中村なかむら紘子ひろこ

中村なかむら 紘子ひろこ
出生しゅっしょう名めい	野村のむら 紘子ひろこ
生誕せいたん	(1944-07-25) 1944年ねん7月がつ25日にち 日本にっぽん、山梨やまなし県けん東山梨ひがしやまなし郡ぐん塩山しおやま町まち（現げん・甲州こうしゅう市し）
死没しぼつ	(2016-07-26) 2016年ねん7月がつ26日にち（72歳さい没ぼつ）
学歴がくれき	桐朋とうほう学園がくえん女子じょし高校こうこう音楽おんがく科か ジュリアード音楽おんがく院いん
ジャンル	クラシック
職業しょくぎょう	ピアニスト
担当たんとう楽器がっき	ピアノ
活動かつどう期間きかん	1959年ねん - 2016年ねん
公式こうしきサイト	http://nakamurahiroko.com/

中村なかむら 紘子ひろこ（なかむら ひろこ、1944年ねん7月がつ25日にち - 2016年ねん7月がつ26日にち）は、日本にっぽんのピアニスト。

1965年ねんのショパン国際こくさいピアノコンクールで、日本人にっぽんじんとして、田中たなか希代子きよこの1955年初ねんしょ入賞にゅうしょう以来いらい、10年ねんぶり2人にん目めの入賞にゅうしょう者しゃとして広ひろく知しられている。 夫おっとは小説しょうせつ家かの庄司しょうじ薫かおる。国内外こくないがいで行おこなった演奏えんそう会かいは3800回かいを越こえる。コンクールの審査しんさ員いんや著述ちょじゅつ業ぎょうでも活躍かつやくした。

人物じんぶつ

陸軍りくぐん少佐しょうさ野村のむら典夫のりおと中村なかむら曜子ようこ（中村なかむらは旧姓きゅうせい）の長女ちょうじょとして、疎開そかい先さきの山梨やまなし県けん東山梨ひがしやまなし郡ぐん塩山しおやま町まち（現げん・甲州こうしゅう市し）に生うまれ、東京とうきょう都と世田谷せたがや区く等々力とどりきで育そだつ。ただし戸籍こせき上じょうは曜子ようこの妹いもうととして入籍にゅうせきされている。

母はは曜子ようこは、印刷いんさつ会社かいしゃ経営けいえいを経へて、1967年ねん以降いこう、銀座ぎんざの画廊がろう「月光げっこう荘そう」の経営けいえいに参画さんかくし、ソ連それん美術びじゅつを扱あつかって成功せいこうを収おさめた。曜子ようこの主宰しゅさいする会員かいいん制せいサロン「サロン・ド・クレール」には小山こやま五郎ごろう、千せん宗室そうしつ、三島みしま由紀夫ゆきお、浅利あさり慶太けいた、相沢あいざわ英之ひでゆき、中曽根なかそね康弘やすひろ、石田いしだ博英ひろひで、円城寺えんじょうじ次郎じろう、嘉門かもん安雄やすお、谷村たにむら裕ひろし、永野ながの重雄しげおといった政財界せいざいかい人じんや文化ぶんか人じんが集たかっていたものの、多額たがくの負債ふさいを抱かかえて経営けいえい破綻はたんした。

「難民なんみんを助たすける会かい」や日本にっぽん赤十字せきじゅうじなどを通つうじてのボランティア活動かつどうにも、地雷じらい禁止きんしのチャリティコンサートの出演しゅつえんなどを通つうじて積極せっきょく的てきに参加さんかし、日本にっぽんにおける「対人たいじん地雷じらい廃絶はいぜつ」運動うんどうにも取とり組くんだ。小柄こがらで手ても小ちいさめでピアニスト向むきの体格たいかくではなかったが、体重たいじゅうの使つかい方かたや奏法そうほうを工夫くふうして外人がいじんに負まけないような音量おんりょうを引ひき出だしていた。パワーのある演奏えんそうを続つづけるために筋力きんりょくトレーニングなどを続つづけていたという。

来歴らいれき

渡米とべい以前いぜん

3歳さい半はんからピアノを習ならう。桐朋とうほう学園がくえんの「子供こどものための音楽おんがく教室きょうしつ」の第だい1期生きせいで、4歳さいから井口いぐち愛子あいこに師事しじした。同期どうきには小澤おざわ征爾せいじ、堤つつみ剛つよし、江戸えど京子きょうこなどがおり、この世代せだいがいわゆる桐朋とうほうの黄金おうごん時代じだいとされている。慶應義塾けいおうぎじゅく幼稚ようち舎しゃ在学ざいがく中ちゅう、1953年ねんから1954年ねん頃ころに両親りょうしんが離婚りこん。母ははに育そだてられる。1954年ねん、全日本ぜんにほん学生がくせい音楽おんがくコンクールピアノ部門ぶもん小学生しょうがくせいの部ぶで全国ぜんこく第だい1位い入賞にゅうしょう。慶應義塾けいおうぎじゅく中等ちゅうとう部ぶに進すすみ、1958年ねん、全日本ぜんにほん学生がくせい音楽おんがくコンクールピアノ部門ぶもん中学生ちゅうがくせいの部ぶで全国ぜんこく第だい1位い入賞にゅうしょう。1959年ねん、日本にっぽん音楽おんがくコンクールで第だい1位い特賞とくしょうを受賞じゅしょうした。1960年ねんに岩城いわき宏之ひろゆき指揮しきの東京とうきょうフィルハーモニー交響こうきょう楽団がくだんの演奏えんそう会かいにソリストとしてデビュー。同年どうねん、NHK交響こうきょう楽団がくだん初はつの世界せかいツアーのソリストに抜擢ばってきされた。その後ご、桐朋とうほう女子じょし高等こうとう学校がっこう音楽おんがく科かを中退ちゅうたいして渡米とべい、日本人にっぽんじんとして初はじめての全額ぜんがく奨学しょうがく金きんを獲得かくとくしてジュリアード音楽おんがく院いんに進すすみ、ロジーナ・レヴィーンに師事しじした。

ヨーロッパデビュー

1965年ねん、ズビグニェフ・ジェヴィエツキに師事しじしたのち、第だい7回かいショパン国際こくさいピアノコンクールで、第だい4位い入賞にゅうしょうと最年少さいねんしょう者しゃ賞しょうを併あわせて受賞じゅしょうした。この時ときの1位いはマルタ・アルゲリッチである。同どうコンクール「第だい7回かい1965年ねんの入賞にゅうしょう者しゃ一覧いちらん」 参照さんしょうのこと。これは、1955年ねんの第だい5回かいショパン国際こくさいピアノコンクールで、田中たなか希代子きよこが第だい10位いで日本人にっぽんじんとして初はつ入賞にゅうしょうして以来いらい、10年ねんぶり二に人にん目めの入賞にゅうしょうであった。中村なかむらは、受賞じゅしょう以降いこう、今日きょうに至いたるまで公式こうしきウェブページをはじめ様々さまざまな形かたちで、プロフィールに『ショパン・コンクールで日本人にっぽんじん初はつの入賞にゅうしょう 』と自己じこ紹介しょうかい・自己じこPRをしているが、これは正確せいかくではない。同どうコンクール「第だい5回かい1955年ねんの入賞にゅうしょう者しゃ一覧いちらん」 参照さんしょうのこと。1974年ねん9月に芥川賞あくたがわしょう作家さっか庄司しょうじ薫かおると結婚けっこんした。演奏えんそう旅行りょこうで家いえを空あけることの多おおい中村なかむらの愛あい猫ねこを庄司しょうじが預あずかるなどするうちに交際こうさい、結婚けっこんに至いたった。(「アルゼンチンまでもぐりたい/中村なかむら紘子ひろこ著ちょ/文春ぶんしゅん文庫ぶんこ」には、庄司しょうじ薫かおるの「赤あか頭巾ずきんちゃん気きをつけて」の中なかに中村なかむら紘子ひろこの名前なまえがあると聞きき本ほんを読よんだとき、「カバーについていた小ちいさな写真しゃしんを眺ながめながら、あ、私わたしこの人ひとと結婚けっこんするな、って確信かくしんしちゃった」とあり、その後ご、自分じぶんからモーションをかけたことを書かいている。）

国際こくさいコンクール

ショパンコンクール入賞にゅうしょう以後いご、世界せかい各国かっこくで演奏えんそう活動かつどうを続つづける一方いっぽうで、ショパン、チャイコフスキー、アルトゥール・ルービンシュタイン、ブゾーニをはじめとする様々さまざまな国際こくさいコンクールの審査しんさ員いんを務つとめる。

日本にっぽんでは第だい3回かい浜松はままつ国際こくさいピアノコンクールから審査しんさ委員いいん長ちょうを務つとめ（第だい1回かいは小林こばやし仁ひとし、第だい2回かいは安川やすかわ加寿子かずこ）、コンクール創立そうりつ10年ねんたらずで国際こくさいピアノコンクール連盟れんめいに加盟かめいさせるなど一いち級きゅうレベルの国際こくさいピアノコンクールにまで持もち上あげ、若わかいピアニストの育成いくせいにも力ちからを入いれた。浜松はままつ国際こくさいピアノコンクールのように、予選よせん落おちのコンテスタントが自由じゆうに日本にっぽんの小学校しょうがっこうを回まわれるコンクールは、日本にっぽんでは前例ぜんれいのないことであった。

ノンフィクション作家さっか・エッセイストとしての顔かおも持もち、1989年ねんには『チャイコフスキー・コンクール』で大宅おおたく壮一そういちノンフィクション賞しょうを受賞じゅしょうした。2005年ねん、エクソンモービル音楽おんがく賞しょう受章じゅしょう。2008年ねん、紫綬褒章しじゅほうしょう受章じゅしょう。

晩年ばんねん

2014年ねん、腸閉塞ちょうへいそくの腹腔ふくこう鏡きょう手術しゅじゅつを受うけた際さいに、大腸だいちょうがんが見みつかる。治療ちりょうを続つづけ、2015年ねん3月がつに復帰ふっきした。2015年ねん8月がつ、大腸だいちょうがん治療ちりょうに専念せんねんするため、再ふたたび演奏えんそう活動かつどうを休止きゅうし。当初とうしょは11月以降いこうの復帰ふっきを目指めざしていたが、2016年ねん3月がつまで活動かつどう休止きゅうしが延長えんちょうされた。 2016年ねん4月がつ30日にちミューザ川崎かわさきシンフォニーホールおよび同年どうねん5月がつ4日にちオリンパスホール八王子はちおうじで開催かいさいされたコンサートで復帰ふっきした。この時ときのライブ録音ろくおんはCD「中村なかむら紘子ひろこ フォーエバー」となって発売はつばいされた。5月8日にち、洲本すもと市し文化ぶんか体育館たいいくかん文化ぶんかホールでのリサイタルが生前せいぜん最後さいごの公演こうえんとなった。このホールのスタンウェイは中村なかむらが選定せんていしたものであり、ピアノの内側うちがわには中村なかむらのサインが残のこされている。2016年ねん7月がつ26日にち、大腸だいちょうがんのため永眠えいみん。72歳さい没ぼつ。72歳さいの誕生たんじょう日びを、夫おっとと自宅じたくで祝いわった翌日よくじつだった。夫おっとによれば、中村なかむらが死去しきょ前日ぜんじつにもモーツァルトからラフマニノフまでの曲きょくの音色ねいろに新あたらしい輝かがやきを出だす奏法そうほうを試ためしたいと興奮こうふんして語かたっていたという。旭日きょくじつ中ちゅう綬章じゅしょう追贈ついぞう。2016年ねん9月がつ12日にちにお別わかれ会かいがサントリーホールの大だいホールで関係かんけい者しゃ約やく850名めいが出席しゅっせきして執とり行おこなわれ、その中なかで東京とうきょう交響こうきょう楽団がくだん等ひとしによる献けんじ奏そうも行おこなわれた。

芸風げいふう

ショパン弾びきであるかのようにとらえられているが、さいたま芸術げいじゅつ劇場げきじょうにおけるJ.S.バッハの平均へいきん律りつクラヴァーア曲きょく集しゅう第だい2巻かんの全曲ぜんきょく演奏えんそう会かいやパルティータのCD録音ろくおん（第だい1番ばん、第だい2番ばん）をはじめとするバロック音楽おんがくから、矢代やしろ秋雄あきお、三善みよし晃あきら、一柳いちりゅう慧とし、外山とやま雄三ゆうぞうのピアノ協奏曲きょうそうきょくを含ふくむ現代げんだい日本にっぽんの作品さくひんまで幅広はばひろいレパートリーを持もち、晩年ばんねん（2014年ねん）には2007年ねん以来いらい2度目どめとなるベートーヴェンのピアノ協奏曲きょうそうきょく全ぜん5曲きょくの通つう演えんじも計画けいかくされていた。

評価ひょうか

音楽おんがく評論ひょうろん家かのハロルド・C・ショーンバーグは、著書ちょしょ『ピアノ音楽おんがくの巨匠きょしょうたち』（「The Great Pianists」Random House 1987）のなかで中村なかむらの演奏えんそうについて「絢爛けんらんたる技巧ぎこう」と「溢あふれる情感じょうかん」、そして特とくに「ロマンティックな音楽おんがくへの親和力しんわりょく」と評ひょうしている。

レパートリー

古典こてん派はおよびロマン派は中心ちゅうしんではあるが、矢代やしろ秋雄あきおのピアノ協奏曲きょうそうきょくの初演しょえんを行おこなった他ほか、三善みよし晃あきらや武満たけみつ徹とおるといった日本にっぽんの現代げんだい作曲さっきょく家かの作品さくひんも多おおく採とり上あげている。

エピソード

1999年ねん頃ころ、母校ぼこうである慶應義塾けいおうぎじゅく中等ちゅうとう部ぶから招まねかれてリサイタルを行おこなった際さい、演奏えんそうをはじめてもいっこうにおしゃべりを止とめない生徒せいとたちのあまりの態度たいどの悪わるさに演奏えんそうを中断ちゅうだんし、静しずかにしなさい、と叱責しっせきした。しかし生徒せいとの方ほうはそれで静しずかになったものの、保護ほご者しゃのおしゃべりはやまなかったという。また演奏えんそう終了しゅうりょう後ご、楽屋がくやに挨拶あいさつに来きた校長こうちょうから「よくぞ言いってくださいました」と声こえをかけられ、本来ほんらいおしゃべりをやめさせるのは校長こうちょう先生せんせいの仕事しごとだろうに、世よも末すえだ、と慨嘆がいたんしたという。

出演しゅつえん歴れき

テレビ

• ピアノとともに (1983年ねん NHK教育きょういく)
• N響ひびきアワー（NHK教育きょういく、1993年ねん4月がつ - 1996年ねん3月がつ、司会しかい者しゃとして出演しゅつえん）
• 題名だいめいのない音楽おんがく会かい21 （テレビ朝日てれびあさひ系けい、2007年ねん10月がつ7日にち・14日にち）
• 芸術げいじゅつ劇場げきじょう （NHK教育きょういく、2008年ねん1月がつ4日にち、海野うみの義雄よしお・堤つつみ剛つよし・中村なかむら紘子ひろこトリオ26年ねんぶりの演奏えんそう会かい）
• 辰たつ徳とくスペシャル

テレビコマーシャル

• ネスカフェ ゴールドブレンド赤あかラベル
• ジョンソン グレード
• ハウス食品はうすしょくひん ザ・カリー（この商品しょうひんのコマーシャルでは、指揮しき者しゃの小林こばやし研一郎けんいちろうやコーラスグループのサーカス、ヴァイオリニストのヴァディム・レーピンと共演きょうえんしたこともあった）

そのほか

• アムネスティ・チャリティ・コンサートを東京とうきょうで1983年ねん6月がつ17日にち開催かいさい。

著作ちょさく

• 『私わたしの猫ねこものがたり』集英社しゅうえいしゃ、1983　のち文庫ぶんこ
• 『チャイコフスキー・コンクール　ピアニストが聴きく現代げんだい』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ、1988　のち文庫ぶんこ、新潮しんちょう文庫ぶんこ　
• 『ピアニストという蛮族ばんぞくがいる』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、1992　のち文庫ぶんこ、中公ちゅうこう文庫ぶんこ　
• 『アルゼンチンまでもぐりたい』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、1994　のち文庫ぶんこ、中公ちゅうこう文庫ぶんこ　
• 『どこか古典こてん派は（クラシック）』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ、1999　のち文庫ぶんこ
• 『国際こくさいコンクールの光ひかりと影かげ』日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい (NHK人間にんげん講座こうざ) 2003 　
• 『コンクールでお会あいしましょう　名演めいえんに飽あきた時代じだいの原点げんてん』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ、2003　のち文庫ぶんこ
• 『ピアニストだって冒険ぼうけんする』新潮社しんちょうしゃ、2017

関連かんれん項目こうもく

• ショパン国際こくさいピアノコンクール
• チャイコフスキー国際こくさいコンクール
• 浜松はままつ国際こくさいピアノコンクール

外部がいぶリンク

• 中村なかむら紘子ひろこ公式こうしきサイト - 中村なかむら紘子ひろこ公式こうしきサイト
• 中村なかむら紘子ひろこ　ピアノ　プロフィール　ジャパン・アーツ - 所属しょぞく事務所じむしょジャパン・アーツ公式こうしきサイト内ない
• 中村なかむら紘子ひろこ - NHK人物じんぶつ録ろく