交替こうたい[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そごには、おな語根ごこんから母音ぼいん音素おんそ/o///e///Ø/対比たいひする特有とくゆう母音ぼいん交替こうたい法則ほうそく存在そんざいしている。

文法ぶんぽう[編集へんしゅう]

名詞めいし[編集へんしゅう]

名詞めいしみっつのせい男性だんせい女性じょせい中性ちゅうせい)とみっつのかず単数たんすう複数ふくすうそうすう)をもち、またやっつのかく主格しゅかく対格たいかくぞくかく与格よかくかくだつかくしょかくよびかく)をとる。

屈折くっせつにより母音ぼいんみき名詞めいし母音ぼいんみき名詞めいし種類しゅるい大別たいべつされる。母音ぼいんみき名詞めいし語幹ごかん接尾せつび"‐o‐"(よびかくでは「"‐e‐")によって形成けいせいされ、母音ぼいん交替こうたいともなわない。母音ぼいんみき名詞めいし母音ぼいんみき名詞めいしより起源きげんふるく、母音ぼいん交替こうたい様態ようたい、および早期そうき祖語そごにおいてはアクセント位置いちでさらに分類ぶんるいされる。

(Beekes 1995)[3] (Ramat 1998)
母音ぼいんみき名詞めいし 母音ぼいんみき名詞めいし
通性つうせい 中性ちゅうせい 通性つうせい 中性ちゅうせい 男性だんせい 中性ちゅうせい
単数たんすう 複数ふくすう そうすう 単数たんすう 複数ふくすう そうすう 単数たんすう 複数ふくすう そうすう 単数たんすう 複数ふくすう 単数たんすう 複数ふくすう そうすう 単数たんすう
主格しゅかく -s、Ø -es -h₁(e) -m、Ø -h₂、Ø -ih₁ -s -es -h₁e? Ø -(e)h₂ -os -ōs -oh₁(u)? -om
対格たいかく -m -ns -ih₁ -m, Ø -h₂, Ø -ih₁ -m̥ -m̥s -h₁e? Ø -om -ons -oh₁(u)? -om
ぞくかく -(o)s -om -h₁e -(o)s -om -h₁e -es、-os、-s -ōm -os(y)o -ōm
与格よかく -(e)i -mus -me -(e)i -mus -me -ei -ōi
かく -(e)h₁ -bʰi -bʰih₁ -(e)h₁ -bʰi -bʰih₁ -bʰi -ōjs
だつかく -(o)s -ios -ios -(o)s -ios -ios
しょかく -i, Ø -su -h₁ou -i, Ø -su -h₁ou -i, Ø -su, -si -oi -oisu, -oisi
よびかく Ø -es -h₁(e) -m, Ø -h₂, Ø -ih₁ -es -(e)h₂

代名詞だいめいし[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そご代名詞だいめいしむすめ言語げんごにおいていちじるしく多様たようしているため、再建さいけんむずかしいとされる。またいち人称にんしょう二人称ににんしょうでは人称にんしょう代名詞だいめいし存在そんざいするものの、三人称さんにんしょうには人称にんしょう代名詞だいめいしわりに指示しじ代名詞だいめいし使つかわれていたことも再建さいけん困難こんなんにする一因いちいんとなっている。

人称にんしょう代名詞だいめいしはそれぞれ固有こゆう屈折くっせつ語形ごけいをもち、複数ふくすう語幹ごかんつものも存在そんざいする。一人称いちにんしょう単数たんすう好例こうれいで、この区別くべつ現代げんだい英語えいごにおいても"I"と"me"としてのこされている。また、しるしおう祖語そごには代名詞だいめいしのみにみられる屈折くっせつ語尾ごび存在そんざいし、むすめ言語げんごでは普通ふつう名詞めいしでもその活用かつよう語尾ごび採用さいようされた。

代名詞だいめいしは、ビークスによれば以下いかとおりである。

人称にんしょう代名詞だいめいし一覧いちらん (Beekes 1995)[3]
一人称いちにんしょう 二人称ににんしょう
単数たんすう 複数ふくすう 単数たんすう 複数ふくすう
主格しゅかく h₁eǵ(oH/Hom) wei tuH yuH
対格たいかく' h₁mé, h₁me nsmé, nōs twé usmé, wōs
ぞくかく h₁méne, h₁moi ns(er)o-, nos tewe, toi yus(er)o-, wos
与格よかく' h₁méǵʰio, h₁moi nsmei, ns tébʰio, toi usmei
かく h₁moí ? toí ?
だつかく h₁med nsmed tued usmed
しょかく h₁moí nsmi toí usmi

ほかにもSihlerによるものもある。

人称にんしょう代名詞だいめいし一覧いちらん (Sihler 1995)[4]
一人称いちにんしょう 二人称ににんしょう
単数たんすう そうすう 複数ふくすう 単数たんすう そうすう 複数ふくすう
主格しゅかく *eǵoH *weh₁ *we-i *tī̆ (*tū̆) *yuh₁ (*yūh₁?) *yūs (*yuHs?)
対格たいかく つよがた *m-mé (> *mé) *n ̥h₁-wé *n̥smé *twé *uh₁-wé *usmé
じゃくかたち *me *nō̆h₁ *nō̆s *te *wō̆h₁ *wō̆s
ぞくかく つよがた *mé-me *n̥sóm *té-we *usóm
じゃくかたち *mos (adj.) *nō̆s *tos (adj.) *wō̆s
与格よかく つよがた *mébhi *n̥sm-éy *tébhi *usm-éy
じゃくかたち *mey, *moy? *nō̆s *tey, *toy *wō̆s
だつかく *mm-ét (> *mét) *n̥sm-ét *tw-ét *usm-ét

たとえばFortson(2004)[5]のように、BeekesとSihlerのもの以外いがいはほとんどの場合ばあいすこししかことならない。

動詞どうし[編集へんしゅう]

印欧語いんおうごぞくしょ言語げんご動詞どうし体系たいけい一般いっぱん複雑ふくざつで、またゲルマン多数たすう散見さんけんされるように母音ぼいん交替こうたいつものもおおい。これらのうち、古典こてんギリシアヴェーダ言語げんごは、崩壊ほうかい直後ちょくごむすめ言語げんご動詞どうし体系たいけいもっともよく保存ほぞんしているとされる。

しるしおう祖語そご動詞どうしは、以下いかのようなほうたい時制じせいかず人称にんしょうしたが屈折くっせつする。

しるしおう祖語そごでは、動詞どうしゆたかな派生はせいがたをもつ。高度こうど発達はったつした分詞ぶんしほう時制じせいごとに個別こべつ存在そんざいし、また使役しえきかたちつよがた願望がんぼうがたのようなてき語形ごけいもちいられる。ただし正確せいかくには、このてき語形ごけい屈折くっせつではなく、派生はせいである。事実じじつてき語形ごけい一部いちぶ動詞どうしにしか存在そんざいせず、またもとになったかたり意味いみとは規則きそくてき対応たいおうしない。さらに派生はせい一部いちぶとしては、動詞どうしてき名詞めいし動詞どうしてき形容詞けいようし生成せいせいもあげられる。これは、英語えいごでいえば、動詞どうし接尾せつび-tion-ence-alともなって生成せいせいされる名詞めいしをさす派生はせいのことである。この派生はせい分詞ぶんしことなり、ことなった時制じせいについても同形どうけいかたりもちいられたようだ。

しるしおう祖語そご動詞どうし語幹ごかんは、かく時制じせいごとにことなった接尾せつび語根ごこんのちせっすることでつくられる。この接尾せつび語形ごけいはそれぞれおおきくことなっており、接尾せつび相互そうご関係かんけいはほとんど存在そんざいしなかったとされる。以下いか古典こてんギリシア、ヴェーダラテン語らてんごれい説明せつめいする。古典こてんギリシアおよびヴェーダ現在げんざい時制じせいは、動詞どうし語根ごこん接尾せつびあとせっすることでつくられるが、接尾せつび複数ふくすうあり(ヴェーダでは10以上いじょう古典こてんギリシアでは6以上いじょう)、またどの接尾せつびもちいるかは不規則ふきそくである。アオリストと完了かんりょう時制じせい同様どうようで、アオリスト語幹ごかん生成せいせいにはヴェーダで7種類しゅるい古典こてんギリシアで3種類しゅるい接尾せつび使つかわれる。同様どうようラテン語らてんご完了かんりょう語幹ごかん派生はせいには6種類しゅるい方式ほうしきがあるが、どの方式ほうしきつくられるかに規則きそくせい存在そんざいしない。また、現在げんざいみき完了かんりょうみき生成せいせいにあたって、複数ふくすう接尾せつび同一どういつ語根ごこんこうせっされるれい存在そんざいするが、時制じせい以上いじょう意味いみことなるものも存在そんざいする。古典こてんギリシア代表だいひょうれいをあげると、以下いかのようになる。

  • histēmiたす)と、hestēkaっている)
  • mimnēiskōおもさせる)と、memnēmaiおもす)
  • peithō説得せっとくする)、pepoithaしたがう)と、pepeika説得せっとくされた)
  • phūōむ)と、pephūkaしょうずる)

後代こうだい、これらの種々しゅじゅ方式ほうしき一式いっしき屈折くっせつ変化へんか合流ごうりゅうしたが、早期そうき言語げんご、とくにヴェーダでは活用かつよう変化へんか不規則ふきそくなままで、古典こてんギリシアでも無秩序むちつじょなシステムが散見さんけんされる。結果けっかとして、ヴェーダ動詞どうし一見いっけんたか冗長じょうちょうせい説明せつめい不能ふのう欠陥けっかんあわつ、非常ひじょう複雑ふくざつ混沌こんとんとした体系たいけいのようにえるのであり、しるしおう祖語そごにおいては、ヴェーダをこえる無秩序むちつじょせい見出みいだされるであろう。

しるしおう祖語そご動詞どうしには名詞めいし屈折くっせつ同様どうよう母音ぼいんみき形式けいしきōるい母音ぼいんみき形式けいしきmiるいの2種類しゅるい存在そんざいする。したがって動詞どうし語幹ごかん判別はんべつも、これらの形式けいしきによってことなることになる。母音ぼいんみき形式けいしきるいでは語尾ごびまえみき母音ぼいんoまたはe基準きじゅんとし、母音ぼいんみき形式けいしきるいでは語根ごこん直接ちょくせつけられた語尾ごび基準きじゅんとして、語幹ごかん判別はんべつされる。語幹ごかんせられる屈折くっせつ語尾ごびは、すくなくとも一人称いちにんしょう単数たんすうではōmiのようなことなった語形ごけいをとる。みき母音ぼいん存在そんざいまたは存在そんざいのぞけば、伝統でんとうてき解釈かいしゃくでは語尾ごびことなるれいはこれだけだとされるが、若手わかて研究けんきゅうしゃには根本こんぽんてきことなる活用かつよう語尾ごびしめものもいる。たとえばビークスは、古典こてんギリシアリトアニアをもとに、母音ぼいんみき動詞どうし活用かつよう語尾ごびについてあたらしい解釈かいしゃく提案ていあんしているが、これらのせつには依然いぜん議論ぎろん余地よち存在そんざいする。

Buck 1933[6] Beekes 1995[3]
母音ぼいんみき動詞どうし 母音ぼいんみき動詞どうし 母音ぼいんみき動詞どうし 母音ぼいんみき動詞どうし
単数たんすう 一人称いちにんしょう -mi -mi -oH
二人称ににんしょう -si -esi -si -eh₁i
三人称さんにんしょう -ti -eti -ti -e
複数ふくすう 一人称いちにんしょう -mos/mes -omos/omes -mes -omom
二人称ににんしょう -te -ete -th₁e -eth₁e
三人称さんにんしょう -nti -onti -nti -o

しるしおう祖語そごにおける過去かこ時制じせい(アオリスト、完了かんりょう完了かんりょう過去かこ)の役割やくわりについては、古典こてんギリシア過去かこ時制じせい同様どうよう役割やくわりっていたとするせつと、それを否定ひていするせつ両方りょうほう存在そんざいしているが、ここでは古典こてんギリシアとサンスクリットにおける過去かこ時制じせい役割やくわりについてべるにとどめる。

古典こてんギリシアでは、過去かこ時制じせい以下いかのような性質せいしつつ。

  • アオリスト - 関連かんれんのない独立どくりつした事象じしょうとして過去かこ出来事できごととらえ、それを独立どくりつてきったことをあらわ
  • 完了かんりょう過去かこ - 過去かこにおける反復はんぷくされた行動こうどう継続けいぞくされた行動こうどうあらわ
  • 完了かんりょう時制じせい - 過去かこ行動こうどう結果けっかとしての現在げんざい状態じょうたいあらわ

この区別くべつ英語えいごうところの過去かこがた過去かこ進行しんこうがた現在げんざい完了かんりょうがた区別くべつにほぼ一致いっちする。ただし古典こてんギリシアでは、完了かんりょう時制じせい過去かこ行為こういそのものよりもそれによる現在げんざい状態じょうたい焦点しょうてんてており、この完了かんりょう時制じせい役割やくわりのち現在げんざい時制じせいへと変質へんしつしていくことになる。

ちなみに古典こてんギリシアでの現在げんざい時制じせい、アオリスト、完了かんりょう時制じせいちがいは、ちょく説法せっぽう以外いがい(接続せつぞくほう希求ききゅうほう命令めいれいほう不定ふていほう分詞ぶんし)ではせんしょうちがいであって、時制じせい問題もんだいではない。すなわち、アオリストは単純たんじゅん行為こういに、現在げんざい時制じせい現在げんざい進行しんこうちゅう行動こうどうに、完了かんりょう時制じせい以前いぜん行為こういによる現在げんざい状態じょうたい関係かんけいしている。命令めいれいほう不定ふていほうにおいて、アオリストは過去かこ行為こういもちいられない(これらのほうでは、「ころす」のような一部いちぶ動詞どうしはアオリストのほうが現在げんざい時制じせいよりも一般いっぱんてきもちいられる)。また分詞ぶんしにおいて、アオリストは時制じせいしょうのいずれかの役割やくわりたす。ちょく説法せっぽう以外いがいでのそう区別くべつは、しるしおう祖語そごにおける時制じせい区別くべつさかのぼるものとされ、さらにふるくは中国ちゅうごくのような副詞ふくし使用しよう起源きげんとするとされている。しかし祖語そご崩壊ほうかいまでに、それぞれの時制じせいあらわ副詞ふくし表現ひょうげん時制じせいとしての用法ようほう獲得かくとくし、印欧語いんおうごにおいて、支配しはいてきとなったようにかんがえられている。

一方いっぽうヴェーダ時制じせい古典こてんギリシアかく時制じせいして、

  • 完了かんりょう過去かこ古典こてんギリシアのアオリストに相当そうとう
  • アオリストが古典こてんギリシア完了かんりょう時制じせい相当そうとう
  • 完了かんりょう時制じせいがしばしば現在げんざい時制じせい区別くべつされない

といった特徴とくちょうゆうしていた(ホイットニー 1924)。またちょく説法せっぽう以外いがいでは、現在げんざい時制じせい、アオリスト、完了かんりょう時制じせいほとん区別くべつされていない。

ちなみに、文語ぶんごにおいてことなる文法ぶんぽう形式けいしき意味いみろんてき区別くべつされないとき、その形式けいしき一部いちぶ口語こうごではもちいられなくなることはしばしば指摘してきされるとおりである。ヴェーダむすめ言語げんごである古典こてんサンスクリットでは、接続せつぞくほう消滅しょうめつし、希求ききゅうほう命令めいれいほう現在げんざい以外いがい時制じせいすべうしなわれた。またちょく説法せっぽうでも過去かこの3せいひろ交換こうかん可能かのうになり、さらに後代こうだいには過去かこの3せい分詞ぶんし使用しよう区別くべつされなくなった。この変化へんかプラークリット分化ぶんか過程かてい反映はんえいしているとみられる。過去かこ時制じせいのうち、プラークリットまで存続そんぞくしたものはアオリストだけであり、これすらも最終さいしゅうてき分詞ぶんしによる過去かこ時制じせいってわられた。

語彙ごい[編集へんしゅう]

数詞すうし[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そご数詞すうしは、一般いっぱん以下いかのように再建さいけんされている。

Sihler 1995, 402–24[7] Beekes 1995[3], 212–16
1 *Hoi-no-/*Hoi-wo-/*Hoi-k(ʷ)o-; *sem- *Hoi(H)nos
2 *d(u)wo- *duoh₁
3 *trei-/*tri-(母音ぼいん交替こうたい) *treies
4 *kʷetwor-/*kʷetur-(母音ぼいん交替こうたい)
参考さんこうen:kʷetwóres rule
*kʷetuōr
5 *penkʷe *penkʷe
6 *s(w)eḱs、または*weḱs古形こけい *(s)uéks
7 *septm̥ *séptm
8 *oḱtō、*oḱtouか*h₃eḱtō、*h₃eḱtou *h₃eḱteh₃
9 *(h₁)newn̥ *(h₁)néun
10 *deḱm̥(t) *déḱmt
20 *wīḱm̥t-、または*widḱomt-古形こけい *duidḱmti
30 *trīḱomt-、または*tridḱomt-古形こけい *trih₂dḱomth₂
40 *kʷetwr̥̄ḱomt-、または*kʷetwr̥dḱomt-古形こけい *kʷeturdḱomth₂
50 *penkʷēḱomt-、または*penkʷedḱomt-古形こけい *penkʷedḱomth₂
60 *s(w)eḱsḱomt-、または*weḱsdḱomt-古形こけい *ueksdḱomth₂
70 *septm̥̄ḱomt-、または*septm̥dḱomt-古形こけい *septmdḱomth₂
80 *oḱtō(u)ḱomt-、または*h₃eḱto(u)dḱomt-古形こけい *h₃eḱth₃dḱomth₂
90 *(h₁)newn̥̄ḱomt-、または*h₁newn̥dḱomt-古形こけい *h₁neundḱomth₂
100 *ḱm̥tom、または*dḱm̥tom古形こけい *dḱmtóm
1000 *ǵheslo-、*tusdḱomti *ǵʰesl-

レーマンは10よりおおきいかず祖語そごちゅうには存在そんざいせず、祖語そごないいくつかのグループで独自どくじされたとし、*ḱm̥tóm意味いみは100というより「おおきいかず」だろうとしている。

文例ぶんれい[編集へんしゅう]

しるしおう祖語そご先史せんし時代じだい言語げんごであるため当時とうじ文例ぶんれい存在そんざいしないが、19世紀せいき以来いらい例証れいしょうのため言語げんご学者がくしゃによって様々さまざまこころみがなされてきた。しかし実際じっさいつくられた例文れいぶん憶測おくそくレベルであり、ワトキンス英語えいごばんは150年間ねんかんおよぶこのこころみを批判ひはんして、比較ひかく言語げんごがくしるしおう祖語そご例文れいぶん再建さいけんするのは現時点げんじてんでは不可能ふかのうだとべている。いずれにせよ、会話かいわなかしるしおう祖語そごがどのようなひびきをっていたのか程度ていどには役立やくだつかもしれない。公開こうかいされているしるしおう祖語そご文章ぶんしょう以下いかしめす。

はな[編集へんしゅう]

インド・ヨーロッパ祖語そごはなしていた人々ひとびとは、なんらかの共同きょうどうたいつくっていたとかんがえられる。これをはらインド・ヨーロッパ民族みんぞくはらしるしおう民族みんぞく)ということもあるが、単一たんいつ民族みんぞくあるいは人種じんしゅであったという保証ほしょうはない。19世紀せいき後半こうはん以降いこうとくナチス時代じだいには、これが「アーリア民族みんぞく」(本来ほんらいはらインド・イラン民族みんぞくのことであるが)のばれ、ドイツじんなどがその直系ちょっけい子孫しそんであるかのように喧伝けんでんされた(アーリアン学説がくせつ)。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 現代げんだいヨーロッパの主要しゅよう言語げんごなかでインド・ヨーロッパ語族ごぞくぞくさないものには、フィンランドエストニアハンガリーマルタ、それにバスクなどがあるばかりである。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Allan Bomhard (2019) "The Origins of Proto-Indo-European: The Caucasian Substrate Hypothesis" Journal of Indo-European Studies, The 47(Number 1 & 2, Spring/Summer 2019):9-124
  2. ^ Kortlandt, Frederik (1978). “I.-E. palatovelars before resonants in Balto-Slavic”. Recent developments in historical phonology (The Hague): 237-243. hdl:1887/1853. https://hdl.handle.net/1887/1853. 
  3. ^ a b c d Beekes, Robert S. P. (1995). Comparative Indo-European Linguistics: An Introduction. Amsterdam: John Benjamins. ISBN 90-272-2150-2 (Europe), ISBN 1-55619-504-4 (U.S.) 
  4. ^ Sihler (1995:389)
  5. ^ Fortson (2004:127–9)
  6. ^ Buck, Carl Darling (1933). Comparative Grammar of Greek and Latin. Chicago: University of Chicago Press. ISBN 0-22607-931-7 
  7. ^ Sihler, Andrew L. (1995). New Comparative Grammar of Greek and Latin. Oxford: Oxford University Press. ISBN 0-19-508345-8 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Pooth (2004): "Ablaut und autosegmentale Morphologie: Theorie der uridg. Wurzelflexion", in: Arbeitstagung "Indogermanistik, Germanistik, Linguistik" in Jena, Sept. 2002
  • Lehmann, W., and L. Zgusta. 1979. Schleicher's tale after a century. In Festschrift for Oswald Szemerényi on the Occasion of his 65th Birthday, ed. B. Brogyanyi, 455–66. Amsterdam.
  • Mayrhofer, Manfred (1986). Indogermanische Grammatik, i/2: Lautlehre. Heidelberg: Winter 
  • Szemerényi, Oswald (1996). Introduction to Indo-European Linguistics. Oxford 
  • Whitney, William Dwight (1924). Comparative Grammar of Greek and Latin. Delhi: Motilal Banarsidass Publishers Private Limited (reprint). ISBN 81-208-0621-2 (India), ISBN 0-48643-136-3 (Dover, US) 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]