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コミ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

コミ(み)コミ出こみだは、囲碁いごのルールのひとつ。ゲームの性質せいしつじょう先手せんてくろ有利ゆうりである。勝率しょうりつ五分五分ごぶごぶにするため、計算けいさん段階だんかいあたえられるハンデキャップ[1]

概要がいよう

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現在げんざい日本にっぽん一般いっぱんてきなルールでは、対等たいとう条件じょうけんおこなわれる互先たがいせん(たがいせん)の場合ばあい先手せんてくろ)が後手ごてしろ)にたいして6もくはん(6.5もくのハンデを[1](「コミをす」とあらわす)。

たとえばくろ50もくしろ50もく獲得かくとくして終局しゅうきょくとなった場合ばあい、コミをれるとしろの6もくはん(6.5もくちとなる。しろが50もく獲得かくとくした場合ばあいくろは57もく以上いじょう獲得かくとくしないとちにはならない(くろが57もくなら「くろはんち」、くろが56もくなら「しろはんち」という結果けっかとなる)。

コミに「はん(0.5もく)」があるのは、おなすうになったけ(持碁じご)をしょうじさせず、勝敗しょうはい決定けっていさせるためである[1]

囲碁いごのハンデとしては、コミ以外いがい時間じかん設定せっていがあり、非公式ひこうしき大会たいかい指導しどう対局たいきょくではこれらをわせて調整ちょうせいする。

歴史れきし

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江戸えど時代じだいには座興ざきょうたれるのような場合ばあいのぞき、基本きほんてきにコミというものはなかった。当時とうじ棋士きしかずすくなかったこともあり、個人こじんたい個人こじんふくすうかい対戦たいせんばん)などをおこない、手合てあいわりめていた。れんなどでコミが採用さいようされる場合ばあいには先番せんばん5もくコミ出こみだしのケースがおおかったことから、当時とうじから先番せんばん有利ゆうりさはこの程度ていどられていたことがわかる。1837ねんたれた土屋つちや秀和ひでかず竹川たけかわ弥三郎やさぶろう先番せんばんもくコミ)たい太田おおたつよしぞう服部はっとり正徹しょうてつれんはコミ5もくたれており、これが記録きろくのこはつのコミである[2]

大正たいしょうから昭和しょうわはいって棋士きしかずえ、また挑戦ちょうせん手合てあいせいかい主流しゅりゅうめるようになるにつれ、一番いちばん勝負しょうぶめる必要ひつようせいしょうじてきた。このためコミの必要ひつようせい議論ぎろんされたが、「勝負しょうぶ純粋じゅんすいせいそこなう」として反対はんたい意見いけんつよかった。本因坊ほんいんぼうせん開催かいさいたって4もくはんのコミが導入どうにゅうされたときには抵抗ていこうする棋士きしおおく、加藤かとうしんなどは「コミず」という趣旨しゅしみずからの論説ろんせつ主催しゅさい毎日新聞まいにちしんぶんせることを参加さんか条件じょうけんとしたほどだった(なお加藤かとうはコミ本因坊ほんいんぼうせん活躍かつやくし、1939ねんからはじまっただい1本因坊ほんいんぼうせんでは初代しょだい実力じつりょくせい本因坊ほんいんぼう関山せきやま利一としかずあらそった)。

コミの導入どうにゅうによって性質せいしつおおきく変化へんかした。コミなしではくろ先着せんちゃく有利ゆうりたもつためゆっくりとち、堅実けんじつにリードをたもかたぎゃくしろはげしく仕掛しかけ、局面きょくめんうごかすかたがセオリーとされていた。タイトルせんえるにつれてコミたりまえのものになり、コミなしだい手合てあいのみになっていった。

1934ねんから試験しけんてき採用さいようはじまったコミであったが、4もくはんのコミではくろのほうが有利ゆうりという見方みかたつよかったため、1964ねんからコミが5もくはんあらためられるようになった[3]。すべての棋戦きせん同時どうじにコミがあらためられたわけではなく、本因坊ほんいんぼうせん1974ねんまでコミ4もくはんのままであった[3]。このころは、4もくはんのコミは「しょうゴミ(こゴミ)」、5もくはんのコミは「だいゴミ(おおゴミ)」とばれた。また、きゅう名人めいじんせんにおいてはコミ5もく採用さいようされ、ジゴとなった場合ばあいしろち、ただし「はんほし」として通常つうじょうちよりおとるとさだめられていた。このことは、だい1名人めいじん誕生たんじょうおおきな影響えいきょうおよぼした。

しかし、コミ5もくはんでも依然いぜんとしてくろ勝率しょうりつのほうがややたかかったため、2000ねん韓国かんこくで、2001ねんには中国ちゅうごくでコミがあらためられた。日本にっぽんにおいても、2002ねん直近ちょっきん5年間ねんかん対局たいきょくくろ勝率しょうりつが51.855%としろよりもたかいこと、また国際こくさい棋戦きせんとの整合せいごうせいなどを理由りゆうに、タイトルせんごとに順次じゅんじコミは6もくはんあらためられた[4]棋聖きせいせんでの6もくはんへの移行いこう完了かんりょう2004ねんになるなど、若干じゃっかんのずれはしょうじたものの、おおむねスムーズにコミは6もくはんへと移行いこうされた[3]

また、日本棋院にほんきいんでは2003ねん関西棋院かんさいきいんでは2004ねんに、コミなし採用さいようされてきただい手合てあい制度せいど終了しゅうりょうした。これにより、プロ棋士きし対局たいきょくはすべてコミのあるおこなわれるようになった。

2002ねんから2007ねんにかけて日本棋院にほんきいんがコミ6もくはん公式こうしき棋戦きせん対象たいしょうった集計しゅうけいでは、19,702きょくくろ勝率しょうりつが50.59%、しろ勝率しょうりつが49.41%と、くろしろ勝率しょうりつはかなりちいさくなっている[5]

日本にっぽん以外いがいのコミ

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中国ちゅうごく韓国かんこく・アメリカ(アメリカ囲碁いご協会きょうかい)は、当初とうしょいずれも日本にっぽんにならってコミを5もくはんとしていたが、現在げんざいはいずれもよりおお改定かいていされている。

  • 台湾たいわんけいてんせいルールでは、はやくからコミを8てん日本にっぽんの7もくはんにあたる)にしていた。
  • 韓国かんこく日本にっぽんよりはやく、2000ねんだい4かいLGはい世界せかい棋王きおうせんでコミを6もくはんにした。
  • 中国ちゅうごくでは中国ちゅうごく囲碁いご規則きそくの2001ねんばんでコミを3+3/4(7もくはん)とした。
  • アメリカでも現在げんざいはコミ7もくはんになっている。

中国ちゅうごく台湾たいわんがコミを6もくはんでなく7もくはん変更へんこうしたのは、日本にっぽんかぞかたことなるためである。

日本にっぽんでは(獲得かくとくした陣地じんち)から(捕虜ほりょとなったいし・アゲハマのかず)をいたものが、得点とくてんとなる。中国ちゅうごく台湾たいわんでは、(獲得かくとくした陣地じんち)と(きているいしかず)をしたものが、得点とくてんとなる。タテせん19ほん、ヨコせん19ほん標準ひょうじゅんてき碁盤ごばん・19路盤ろばん場合ばあい碁盤ごばんかずは、361。つまり、結果けっかとして奇数きすうがほとんどである。

アメリカ囲碁いご協会きょうかいのルールは日本にっぽんおなじようにのみをかぞえるが、コミを7もくはんとしている[6]

アジア競技きょうぎ大会たいかいなどの国際こくさい大会たいかいでは7もくはん主流しゅりゅうとなっている。

ぎゃくコミ

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棋力きりょくがある場合ばあいには、しろ上手じょうずがコミをす「ぎゃくコミ」とばれるルールが採用さいようされることもある[7][8]ぎゃくコミは下手へた立場たちばからは「コミもらい」と表現ひょうげんすることもある。

英才えいさい特別とくべつ採用さいよう推薦すいせん棋士きし試験しけんではぎゃくコミによる対局たいきょくおこなわれることがある[9]

朝日あさひアマチュア囲碁いご名人めいじんせん全国ぜんこく大会たいかい優勝ゆうしょうしゃはプロの名人めいじんプロアマ囲碁いご名人めいじんせんおこなうが、ハンデとしてアマ名人めいじんくろち、くろ6もくはんのコミをもらう[7]

その

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  • くろ盤上ばんじょうで7もく以上いじょうのリードをて、6もくはんのコミをかえしててそうな状況じょうきょうにあることを「コミがる」とう。ぎゃく盤上ばんじょうでリードしていても7もくたっしない場合ばあいくろ立場たちばからは「コミがない」、しろ立場たちばからは「コミがかり」とう。
  • 盤上ばんじょうくろの6もくちか7もくちになりそうで、コミをれるとはんあらそいになるようなきわどい勝負しょうぶのことは「はん勝負しょうぶ」とばれる。
  • では通常つうじょうコミは採用さいようされない。ただし、とく勝敗しょうはい決定けっていする必要ひつようがあるときはくろ(もしくはしろ)がはんのコミをすことがある。また、ハンデのりょうをよりこまかく設定せっていするために、であっても任意にんいのコミを設定せっていすることもある。よりちいさなハンデとしてコミのない「じょうさき」もある。
  • コミが6もくはん適正てきせいとすると、囲碁いご理論りろんにより、初手しょて価値かち出入でい計算けいさん後手ごてやく26もく相当そうとうとされる。また、ほし妥当だとうすみとすれば、二子ふたごは、対局たいきょく開始かいし時点じてんくろばんやく19もくはん有利ゆうり做される。
  • コミック『ヒカルの』では、理解りかいしやすくするため漫画まんが・アニメどもに、韓国かんこく中国ちゅうごく場面ばめんもすべて当時とうじ日本にっぽんおなじ「5もくはん」と統一とういつされている。実際じっさい大会たいかいのルールにしたがう(現代げんだいでは7もくはん)。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c 囲碁いご日本棋院にほんきいん”. 囲碁いご日本棋院にほんきいん. 2023ねん9がつ9にち閲覧えつらん
  2. ^ 囲碁いごまめ知識ちしきQ33〜Q36 日本棋院にほんきいん 囲碁いご雑学ざつがく手帳てちょう 転用てんよう”. go.tengudo.jp. 2023ねん9がつ9にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c 松村まつむら政樹まさきコミ制度せいどかんするいち考察こうさつ妥当だとうせい検証けんしょうつうじて (PDF)大阪商業大学おおさかしょうぎょうだいがく。2019ねん2がつ4にち閲覧えつらん
  4. ^ コミ出こみだ変更へんこうのおらせ”. 日本棋院にほんきいんのアーカイブ (2002ねん10がつ). 2019ねん2がつ4にち閲覧えつらん
  5. ^ コミ6もくはん対局たいきょくしゅばんべつ勝率しょうりつ ―平成へいせい19ねん集計しゅうけい”. 日本棋院にほんきいんのアーカイブ (2008ねん1がつ5にち). 2019ねん2がつ4にち閲覧えつらん
  6. ^ AGA Concise Rules of Go
  7. ^ a b 芝野しばの名人めいじん過激かげき仕掛しか連敗れんぱいめた ぎゃくコミのハンディ克服こくふくさん度目どめ正直しょうじき だい17かいプロアマ囲碁いご名人めいじんせん朝日新聞あさひしんぶんデジタル”. 朝日新聞あさひしんぶんデジタル (2024ねん3がつ25にち). 2024ねん5がつ22にち閲覧えつらん
  8. ^ この場合ばあいコミのおおきさは6もくはん最大さいだいはばとして調整ちょうせいされる。
  9. ^ 盤上ばんじょう構想こうそうある」 張栩ちょうう名人めいじんなか邑菫さんのかたる:朝日新聞あさひしんぶんデジタル”. 朝日新聞あさひしんぶんデジタル (2019ねん1がつ5にち). 2023ねん2がつ12にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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