小澤おざわ征爾せいじ

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	チャイコフスキーの『スペードの女王じょおう』ヴラディーミル・アトラントフ、ミレッラ・フレーニによる歌唱かしょう、ボストン交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう。1992年ねん録音ろくおん。 Here on archive.org
	小澤おざわ征爾せいじ指揮しき、シカゴ交響こうきょう楽団がくだん演奏えんそう。ムソルグスキーの『展覧てんらん会かいの絵え』とベンジャミン・ブリテンの『青少年せいしょうねんのための管弦楽かんげんがく入門にゅうもん』を収録しゅうろく。1968年ねん録音ろくおん。; Here on archive.org

小澤おざわ征爾せいじ
小澤おざわ征爾せいじ
	2015年ねん
基本きほん情報じょうほう
出生しゅっしょう名めい	小澤おざわ征爾せいじ
生誕せいたん	1935年ねん9月1日にち ; 満まん洲しゅう国こく奉天ほうてん省しょう奉天ほうてん市し; （現げん：遼寧りょうねい省しょう瀋陽しんよう市し）
出身しゅっしん地ち	日本にっぽん
死没しぼつ	2024年ねん2月がつ6日にち（88歳さい没ぼつ）; 日本にっぽん東京とうきょう都と世田谷せたがや区く
学歴がくれき	桐朋とうほう学園がくえん短期大学たんきだいがく
ジャンル	クラシック音楽おんがく
職業しょくぎょう	指揮しき者しゃ
活動かつどう期間きかん	1959年ねん - 2024年ねん
配偶はいぐう者しゃ	江戸えど京子きょうこ（1962年ねん - 1966年ねん）; 入江いりえ美樹みき（1968年ねん - 2024年ねん）
著名ちょめいな家族かぞく	父ちち：小澤おざわ開ひらく作さく; 兄あに：小澤おざわ俊夫としお; 弟おとうと：小澤おざわ幹雄みきお; 長女ちょうじょ：小澤おざわ征良まさよし; 長男ちょうなん：小澤おざわ征ただし悦えつ
公式こうしきサイト	セイジ・オザワ松本まつもとフェスティバル

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小澤おざわ征爾せいじ（おざわせいじ、1935年ねん〈昭和しょうわ10年ねん〉9月1日にち - 2024年ねん〈令れい和わ6年ねん〉2月がつ6日にち）は、日本にっぽんの男性だんせい指揮しき者しゃ。1973年ねんからボストン交響こうきょう楽団がくだんの音楽おんがく監督かんとくを29年間ねんかん^[1]務つとめ、2002年ねん - 2003年ねんのシーズンから2009年ねん - 2010年ねんのシーズンまでウィーン国立こくりつ歌劇かげき場じょう音楽おんがく監督かんとくを務つとめた。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん名誉めいよ団だん員いん^[2]、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん名誉めいよ団だん員いん、ボストン交響こうきょう楽団がくだん桂冠けいかん音楽おんがく監督かんとく、セイジ・オザワ松本まつもとフェスティバル総そう監督かんとく、小澤おざわ征爾せいじ音楽おんがく塾じゅく塾長じゅくちょう・音楽おんがく監督かんとく、新しん日本にっぽんフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだん桂冠けいかん名誉めいよ指揮しき者しゃなど^[3]。

人物じんぶつ・生涯しょうがい

生おい立たち

満まん洲しゅう国こく奉天ほうてん省しょう奉天ほうてん市し（現げん：中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく遼寧りょうねい省しょう瀋陽しんよう市し）で生うまれる。父ちち小澤おざわ開ひらく作さくは歯科しか医師いし、満まん洲しゅう国こく協和きょうわ会かい創設そうせつ者しゃの一人ひとりで、同志どうしで満まん洲しゅう事変じへんの中心ちゅうしん人物じんぶつであった板垣いたがき征四郎せいしろうと石原いしはら莞爾かんじから一いち字じずつ貰もらって第だい三子みつごを「征爾せいじ」と命名めいめいした^[4]^[5]。1941年ねん3月がつに父ちちを満まん洲しゅうに残のこしたまま母おもや兄けいと日本にっぽんへ戻もどり、東京とうきょう府ふ立川たつかわ市しの若草わかくさ幼稚園ようちえんに入園にゅうえん^[6]する。1942年ねん4月がつに立川たちかわ国民こくみん学校がっこうへ入学にゅうがく^[6]する。1945年ねんに長兄ちょうけいでのち彫刻ちょうこく家かになる小澤おざわ克己かつみからアコーディオンとピアノの手てほどきを受うける。才能さいのうを感かんじた一家いっかは、征爾せいじに本格ほんかく的てきにピアノを学まなばせようと決意けついし、横浜よこはま市し白楽はくらくの親類しんるいから安価あんかで譲ゆずられたピアノをリアカーに縛しばりつけ、父ちちと長兄ちょうけいの克己こっきと次兄じけいの俊夫としおが3日にちかけて立川たつかわ市しの自宅じたくまで運搬うんぱんした。

1947年ねんに父ちちが友人ゆうじんとミシン会社かいしゃを始はじめ、神奈川かながわ県けん足柄上あしがらかみ郡ぐん金田かねだ村むらへ転居てんきょ^[6]する。1948年ねん4月がつに成城学園せいじょうがくえん中学校ちゅうがっこうへ入学にゅうがく^[7]し、小田急おだきゅう小田原おだわら線せんで新しん松田まつだから成城学園せいじょうがくえん前まえまで片道かたみち2時じ間あいだかけて通学つうがくした^[7]^[8]。中学ちゅうがくではラグビー部ぶに所属しょぞくして3番ばんプロップで活動かつどうしつつ、豊増とよます昇のぼるからピアノを習ならう^[7]。当時とうじはピアニスト志望しぼうだったが、ラグビーの雨あめの試合しあいでスクラム時じに右手みぎて人差ひとさし指ゆびを骨折こっせつしてピアノを断念だんねん^[9]する。1950年ねん秋あきに東京とうきょう都と世田谷せたがや区く^{[注ちゅう 1]}代田しろたへ転居てんきょ^[11]し、以後いご1951年ねんから1952年ねんは東京とうきょう都と世田谷せたがや区く経堂きょうどう^[12]、1952年ねんから1955年ねんは東京とうきょう都と渋谷しぶや区く笹塚ささづか^[12]、1955年ねんから1959年ねんは神奈川かながわ県けん川崎かわさき市し幸さいわい区く戸手とで町まち^[12]、それぞれで育そだつ^[11]。

1950年代ねんだい

1951年ねんに成城学園せいじょうがくえん高校こうこうへ進学しんがくして齋藤さいとう秀雄ひでおの指揮しき教室きょうしつに入門にゅうもんし、齋藤さいとうの肝煎きもいりで設立せつりつされた桐朋とうほう女子じょし高校こうこう音楽おんがく科かへ第だい1期生きせいとして1952年ねんに入学にゅうがく^[11]する。同門どうもんに秋山あきやま和かず慶けい、山本やまもと直純なおずみ、羽仁はに協子きょうこ、久山ひさやま恵子けいこがいる^[13]。癇癪かんしゃく持もちの齋藤さいとうから指揮棒しきぼうで叩たたかれたり楽譜がくふを投なげつけられたりするなど体罰たいばつを日常にちじょう的てきに受うけ、ストレスのあまり小澤おざわは自宅じたくの本箱ほんばこのガラス扉とびらを拳こぶしで殴なぐりつけ、大だい怪我けがをした^[14]。1955年ねんに齋藤さいとうが教授きょうじゅを務つとめる桐朋とうほう学園がくえん短期大学たんきだいがく音楽学部おんがくがくぶへ進学しんがくして1957年ねん夏なつに卒業そつぎょう^[15]する。夏期かきの卒業そつぎょうは、肺炎はいえんを患わずらい卒業そつぎょう試験しけんを受験じゅけんできず^{[注ちゅう 2]}、のちに追試ついしを受うけて卒業そつぎょうが認みとめられた事ことからであるが、療養りょうよう期間きかん中ちゅうは仲間なかまがどんどん仕事しごとをしたりマスメディアに出演しゅつえんしたりするのを見みて焦あせりと嫉妬しっとに苦くるしんだ^[17]。このとき父ちちから「嫉妬しっとは人間にんげんの一番いちばんの敵てきだ」と言いわれて嫉妬しっと心しんを殺ころす努力どりょくをしたことが後のちになって大変たいへん役立やくだった、と語かたる^[17]。

短大たんだい卒業そつぎょう後ご、1957年ねん頃ごろから齋藤さいとうの紹介しょうかいで群馬ぐんま交響こうきょう楽団がくだんで指揮棒しきぼうを振ふり始はじめて北海道ほっかいどう演奏えんそう旅行りょこうで指揮しき者しゃを担当たんとう^[18]する。1957年ねん12月に日本にっぽんフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだん第だい5回かい定期ていき演奏えんそう会かいのラヴェル『子供こどもと魔法まほう』で、渡邉わたなべ暁あきら雄ゆうの下したで副ふく指揮しき者しゃを務つとめる^[18]。1958年ねんに「フランス政府せいふ給費きゅうひ留学生りゅうがくせい」の試験しけんを受うけたが不合格ふごうかくとなる^[12]も、成城学園せいじょうがくえん時代じだいの同級生どうきゅうせいの父ちちである水野みずの成夫しげおらの援助えんじょで渡わたり欧おう資金しきんを調達ちょうたつ^[19]する。

1959年ねん2月がつ1日にちから、スクーター、ギターとともに貨物かもつ船せんで単身たんしんフランスへ渡わたる。このとき、アシスタントの小澤おざわを失うしなうことを恐おそれた齋藤さいとうから渡わたり欧おうに猛もう反対はんたいを受うけたが、桐朋とうほうの父兄ふけい会かいや水野みずの成夫しげおらから支援しえんを得えて、約やく45万まん円えん相当そうとうの1200ドルを餞別せんべつとして受うけた^[20]。パリ滞在たいざい中ちゅうの1959年ねんに、第だい9回かいブザンソン国際こくさい指揮しき者しゃコンクール第だい1位い。ヨーロッパのオーケストラに多数たすう客演きゃくえん。カラヤン指揮しき者しゃコンクール第だい1位い。指揮しき者しゃのヘルベルト・フォン・カラヤンに師事しじ。1960年ねん、アメリカ・ボストン郊外こうがいで開催かいさいされたバークシャー音楽おんがく祭さい（現げん：タングルウッド音楽おんがく祭さい）でクーセヴィツキー賞しょうを受賞じゅしょう。指揮しき者しゃのシャルル・ミュンシュに師事しじ。1961年ねんニューヨーク・フィルハーモニック副ふく指揮しき者しゃに就任しゅうにん。指揮しき者しゃのレナード・バーンスタインに師事しじ。同年どうねんニューヨーク・フィルの来日らいにち公演こうえんに同行どうこう。カラヤン、バーンスタインとの親交しんこうは生涯しょうがいに渡わたり築きずかれた。

1960年代ねんだい

1961年ねんにNHK交響こうきょう楽団がくだん（N響ひびき）の指揮しき者しゃに招まねかれ指揮しき活動かつどうを開始かいし^{[注ちゅう 3]}するが、感情かんじょう的てきな軋轢あつれきのためN響ひびきからボイコットを受うける。小澤おざわはたった一人ひとりで指揮しき台だいに立たつという苦にがい経験けいけんをさせられ、指揮しき者しゃを辞任じにん^[22]する。このため日本にっぽんでは音楽おんがく活動かつどうをしないと決きめて渡米とべいした。32年ねん後ごの1995年ねん1月がつにNHK交響こうきょう楽団がくだんと共演きょうえんした。

1964年ねん、シカゴ交響こうきょう楽団がくだん（当時とうじの指揮しき者しゃはジャン・マルティノン）によるラヴィニア音楽おんがく祭さいの指揮しき者しゃが急病きゅうびょうにより辞退じたい。急遽きゅうきょ、ニューヨークにいた小澤おざわが開催かいさい数すう日にち前まえに招聘しょうへいされ音楽おんがく監督かんとくとして音楽おんがく祭さいを成功せいこうに収おさめ、小澤おざわの名声めいせいは全米ぜんべいに知しれ渡わたる。シカゴ交響こうきょう楽団がくだんとはRCAレーベル、EMIレーベルに複数ふくすうの録音ろくおんを残のこした。日本人にっぽんじん指揮しき者しゃが海外かいがいの一流いちりゅうオーケストラを指揮しきして海外かいがいの一流いちりゅうレコード会社かいしゃからクラシック音楽おんがく録音ろくおんを海外かいがい市場いちば向むけに複数ふくすう発売はつばいしたことは画期的かっきてきな出来事できごとであった。

1964年ねんからはトロント交響こうきょう楽団がくだんの指揮しき者しゃに就任しゅうにんし1968年ねんまで務つとめる^[23]。1966年ねんにウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんを初はつ指揮しき。

この時期じきは作曲さっきょく家かの武満たけみつ徹とおると親交しんこうを大おおきく持もち、深ふかい友情ゆうじょう関係かんけいを築きずいた。武満たけみつの死後しごも武満たけみつ作品さくひんを演奏えんそうする機会きかいが多おおかった。

1970年代ねんだい

1970年ねんにはタングルウッド音楽おんがく祭さいの音楽おんがく監督かんとくに就任しゅうにん。同年どうねんサンフランシスコ交響こうきょう楽団がくだんの音楽おんがく監督かんとくに就任しゅうにんし1976年ねんまで務つとめた。

1972年ねんには、フジサンケイグループによる突然とつぜんの日本にっぽんフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだんの解散かいさん後ご、楽員がくいんによる自主じしゅ運営うんえいのオーケストラとして新しん日本にっぽんフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだんを創立そうりつ。小澤おざわは指揮しき者しゃとして中心ちゅうしん的てきな役割やくわりを果はたし、1991年ねんに名誉めいよ芸術げいじゅつ監督かんとくに就任しゅうにん、1999年ねん9月がつから桂冠けいかん名誉めいよ指揮しき者しゃとなっている。1972年ねんに日本にっぽん芸術げいじゅつ院いん賞しょうを受賞じゅしょうしている^[24]。

1973年ねん、38歳さいのとき、前出ぜんしゅつのニューヨーク・フィルおよびシカゴ響ひびきと共ともにアメリカ五大ごだいオーケストラの一ひとつに数かぞえられるボストン交響こうきょう楽団がくだんの音楽おんがく監督かんとく（第だい13代だい）に就任しゅうにん^[23]^{[注ちゅう 4]}。当初とうしょはドイツグラモフォンとの契約けいやくでラヴェルのオーケストラ曲きょく集しゅう、ベルリオーズのオーケストラ曲きょく集しゅうなど、ミュンシュの衣鉢いはつを継つぐフランス音楽おんがくの録音ろくおんを続つづけた。その後ごグスタフ・マーラーの交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅう（『大地だいちの歌うた』を除のぞく）など、フィリップスへの録音ろくおんを行おこなった。日本にっぽんのクラシックファンにとっては、日本人にっぽんじん指揮しき者しゃの演奏えんそうをアメリカから逆ぎゃく輸入ゆにゅうする形かたちで聴きくこととなり、また日本人にっぽんじん指揮しき者しゃの演奏えんそうが国際こくさい的てきに有名ゆうめいなレーベルから発売はつばいされるのは初はじめてであった。またボストンでの活動かつどうが進すすむにつれウィーン・フィル、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんをはじめとするヨーロッパのオーケストラへの出演しゅつえんも多おおくなる。

ボストン交響こうきょう楽団がくだんの音楽おんがく監督かんとくは2002年ねんまで務つとめたが、一人ひとりの指揮しき者しゃが30年ねん近ちかくにわたり同おなじオーケストラの音楽おんがく監督かんとくを務つとめたのは極きわめて珍めずらしいことといわれる^[25]^[26]。その30年ねん近ちかくに及およぶ音楽おんがく監督かんとく期間きかん中ちゅう、少すくなくとも1978年ねん3月がつ、1981年ねん秋あき、1986年ねん、1989年ねんにはボストン響ひびきを率ひきいて来日らいにちし、日本にっぽん公演こうえんを実施じっししたほか、1979年ねん3月がつには中国ちゅうごくでも同どう楽団がくだんを率ひきいての公演こうえんを行おこなっている^[23]。

タングルウッドには、小澤おざわ征爾せいじの功績こうせきを記念きねんして日本にっぽんの電気でんきメーカーNEC、ソニー元もと社長しゃちょうの大賀おおが典雄のりおなどの援助えんじょにより“SEIJI OZAWA HALL”が建設けんせつされた。

なお、アメリカを本拠ほんきょにしての音楽おんがく活動かつどうが長ながかったため、アメリカ国内こくない及および海外かいがいのマスコミでは「小澤おざわ征爾せいじは日系にっけいアメリカ人じん（Japanese-American）」と記述きじゅつする例れいもある^[27]。

1980年代ねんだい

1984年ねん9月がつ、恩師おんしである齋藤さいとう秀雄ひでおの没後ぼつご10年ねんを偲しのび、小澤おざわと秋山あきやま和かず慶けいの呼よびかけにより、世界中せかいじゅうから齋藤さいとうの門下生もんかせい100名めい以上いじょうが集あつまり、齋藤さいとう秀雄ひでおメモリアルコンサートを東京とうきょうと大阪おおさかにて開催かいさい。このコンサートが後こうのサイトウ・キネン・オーケストラ結成けっせいのきっかけとなる。1987年ねんに第だい1回かいヨーロッパ楽らく旅たびを行おこない、ウィーン、ベルリン、ロンドン、パリ、フランクフルトにて成功せいこうを収おさめる。1992年ねんからはサイトウ・キネン・オーケストラの音楽おんがく監督かんとくとして活動かつどうを開始かいし。このオーケストラでもフィリップスへの録音ろくおんを多おおく行いっており、今いままでにベートーヴェン、ブラームスの交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅうなどを完成かんせいさせている。

1990年代ねんだい

1990年ねん、吉田よしだ秀和ひでかずに招まねかれ、水戸みと市しに創設そうせつされた水戸みと芸術げいじゅつ館かんの専属せんぞく楽団がくだんである水戸みと室内しつない管弦楽かんげんがく団だんの音楽おんがく顧問こもん・指揮しき者しゃに就任しゅうにん。メンバーはサイトウ・キネン・オーケストラから小澤おざわがセレクトした。

1992年ねんにベルリン・フィルから、楽団がくだんに功績こうせきのあった人物じんぶつに贈おくられるハンス・フォン・ビューローメダル（英語えいご版ばん）を授与じゅよされた。

1998年ねん2月がつ、長野ながのオリンピック音楽おんがく監督かんとくを務つとめ、世界せかいの国歌こっかを新しん日本にっぽんフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだんと録音ろくおん。長野ながのオリンピック開会かいかい式しきでは、小澤おざわ指揮しきによるベートーベン第だい九きゅうを演奏えんそう。開会かいかい式しき会場かいじょうと世界せかい5大陸たいりくの都市とし（北京ぺきん、ニューヨーク、シドニー、ベルリン、ケープタウン）を衛星えいせい中継ちゅうけいで結むすび、歓喜かんきの歌うたを世界せかい同時どうじ合唱がっしょうで結むすぶ。同年どうねん、フランス政府せいふからレジオンドヌール勲章くんしょう（シュヴァリエ）を受賞じゅしょう^[28]。

1998年ねん6月がつには水戸みと室内しつない管弦楽かんげんがく団だんを率ひきいて楽団がくだん初はつのヨーロッパツアーを行おこなう。「ウィーン芸術げいじゅつ週間しゅうかん（英語えいご版ばん）」「フィレンツェ五ご月がつ音楽おんがく祭さい」「ルートヴィヒスブルク音楽おんがく祭さい」等とうから招待しょうたいを受うけ、ハンブルク、チューリヒ、ウィーン、ルートヴィヒスブルク、フィレンツェの5都市としで賞賛しょうさんを得える。

1999年ねん、小沢おざわ征爾せいじとサイトウ・キネン・フェスティバル松本まつもと実行じっこう委員いいん会かいが、第だい47回かい菊池きくち寛ひろし賞しょうを受賞じゅしょうした。

2000年代ねんだい

2001年ねん3月がつ、水戸みと室内しつない管弦楽かんげんがく団だんと第だい2回かいヨーロッパ公演こうえん。フィレンツェ、ミラノ、ウィーン、パリ、ミュンヘンの各地かくちから招聘しょうへいを受うけ公演こうえんを行おこない、評価ひょうかを高たかめた。

2002年ねん1月がつ、日本人にっぽんじん指揮しき者しゃとして初はじめてウィーン・フィルニューイヤーコンサートを指揮しき。このコンサートは世界せかい同時どうじ生せい中継ちゅうけいされ、CDの売うり上あげ枚数まいすうは100万まん枚まいを超こえた。2002年ねんシーズンにウィーン国立こくりつ歌劇かげき場じょう音楽おんがく監督かんとくに就任しゅうにん。

2005年ねん暮くれに体調たいちょうを崩くずし、同年どうねん12月がつに白内障はくないしょうの手術しゅじゅつを受うけた。

2006年ねん1月がつ半なかばには、東京とうきょう都内とないの病院びょういんで帯状疱疹たいじょうほうしん、慢性まんせい上顎じょうがく洞ほら炎えん、角膜かくまく炎えんと診断しんだんされ、通院つういんしながら静養せいようしていた。2006年ねん1月がつ27日にちにアン・デア・ウィーン劇場げきじょうで上演じょうえんされる予定よていであったモーツァルトの歌劇かげき『イドメネオ』の指揮しきはキャンセルされた。

2006年ねん2月がつ1日にち、ウィーン国立こくりつ歌劇かげき場じょう音楽おんがく監督かんとくとしての活動かつどうを一時いちじ休止きゅうし。東京とうきょうのオペラの森もりで指揮しき予定よていであったヴェルディ『オテロ』の公演こうえんもキャンセルすると発表はっぴょうした。

2006年ねん6月がつ、スイス西部せいぶモントルー近郊きんこうブロネ（英語えいご版ばん）で開催かいさいされた「スイス国際こくさい音楽おんがくアカデミー（英えい: Seiji Ozawa International Academy Switzerland）」にて指揮しき活動かつどうを再開さいかい。また、7月がつ20日はつかには「小澤おざわ征爾せいじ音楽おんがく塾じゅくオペラ・プロジェクトVII」愛知あいち県けん芸術げいじゅつ劇場げきじょうコンサートホール公演こうえんにてマーラーの交響こうきょう曲きょく第だい2番ばん『復活ふっかつ』を指揮しきし、日本にっぽん国内こくないでの指揮しき活動かつどうを再開さいかいした。2006年度ねんどのサイトウ・キネン・フェスティバル松本まつもと、2007年ねん4月がつにベルリン・フィルを指揮しきをしている。

2007年ねん、ウィーン国立こくりつ歌劇かげき場じょう総そう監督かんとくホーレンダー（英語えいご版ばん）の2010年ねん勇退ゆうたいに伴ともない、音楽おんがく監督かんとく小澤おざわ征爾せいじの同時どうじ退任たいにんが発表はっぴょうされた。2010年ねんシーズンからの総そう監督かんとくはドミニク・マイヤー（英語えいご版ばん）、音楽おんがく監督かんとくは、ウェルザー＝メストの就任しゅうにんが発表はっぴょうされた。

2008年ねん、世界せかいの音楽おんがく界かいに多大ただいな影響えいきょうを与あたえたことや、若手わかて音楽家おんがくか育成いくせいに尽力じんりょくした功績こうせきが認みとめられ、文化ぶんか勲章くんしょうを受章じゅしょうした^[29]。

2010年ねん1月がつ、人間にんげんドックの検査けんさで食道しょくどう癌がんが見みつかり治療ちりょうに専念せんねんするために、同年どうねん6月がつまでの活動かつどうを全すべてキャンセルすることを発表はっぴょうした^[30]。食道しょくどう全ぜん摘出てきしゅつ手術しゅじゅつを受うけ、同年どうねん8月がつに復帰ふっき。同年どうねん開催かいさいのサイトウ・キネン・フェスティバル松本まつもとは一部いちぶプログラムで代役だいやくを立たて総そう監督かんとくとして出演しゅつえん。

2010年代ねんだい

2010年ねん11月、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんにより、名誉めいよ団だん員いんの称号しょうごうを贈呈ぞうていされた^[31]。

2011年ねん1月がつ、悪化あっかした腰こしの手術しゅじゅつを受うける。

2012年ねん3月がつ7日にち、体力たいりょく回復かいふくのため、1年間ねんかんの指揮しき活動かつどうの中止ちゅうしを発表はっぴょう^[32]。

2012年ねん8月がつ31日にち、『小澤おざわ征爾せいじさんと、音楽おんがくについて話はなしをする』（村上むらかみ春樹はるきとの共著きょうちょ、新潮社しんちょうしゃ）で小林こばやし秀雄ひでお賞しょう受賞じゅしょう。

2013年ねん4月がつ1日にち、前年ぜんねん死去しきょした吉田よしだ秀和ひでかずの後任こうにんとして水戸みと芸術げいじゅつ館かんの2代目だいめ館長かんちょうに就任しゅうにん^[33]。

2014年ねん8月がつ4日にち　長野ながの県けん松本まつもと市しの音楽おんがく祭さい「サイトウ・キネン・フェスティバル松本まつもと（SKF）」が翌よく2015年ねんから、小澤おざわ征爾せいじの名なを冠かんした「セイジ・オザワ松本まつもとフェスティバル」に生うまれ変かわることになったことを、実行じっこう委員いいん会かいが東京とうきょう都内とないで記者きしゃ会見かいけんして明あきらかにした。

2015年ねん7月がつ、ケネディ・センター名誉めいよ賞しょうを受賞じゅしょう。日本人にっぽんじんでは初はつの受賞じゅしょうとなる^[34]。

同年どうねん8月がつ、セイジ・オザワ松本まつもとフェスティバル開催かいさい。腰椎ようつい棘とげ突起とっきおよび横よこ突起とっき骨折こっせつにより、ベルリオーズ・オペラ『ベアトリスとベネディクト』を降板こうばん^[35]。長野ながの県けん名誉めいよ県民けんみん栄誉えいよ賞しょうの第だい1号ごうを受賞じゅしょう^[36]。

2016年ねん2月がつ、自みずからが指揮しきする歌劇かげき『こどもと魔法まほう』（ラヴェル作曲さっきょく）を収おさめるアルバムが第だい58回かいグラミー賞しょう最優秀さいゆうしゅうオペラ録音ろくおん賞しょうを受賞じゅしょうした^[37]^[38]。

2016年ねん3月がつ、成城大学せいじょうだいがく初はつとなる名誉めいよ博士はかせ号ごうを贈呈ぞうていされた。記念きねん式典しきてんではサイトウ・キネン・オーケストラや水戸みと室内しつない管弦楽かんげんがく団だんメンバー、成城学園せいじょうがくえんにゆかりのアーティスト達たちが集結しゅうけつし、『S.オザワ祝典しゅくてんアンサンブル』を結成けっせいした^[39]。

2016年ねん4月がつ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんにより、名誉めいよ団だん員いんの称号しょうごうを贈呈ぞうていされた^[40]。

2016年ねん10月がつ、名誉めいよ都民とみんに顕彰けんしょうされる^[41]^[42]。2016 GQ Men of the Yearを受賞じゅしょう^[43]。

2018年ねん12月5日にち、サントリーホールで行おこなわれたドイツ・グラモフォン創立そうりつ120周年しゅうねん　スペシャル・ガラ・コンサートにて、サン＝サーンス　序奏じょそうとロンド・カプリチオーソ　イ短調たんちょう　作品さくひん28を指揮しき。（ヴァイオリン：アンネ＝ゾフィー・ムター）^[44]。

2019年ねん8月がつ18日にち、セイジ・オザワ松本まつもとフェスティバルのふれあいコンサートIのアンコールでサプライズ出演しゅつえんし、小澤おざわ征爾せいじスイス国際こくさいアカデミーを中心ちゅうしんとしたメンバーによるベートーヴェンの弦楽げんがく四よん重奏じゅうそう曲きょく第だい16番ばんヘ長調ちょうちょうの第だい三さん楽章がくしょう(弦楽げんがく合奏がっそう版ばん)を指揮しきした。^[45]同どうフェスティバルの有料ゆうりょう公演こうえんでの指揮しきはこの演奏えんそうが最後さいごとなった。

2020年代ねんだい

2022年ねん11月23日にち、キッセイ文化ぶんかホール（長野ながの県けん松本まつもと文化ぶんか会館かいかん）においてサイトウ・キネン・オーケストラ（SKO）を4年ねんぶりに指揮しきした。演奏えんそうではそのとき、国際こくさい宇宙うちゅうステーション（ISS）「きぼう」でミッションにあたる宇宙うちゅう飛行ひこう士しの若田わかた光一こういちに向むけて、ベートーヴェンの「エグモント序曲じょきょく」のライブ配信はいしんが行おこなわれた。宇宙うちゅうへのオーケストラ演奏えんそうのライブ配信はいしんは史上しじょう初はつであった^[46]。なお、直後ちょくごの同月どうげつ25日にち・26日にちに行おこなわれたセイジ・オザワ松本まつもとフェスティバル（旧称きゅうしょう: サイトウ・キネン・フェスティバル松本まつもと）30周年しゅうねん記念きねん特別とくべつ公演こうえんの指揮しきはアンドリス・ネルソンスが行おこなった（25日にち公演こうえんのカーテンコールの際さい、車椅子くるまいすに乗のった小澤おざわが登壇とうだんした）^[47]^[48]。

2023年ねん9月がつ2日にち、セイジ・オザワ松本まつもとフェスティバルにおいて、親交しんこうのあるジョン・ウィリアムズがゲスト指揮しき者しゃとして登壇とうだんした公演こうえんのカーテンコールに登場とうじょうした。^[49]公おおやけの場ばに姿すがたを現あらわしたのはこれが最後さいごとなった。

2024年ねん1月がつ23日にち、元もと妻つまである江戸えど京子きょうこが死去しきょ^[50]。

2024年ねん2月がつ6日にち、東京とうきょう都内とないの自宅じたくで心不全しんふぜんのため死去しきょ^[51]。88歳さい没ぼつ^[52]。訃報ふほうは9日にちに所属しょぞく事務所じむしょから報ほうじられた^[51]^[53]。

2024年ねん2月がつ6日にち、ボストン交響こうきょう楽団がくだんは小澤おざわを追悼ついとうし

「With great sorrow, the Boston Symphony Orchestra announces the death of its beloved Music Director Laureate, Seiji Ozawa.」^[54]
訳わけ「ボストン交響こうきょう楽団がくだんは、深ふかい悲かなしみとともに、敬愛けいあいする桂冠けいかん音楽おんがく監督かんとく、小澤おざわ征爾せいじ氏しの逝去せいきょを発表はっぴょうします。」

と始はじまる長文ちょうぶんで哀悼あいとうの意いを公式こうしきサイトのトップおよび特集とくしゅうページに掲載けいさい。一部いちぶ抜粋ばっすい「親切しんせつで思慮しりょ深ふかい人道じんどう主義しゅぎ者しゃ、指揮しき台だいでのバレエのような優雅ゆうがさと天才てんさい的てきな記憶きおく力りょくを兼かね備そなえた音楽おんがくの天才てんさい」「セイジは世界中せかいじゅうのファンにとって、これらすべて、そしてそれ以上いじょうの存在そんざいだった。彼かれの遺産いさんは、私わたしたちの集団しゅうだん的てき、個人こじん的てきな多おおくの思おもい出でと、彼かれの忘わすれがたい録音ろくおんを通とおして生いき続つづけています。マエストロ・オザワのご家族かぞく、ご友人ゆうじん、そしてクラシック音楽おんがく界かいに深ふかい哀悼あいとうの意いを表あらわします」と称となえ、偲しのんだ^[55]。ほかにもベルリン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん、ニューヨーク・フィルハーモニック、シカゴ交響こうきょう楽団がくだんや国内こくないのオーケストラなど、世界中せかいじゅうのオーケストラから追悼ついとうの声明せいめいが寄よせられ、世界中せかいじゅうの音楽家おんがくかがメッセージを出だした。音楽おんがく以外いがいの分野ぶんやからも、谷川たにがわ俊太郎しゅんたろう、横尾よこお忠則ただのり、安藤あんどう忠雄ただお、黒柳くろやなぎ徹子てつこ、村上むらかみ春樹はるきらがコメントを出だした。

訃報ふほうは国内外こくないがいの多おおくのメディアで報ほうじられ、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ガーディアンなどは長ながい追悼ついとう記事きじを出だし、「東ひがしアジアのクラシック音楽家おんがくかに対たいする偏見へんけんを払拭ふっしょくすることに貢献こうけんした（ニューヨーク・タイムズ）」などと、その功績こうせきを讃たたえた。

受賞じゅしょう・栄典えいてん

1960年ねんクーセヴィツキー賞しょう
1972年ねん日本にっぽん芸術げいじゅつ院いん賞しょう
1975年ねんモービル音楽おんがく賞しょう
1985年ねん朝日あさひ賞しょう^[56]
1987年ねん国際こくさい文化ぶんかデザイン大賞たいしょう
1989年ねん山ノ内やまのうち町まち名誉めいよ町民ちょうみん^[57]^[58]
1996年ねん松本まつもと市し名誉めいよ市民しみん^[59]
1998年ねん仏ふつレジオンドヌール勲章くんしょうシュヴァリエ
2000年ねん米国べいこくハーバード大学だいがく名誉めいよ博士はかせ号ごう
2001年ねん文化ぶんか功労こうろう者しゃ
2002年ねんオーストリア科学かがく芸術げいじゅつ一等いっとう名誉めいよ十じゅう字じ章あきら（ドイツ語ご版ばん、英語えいご版ばん）
2003年ねん
- 毎日まいにち芸術げいじゅつ賞しょう
- サントリー音楽おんがく賞しょう
2004年ねん仏ふつソルボンヌ大学そるぼんぬだいがく名誉めいよ博士はかせ号ごう
2006年ねん NHK放送ほうそう文化ぶんか賞しょう
2008年ねん
- 日本にっぽん国こく文化ぶんか勲章くんしょう
- 仏ふつレジオンドヌール勲章くんしょうオフィシエ
- 仏ふつ芸術げいじゅつアカデミー外国がいこく人じん会員かいいん
- イタリア・プレミオ・ガリレオ2000財団ざいだん金きん百ひゃく合ごう賞しょう
2011年ねん
- 高松宮たかまつのみや殿下でんか記念きねん世界せかい文化ぶんか賞しょう
- 渡邉わたなべ暁あきら雄お音楽おんがく基金ききん特別とくべつ賞しょう
2012年ねん小林こばやし秀雄ひでお賞しょう
2014年ねんモンブラン国際こくさい文化ぶんか賞しょう
2015年ねん
- ケネディ・センター名誉めいよ賞しょう
- 長野ながの県けん県民けんみん栄誉えいよ賞しょう
2016年ねん
- グラミー賞しょう
- 東京とうきょう都と名誉めいよ都民とみん
- 成城大学せいじょうだいがく名誉めいよ博士はかせ号ごう
- 第だい11回かいGQ Men of the Year
2019年ねん市川いちかわ三郷みさと町まち名誉めいよ町民ちょうみん^[60]
2022年ねん日本にっぽん芸術げいじゅつ院いん会員かいいん
2024年ねん山ノ内やまのうち町まち永世えいせい名誉めいよ町民ちょうみん^[61]

親族しんぞく

1962年ねん、井上いのうえ靖やすし^[62]の仲人なこうどにより、三井不動産みついふどうさん社長しゃちょう江戸えど英雄ひでおの娘むすめでピアニストの江戸えど京子きょうこと結婚けっこん。京子きょうことは桐朋とうほう女子じょし高校こうこうの第だい一いち期生きせい同士どうし^{[注ちゅう 5]}であり、当時とうじから小澤おざわは江戸えど家かに入いり浸びたりだったが、留学りゅうがく先さきのパリで再会さいかいし、結婚けっこんに至いたったものである^[63]。ただし英雄えいゆうは「娘むすめは強つよい性格せいかくで個性こせいが強烈きょうれつ」との理由りゆうにより、この結婚けっこんに最初さいしょから反対はんたいしていた^[63]。結局けっきょく、二人ふたりは1966年ねんに離婚りこんしたが、その原因げんいんについて江戸えど京子きょうこは「ピアニストとして練習れんしゅうするにしても、自分じぶんが弾ひきたい時ときに弾ひけませんしね。主人しゅじんが練習れんしゅうに疲つかれて家いえに帰かえって来きて、もう音おとは聞ききたくないという。その気持きもちもわかりますしね。それで議論ぎろんになると、結局けっきょくは"オレが稼かせいでいるんだから、オレの意見いけんを尊重そんちょうしろ"ということで押おし切きられてしまう。いちばん単純たんじゅんな議論ぎろんでやって来くるんです。それなら、自分じぶんが経済けいざい力りょくを持もてば納得なっとくのいく生活せいかつが出来できるんじゃないかと──」^[63]と語かたっている。このほか、コンクール優勝ゆうしょう後ごにスターとなった小澤おざわが銀座ぎんざのバーのマダムやモデルの入江いりえ美樹みき（後述こうじゅつ）と浮名うきなを流ながしたのも離婚りこんの一因いちいんだったと報ほうじられた^[63]。また、小澤おざわは留学りゅうがく前まえに岳父がくふの江戸えど英雄えいゆうから約やく20万まん円えん（一説いっせつによると50万まん円えん）の経済けいざい的てき援助えんじょを受うけていた^[63]。このため、京子きょうことの離婚りこんについては、桐朋とうほう学園がくえんの関係かんけい者しゃから「デビューまでは江戸えど家かに経済けいざい的てきな負担ふたんをかけておきながら、目的もくてきを達たっしたらサヨナラ」との非難ひなんも浴あびた^[64]。小澤おざわがN響ひびきと契約けいやくしたのは江戸えど京子きょうことの婚約こんやく中ちゅうであり、若わかい小澤おざわがN響ひびきの常任じょうにん指揮しき者しゃに抜擢ばってきされた背景はいけいには、江戸えど英雄えいゆうの政治せいじ力りょくがあったとも報ほうじられた。江戸えど英雄えいゆうが自民党じみんとうの有力ゆうりょく者しゃを通つうじてNHKに工作こうさくを行おこない、前田まえだ義徳よしのり（NHK専務せんむ理事りじ、のち会長かいちょう）を通つうじ、小澤おざわをN響ひびきの指揮しき者しゃに雇やとうよう命令めいれいしたとの説せつを、毎日新聞まいにちしんぶん記者きしゃであった原田はらだ三朗さぶろうは紹介しょうかいしている^[65]。

1968年ねん、白しろ系けいロシア人じん貴族きぞくの血ちを二に分ぶんの一いち引ひく^{[注ちゅう 6]}ファッションモデル兼けんデザイナーで一時いちじ的てきに女優じょゆうとしても活動かつどうしていた入江いりえ美樹みき（小澤おざわ・ベラ・イリーン）と再婚さいこん^[67]。美樹みきの母ははは料理りょうり研究けんきゅう家かの入江いりえ麻木あさぎ。美樹みきとの間あいだに生うまれた娘むすめの小澤おざわ征良まさよしはエッセイスト。同おなじく、息子むすこの小澤おざわ征ただし悦えつは俳優はいゆう。NHKアナウンサーの桑子くわご真帆まほは征せい悦えつの妻つま。またミュージシャンの小沢おざわ健二けんじは甥おいにあたる。兄あにで健けん二にの父ちち・小澤おざわ俊夫としおは「小澤おざわ昔むかしばなし研究所けんきゅうじょ」を主宰しゅさいする口承こうしょう文芸ぶんげい学者がくしゃで筑波大学つくばだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ。弟おとうとの小澤おざわ幹雄みきおは俳優はいゆうでテレビ・リポーターである。

甥おいの小沢おざわ健二けんじを通つうじて、首相しゅしょう経験けいけん者しゃの芦田あしだ均ひとし、松方まつかた正義まさよし、山本やまもと権兵衛ごんべえ、実業じつぎょう家かの岩崎いわさき弥太郎やたろう・弥之助やのすけ兄弟きょうだい、政治せいじ家かの後藤ごとう象二しょうじ郎ろう、医師いしの緒方おがた洪庵こうあん、その弟子でしの福沢ふくさわ諭吉ゆきちらと親戚しんせき関係かんけいにある。(詳細しょうさいは松方まつかた正義まさよしの項こう参照さんしょう)

指揮しき者しゃ齋藤さいとう秀雄ひでおの母方ははかたの祖母そぼである前島まえじま久ひさ（ひさ。旧姓きゅうせい大津おおつ）は、小澤おざわの母方ははかたの曽そ祖父そふである大津おおつ義一ぎいち郎ろうの実妹じつまいであり^[68]、小澤おざわは「僕ぼくは先生せんせいの弟子でしというより近ちかかったわけです。親類しんるいだったからね」^[69]と発言はつげんしている。

NHK交響こうきょう楽団がくだんとの関係かんけい

N響ひびき事件じけん

軋轢あつれきに至いたる経緯けいい

小澤おざわ征爾せいじとNHK交響こうきょう楽団がくだん（N響ひびき）が初はじめて顔かおを合あわせたのは、1961年ねん7月がつの杉並すぎなみ公会堂こうかいどうにおける放送ほうそう録音ろくおんであった。翌よく1962年ねんには、半年はんとし間あいだ「客演きゃくえん指揮しき者しゃ」として契約けいやく。当初とうしょは6月がつの定期ていき演奏えんそう会かいを含ふくめた夏なつの間あいだだけの契約けいやく予定よていだったが、秋あきの定期ていき演奏えんそう会かいを指揮しきする予定よていだったラファエル・クーベリックが出演しゅつえんをキャンセルしたため、12月まで契約けいやく期間きかんが延長えんちょうされた。7月4日にちにはオリヴィエ・メシアンのトゥーランガリラ交響曲こうきょうきょく日本にっぽん初演しょえんを指揮しきするなど小澤おざわとN響ひびきの関係かんけいは順調じゅんちょうに推移すいいしているように思おもわれたが、10月2日にちの香港ほんこんを皮切かわきりとするシンガポール・マレーシア・フィリピン・沖縄おきなわへの演奏えんそう旅行りょこうでN響ひびきと小澤おざわの間あいだに感情かんじょう的てきな軋轢あつれきが生しょうじ、11月の第だい434回かい定期ていき公演こうえんの出来できばえが新聞しんぶんに酷評こくひょうされた直後ちょくご、11月16日にちにN響ひびきの演奏えんそう委員いいん会かいが「今後こんご小澤おざわ氏しの指揮しきする演奏えんそう会かい、録音ろくおん演奏えんそうには一切いっさい協力きょうりょくしない」と表明ひょうめい。小澤おざわとNHKは折衝せっしょうを重かさねたが折おり合あわず、N響ひびきの理事りじは小澤おざわを「あんにゃろう」と罵ののしり、N響ひびきは小澤おざわに内容ないよう証明しょうめいを送おくりつけ、小澤おざわも1962年ねん12月18日にち、NHKを契約けいやく不履行ふりこうと名誉めいよ毀損きそんで訴うったえる事態じたいとなった^[70]。このため、12月20日にち、第だい435回かい定期ていき公演こうえんと年末ねんまつ恒例こうれいの「第だい九きゅう」公演こうえんの中止ちゅうしが発表はっぴょうされた。

マニラ公演こうえんの失敗しっぱい

このトラブルの原因げんいんについて、小澤おざわが遅刻ちこくを繰くり返かえしたためという説せつを八田はった利一としかずが述のべている^[71]。原田はらだ三朗さぶろうもまた、小澤おざわが「ぼくは朝あさが弱よわい」と称しょうして遅刻ちこくを繰くり返かえし、しかもそのことを他人たにんのせいにして謝罪しゃざいしなかった^{[注ちゅう 7]}のがN響ひびきから反感はんかんを買かった一因いちいんだったと述のべている^[73]。東南とうなんアジア演奏えんそう旅行りょこうにおける小澤おざわはホテルのバーで朝あさの6時半じはんまで飲のみ明あかした状態じょうたいで本番ほんばんに臨のぞみ、マニラ公演こうえんで振ふり間違まちがいを犯おかして演奏えんそうを混乱こんらんさせ、コンサートマスターの海野うみの義雄よしおが小澤おざわに敵対心てきたいしんを持もったため、或あるいは「38度どの熱ねつがあった」「副ふく指揮しき者しゃが来こなかったせいだ」ともいわれる^[74]。これについて、小澤おざわは

「副ふく指揮しき者しゃなしで、孤軍こぐん奮闘ふんとうしたぼくは、酷暑こくしょのこの都市としで、首くびの肉にくばなれのため39度どの発熱はつねつをし、ドクターストップをうけたのだった。このような状態じょうたいで棒ぼうをふったために、些細ささいなミスを冒おかして^[75]しまった。しかし、演奏えんそう効果こうかの点てんでは、全まったく不問ふもんに附ふしていいミスであったとぼくは思おもう。それを楽員がくいんの一部いちぶの人ひとたちは、ぼくをおとし入いれるために誇大こだいにいいふらし、あれは仮病けびょうであるとまでいった」^[76]

としている。「一説いっせつによると美男びなん子こで鳴なるコンサートマスター（海野うみの）が、小澤おざわが現あらわれてからファンレターがめっきりへったため、アタマに来きてアジったということだ」との報道ほうどうもあった^[77]。

紛争ふんそうの原因げんいん

後年こうねん、1984年ねんの齋藤さいとう秀雄ひでおメモリアルコンサートを追おったアメリカのテレビドキュメンタリー（2007年ねん9月がつにサイトウ・キネン・フェスティバルの企画きかくとして、NHKで放送ほうそうされた）で、小澤おざわはこの事件じけんの背景はいけいについて「僕ぼくの指揮しき者しゃとしてのスタイルはアメリカ的てきで、いちいち団員だんいんに指図さしずするやり方かただった。でも日本にっぽんでの指揮しき者しゃに対たいする概念がいねんはそうではない。黙だまって全体ぜんたいを把握はあくするのが指揮しき者しゃだ。この違ちがいに加くわえて僕ぼくは若造わかぞうだった」との趣旨しゅしの発言はつげんで振ふり返かえっている。しかし原田はらだ三朗さぶろうはこの見解けんかいを否定ひていし、

「アメリカで育そだったような小澤おざわの音楽おんがくと、ローゼンストック以来いらいのウィーン楽らく派はとシュヒターのベルリン・フィル的てきな訓練くんれんに慣なれたN響ひびきの音楽おんがく観かんのちがいが、紛争ふんそうの原因げんいんだという見解けんかいが当時とうじ、支配しはい的てきだった。楽団がくだん員いんは若わかい指揮しき者しゃをそねんでいるとか、もっとおおらかでなければならない、などという意見いけんもつよかった。しかし、ほんとうの原因げんいんはそんな立派りっぱなことではなかった。遅刻ちこくや勉強べんきょう不足ふそくという、若わかい小澤おざわの甘あまえと、それをおおらかにみようとしない楽団がくだん員いん、若わかい指揮しき者しゃを育そだてようとしなかった事務じむ局きょくの不幸ふこうな相乗そうじょう作用さようだった」^[78]

と述のべている。

社会しゃかい問題もんだいに発展はってん

この事件じけんはN響ひびきにとどまらず政財界せいざいかいを巻まき込こむ社会しゃかい問題もんだいに発展はってんし、青柳あおやぎ正美まさみ、秋山あきやま邦くに晴はれ、浅利あさり慶太けいた、安倍あべ寧やすし、有坂ありさか愛あい彦、一柳いちりゅう慧とし、石原いしはら慎太郎しんたろう、井上いのうえ靖やすし、大江おおえ健三郎けんざぶろう、梶山かじやま季之としゆき、曽野その綾子あやこ、高橋たかはし義孝よしたか、武満たけみつ徹とおる、谷川たにがわ俊太郎しゅんたろう、團だん伊玖磨いくま、中島なかじま健蔵けんぞう、黛まゆずみ敏郎としお、三島みしま由紀夫ゆきお、村野むらの藤吾とうご、山本やまもと健吉けんきち、由起ゆきしげ子こが「小澤おざわ征爾せいじの音楽おんがくを聴きく会かい」を結成けっせいし^[79]^[80]、NHKとN響ひびきに質問しつもん書しょを提出ていしゅつすると共ともに、芥川あくたがわ也寸志やすし・武満たけみつ徹とおる・小倉おぐら朗あきらといった若手わかて音楽家おんがくか約やく10名めいが事件じけんの真相しんそう調査ちょうさに乗のり出だした^[81]。小澤おざわは活動かつどうの場ばを日本にっぽんフィルに移うつし、翌よく1963年ねん1月がつ15日にち、日比谷公会堂ひびやこうかいどうにおける「小澤おざわ征爾せいじの音楽おんがくを聴きく会かい」の音楽おんがく会かいで指揮しき。三島みしま由紀夫ゆきおは『朝日新聞あさひしんぶん』翌よく1月がつ16日にち付づけ朝刊ちょうかんに「熱狂ねっきょうにこたえる道みち―小沢おざわ征爾せいじの音楽おんがくをきいて^[82]」という一文いちぶんを発表はっぴょうし、

「日本にっぽんには妙みょうな悪あく習慣しゅうかんがある。『何なにを青二才あおにさいが』という青年せいねん蔑視べっしと、もう一ひとつは『若わかさが最高さいこう無上むじょうの価値かちだ』というそのアンチテーゼ（反対はんたい命題めいだい）とである。私わたしはそのどちらにも与くみしない。小澤おざわ征爾せいじは何なにも若わかいから偉えらいのではなく、いい音楽家おんがくかだから偉えらいのである。もちろん彼かれも成熟せいじゅくしなくてはならない。今度こんどの事件じけんで、彼かれは論理ろんりを武器ぶきに戦たたかったのだが、これはあくまで正ただしい戦たたかいであっても、日本にっぽんのよさもわるさも、無む論理ろんりの特徴とくちょうにあって、論理ろんりは孤独こどくに陥おちいるのが日本人にっぽんじんの運命うんめいである。その孤独こどくの底そこで、彼かれが日本人にっぽんじんとしての本質ほんしつを自覚じかくしてくれれば、日本人にっぽんじんは亡命ぼうめい者しゃ（レフュジー）的てきな『国際こくさい的てき芸術げいじゅつ家か』としての寂さびしい立場たちばへ、彼かれを追ついひやることは決けっしてないだらう」

「私わたしは彼かれを放逐ほうちくしたNHK楽団がくだん員いんの一人ひとり一いち人にんの胸むねにも、純粋じゅんすいな音楽おんがくへの夢ゆめと理想りそうが巣食すくっているだろうことを信しんじる。人間にんげんは、こじゅうと根性こんじょうだけでは生いきられぬ。日本にっぽん的てきしがらみの中なかでかつ生いきつつ、西洋せいよう音楽おんがくへ夢ゆめを寄よせてきた人々ひとびとの、その夢ゆめが多少たしょうまちがっていても、小澤おざわ氏しもまた、彼かれらの夢ゆめに雅量がりょうを持もち、この音楽おんがくという世界せかい共通きょうつうの言語げんごにたずさわりながら、人ひとの心しんという最もっとも通つうじにくいものにも精通せいつうする、真しんの達人たつじんとなる日ひを、私わたしは祈いのっている」

と、小澤おざわを擁護ようごした。

和解わかいの成立せいりつ

結局けっきょく、1月がつ17日にちに黛まゆずみ敏郎としおらの斡旋あっせんにより、NHK副ふく理事りじの阿部あべ真之助しんのすけと小澤おざわが会談かいだんし、これをもって一応いちおうの和解わかいが成立せいりつした。しかし「あの時ときは『もう俺おれは日本にっぽんで音楽おんがくをするのはやめよう』と思おもった」（先さきのドキュメンタリーでの発言はつげん）ほどのショックを受うけた小澤おざわが次つぎにN響ひびきの指揮しき台だいに立たつのは32年ねん3ヶ月かげつ後ご、1995年ねん1月がつのことであった。小澤おざわは後年こうねん、N響ひびきとのトラブルが刺激しげきになってよく勉強べんきょうしたとも述懐じゅっかいしている^[83]。

32年ねんぶりの共演きょうえん

1995年ねん1月がつ23日にち、サントリーホールにおいて小澤おざわとN響ひびきは32年ねんぶりに共演きょうえんを果はたした。このコンサートは、日本にっぽんオーケストラ連盟れんめい主催しゅさいによる、身体しんたいの故障こしょうで演奏えんそう活動かつどうが出来できないオーケストラ楽員がくいんのための慈善じぜん演奏えんそう会かいであり、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチをソリストに迎むかえ、以下いかの曲目きょくもくを演奏えんそうした。

J. S. バッハ：『G線上せんじょうのアリア』（阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさい犠牲ぎせい者しゃ追悼ついとう）
バルトーク：管弦楽かんげんがくのための協奏曲きょうそうきょく
ドヴォルザーク：チェロ協奏曲きょうそうきょく
J. S. バッハ：無む伴奏ばんそうチェロ組曲くみきょく第だい2番ばんサラバンド（阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさい犠牲ぎせい者しゃ追悼ついとう。ロストロポーヴィチの独奏どくそう）

なお、小澤おざわはこのコンサートを引ひき受うけた理由りゆうとして「ロストロポーヴィチから、いつまでもN響ひびきと喧嘩けんかしているべきではないとたしなめられた」「（「小澤おざわ事件じけん」を知しる）昔むかしの楽団がくだん員いんが退職たいしょくしたり亡なくなったりしていなくなったから引ひき受うけた」という趣旨しゅしの発言はつげんをしている。

NHK音楽おんがく祭さい2005

2005年ねん10月がつ26日にちには、小澤おざわとN響ひびきはNHK音楽おんがく祭さいで再ふたたび顔合かおあわせをした。マーカス・ロバーツ（英語えいご版ばん）を共演きょうえん者しゃに迎むかえ、「子供こどもたちのためのコンサート」と銘打めいうたれたこのコンサートの当初とうしょ発表はっぴょうされていた曲目きょくもくは、次つぎのような1時じ間あいだで収おさまるプログラムであった。

しかし、打うち合あわせが山場やまばを越こえた段階だんかいになっても、どういう曲目きょくもくにするかは第だい5番ばん以外いがいは決きまっていなかったようである。最終さいしゅう的てきには「『ラプソディ・イン・ブルー』は、よりジャズ的てきな要素ようそが強つよいが内容ないようは難解なんかいなピアノ協奏曲きょうそうきょくヘ調しらべに差さし替かえられ、それに伴ともなって出演しゅつえん者しゃもマーカス・ロバーツ単身たんしんではなく、トリオそろっての来日らいにちとなった。またNHKが千住せんじゅ明あきらに依頼いらいしていたNHK放送ほうそう80周年しゅうねん記念きねんの委嘱いしょく作品さくひん『日本にっぽん交響こうきょう詩し』の初演しょえんの場ばを探さがしていたこともあり、結局けっきょく以下いかのような2時じ間あいだを超こえるか超こえないかという、「子供こども向むけ」にしては盛もり沢山だくさんなプログラムになった。

ベートーヴェン：交響こうきょう曲きょく第だい5番ばん（全ぜん楽章がくしょう）
ガーシュウィン：ピアノ協奏曲きょうそうきょくヘ調しらべ
千住せんじゅ明あきら：『日本にっぽん交響こうきょう詩し』

コンサートは小澤おざわが時々ときどき演奏えんそうを止とめて曲きょくの解説かいせつをするスタイルであり、コンサートの最後さいごは『さくらさくら』の大だい合唱がっしょうで締しめくくられた。

著書ちょしょ

単たん著ちょ

『ボクの音楽おんがく武者むしゃ修行しゅぎょう』音楽之友社おんがくのともしゃ、1962年ねん。／新潮しんちょう文庫ぶんこ、2002年ねん。ISBN 4-10-1228-01-9
『小澤おざわ征爾せいじ　指揮しき者しゃを語かたる：音楽おんがくと表現ひょうげん』（有働うどう由美子ゆみこ・インタビュー、100年ねんインタビュー制作せいさく班はん編へん）PHP研究所けんきゅうじょ、2012年ねん。ISBN 978-4-569-78224-9
『おわらない音楽おんがく』日本経済新聞にほんけいざいしんぶん出版しゅっぱん社しゃ〈私わたしの履歴りれき書しょ〉、2014年ねん。ISBN 978-4-532-16933-6

共著きょうちょ・対談たいだん

『やわらかな心しんをもつ：ぼくたちふたりの運うん・鈍どん・根ね』（広こう中平なかひら祐ゆうとの対談たいだん）創そう世紀せいき、1977年ねん。／新潮しんちょう文庫ぶんこ、1984年ねん。ISBN 978-4-10-122804-4
『小沢おざわ征爾せいじ：対談たいだんと写真しゃしん』（小沢おざわ幹雄みきお編へん・木之下きのした晃あきら写真しゃしん）ぎょうせい、1980年ねん。／新潮しんちょう文庫ぶんこ、1982年ねん。ISBN 978-4-10-122802-0
『音楽おんがく』（武満たけみつ徹とおる共著きょうちょ）新潮社しんちょうしゃ、1981年ねん。／新潮しんちょう文庫ぶんこ、1984年ねん。ISBN 978-4-10-122803-7
『同おなじ年ねんに生うまれて：音楽おんがく、文学ぶんがくが僕ぼくらをつくった』（大江おおえ健三郎けんざぶろう共著きょうちょ）中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ、2001年ねん。／中公ちゅうこう文庫ぶんこ、2004年ねん。ISBN 978-4-12-204317-6
『理想りそうの室内しつないオーケストラとは!：水戸みと室内しつない管弦楽かんげんがく団だんでの実験じっけんと成就じょうじゅ』吉田よしだ秀和ひでかず共著きょうちょ（諸しょ石いし幸生こうせい・音楽之友社おんがくのともしゃ構成こうせい・編へん）音楽之友社おんがくのともしゃ、2002年ねん。ISBN 978-4-276-21109-4
『谷川たにがわ俊太郎しゅんたろうが聞きく武満たけみつ徹とおるの素顔すがお』（語かたり手て：小澤おざわ征爾せいじ・坂本さかもと龍一りゅういち・恩地おんち日出夫ひでおほか）小学館しょうがくかん、2006年ねん。ISBN 978-4-09-387657-5
『小澤おざわ征爾せいじさんと、音楽おんがくについて話はなしをする』（村上むらかみ春樹はるき共著きょうちょ）新潮社しんちょうしゃ、2011年ねん。／新潮しんちょう文庫ぶんこ、2014年ねん。ISBN 978-4-10-100166-1
『ピアノの巨人きょじん　豊増とよます昇のぼる：「ベルリン・フィルとの初はつ協演きょうえん」「バッハ全曲ぜんきょく連続れんぞく演奏えんそう」』（小澤おざわ幹雄みきお共きょう編著へんちょ）小澤おざわ昔むかしばなし研究所けんきゅうじょ、2015年ねん。ISBN 978-4-902875-72-0
『小澤おざわ征爾せいじ、兄弟きょうだいと語かたる：音楽おんがく、人間にんげん、ほんとうのこと』（小澤おざわ俊夫としお・小澤おざわ幹雄みきお共著きょうちょ）岩波書店いわなみしょてん、2022年ねん。ISBN 978-4-00-061525-9

写真しゃしん集しゅう

『素顔すがおの小沢おざわ征爾せいじ　写真しゃしん集しゅう』リンカーン・ラッセル撮影さつえい、キャロライン・スメドゥヴィク（wikidata）編へん、石井いしい史子ふみこ訳やく）ヤマハミュージックメディア、2000年ねん。ISBN 978-4-636-20738-5
『小澤おざわ征爾せいじ』（大窪おおくぼ道治みちはる・写真しゃしん）新潮社しんちょうしゃ、2016年ねん。ISBN 978-4-10-350211-1

主おもな録音ろくおん

レーベルは発売はつばい当時とうじのものである。

ラヴェル管弦楽かんげんがく全集ぜんしゅう（ボストン交響こうきょう楽団がくだん）（ドイツ・グラモフォン）
マーラー交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅう（ボストン交響こうきょう楽団がくだん）（フィリップス）
ブラームス交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅう（サイトウ・キネン・オーケストラ）（フィリップス）
ベートーヴェン交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅう（サイトウ・キネン・オーケストラ）（フィリップス）
春はるの祭典さいてん（シカゴ交響こうきょう楽団がくだん）（RCA）
カルメン全曲ぜんきょく（フランス国立こくりつ管弦楽かんげんがく団だん）（フィリップス）
プロコフィエフ交響曲こうきょうきょく全集ぜんしゅう（ベルリン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん）（ドイツ・グラモフォン）
ドヴォルザーク交響こうきょう曲きょく第だい8番ばん、交響こうきょう曲きょく第だい9番ばん（ウィーン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん）（フィリップス）

ボックス・セット

コンプリート RCA＆コロンビア・アルバム・コレクション (51 CD)
Seiji Ozawa Anniversary 2010 (Decca, 11 CD)
The Complete Deutsche Grammophon Recordings (50 CD)
The Complete Warner Recordings (25 CD)
小澤おざわ征爾せいじコレクション EMIレコーディングス (7 CD)
The Philips Years (50 CD)
German Masterworks (Decca, 15 CD)
小澤おざわ征爾せいじ70歳さい記念きねんBOX (71 CD&DVD)
ムター&小澤おざわ征爾せいじドイツ・グラモフォン録音ろくおん集しゅう (10 CD)

初演しょえん記録きろく

世界せかい初演しょえん

世間せけんが現代げんだい音楽おんがくを宣伝せんでんしたおかげで、小澤おざわも1980年代ねんだい前半ぜんはんまではこの手ての曲目きょくもくをよく振ふった。また、邦人ほうじん作曲さっきょく家かの作品さくひんも積極せっきょく的てきに振ふった。特とくに盟友めいゆうであった武満たけみつ徹とおるの楽曲がっきょくの初演しょえんは多おおく手てがけた。（各かく曲きょくの括弧かっこ内ないは初演しょえん時じのオーケストラ。)

武満たけみつ徹とおる『リング』
武満たけみつ徹とおる『弧こ(アーク)』第だい1部ぶ第だい2楽章がくしょう（読響よみきょう）
武満たけみつ徹とおる『ノヴェンバー・ステップス』（NYP）
武満たけみつ徹とおる『アステリズム』（TSO）
武満たけみつ徹とおる『クロッシング』（日にちフィル）
武満たけみつ徹とおる『カシオペア』（CSO）
武満たけみつ徹とおる『秋あき』（NJP）
武満たけみつ徹とおる『カトレーン』（NJP）
武満たけみつ徹とおる『夢ゆめ窓まど』（京きょう響ひびき）
武満たけみつ徹とおる『For Lenny’s Birthday』（BSO）
武満たけみつ徹とおる『フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム』（BSO）
武満たけみつ徹とおる『セレモニアル』（SKO）
武満たけみつ徹とおる『2つのシネ・パストラル』（NJP）
高橋たかはし悠ゆう治ち『オルフィカ』（日にちフィル）
篠原しのはら眞しん『ヴィジョンⅡ』（日にちフィル）
石井いしい真木まき『遭遇そうぐう第だい2番ばん』（日にちフィル）
一柳いちりゅう慧とし『アップ･トゥ･デイト･アプローズ』 (武満たけみつ徹とおると２人ふたりで指揮しき。)（日にちフィル）
黛まゆずみ敏郎としお『交響こうきょう詩し輪廻りんね(さむらーら)』（N響ひびき）
千住せんじゅ明あきら『日本にっぽん交響こうきょう詩し』（N響ひびき）
シュニトケ『チェロ協奏曲きょうそうきょく第だい2番ばん』（LSO）
デュティユー『時じの影かげ』（BSO）
デュティユー『時じの大だい時計とけい』（SKO）
ロジャー・セッションズ『管弦楽かんげんがくのための協奏曲きょうそうきょく（英語えいご版ばん）』（BSO）
ピーター・リーバーソン（英語えいご版ばん）『ピアノ協奏曲きょうそうきょく第だい1番ばん（英語えいご版ばん）』（BSO）
ジョージ・ウォーカー（英語えいご版ばん）『ライラックス（英語えいご版ばん）』（BSO）
ピーター・マックスウェル・デイヴィス『交響こうきょう曲きょく第だい2番ばん（英語えいご版ばん）』（BSO）
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ『交響こうきょう曲きょく第だい8番ばん（英語えいご版ばん）』（BSO）
ジョン・コリリアーノ『交響こうきょう曲きょく第だい2番ばん（英語えいご版ばん）』（BSO）
オットー・ヨアヒム（英語えいご版ばん）『コントラスツ』（CSO）
ガンサー・シュラー『レチタティーヴォとロンド』（CSO）
ルーカス・フォス『バロック変奏曲へんそうきょく』（CSO）
エルンスト・クルシェネク『遠景えんけい』（CSO）
ウィリアム・ルッソ（英語えいご版ばん）『ブルース・バンドとシンフォニー・オーケストラのための3つの小品しょうひん（英語えいご版ばん）』（CSO）
アラン・スタウト（英語えいご版ばん）『交響こうきょう曲きょく第だい2番ばん』（CSO）
エリオット・カーター『ファゴット協奏曲きょうそうきょく』（CSO）
アラン・ホヴァネス『日本にっぽんの版画はんがによる幻想曲げんそうきょく』（CSO）
クシシュトフ・ペンデレツキ『ラルゴ』（VPO）
レイモンド・マリー・シェーファー『香こうを聴きく』（京きょう響ひびき）
ジェルジ・リゲティ『サンフランシスコ・ポリフォニー』（SFS）
オリヴィエ・メシアン『アッシジの聖せいフランチェスコ』（パリ・オペラ座ざ）
アンジェイ・パヌフニク『交響こうきょう曲きょく第だい8番ばん』（BSO）
レナード・バーンスタイン『ディヴェルティメント（英語えいご版ばん）』（BSO）
トリスタン・ミュライユ『シヤージュ（wikidata）』（京きょう響ひびき^[84]）

出演しゅつえん番組ばんぐみ

オーケストラがやって来きた（TBS）
小沢おざわ征爾せいじの世界せかい（ニッポン放送にっぽんほうそう）

ドキュメンタリー

マエストロ、マエストロ！カラヤン（1999年ねん、フランス）
ロストロポーヴィチ　人生じんせいの祭典さいてん（2006年ねん、ロシア）
ジャズ喫茶きっさベイシー　Swiftyの譚詩たんし（2019年ねん、アップリンク）

エピソード

成城学園せいじょうがくえん中学ちゅうがく時代じだいには音楽おんがく部ぶに属ぞくし、のちのソニー会長かいちょう出井でい伸之のぶゆきらとカルテットを組くんでいた^[85]。小澤おざわはピアノ、出井でいはヴァイオリン担当たんとうであった^[85]。以来いらい、2人ふたりは仕事しごととプライベートの両面りょうめんで生涯しょうがいの友人ゆうじんとなった^[85]。
息子むすこの征せい悦えつをして、「（幼おさない頃ころ、早朝そうちょうにトイレのために起おきて）親父おやじの勉強べんきょう部屋へやの前まえを通とおると、もう勉強べんきょうしてるんですよね。あまりに集中しゅうちゅうしすぎて、自分じぶんが横よこに立たっても気きづかないくらい」^[86]とまで言いわれた。楽曲がっきょくについて予習よしゅうをする際さい、白地しろじの五線譜ごせんふに自みずから各かくパートを書かき写うつしている。
そして、征せい悦えつは、あるとき、欧米おうべいにおいて、自分じぶんのことは知しらない人ひとでも、父ちち・征爾せいじの名なは殆ほとんどの人ひとが知しっていることに驚おどろいたという。
1972年ねん6月がつ、日本にっぽん芸術げいじゅつ院いん会館かいかんで日本にっぽん芸術げいじゅつ院いん賞しょう授賞じゅしょう式しきに出席しゅっせきした際さい、経営けいえい危機ききだった日本にっぽんフィルについて「皇室こうしつが交響こうきょう楽団がくだんのパトロンになってほしい」と昭和しょうわ天皇てんのうに直訴じきそしたこともある^[87]。
ボストンレッドソックスファンで、ボストン在住ざいじゅう時じに本拠地ほんきょちフェンウェイパークに足あししげく通かよっていたところ、MLB関係かんけい者しゃから全ぜん球場きゅうじょうにフリーパスで入いれるメダルを授与じゅよされた。その後ご2012年ねん7月がつ11日にちに同どう球団きゅうだんから親善しんぜん大使たいしに任命にんめいされている^[88]^[89]。
ユージン・オーマンディはカラヤン、バーンスタインの時代じだいを継つぐ有望ゆうぼうな指揮しき者しゃとして、若わかき日ひの小澤おざわをアバド、メータ、マゼール、ケルテスとともに五指ごしに数かぞえていた^[90]。
没ぼっした時点じてんで、カラヤンと並ならびウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを生涯しょうがいで1度どだけ指揮しきした指揮しき者しゃとなった。