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がけ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
トランゴ・タワーズカラコルム山脈さんみゃくだい断崖だんがいぐんパキスタンりょうこおりしょく氷河ひょうが侵食しんしょく)によって形成けいせいされた。

がけがけ、がい)とは、やまきし海岸かいがん河岸かわぎし湖岸こがん)などの、けわしくったところ[1][2]地表ちひょう高度こうど急変きゅうへんする部分ぶぶん急斜面きゅうしゃめん[3]との定義ていぎもできる。山腹さんぷくがけ[1]日本語にほんごではほきがけ[1][4][1])、そわそわ[1][2]そばそわ[1][2]ともいうが、古語こご[よう曖昧あいまい回避かいひ]おもむきがある。また埼玉さいたまけんなどの小字こあざめいなどにのこっているはけ「岾」や「坫」や「𡋽」などと表記ひょうき川辺かわべがけである。通常つうじょうは60以上いじょうきゅう傾斜けいしゃめんすが、上下じょうげ平坦へいたんめんがある場合ばあいたかすう以下いかはす30以下いかであってもがけとよぶことがある[5]垂直すいちょくかそれにせまるほどったがけは、古来こらい日本語にほんご切岸きりぎし[1][4]/がん[4](きりぎし[1][4]、きりきし[4])という。しかし現代げんだいでは断崖だんがい(だんがい)[1][2][4]ということがおおい。懸崖けんがい(けんがい)[1][2][4]ぜっがけ(ぜつがい)[1][2][4]ともいう。また、これらの同義語どうぎごとして、った状態じょうたいかべたとえた絶壁ぜっぺき(ぜっぺき)[1][2][4]があり、断崖だんがい絶壁ぜっぺきわせて断崖絶壁だんがいぜっぺきという強調きょうちょう表現ひょうげんもある。

英語えいごでは「がけ全般ぜんぱんを "cliff"、「断崖だんがい」を "escarpment" といい、日本語にほんごでは前者ぜんしゃおとうつしがたクリフ」が外来がいらいとして通用つうようする[2][4]レッドクリフなど

日本にっぽん宅地たくち造成ぞうせい規制きせいほう施行しこうれいの1じょう2こうによれば「地表ちひょうめん水平面すいへいめんたいし30える角度かくどをなす土地とち」としている[* 1]

がけ成因せいいん種類しゅるい

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自然しぜん作用さようによるがけ

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プレーケストーレン断崖だんがいノルウェーリーセフィヨルド所在しょざい

自然しぜん流水りゅうすい雨水あまみず海水かいすいふう氷河ひょうがなどといった外的がいてき作用さよう地形ちけい営力土地とちはたらきかけて地形ちけい変化へんかさせるちから)として作用さようすることを侵食しんしょく/侵蝕しんしょくというが、地表ちひょう岩石がんせき土壌どじょう侵蝕しんしょくされることで、そこにがけ形成けいせいされる。

海水かいすい運動うんどう波浪はろう潮流ちょうりゅう海流かいりゅうなど)による海岸かいがんとその付近ふきん浅海せんかいそこたいする侵食しんしょく海岸かいがん侵食しんしょくといい、りゃくして海食かいしょくというが、海食かいしょくによってまれるがけ海食かいしょくがけ/海蝕かいしょくがけ(かいしょくがい)といい、りゃくしてうみがけともいう。また、波浪はろうによる侵食しんしょくなみしょく/波蝕はしょくというが、なみしょくによってまれるがけなみしょくがけ/波蝕はしょくがけ(はしょくがい)という。アメリカ海洋かいよう大気たいきちょうのESIマップでは海岸かいがん性状せいじょう分類ぶんるいもうけており、がけになっている海岸かいがんせんは、Exposed rocky shore(かた地質ちしつ傾斜けいしゃ30以上いじょう海食かいしょくがけなど)ほか数種類すうしゅるい分類ぶんるいされる[8]

河川かせん浸食しんしょく作用さようによって形成けいせいされたがけかわしょくがけ(かしょくがい)という[9]。さらに、かわしょくがけなかでもとくがけ上位じょういうみなり段丘だんきゅう河岸かわぎし段丘だんきゅうである場合ばあい段丘だんきゅうがけ(だんきゅうがい)という。

雪山ゆきやま断崖だんがいきるアイベックス

がけはその急峻きゅうしゅん地形ちけいゆえに棲息せいそく環境かんきょうとしても生物せいぶつたねえらぶ。とく脊椎動物せきついどうぶつは、断崖だんがい適応てきおう進化しんかした場合ばあい捕食ほしょくあつ捕食ほしょくされる淘汰とうたあつ)からおおきくのがれることが可能かのうとなる。飛翔ひしょうすることで断崖だんがい自在じざい利用りようできる鳥類ちょうるいは、その利点りてん存分ぞんぶんかしてがけ繁栄はんえいとしている一大いちだい勢力せいりょくといえる。とりによるがけ利用りようは、のがれることにかぎらず、おおくの猛禽もうきんるいがそうであるように、そこから獲物えものねらうことにも利用りようされる。また、がけがあることでしょうじる上昇じょうしょう気流きりゅうを、とりおおいに利用りようする。高層こうそうビルならだい都会とかいハヤブサオオタカ進出しんしゅつしていることは、断崖だんがいたかさや上昇じょうしょう気流きりゅう利用りようしてきたかれらの習性しゅうせいが、高層こうそうビルでも有効ゆうこうであったことを意味いみする。地上ちじょう棲の哺乳類ほにゅうるい場合ばあいは、断崖だんがい高度こうど適応てきおうすることは生存せいぞんじょうきわめておおきな利点りてんとなり、固有こゆうしゅ形成けいせいすることがおおい。なぜなら、中型ちゅうがた大型おおがた哺乳類ほにゅうるいにとってもっと警戒けいかいすべき捕食ほしょくしゃ中型ちゅうがた大型おおがた哺乳類ほにゅうるいであり、かれらが能力のうりょくてきはいめないレベルのきびしい断崖だんがい適応てきおうすることは、そのたねからの捕食ほしょくあつたいする絶対ぜったいてき安全あんぜん地帯ちたい確保かくほ意味いみするからである。たとえば、断崖だんがいにある程度ていど適応てきおうした大型おおがたネコ動物どうぶつユキヒョウなど)はいるが、より高度こうど適応てきおうせる偶蹄ぐうているい複数ふくすうグループ(アイベックスなど)は、ネコにはかなわずかれらのみがはいめるレベルの断崖だんがい生存せいぞんじょう牙城がじょうとしている。ったがけ平地ひらちわらない高速こうそく疾走しっそうできるのもかれらのみで、ネコ適応てきおうしゅはこれをうことができない(かれらもはしれるが、いついて捕獲ほかくできるレベルではない)。垂直すいちょく絶壁ぜっぺきさえたくみによじのぼって上層じょうそう台地だいち天空てんくう楽園らくえんのように利用りようするサル一種いっしゅゲラダヒヒなど)もいる。これら高度こうど適応てきおうしゅにとって、そのような場所ばしょにいるときようじゅうなどをねらってくる警戒けいかいすべき天敵てんてきそらにしかいないことになる。

宅地たくち造成ぞうせいによるがけ

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宅地たくち造成ぞうせいにおけるがけ地表ちひょうめん水平面すいへいめんたいし30をこえる角度かくどをなす土地とちかた岩盤がんばん以外いがいのものをいい、「がけめん」とはその地表ちひょうめんを、がけめん水平面すいへいめんたいする角度かくどをがけの勾配こうばいというが、宅地たくち造成ぞうせいにあたっては下層かそうのがけめん下端かたんふくみ、かつ、水平面すいへいめんたいし30角度かくどをなすめん上方かみがた上層じょうそうのがけめん下端かたんがあるときは、その上下じょうげのがけは一体いったいのものとみなす。 ようかべ前面ぜんめん上端じょうたん下端かたんとをふくめん水平面すいへいめんたいする角度かくどようかべ勾配こうばいとし、その上端じょうたん下端かたんとの垂直すいちょく距離きょりようかべたかさとする。

安息あんそくかく土質どしつ試験しけんとうもとづき地盤じばん安定あんてい計算けいさんにより、ようかべ必要ひつようがないときは適用てきようしないが、および、つちによりしょうじるがけめんは、ようかべでおおわなければならない。ただし、きりよりしょうじたがけ土質どしつおうじてした該当がいとうするもののがけめんについては、このかぎりではない。

  • 砂利じゃり真砂まさご関東かんとうローム、硬質こうしつ粘土ねんど、そのこれらにるいする土質どしつ場合ばあいかべようしない勾配こうばいは35°(1:1.482)以下いかようかべ上端じょうたんよりの垂直すいちょく距離きょりが5m以内いないまでようかべようしない勾配こうばいで45°以下いか
  • 土質どしつが軟岩の土質どしつ場合ばあいかべようしない勾配こうばいは 60°(1:0.577)以下いか、、ようかべ上端じょうたんよりの垂直すいちょく距離きょりが5m以内いないまでようかべようしない勾配こうばいで80°以下いか
  • 風化ふうかいちじるしいいわでは、かべようしない勾配こうばいは 40°(1:1.192)以下いかようかべ上端じょうたんよりの垂直すいちょく距離きょりが5m以内いないまでようかべようしない勾配こうばいで50°以下いか

上記じょうき該当がいとうしないきり盛土もりつちであっても、災害さいがい防止ぼうしのため土質どしつによる“ほう”の勾配こうばいおよあいだ石積いしつようかべについては、そのたかさ、あつみ、いれふかさ、勾配こうばい水抜みずぬきあなたいしてはとく配慮はいりょ必要ひつようである。

世界一せかいいちたかがけ

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トールやま全景ぜんけい西にしかべはほぼ垂直すいちょく断崖絶壁だんがいぜっぺき山頂さんちょうから西にしかべ直下ちょっかだにそこまで標高ひょうこう垂直すいちょく距離きょり)1,250mをほこる。

世界せかいもっとたかがけについて、ギネスワールドレコーズは、ハワイモロカイとう所在しょざいする「カラウパパがけ」を認定にんていしており、これはたかやく1,010メートル海食かいしょくがけである[10]。もっとも、カナダバフィンとうにあるトールやま西にしかべ断崖だんがいたかさ1,250メートルで前者ぜんしゃよりたかい (cf. en:Extremes on Earth#Greatest vertical drop)。こちらはおもこおりしょく氷河ひょうが侵食しんしょく)によって形成けいせいされたこおりしょく尖峰せんぽう一角いっかくとしてのがけである。

世界せかいがけ

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ドーバーの白い崖 エトルタの断崖
ドーバーのしろがけ
エトルタの断崖だんがい
モハーの断崖だんがいアイルランドバレン高原こうげんにある海食かいしょくがけ
アウヤンテプイ断崖だんがい
日本にっぽんがけ
東尋坊とうじんぼう
摩天崖まてんがい
天体てんたいがけ

ギャラリー

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日本にっぽん古語こご方言ほうげん

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がけ地形ちけいがけせん日本にっぽん各所かくしょ存在そんざいし、その古語こごでの名称めいしょうが、地名ちめい呼称こしょうとなっている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 宅地たくち造成ぞうせいとう規制きせいほう施行しこうれい1じょう2こう[6]かく都道府県とどうふけん建築けんちく基準きじゅんほう施行しこう条例じょうれいたとえば、「がけ・ようかべについて」(千葉ちばけん船橋ふなばし図解ずかいり)[7]参照さんしょう
  2. ^ 平均へいきん海水かいすいめん基準きじゅんとする「標高ひょうこう」とはことなる。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l 広辞苑こうじえん
  2. ^ a b c d e f g h 大辞泉だいじせん
  3. ^ ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん
  4. ^ a b c d e f g h i j 大辞林だいじりんだい3はん
  5. ^ 地形ちけい辞典じてん朝倉書店あさくらしょてん、2017ねん、94ぺーじ 
  6. ^ 宅地たくち造成ぞうせいとう規制きせいほう施行しこうれい”. e-Gov法令ほうれい検索けんさく. 総務そうむしょう行政ぎょうせい管理かんりきょく. 2006ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  7. ^ がけ・ようかべについて”. 建築けんちく開発かいはつ手続てつづ. 船橋ふなばし. 2006ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  8. ^ 濱田はまだ誠一せいいち. “北海道ほっかいどう沿岸えんがん海岸かいがん地形ちけい堆積たいせきぶつ分類ぶんるい分布ぶんぷ(その2)”. 北海道ほっかいどう地質ちしつ研究所けんきゅうじょ報告ほうこくだい75ごう(2004ねん). 2020ねん12月7にち閲覧えつらん
  9. ^ 応用地質おうようちしつ用語ようごしゅうhttps://www.jseg.or.jp/pdf/JSEG_yougo.pdf
  10. ^ Highest Cliffs”. ギネス世界せかい記録きろく. 2005ねん11月27にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2006ねん8がつ27にち閲覧えつらん
  11. ^ a b 大辞林だいじりん だいさんはん. “がけ”. コトバンク. 2018ねん10がつ29にち閲覧えつらん
  12. ^ かがみあじ完二かんじ日本にっぽん地名ちめい角川書店かどかわしょてん、1964ねん、12ぺーじ 
  13. ^ 地名ちめい由来ゆらい野毛のげ上野毛かみのげ中町なかまち”. 世田谷せたがや. 2009ねん12月17にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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