勝かち道どう

勝かち道どう
天平てんぺい7年ねん4月がつ21日にち - 弘ひろし仁ひとし8年ねん3月1日にち（旧暦きゅうれき） 735年ねん5月17日にち - 817年ねん3月21日にち（新暦しんれき）
勝かち道どう上人しょうにん像ぞう（栃木とちぎ県けん日光にっこう市し）
幼名ようみょう	藤ふじ糸いと丸まる
名な	俗名ぞくみょう：若田わかた
尊称そんしょう	勝かち道どう上人しょうにん
生地きじ	下野げや国こく南高岡みなみたかおか（現げん・栃木とちぎ県けん真岡しんおか市し）
没ぼつ地ち	栃木とちぎ県けん日光にっこう市し
寺院じいん	紫雲しうん立りつ寺てら（四よん本ほん龍りゅう寺てら）
師し	如意にょい僧都そうず
弟子でし	尊みこと鎮法師し

勝かち道どう（しょうどう、天平てんぺい7年ねん4月がつ21日にち（735年ねん5月17日にち） - 弘ひろし仁ひとし8年ねん3月1日にち（817年ねん3月21日にち）は、奈良なら時代じだいから平安へいあん時代じだい初期しょきにかけての僧そう。勝かち道どう上人しょうにん（しょうどうしょうにん）と称しょうされることが多おおい。俗姓ぞくせいは若田わかた氏し。幼名ようみょうは藤ふじ糸いと丸まる。

概要がいよう

下野げや国こく（栃木とちぎ県けん）の南高岡みなみたかおか（現げん、真岡しんおか市し）に、下野げや介かい・若田わかた高藤たかとうの子ことして生うまれる。母ははは豪族ごうぞく・吉田よしだ連れん氏しの娘むすめ・明寿みょうじゅ。なお、生誕せいたん地ちには現在げんざい仏生寺ぶっしょうじがある。弟子でしに尊みこと鎮法師ほうし（多気たき山さん不動尊ふどうそんを創建そうけん）がいる。日光にっこう山さんを開山かいさんしたことで知しられる。

生涯しょうがい

735年ねん（天平てんぴょう7年ねん）4月がつ21日にち、下野げや国こく芳賀はが郡ぐんに生うまれる。俗姓ぞくせいは若田わかたとされる。若田わかた氏しは、『補ほ陀洛山やま建立こんりゅう修行しゅぎょう日記にっき』では、垂たれ仁じん天皇てんのうの第だい九きゅう皇子おうじで、下毛しもげ野の国こく室しつの八はち島とうに移住いじゅうした巻向まきむく尊みことの子孫しそんであるとされ、『日光にっこう市し史し』では、上野うえの国こく片岡かたおか郡ぐん若田わかた郷きょうから東ひがしに移うつった一族いちぞくとされている。『補ほ陀洛山やま建立こんりゅう修行しゅぎょう日記にっき』によると、勝かち道どうの父ちちは下野げや介かいの若田わかた高藤たかとうであり、母ははは吉田よしだ氏しであり、なかなか子供こどもができなかったが、伊豆いず留とめ（現げん、栃木とちぎ市し出流いずる町まち）の千手観音せんじゅかんのんに祈願きがんして子供こども（勝かち道どう、童わらわ名めいは藤ふじ糸いとといった）を授さずかったという。

少年しょうねん期きから山林さんりん修行しゅぎょうを行おこない、762年ねん（天平てんぴょう宝たから字じ6年ねん）下野しもの薬師寺やくしじの如意にょい僧都そうずに師事しじして沙弥さや戒・具足ぐそく戒を受うけた。765年ねん（天平てんぺい神護かんご元年がんねん）には出流いずる山さん満願寺まんがんじ（栃木とちぎ市し）を開ひらけ創そうしている。なお、勝かち道どうの宗風しゅうふうについては、当時とうじの関東かんとうに鑑真がんじんの系列けいれつにあたる道みち忠ただしの天台てんだい教団きょうだんがあったほか、朝鮮ちょうせんからの渡来とらい人じんを通つうじて華厳けごんの教おしえも広ひろまっていたことから、天台宗てんだいしゅうや華厳宗けごんしゅうなどの一いち仏ほとけ乗じょうの流ながれを汲くんでいた可能かのう性せいがあるという指摘してきがある。

767年ねん（神護かんご景けい雲くも元年がんねん）4月がつ上旬じょうじゅんに、日光にっこう山さんへ最初さいしょの登頂とうちょうを試こころみたが、失敗しっぱいした。781年ねん（天てん応おう元年がんねん）4月がつ上旬じょうじゅんに再度さいど登頂とうちょうを試こころみるが失敗しっぱい。782年ねん（延のべ暦れき元年がんねん）3月がつ、三さん度目どめの登頂とうちょうを試こころみて、ついに成功せいこうした。このとき、勝かち道どうは、山やまの麓ふもとで、17日間にちかんの読経どきょうの後のち、「三宝さんぼうを山頂さんちょうに捧ささげ、日光にっこう山さんの神霊しんれいを礼拝れいはいし、衆生しゅじょうの幸福こうふくを願ねがいたい。善ぜん神しん・毒どく龍りゅう・山やま魅みに、登頂とうちょうの手助てだすけをしてもらいたい。自分じぶんは山頂さんちょうにて菩提ぼだいの境地きょうちに至いたりたい」という内容ないようの誓願せいがんをしたという。山頂さんちょうに至いたった勝かち道どうは、誓願せいがんのとおり、そこで37日間にちかん、日光にっこう山さんの神霊しんれいを礼拝れいはいしたとされる。

784年ねん（延のべ暦れき3年ねん）3月がつ下旬げじゅんに再ふたたび日光にっこう山さんに登のぼり、弟子でしたちとともに南湖みなみこ・西湖さいこ・北湖きたこの付近ふきんを歩あるき、南湖みなみこ（中禅寺湖ちゅうぜんじこ）に神宮寺じんぐうじを建たて、中ちゅう禅ぜん寺てらを開ひらいた。なお、勝かち道どうは、四よん本ほん龍りゅう寺てら（現げん輪はなわ王寺おうじ）や二荒ふたあら山さん神社じんじゃの創建そうけんにも関かかわったとする伝承でんしょうがあるが、史実しじつかどうかは不明ふめいである。

神宮寺じんぐうじで4年ねん以上いじょうの修行しゅぎょうした後のち、勝かち道どうは山やまを降おりて活動かつどうを始はじめ、795年ねん（延のべ暦れき14年ねん）以降いこうに上野うえの国こく講師こうしに任にんじられ、上野うえの国分寺こくぶんじに滞在たいざいした。なお、同どう寺てらの北東ほくとうにある赤城山あかぎやまには、勝かち道どうが開山かいさんしたという伝承でんしょうがある。名声めいせいが高たかまっていた勝かち道どうは、下野げや国こく都賀つが郡ぐん城山しろやまに精舎しょうじゃを建立こんりゅうするなどしたが、この「精舎しょうじゃ」は現在げんざいの栃木とちぎ県けん栃木とちぎ市し都賀つが町まち木きに史跡しせきが残のこる「華厳けごん寺てら」に比定ひていされている。

807年ねん（大同だいどう2年ねん）の旱魃かんばつに際さいしては日光にっこう山さんで祈いのり雨うを修法しゅほうし、その功こうにより伝灯でんとう法師ほうし位いを授さづけられた。このころ、空海くうかいに、日光にっこう山さんについて文章ぶんしょうの作成さくせいを依頼いらいし、814年ねん（弘ひろし仁じん5年ねん）に空海くうかいが「勝かち道どう碑文ひぶん」を作成さくせいした。816年ねん（弘ひろし仁じん7年ねん）4月がつ、日光にっこう山さん山頂さんちょうに三さん社しゃ権現ごんげんの社しゃを建立こんりゅう。817年ねん（弘ひろし仁じん8年ねん）、四よん本ほん龍りゅう寺てらの北きたにある岩窟がんくつにて、83歳さいで死去しきょ。

史料しりょう

勝かち道どうの著作ちょさくは現存げんそんせず、著作ちょさくについての伝承でんしょうもなく、また、勝かち道どうに関かんする史料しりょうも少すくないとされる。

勝かち道どうと同どう時代じだいの史料しりょうとして、空海くうかいが814年ねん（弘ひろし仁じん5年ねん）に勝かち道どうの事績じせきを記しるした碑文ひぶん（勝かち道どう碑文ひぶん）があり、「沙門しゃもん勝かち道どう山水さんすいを歴へて玄げん珠たまを瑩く碑いしぶみ并びに序じょ」として、『遍昭へんじょう発揮はっき性せい霊れい集しゅう』に収録しゅうろくされており、この碑文ひぶんは、研究けんきゅうのうえで最もっとも基本きほんとすべきものとされる。

後世こうせいの史料しりょうとしては、以下いかのようなものがある。なお、仁じん朝あさ・道みち珍めずらし・教きょう晃あきら・道みち欽は勝かち道どうの弟子でしとされる。

• 『中ちゅう禅ぜん寺てら私記しき』（藤原ふじわら敦あつし光こう）
• 『補ほ陀洛山やま建立こんりゅう修行しゅぎょう日記にっき』（仁じん朝あさ・道みち珍めずらし・教きょう晃あきら・道みち欽）
• 『日光にっこう山さん滝尾たきお建立こんりゅう草創そうそう日記にっき』（道みち珍ちん）
• 『元げん亨とおる釈しゃく書しょ』（虎とら関せき師し錬ね）
• 『東国とうごく高僧こうそう伝でん』（高泉たかいずみ性せい潡）
• 『本朝ほんちょう高僧こうそう伝でん』（卍まんじ元もと師し蛮）

研究けんきゅう

勝かち道どうの研究けんきゅうについては、以下いかの3つに分類ぶんるいされるという。

• 史料しりょうの内容ないようを史実しじつとみて、日光にっこう山さんの開祖かいそとして勝かち道どうを高たかく評価ひょうかするもの。
• 史料しりょうの内容ないようを疑問ぎもん視しし、勝かち道どうを無名むめいの私わたし度ど僧そう的てきな存在そんざいとするもの。
• 勝かち道どうによる日光にっこう山さん開山かいさんの背景はいけいに、当時とうじの蝦夷えぞ問題もんだいを終結しゅうけつさせる意義いぎがあったとするもの。

勝かち道どうについては、その存在そんざいを裏うらづける山頂さんちょうの遺跡いせきが発掘はっくつされており、当時とうじの修行しゅぎょう者しゃとしては、史料しりょうと物証ぶっしょうとの両面りょうめんから考察こうさつできる点てんで非常ひじょうに稀まれとされ、研究けんきゅう対象たいしょうとして大おおきな価値かちがあるとされる。なお、上記じょうきの山頂さんちょう遺跡いせきの出土しゅつど品ひんからは、勝かち道どうに有力ゆうりょくな支持しじ者しゃがいたことが推測すいそくされるという。

関連かんれん項目こうもく

• 日光にっこう市し
• 輪はなわ王寺おうじ
• 上野うえの島とう
• 神橋しんきょう