司つかさ修おさむ

司つかさ 修おさむ（つかさ おさむ、1936年ねん〈昭和しょうわ11年ねん〉6月25日にち - ）は、日本にっぽんの小説しょうせつ家か、画家がか、装丁そうてい家か、エッセイスト。産経さんけい児童じどう出版しゅっぱん文化ぶんか賞しょうを受賞じゅしょう3回かい、芥川賞あくたがわしょう候補こうほにもなっている。法政大学ほうせいだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ。

略歴りゃくれき・人物じんぶつ

群馬ぐんま県けん前橋まえばし市し出身しゅっしん。太平洋戦争たいへいようせんそう末期まっき1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）8月がつ5日にち、犠牲ぎせい者しゃ535人にんを出だした米べい軍ぐんによる前橋まえばし空襲くうしゅうに9歳さいで遭遇そうぐうし、「広島ひろしまに原爆げんばくが投下とうかされた前日ぜんじつ。焼やけ野原のはらの街まちで実感じっかんしたのは絶望ぜつぼうより『もう戦争せんそうはない』という喜よろこび」を心しんの原げん風景ふうけいとして、「何なにもない環境かんきょうから探さがし出だす生活せいかつで、雑草ざっそうを食たべ孟宗竹もうそうちくを裂さいて家いえも建たて」て、「生いきる執着心しゅうちゃくしんをたたき込こまれた」。

中学校ちゅうがっこうを卒業そつぎょう後ご、映画えいが看板かんばん師し（映画えいが館かんに設置せっちの宣伝せんでん看板かんばんの絵えを描えがく仕事しごと）の助手じょしゅとして働はたらきながら、絵えを独学どくがく。24歳さいのとき画家がかを志こころざし上京じょうきょうしたが、力不足ちからぶそくを痛感つうかんし絶望ぜつぼう。そんなの折おり、同おなじ群馬ぐんま出身しゅっしんで「日本にっぽん近代詩きんだいしの父ちち」と呼よばれた詩人しじんの萩原はぎはら朔太郎さくたろうの詩し『死しなない蛸だこ』を読よみ、「薄暗うすぐらい水槽すいそうの底そこで孤独こどくと飢うえに耐たえるタコ。自みずからの足あしや体からだを食たべ、最後さいごに肉体にくたいは消滅しょうめつしてしまうが、その憤いきどおりや精神せいしん力りょくは永遠えいえんに生いきていく。その詩しを読よんだ時とき、自分じぶんの絶望ぜつぼう感かんがちっぽけに思おもえ」て、人生じんせい観かんを変かえた。

言葉ことばの持もつ力ちからに感動かんどうした結果けっか、絵本えほんや装丁そうていの仕事しごとも始はじめる。そこで野間のま宏ひろしや大江おおえ健三郎けんざぶろう、武田たけだ泰淳たいじゅん、三島みしま由紀夫ゆきおら有名ゆうめい作家さっかの著作ちょさく本ほんの装丁そうていに携たずさわるうち、「現代げんだい文学ぶんがくを読よみ解とき、他者たしゃの問題もんだいを自分じぶんに引ひき付つけて考かんがえるようになった」。そして、自身じしんも執筆しっぴつ活動かつどうを始はじめた。そして「描えがくことへの貪欲どんよくさ、『目めに見みえないものをいかに表現ひょうげんするか』という絵えの姿勢しせいも完成かんせいした」。

年譜ねんぷ

• 1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん） - 中学校ちゅうがっこう（新制しんせい）卒業そつぎょう
• 1953年ねん - 映画えいが館かんの看板かんばん描えがきの助手じょしゅとして働はたらきつつ、独学どくがくで絵えを描えがき始はじめる
• 1964年ねん - 主体しゅたい美術びじゅつ協会きょうかいの設立せつりつに参加さんか
• 1976年ねん - 『金子かねこ光晴みつはる全集ぜんしゅう』の装丁そうていで第だい7回かい講談社こうだんしゃ出版しゅっぱん文化ぶんか賞しょうブックデザイン賞しょうを受賞じゅしょう
• 1978年ねん - 『風船ふうせん乗のりの夢ゆめ』で小学館しょうがくかん絵画かいが賞しょう、『はなのゆびわ』で第だい27回かい小学館しょうがくかん児童じどう文化ぶんか賞しょうを受賞じゅしょう
• 1980年ねん - 『私わたしのアンネ=フランク』(松谷まつやみよ子こ作さく)で日本にっぽん児童じどう文学ぶんがく者しゃ協会きょうかい賞しょうを受賞じゅしょう
• 1982年ねん - 『雪ゆきの夜よるの幻想げんそう』(いぬいとみこ作さく)で第だい29回かいサンケイ児童じどう出版しゅっぱん文化ぶんか賞しょう
• 1986年ねん - 「司つかさ修おさむの世界せかい展てん」（静岡しずおか・池田いけだ20世紀せいき美術館びじゅつかん）
• 1988年ねん - 『バー螺旋らせんのホステス笑子えみこの周辺しゅうへん』で第だい100回かい芥川賞あくたがわしょう候補こうほ 『まちんと』ライプツィヒ国際こくさい図書としょデザイン展てん金賞きんしょう
• 1989年ねん（平成へいせい元年がんねん） - 『河原かわらにできた中世ちゅうせいの町まち へんれきする人ひとびとの集あつまるところ』（網野あみの善彦よしひこ文ぶん）で再ふたたび第だい36回かい産経さんけい児童じどう出版しゅっぱん文化ぶんか賞しょう美術びじゅつ賞しょうを受賞じゅしょう
• 1993年ねん - 『犬いぬ（影かげについて、その一いち）』で第だい20回かい川端かわばた康成やすなり文学ぶんがく賞しょうを受賞じゅしょう
• 1995年ねん - 司つかさ修おさむ展てん（東京とうきょう・新宿しんじゅく、紀伊国屋きのくにや画廊がろう）
• 1999年ねん - 法政大学ほうせいだいがく国際こくさい文化ぶんか学部がくぶ教授きょうじゅ
• 2000年ねん - 第だい35回かい造本ぞうほん装幀そうていコンクール日本にっぽん印刷いんさつ産業さんぎょう連合れんごう会かい会長かいちょう賞しょう
• 2003年ねん - 『ぼくの良寛りょうかんさん　鶴見つるみ正夫まさお少年しょうねん詩集ししゅう』で3度目どめの第だい50回かい産経さんけい児童じどう出版しゅっぱん文化ぶんか賞しょう（ニッポン放送にっぽんほうそう賞しょう）
• 2005年ねん - 法政大学ほうせいだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ
• 2007年ねん - 『ブロンズの地中海ちちゅうかい』で第だい48回かい毎日まいにち芸術げいじゅつ賞しょうを受賞じゅしょう
• 2008年ねん - 『山やまをはこんだ九きゅうひきの竜りゅう』で第だい55回かい産経さんけい児童じどう出版しゅっぱん文化ぶんか賞しょう美術びじゅつ賞しょうを受賞じゅしょう 河北かわきた倫明みちあき賞しょう（2008両りょう洋ようの眼め展てんで）
• 2011年ねん - ［展覧てんらん会かい］群馬ぐんま県立けんりつ近代きんだい美術館びじゅつかん 司つかさ修おさむのえものがたり－絵本えほん原画げんがの世界せかい、『本ほんの魔法まほう』で第だい38回かい大佛だいぶつ次郎じろう賞しょうを受賞じゅしょう
• 2013年ねん - 「賢治けんじ＋司つかさ修おさむ 注文ちゅうもんの多おおい展覧てんらん会かい」（神奈川かながわ近代文学館きんだいぶんがくかん）
• 2016年ねん - イーハトーブ賞しょう受賞じゅしょう

著作ちょさく

• 『はずかしがりやのぞう』 こぐま社しゃ、1968年ねん
• 『証人しょうにん 影像えいぞう戯曲ぎきょく 憂鬱ゆううつ工房こうぼう』 こぐま社しゃ 1970年ねん
• 『ちびっこわにのぼうけん』 偕成社かいせいしゃ 1971年ねん
• 『魔女まじょの森もり』 サンリオ出版しゅっぱん 1975年ねん
• 『おとうさんだいすき』 文ぶん研けん出版しゅっぱん 1975年ねん
• 『不思議ふしぎな館かん』 サンリオ 1977年ねん
• 『風船ふうせん乗のりの夢ゆめ』 小沢おざわ書店しょてん 1978年ねん
• 『4つのバトンタッチ』 司つかさ真実まなみ共著きょうちょ 小峰こみね書店しょてん 1980年ねん
• 『壊こわす人ひとからの指令しれい 司つかさ修おさむ画集がしゅう 小沢おざわ書店しょてん 1980年ねん
• 『ウィグルの砂漠さばくとオアシスを往ゆく 司つかさ修おさむ素描そびょう集しゅう』 中西なかにし画廊がろう 1980年ねん
• 『描えがけなかった風景ふうけい』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1981年ねん
• 『汽車きしゃ喰くわれ』 福武書店ふくたけしょてん 1983年ねん （短編たんぺん小説しょうせつ集しゅう）
• 『青あお猫ねこ 幻想げんそう童話どうわ館かん』 東京書籍とうきょうしょせき 1985年ねん
• 『魔法まほうのぶた』 汐しお文ぶん社しゃ 1985年ねん 原爆げんばく児童じどう文学ぶんがく集しゅう
• 『夢ゆめ景色けしき 司つかさ修おさむ幻想げんそう旅行りょこう記き』 東京書籍とうきょうしょせき 1985年ねん
• 『歩あるいてきた風景ふうけい』 講談社こうだんしゃ 1985年ねん
• 『気きままなる旅たび 装丁そうてい紀行きこう』 筑摩書房ちくましょぼう 1986年ねん
• 『赤羽あかはねモンマルトル 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1986年ねん
• 『紅べに水仙すいせん』 講談社こうだんしゃ 1987年ねん のち文庫ぶんこ（小説しょうせつ）
• 『語かたる絵え』 小沢おざわ書店しょてん 1989年ねん
• 『幽かそけ子こ・愛あい』 講談社こうだんしゃ 1990年ねん
• 『夢ゆめは逆夢さかゆめ』 白水しろみず社しゃ 1990年ねん 物語ものがたりの王国おうこく
• 『奏そう迷宮めいきゅう』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1991年ねん
• 『ブッダの歩あるいた道みち』 法蔵館ほうぞうかん 1992年ねん
• 『戦争せんそうと美術びじゅつ』 岩波いわなみ新書しんしょ 1992年ねん
• 『影かげについて』 新潮社しんちょうしゃ 1993年ねん
• 『夢ゆめの中なかの遠とおい声こえ』 法蔵館ほうぞうかん 1993年ねん
• 『迷霧めいむ』 講談社こうだんしゃ 1993年ねん
• 『司つかさ修おさむ 描えがくことと書かくこと 開館かいかん1周年しゅうねん記念きねん特別とくべつ企画きかく展てん 司つかさ修おさむ展てん図録ずろく』 前橋まえばし文学ぶんがく館かん 1994年ねん
• 『リンゴ わらべうたによる』 ほるぷ出版しゅっぱん 1994年ねん
• 『イーハトーヴォ幻想げんそう』 岩波書店いわなみしょてん 1996年ねん
• 『賢治けんじの手帳てちょう』 岩波書店いわなみしょてん 1996年ねん
• 『幸福こうふくを求もとめて』 新書しんしょ館かん 1997年ねん
• 『近代きんだい化か遺産いさんへの旅たび』 伊藤いとう幸雄ゆきお撮影さつえい 上毛新聞社じょうもうしんぶんしゃ 1998年ねん
• 『版画はんが』 新潮社しんちょうしゃ 2000年ねん （小説しょうせつ）
• 『いのちのえほん』（編へん）群馬ぐんま県けん・童心どうしん社しゃ 2001年ねん
• 『アスカ』 ポプラ社ぽぷらしゃ 2004年ねん
• 『「雁かりの寺てら」の真実しんじつ』 水上みずかみ勉つとむ共著きょうちょ 朝日新聞社あさひしんぶんしゃ 2004年ねん
• 『月つきに憑つかれたピエロ』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 2004年ねん
• 『ブロンズの地中海ちちゅうかい』 集英社しゅうえいしゃ 2006年ねん
• 『プロヴァンス水彩すいさい紀行きこう』 時事通信じじつうしん出版しゅっぱん局きょく 2006年ねん
• 『影かげについて』 講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ 2008年ねん
• 『おばあのものがたり』 偕成社かいせいしゃ 2008年ねん
• 『戦争せんそうと美術びじゅつと人間にんげん 末松すえまつ正樹まさきの二ふたつのフランス』 白水しろみず社しゃ 2009年ねん
• 『蕪村ぶそんへのタイムトンネル』 朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん 2010年ねん
• 『100万まん羽わのハト』 偕成社かいせいしゃ 2011年ねん
• 『司つかさ修おさむのえものがたり』 トランスビュー 2011年ねん
• 『本ほんの魔法まほう』 白水しろみず社しゃ 2011年ねん のち朝日あさひ文庫ぶんこ
• 『孫まご文ぶんの机つくえ』 白水しろみず社しゃ 2012年ねん
• 『絵本えほんの魔法まほう』 白水しろみず社しゃ 2013年ねん
• 『幽霊ゆうれいさん』 ぷねうま舎しゃ 2014年ねん
• 『Ōe(おおえ):60年代ねんだいの青春せいしゅん』 白水しろみず社しゃ 2015年ねん

挿画そうが

• 『愛あいと性せいをめぐる変奏へんそう』中村なかむら真一郎しんいちろう
• 『あかげのゆきおとこ』杉山すぎやま径みち一いち
• 『サーカス物語ものがたり』ミヒャエル・エンデ
• 『まちんと』松谷まつやみよ子こ
• 『さるのひとりごと』松谷まつやみよ子こ
• 『三日月みかづき村むらの黒くろ猫ねこ』安房あわ直子なおこ
• 『コンスタンティノープルの渡わたし守もり』塩野しおの七生しちしょう
• 少年しょうねん少女しょうじょ世界せかいの名作めいさく19『秘密ひみつの花園はなぞの』バーネット

関連かんれん人物じんぶつ

• 大江おおえ健三郎けんざぶろう（小説しょうせつ家か） - 多おおくの著作ちょさくの装丁そうていを、司つかさが手掛てがけている
• 中山なかやま庸子ようこ（エッセイスト・イラストレーター）
• 中沢なかざわ静雄しずお（小説しょうせつ家か・文芸ぶんげい評論ひょうろん家か・児童じどう文学ぶんがく者もの）

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの小説しょうせつ家か一覧いちらん
• 児童じどう文学ぶんがく作家さっか一覧いちらん