アンドロジナスドッキング機構きこう

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アンドロジナスドッキング機構きこう、またはアンドロジナス接続せつぞくシステムえい: Androgynous Peripheral Attach System, APAS: Андрогинно-периферийный агрегат стыковки, АПАС)とは、ミール宇宙うちゅうステーション国際こくさい宇宙うちゅうステーション使用しようされている宇宙船うちゅうせんドッキング機構きこうである[1]。これはスペースシャトルオービターがISSに係留けいりゅうされるために、または、基本きほん機能きのうモジュール・ザーリャあずかあつ結合けつごうアダプタ (PMA) をかいしてISSのアメリカがわモジュールと接続せつぞくされるために使つかわれている[2]。これと互換ごかんせいのある接続せつぞくシステムは中国ちゅうごくかみぶね宇宙船うちゅうせんにも使つかわれていて、将来しょうらいにおいてかみふねごうがISSとドッキングできるようにしている[3]

設計せっけい[編集へんしゅう]

APAS-75

アンドロジナスドッキング機構きこうウラジーミル・シロミャトニコフ英語えいごばんによって設計せっけいされた。かれはモスクワに本拠ほんきょS.P.コロリョフ ロケット&スペース コーポレーション エネルギア在籍ざいせきしていた。このドッキング機構きこうアポロ・ソユーズテスト計画けいかく (ASTP) に源流げんりゅうはっしている[4]。このデザインにいた前身ぜんしんになったアイデアは初期しょきがたさがせはり誘導ゆうどうしきドッキング機構きこうとはことなり、どんなAPASのドッキングリングであっても、のどのようなAPASドッキングリングとも接続せつぞくできる。オスがわ・メスがわ区別くべつく、この特徴とくちょうを以ってアンドロジナス、「両性りょうせい具有ぐゆう」であるという。どちらのがわもそれぞれドッキングをおこなえるようにできていながら、ドッキングするさい能動のうどうがわ受動じゅどうがわ役割やくわり分担ぶんたんし、しかもどちらのがわとき場合ばあいおうじて能動のうどう/受動じゅどうりょうやく完璧かんぺきにこなせるように設計せっけいされている。APASには以下いかの3種類しゅるい基本きほんバージョンが存在そんざいする。

APAS-75[編集へんしゅう]

APAS-75はアポロ・ソユーズ共同きょうどう飛行ひこう計画けいかく (ASTP) のために開発かいはつされた。それまでのドッキング機構きこうちがい、両方りょうほうのユニットは必要ひつようおうじて能動のうどうがわ受動じゅどうがわりょうやくつことができた。ドッキングには、伸長しんちょうした能動のうどうがわユニット(みぎ)のスペードマークのかたちをした案内あんないばんと、りたたまれた受動じゅどうがわユニット(ひだり)が、おおよその配置はいち相互そうご調整ちょうせいう。案内あんないばん保持ほじしたリングが、能動のうどうがわユニットのラッチが受動じゅどうがわユニットのみぞはままりむように位置いちほろ調整ちょうせいした。それらをったのち、アメリカがわユニットにあるショックアブソーバー残余ざんよ衝撃しょうげきエネルギーを消散しょうさんし、ソビエトがわでは機械きかいしき減衰げんすい同等どうとう機能きのうたした。能動のうどうがわは、ドッキングカラーを一緒いっしょ位置いちってくるため、その瞬間しゅんかんたたまれた。ドッキングカラーのなか配置はいちされた案内あんないばんとソケットが、ドッキング装置そうち同士どうし真正面ましょうめん配置はいちされる作業さぎょう完了かんりょうした。よっつのバネぼうが、宇宙船うちゅうせん同士どうしをドッキング解除かいじょするときに相手あいてがわして分離ぶんりした[5]。ロシアはAPAS-75を使つかったソユーズ宇宙船うちゅうせんを5建造けんぞうした。最初さいしょの3コスモス638ごう672ごうソユーズ16ごう)はテストとして飛行ひこうした。1はアポロ・ソユーズテスト計画けいかく使つかわれた。ソユーズ19ごう実際じっさいにこのドッキング機構きこう使用しようした唯一ゆいいつのソユーズ宇宙船うちゅうせんである。また、最後さいごの1ソユーズ22ごうとして宇宙うちゅう飛行ひこうした。アポロ・ソユーズテスト計画けいかくでは、アメリカがわ宇宙船うちゅうせんであるASTPドッキング機構きこうは、機体きたい片方かたがたはしにAPAS-75ドッキング・カラーを、もう片方かたがたはしにアポロ・ドッキングカラーを装着そうちゃくしていた。

APAS-89[編集へんしゅう]

受動側 (non-androgynous variant) 能動側
受動じゅどうがわ (non-androgynous variant)
能動のうどうがわ

ソビエト連邦れんぽうミール計画けいかく開始かいししたときかれらはブラン往還おうかん建造けんぞうにもをつけていた。APAS-89は、ミール宇宙うちゅうステーションに接続せつぞくするブランのためのドッキング機構きこうとする構想こうそうえがかれた。オリジナルの設計せっけいから大幅おおはば変更へんこうくわえられた。外側そとがわリングの直径ちょっけいは、2,030ミリメートルから1,550ミリメートルにせばめられ、そして位置いち調整ちょうせいようペタル(花弁はなびらのようないた)は、以前いぜんはドッキングリングの外側そとがわ設置せっちして、そとひらくように動作どうさしていたのを相手あいてリングの内側うちがわとおすため、フリーなとき内側うちがわけてすぼまっているように設計せっけい変更へんこうされた。この設計せっけいではドッキングポートの内径ないけいおよそ800ミリメートルに制限せいげんしていた[よう出典しゅってん]。1994ねん、ブラン計画けいかく最終さいしゅうてきにキャンセルされ、ミール宇宙うちゅうステーションけてぶことは2となかった。しかし、ミールのクリスタル・モジュールは2のAPAS接続せつぞくカラーを用意よういしていた。ミール・ドッキングモジュール (MDM) は、基本きほんてきえばクリスタルとシャトルのあいだませた、りょうはしめんにAPAS-89を使つかったスペーサーモジュールである。この設計せっけいは、ときに「アンドロジナス・ペリフェラル・ドッキング・システム」(Androgynous Peripheral Docking System, APDS) とばれることがる。

APAS-95[編集へんしゅう]

受動側 (non-androgynous variant) 能動側
受動じゅどうがわ (non-androgynous variant)
能動のうどうがわ

シャトル・ミール計画けいかくはじまったとき、APASは接続せつぞくシステムとしてえらばれた。ミールを訪問ほうもんしたアメリカのスペースシャトルが、アンドロジナスドッキング機構きこう使用しようした。このドッキングカラーは、当初とうしょはブラン往還おうかんのために設計せっけいされたもので、また、APASを搭載とうさいしたブラケットは、当初とうしょはアメリカの宇宙うちゅうステーション「フリーダム」のために設計せっけいされたものである。エネルギア社あしゃがシャトルに搭載とうさいされたAPASに付与ふよしたバージョンはAPAS-95だが、これ自体じたいはAPAS-89と基本きほんてきにはほぼおなじものであった[6]。シャトルのオービタ・ドッキング機構きこう (Orbiter Docking System) に搭載とうさいされたAPASはシャトル-ISSにおけるドッキング用途ようと運用うんよう開始かいしされたときでも変更へんこうされずにのこされていた。オービタから外側そとがわかってばされた能動のうどうがわ捕捉ほそくリングは、国際こくさい宇宙うちゅうステーションけられたあずかあつ結合けつごうアダプタ (PMA) じょう受動じゅどうがわ接合せつごうリングと確実かくじつ結合けつごうする機能きのうる。キャプチャー・リングが接続せつぞく位置いち調整ちょうせいし、相手あいて一体いったいになってから12のストラクチャラル・フックを展開てんかいし、双方そうほう気密きみつシールをし、たがいの装置そうちきんろして固定こていしあう。PMAがわのAPASは、アンドロジナスとはばかりで受動じゅどうがわしか出来できないように改造かいぞうされていた。

ギャラリー[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ What is an Androgynous Peripheral Attach System?”. NASA. 2008ねん4がつ7にち閲覧えつらん
  2. ^ Androgynous Peripheral Attach System”. Boeing. 2008ねん4がつ7にち閲覧えつらん
  3. ^ Testimony of James Oberg: Senate Science, Technology, and Space Hearing: International Space Exploration Program”. spaceref.com. 2008ねん4がつ7にち閲覧えつらん
  4. ^ Patricia Sullivan (2006ねん10がつ1にち). “Vladimir Syromyatnikov; Designed Docking System for Space Capsules”. The Washington Post. 2008ねん4がつ5にち閲覧えつらん
  5. ^ David S. F. Portree. “Mir Hardware Heritage”. Lyndon B. Johnson Space Center. 2008ねん4がつ5にち閲覧えつらん
  6. ^ Energiya-Buran: The Soviet Space Shuttle. Chichester, UK: Praxis Publishing Ltd. (2007). pp. 379–381. ISBN 978-0-387-69848-9. https://books.google.co.jp/books?id=VRb1yAGVWNsC&dq=%22APAS-95%22+nasa&source=gbs_navlinks_s&redir_esc=y&hl=ja. "Although Energiya's internal desginator for the Shuttle APAS is APAS-95, it is essentially the same as Buran's APAS-89" 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]