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ラドン - Wikipedia

ラドン

原子げんし番号ばんごう86の元素げんそ
Radonから転送てんそう

ラドンえい: radon [ˈreɪdɒn]どく: Radon [ˈraːdon, raˈdoːn])は、原子げんし番号ばんごう86の元素げんそ元素げんそ記号きごうRn

アスタチン ラドン フランシウム
Xe

Rn

Og
外見がいけん
無色むしょく気体きたい
一般いっぱん特性とくせい
名称めいしょう, 記号きごう, 番号ばんごう ラドン, Rn, 86
分類ぶんるい ガス
ぞく, 周期しゅうき, ブロック 18, 6, p
原子げんしりょう (222)
電子でんし配置はいち [Xe] 4f14 5d10 6s2 6p6
電子でんしから 2, 8, 18, 32, 18, 8(画像がぞう
物理ぶつり特性とくせい
そう 気体きたい
密度みつど (0 °C, 101.325 kPa)
9.73 g/L
融点ゆうてん 202.0 K, −71.15 °C, −96.07 °F
沸点ふってん 211.3 K, −61.85 °C, −79.1 °F
臨界りんかいてん 377 K, 6.28 MPa
融解ゆうかいねつ 3.247 kJ/mol
蒸発じょうはつねつ 18.10 kJ/mol
熱容量ねつようりょう (25 °C) 5 R/2 = 20.786 J/(mol·K)
蒸気じょうきあつ
圧力あつりょく (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度おんど (K) 110 121 134 152 176 211
原子げんし特性とくせい
酸化さんかすう 2
電気でんき陰性いんせい 2.2(ポーリングの
イオン化いおんかエネルギー 1st: 1037 kJ/mol
共有きょうゆう結合けつごう半径はんけい 150 pm
ファンデルワールス半径はんけい 220 pm
その
結晶けっしょう構造こうぞう めんこころ立方りっぽう格子こうし構造こうぞう
磁性じせい はん磁性じせい
ねつ伝導でんどうりつ (300 K) 3.61 m W/(m⋅K)
CAS登録とうろく番号ばんごう 10043-92-2
おも同位どういたい
詳細しょうさいラドンの同位どういたい参照さんしょう
同位どういたい NA 半減はんげん DM DE (MeV) DP
210Rn syn 2.4 h αあるふぁ 6.404 206Po
211Rn syn 14.6 h εいぷしろん 2.892 211At
αあるふぁ 5.965 207Po
222Rn trace 3.8235 d αあるふぁ 5.590 218Po
224Rn syn 1.8 h βべーた 0.8 224Fr

ラジウムせっした大気たいき放射ほうしゃせいつということはキュリー夫妻ふさい発見はっけんしていたが、1900ねんになって、ドイツ物理ぶつり学者がくしゃフリードリヒ・エルンスト・ドルン元素げんそであることを発見はっけんし、アーネスト・ラザフォードフレデリック・ソディトリウムから発見はっけんしていた放射ほうしゃせい気体きたい同一どういつであることをしめした[1]

ドルンはこの元素げんそを「放射ほうしゃ」を意味いみする “emanation” とんだが、ラザフォードは “radium emanation” とび、ウィリアム・ラムゼーラテン語らてんごで「ひかる」を意味いみする “nitens” にちなみ「ニトン (Niton)」とんだ。結局けっきょく1923ねんになってラジウムからまれる気体きたいという意味いみから、ラテン語らてんごradius語源ごげんとする “radon” とすることが化学かがくしゃたちの国際こくさい機関きかんにより決定けっていした。

性質せいしつ

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1908ねんアーネスト・ラザフォードによって撮影さつえいされたラドンの放出ほうしゅつスペクトル。スペクトルのよこしるされた数字すうじ波長はちょうしめす。中央ちゅうおうのスペクトルがラドンのものであり、外側そとがわの2つのスペクトルは波長はちょう校正こうせいするために添加てんかされたヘリウムのスペクトルである。

物理ぶつりてき性質せいしつ

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ラドンは無味むみ無臭むしゅう無色むしょく気体きたいであるため、人間にんげん知覚ちかくすることはできない。標準ひょうじゅん状態じょうたいではたん原子げんし分子ぶんしとして存在そんざいしており、その密度みつどは9.73 kg/m3海面かいめんにおける大気たいき密度みつど1.217 kg/m3のおよそ8ばいである[2][3]標準ひょうじゅん状態じょうたいでは無色むしょくであるが、-71.15 °C(202 K)の融点ゆうてん以下いかまで冷却れいきゃくして固体こたい状態じょうたいになると黄色おうしょくからあか橙色だいだいいろあざやかな放射線ほうしゃせんルミネセンス英語えいごばんはっする[4]。また、結露けつろして液体えきたい状態じょうたいになると青色あおいろから薄紫うすむらさきしょく発光はっこうする[5]みずたいするラドンの溶解ようかいガス元素げんそ比較ひかくして、キセノンやく2ばいクリプトンやく4ばいアルゴンやく8ばいネオンヘリウムやく20ばいである。有機ゆうき溶剤ようざいやプラスチックにたいするラドンの溶解ようかいみずたいするそれよりもやく50ばいおおきい。

化学かがくてき性質せいしつ

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ラドンはあたい電子でんしがゼロであるガス元素げんそぞくしている。そのような元素げんそさいそとから電子でんし閉殻であることに起因きいんして電子でんし最低さいていエネルギーじゅん形成けいせいし、安定あんていする。そのため、ラドンはだい部分ぶぶん一般いっぱんてき化学かがく反応はんのうたとえば燃焼ねんしょうなど)にたいして活性かっせいである[6]さいそとから電子でんし1つをはなすために必要ひつようだいいちイオン化いおんかエネルギーは1037 kJ/mol[7]ガス元素げんそ周期しゅうきひょううえにおいて原子げんし番号ばんごうおおきくなるほど電気でんき陰性いんせいおおきくなる周期しゅうきてき傾向けいこうがみられるため、ガス元素げんそなかもっと原子げんし番号ばんごうおおきなラドンはガス元素げんそなかでは反応はんのうせいたかい。初期しょき研究けんきゅうにおいて、ラドンのみず和物あえもの安定あんていせい塩素えんそ (Cl2)もしくは二酸化にさんか硫黄いおう (SO2)とどう程度ていどであり、硫化りゅうか水素すいそ (H2S)のそれよりはかなりたかいと結論けつろんけられている[8]

研究けんきゅうコストのたかさと放射能ほうしゃのうのために、ラドンの実験じっけんてき化学かがく研究けんきゅうはあまりおこなわれてこなかった。そのため、ラドン化合かごうぶつ報告ほうこくはフッ化物ばけもの酸化さんかぶつかんするわずかな報告ほうこくがあるのみである。ラドンは2、3の強力きょうりょく酸化さんかざいによって酸化さんかすることができ、たとえばフッ素ふっそによってフッラドン形成けいせいされる[9][10]フッラドンは250 °C以上いじょう温度おんどでそれぞれの元素げんそ分解ぶんかいする。てい揮発きはつせい物質ぶっしつでありRnF2組成そせいつとかんがえられているが、ラドンの半減はんげんみじかさと放射能ほうしゃのうのために詳細しょうさい性質せいしつ研究けんきゅうすることはできていない。フッラドン分子ぶんし理論りろんてき研究けんきゅうによれば、Rn-F結合けつごう結合けつごう距離きょりは2.08 Åであり、フッキセノンよりはねつ力学りきがくてき安定あんていであると予測よそくされている[11]。よりフッ素ふっそすうおおいRnF4およびRnF6存在そんざい主張しゅちょうされており[12]、それらは安定あんてい物質ぶっしつであると計算けいさんされているが[13]実際じっさい合成ごうせいされたかどうかはうたがわしい[12]たとえば、はち面体めんてい分子ぶんし構造こうぞうるRnF6は、フッ化物ばけものよりもさらひくいエンタルピーをゆうすると予測よそくされている[14]。[ RnF ]+以下いか反応はんのうによって形成けいせいされるとかんがえられている[15]

 

酸化さんかラドンは数少かずすくない報告ほうこくされているラドン化合かごうぶつひとつであり[16]さん酸化さんかぶつのみが確認かくにんされている[12]。カルボニルラドン (RnCO)は安定あんてい化合かごうぶつであり、直線ちょくせんがた分子ぶんし構造こうぞうると予測よそくされている[17]原子げんし分子ぶんしであるRn2およびRnXeはスピン軌道きどう相互そうご作用さようによっていちじるしく安定あんていすることがかっている[18]フラーレンかごなかにラドンを内包ないほうさせたものは腫瘍しゅようたいする薬剤やくざいとして提案ていあんされている[19]おなガス元素げんそであるキセノンにXe (VIII)が存在そんざいしているにもかかわらず、Rn (VIII)の存在そんざい主張しゅちょうされていない。これは、XeF8ねつ力学りきがくてき不安定ふあんていであることから、RnF8さら不安定ふあんていであるはずだとかんがえられているためである。もっと安定あんていなRn (VIII)化合かごうぶつラドンさんバリウム (Ba2RnO6)であると予測よそくされており、それはキセノンさんバリウム (Ba2XeO6)に類似るいじしているとされる[13]。Rn (VIII)の不安定ふあんていさは、活性かっせい電子でんしたい効果こうかとしてられている6s軌道きどう相対そうたいてき安定あんていせいによるものである[13]

同位どういたい

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もっと半減はんげんなが222Rn は 238Uはじまりとするウラン系列けいれつぞくし、起源きげん238U(半減はんげん4.468×109とし) → 234U(2.455×105とし) → 230Th(7.538×104とし) → 226Ra(1600ねん) → 222Rn(3.8にち)である。

222Rn の壊変生成せいせいぶつすうじゅうぶん半減はんげんこうエネルギーのα線あるふぁせん3ほんおよβ線べーたせん2ほん放射線ほうしゃせんして 210Pbやく22ねん)にいたる。

ラドンの同位どういたいにはとく名前なまえいているものがある。222Rn を狭義きょうぎにラドン、220Rn をトロン(thoron、記号きごう Tn)、219Rn をアクチノン(actinon、記号きごう An)とぶ。ラジウムトリウムアクチニウムの壊変によってられることに由来ゆらいし、それぞれべつ気体きたいかんがえられていたころ名残なごりである。

なお、222Rn は WHO下部かぶ機関きかん IARC より発癌はつがんせいがあると (Type1) 勧告かんこくされており、土壌どじょうふくまれるラドンが地下ちかしつ蓄積ちくせきすることなど、危険きけんせい指摘してきされている。

発生はっせい

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花崗岩かこうがん一種いっしゅであるヘルシンカイトフィンランドばん、ラドン含有がんゆうりつたか鉱石こうせきひと

ラドンの上位じょうい核種かくしゅであるウラン地下ちか深部しんぶにあってマグマ上昇じょうしょうとともに地表ちひょうにもたらされる。マグマが比較的ひかくてきゆっくりとかたまると、花崗岩かこうがんられるように長石ちょうせき石英せきえい雲母うんも結晶けっしょうおおきく成長せいちょうする。その結果けっかとして、ウランなど元素げんそ成分せいぶん結晶けっしょうあいだ隙間すきまいやられる。風化ふうかによって結晶けっしょうあいだのウランが岩石がんせきからはなたれ、河川かせん上流じょうりゅうなど酸化さんか環境かんきょうみずけやすいウラニル錯体さくたいとしてみずによって運搬うんぱんされる。水中すいちゅうウランは扇状地せんじょうち断層だんそうなど河川かせんすい地下水ちかすいしやすい還元かんげん環境かんきょう堆積たいせきそうしゅうかえし、ウラン、ラジウム、ラドンの濃度のうどたか地層ちそう形成けいせいされる。

放射線ほうしゃせんみなもと放射ほうしゃせい同位どういたい)として利用りようされていたが、現在げんざいのもの(コバルトストロンチウムなど)にえられている。

地下水ちかすいちゅうのラドンの調査ちょうさは、かえすことの困難こんなん地下ちか構造こうぞうじょう重要じゅうようである。ラドンの拡散かくさん速度そくどおよ地下水ちかすい垂直すいちょく流動りゅうどう速度そくど比較ひかくして、ラドン半減はんげんみじかさから地層ちそう単位たんいことなるラドン濃度のうど反映はんえいしやすい。みじかいスケールとしての、みずトレーサーとしての利用りようがある。地震じしん先行せんこう現象げんしょうとしての地下水ちかすいラドン濃度のうど変化へんか[20]は、1970年代ねんだいより数多かずおお報告ほうこくされているが、その機構きこうはまだ十分じゅうぶん解明かいめいされてはいない。

保健ほけん衛生えいせいめんからは、ラドンは気体きたいとして呼吸こきゅうまれ、そのむすめ核種かくしゅはい付着ふちゃくすることでウラン鉱山こうざん労働ろうどうしゃなどに放射線ほうしゃせん障害しょうがいこしやすい。公衆こうしゅうはつガンせいリスクとしては、石造いしづくりのいえ地下ちかしつなどの空気くうきちゅうラドン濃度のうど調査ちょうさ重要じゅうようである。

ラドンによる体内たいない被曝ひばくりょうは、日本にっぽん平均へいきん年間ねんかん0.4 mSv世界せかい平均へいきん年間ねんかん1.28 mSvとわれている[21][22][23]

ラドン温泉おんせん

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温泉おんせん含有がんゆう成分せいぶんとしてラドンをふくむものは放射能ほうしゃのういずみとして分類ぶんるいされていたが、現在げんざい単純たんじゅんじゃく放射能ほうしゃのういずみ単純たんじゅん放射能ほうしゃのういずみ、含弱放射能ほうしゃのう-〇-〇いずみまたは含放射能ほうしゃのう-〇-〇いずみといういずみただしめいもちいる[24]。ラドンおよびそれ以後いご各種かくしゅ放射ほうしゃせい同位どういたいはな放射線ほうしゃせん健康けんこう寄与きよするとのかんがかたホルミシス効果こうか)があり、痛風つうふう血圧けつあつ降下こうか循環じゅんかん障害しょうがい改善かいぜん悪性あくせい腫瘍しゅよう成長せいちょう阻害そがいするなどの効能こうのうしんじられている。

放射能ほうしゃのういずみ(含放射能ほうしゃのう-ラドンいずみとは、温泉おんせんすい1kgちゅうにラドンが74Bq以上いじょうのもの、またはラジウムが1 × 10-8mg以上いじょう(10pg以上いじょうふくまれるものである[24]。また、温泉おんせんすい1kgちゅうにラドンの濃度のうどが30×10-10Ci = 111Bq以上いじょう 8.25マッヘ単位たんい以上いじょうのものを療養りょうよういずみという[24]。オーストリアや日本にっぽん、ロシアをはじめ、世界中せかいじゅうに、療養りょうようのために活用かつようされるラドンいずみやラドン洞窟どうくつ存在そんざいする。

1940ねんオーストリアバート・ガスタインのタウエルンさんでラドンいずみ発見はっけんされ、1950年代ねんだいからインスブルック大学だいがく医学部いがくぶザルツブルク大学だいがく英語えいごばん理学部りがくぶ共同きょうどう研究けんきゅうで、ラドン濃度のうど治療ちりょう効果こうかとの関連かんれんせいについて研究けんきゅう開始かいしされた[25]研究けんきゅう結果けっか臨床りんしょう医学いがくてき有効ゆうこうである病気びょうきには、強直きょうちょくせい脊椎せきついえん(ベヒテレフびょう)、リュウマチせい慢性まんせい多発たはつせい関節かんせつえん変形へんけいせい関節かんせつしょう喘息ぜんそく、アトピーせい皮膚ひふえんなどがげられ、ラドン (222Rn) 放射能ほうしゃのうレベルが300 - 3000 Bq/Lとたか世界せかいすべての温泉おんせんでは、適応症てきおうしょうのリストが経験けいけんてきおなじようなものになるとされる。バート・ガスタインのラドンいずみではラドン222の濃度のうどが110 Bq/L以上いじょう放射能ほうしゃのう療養りょうよういずみばれ、年間ねんかんやく10,000にん患者かんじゃおとずれる。また、バート・ガスタインの近郊きんこうには、ガスタイン療養りょうようトンネルがあり、「トンネル療法りょうほう」が実践じっせんされている[25]治療ちりょう方式ほうしきは、電動でんどうトロッコでトンネルないはいり、やく2.5 kmおくにある4かしょ治療ちりょうステーションで一定いってい時間じかんベッドに臥床がしょうする。ラドン濃度のうどは166,500 Bq/m2で、トンネルない温度おんどは37 - 41.5 °C湿度しつどは70 - 95%である。標高ひょうこうは1,888 - 2,238 m。

日本にっぽん国内こくないでは三朝みささ温泉おんせん鳥取とっとりけん三朝みささまち)、有馬ありま温泉おんせん兵庫ひょうごけん神戸こうべ[26]るりけい温泉おんせん京都きょうとみなみ[27]湯来ゆき温泉おんせん広島ひろしま佐伯さいき)などがラジウム温泉おんせんとしてられている[28]とく三朝みささ温泉おんせん療養りょうよういずみとしてふるくから様々さまざま患者かんじゃれている[29]

屋内おくないラドンの危険きけんせい

編集へんしゅう

ラドンは喫煙きつえん肺癌はいがんのリスク要因よういんとされ、これまでに、住居じゅうきょないにおけるラドン濃度のうど肺癌はいがんリスクの関係かんけいについて多数たすう研究けんきゅうおこなわれている。それらの研究けんきゅう統合とうごうしたメタアナリシス結果けっかによれば、屋内おくないラドンによるリスクは線量せんりょう依存いぞんし、時間じかん加重かじゅう平均へいきん暴露ばくろとして150 Bq/m3あたり24%の肺癌はいがんリスクの増加ぞうかになることがわかった[30]同様どうようだい規模きぼ症例しょうれいすうもちいた解析かいせきとして、欧州おうしゅう9ヶ国かこくの13の症例しょうれい対照たいしょう研究けんきゅう対象たいしょうにしたプール解析かいせき結果けっかは、線量せんりょう応答おうとう反応はんのうLNT モデルにしたがっており、統計とうけいがくてき有意ゆういせいで、100 Bq/m3(ランダム誤差ごさ調整ちょうせいした暴露ばくろ推定すいてい)あたり16%の肺癌はいがんリスクの増加ぞうかしめ[31]組織そしきがたくらべてしょう細胞さいぼう肺癌はいがんのリスクがたかく、ラドンに暴露ばくろした鉱夫こうふしょう細胞さいぼうがん疫学えきがくてき研究けんきゅうとも矛盾むじゅんしない結果けっかられた[32]

ラドン濃度のうどから被曝ひばく線量せんりょうへの換算かんさん

編集へんしゅう

屋内おくないラドンの吸入きゅうにゅうによる被曝ひばく線量せんりょう D [mSv] は、UNSCEAR によりつぎしきあらわされる[33][34]

D = QKTF

Q空気くうきちゅうのラドン濃度のうど [Bq/m3]、K線量せんりょう換算かんさん係数けいすうで、は9×10−6 mSv/(Bq h /m3) がもちいられる。T所在しょざい期間きかんで、年間ねんかん逗留とうりゅうりつを0.8と仮定かていすると、0.8×8760 h/としF はラドン壊変生成せいせい核種かくしゅのラドンにたいするポテンシャルアルファエネルギーので、屋内おくないとして0.4がもちいられる。

これらのもちいて計算けいさんすると、屋内おくないラドン濃度のうど世界せかい算術さんじゅつ平均へいきんは40 Bq/m3なので、年間ねんかん被曝ひばく線量せんりょう D は、(40 Bq/m3) × (9×10−6 mSv/(Bq h/m3)) × (0.8×8760 h/とし) × 0.4 ≒ 1 mSv/とし見積みつもられる。日本にっぽん屋内おくないラドン濃度のうど算術さんじゅつ平均へいきんは15.5 Bq/m3で、年間ねんかん被曝ひばく線量せんりょう D は0.39 mSv/としとなる。100 Bq/m3なら、2.5 mSv/とし換算かんさんされる。

WHOによる屋内おくないラドンの危険きけんせいかんする問題もんだい提起ていき

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2005ねん6がつ世界せかい保健ほけん機関きかん (WHO) は、ラドンは喫煙きつえん肺癌はいがんのリスク要因よういんとし、これまでに、住居じゅうきょないにおけるラドン濃度のうど肺癌はいがんリスクの関係かんけいについて多数たすう研究けんきゅうおこなわれているとして、放射ほうしゃせいであるラドンが肺癌はいがん重要じゅうよう原因げんいんであることを警告けいこくした[35][36]

どう機関きかんは、各国かっこく肺癌はいがん発生はっせいりつ低減ていげんさせる活動かつどう一部いちぶとして、かく地域ちいきにおけるラドンガスに関連かんれんする健康けんこう被害ひがい軽減けいげん支援しえんするためのはつ国際こくさいラドンプロジェクトを2005ねん発足ほっそくさせ[35]、2009ねんにはその成果せいかを「屋内おくないラドンにかんするWTOハンドブック」として公表こうひょうした[37]

2004ねん欧州おうしゅう疫学えきがく調査ちょうさ基礎きそデータを解析かいせきした結果けっか、100 Bq/m3レベルというラドン濃度のうど環境かんきょうにおいてもはいがんのリスクが有意ゆういたかく、その線量せんりょう-効果こうか関係かんけいは、ばつしで直線ちょくせんてき関係かんけい(どれほど微量びりょう線量せんりょうであっても、それに見合みあったぶんだけはつがんかくりつ上昇じょうしょうする)にあるという論文ろんぶん発表はっぴょうされた[38][39]

2005ねん8がつ、WHO は、こうねつ放射線ほうしゃせんとラドンにかんするだい6かい国際こくさい会議かいぎ (6th lnt. Conf. on High Levels of Natural Radiation and Radon Areas) を開催かいさいし、RRR (Residential Radon Risk) にかんするラドンプロジェクトを開始かいしした。200 - 400Bq/m3の室内しつないラドン濃度のうど限界げんかい濃度のうどあるいは基準きじゅん濃度のうどとして許容きょようしているくに多数たすうである[40]

アメリカの環境かんきょう保護ほごちょう (EPA) の見解けんかいによると、ラドンに安全あんぜんりょうはなく、すこしの被曝ひばくでもがんになる危険きけんせいをもたらすものとされ、米国べいこく科学かがくアカデミー毎年まいとし15,000から22,000にんのアメリカじん屋内おくないのラドンが関係かんけいする肺癌はいがんによっていのちとしていると推定すいていしている[41][42]

ラドンの化合かごうぶつ

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脚注きゃくちゅう

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  4. ^ Radon”. Jefferson Lab. 2008ねん6がつ26にち閲覧えつらん
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  31. ^ Sarah Darby et al. (2004). “Radon in homes and risk of lung cancer: collaborative analysis of individual data from 13 European case-control studies”. British medical journal 330 (7485): 223-227. doi:10.1136/bmj.38308.477650.63. http://www.bmj.com/content/330/7485/223.full. "This corresponds to an increase of 16% (5% to 31%) per 100 Bq/m3 increase in usual radon—that is, after correction for the dilution caused by random uncertainties in measuring radon concentrations. The dose-response relation seemed to be linear with no threshold and remained significant (P = 0.04) in analyses limited to individuals from homes with measured radon < 200 Bq/m3." 
  32. ^ Sarah Darby et al. (2004). “Radon in homes and risk of lung cancer: collaborative analysis of individual data from 13 European case-control studies”. British medical journal 330 (7485): 223-227. doi:10.1136/bmj.38308.477650.63. http://www.bmj.com/content/330/7485/223.full. "The increase in risk per 100 Bq/m3 measured radon, however, was 31.2% (12.8% to 60.6%) for small cell lung cancer, while for all other histological types combined it was 2.6% (< 0% to 10.2%) (P = 0.03 for difference), in accordance with the steeper dose-response relation reported for small cell cancer in early studies of miners exposed to radon." 
  33. ^ 下道げどうこく (December 2007), 自然しぜん環境かんきょうちゅうのウラン —環境かんきょうちゅうウラン濃度のうどとウランのクリアランス・レベル—”, 原子力げんしりょくバックエンド研究けんきゅう (原子力げんしりょく学会がっかいバックエンド部会ぶかい) 14 (1): pp. 43-50, http://wwwsoc.nii.ac.jp/aesj/backend/JNUCE/Vol14-1/p43-50.pdf 2011ねん7がつ5にち閲覧えつらん 
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