日本にっぽんの消費しょうひ税ぜい議論ぎろん

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日本にっぽんの消費しょうひ税ぜい議論ぎろん（にほんのしょうひぜいぎろん）では、日本にっぽんの消費しょうひ税ぜいに関かんする議論ぎろんについて記述きじゅつする。

制度せいどの趣旨しゅし[編集へんしゅう]

この項こうでは、現行げんこう制度せいどの趣旨しゅし、沿革えんかくおよび問題もんだい点てんについて述のべる。

物品ぶっぴん税ぜいと消費しょうひ税ぜい[編集へんしゅう]

一般いっぱん消費しょうひ税ぜい導入どうにゅう以前いぜんには、奢侈しゃし品ひん・贅沢ぜいたく品ひんとみなされるものについて、個別こべつ消費しょうひ税ぜいの一種いっしゅである物品ぶっぴん税ぜいが課かされていたが、対象たいしょうとなる物品ぶっぴんの範囲はんい、税率ぜいりつ、指定していのタイミングなどをめぐって企業きぎょう側がわから不公平ふこうへい感かんが指摘してきされることもあった（真しんに新あたらしいカテゴリの商品しょうひんのうちは対象たいしょうにならず、法令ほうれいの改正かいせいなどを経へるためにある程度ていど普及ふきゅうしてから課税かぜい対象たいしょうになる。そのことが可か処分しょぶん所得しょとくが相対そうたい的てきに少すくない世帯せたいにとって新しん商品しょうひんの入手にゅうしゅをいっそう困難こんなんにする結果けっかとなるなど）。この問題もんだいは、広ひろく財ざいを対象たいしょうにする消費しょうひ税ぜいでは生しょうじにくい。しかし、物品ぶっぴん税ぜいは贅沢ぜいたく品ひんを中心ちゅうしんに課税かぜいされ、食品しょくひんなどの生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんは課税かぜいされなかったことから富とみの再さい分配ぶんぱいにかなう利点りてんも存在そんざいした。

物品ぶっぴん税ぜいは、1988年ねんの税制ぜいせい改革かいかくによる消費しょうひ税ぜいの導入どうにゅうに伴ともない、1989年ねん4月がつ1日にちに廃止はいしされた[1]。

導入どうにゅうされた理由りゆう[編集へんしゅう]

国家こっかによる税ぜいの再さい分配ぶんぱい機能きのうの視点してんから考かんがえたとき、所得しょとく課税かぜい（法人ほうじん税ぜいを含ふくむ）には所得しょとくの再さい分配ぶんぱい機能きのう、消費しょうひ課税かぜい（酒税しゅぜい等とうを含ふくむ）には消費しょうひ力りょくの再さい分配ぶんぱい機能きのう、資産しさん課税かぜい（固定こてい資産しさん税ぜいや相続そうぞく税ぜい）には資産しさんの再さい分配ぶんぱい機能きのうがあるとされている。

財政ざいせい学者がくしゃの矢吹やぶき初はつは年金ねんきんや生活せいかつ保護ほご等とうの社会しゃかい保障ほしょう制度せいどは、消費しょうひ力りょくを再さい分配ぶんぱいしているため、再さい分配ぶんぱい機能きのうの視点してんからは消費しょうひ税ぜいが合致がっちしていると考かんがえられている。実際じっさいに社会しゃかい保障ほしょう制度せいどが充実じゅうじつしている欧州おうしゅう国家こっかでは消費しょうひ税率ぜいりつが高たかいところが多おおい。現実げんじつ問題もんだいとしても日本にっぽんは将来しょうらい予想よそうされる少子しょうし高齢こうれい化かにともない社会しゃかい保障ほしょう支出ししゅつが高たかまることが分わかっていたことがある。

また、シャウプ勧告かんこく以後いごから続つづいた所得しょとく税ぜいなどの直接ちょくせつ税ぜい中心ちゅうしんの制度せいどから、消費しょうひ税ぜいのような年金ねんきん生活せいかつ高齢こうれい者しゃや貯蓄ちょちく生活せいかつ者しゃ層そうなどを含ふくむ幅広はばひろい各層かくそうからも広ひろく薄うすく徴収ちょうしゅうすることのできる間接かんせつ税ぜいとのバランスが取とれた税ぜい体系たいけいに変かえるべきだという議論ぎろんがあった。概おおむねこれらの理由りゆうを中心ちゅうしんとした議論ぎろんから消費しょうひ税ぜいが導入どうにゅうされた。

消費しょうひ税ぜいは元々もともとは直間ちょっかん比率ひりつの是正ぜせいという文脈ぶんみゃくで説明せつめいされてきたが、その後ごは社会しゃかい保障ほしょう→財政ざいせい再建さいけん→被災ひさい地ち復興ふっこう→世代せだい間あいだの公平こうへいな負担ふたんと変化へんかしている[2]。

福祉ふくし財源ざいげんも参照さんしょう。

資源しげん配分はいぶんの歪ゆがみ[編集へんしゅう]

経済けいざい学者がくしゃの伊藤いとう元重もとしげは「消費しょうひ税ぜいの場合ばあい、消費しょうひに税ぜいを課かすことにより、消費しょうひ者しゃが支払しはらう価格かかくは、企業きぎょうのコストに消費しょうひ税ぜいが上乗うわのせされたものになる。消費しょうひ価格かかくと生産せいさん者しゃ価格かかくのギャップをもたらす消費しょうひ税ぜいは、資源しげん配分はいぶんに様々さまざまな歪ゆがみをもたらす」と指摘してきしている[3]。

経済けいざい学者がくしゃの原田はらだ泰やすしは「消費しょうひ税ぜいは、他たの税ぜいと比くらべればGDPを引ひき下さげる効果こうかが小ちいさい税ぜいである。ヨーロッパ諸国しょこくでは付加ふか価値かち税ぜいが広ひろく採用さいようされているのは、これが効率こうりつ的てきな税ぜいだからである」と指摘してきしている[4]。

逆ぎゃく累進るいしん性せい[編集へんしゅう]

直接ちょくせつ税ぜいは、所得しょとくの低ひくい人ひとほど負担ふたんが少すくなく、所得しょとくがある人ひとは負担ふたんが重おもい累進るいしん性せいが出でる[5]。所得しょとくの多おおい人ひとほど高たかい税金ぜいきんを払はらう所得しょとく税ぜいと異ことなり、消費しょうひ税ぜいは消費しょうひのみによって決きまる税制ぜいせいであるため、所得しょとくが多おおい人ひとも少すくない人ひとも消費しょうひ額がくに対たいしては同おなじ税率ぜいりつとなる。しかし実際じっさいには消費しょうひ税ぜい（売上うりあげ税ぜい）は所得しょとくが少すくないほど不利ふりな税制ぜいせい（逆ぎゃく累進るいしん的てき税制ぜいせい）だという指摘してきがある[6][7]。というのも所得しょとくの少すくない人ひとは貯蓄ちょちくする余裕よゆうがなく、所得しょとくの多おおくの割合わりあいを消費しょうひに回まわしてしまう傾向けいこうがあるので、所得しょとくに対たいしてはより高たかい割合わりあいで消費しょうひ税ぜいを払はらわねばならなくなるからである[6][7]。消費しょうひ税ぜいは収入しゅうにゅうが無ない人ひとでも消費しょうひする際さいに課税かぜいされるため、所得しょとくが低ひくい人ひとほど負担ふたん感かんが大おおきくなる[5]。実際じっさい、利潤りじゅん、利子りし、配当はいとうなどの資本しほん所得しょとくを得えられる金融きんゆう投資とうしには消費しょうひ税ぜいはかからないため、こうしたものに投資とうしする余裕よゆうがある人ひと（≒所得しょとくの多おおい人ひと）ほど有利ゆうりな（所得しょとくに対たいする税ぜい負担ふたんが少すくない）税制ぜいせいとなる。また貯蓄ちょちくを切きり崩くずして消費しょうひに回まわせばそこに消費しょうひ税ぜいがかかるが、一生いっしょう使つかわれなかった貯蓄ちょちくには（相続そうぞく税ぜいは控除こうじょしきれない分ぶんに課かされるが）消費しょうひ税ぜいはかからないことも、消費しょうひ税ぜいが、貯蓄ちょちくから消費しょうひに回まわす額がくが相対そうたい的てきに多おおい人ひと（≒所得しょとくの少すくない人ひと）に不利ふりな税制ぜいせいと言いわれる原因げんいんである。

日本にっぽんの事例じれいでは2002年ねんの総務そうむ省しょう「家計調査かけいちょうさ」にもとづく勤労きんろう者しゃ世帯せたいの所得しょとく階級かいきゅう別べつ消費しょうひ税ぜい負担ふたん率りつと所得しょとく税ぜい負担ふたん率りつの計測けいそくによれば、所得しょとくがもっとも低ひくい分類ぶんるい階層かいそうにおいては所得しょとくの2.8%にあたる消費しょうひ税ぜいを負担ふたんしており、これは最高さいこう所得しょとく分類ぶんるい階層かいそうが2.1%であったことから逆進ぎゃくしん性せいの存在そんざいが確認かくにんできる。所得しょとく税ぜいについては負担ふたん率りつが4%に対たいし最高さいこう所得しょとく階層かいそうでは12%であり累進るいしん的てきである[8]。またこの消費しょうひ税率ぜいりつが10%に上昇じょうしょうした場合ばあい、年収ねんしゅう1300万まん円えん世帯せたいの消費しょうひ税ぜい負担ふたんは4%程度ていど、年収ねんしゅう125万まん円えんでは9%程度ていどと逆進ぎゃくしん性せいが高たかまるとの試算しさんもある[9]。

もっともこの種たねの議論ぎろんは一時いちじ点てんでの所得しょとくを念頭ねんとうにしていることが多おおく、少子化しょうしか時代じだいにおける税ぜい負担ふたんの衡平こうへい性せいを考かんがえるさいにはとくに生涯しょうがい所得しょとくに対たいする負担ふたんの公平こうへい性せいに気きを配くばる必要ひつようがあり、引退いんたいして勤労きんろう所得しょとくがない人ひとの担税たんぜい能力のうりょくが勤労きんろう世帯せたいより貧まずしいとは限かぎらず、逆進ぎゃくしん性せいを一時いちじ点てんの所得しょとく水準すいじゅんで計測けいそくすることには問題もんだいがあるともいえる[10]。特とくに、スポーツ選手せんしゅなど現役げんえきの短みじかい期間きかんだけ高こう所得しょとくとなる場合ばあいにはこの問題もんだいが大おおきくなる。なお日本にっぽんでは、所得しょとくが非常ひじょうに高たかい世帯せたいでは不動産ふどうさんや株式かぶしきの譲渡じょうと所得しょとくや配当はいとうによる所得しょとくの割合わりあいが高たかい傾向けいこうがある。不動産ふどうさん等とうの譲渡じょうと所得しょとく税率ぜいりつ（20-39%住民じゅうみん税ぜい含ふくむ）あるいは株式かぶしき等とうの譲渡じょうと所得しょとく・配当はいとうにかかる分離ぶんり課税かぜい（10-20%住民じゅうみん税ぜい含ふくむ）は累進るいしんの上限じょうげん税率ぜいりつより低ひくいため、日本にっぽんの所得しょとく税ぜい課税かぜい構造こうぞうは年間ねんかん所得しょとくが1億おく円えん超ちょう程度ていどの階層かいそうの実質じっしつ負担ふたん率りつがもっとも高たかくなっている。これをこえる階層かいそうでは、不動産ふどうさんや株式かぶしきの譲渡じょうと所得しょとくが中心ちゅうしんとなることから、年間ねんかん所得しょとくの合計ごうけいが増ふえるに従したがって負担ふたん率りつが下さがっていく結果けっかとなっている[11]。

経済けいざい学者がくしゃの松原まつばら聡さとしは「高こう所得しょとく者しゃほど支出ししゅつが多おおいと考かんがえれば、消費しょうひ税ぜいは公平こうへいな税制ぜいせいである」と指摘してきしている[12]。

経済けいざい学者がくしゃの岩井いわい克人かつとは「消費しょうひ税ぜいは、消費しょうひ額がくに応おうじて負担ふたんするという意味いみでの公平こうへい性せいがあり、富裕ふゆう層そうも多おおい引退いんたい世代せだいからも徴収ちょうしゅうするという意味いみで世代せだい間あいだの公平こうへい性せいもある」と述のべている[13]。

経済けいざい学者がくしゃの吉川よしかわ洋ひろしは「社会しゃかい保障ほしょうは低てい所得しょとく者しゃほど給付きゅうふが大おおきい。生涯しょうがいにわたる所得しょとくでみれば消費しょうひ税ぜいの逆進ぎゃくしん性せいは深刻しんこくではない」と述のべている[7]。

森永もりなが卓郎たくろうは「低てい所得しょとく者しゃからたくさん取とっても、最終さいしゅう的てきにはその低てい所得しょとく者しゃに多おおく分配ぶんぱいされるから結果けっか的てきによいと言いいたいのであろうが、本来ほんらい社会しゃかい保障ほしょうとは、所得しょとくの高たかい人ひとから低ひくい人ひとに所得しょとく移転いてんが行おこなわれていなければ、体からだをなさないものである」と指摘してきしている[14]。

経済けいざい学者がくしゃの高橋たかはし洋一よういちは「消費しょうひ税ぜいは、広ひろく課税かぜいするため一いち人にんひとりの負担ふたん度どを正確せいかくに把握はあくできない。消費しょうひ税ぜいを財源ざいげんとして社会しゃかい保障ほしょう政策せいさくを行おこなうとしても、負担ふたんと給付きゅうふの関係かんけいが不ふ明確めいかくである」と指摘してきしている[15]。

経済けいざい学者がくしゃの飯田いいだ泰之やすゆきは「消費しょうひ税ぜいは貧困ひんこん層そうに負担ふたんが大おおきいため、本来ほんらいならもっと下さげるべきであり、理想りそうとしてはなくていい」と指摘してきしている[16]。

橋下はしもと徹とおるは「消費しょうひ税ぜいを所得しょとく再さい分配ぶんぱいである社会しゃかい保障ほしょうに使つかうというのは、根本こんぽん的てきに理論りろんが間違まちがっている。金持かねもちからお金かねを取とって弱者じゃくしゃに渡わたさないと。分配ぶんぱいは所得しょとく税ぜいのほうを累進るいしん課税かぜいでやるべき。」としている[17]。

複数ふくすう税率ぜいりつ[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは2019年ねん10月がつ1日にちより、10％（標準ひょうじゅん税率ぜいりつ）と8％（軽減けいげん税率ぜいりつ）の2種類しゅるいに移行いこうした。これは1997年ねん以来いらいである。消費しょうひ税ぜいは導入どうにゅう当初とうしょ、自動車じどうしゃは6%の割増わりまし税率ぜいりつであった。

贅沢ぜいたく品ひんか生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんかによって税率ぜいりつを変かえる多た段階だんかい方式ほうしきの消費しょうひ税ぜいを導入どうにゅうする事ことで低てい所得しょとく者しゃ層そうの負担ふたんに配慮はいりょしている国くにも多おおい。ただしこうした税制ぜいせいはどこからを贅沢ぜいたく品ひんとみなしどこからを生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんとみなすかで議論ぎろんが紛糾ふんきゅうし、政治せいじ問題もんだい化かする[注ちゅう 1]。という問題もんだいや、記帳きちょう申告しんこく実務じつむに多大ただいな労力ろうりょくを要ようするという問題もんだいもある[注ちゅう 2]。これらの事情じじょうから5%引ひき上あげ時じに多た段階だんかい税率ぜいりつ方式ほうしきが見送みおくられた経緯けいいもある。

インボイス[編集へんしゅう]

インボイス方式ほうしきとは「課税かぜい事業じぎょう者しゃが発行はっこうするインボイスに記載きさいされた税額ぜいがくのみを控除こうじょすることができる方式ほうしき」であり[18]、複数ふくすう税率ぜいりつが導入どうにゅうされている欧州おうしゅう各国かっこくで採用さいようされている。インボイスは、古ふるくから国境こっきょうを越こえる取引とりひきが盛さかんに行おこなわれてきたヨーロッパでは、商しょう取引とりひき慣行かんこうとして定着ていちゃくしてきた。欧州おうしゅう連合れんごうの前身ぜんしんである欧州共同体おうしゅうきょうどうたいにおいて、1960年代ねんだい後半こうはんより仕入しいれ税額ぜいがく控除こうじょを組くみ込こんだ付加ふか価値かち税ぜいシステムを導入どうにゅうされる際さいに、仕入しいれ税額ぜいがくを確認かくにんするのに最適さいてきな書類しょるい。

日本にっぽんは消費しょうひ税ぜい導入どうにゅう時じに日本にっぽんの取引とりひき慣行かんこうや納税のうぜい義務ぎむ者しゃの事務じむ負担ふたんに配慮はいりょするといった観点かんてんから、帳簿ちょうぼ上じょうの記録きろく等とうに基もとづいて控除こうじょする「帳簿ちょうぼ方式ほうしき」が採用さいようされていた。しかし、「帳簿ちょうぼ方式ほうしきは実態じったいとして十分じゅうぶんに機能きのうしているが、納税のうぜい者しゃ自身じしんが作成さくせいした帳簿ちょうぼを要件ようけんにして税額ぜいがく控除こうじょができるというのは消費しょうひ税ぜい制度せいどに対たいする信頼しんらい性せいの点てんで疑問ぎもんであるとの国民こくみんの声こえが大おおきい」との指摘してきがあり、「帳簿ちょうぼの保存ほぞんに加くわえ、取引とりひきの相手方あいてがた（第三者だいさんしゃ）が発行はっこうした請求せいきゅう書しょ等とうという客観きゃっかん的てきな証拠しょうこ書類しょるいの保存ほぞんを仕入しいれ税額ぜいがく控除こうじょの要件ようけんとする方式ほうしき」[18] である「請求せいきゅう書しょ保存ほぞん方式ほうしき（日本にっぽん型がたインボイス方式ほうしき）」が導入どうにゅうされている。

欧州おうしゅうの付加ふか価値かち税ぜいで導入どうにゅうされているインボイスを、日本にっぽんの消費しょうひ税ぜい方式ほうしきにおいても導入どうにゅうを望のぞむ意見いけんもある。日本にっぽんはインボイス方式ほうしきが導入どうにゅうされていないため、付加ふか価値かち税ぜいの徴税ちょうぜいの正確せいかくさが劣おとっている可能かのう性せいが高たかいとの指摘してきがある[誰だれによって?]が、必かならずしもインボイス方式ほうしきを導入どうにゅうしたからといって消費しょうひ税ぜい制度せいどの正確せいかく性せいが向上こうじょうするものではない。

高橋たかはし洋一よういちは、インボイスを導入どうにゅうしていないために3兆ちょう円えん程度ていどの税収ぜいしゅう漏もれが発生はっせいしているとして、同どう制度せいどを導入どうにゅうすべきと提言ていげんしている[19]。高橋たかはしは、インボイス方式ほうしきの導入どうにゅうが所得しょとく捕捉ほそくの向上こうじょうにも寄与きよし、消費しょうひ税収ぜいしゅうの向上こうじょうにつながると述のべている[19]。

中央大学ちゅうおうだいがく大学院だいがくいん法務ほうむ研究けんきゅう科か教授きょうじゅで元もと財務ざいむ官僚かんりょうの森もり信しん茂樹しげきはこの3兆ちょう円えんという金額きんがくは誤あやまった計算けいさん方式ほうしきによる算出さんしゅつであるとの指摘してきをしている[20]。森もり信しんは、インボイス方式ほうしきの導入どうにゅうが所得しょとく捕捉ほそくの向上こうじょうにも寄与きよするという「インボイス神話しんわ」は、仕入しいれ税額ぜいがく控除こうじょ制度せいどの在あり方かたに関かんする冷静れいせいな議論ぎろんを誤あやまらせるものであり、問題もんだいであると指摘してきしている[21]。

欧州おうしゅうにおけるインボイス制度せいどの問題もんだい点てん[編集へんしゅう]

  • コンプライアンス事務じむ負担ふたんの増大ぞうだい - 欧州おうしゅうでは、インボイス制度せいどを導入どうにゅうすることによる「税務ぜいむコンプライアンスコスト」の増大ぞうだいが、企業きぎょうの生産せいさん性せいを著いちじるしく低下ていかさせているとの指摘してきがある[22]。
  • 不正ふせい行為こういの横行おうこう - インボイス自体じたいが金券きんけんとなるため、既すでにインボイスが導入どうにゅうされている欧州おうしゅうでは、「偽造ぎぞうインボイス」や「インボイス飛とばし」等とうの不正ふせいな手口てぐちが横行おうこうし脱税だつぜい行為こういが問題もんだいになっており[23]、ドイツでは消費しょうひ税収ぜいしゅうの10%相当そうとう分ぶんが徴税ちょうぜい漏もれとなっているとの指摘してきもある[24]。

消費しょうひ地ち課税かぜい主義しゅぎ[編集へんしゅう]

生産せいさんと消費しょうひは一対いっついの取引とりひきとして行おこなわれるものであるが、これらが国境こっきょうをまたがる場合ばあいには、どの時点じてんで課税かぜいするかによって、制度せいどの趣旨しゅしが変化へんかすることになる。日本にっぽんの現行げんこう制度せいどは、生産せいさん時点じてんで一旦いったん課税かぜいしたものを消費しょうひ地ち課税かぜい主義しゅぎに基もとづいて調整ちょうせいするものであるが、その過程かていで輸出ゆしゅつ企業きぎょうに対たいして還付かんぷが行おこなわれることから、消費しょうひ地ち課税かぜい主義しゅぎに対たいして批判ひはんがなされることがある。なお、生産せいさん地ち課税かぜいに基もとづき輸出ゆしゅつ取引とりひきに課税かぜいした場合ばあい（輸出ゆしゅつ取引とりひきについて仕入しいれ税額ぜいがく控除こうじょを認みとめない場合ばあいを含ふくむ）、輸入ゆにゅう消費しょうひ税ぜいはその課税かぜい根拠こんきょを失うしなうことになる。

輸出ゆしゅつ事業じぎょう者しゃむけの消費しょうひ税ぜい還付かんぷ制度せいどが一種いっしゅの「補助ほじょ金きん」に当あたっており不ふ公正こうせいだとの主張しゅちょうもしばしば見みられる。たとえば税理士ぜいりしの湖みずうみ東京とうきょう至いたり（元もと関東学院大学かんとうがくいんだいがく法科ほうか大学院だいがくいん教授きょうじゅ）は平成へいせい18年度ねんど予算よさんを元もとに、消費しょうひ税ぜい全体ぜんたいの税収ぜいしゅうが地方ちほう消費しょうひ税ぜいを入いれて5%で計算けいさんすると約やく13兆ちょう円えん。そのうち約やく23%の3兆ちょう円えんが輸出ゆしゅつ企業きぎょうに還付かんぷされていると試算しさんしており[25]、ジャーナリストの斎藤さいとう貴男たかおや湖みずうみ東京とうきょう至いたりは、消費しょうひ税ぜいは輸出ゆしゅつ企業きぎょうへの補助ほじょ金きんとしての側面そくめんがあり、日本にっぽん経団連けいだんれんが消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを主張しゅちょうする理由りゆうのひとつであると主張しゅちょうしている[26][27][28]。消費しょうひ税ぜい納税のうぜい額がく＝売上うりあげ税額ぜいがく－仕入しいれ税額ぜいがくであるが、輸出ゆしゅつ取引とりひきは消費しょうひ税法ぜいほう第だい七なな条じょう(輸出ゆしゅつ免税めんぜい等とう)で消費しょうひ税ぜいを免除めんじょされており、売上うりあげ税額ぜいがくは0％税率ぜいりつで0円えんとなるから、消費しょうひ税ぜい納税のうぜい額がくは必かならずマイナス仕入しいれ税額ぜいがくになり、このマイナスになった仕入しいれ税額ぜいがく分ぶんの還付かんぷを受うけられる。そうすると、還付かんぷ額がくまで含ふくめた消費しょうひ税ぜい納税のうぜい額がく＝0－仕入しいれ税額ぜいがく＋仕入しいれ税額ぜいがく＝0となり、消費しょうひ税ぜいを納付のうふしていない。国内こくない取引とりひきの場合ばあいは売上うりあげ＞仕入しいれである限かぎり、消費しょうひ税ぜい納税のうぜい額がくが発生はっせいするので、消費しょうひ税ぜいはモデルとした付加ふか価値かち税ぜいと同様どうよう、輸出ゆしゅつ企業きぎょうへの補助ほじょ金きんの側面そくめんを有ゆうしていることは明あきらかである。

高橋たかはし洋一よういちは「こうした仕組しくみはどこの国くににもある。企業きぎょうは、受うけ取とった消費しょうひ税ぜい分ぶんから支払しはらった消費しょうひ税ぜい分ぶんを引ひいた金額きんがくを納税のうぜい（マイナスになれば還付かんぷ）するため、還付かんぷされたからといって収益しゅうえきに変化へんかはない。輸出ゆしゅつに対たいして輸出ゆしゅつ企業きぎょうに恩恵おんけいを与あたえているわけでない。国くにとしても、輸出ゆしゅつで消費しょうひ税ぜいを還付かんぷしたとしても、輸入ゆにゅうでは逆ぎゃくに消費しょうひ税ぜいを課かせるため、国内こくないの消費しょうひを課税かぜいベースとする消費しょうひ税ぜいでは損そんも得とくもない」と指摘してきしている[29]。しかし「輸出ゆしゅつ企業きぎょうに恩恵おんけいを与あたえているわけではない」が誤あやまりであることは、前述ぜんじゅつのとおり、輸出ゆしゅつ取引とりひきと国内こくない取引とりひきで消費しょうひ税ぜい納税のうぜい額がくに差さが生しょうじることから明あきらかである。また、輸出ゆしゅつ取引とりひき額がく＝輸入ゆにゅう取引とりひき額がくでない限かぎり、0％課税かぜいで0円えんとした輸出ゆしゅつ取引とりひきの売上うりあげ税額ぜいがく分ぶんの税収ぜいしゅう減げんを、輸入ゆにゅう時じの消費しょうひ税ぜい課税かぜいによる税収ぜいしゅうで相殺そうさいできるわけもなく、これもまた誤あやまりである。

制度せいど上じょうの諸しょ議論ぎろん[編集へんしゅう]

この項こうでは、課税かぜい技術ぎじゅつ上じょうの諸しょ議論ぎろんについて述のべる。

益税えきぜい問題もんだい[編集へんしゅう]

消費しょうひ税ぜいは間接かんせつ税ぜいであるため、実際じっさいの取引とりひきと納税のうぜい処理しょりとの間あいだに差異さいがあると、制度せいどの趣旨しゅしに反はんする形かたちで事業じぎょう者しゃが利益りえきを得えることがある。このことは益税えきぜい問題もんだいと呼よばれる。 益税えきぜい問題もんだいには、免税めんぜい点てん制度せいど、簡易かんい課税かぜい制度せいど、95%ルールなどがある。

経済けいざい学者がくしゃの八田はった達夫たつおは「日本にっぽんの消費しょうひ税ぜいは自営業じえいぎょう者しゃに『追おい銭せん』を与あたえており、消費しょうひ税ぜいが上あげるほどクロヨン問題もんだいは悪化あっかする。クロヨン問題もんだいの解決かいけつには徴税ちょうぜい体制たいせいの整備せいびが不可欠ふかけつである」と指摘してきしている[30]。

しかし、消費しょうひ税法ぜいほう第だい5条じょう1項こうは、事業じぎょう者しゃ（個人こじん事業じぎょう主ぬし及および法人ほうじん）に対たいして、消費しょうひ税ぜいの納税のうぜい義務ぎむを課かしている。最終さいしゅう消費しょうひ者しゃの権利けんり義務ぎむ関係かんけいに関かんしては、消費しょうひ税法ぜいほう上じょう、規定きていが設もうけられていないことから、「国くにと最終さいしゅう消費しょうひ者しゃ」及および「事業じぎょう者しゃと最終さいしゅう消費しょうひ者しゃ」との間あいだには、消費しょうひ税法ぜいほう上じょう、何なんらの租税そぜい法律ほうりつ関係かんけいも存在そんざいしない。事業じぎょう者しゃは、国くにとの関係かんけいにおいて、他たに納税のうぜい義務ぎむ者しゃが存在そんざいし、自みずからは納付のうふ義務ぎむのみを負おうという関係かんけいにはない。この消費しょうひ税ぜいの納税のうぜい義務ぎむ者しゃを巡めぐっては、税制ぜいせい改革かいかく法ほう11条じょう（消費しょうひ税ぜいの円滑えんかつかつ適正てきせいな転嫁てんか）の規定きていを根拠こんきょに、事業じぎょう者しゃは単たんなる徴収ちょうしゅう義務ぎむ者しゃであり、納税のうぜい義務ぎむ者しゃは消費しょうひ者しゃであるとの主張しゅちょうが裁判さいばんで争あらそわれ、判例はんれいである東京とうきょう地裁ちさい平成へいせい２年ねん３月がつ26日にち判決はんけつ（判例はんれい時報じほう1344号ごう115頁ぺーじ）では、「消費しょうひ者しゃは消費しょうひ税ぜいの実質じっしつ的てき負担ふたん者しゃであるが、納税のうぜい義務ぎむ者しゃであるとはいえず、したがって、消費しょうひ者しゃが事業じぎょう者しゃに対たいして支払しはらう消費しょうひ税ぜい分ぶんは、あくまで商品しょうひんや役務えきむの提供ていきょうに対たいする対価たいかの一部いちぶとしての性格せいかくしか有ゆうしておらず、事業じぎょう者しゃが当該とうがい消費しょうひ税ぜい分ぶんにつき過不足かふそくなく国庫こっこに納付のうふする義務ぎむを消費しょうひ者しゃに対たいする関係かんけいで負おう者ものではない」旨むねが判示はんじされている[31]。田中たなか治おさむ教授きょうじゅ（当時とうじ大阪府立大学おおさかふりつだいがく経済学部けいざいがくぶ教授きょうじゅのち同志社大学どうししゃだいがく法学部ほうがくぶ教授きょうじゅ）は、「少すくなくとも消費しょうひ税ぜい導入どうにゅうの初期しょきの頃ころは、あたかも、消費しょうひ者しゃが納税のうぜい義務ぎむ者しゃであるかのような錯覚さっかくが生しょうじた。消費しょうひ者しゃが事業じぎょう者しゃに対たいして支払しはらった消費しょうひ税ぜいの一部いちぶが国庫こっこに納入のうにゅうされない、という意味いみの益税えきぜい論ろん（今日きょうもなお存続そんぞくしているようであるが）は、法ほうの根拠こんきょのない主張しゅちょうであって、相当そうとうではない」と述のべている[32]。財務省ざいむしょうもこの判決はんけつを踏襲とうしゅうし、消費しょうひ税ぜいは預あずかり税ぜい（益税えきぜい）ではないと認みとめている[33]。

免税めんぜい点てん制度せいど[編集へんしゅう]

基準きじゅん期間きかん(事業じぎょう期間きかんの前まえ々年度ねんど)における課税かぜい売上うりあげ高だか（税ぜい抜ぬき、輸出ゆしゅつ免税めんぜい売上うりあげを含ふくむ）が1000万まん円えん以下いかである事業じぎょう者しゃは、消費しょうひ税ぜいの納税のうぜい義務ぎむが免除めんじょされる。小規模しょうきぼ事業じぎょう者しゃの納税のうぜい事務じむ負担ふたんに配慮はいりょして設もうけられた制度せいどである[34][35]。ただし、基準きじゅん期間きかんに免税めんぜい事業じぎょう者しゃであった場合ばあい、免税めんぜい事業じぎょう者しゃは消費しょうひ税法ぜいほう第だい5条じょうの納税のうぜい義務ぎむ者しゃ(課税かぜい対象たいしょう者しゃ)を第だい9条じょうで免除めんじょされ、売上うりあげに消費しょうひ税ぜいを課かされていないので、控除こうじょする消費しょうひ税額ぜいがく＝0となり、基準きじゅん期間きかんにおける売上うりあげ高だかの全額ぜんがくが課税かぜい売上うりあげ高だかとなるので、注意ちゅういが必要ひつようである。例たとえば基準きじゅん期間きかんに免税めんぜい事業じぎょう者しゃで売上うりあげ高だかが1100万まん円えんの場合ばあい、課税かぜい売上うりあげ高だかも1100万まん円えんのため、事業じぎょう期間きかんは課税かぜい事業じぎょう者しゃとなる。売上うりあげ高だか1100万まん円えんには消費しょうひ税率ぜいりつ10％が課かされているものとして、課税かぜい売上うりあげ高だかは1000万まん円えんだから事業じぎょう期間きかんは免税めんぜい事業じぎょう者しゃだと判断はんだんを誤あやまって消費しょうひ税ぜいの申告しんこくと納税のうぜいを行おこなわないと、後日ごじつ、税務署ぜいむしょから事業じぎょう期間きかん分ぶんの消費しょうひ税ぜいと無む申告しんこく加算かさん税ぜいを課かされることとなる。

2004年度ねんどから免税めんぜい点てん売上うりあげ高だかが3000万まん円えん→1000万まん円えんと引ひき下さげられた。

簡易かんい課税かぜい制度せいど[編集へんしゅう]

簡易かんい課税かぜい制度せいどは、課税かぜい売上うりあげ高だかの一定いってい割合わりあいを仕入しいれとみなして、事業じぎょう者しゃの事務じむ処理しょり上じょうの煩雑はんざつさを除去じょきょすることにより、納税のうぜい事務じむ負担ふたんを軽減けいげんするために設もうけられた制度せいどである。免税めんぜい点てん制度せいどと同おなじく、小規模しょうきぼ事業じぎょう者しゃの納税のうぜい事務じむ負担ふたんに配慮はいりょして設もうけられた制度せいどであるが、「みなし仕入しいれ率りつ」が高たかすぎることに対たいする批判ひはんが強つよい。2004年度ねんどから課税かぜい売上うりあげ高だか（税ぜい抜ぬき、輸出ゆしゅつ免税めんぜい売上うりあげを含ふくむ。基準きじゅん年度ねんど＝課税かぜい期間きかんの前まえ々年度ねんどの実績じっせきで判定はんてい）の上限じょうげんが2億おく円えん以下いか→5000万まん円えん以下いかと引ひき下さげられた。

売上うりあげ高だかに、業種ぎょうしゅに応おうじたみなし仕入しいれ率りつを乗じょうじて、簡易かんいに税額ぜいがくを算出さんしゅつするもの。適用てきよう上限じょうげんとなる売上うりあげ高だかは、5,000万まん円えん。通常つうじょう納付のうふする消費しょうひ税額ぜいがくは、売上うりあげに係かかる消費しょうひ税額ぜいがくから課税かぜい仕入しいれに係かかる消費しょうひ税額ぜいがくを控除こうじょして計算けいさんするが、基準きじゅん期間きかんにおける課税かぜい売上うりあげ高だかが5000万まん円えん以下いかである事業じぎょう者しゃは、「みなし仕入しいれ率りつ」を用もちいて仕入しいれ税額ぜいがくを計算けいさんすることができる。そのため、みなし仕入しいれ率りつによる仕入しいれ税額ぜいがくと実際じっさいの仕入しいれ税額ぜいがくとの差額さがくが発生はっせいする場合ばあいに、自みずからの利益りえき（損失そんしつ）となる[35]。

ドイツ等とうにおいても簡易かんい課税かぜい制度せいどは存在そんざいし、みなし仕入しいれ率りつは損そん税ぜいが発生はっせいするように設定せっていされている。簡易かんい課税かぜい制度せいどにおいては、帳簿ちょうぼ等とうの保存ほぞんが軽減けいげんされており、この浮ういた経費けいひと損そん税ぜいが相殺そうさいされるように調整ちょうせいされている。

日本にっぽんのみなし仕入しいれ率りつ
  • 90% - 第だい1種しゅ事業じぎょう：卸売おろしうり業ぎょう
  • 80% - 第だい2種しゅ事業じぎょう：小売こうり業ぎょう、農林のうりん水産すいさん業ぎょう(食用しょくよう)
  • 70% - 第だい3種しゅ事業じぎょう：農林のうりん水産すいさん業ぎょう(食用しょくよう以外いがい)、鉱工業こうこうぎょう、建設けんせつ業ぎょう、水道すいどう光熱こうねつ業ぎょう、製造せいぞう業ぎょう
  • 60% - 第だい4種しゅ事業じぎょう：飲食いんしょく店てん業ぎょう、その他た
  • 50% - 第だい5種しゅ事業じぎょう：金融きんゆう及および保険ほけん業ぎょう、運輸うんゆ・通信つうしん業ぎょう、サービス業ぎょう
  • 40% - 第だい6種しゅ事業じぎょう：不動産ふどうさん業ぎょう

※複数ふくすうの種類しゅるいの事業じぎょうを営いとなむ場合ばあいは、原則げんそくとして、事業じぎょうの種類しゅるいごとに課税かぜい売上うりあげ高だかを分類ぶんるいして計算けいさんすることになる。（この観点かんてんでは、簡易かんい課税かぜい事業じぎょう者しゃの一部いちぶは、既すでに複数ふくすう税率ぜいりつを経験けいけんしていたことになる。）ただし、1種類しゅるいの課税かぜい売上うりあげ高だかが課税かぜい売上うりあげ総額そうがくが75%以上いじょうの場合ばあいは、有利ゆうり選択せんたくとして最もっとも高たかい「みなし仕入しいれ率りつ」を適用てきようすることができる。それ以外いがいの場合ばあいで、2種類しゅるいの課税かぜい売上うりあげ高だかが75%以上いじょうの場合ばあいは、有利ゆうり選択せんたくとして、その2種類しゅるいの「みなし仕入しいれ率りつ」を適用てきようすることができる。

非課税ひかぜい取引とりひきについては消費しょうひ税ぜいを課かさないこととされており、また仕入しいれ税額ぜいがく（仮かり払はらい消費しょうひ税ぜい）のうち非課税ひかぜい売上うりあげに対応たいおうする部分ぶぶんについては控除こうじょ対象たいしょうとならない。ただし、課税かぜい期間きかんにおける課税かぜい売上うりあげ高だかが5億おく円えん以下いかかつ課税かぜい売上うりあげ割合わりあいが95%以上いじょうである事業じぎょう者しゃは、仕入しいれ税額ぜいがくを全額ぜんがく控除こうじょすることができる。そのため、要件ようけんを満みたす事業じぎょう者しゃが要件ようけんを満みたさない事業じぎょう者しゃと同どう水準すいじゅんの価格かかくを設定せっていした場合ばあい、要件ようけんを満みたす事業じぎょう者しゃは仕入しいれ税額ぜいがく相当そうとう額がくを自みずからの利益りえきとすることができる[35]。

なお、2012年度ねんどから課税かぜい売上うりあげ高だかの制限せいげん（5億おく円えん以下いか）が設もうけられた。

無形むけい資産しさんの輸入ゆにゅう・国外こくがいからの役務えきむ提供ていきょう[編集へんしゅう]

情報じょうほう産業さんぎょうの発達はったつに伴ともないこの種たねの取引とりひきが急速きゅうそくに拡大かくだいしているため、国内こくないの事業じぎょう者しゃから不公平ふこうへいであるとの批判ひはんが強つよい。

消費しょうひ税ぜいは、付加ふか価値かちが生産せいさんされた場所ばしょではなく消費しょうひされた場所ばしょに基もとづいて課かされるものであるから、国外こくがいで生産せいさんされ輸入ゆにゅうされる有形ゆうけい資産しさんには消費しょうひ税ぜいが課かされている。しかし、2016年ねん改正かいせい以前いぜんは、無形むけい資産しさんの輸入ゆにゅう・海外かいがいからの役務えきむ提供ていきょうに対たいしては消費しょうひ税ぜいが課かされていない[注ちゅう 3] ため、国外こくがいの事業じぎょう者しゃは消費しょうひ税ぜい相当そうとう額がくを自みずからの利益りえきとすることができるか、あるいは値引ねびきの原資げんしとすることで国内こくない事業じぎょう者しゃとの差別さべつ化かを図はかることができた[36]。

非課税ひかぜい[編集へんしゅう]

先述せんじゅつの通とおり、一定いっていの取引とりひきについては消費しょうひ税ぜいを課かさないこととされており、また仕入しいれ税額ぜいがくのうち非課税ひかぜい売上うりあげに対応たいおうする部分ぶぶんについては控除こうじょ対象たいしょうとならない。このことについて、事業じぎょう者しゃが消費しょうひ者しゃの負担ふたんを肩代かたがわりする「損そん税ぜい問題もんだい」が発生はっせいしていると主張しゅちょうされることがある。しかし、同種どうしゅの取引とりひきについて同種どうしゅの課税かぜいがなされている以上いじょう、市場いちばはそれを前提ぜんていに構成こうせいされており、仕入しいれ税額ぜいがくは本体ほんたい価格かかくとして消費しょうひ者しゃに転嫁てんかされていると言いえる。従したがって、経済けいざい的てき実態じったいは課税かぜい取引とりひきの場合ばあいとほとんど変かわらない。

ただし、後述こうじゅつの社会しゃかい保険ほけんとの関連かんれんについては留意りゅういする必要ひつようがある。

輸出ゆしゅつ免税めんぜい[編集へんしゅう]

輸出ゆしゅつ売上うりあげ等とうについては消費しょうひ税ぜいが免除めんじょされる(消費しょうひ税率ぜいりつ0％で売上うりあげ税額ぜいがく0円えんになる)が、輸出ゆしゅつ売上うりあげにかかる仕入しいれ税額ぜいがくは税額ぜいがく控除こうじょの対象たいしょうとなる。これは、付加ふか価値かちが生産せいさんされた場所ばしょではなく消費しょうひされた場所ばしょに基もとづいて課税かぜいするという目的もくてきに従したがったものである。この結果けっか、輸出ゆしゅつ取引とりひきを行おこなう事業じぎょう者しゃについては、消費しょうひ税ぜい納税のうぜい額がくが必かならずマイナス仕入しいれ税額ぜいがくとなり、マイナスとなった仕入しいれ税額ぜいがくを還付かんぷすることとなる。

消費しょうひ地ち課税かぜい主義しゅぎを認みとめない立場たちばからは、還付かんぷという現象げんしょうを捉とらえて益税えきぜい問題もんだいであると主張しゅちょうされることがある（消費しょうひ地ち課税かぜい主義しゅぎを参照さんしょう）。

社会しゃかい保険ほけんとの関連かんれん[編集へんしゅう]

先述せんじゅつの通とおり、非課税ひかぜい自体じたいは制度せいど上じょうの問題もんだいではない。しかし、非課税ひかぜい取引とりひきのうち医療いりょう・介護かいごなど報酬ほうしゅう額がくの定さだめがあるものについては仕入しいれ税額ぜいがくを直接ちょくせつ消費しょうひ者しゃに転嫁てんかすることができず、仕入しいれに際さいして負担ふたんした消費しょうひ税ぜいは、診療しんりょう報酬ほうしゅう等とうを通とおして配分はいぶんされることとなる。このため、消費しょうひ税ぜいと診療しんりょう報酬ほうしゅう等とうとの関連かんれん付づけが不十分ふじゅうぶんだと、医療いりょう機関きかん等とうの経営けいえいが不安定ふあんていになりかねない。

これに対たいし、これらについて仕入しいれ税額ぜいがく控除こうじょを適用てきようすることにより、税制ぜいせいの変化へんかにかかわらず医療いりょう機関きかん等とうが課税かぜい仕入しいれを行おこなうことができるようにすべきであるという主張しゅちょうがある。仮かりにこの方法ほうほうを取とると、医療いりょう機関きかん等とうの自由じゆう度ど（仕入しいれとの対応たいおう関係かんけい）が増ます一方いっぽうで、平等びょうどう性せい（売上うりあげとの対応たいおう関係かんけい）が損そこなわれることとなる。消費しょうひ税ぜいの趣旨しゅしだけでなく社会しゃかい保険ほけんの趣旨しゅしにも関かかわるため、どちらが適切てきせつであるか一義的いちぎてきな結論けつろんを導みちびくことはできない。

二に重じゅう課税かぜい[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「二に重じゅう課税かぜい」を参照さんしょう

狭義きょうぎの消費しょうひ税ぜいと個別こべつ消費しょうひ税ぜいとの間あいだで二に重じゅう課税かぜいが指摘してきされることがある。個別こべつ消費しょうひ税ぜいには、狭義きょうぎの消費しょうひ税ぜいの課税かぜい標準ひょうじゅんに含ふくまれるものと含ふくまれないもの、従量税じゅうりょうぜいと従価税じゅうかぜいが存在そんざいするため、以下いかの3区分くぶんに分わけて述のべる（課税かぜい標準ひょうじゅんに含ふくまれる従価税じゅうかぜいは存在そんざいしない）。なお、政策せいさく目的もくてきが異ことなる場合ばあい、ある消費しょうひ行為こういに関かんして複数ふくすうの税ぜいを課かすことが必かならずしも妥当だとうでないとは言いえないことに注意ちゅういが必要ひつようである。

課税かぜい標準ひょうじゅんに含ふくまれる従量税じゅうりょうぜい[編集へんしゅう]

酒税しゅぜい、たばこ税ぜい、揮発きはつ油ゆ税ぜい、石油せきゆ石炭せきたん税ぜい、石油せきゆガス税ぜいなどが該当がいとうする。個別こべつ消費しょうひ税ぜい相当そうとう額がくについても狭義きょうぎの消費しょうひ税ぜいが課かされるため、消費しょうひ者しゃから見みれば一方いっぽうの税率ぜいりつが変動へんどうすると乗法じょうほう的てきに負担ふたんが変動へんどうすることとなる。

ガソリンにはガソリン税ぜい（53.8円えん/L）がかかり、さらに加くわえて石油せきゆ税ぜい（2.04円えん/L）、原油げんゆ関税かんぜい（0.17円えん/L）がかけられるが、それらを含ふくめた販売はんばい価格かかくに対たいして消費しょうひ税ぜいがかかる。2004年ねん7月がつ21日にちの石油せきゆ連盟れんめい発表はっぴょう資料しりょうでは、本体ほんたい価格かかくに対たいする消費しょうひ税ぜいが5700億おく円えん、石油せきゆ諸税しょぜいにかかる消費しょうひ税ぜいが1800億おく円えんとしている[37]。

課税かぜい標準ひょうじゅんに含ふくまれない従量税じゅうりょうぜい[編集へんしゅう]

入湯にゅうとう税ぜい、ゴルフ場じょう利用りよう税ぜい、軽油けいゆ引取ひきと税ぜいなどが該当がいとうする。相互そうごに独立どくりつしているため、問題もんだいを指摘してきされることは少すくない。

課税かぜい標準ひょうじゅんに含ふくまれない従価税じゅうかぜい[編集へんしゅう]

新築しんちく家屋かおくに係かかる不動産ふどうさん取得しゅとく税ぜい、新車しんしゃに係かかる自動車じどうしゃ取得しゅとく税ぜいが該当がいとうする（建設けんせつ者しゃ・製造せいぞう者しゃが取得しゅとくした場合ばあいにも課税かぜいされるため、流通りゅうつう税ぜいではない。ただし中古ちゅうこ物件ぶっけん・中古ちゅうこ車しゃに係かかるものは個別こべつ流通りゅうつう税ぜいにあたる）。狭義きょうぎの消費しょうひ税ぜいと同おなじく従価税じゅうかぜいであるため、消費しょうひ者しゃから見みれば実質じっしつ的てきな複数ふくすう税率ぜいりつ状態じょうたいとなっている。このうち自動車じどうしゃ取得しゅとく税ぜいについては、消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげに伴ともない2017年ねん4月がつに廃止はいしされた。

軽減けいげん税率ぜいりつの導入どうにゅう[編集へんしゅう]

「軽減けいげん税率ぜいりつ」および「ラムゼイルール」も参照さんしょう

日本にっぽんでは、食料しょくりょう品ひん、衣類いるいなども課税かぜい対象たいしょうとなっている。この点てん、低てい所得しょとく・低てい資産しさんの家計かけいに配慮はいりょする観点かんてんから軽減けいげん税率ぜいりつを導入どうにゅうすべきとの考かんがえ方かたがある。標準ひょうじゅん税率ぜいりつが15%台だいを超こえている諸しょ外国がいこくでは食料しょくりょう品等ひんとうについては軽減けいげん税率ぜいりつ又または非課税ひかぜいが導入どうにゅうされている例れいが多おおい[38]。他方たほう、飲食いんしょくサービス（レストランでの食事しょくじ等とう）といわゆる持もち帰かえりとの区別くべつをどのようにするかという問題もんだいがある[要よう出典しゅってん]。

軽減けいげん税率ぜいりつは、所得しょとくが低ひくいほど消費しょうひに占しめる生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんの割合わりあいが大おおきいことに着目ちゃくもくした制度せいどであるが、高こう所得しょとく者しゃにも軽減けいげん税率ぜいりつが適用てきようされるため、金額きんがくベースでは絶対ぜったい的てきな消費しょうひが大おおきい高こう所得しょとく者しゃがより多おおくの恩恵おんけいを受うけることとなる。このため、必かならずしも富とみの再さい分配ぶんぱいの観点かんてんから、好このましいとは言いえないという批判ひはんがある[39]。

肯定こうてい派は[編集へんしゅう]

否定ひてい派は[編集へんしゅう]

  • 税務大学校ぜいむだいがっこう教授きょうじゅの論叢ろんそうによると、軽減けいげん税率ぜいりつの「研究けんきゅうを通とおして学まなんだことは、食品しょくひん等とうに対たいする軽減けいげん税率ぜいりつの導入どうにゅうがいかに問題もんだいを抱かかえた政策せいさくであるかということであった。」とし、3つの理由りゆうを挙あげている[40]。第だい一いちの理由りゆうは逆進ぎゃくしん性せい緩和かんわ効果こうかの観点かんてんであり、高額こうがく所得しょとく者しゃ層そうにより高額こうがくの軽減けいげん効果こうかが及およぶため低てい所得しょとく者しゃ層そうの負担ふたん軽減けいげん効果こうかはさほど期待きたいできない[40]。第だい二にの理由りゆうは制度せいど設計せっけいの困難こんなん性せいであり、軽減けいげん税率ぜいりつの対象たいしょうとする範囲はんいなどの仕切しきりを合理ごうり的てき、公平こうへいに設定せっていすることは困難こんなんであり、多おおくの矛盾むじゅんや混乱こんらんを生しょうじさせかねない[40]。欧州おうしゅう諸国しょこくでは軽減けいげん税率ぜいりつが採用さいようされているが、様々さまざまな問題もんだいや矛盾むじゅんを抱かかえており、これらの国々くにぐにから学まなぶべきはむしろそうした歴史れきしからの教訓きょうくんではないだろうか[40]。第だい三さんの理由りゆうは、事業じぎょう者しゃのコストの増大ぞうだいや徴税ちょうぜいコストの増大ぞうだいである[40]。これら3つの理由りゆうにより政策せいさく的てき配慮はいりょが必要ひつようであるにしても許容きょようするべきではなく、「10%程度ていどの税率ぜいりつの下したでは引ひき続つづき単一たんいつ税率ぜいりつを維持いじすべきであると考かんがえる」、としている[40]。
  • 経済けいざい学者がくしゃの石いし弘光ひろみつは「（消費しょうひ税ぜいの）税率ぜいりつアップと軽減けいげん税率ぜいりつはどこの国くにでもワンセットである。軽減けいげん税率ぜいりつは中高なかだか所得しょとく者しゃの税ぜい負担ふたんも軽かるくする」と指摘してきしている[38]。
  • 岩本いわもと沙すな弓ゆみは「消費しょうひ税ぜいは国内こくない消費しょうひを減退げんたいさせ、内需ないじゅ関連かんれん事業じぎょう者しゃから徴税ちょうぜいするため国内こくない景気けいきを一気いっきに冷ひやす。軽減けいげん税率ぜいりつの適用てきようでは根本こんぽん的てきな問題もんだいの解決かいけつにはならない」と指摘してきしている[41]。
  • 経済けいざい学者がくしゃの伊藤いとう元重もとしげは東京大学とうきょうだいがく法学部ほうがくぶ、平成へいせい26年度ねんどの「経済けいざい学がく基礎きそ」の講義こうぎにおいて「どの品目ひんもくを軽減けいげん税率ぜいりつとするかで圧力あつりょく団体だんたいともめたり、また軽減けいげん税率ぜいりつを採用さいようした時ときにかかる税務署ぜいむしょ職員しょくいんの人件じんけん費ひが増ふえたりと、軽減けいげん税率ぜいりつ導入どうにゅうによるコストと税収ぜいしゅうをプラス・マイナスしたらそれほど大おおきな税収ぜいしゅうにはならないのではないか」と述のべている[要よう出典しゅってん]。2014年ねんの第だい9回かい税制ぜいせい調査ちょうさ会議かいぎにおいては、「私わたしも軽減けいげん税率ぜいりつは反対はんたいで、合理ごうり的てきに考かんがえればそのとおりだと思おもいます。」とし、「国民こくみんの7割わりから8割わりは軽減けいげん税率ぜいりつが必要ひつようだと考かんがえています。」と触ふれながら「今いま、経済けいざい学がくの世界せかいでは、行動こうどう経済けいざい学がくという考かんがえ方かたで、必かならずしもみんな合理ごうり的てきに行動こうどうしない」ことが知しられている、とつづけ、「軽減けいげん税率ぜいりつをしないことがいかに大切たいせつなことであるかをしっかり出だしていくことは、少すこし違ちがう次元じげんとしてあると思おもいました。」と語かたった[42][43]。
  • 政治せいじ学者がくしゃの加藤かとう淳子じゅんこは「軽減けいげん税率ぜいりつは定額ていがく給付きゅうふより不公平ふこうへいであり、しかもその運用うんように関かかわるコストは経済けいざいや社会しゃかい保障ほしょうを圧迫あっぱくする。」とし、「EUにおいて軽減けいげん税率ぜいりつの適用てきようで生しょうじる事務じむコストは、当初とうしょの予想よそうをはるかに超こえ、それを補おぎなうために標準ひょうじゅん税率ぜいりつ（軽減けいげん税率ぜいりつではない通常つうじょうの税率ぜいりつ）は高騰こうとうした。」と指摘してきしている[44]。さらに、「ニュージーランドでは、EUの失敗しっぱいに学まなび、軽減けいげん税率ぜいりつは設もうけず、付加ふか価値かち税ぜい本来ほんらいの安定あんていした税収ぜいしゅうを確保かくほし、EUより低ひくい税率ぜいりつの維持いじに成功せいこうしている。」と述のべ、「高こう所得しょとく層そうをも優遇ゆうぐうする軽減けいげん税率ぜいりつを退しりぞけて得えた税収ぜいしゅうを社会しゃかい保障ほしょうなどへの給付きゅうふに回まわした方ほうが、低てい所得しょとく層そうを保護ほごする。」とした[44]。また、ＩＴの活用かつようによる徴税ちょうぜいコスト削減さくげんも考かんがえられるが、「問題もんだいとなるコストの多おおくは、イートインと持もち帰かえりが可能かのうな店みせの場合ばあい、どこまで外食がいしょくかという例れいにみられるような線引せんひきに関かかわり、こうした問題もんだいにＩＴは無力むりょくである。」としている[44]。また、加藤かとうは2014年ねんの第だい9回かい税制ぜいせい調査ちょうさ会議かいぎにおいて「軽減けいげん税率ぜいりつの議論ぎろんが日本にっぽんでされるときには、ヨーロッパ諸国しょこくで軽減けいげん税率ぜいりつが使つかわれているという話はなしから必かならず始はじまります。」と前置まえおきしながら、「ヨーロッパ諸国しょこくは政治せいじ的てきな理由りゆうで止とめたくても止とめられないので続つづけていますが、他たの国くにが消費しょうひ税ぜいを導入どうにゅうするときは、軽減けいげん税率ぜいりつは絶対ぜったい使つかわないようにとアドバイスしており、国際こくさい的てきに確実かくじつに望のぞましくない政策せいさくとして広ひろく知しられています。」と語かたった[42][43]。さらに2014年ねんの内閣ないかく府ふの会合かいごうにおいては、「逆進ぎゃくしん性せいへの対応たいおうに軽減けいげん税率ぜいりつを用もちいることには強つよく反対はんたいする。逆進ぎゃくしん性せいには給付きゅうふによって対応たいおうすべきである。軽減けいげん税率ぜいりつは弱者じゃくしゃの保護ほごに逆行ぎゃっこうする。」と述のべた[45]。
  • 経済けいざい学者がくしゃの竹中たけなか平蔵へいぞうは「低てい所得しょとく者しゃへの負担ふたんを解消かいしょうする手段しゅだんとして、軽減けいげん税率ぜいりつが議論ぎろんされているが、全ぜん所得しょとく階層かいそうの負担ふたんが軽減けいげんされるのでは本末転倒ほんまつてんとうである」と指摘してきしている[46]。
  • 八田はった達夫たつおは「食料しょくりょう品ひんの消費しょうひ税ぜいの非課税ひかぜいは、富裕ふゆう層そうの外食がいしょくや高級こうきゅう食材しょくざいの消費しょうひを促うながしてしまう。低てい所得しょとく者しゃも、教育きょういく・住居じゅうきょ・交通こうつうなどに支出ししゅつするため、食料しょくりょう品ひんだけの非課税ひかぜいは所得しょとくの再さい配分はいぶんとして効果こうかが無ない」と指摘してきしている[47]。
  • 経済けいざい学者がくしゃの土居どい丈たけ朗ろうは「軽減けいげん税率ぜいりつは、格差かくさ是正ぜせいにつながらず、税収ぜいしゅうを減少げんしょうさせる。軽減けいげん税率ぜいりつ導入どうにゅうで税収ぜいしゅうが失うしなわれる分ぶん、標準ひょうじゅん税率ぜいりつのさらなる引ひき上あげが必要ひつようになる。また、軽減けいげん税率ぜいりつのほうが、他国たこくの例れいで示しめされているように、事務じむコストが大おおきく、不正ふせい・脱税だつぜいの温床おんしょうとなる傾向けいこうにある」と指摘してきしている[48]。
  • 高橋たかはし洋一よういちは「軽減けいげん税率ぜいりつを導入どうにゅうする場合ばあい、その適用てきようを巡めぐって『レントシーキング』が横行おうこうし、利権りけんが発生はっせいする[49]」「軽減けいげん税率ぜいりつは、租税そぜい特別とくべつ措置そち法ほうと同おなじで利権りけんの固かたまりになる。こうした利権りけんの裏うらには、天下あまくだりがある[50]」「所得しょとくの低ひくい人ひとの税ぜい負担ふたんを減へらすためには、一定いってい額がくの税額ぜいがくを控除こうじょする『給付きゅうふ付つき税額ぜいがく控除こうじょ』の方ほうがよい[51]」と指摘してきしている。
  • 経済けいざい学者がくしゃの大竹おおたけ文雄ふみおは軽減けいげん税率ぜいりつについて「再さい分配ぶんぱい効果こうかも弱よわく、消費しょうひ行動こうどうにゆがみを与あたえる。」としている[44]。2014年ねんの第だい9回かい税制ぜいせい調査ちょうさ会議かいぎにおいては、「私わたしも軽減けいげん税率ぜいりつは逆進ぎゃくしん性せい対策たいさくとして有効ゆうこうではないと思おもいます。」と語かたり、理由りゆうとして「高額こうがく所得しょとく者しゃの方ほうがより多おおくの減税げんぜいの恩恵おんけいを受うける。」とし、代案だいあんとして「一律いちりつの定額ていがく給付きゅうふの方ほうがまだ軽減けいげん税率ぜいりつよりは再さい分配ぶんぱい効果こうかが高たかいと考かんがえます。」と語かたった[42][43]。
  • 経済けいざい学者がくしゃの伊藤いとう隆敏たかとしは、軽減けいげん税率ぜいりつを推進すいしんしたのは一部いちぶの政治せいじ家かだが、大だい多数たすうの経済けいざい学者がくしゃと多おおくの政治せいじ家かは、「軽減けいげん税率ぜいりつには問題もんだいが多おおい。低てい所得しょとく者しゃへの財政ざいせい的てき支援しえんということでは別べつの方法ほうほうが効率こうりつ的てきである」と考かんがえている、として軽減けいげん税率ぜいりつをやめた方ほうがいい理由りゆうとして4点てんを挙あげている[52]。第だい一いちに、「そもそも消費しょうひ税ぜいが逆進ぎゃくしん的てきというのは必かならずしもあたらず、逆進ぎゃくしん性せいを緩和かんわするための軽減けいげん税率ぜいりつが高こう所得しょとく層そうにより多おおくの利得りとくをもたらす」[52]。第だい二にに、逆進ぎゃくしん性せいの軽減けいげんの方法ほうほうは、消費しょうひ税率ぜいりつの軽減けいげん税率ぜいりつ以外いがいにも方法ほうほうはある[52]。第だい一いち所得しょとく階層かいそう（年間ねんかん収入しゅうにゅう269万まん円えん未満みまん）の人達ひとたちに月額げつがく950円えんの所得しょとく補助ほじょをする方ほうがよほど効率こうりつ的てきである[52]。第だい三さんに、軽減けいげん税率ぜいりつの導入どうにゅうで、失うしなわれる税収ぜいしゅうを取とり戻もどすためには、将来しょうらいより大おおきな消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげが必要ひつようになる[52]。第だい四よんに、軽減けいげん税率ぜいりつ適用てきようの「食品しょくひん」の線引せんひきが難むずかしい[52]。
  • 経済けいざい学者がくしゃの星岳ほしだけ雄ゆうは「軽減けいげん税率ぜいりつの適用てきようは、高こう所得しょとく者しゃにより大おおきい金額きんがくを配くばる政策せいさくと同おなじで、所得しょとくの不公平ふこうへい感かんはむしろ増ますだろう。」としている。また、試算しさん例れいを示しめし、高こう所得しょとく層そうにも低てい所得しょとく層そうにも同おなじ金額きんがくを給付きゅうふした方ほうが軽減けいげん税率ぜいりつ導入どうにゅうより逆進ぎゃくしん性せい緩和かんわ効果こうかが高たかいと指摘してきした[44]。
  • 経済けいざい学者がくしゃの宍戸ししど駿しゅん太郎たろうは、消費しょうひ税ぜいそのものについて大国たいこくにおいては中小ちゅうしょう国こくより消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいのデフレ効果こうかが大おおきいとし、「大国たいこくであるアメリカあるいは日本にっぽんというのはデフレ効果こうかが大おおきいために、これは余あまり適てきした税制ぜいせいではない。特とくに軽減けいげん税率ぜいりつが入はいると、結局けっきょく税ぜい収入しゅうにゅうが目減めべりし、増税ぞうぜいの割わりに徴税ちょうぜいのコストも大おおきい。」と語かたった[53]。
  • 池田いけだ信夫しのぶは、軽減けいげん税率ぜいりつについて「賛成さんせいする経済けいざい学者がくしゃは、私わたしの知しる限かぎり1人にんもいない。軽減けいげん税率ぜいりつがこれまで導入どうにゅうされたEUなどでは、大だい混乱こんらんになっているからだ。」とし、公明党こうめいとうなどの論理ろんりでは、「貧まずしい人ひとでも食品しょくひんなどの必需ひつじゅ品ひんの消費しょうひ量りょうはあまり変かわらないので、税率ぜいりつを軽減けいげんすべきだ」であるが、池田いけだは「高こう所得しょとく層そうのほうが消費しょうひ税ぜいの支払しはらい額がくは多おおい。食品しょくひんに軽減けいげん税率ぜいりつを適用てきようすると、負担ふたんが大おおきく減へるのは高こう所得しょとく層そうなのだ。」とした[54]。また、朝日新聞あさひしんぶんが社説しゃせつで軽減けいげん税率ぜいりつに反対はんたいしていたのにも係かかわらず新聞しんぶんが軽減けいげん税率ぜいりつの適用てきよう対象たいしょうになったことについて「社会しゃかいが報道ほうどう機関きかんに求もとめる使命しめいを強つよく自覚じかくしたい」と書かいたことに対たいして池田いけだは、「軽減けいげん税率ぜいりつが望のぞましくないというのは、経済けいざい学者がくしゃのほぼ100％のコンセンサスである。朝日あさひもそう考かんがえるなら、軽減けいげん税率ぜいりつを返上へんじょうしてはどうだろうか。」とし、軽減けいげん税率ぜいりつは、「政府せいふが新聞しんぶんを『買収ばいしゅう』するコストとしては安やすいものだ。2016年ねん1月がつからの通常つうじょう国会こっかいでは野党やとうが、矛盾むじゅんだらけの軽減けいげん税率ぜいりつについて激はげしく批判ひはんするだろうが、『賄賂わいろ』をもらった新聞しんぶんは政府せいふを批判ひはんできない。」としている[55]。
  • 高市たかいち早苗さなえは軽減けいげん税率ぜいりつによる減収げんしゅう分ぶんについて、「地方ちほうの減収げんしゅうはたいへん大おおきく、3000億おく円えん超ちょうとなる。地方ちほうの社会しゃかい保障ほしょうの安定あんてい財源ざいげん確保かくほを」と語かたった[56]。
  • 小泉こいずみ進すすむ次郎じろうは、新聞しんぶんが軽減けいげん税率ぜいりつの対象たいしょうとなっていることについて「私わたしは新聞しんぶんが軽減けいげん税率ぜいりつ対象たいしょうっておかしいと思おもいます。これテレビ・新聞しんぶんはほとんど報ほうじてくれないんですよね。消費しょうひ増税ぞうぜいを訴うったえる新聞しんぶんが、自分じぶんたちの消費しょうひ増税ぞうぜいを負担ふたんしないという事ことをあまり報ほうじないっていうのはフェアじゃない。」「新聞しんぶんの軽減けいげん税率ぜいりつ反対はんたいだって言いってもね、なかなかテレビで報ほうじてもらえないんですよ。新聞しんぶんなんかほとんど書かかないんですよ」「新聞しんぶんが軽減けいげん税率ぜいりつの適用てきよう対象たいしょうというのは、増税ぞうぜいを訴うったえている新聞しんぶんが軽減けいげんされるって筋すじ通とおってないですよね。他たの業界ぎょうかいで軽減けいげん税率ぜいりつを適用てきようされるのは、食品しょくひんを抜ぬかせば新聞しんぶんだけですよ。これおかしいと思おもいますよ。これはね、ずーっと訴うったえてきてるんです。」等とうと語かたった[57]。き手きての池上いけがみ彰あきらから「新聞しんぶん社しゃを敵てきに回まわしますね。」と問とわれると「これを敵てきに回まわすとしたら、新聞しんぶん社しゃのジャーナリズムってそんなもんなんだなと思おもいますね。」と言いい切きった[57]。
  • 立憲りっけん民主党みんしゅとう代表だいひょうの枝野えだの幸男ゆきおは、「問題もんだいは、軽減けいげん税率ぜいりつを取とったからとして低てい所得しょとく者しゃに対たいする支援しえんには必かならずしもならない。お金持かねもちほど、その軽減けいげん税率ぜいりつ分ぶんについても沢山たくさん使つかうという状況じょうきょう。しかも何故なぜか新聞しんぶんが入はいっているというおかしな話はなしもある。」など軽減けいげん税率ぜいりつの意義いぎに疑問符ぎもんふをつけ、低てい所得しょとく者しゃには相当そうとう額がくを給付きゅうふする「戻もどし税ぜい」方式ほうしきなどを導入どうにゅうすべきだと主張しゅちょうした[58]。
  • 国民こくみん民主党みんしゅとう代表だいひょうの玉木たまき雄一郎ゆういちろうは、ツイッターで「消費しょうひ税ぜいの複数ふくすう税率ぜいりつには反対はんたいだ。」とし、「同おなじ品ひんでもコンビニの中なかで食たべれば10%持もち帰かえれば8%。家いえに届とどく新聞しんぶんは8%駅えきで買かえば10%電子でんし版ばんも10%。訳わけがわからない。」とつづけ、「しかも逆進ぎゃくしん性せい対策たいさくにもならず税収ぜいしゅうには1兆ちょう円えんも穴あながあく。さらにインボイスを出だせない免税めんぜい事業じぎょう者しゃは取引とりひきから排除はいじょされるから中小ちゅうしょう零細れいさい企業きぎょうの廃業はいぎょう促進そくしん税制ぜいせいになる。」と問題もんだい点てんを指摘してきした[58]。さらに新聞しんぶんの軽減けいげん税率ぜいりつについて「自分じぶんたちだけお手盛てもりのメリットを受うけて政権せいけんのヨイショ記事きじを書かいて、一方いっぽうで、国民こくみんみんな増税ぞうぜい負担ふたんしろ? 財政ざいせい再建さいけんが大切たいせつだ? 公平こうへい性せいも公正こうせい性せいもない、簡素かんそでもない、税ぜいの基本きほん原則げんそくに反はんする、こんなデタラメな複数ふくすう税率ぜいりつ、認みとめるわけにはいかない。ほんとデタラメ」とツイートした[58]。
  • 東京とうきょう財団ざいだんの亀井かめい善太郎ぜんたろうは「高齢こうれい者しゃまでカバーできる消費しょうひ税ぜいで社会しゃかい保障ほしょう費ひを賄まかなう、という社会しゃかい的てき合意ごういがあったはずなのに、それをひっくり返かえし、何なにのためにやるのかが見みえなくなった」と批判ひはんした。軽減けいげん税率ぜいりつは、各種かくしゅの世論せろん調査ちょうさで6-7割わりの高こう支持しじ率りつであるが、亀井かめいは、「新聞しんぶん社しゃの世論せろん調査ちょうさも誘導ゆうどう的てき。主権しゅけん者しゃが実際じっさいに何なにを望のぞんでいるかに応こたえるのが政治せいじなのに、与野党よやとうとも対応たいおうできないでいる。デモクラシーの危機ききだ」と警告けいこくした[56]。
  • 同おなじく東京とうきょう財団ざいだんの森もり信しん茂樹しげきは、「公明党こうめいとうは消費しょうひ税ぜい軽減けいげん税率ぜいりつの導入どうにゅうを最さい優先ゆうせん政策せいさくとして打うち出だしている。」とし、軽減けいげん税率ぜいりつの多おおくの問題もんだい点てんについて、「それに一切いっさい触ふれず、減税げんぜいになるからということで選挙せんきょ公約こうやくに掲かかげるのは、究極きゅうきょくのポピュリズム政治せいじではないか。新聞しんぶんも業界ぎょうかいとして軽減けいげん税率ぜいりつを要求ようきゅうしており、そのデメリットについては（一部いちぶの新聞しんぶんを除のぞき）一いち切口きりくちをつぐんでいる。」としている[59]。
  • 自民党じみんとう・衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの村上むらかみ誠一郎せいいちろうは、「こういう荒あらっぽい方法ほうほうを何なん回かいも続つづければ、財政ざいせいも金融きんゆうも党とうも大変たいへんなことになってしまう」と述のべた[56]。
  • 日本にっぽん商工しょうこう会議かいぎ所しょ会頭かいとうの三村みつむら明夫あきおは、「消費しょうひ税ぜいの制度せいどに関かんして1点てんだけ申もうし上あげれば、複数ふくすう税率ぜいりつの導入どうにゅうについては反対はんたいである。社会しゃかい保障ほしょうの財源ざいげんを大おおきく失うしなわせることから、あるいは給付きゅうふの削減さくげんや消費しょうひ税率ぜいりつの再さい引上ひきあげにつながるし、対象たいしょう品目ひんもくの線引せんひきも困難こんなんである。中小ちゅうしょう零細れいさい企業きぎょうに過度かどな事務じむ負担ふたんを強しいる、あるいは我々われわれとして転嫁てんかが非常ひじょうに難むずかしいという問題もんだいもある。」と語かたった[45]。
  • 日本にっぽん労働ろうどう組合くみあい総そう連合れんごう会かい会長かいちょうの古賀こが伸明のぶあきは、「低てい所得しょとく者しゃ対策たいさくとしては、制度せいど的てきに問題もんだい点てんの多おおい軽減けいげん税率ぜいりつではなく、給付きゅうふ付つき税額ぜいがく控除こうじょの導入どうにゅうを検討けんとうすべきだと思おもう。」とした[45]。
  • 作家さっかの橘たちばな玲れいは「EU諸国しょこくなど高率こうりつの消費しょうひ税ぜいを課かしている国くにの多おおくで軽減けいげん税率ぜいりつが導入どうにゅうされていますが、政策せいさくを評価ひょうかした経済けいざい学者がくしゃらの結論けつろんは、『こんなバカなこと、やらなきゃよかった』です。」「すべての商しょう取引とりひきに一律いちりつ課税かぜいし、生活せいかつ保護ほご世帯せたいや母子ぼし家庭かていなど、家計かけいが苦くるしいひとたちに一定いってい額がくを給付きゅうふした方ほうがずっと効果こうか的てきです。」とし、軽減けいげん税率ぜいりつの導入どうにゅうを強硬きょうこうに主張しゅちょうする公明党こうめいとうについて「なにを目的もくてきに日本にっぽんの政治せいじに関与かんよしているのか疑問ぎもんです。」とした[60]。
  • 国際こくさい通貨つうか基金ききん（IMF）は「効率こうりつ性せいを阻害そがいし、事務じむコスト・行政ぎょうせい管理かんりコストを増大ぞうだいさせ、恒久こうきゅう的てきな歳入さいにゅう損失そんしつをもたらす」と指摘してきし、低てい所得しょとく者しゃ対策たいさくは「低てい所得しょとく者しゃ層そうに対象たいしょうを絞しぼった補助ほじょ金きんで対処たいしょされるべき」としている[61]。
  • 国際こくさい通貨つうか基金ききんの財政ざいせい局長きょくちょうのビクトル・ガスパール（英語えいご版ばん）は軽減けいげん税率ぜいりつの導入どうにゅうについて「一般いっぱん論ろんとして消費しょうひ税ぜいの制度せいどを効率こうりつ的てきに運用うんようするには税率ぜいりつは一ひとつであることが望のぞましい」と否定ひてい的てきな考かんがえを示しめした[62]。

消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい問題もんだい[編集へんしゅう]

この項こうでは、消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげと関連かんれん事項じこうについて述のべる。消費しょうひ増税ぞうぜい論ろんの主おもな動機どうきである日本にっぽんの財政ざいせい問題もんだいについては、「日本にっぽんの財政ざいせい問題もんだい」を参照さんしょう。

紙幣しへいの通貨つうか発行はっこう権けんは中央ちゅうおう銀行ぎんこう、貨幣かへいの通貨つうか発行はっこう権けんは政府せいふにある。財政ざいせい破綻はたんするには中央ちゅうおう銀行ぎんこうが政府せいふの依頼いらいに応こたえない場合ばあいや国債こくさいの利息りそくが国家こっか予算よさんを上回うわまわる必要ひつようがあり本来ほんらいあり得えないため、租税そぜいによって利息りそくが払はらえる最低限さいていげんの財源ざいげんを確保かくほすればよい。従したがって租税そぜいは財源ざいげん確保かくほの手段しゅだんではなく、あくまでも景気けいき調整ちょうせいの手段しゅだんであり、無税むぜい国家こっかだと、ハイパーインフレーションになってしまうため、総そう需要じゅようを縮小しゅくしょうさせて、インフレーションを抑制よくせいするために必要ひつようなものである。理論りろん的てきにはインフレーションを抑おさえたければ、投資とうしや消費しょうひにかかる税ぜいを重おもくし、逆ぎゃくに、デフレーションから脱却だっきゃくしたければ、投資とうし減税げんぜいや消費しょうひ減税げんぜいを行おこなうべきであるのだが国民こくみん感情かんじょうを逆さかなでする可能かのう性せいがある。そのため、補足ほそく的てきに補助ほじょ金きん政策せいさくによりインフレーションを抑制よくせいしており、一般いっぱん的てきに食料しょくりょう品ひんが消費しょうひ財ざいに占しめる割合わりあいが低ひくい段階だんかいでは十分じゅうぶんに成立せいりつできる。また、税金ぜいきんは所得しょとく再さい配分はいぶんの手段しゅだんとしても、重要じゅうようである。2014年ねんにOECDが発表はっぴょうした、所得しょとく格差かくさと経済けいざい成長せいちょうに関かんする調査ちょうさによると、①日本にっぽんを含ふくむ大半たいはんのOECD諸国しょこくにおいて、過去かこ30年間ねんかん、格差かくさが拡大かくだいしている、②所得しょとく格差かくさの拡大かくだいは経済けいざい成長せいちょうを大幅おおはばに抑制よくせいしている、③政府せいふの所得しょとく再さい配分はいぶん政策せいさくは、成長せいちょうを阻害そがいしない、などの結論けつろんであった。IMFも、格差かくさの拡大かくだいは国くにの経済けいざい成長せいちょうを阻害そがいするという研究けんきゅうを出だしている。だが消費しょうひ税ぜいは、高額こうがくな借金しゃっきんできない低てい所得しょとく者しゃよりも高額こうがくな借金しゃっきんができる高こう所得しょとく者しゃのほうが所得しょとくに対たいする税ぜい負担ふたん率りつが高たかくなる傾向けいこうがあるために、格差かくさを是正ぜせいする効果こうかをもつ税制ぜいせいである。消費しょうひ税ぜいは、増税ぞうぜいするほど格差かくさ是正ぜせいには良よい税制ぜいせいとなりえるのである。

財政ざいせい赤字あかじの削減さくげん議論ぎろんにおいて税率ぜいりつ引上ひきあげの第だい一いちの対象たいしょうとなっているのは消費しょうひ税ぜいである。この点てんについては「無駄むだな歳出さいしゅつをまず削減さくげんすべき」という点てんには、一般いっぱん的てきにコンセンサスがあり、政府せいふ・与党よとうにおいても歳出さいしゅつ削減さくげん策さくから検討けんとうが進すすめられている。また「増税ぞうぜいはまず累進るいしん課税かぜいの所得しょとく税ぜいや法人ほうじん税ぜいや相続そうぞく税ぜいなど、負担ふたん能力のうりょくのあるところからやるべき」という立場たちばからは批判ひはんが強つよいとされている[要よう出典しゅってん]。

国際こくさい通貨つうか基金ききん（IMF）の見解けんかい[編集へんしゅう]

2010年ねん5月がつ、国際こくさい通貨つうか基金ききんは、日本にっぽんの消費しょうひ税率ぜいりつは2011年度ねんど以降いこうに、景気けいき回復かいふくにあわせた上うえで段階だんかい的てきに引ひき上あげるべきであると提言ていげんしている[63]。日本にっぽんの財政ざいせい状態じょうたいを改善かいぜんするためであるとされる。2010年ねん7月がつ14日にちにもIMFは、日本にっぽんへ消費しょうひ増税ぞうぜいを提言ていげんする発表はっぴょうを行おこなっている。このときには、消費しょうひ税率ぜいりつの目標もくひょう値ちが具体ぐたい的てきに示しめされた。それは、税率ぜいりつ15%を軸じくに14%から22%までを最高さいこう税率ぜいりつの選択肢せんたくしとするものであった。この発表はっぴょうに伴ともない、一部いちぶ報道ほうどうなどでは、日本にっぽんの財務省ざいむしょうの主張しゅちょうがIMFの提言ていげんに反映はんえいされているとみなす見解けんかいが示しめされている（国際こくさい通貨つうか基金ききん#日本にっぽんとIMFの関係かんけいを参照さんしょう）[64]。

2012年ねん1月がつ30日にち、IMFは、日本にっぽんが2015年ねんまでに消費しょうひ税率ぜいりつを15%に引ひき上あげることを提言ていげんした[65]。日本にっぽんの莫大ばくだいな公的こうてき債務さいむを減へらすためであるとされる。この税率ぜいりつ15%について、IMFのアヌープ・シン アジア太平洋たいへいよう局長きょくちょうは、「（日本にっぽんの消費しょうひ税率ぜいりつが）より他たの国々くにぐにの税率ぜいりつと沿そうものになる」と述のべている。なお、アメリカのように連邦れんぽう消費しょうひ税ぜいがない国くにや、シンガポール、台湾たいわんなど税率ぜいりつが一いち桁けたの国くに、地域ちいきの存在そんざいには触ふれていない。

2013年ねん8月がつ5日にち、消費しょうひ税率ぜいりつを2015年ねんまでに2倍ばいに引ひき上あげる日本にっぽんの計画けいかくに対たいし、IMF理事りじらは総そうじて日本にっぽんの消費しょうひ税ぜい引ひき上あげ計画けいかくを支持しじしているものの、一部いちぶの理事りじは成長せいちょうに悪影響あくえいきょうを及およぼす可能かのう性せいについて懸念けねんを示しめしている[66]。

IMFの篠原しのはら尚之なおゆき副ふく専務せんむ理事りじは2014年ねんの消費しょうひ税率ぜいりつ8%引ひき上あげについて「大変たいへん結構けっこうでG20でも歓迎かんげいされる」と評価ひょうかしている[67]。

経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこう（OECD）の見解けんかい[編集へんしゅう]

2011年ねん4月がつ21日にち、経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこう（OECD）は2011年ねんの対たい日にち審査しんさ報告ほうこく書しょを発表はっぴょうし報告ほうこく書しょで、日本にっぽんの公的こうてき債務さいむ残高ざんだかは一般いっぱん政府せいふベースで対たいGDP比ひ200%に達たっしているとして「財政ざいせい健全けんぜん化かに向むけた取とり組くみを加速かそくすることが必要ひつよう」と指摘してきし、日本にっぽんの「歳出さいしゅつ削減さくげんの余地よちは限かぎられており、消費しょうひ税ぜいを中心ちゅうしんとした包括ほうかつ的てきな税制ぜいせい改革かいかくを通つうじた歳入さいにゅうの増加ぞうかが必要ひつよう」としている[68]。消費しょうひ税率ぜいりつについては「20%相当そうとうまで引ひき上あげることが求もとめられるかもしれない」と指摘してきしている[68]。

2013年ねん7月がつ8日にち、アンヘル・グリア事務じむ総長そうちょうは、日本にっぽんが早期そうきに財政ざいせい再建さいけんを達成たっせいするため「消費しょうひ税率ぜいりつを直ただちに10%に引ひき上あげるべきだ」「日本にっぽんの法人ほうじん税率ぜいりつは（世界せかい的てきに）高たかく、消費しょうひ税率ぜいりつは低ひくい。消費しょうひ税ぜいに引ひき上あげ余地よちがあるのは明白めいはくだ」と言及げんきゅう、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの復興ふっこうや、福島ふくしま第だい一いち原子力げんしりょく発電はつでん所しょ事故じこの対応たいおうで日本にっぽんは税収ぜいしゅう増ぞうが必要ひつようだとし「もともと（個人こじん的てきには）15%への引ひき上あげを提案ていあんしていた」と述のべている[69]。

2014年ねん10月がつ23日にち、IMFアジア太平洋たいへいよう局きょく地域ちいき研究けんきゅう課かの幹部かんぶは、日本にっぽんは財政ざいせいの信頼しんらいを維持いじするため、2015年ねんの消費しょうひ税ぜい引ひき上あげを実施じっしすべきとの認識にんしきを示しめし、「消費しょうひ増税ぞうぜいを進すすめることは非常ひじょうに重要じゅうようである」と述のべた[70]。

税収ぜいしゅうの試算しさん[編集へんしゅう]

飯田いいだ泰之やすゆきは「内閣ないかく府ふモデルでも、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいによって所得しょとく税ぜい・法人ほうじん税ぜい・地方ちほう税ぜい合あわせて大体だいたい、7兆ちょう円えん減収げんしゅうになると出でている。13.5兆ちょう円えんの消費しょうひ増税ぞうぜいをして、大体だいたい6兆ちょう円えんの税収ぜいしゅう増ぞう。そもそも、13.5兆ちょう円えんも取とれると思おもっていないが、仮かりに13.5兆ちょう円えんの負担ふたん増ぞうでも6兆ちょう円えんしかならず、それでも、13.5兆ちょう円えんの使途しとは決きまっている。財政ざいせい危機ききが深刻しんこく化かしているのにどうするんだという話はなしである」と指摘してきしている[71]。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙かみは、2014年ねん4月がつからの消費しょうひ税率ぜいりつ8%の増税ぞうぜいによって日本にっぽんはG7諸国しょこく中ちゅう唯一ゆいいつ、所得しょとく税ぜいや法人ほうじん税ぜいではなく消費しょうひ税ぜいを最大さいだい税収ぜいしゅう源げんとする国くにになると報ほうじている[72]。

税率ぜいりつ[編集へんしゅう]

福祉ふくし財源ざいげんも参照さんしょう。

経済けいざい学者がくしゃの小林こばやし慶一郎けいいちろうは「経済けいざい学者がくしゃのシミュレーションでは、100年ねん程度ていど先さきまで財政ざいせいを破綻はたんさせないようにするには段階だんかい的てきに消費しょうひ税ぜいを引ひき上あげ、ピーク時じには30%以上いじょうが必要ひつようだとの研究けんきゅうもある。増税ぞうぜいによる税収ぜいしゅうは国債こくさいの利払りばらいなどで国民こくみんに還元かんげんされる。国くにが破綻はたんするよりは国民こくみんが負担ふたんするコストが小ちいさいと捉とらえられる」と述のべている[73]。

経済けいざい学者がくしゃの清家きよいえ篤あつしは「（消費しょうひ税ぜいの）最終さいしゅう税率ぜいりつは先進せんしん国こくの相場そうばからいうと、だいたい20%程度ていどである」と述のべている[74]。

経済けいざい学者がくしゃのアダム・ポーゼンは、日本にっぽん政府せいふは消費しょうひ税率ぜいりつを20%まで引ひき上あげる必要ひつようがあるとしている[75]。ポーゼンは「財政ざいせいを安定あんてい化かさせるための最善さいぜんの選択せんたくは、消費しょうひ税率ぜいりつを20%以上いじょうに引ひき上あげることである。国会こっかいは消費しょうひ税ぜいを6カ月かげつごとに0.5%ずつ引ひき上あげ続つづけることにコミットすべきである」と指摘してきしている[76]。

経済けいざい学者がくしゃの池尾いけお和人かずとは「持続じぞく可能かのうな財政ざいせいの姿すがたを考かんがえれば、国民こくみんの負担ふたんは今いまよりも重おもくなり、支出ししゅつはスリム化かするしかない。消費しょうひ税ぜい換算かんさんで30%ぐらいまで、すなわちあと25%の増税ぞうぜいをすれば、プライマリーバランスの黒字くろじを実現じつげんして、財政ざいせいの持続じぞく可能かのう性せいは回復かいふくできる」と述のべている[77]。

経済けいざい学者がくしゃ・財務ざいむ官僚かんりょうの小黒おぐろ一正かずまさは「日本にっぽん国債こくさいは95%が国内こくないで消化しょうかされているから大丈夫だいじょうぶ」という趣旨しゅしの論ろんが根強ねづよいことを指摘してきした上うえで、それは間違まちがいであると主張しゅちょうし、消費しょうひ税ぜいを5%に据すえ置おいた場合ばあいは、近ちかい将来しょうらいに国債こくさいの国内こくない消化しょうかが行いき詰づまることが想定そうていできるとしている。また、イタリア公債こうさいの国内こくない消化しょうかが過去かこ10年間ねんかんで8割わりから4割わりに低下ていかしたことを指摘してきし、「欧州おうしゅう危機ききは対岸たいがんの火事かじではない」と述のべている[78]。また、日本にっぽんの現状げんじょう（2013年ねん）は近ちかい将来しょうらいの「消費しょうひ税ぜい25%」の可能かのう性せいも考かんがえる必要ひつようがあり「これ以上いじょう、増税ぞうぜいを先送さきおくりすべきではない」と述のべている[79]。小黒おぐろは「財政ざいせいを安定あんてい化か、対たいGDPでの政府せいふ債務さいむを発散はっさんさせずに一定いってい比率ひりつに安定あんてい化かさせるためには、消費しょうひ税率ぜいりつは20%を超こえる。5年ねんおきに段階だんかい的てきに消費しょうひ税率ぜいりつを5%ずつ引ひき上あげていき、ピーク時じの税率ぜいりつを32%にしなければならない。これは年金ねんきん給付きゅうふなどの削減さくげんなどを前提ぜんていとしている。増税ぞうぜいスケジュールを遅おくらせれば、若わかい世代せだい・将来しょうらい世代せだいの負担ふたんが増ます可能かのう性せいがある」としている[80]。

竹中たけなか平蔵へいぞうは「日本にっぽんは、最低さいていでも消費しょうひ税ぜいを段階だんかい的てきに最低さいていでも14%にしなければならない。ヨーロッパ諸国しょこくの消費しょうひ税ぜいは17-25%であり、14%という数字すうじはそれほど高たかくない」と指摘してきしている[81]。また竹中たけなかは「財政ざいせい再建さいけんを社会しゃかい保障ほしょう改革かいかくなしに消費しょうひ増税ぞうぜいだけでカバーしようとすると、税率ぜいりつを30%以上いじょうにしなければならないという試算しさんもあるが、これは現実げんじつ的てきではない」と指摘してきしている[82]。

エコノミストのロバート・フェルドマンは「1%の消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげで税収ぜいしゅう増ぞう効果こうかを2.5兆ちょう円えんと見積みつもり、すべてを消費しょうひ増税ぞうぜいでカバーしようとすると消費しょうひ税率ぜいりつは34%となるためハードルが高たかい」と指摘してきしている[83]。

経済けいざい学者がくしゃのケネス・ロゴフは「将来しょうらい、日本にっぽんはヨーロッパの水準すいじゅんよりはるかに低ひくい5%の消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげなければならなくなるだろう。ただ、長期ちょうきの低てい成長せいちょうが続つづく中なかで、増税ぞうぜいが適切てきせつな選択せんたくかどうか疑問ぎもんは残のこる」と指摘してきしている[84]。

伊藤いとう元重もとしげは「他国たこくの消費しょうひ税率ぜいりつは日本にっぽんより高たかいので、日本にっぽんも上あげても構かまわないではあまりに乱暴らんぼうな議論ぎろんである。上あげるとすればなぜ引ひき上あげをしなくてはいけないのか、より細こまかく検討けんとうする必要ひつようがある」と述のべている[85]。

高橋たかはし洋一よういちは「欧州おうしゅうが消費しょうひ税ぜいに依存いぞんしているのは、人ひとの移動いどうの自由じゆうが確保かくほされているからである。住所じゅうしょを定さだめて徴収ちょうしゅうする所得しょとく税ぜい・資産しさん税ぜいなどの直接ちょくせつ税ぜいにあまり依存いぞんできない」と述のべている[86]。また、「消費しょうひ税ぜいが高たかければ財政ざいせいが健全けんぜん化かされるわけではないのは、消費しょうひ税ぜいが23%のギリシャを見みても明あきらかである」と述のべている[87]。

森永もりなが卓郎たくろうは「財務省ざいむしょうの発表はっぴょうの『付加ふか価値かち税率ぜいりつの国際こくさい比較ひかく』、いわゆる消費しょうひ税率ぜいりつ比較ひかくは標準ひょうじゅん税率ぜいりつで行おこなっているが、食料しょくりょう品ひんなどは非課税ひかぜいという国くにも多おおい。これを補正ほせいすると日本にっぽんの間接かんせつ税ぜいの負担ふたんは決けっして低ひくくはない[88]」「日本にっぽんの国くに全体ぜんたいの消費しょうひ税収ぜいしゅうの割合わりあいは、消費しょうひ税率ぜいりつ25%のスウェーデンよりも高たかくなっている。標準ひょうじゅん税率ぜいりつだけを比較ひかくして消費しょうひ税ぜいを上あげるべきという議論ぎろんは安易あんいである」と述のべている[89]。

経済けいざい学者がくしゃの浜田はまだ宏一こういちは「日本にっぽんの財政ざいせい事情じじょうが、税率ぜいりつの低ひくさによるものとは限かぎらない」としている[90]。浜田はまだは「中長期ちゅうちょうき的てきには消費しょうひ税ぜいを上あげざるをえない」と前置まえおきしながら「税率ぜいりつを上あげたからといって税収ぜいしゅうが増ふえるとは限かぎらない」と述のべている[91][92]。

経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこう（OECD）は2019年ねん4月がつ15日にち、2019年ねんの対たい日にち経済けいざい審査しんさ報告ほうこく書しょを発表はっぴょうし、財政ざいせい再建さいけんを提言ていげんした。赤字あかじの続つづく「基礎きそ的てき財政ざいせい収支しゅうし」を消費しょうひ税ぜいだけで十分じゅうぶんな水準すいじゅんに黒字くろじ化かすると仮定かていした場合ばあい、税率ぜいりつ20～26％への引ひき上あげが将来しょうらい的てきに必要ひつようになると試算しさん。日本にっぽん政府せいふより厳きびしい予測よそくを示しめし、他たの税目ぜいもくを含ふくむ増税ぞうぜいや歳出さいしゅつ削減さくげんの具体ぐたい的てきな計画けいかくを立たてて実行じっこうするよう促うながした。OECDのグリア事務じむ総長そうちょうは東京とうきょう都内とないで記者きしゃ会見かいけんし「10月がつに予定よていされている8％から10％への消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいは不可欠ふかけつだ」と述のべ、さらに段階だんかい的てきに引ひき上あげるよう提案ていあんした[93]。

景気けいきへの影響えいきょう[編集へんしゅう]

2013年ねん4月がつ12日にち、財務ざいむ相しょうの諮問しもん機関きかんである財政ざいせい制度せいど等とう審議しんぎ会かいは財政ざいせい制度せいど分科ぶんか会かいで、財政ざいせい健全けんぜん化かに向むけて消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげが必要ひつようだとの認識にんしきで一致いっちし、分科ぶんか会長かいちょうの吉川よしかわ洋ひろし東大とうだい教授きょうじゅは会合かいごう後ごの記者きしゃ会見かいけんで「消費しょうひ税ぜいを上あげても経済けいざい全体ぜんたいがマイナスの影響えいきょうを受うけることはないとの考かんがえ方かたが総意そういである」と述のべている[94]。

エコノミストの安達あだち誠司せいじは「消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげの経済けいざいに与あたえるネガティブな影響えいきょうについて、多おおくのエコノミストが根拠こんきょとしているのは、1989年ねんと1997年ねんに実施じっしされた過去かこ2回かいの消費しょうひ増税ぞうぜいの経験けいけん、及および欧州おうしゅう諸国しょこくの事例じれいである。これらのケースにおいて、消費しょうひ増税ぞうぜいそのものが景気けいきを大おおきく押おし下さげた明確めいかくな理由りゆうは見当みあたらない」と指摘してきしている[95]。

小黒おぐろ一正かずまさは「（消費しょうひ）増税ぞうぜいが成長せいちょう率りつを低下ていかさせるとは限かぎらない。1989年ねん4月がつの消費しょうひ税ぜい導入どうにゅう時じ（3%）と、1997年ねん4月がつの増税ぞうぜい（消費しょうひ税率ぜいりつ3%から5%）の2回かいの増税ぞうぜいでは、実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつのその後ごの動うごきが異ことなる。1997年ねんの増税ぞうぜいでは、増税ぞうぜい前後ぜんこうの1996年ねんから1998年ねんまでの3年間ねんかんで、実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつは2.6%（1996年ねん）→1.6%（1997年ねん）→マイナス2%（1998年ねん）と推移すいいし、一貫いっかんして低下ていかしているが、1989年ねんの消費しょうひ税ぜい導入どうにゅう時じ、増税ぞうぜい前まえの1988年ねんから1989年ねんにかけて、実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつは7.15%（1988年ねん）から5.37%（1989年ねん）と一時いちじ的てきに低下ていかしているものの、増税ぞうぜい後ごの1990年ねんには5.57%に上昇じょうしょうしている。1991年ねん以降いこうに実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつが急きゅう低下ていかしているのは、バブル崩壊ほうかいの影響えいきょうである[96]」「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいで景気けいきが停滞ていたいすると危惧きぐする人ひともいるが、その主張しゅちょうは税収ぜいしゅう増ぞうによる将来しょうらい不安ふあんの解消かいしょうなどのプラスの面めんを無視むしした話はなしである。一時いちじ的てきなショックを除のぞき、消費しょうひ増税ぞうぜいで景気けいき停滞ていたいは起おきない[97]」と述のべている。

経済けいざい学者がくしゃの富田とみた俊しゅん基もとは「消費しょうひ税ぜいの引ひき上あげだけで、景気けいきが悪わるくなることはない。引ひき上あげ前まえには需要じゅようを先さき食ぐいする駆かけ込こみ需要じゅようがあって、引ひき上あげた直後ちょくごは反動はんどうで経済けいざい成長せいちょう率りつが悪わるくなるかもしれないが、全体ぜんたいをならして考かんがえる必要ひつようがある」と述のべている[98]。

岩井いわい克人かつとは「消費しょうひ増税ぞうぜいは、短期たんき的てきには消費しょうひに対たいしてマイナスとなるだろうが、法人ほうじん税ぜい減税げんぜいなどと組くみ合あわせれば、インパクトを最小限さいしょうげんに抑おさえることができる」と述のべている[13]。

「景気けいきが悪わるい状態じょうたいで増税ぞうぜいをしたらさらにひどくなるのではないか」という議論ぎろんについて、土居どい丈たけ朗ろうは「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいによって1997年ねんに家計かけいの消費しょうひが減少げんしょうしたという現象げんしょうは観察かんさつされないという経済けいざい学がくの研究けんきゅうがある」「消費しょうひ税ぜいが引ひき上あげられるということが予告よこくされれば、人々ひとびとはできるだけ早はやめに買かい物ものをしようとするのでデフレが止とまる」「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを含ふくむ緊縮きんしゅく的てきな財政ざいせい政策せいさくは、円えん安やす要因よういんにつながるということが経済けいざい学がくでは知しられているので、輸出ゆしゅつが増ふえ景気けいきに対たいする影響えいきょうは軽微けいびで済すむ」と指摘してきしている[99][100]。土居どいは「（消費しょうひ税ぜい）増税ぞうぜいにより後世こうせいに債務さいむのツケを回まわさないようにした分ぶんだけ消費しょうひが減へるのは、今いまを生いきる世代せだいが世代せだい間あいだの責任せきにんを全まっとうするコストである」と指摘してきしている[101]。

エコノミストの岩田いわた一政かずまさは「消費しょうひ増税ぞうぜいは短期たんき的てきに見みれば明あきらかに景気けいきにマイナスの影響えいきょうがあるが、欧州おうしゅうでは財政ざいせい破綻はたんが現実げんじつに起おこっており、日本にっぽんも潜在せんざい的てきにそのリスクを抱かかえている」と指摘してきしている[102]。

経済けいざい学者がくしゃの小幡おばた績は「当時とうじ（1997年ねん）、消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげが景気けいきにマイナスに働はたらいたことは間違まちがいない。重要じゅうようなことは、純粋じゅんすいに経済けいざい効果こうかだけを考かんがえれば、すべての税金ぜいきんは経済けいざい成長せいちょうにマイナスという事実じじつである。これを忘わすれて税制ぜいせいの議論ぎろんを行おこなっているため、経済けいざい的てきな議論ぎろんと政治せいじ的てきな議論ぎろんが混同こんどうされている。1997年ねんと同様どうよう、消費しょうひ増税ぞうぜい以外いがいの要因よういんで景気けいきが悪化あっかしても『消費しょうひ増税ぞうぜいが間違まちがいだった』ということにされるからである。そうなれば、景気けいきがありえないほどよくない限かぎりは消費しょうひ税率ぜいりつを上あげるべきではないということになってしまい、今後こんご、増税ぞうぜいの機会きかいは永遠えいえんに失うしなわれる」と述のべている[103]。

経済けいざい学者がくしゃの野口のぐち悠紀雄ゆきおは、2015年ねん10月がつに予定よていされていた消費しょうひ増税ぞうぜいについて「景気けいきに関係かんけいなく上あげるべきである。消費しょうひ税ぜいが経済けいざいに悪影響あくえいきょうを与あたえるのは当あたり前まえであるが、増税ぞうぜいしないと財政ざいせいに対たいする信頼しんらいが失うしなわれ、金利きんりが高騰こうとうする。その方ほうが日本にっぽん経済けいざいにとってはるかにダメージが大おおきい」と指摘してきしていた[104]。しかし、2014年ねん12月に消費しょうひ税ぜい再さい増税ぞうぜい延期えんきを決定けっていした後のちも、長期ちょうき金利きんりは低てい水準すいじゅんの状態じょうたいが続つづき、2016年ねん2月がつには初はじめてマイナスを記録きろくした[105]。

経済けいざい学者がくしゃの井堀いぼり利宏としひろは「（消費しょうひ税ぜいを）一いち度どに上あげると、駆かけ込こみ需要じゅようとその反動はんどうが起おきる可能かのう性せいが高たかい。特とくに耐久たいきゅう消費しょうひ財ざいは駆かけ込こみ需要じゅようとその反動はんどうが大おおきく、民間みんかんの経済けいざい活動かつどうに悪影響あくえいきょうを与あたえる」と述のべている[106]。

高橋たかはし洋一よういちは「消費しょうひ増税ぞうぜいは、増税ぞうぜい前まえに駆かけ込こみ需要じゅようをもたらし、増税ぞうぜい後ごはその反動はんどう減げんとともに増税ぞうぜいによる可処分かしょぶん所得しょとくの減少げんしょうを通つうじて需要じゅようの減退げんたいがある。駆かけ込こみ需要じゅようとその反動はんどう減げんは、ならしてみれば影響えいきょうはないが、増税ぞうぜい分ぶんの消費しょうひ減少げんしょう効果こうかがある。それは『消費しょうひ増税ぞうぜいによる需要じゅよう減げん』である」としている[107]。高橋たかはしは「消費しょうひ増税ぞうぜいすると景気けいきが落おち込こむのに、それをやらないと金利きんりの高騰こうとうによって景気けいきの腰こしが折おれてしまう。この二ふたつの意見いけんが正ただしいとすると、消費しょうひ増税ぞうぜいはやるにしてもやらないにしても、景気けいきが悪わるくなってしまうことになる」としている[108]。また、「政府せいふ・日銀にちぎんの試算しさんでは、（消費しょうひ）増税ぞうぜいしてもたっぷり財政ざいせい支出ししゅつも増ふやすので、景気けいきは落おち込こまないとなっている。民間みんかんシンクタンクでも、増税ぞうぜいしても景気けいきが落おちないという結論けつろんは、増税ぞうぜいしても派手はでにバラマキをするという前提ぜんていである。マクロでは税金ぜいきんを集あつめて政府せいふがすべて配くばれば景気けいきの影響えいきょうはなくなるはずだが、政府せいふが金かねを民間みんかんから吸すい上あげて政府せいふが配くばるというのはまともではない方法ほうほうである。具体ぐたい的てきにいえば、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを負担ふたんする一般いっぱん庶民しょみんが泣ないて、減税げんぜいや公共こうきょう支出ししゅつで潤うるおう既得きとく権けん者しゃが得とくをするという不公平ふこうへいなものである。こうしたことをやると結局けっきょく、経済けいざい成長せいちょうはできなくなる」としている[109]。

エコノミストの片岡かたおか剛士たけしは「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいは、増税ぞうぜい前まえに駆かけ込こみ需要じゅようが生しょうじる一方いっぽうで、増税ぞうぜい後ごに駆かけ込こみ需要じゅよう分ぶんだけ反動はんどう減げんが生しょうじるため民間みんかん消費しょうひ支出ししゅつ・民間みんかん住宅じゅうたく投資とうしに影響えいきょうを与あたえる。また、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい分ぶんに対応たいおうした物価ぶっか上昇じょうしょうによって実質じっしつ所得しょとくが低下ていかし総そう需要じゅようを減へらす」と指摘してきしている[110]。また片岡かたおかは「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを行おこなうと、課税かぜい対象たいしょう品目ひんもくの価格かかくが増税ぞうぜい分ぶんだけ上昇じょうしょうする一方いっぽうで、課税かぜい対象たいしょう品目ひんもくへの需要じゅようが減少げんしょうすることで逆ぎゃくに価格かかくが下落げらくする効果こうかもある」と指摘してきしている[111]。

浜田はまだ宏一こういちは「消費しょうひ税ぜいの税率ぜいりつが2倍ばいになると、社会しゃかい的てきな損失そんしつは2倍ばいではなく、その2乗じょうつまり4倍ばいとなる[112]」「（消費しょうひ）増税ぞうぜいして景気けいきがよくなったという例れいはないし、増税ぞうぜいしても歳入さいにゅうが増ふえるとは限かぎらないというのが橋本はしもと政権せいけんのときに行いった増税ぞうぜい以来いらいの答こたえである[113]」「財務省ざいむしょうは経済けいざいを刺激しげきしても税収ぜいしゅうは増ふえないという試算しさんしている。税率ぜいりつを何なに%上あげるかというようなことだけに終始しゅうししている。消費しょうひ増税ぞうぜいについても消費しょうひが減へることを考慮こうりょしていない[114]」と指摘してきしている。

高橋たかはし洋一よういちは「1989年ねん4月がつ（3%）、1997年ねん4月がつ（3%から5%）のいずれの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいも、増税ぞうぜい前後ぜんこうを比較ひかくすれば、成長せいちょう率りつが低下ていかしている。それはGDPの大おおきな構成こうせい要素ようそである消費しょうひが低下ていかするからである。消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい前後ぜんこう2年間ねんかんの平均へいきんで見みると、実質じっしつGDPでは1989年ねんの増税ぞうぜい前まえの6.2%が増税ぞうぜい後ごに5.3%、1997年ねんの増税ぞうぜい前まえの2.5%が増税ぞうぜい後ごに-0.8%へとそれぞれ低下ていかし、低下ていか幅はばはそれぞれ0.9%と3.3%となっている」と指摘してきしている[115]。また高橋たかはしは「1989年ねんの消費しょうひ税ぜい創設そうせつでは、物品ぶっぴん税ぜいを同時どうじに廃止はいししたので、消費しょうひ増税ぞうぜいの影響えいきょうは中和ちゅうわされている」と指摘してきしている[116]。

安達あだち誠司せいじは「消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげは、ポリシーミックスを考かんがえると、金融きんゆう政策せいさく（量的りょうてき金融きんゆう緩和かんわ政策せいさく）に大おおきな負荷ふかをかける」と指摘してきしている[117]。

2020年ねん2月がつ、増税ぞうぜい対策たいさくでキャッシュレス決済けっさいポイント還元かんげんや補助ほじょ金きんを出だしたものの総務そうむ省しょうによると2019年ねん12月の消費しょうひ支出ししゅつは前年ぜんねん同月どうげつ比ひ-4.8％で3カ月かげつ連続れんぞく減げんとなった[118]。

試算しさん[編集へんしゅう]

消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいによる景気けいき後退こうたいも指摘してきされる。コンピュータ上じょうで再現さいげんした内閣ないかく府ふや民間みんかんシンクタンクによるいくつかの経済けいざい分析ぶんせきモデルにより、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいをシミュレートしたところ、内閣ないかく府ふモデルのみは比較的ひかくてき軽度けいどであるが、いずれのモデルでも消費しょうひは冷ひえ込こむとの結果けっかが出でている[119]。

消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいにより可か処分しょぶん所得しょとく（手取てどり収入しゅうにゅう）が減少げんしょうすることを根拠こんきょに、個人こじん消費しょうひ支出ししゅつが減少げんしょうし消費しょうひ財ざいの市場いちばが縮小しゅくしょうし、経済けいざい成長せいちょう率りつの低下ていかやマイナス成長せいちょうをもたらすとの主旨しゅしの説せつは正ただしい可能かのう性せいが高たかく、政府せいふや民間みんかんシンクタンクがGDPを押おし下さげる結果けっかになると試算しさんしており、特とくに民間みんかんシンクタンクによる試算しさんでは顕著けんちょな傾向けいこうが読よみ取とれる[120][121]。

2013年ねん、内閣ないかく府ふは消費しょうひ税ぜいの1%引ひき上あげでGDPが約やく0.5%ポイント、300億おくドル（約やく3兆ちょう円えん）減へると試算しさんしている[122]。内閣ないかく府ふの短期たんき日本にっぽん経済けいざい計量けいりょうモデルによると、3%の増税ぞうぜいは実質じっしつGDPを0.9%減少げんしょうさせることになる[123]。

2014年ねん4月がつの消費しょうひ税率ぜいりつ8%引ひき上あげ後ご、消費しょうひの冷ひえ込こみや駆かけ込こみ需要じゅようの反動はんどう減げんによる景気けいきの腰折こしおれが懸念けねんされているが、民間みんかんエコノミストの大半たいはんは「腰折こしおれしない」との見解けんかいを示しめしており、増税ぞうぜい後ごの2014年度ねんどの実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつは1.9-0%と予想よそうしている[124]。民間みんかんエコノミスト41人にんの平均へいきん予測よそくでは、消費しょうひ増税ぞうぜい後ごの2014年ねん4-6月がつ期き実質じっしつGDP成長せいちょう率りつは前期ぜんき比ひ・年率ねんりつで約やく5%落おち込こむと予想よそうされ、最悪さいあくのケースではマイナス8%成長せいちょうと試算しさん、経済けいざい産業さんぎょう省しょうの試算しさんではこれをはるかに超こえる大幅おおはばな落おち込こみを示しめしている[125]。

原田はらだ泰やすしは「消費しょうひ税ぜい1%で2.5兆ちょう円えんの増税ぞうぜいなので、民間みんかんの所得しょとくを7.5兆ちょう円えん政府せいふが吸すい上あげることになり、その6割わりすなわち4.5兆ちょう円えんの景気けいき悪化あっか効果こうかがあるだろう。これはGDPを1%程度ていど引ひき下さげることになる」と分析ぶんせきしている[126]。原田はらだ泰やすし、大和総研だいわそうけんは「消費しょうひ税率ぜいりつの2%引ひき上あげは、実質じっしつGDPを0.54%押おし下さげる」と指摘してきしている[127]。

経済けいざい学者がくしゃの宍戸ししど駿しゅん太郎たろうは、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい3%が実施じっしされると2015年ねんから経済けいざいが縮小しゅくしょうを始はじめ、5年ねん後ごにはGDPにマイナス5%の悪影響あくえいきょうが出でて、さらに10%まで消費しょうひ税ぜいを引ひき上あげた場合ばあい、マイナス幅はばは8.5%まで広ひろがると予測よそくしており、他たの民間みんかんシンクタンクなどでも消費しょうひ増税ぞうぜい5年ねん後ごのGDPに及およぼす影響えいきょうはマイナス4-6%と試算しさんしている[128]。宍戸ししどは「政府せいふの試算しさんは新興しんこう国こくの財政ざいせい再建さいけん用ように使つかわれる計量けいりょうモデルがベースであり、成熟せいじゅく国こくにあてはめると誤あやまった結果けっかが出でる」と指摘してきしている[128]。

2014年ねん8月がつ13日にち、2014年ねん4-6月がつ期きのGDPは前期ぜんき比ひマイナス1.7%、年率ねんりつ換算かんさんマイナス6.8%となり、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいがあった2011年ねん1-3月がつ期き（前期ぜんき比ひマイナス1.8%、年率ねんりつ換算かんさんマイナス6.9%）以来いらいの大幅おおはばな落おち込こみとなった[129]。前回ぜんかいの消費しょうひ増税ぞうぜい時じの1997年ねん4-6月がつ期き（前期ぜんき比ひマイナス0.9%、年率ねんりつ換算かんさんマイナス3.5%）と比くらべ落おち込こみは大おおきく、1-3月の年率ねんりつ6.1%から6.8%のマイナスに転てんじ、大おおきな反動はんどう減げんとなった[129]。2014年ねん12月8日にち、内閣ないかく府ふが発表はっぴょうした7-9月がつ期きのGDP（季き節ぶし調整ちょうせい済ずみ）改定かいてい値ちは、実質じっしつで前期ぜんき比ひ0.5%減げん、年率ねんりつ換算かんさんで1.9%減げんとなり、速報そくほう値ちから下方かほう修正しゅうせいされた[130]。

2015年ねん1月がつ13日にち、内閣ないかく府ふは報告ほうこく書しょ「日本にっぽん経済けいざい2014-2015」を公表こうひょうし、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいに伴ともなう物価ぶっか上昇じょうしょうについて「実質じっしつ所得しょとくの減少げんしょうをもたらし、恒久こうきゅう的てきに個人こじん消費しょうひを抑制よくせいする効果こうかを持もつ」と指摘してきした[131]。2014年ねん4-6月がつ期き・7-9月がつ期きの消費しょうひ押おし下さげ効果こうかは、1兆ちょう円えん程度ていど発生はっせいしたとしている[131]。

1997年ねんの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの影響えいきょう[編集へんしゅう]

「法人ほうじん税ぜい#法人ほうじん税率ぜいりつ」、「法人ほうじん税ぜい#税収ぜいしゅうの推移すいい」、および「所得しょとく税ぜい#税収ぜいしゅうの推移すいい」も参照さんしょう

1997年ねんの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいのその後ご、税収ぜいしゅう全体ぜんたいは1997年ねんには50兆ちょう円えん強きょうあったところから、2011年ねんには40兆ちょう円えん強きょうというところまで約やく10兆ちょう円えん減へった[132]。1997年ねんの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい後ご、日本にっぽん経済けいざいのデフレ不ふ況きょうが深刻しんこく化かし、法人ほうじん税ぜいや所得しょとく税ぜいが減へったため、税収ぜいしゅうは1997年ねんの水準すいじゅんを一いち度ども回復かいふくしていない[126]。1998年ねん（平成へいせい10年ねん）、1999年ねん（平成へいせい11年ねん）の所得しょとく税ぜい・法人ほうじん税ぜいの税収ぜいしゅう減げんについては、法人ほうじん税ぜい（両年りょうねん）・所得しょとく税ぜい（1999年ねん（平成へいせい11年ねん）のみ）の双方そうほうで減税げんぜいが実施じっしされているため[注ちゅう 4][注ちゅう 5]、それによる減収げんしゅう分ぶんも含ふくまれている。当時とうじの首相しゅしょうであった橋本はしもと龍太郎りゅうたろうは後のちに「私わたしは平成へいせい9年ねんから10年ねんにかけて緊縮きんしゅく財政ざいせいをやり、国民こくみんに迷惑めいわくをかけた。私わたしの友人ゆうじんも自殺じさつした。本当ほんとうに国民こくみんに申もうし訳わけなかった。これを深ふかくおわびしたい」「財政ざいせい再建さいけんのタイミングを早はやまって経済けいざい低迷ていめいをもたらした」との自責じせきの念ねんも示しめしている[133]。

八田はった達夫たつおは、1997年ねんの消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげが家計かけいの資金しきん制約せいやくに影響えいきょうを与あたえ、半はん耐久たいきゅう消費しょうひ財ざい・耐久たいきゅう消費しょうひ財ざい、住宅じゅうたく投資とうしを下落げらくさせたとしている[134]。住宅じゅうたく着工ちゃっこう件数けんすうは、消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげ前まえの駆かけ込こみ需要じゅようが増加ぞうかした1996年ねんには、バブル期き並なみの164万まん戸こまで拡大かくだいした一方いっぽうで、1997年ねん以降いこうは駆かけ込こみ着工ちゃっこうによる反動はんどう・景気けいき後退こうたいにより、1997年ねんは139万まん戸こ、1998年ねんは120万まん戸こ、1999年ねんは121万まん戸こと急減きゅうげんしている[135]。

安達あだち誠司せいじは「1997年ねんの日本にっぽんは消費しょうひ増税ぞうぜいを実施じっし後ごに大だい不況ふきょうを経験けいけんし、その後ご15年ねん超ちょうにも及およぶデフレのきっかけとなったが、これも消費しょうひ増税ぞうぜいが理由りゆうか否ひかは必かならずしも明確めいかくではない。多数たすうの専門せんもん家かは同年どうねん夏なつに発生はっせいしたアジア通貨つうか危機ききの影響えいきょうの方ほうがはるかに大おおきいと結論けつろんづけており、アジア通貨つうか危機ききがなければ、1997年ねんの消費しょうひ増税ぞうぜいも景気けいきに影響えいきょうを与あたえなかっただろうと考かんがえている」と指摘してきしている[95]。

経済けいざい学者がくしゃの中里なかさと透とおるは消費しょうひが急激きゅうげきに落おち込こんだのは、金融きんゆうシステム不安定ふあんてい化か（北海道拓殖銀行ほっかいどうたくしょくぎんこうと山一證券やまいちしょうけんの破綻はたん）が生しょうじた1997年ねん（平成へいせい9年ねん）11月がつ以降いこうであって、消費しょうひや生産せいさんの動向どうこうをみるかぎりは、消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげがその後ごの景気けいきの落おち込こみの主しゅ要因よういんになったとは考かんがえにくく、金融きんゆうシステムの不安定ふあんてい化かにともなう景況けいきょう感かんの悪化あっかが、1997年ねん末まつから1998年ねんにかけての不ふ況きょうの深刻しんこく化かをもたらしたとしている[136]。そして留意りゅうい点てんとして、消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげや特別とくべつ減税げんぜいの廃止はいし等とうの負担ふたん増ぞうが将来しょうらいにわたる家計かけいの可か処分しょぶん所得しょとくを減少げんしょうさせる要因よういんとして認識にんしきされ、消費しょうひ抑制よくせいに影響えいきょうした可能かのう性せいがあるとしている[136]。よって消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげは将来しょうらいにわたる家計かけいの可か処分しょぶん所得しょとくの減少げんしょう要因よういんとして認識にんしきされた可能かのう性せいはあるものの、消費しょうひへの影響えいきょうは限定げんてい的てきであると指摘してきしている[136]。

森もり信しん茂樹しげきは、竹中たけなか平蔵へいぞうらが提唱ていしょうする消費しょうひ増税ぞうぜいが歳入さいにゅうを増ふやすことはないとする説せつは間違まちがっていると主張しゅちょうしている[137]。森もり信しんによれば、1997年ねんの消費しょうひ増税ぞうぜい後ごの歳入さいにゅうが増加ぞうかしなかった理由りゆうは、小渕おぶち内閣ないかくにおける減税げんぜい（所得しょとく税ぜい・法人ほうじん税ぜい）と小泉こいずみ政権せいけんにおける財源ざいげんの地方ちほう移譲いじょうが、消費しょうひ増税ぞうぜいによる歳入さいにゅうの増加ぞうか分ぶんを打うち消けしたからであるという。

竹中たけなか平蔵へいぞうは「1995-1996年ねんの日本にっぽん経済けいざいは、一種いっしゅのミニ・バブル状態じょうたいであった。1997年ねんの消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげによって経済けいざいが悪化あっかしたという一部いちぶの指摘してきは誤あやまりであり、ミニ・バブルの崩壊ほうかいが原因げんいんである」と指摘してきしている[138]。

元もと日銀にちぎん審議しんぎ委員いいんの中原なかはら伸之のぶゆきは1997年ねん以降いこうの不ふ況きょうの原因げんいんについて「『増税ぞうぜいではなくアジア通貨つうか危機ききなどの金融きんゆう危機ききである』という人ひとがいるがまったく逆ぎゃくである。そのようなリスクを予想よそうしないで増税ぞうぜいしたことで、金融きんゆう危機ききが来きたときに日本にっぽん経済けいざいはもろくもやられてしまった。それが引ひき金がねで山一証券やまいちしょうけんなどの大型おおがた倒産とうさんに発展はってんした。国家こっか経営けいえいも会社かいしゃ経営けいえいも、重要じゅうようなのは不ふ確実かくじつ性せいに備そなえることである」と指摘してきしている[139]。

片岡かたおか剛士たけしは「消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげの経済けいざいに与あたえる影響えいきょうについて、1997年ねんの経験けいけんを考かんがえると、経済けいざいに与あたえる影響えいきょうは一時いちじ的てきかつ小ちいさいものとは考かんがえられず、かつ早期そうきの消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげは緩ゆるやかな回復かいふく基調きちょうにある日本にっぽん経済けいざいを、再ふたたび失速しっそくさせる可能かのう性せいが高たかい。1997年ねんに消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげた際さいには消費しょうひ税収ぜいしゅうは増加ぞうかしたものの、景気けいき悪化あっかにより所得しょとく税収ぜいしゅうおよび法人ほうじん税収ぜいしゅうが減へることで全体ぜんたいの税収ぜいしゅうは減少げんしょうしている」と指摘してきしている[136]。

高橋たかはし洋一よういちは「消費しょうひ税ぜいだけの増税ぞうぜい面めんだけではなく他ほかの税ぜい・財政ざいせい支出ししゅつと総合そうごう的てきに見みるべきであり、1997年ねんの消費しょうひ税ぜい引ひき上あげを捉とらえて、それだけが景気けいき悪化あっかの要因よういんというのは適切てきせつではない。ただし、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいが他たの所得しょとく減税げんぜいなどで相殺そうさいされてネットでは増税ぞうぜいでなかったとしても、その後ごのアジア危機ききなどの経済けいざい変動へんどうで景気けいきが悪化あっかしたのも事実じじつである[140]」「1997年ねんの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいでは景気けいきに影響えいきょうがなかったという学者がくしゃが多おおいが、それは『増税ぞうぜいして政府せいふが使つかったから景気けいきの落おち込こみはなかった』というのをキモとしている。そんなまともじゃない方法ほうほうをとったせいで、その後ごの経済けいざい成長せいちょうが上手うまくできなくなった点てんを見落みおとしている[109]」「アジア危機ききの震源しんげん地ちである韓国かんこくは、たしかに危機きき時じは景気けいきが落おち込こんだが、少すこし経たつと回復かいふくしている。一方いっぽう、日本にっぽんは回復かいふくしていない[141]」と指摘してきしている。

エコノミストのリック・カッツは当時とうじの景気けいき後退こうたいの71%は消費しょうひの3.5%縮小しゅくしょうが招まねいたものだと見積みつもっている[142]。

経済けいざい学者がくしゃの田中たなか秀臣ひでおみは「1997年ねんの消費しょうひ増税ぞうぜいで起おこったのは、名目めいもくGDPが減少げんしょうするという不ふ況きょうであり、それに伴ともない、結局けっきょく税収ぜいしゅう全体ぜんたいが減へるという事ことだった」「財務省ざいむしょうは『消費しょうひ税ぜいを上あげると、翌年よくねんの税収ぜいしゅうがガクンと減へるという論者ろんしゃがいるが、その後ごは穏おだやかに回復かいふくしていく』と言いう。財務省ざいむしょうは、全体ぜんたいの税収ぜいしゅうの変化へんかを見みずに、消費しょうひ税収ぜいしゅうの変化へんかだけをとらえて、消費しょうひ税ぜいを増税ぞうぜいすれば、税収ぜいしゅうが上あがると言いっている」と指摘してきしている[143]。

経済けいざい学者がくしゃの若田部わかたべ昌あきら澄きよしは「橋本はしもと龍太郎りゅうたろう内閣ないかくだった1997年ねんに、消費しょうひ財ざいの引ひき上あげなどによって、約やく9兆ちょう円えんの国民こくみん負担ふたんの増加ぞうかがあった。これはそのときのGDP比ひで約やく2%であり、その後ごの景気けいき後退こうたいに影響えいきょうを与あたえたとみられている[144]」「あのとき（1997年度ねんどに実施じっしした消費しょうひ増税ぞうぜい）に不ふ況きょうに陥おちいったのはアジア通貨つうか危機ききが主因しゅいんだという話はなしになっているが、負担ふたんの増加ぞうかが悪影響あくえいきょうをもたらしたことを否定ひていできる人ひとは少すくない[145]」と指摘してきしている。

竹中たけなか平蔵へいぞうは、1997年ねんの消費しょうひ税ぜい引ひき上あげで経済けいざいが一気いっきに悪化あっかし、橋本はしもと政権せいけんの責任せきにんが問とわれたと指摘してきしている[146]。

経済けいざい学者がくしゃの浅田あさだ統みつる一郎いちろうは「1996年ねんから1997年ねんにかけてインフレ率りつが1年間ねんかんだけ約やく2%上昇じょうしょうしたが、それは、橋本はしもと政権せいけん下かで消費しょうひ税ぜいが3%から5%へ引ひき上あげられたことを反映はんえいしており、このことが、その後ごのデフレ不ふ況きょうの悪化あっかを助長じょちょうさせてしまった」と指摘してきしている[147]。

森永もりなが卓郎たくろうは「1997年ねんの5%への引ひき上あげの際さい、それ以後いご、15年ねんに及およぶデフレが続つづき、名目めいもくGDPが1997年ねんの時点じてんより55兆ちょう円えん、率りつにして11%落おちた。その間あいだに、日本にっぽんの株式かぶしき市場いちばの株価かぶかや不動産ふどうさん価格かかくは半値はんねになってしまった」と指摘してきしている[148][149]。

上あげるタイミング[編集へんしゅう]

安達あだち誠司せいじは「デフレ、及およびそれに近ちかい金融きんゆう危機ききによる信用しんよう収縮しゅうしゅくという大おおきな経済けいざいショックから十じゅう分ふんに立たち直なおる前まえに消費しょうひ増税ぞうぜいを断行だんこうした事例じれいはほとんどない」と指摘してきしている[95]。

経済けいざい学者がくしゃのポール・クルーグマンは、不景気ふけいきである只ただ中ちゅうに増税ぞうぜいを行おこなえばデフレ・スパイラルを加速かそくさせると述のべ、消費しょうひ増税ぞうぜいは財政ざいせい拡張かくちょう（雇用こよう増ぞうを目的もくてきとした歳出さいしゅつの拡大かくだい）を行おこなった後のちですべきであると主張しゅちょうしている[150][151]。クルーグマンは、1998年ねんの景気けいきの落おち込こみのきっかけは前年ぜんねんの消費しょうひ増税ぞうぜいにあったとみているが、経済けいざいが良よい状態じょうたいになったときに消費しょうひ増税ぞうぜいすることには賛成さんせいしている[151]。また「2014年ねんに8%、2015年ねんに10%の消費しょうひ税ぜい引ひき上あげはタイミングが悪わるすぎる。いずれ上あげなければいけないが、この時期じきに消費しょうひ税ぜいを上あげたら、消費しょうひが落おち込こみ、経済けいざいが悪化あっかすることは目めに見みえている。他国たこくでショックが起おきたときにはかなりきつく影響えいきょうが波及はきゅうする」と指摘してきしている[152]。

飯田いいだ泰之やすゆきは「現在げんざい（2011年ねん）の景況けいきょうで消費しょうひ税ぜいの即時そくじ増税ぞうぜいをすることには大おおきな危険きけん性せいが伴ともなう」と指摘してきしている[153]。

浜田はまだ宏一こういちは「橋本はしもと政権せいけんの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいは税収ぜいしゅうアップの助たすけにならなかった[154]」「せっかく上あがりかけた景気けいきが（消費しょうひ）増税ぞうぜいでぽしゃってしまう例れいは、日本にっぽんの歴史れきしだけでなく世界せかいの歴史れきしにもある。ブレーキをかけて歳入さいにゅう（税収ぜいしゅう）の上昇じょうしょうが止とまれば、消費しょうひ税ぜいは率りつを上あげただけで、何なにのためにもならない[155]」「（景気けいきが）心配しんぱいなときは（税率ぜいりつを）1%ずつ、なだらかに上あげていく」と指摘してきし「法人ほうじん税ぜいを下さげて消費しょうひ税ぜいを上あげていく方向ほうこうにしないといけない」と、中長期ちゅうちょうき的てきな消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを主張しゅちょうしている[156][157]。

経済けいざい学者がくしゃの岩田いわた規久男きくおは「まず（成長せいちょうによって）税収ぜいしゅうを上あげ、それでも財政ざいせいが再建さいけんできないところを見極みきわめてから消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいで遅おそくない[158]」「デフレのまま消費しょうひ税ぜいを上あげても税収ぜいしゅうは増ふえない。そんな増税ぞうぜいに意味いみがないことは、火ひを見みるよりも明あきらかである[159]」と述のべている。

高橋たかはし洋一よういちは、最もっとも簡単かんたんな増税ぞうぜい策さくとは「すごいインフレにして、経済けいざいが過熱かねつしてしまうので、『冷ひや水みずかけろ』ということで増税ぞうぜいする」ことであると述のべている[160]。

片岡かたおか剛士たけしは「消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげというと、財政ざいせい赤字あかじ抑制よくせいといった観点かんてんから消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげの是非ぜひが報道ほうどうされるが、消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげの際さいのタイミングを失しっすると財政ざいせい赤字あかじがむしろ拡大かくだいする可能かのう性せいもある。経済けいざい・財政ざいせい・社会しゃかい保障ほしょうの一体いったい的てきな改革かいかくを進すすめるために必要ひつようなのは、早急そうきゅうな増税ぞうぜい策さくの実行じっこうといった手段しゅだんの議論ぎろんではなく、デフレから早期そうき脱却だっきゃくし、政府せいふが掲かかげる成長せいちょうシナリオを消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい下かでも確保かくほできる経済けいざい状況じょうきょうを達成たっせいすることである。安易あんいな増税ぞうぜい議論ぎろんではなく、景気けいき動向どうこうとのタイミングを考慮こうりょし経済けいざい成長せいちょうとの両立りょうりつを図はかりつつ、現げん制度せいどの問題もんだい点てんを改善かいぜんするための税制ぜいせいや社会しゃかい保障ほしょうの検討けんとうこそが求もとめられている[136]」「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを強行きょうこうしたことが結局けっきょく日本にっぽん経済けいざいを冷ひやしデフレ脱却だっきゃくを遠とおのかせてしまうとすれば、恐おそらく今後こんご消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを行おこなうことは絶望ぜつぼう的てきとなるだろう。むしろデフレからの完全かんぜん脱却だっきゃくを優先ゆうせんして、名目めいもく経済けいざい成長せいちょう率りつ4%、実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつ2%といった状況じょうきょうが確認かくにんできるまで消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいには踏ふみ込こまない方ほうが賢明けんめいである[161]」と指摘してきしている。

経済けいざい学者がくしゃの伊藤いとう隆敏たかとしは「財政ざいせい再建さいけんは喫緊きっきんの課題かだいだ。もはや日本にっぽんの財政ざいせいは危険きけん水域すいいきに入はいっている。44兆ちょう円えんの財政ざいせい赤字あかじを、消費しょうひ税ぜいに置おき換かえれば15-20%分ぶんである。現在げんざい（2010年ねん）の5%の消費しょうひ税率ぜいりつを20-25%に引ひき上あげてようやく返かえせる莫大ばくだいな額がくを、毎年まいとし将来しょうらい世代せだいから借かりているわけである。借金しゃっきんは消費しょうひ増税ぞうぜいを遅おくらせれば遅おくらせるほど、雪ゆきだるま式しきにふくれ上あがっていく。地道じみちに増税ぞうぜいで返済へんさいしていくほかない」と指摘してきしている[162]。

井堀いぼり利宏としひろは「毎年まいとし1%ずつ税率ぜいりつを上あげていくのがよい。一いち度どに上あげようとすると『景気けいきが回復かいふくしていなければ駄目だめだ』などの政治せいじ的てきな抵抗ていこうで先さき延のばしになったり、不十分ふじゅうぶんな税率ぜいりつのまま終おわり、結果けっかとして機能きのうしない恐おそれもある。景気けいき動向どうこうと無関係むかんけいに毎年まいとし上あげることが大切たいせつである」と述のべている[106]。

岩田いわた一政かずまさは、毎年まいとし1%ずつ税率ぜいりつを引ひき上あげ税率ぜいりつ15%にすべきであると提案ていあんしている[163]。

明治大学めいじだいがく公共こうきょう政策せいさく大学院だいがくいん教授きょうじゅの田中たなか秀明ひであきは「消費しょうひ増税ぞうぜいは、その影響えいきょうの程度ていどはともかく、経済けいざいにデフレ効果こうかをもつ。経済けいざいに悪影響あくえいきょうを与あたえるのに反対はんたいであれば、永遠えいえんに増税ぞうぜいや財政ざいせい再建さいけんなどできない」と述のべている[164]。

イギリスの例れい[編集へんしゅう]

高橋たかはし洋一よういちは「イギリスは2010年ねん1月がつと2011年ねん1月がつに財政ざいせい再建さいけんのために消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいしたが景気けいき低迷ていめいしている[165]」「イギリスはカーメン・ラインハートとケネス・ロゴフの論文ろんぶんの主張しゅちょうに沿そって財政ざいせい再建さいけんのために消費しょうひ税ぜいを増税ぞうぜいした結果けっか、景気けいきが低迷ていめいしている。景気けいきの腰こしを折おるような消費しょうひ増税ぞうぜいはやるべきでない[166]」と指摘してきしている。

安達あだち誠司せいじは「イギリスは、2011年ねん1月がつより、消費しょうひ税率ぜいりつ（VAT）を17.5%から20%に引ひき上あげた。またそのほかに公務員こうむいん数すうの49万まん人にん削減さくげん、年金ねんきん支給しきゅう年齢ねんれいの引ひき上あげ、公立こうりつ学校がっこうの授業じゅぎょう料りょうの値上ねあげ等とうの緊縮きんしゅく財政ざいせい政策せいさくを断行だんこうした。消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげ後ご、イギリスの実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつは徐々じょじょに低下ていかし、2011年ねん終盤しゅうばんにはほぼゼロ成長せいちょうまで落おち込こんだ。これは、消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげをはじめとする一連いちれんの緊縮きんしゅく財政ざいせい政策せいさくの影響えいきょうだと考かんがえられる。このような景気けいき減速げんそくをうけて、イングランド銀行いんぐらんどぎんこうは断続だんぞく的てきに量的りょうてき金融きんゆう緩和かんわ政策せいさくを拡大かくだいさせていった。その後ごタイムラグはあったものの、イギリス経済けいざいは家計かけい消費しょうひを中心ちゅうしんに回復かいふく基調きちょうに戻もどった」と指摘してきしている[117]。

対策たいさくについての議論ぎろん[編集へんしゅう]

伊藤いとう元もと重じゅうは「3年ねん後ごからの消費しょうひ税ぜいの引ひき上あげであれば、それまでに駆かけ込こみ需要じゅようが期待きたいできる。消費しょうひ税ぜいを10%に引ひき上あげれば12兆ちょう5000億おく円えんほどの税収ぜいしゅうが見込みこめる。その2年ねん分ぶん程度ていど、つまり25兆ちょう円えんを経済けいざい政策せいさくとして将来しょうらいの日本にっぽんをよくするための投資とうしに回まわす。これによって景気けいき刺激しげき策さくが期待きたいされる」と主張しゅちょうしている[167]。

高橋たかはし洋一よういちは対策たいさくとして、消費しょうひ減税げんぜい（税率ぜいりつ引ひき上あげ分ぶん）、全ぜん品目ひんもくの軽減けいげん税率ぜいりつ（税率ぜいりつ引ひき上あげ分ぶん）の導入どうにゅう・適用てきよう、所得しょとく税ぜい減税げんぜい、増税ぞうぜいした分ぶんをすべて使つかい切きるような減税げんぜい・財政ざいせい支出ししゅつを挙あげている[168]。高橋たかはしは「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいのマイナス効果こうかを緩和かんわするためには、金融きんゆう政策せいさくと財政ざいせい政策せいさくによるマクロ経済けいざい政策せいさくで景気けいき対策たいさくをするしかない。消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいという財政ざいせい政策せいさくは有効ゆうこう需要じゅようを減少げんしょうさせるため、減税げんぜい・給付きゅうふ金きんなどによる同おなじ財政ざいせい政策せいさくで中和ちゅうわするのは正ただしいが、間違まちがった増税ぞうぜいには愚おろかな財政ざいせい支出ししゅつが必要ひつようになるのは皮肉ひにくである[169]」「消費しょうひ税ぜいを巻まき上あげておいて、それを国民こくみんにばら撒まき、増税ぞうぜい後ごの経済けいざいの落おち込こみを少すくなくするというのは馬鹿ばかげた話はなしである。低てい所得しょとく者しゃに1万まん円えんを配くばるといった『簡素かんそな給付きゅうふ措置そち』など愚ぐの骨頂こっちょうである」と指摘してきしている[170]。

原田はらだ泰やすしは「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの効果こうかを打うち消けしたいのであれば、減税げんぜいしかない。増税ぞうぜいして減税げんぜいするなら財政ざいせい赤字あかじはたいして減へらないがそれでは意味いみがない。また、増税ぞうぜいして公共こうきょう事業じぎょうを増ふやすのも意味いみがない」と指摘してきしている[171]。

中原なかはら伸之のぶゆきは「『消費しょうひ増税ぞうぜいで景気けいきが落おち込こむから補正ほせい予算よさんを組くめ』という議論ぎろんもあるが、右みぎの手てで取とって左ひだりの手てでばらまくだけの話はなしなのでやるべきではない」と指摘してきしている[139]。

片岡かたおか剛士たけしは「政府せいふでは5%の消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいによる経済けいざいへの悪影響あくえいきょうを緩和かんわするため3-5兆ちょう円えんの補正ほせい予算よさんを打うち出だすとの話はなしだが、増税ぞうぜいしつつ増税ぞうぜいの悪影響あくえいきょうを緩和かんわするために歳出さいしゅつを増ふやすというのは、単たんに政府せいふが使つかえる金かねを増ふやすだけであって、そのことが逆ぎゃくに財政ざいせい再建さいけんへの信頼しんらいを毀損きそんしかねない[172]」「経済けいざい対策たいさくが必要ひつようというほど消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの悪影響あくえいきょうを懸念けねんするのならば、悪影響あくえいきょうを懸念けねんしない増税ぞうぜい幅はばでの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを行おこなうか、予定よていどおり消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを行おこなっても問題もんだいがない段階だんかいまで日本にっぽん経済けいざいが回復かいふくするまで増税ぞうぜいを先送さきおくりするのが筋すじであり、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいありきの5兆ちょう円えん経済けいざい対策たいさくはナンセンスである[111]」「設備せつび投資とうしを刺激しげきするために投資とうし減税げんぜいや法人ほうじん税ぜい減税げんぜいを行おこなったとしても、そもそも設備せつび投資とうしが増ふえる環境かんきょうにないため政府せいふが想定そうていする経済けいざい効果こうかをもたらさないだろう。消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいが恒久こうきゅう的てきな性格せいかくをもつ以上いじょう、一時いちじ的てきな給付きゅうふ金きんや減税げんぜい策さくで消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの悪影響あくえいきょうを十分じゅうぶんに抑制よくせいするのは困難こんなんである[173]」と指摘してきしている。

ポール・クルーグマンは「急速きゅうそくに少子しょうし高齢こうれい化かが進すすんでいる日本にっぽんでは、今後こんごさらに所得しょとく税ぜいよりも消費しょうひ税ぜいのほうが重要じゅうようになってくることは確たしかである。そうした状況じょうきょうを踏ふまえれば、例たとえば、一定いってい年収ねんしゅう以下いかの所得しょとく税ぜいを減へらすことを提案ていあんしたい。収入しゅうにゅうが一定いってい以上いじょうある世帯せたいは、消費しょうひ税ぜいが上あがっても消費しょうひが極端きょくたんに減へることはないので、消費しょうひが落おち込こむこともないだろう」と指摘してきしている[174]。

片岡かたおか剛士たけし、田中たなか秀臣ひでおみは「消費しょうひ増税ぞうぜいが恒久こうきゅう的てきな性格せいかくを持もつため、一時いちじ的てきな給付きゅうふ金きん・減税げんぜいで増税ぞうぜいの悪影響あくえいきょうを十分じゅうぶんに和やわらげることは困難こんなんである」と指摘してきしている[175]。

浜田はまだ宏一こういちは「金融きんゆう緩和かんわをせずに消費しょうひ税率ぜいりつを上あげれば、国民こくみんの実質じっしつ上じょうの所得しょとくが減へりその結果けっか、税収ぜいしゅうが減へり、税収ぜいしゅうが減へった結果けっか、日本にっぽん経済けいざいは破綻はたんに向むかう」と指摘してきしている[176]。

消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの対策たいさくとしての金融きんゆう政策せいさくについて、高橋たかはし洋一よういちは「金融きんゆう政策せいさくの効果こうかは、タイムラグが大おおきく財政ざいせい政策せいさくほどに即効そっこう性せいはないため、短期たんき的てきな景気けいき変動へんどうの対応たいおう策さくとしては力不足ちからぶそくになってしまう」と指摘してきしている[177]。高橋たかはしは「（消費しょうひ）増税ぞうぜいなしの金融きんゆう緩和かんわと、増税ぞうぜいしてマイナス効果こうかの中なかでの金融きんゆう緩和かんわは明確めいかくに区別くべつしなければいけない」と指摘してきしている[178]。

景気けいき刺激しげき策さくとしての提案ていあん[編集へんしゅう]

経済けいざい学者がくしゃの小野おの善康よしやすは「（消費しょうひ）増税ぞうぜいで税収ぜいしゅうが増ふえた分ぶんの一部いちぶは、借金しゃっきんの返済へんさいではなく新あらたに人ひとを雇やとうのに使つかった方ほうが所得しょとくが増ふえて税収ぜいしゅうも増ふえる[73]」「増税ぞうぜいで失業しつぎょう者しゃに仕事しごとを作つくり、家計かけいに所得しょとくで戻もどす。増税ぞうぜいされても、それが失業しつぎょう者しゃに渡わたって消費しょうひされれば、マクロ経済けいざい学がく的まとには必かならず就業しゅうぎょう者しゃの所得しょとく増ぞうとなって戻もどってくる[179]」と主張しゅちょうしている。

消費しょうひ増税ぞうぜいの代替だいたい案あん[編集へんしゅう]

成長せいちょう率りつを上あげる[編集へんしゅう]

竹中たけなか平蔵へいぞうが示しめす財政ざいせい再建さいけん策さくは、日本にっぽんの名目めいもく経済けいざい成長せいちょう率りつ[注ちゅう 6] を3-4%に上あげることであるが[180]、長期ちょうき的てきには消費しょうひ税ぜいの引ひき上あげは不可避ふかひであるとの考かんがえを示しめしている[181]。2013年ねんには「自分じぶんは、今いままで消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげに賛成さんせいしたことはないし、消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげずに財政ざいせい再建さいけんはできる」と述のべている[182]。

高橋たかはし洋一よういちは「財務省ざいむしょうの試算しさんでは税収ぜいしゅうの弾性だんせい値ち（名目めいもくGDP1%増ぞうで税収ぜいしゅうが何なに%増ふえるかを示しめす数値すうち）を1.1として、景気けいき回復かいふく局面きょくめんでの税収ぜいしゅう増ぞうを低ひくく計算けいさんしている。過去かこ15年間ねんかんの税収ぜいしゅう弾性だんせい値ちは3-4くらいなので、名目めいもく成長せいちょう率りつ3%くらいだと、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいなしでも、2016年度ねんどのプライマリー収支しゅうし対たい名目めいもくGDPは1.4%程度ていどに下さがり、遅おそくとも2018年度ねんどまでには赤字あかじ解消かいしょうする」と述のべている[183]。

飯田いいだ泰之やすゆきは「消費しょうひ増税ぞうぜい導入どうにゅうの前提ぜんてい条件じょうけん『平成へいせい23年度ねんどから平成へいせい32年度ねんどまでの平均へいきんにおいて名目めいもくの経済けいざい成長せいちょう率りつで3%程度ていどかつ実質じっしつの経済けいざい成長せいちょう率りつで2%程度ていど』が達成たっせいできていれば、そもそも増税ぞうぜいはいらなくなる」と指摘してきしている[71]。

デフレからの脱却だっきゃく[編集へんしゅう]

浅田あさだ統一とういつ郎ろうは「日本にっぽんの国債こくさい累積るいせき問題もんだいの解決かいけつ策さくは、デフレ不ふ況きょうからの脱却だっきゃくであり、消費しょうひ税ぜいの増税ぞうぜいではない」と述のべている[184]。

飯田いいだ泰之やすゆきは「財政ざいせい再建さいけんを増税ぞうぜいだけで達成たっせいすることはできない。増税ぞうぜいはむしろ税収ぜいしゅうの減少げんしょうを通つうじて財政ざいせい状況じょうきょうを悪化あっかさせる可能かのう性せいがある。とくにデフレと、それによるゼロ金利きんり状況じょうきょうにおいて緊縮きんしゅく財政ざいせいの景況けいきょうへの悪影響あくえいきょうは大おおきい。財政ざいせい状況じょうきょうの改善かいぜんのためにではなく、将来しょうらいの財政ざいせい負担ふたんに対たいして消費しょうひ税ぜいを充あてるのは望のぞましいが、プライマリーバランスと将来しょうらいの医療いりょう・年金ねんきん支出ししゅつを混同こんどうしたままに、デフレという特殊とくしゅ状況じょうきょうを考慮こうりょせずに増税ぞうぜいへと進すすもうとする方針ほうしんはきわめて危あやうい」と指摘してきしている[185]。

森永もりなが卓郎たくろうは「景気けいきが悪わるいときに消費しょうひ税ぜいを上あげてはならないというのは、経済けいざい政策せいさくの基本きほんだ。増税ぞうぜいよりも先行せんこうして取とり組くむべきなのが、デフレ脱却だっきゃくによる自然しぜん増収ぞうしゅうである。このまま経済けいざい成長せいちょうもせず、歳出さいしゅつ削減さくげんのための改革かいかくも先送さきおくりにすれば、底そこに穴あなのあいたバケツに税金ぜいきんをつぎ込こむことになり、財政ざいせい赤字あかじが増大ぞうだいし、再ふたたび増税ぞうぜいへの道みちを歩あゆまざるを得えなくなる」と指摘してきしている[186][187]。

小黒おぐろ一正かずまさは「あの程度ていどの消費しょうひ増税ぞうぜいでは、デフレ脱却だっきゃくが成功せいこうした場合ばあい、金利きんりが上昇じょうしょうし、利り払はらい費ひの増加ぞうかに対応たいおうできなくなる」と述のべている[97]。

歳出さいしゅつの抑制よくせい[編集へんしゅう]

竹中たけなか平蔵へいぞうは「抜本ばっぽん的てきな社会しゃかい保障ほしょう改革かいかくを行おこない歳出さいしゅつを制御せいぎょしない限かぎり、消費しょうひ税ぜいをいくら引ひき上あげても財政ざいせいは再建さいけんしない」と指摘してきしている[188]。竹中たけなかは「増税ぞうぜい（消費しょうひ税率ぜいりつの10%引ひき上あげ）しても問題もんだいは解決かいけつしない。歳出さいしゅつをこのまま放はなっておくと、社会しゃかい保障ほしょう費ひが毎年まいとし1兆ちょう円えんずつ増ふえていく。必要ひつようなのは歳出さいしゅつの抑制よくせいである」と指摘してきしている[189]。竹中たけなかは「現行げんこう（2014年ねん）の社会しゃかい保障ほしょう制度せいどを続つづけたら、消費しょうひ税率ぜいりつを30%以上いじょうにしても財政ざいせいが健全けんぜん化かしないことが、専門せんもん家かの試算しさんによって明あきらかになっている」と指摘してきしている[188]。

原田はらだ泰やすしは、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいより社会しゃかい保障ほしょう給付きゅうふ費ひの削減さくげんが必要ひつようであると主張しゅちょうしている[190]。原田はらだは「20兆ちょう円えんの支出ししゅつ増ぞうに対たいして、消費しょうひ税ぜいを5%上あげても、1%で2.5兆ちょう円えんの税収ぜいしゅうとされているので12.5兆ちょう円えんの増収ぞうしゅうにしかならない。予算よさんを使つかわないようにすることが一層いっそう大事だいじである。高齢こうれい化かによる社会しゃかい保障ほしょう支出ししゅつの増加ぞうかはやむを得えないという反論はんろんがあるが、2007年ねんから2012年ねんまでに65歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃは12%しか増ふえていない。社会しゃかい保障ほしょう費ひは予算よさんの3割わりであるから、全体ぜんたいの予算よさんは0.3×12%で4%しか増ふえないはずである。児童じどう手当てあての増額ぞうがくによる歳出さいしゅつの増加ぞうかは1.7兆ちょう円えんに過すぎない。なぜ20兆ちょう円えんも歳出さいしゅつが増ふえたのかをよく考かんがえない限かぎり、いくら増税ぞうぜいしても財政ざいせい再建さいけんなど到底とうてい無理むりである」「なぜ20兆ちょう円えんも歳出さいしゅつが増加ぞうかしてしまったかと言いえば、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいに賛同さんどうしてもらうために予算よさんを配くばったからである。膨ふくらんだ歳出さいしゅつの穴あなを埋うめるために消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいが必要ひつようになると納得なっとくしてもらうためである。結局けっきょく、歳出さいしゅつを20兆ちょう円えん膨ふくらませて12.5兆ちょう円えん埋うめるだけだ。財政ざいせい赤字あかじは増ふえてしまっている」「消費しょうひ税ぜいをいくら上あげても、税収ぜいしゅうが増加ぞうかした分ぶんを使つかってしまっては、いくら増税ぞうぜいしてもきりがない。財政ざいせい再建さいけんのためには歳出さいしゅつを増ふやさないことが肝心かんじんだという認識にんしきに立たたない限かぎり、本当ほんとうの意味いみで財政ざいせい再建さいけんはできない」と指摘してきしている[191]。

野口のぐち悠紀雄ゆきおは、日本にっぽんの財政ざいせい状況じょうきょうは極きわめて深刻しんこくであるので、消費しょうひ増税ぞうぜいだけで財政ざいせい再建さいけんをすることは困難こんなんであると分析ぶんせきしている[192]。野口のぐちによれば、消費しょうひ税率ぜいりつを10%に上あげたとしても、10年ねんほどで国内こくないでの国債こくさい消化しょうかは行いき詰づまることになる。野口のぐちは、社会しゃかい保障ほしょう制度せいどの抜本ばっぽん的てきな改革かいかくを実行じっこうすることが必要ひつようであると述のべている。

井堀いぼり利宏としひろは「歳出さいしゅつを抑制よくせいできずこのままならば、消費しょうひ税ぜいを25%に設定せっていしないと維持いじできない」と述のべている[106]。

小野おの善康よしやすは「（消費しょうひ）増税ぞうぜいは必要ひつようであるが、同時どうじに歳出さいしゅつ削減さくげんして雇用こようを減へらしたら逆ぎゃく効果こうかとなる」と述のべている[73]。

相続そうぞく税ぜい[編集へんしゅう]

経済けいざい学者がくしゃの鈴木すずき亘わたるは「増税ぞうぜいするにしても（消費しょうひ税ぜいより）相続そうぞく税ぜいの方ほうがよい。今いま（2013年ねん）は相続そうぞく対象たいしょう者しゃ100人にんのうち4人にんの割合わりあいでしか払はらっていないのを、もっと多おおくの人ひとに払はらってもらう。高齢こうれい者しゃは残のこさず使つかおうと考かんがえるため、景気けいきへの影響えいきょうは少すくない。今いまの年金ねんきんは高齢こうれい者しゃたちが支払しはらった分ぶんよりも高たかい金額きんがくを戻もどし、コストは若わかい世代せだいが負担ふたんしているが、この世代せだい間あいだ不公平ふこうへいも解決かいけつする」と指摘してきしている[193]。

所得しょとく税ぜい[編集へんしゅう]

竹中たけなか平蔵へいぞうは「通常つうじょう、普通ふつうの人ひとが払はらう所得しょとく税ぜいは税率ぜいりつ10%以下いかである。所得しょとく税ぜい全体ぜんたいで普通ふつうの人ひとが占しめる比率ひりつは、イギリスで15%、ドイツ・、アメリカで30-40%であるが、日本にっぽんは80%にもなる。つまり、ほとんどの人ひとは税金ぜいきんを払はらっていない。高額こうがく所得しょとく者しゃだけが高たかい税率ぜいりつを課かせられ、所得しょとく税ぜいが空洞くうどう化かしている。普通ふつうの人ひとにも所得しょとく税ぜいを払はらってもらわないと税ぜいは成なりたないが、政治せいじ家かはそう言いえないから、なんでもかんでも消費しょうひ税ぜいと言いっているわけである。この欠陥けっかんをどう補おぎなえるかが非常ひじょうに重要じゅうようなポイントになる」と指摘してきしている[82]。

しかし、この考かんがえ方かたは高額こうがく所得しょとく者しゃ（富裕ふゆう層そう）への現在げんざいの所得しょとく税ぜいの累進るいしん課税かぜい制度せいどと税ぜいの再さい配分はいぶん機能きのうによる格差かくさ是正ぜせいの役割やくわりを否定ひていするもので、日本にっぽんでの所得しょとく累進るいしん課税かぜいの最高さいこう税率ぜいりつが1974年ねんに75％（8000万まん円えん以上いじょう）であったものが、1999年ねんに37％（1800万まん円えん以上いじょう）まで下さげられ、現在げんざいは2015年ねんから45％（4000万まん円えん以上いじょう）に戻もどされているが、この間あいだ高額こうがく所得しょとく者しゃ（富裕ふゆう層そう）は十分じゅうぶんに優遇ゆうぐうされてきた。そして所得しょとく税ぜいや法人ほうじん税ぜいなどの減収げんしゅう分ぶんが消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいで穴埋あなうめされてきたという事実じじつ[194] があり、植草うえくさ一秀かずひでなどの有識者ゆうしきしゃも以前いぜんからそれを指摘してき[195][196] している。

金融きんゆう所得しょとくに対たいする累進るいしん課税かぜいの適用てきよう[編集へんしゅう]

現在げんざい、日本にっぽんの所得しょとく税ぜいは累進るいしん課税かぜいであるが、実際じっさいは勤労きんろうによる給与きゅうよ収入しゅうにゅうなど以外いがいは定率ていりつ課税かぜいの分離ぶんり課税かぜいが適用てきようされて累進るいしん課税かぜいから外はずされている。特とくに国際こくさい為替かわせや株式かぶしきや債券さいけんや不動産ふどうさんなどの金融きんゆうの投機とうき的てき取引とりひきによるキャピタル・ゲイン（価格かかく変動へんどうの売買ばいばい差益さえき）への課税かぜいは所得しょとく税ぜい制度せいど上じょうは申告しんこく分離ぶんり課税かぜいでの譲渡じょうと所得しょとくや事業じぎょう所得しょとくなどがそれに適用てきようされるが、それら分離ぶんり課税かぜい適用てきようの金融きんゆう所得しょとくを含ふくめた実質じっしつの所得しょとく税ぜい負担ふたん率りつが所得しょとく１億おく円えん程度ていどを超こえると逆ぎゃくに低下ていかしている事実じじつ[197] があり、その金融きんゆうの投機とうき的てき取引とりひきでの莫大ばくだいな金融きんゆう所得しょとくが現在げんざいの超ちょう富裕ふゆう層そうを生うみ出だしている主おもな要因よういんである。よって、格差かくさ是正ぜせいと財源ざいげん創出そうしゅつのために所得しょとく税ぜいの金融きんゆう所得しょとくの分離ぶんり課税かぜいの廃止はいし（総合そうごう課税かぜい化か）などが日本にっぽんの一部いちぶの有識者ゆうしきしゃの間あいだで議論ぎろん、日本にっぽん共産党きょうさんとうなどが政策せいさく導入どうにゅうを求もとめている。

金融きんゆう取引とりひき税ぜい、トービン税ぜい（通貨つうか取引とりひき税ぜい）の導入どうにゅう[編集へんしゅう]

2020年ねんに入はいり新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょうへの経済けいざい対策たいさくに端はしを発はっした給付きゅうふ金きんの実施じっしなどでベーシックインカムなどの導入どうにゅうの機運きうんが高たかまっており、その有望ゆうぼうな財源ざいげん案あんとして金融きんゆう取引とりひき（投機とうき的てき短期たんき取引とりひき）に超ちょう低率ていりつ（１％以下いか程度ていど）課税かぜいでも莫大ばくだいな財源ざいげん創出そうしゅつが見込みこめる金融きんゆう取引とりひき税ぜいやトービン税ぜい（通貨つうか取引とりひき税ぜい）などが浮上ふじょうしているが、その見込みこめる莫大ばくだいな税収ぜいしゅうによって恒久こうきゅう的てきな消費しょうひ税ぜい廃止はいし（０％）の実現じつげんも可能かのうである。ごく単純たんじゅんな試算しさんでは外国がいこく為替かわせ取引とりひきのみの課税かぜい（トービン税ぜい）の導入どうにゅうであってもおおよそ日本にっぽんの年間ねんかん為替かわせ取引とりひき高だかは40兆ちょう円えん×250日にち＝1京きょう円えんで税率ぜいりつを0.25％とすれば税収ぜいしゅうは25兆ちょう円えん[198] で、現在げんざいの最新さいしんの消費しょうひ税収ぜいしゅう（10％へ増税ぞうぜい後ごの）がそれとほぼ同額どうがく[199] であるのでそれで代替だいたい出来でき、金融きんゆう取引とりひき税ぜいの導入どうにゅうならば全すべての金融きんゆう取引とりひきが課税かぜい対象たいしょうとなるためもっと低率ていりつで済すむ。日本にっぽんも含ふくめ米国べいこくやEUなど世界せかい的てきに一部いちぶの有識者ゆうしきしゃや政治せいじ家かなどの間あいだで導入どうにゅうの議論ぎろん[200] が始はじまっている。富裕ふゆう層そうへの直接的ちょくせつてきな高率こうりつの金融きんゆう所得しょとく課税かぜい強化きょうかは抵抗ていこうが大おおきいが、この金融きんゆう取引とりひき段階だんかいでの課税かぜいは超ちょう低率ていりつの課税かぜいで導入どうにゅうの抵抗ていこうもはるかに少すくないと考かんがえられ、投機とうきの抑制よくせいと格差かくさ是正ぜせいにも貢献こうけんするメリットがある。しかし、この税ぜいの非ひ導入どうにゅう国こくへの投機とうき的てき金融きんゆう資本しほん逃避とうひなどの懸念けねんから効果こうかを発揮はっきさせるためには全ぜん世界せかいでの協調きょうちょう導入どうにゅう（国際こくさい連帯れんたい税ぜいとして）が必要ひつようである[要よう出典しゅってん]。

環境かんきょう税ぜいの導入どうにゅう[編集へんしゅう]

「環境かんきょう税ぜい#日本にっぽん」も参照さんしょう

経済けいざい学者がくしゃのジョセフ・E・スティグリッツは消費しょうひ税ぜいは消費しょうひを冷ひやす「悪わるい税金ぜいきんだ」と指摘してきし、消費しょうひ税ぜいよりも二酸化炭素にさんかたんその排出はいしゅつ量りょうに応おうじて課税かぜいする「環境かんきょう税ぜい」のほうが税収ぜいしゅうにつながるという見方みかたを示しめしている[201]。

明治大学めいじだいがく国際こくさい総合そうごう研究所けんきゅうじょフェローの岡部おかべ直明なおあきは「ヨーロッパでは、多おおくの国くにで環境かんきょう税ぜいが導入どうにゅうされており、年金ねんきん財源ざいげんに充あてられている」と指摘してきしている[202]。

岩田いわた規久男きくおは「環境かんきょう税ぜいによる税収ぜいしゅう増ぞうは、財政ざいせい再建さいけんのための消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの必要ひつよう性せいを低下ていかさせる」と指摘してきしている[203]。岩田いわたは「環境かんきょう税ぜいは、使途しとを特定とくていする理由りゆうがなく、一般いっぱん財源ざいげんとして使つかえる。所得しょとく税ぜい・消費しょうひ税ぜいの減税げんぜい財源ざいげんとして使つかえる」と指摘してきしている[204]。

そのほか[編集へんしゅう]

田中たなか秀臣ひでおみは「税ぜいの徴収ちょうしゅう漏もれ・社会しゃかい保険ほけん料りょうの徴収ちょうしゅう漏もれなど、官僚かんりょうのシステムが機能きのうしていないところがある。納税のうぜい者しゃ番号ばんごう制度せいどなどの導入どうにゅうによって、数すう兆ちょう円えんの税収ぜいしゅうの改善かいぜんが図はかれる」と指摘してきしている[205]。

高橋たかはし洋一よういちは、税ぜい理論りろんとして不公平ふこうへいの是正ぜせい・歳入さいにゅう庁ちょうの創設そうせつが先さきであり、また政治せいじ姿勢しせいとして無駄むだの削減さくげん・行財政ぎょうざいせい改革かいかく・国有こくゆう財産ざいさんの売却ばいきゃく・霞かすみが関せき埋蔵まいぞう金きんの発掘はっくつが先さきであると指摘してきしている[206]。高橋たかはしは「歳入さいにゅう庁ちょう・納税のうぜい者しゃ番号ばんごうを導入どうにゅうすれば、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいが必要ひつようなくなるほど税収ぜいしゅうは上あがる」と指摘してきしている[207]。

国際こくさい社会しゃかい・国債こくさいへの影響えいきょう[編集へんしゅう]

2013年ねん8月がつ30日にち午前ごぜん、麻生あそう太郎たろう財務ざいむ相しょうは閣議かくぎ後ご会見かいけんで「消費しょうひ増税ぞうぜいをしなかった場合ばあい、日本にっぽんは財政ざいせい再建さいけんをする気きはないと取とられて、株かぶを一斉いっせいに売うり浴あびせられ、国債こくさいが下さがることも考かんがえられる」と述のべている[208]。黒田くろだ東ひがし彦日本銀行にっぽんぎんこう総裁そうさいは「法律ほうりつで一いち度ど決きめたことをやめて違ちがうことをやるとなれば、どういう影響えいきょうが市場いちばに及およぶか予測よそくしがたいし、変更へんこうした内容ないようを100%実行じっこうすると市場いちばが信認しんにんするかはわからない」と述のべている[209]。

岩井いわい克人かつとは「重要じゅうような点てんは、消費しょうひ増税ぞうぜいによって財政ざいせい規律きりつに対たいする信頼しんらいを回復かいふくさせ、長期ちょうき金利きんりを抑制よくせいすることである。実際じっさい、消費しょうひ増税ぞうぜいの実施じっしが決定的けっていてきとなった2013年ねん9月がつには、長期ちょうき金利きんりは低下ていかしている」と指摘してきしている[13]。2013年ねん10月がつ1日にち、安倍あべ首相しゅしょうは、首相しゅしょう官邸かんていで記者きしゃ会見かいけんし、2014年ねん4月がつから消費しょうひ税率ぜいりつを8%に引ひき上あげる決定けっていを発表はっぴょうしている[210]。

清家きよいえ篤あつしは「日本にっぽんの財政ざいせいはすでに危険きけん領域りょういきに入はいっている。消費しょうひ税ぜいを引ひき上あげると景気けいきにマイナスの影響えいきょうはあるかもしれないが、仮かりに国債こくさい金利きんりが上あがるとそれでは済すまされない。長期ちょうき金利きんりが暴騰ぼうとうすると単たんに景気けいきが悪わるくなるというだけでなく、市場いちばがクラッシュし財政ざいせいが発散はっさんしてしまう」と述のべている[74]。

伊藤いとう元もと重じゅうは「もし日本にっぽんの公的こうてき債務さいむが将来しょうらい膨ふくれ上あがっていくと考かんがえれば、市場いちばで日本にっぽんの国債こくさいは売うり浴あびせられる。そうなっていないのは、政府せいふの財政ざいせい規律きりつが働はたらいており、日本にっぽんの財政ざいせい運営うんえいが破綻はたんすることはないと市場いちばが信しんじているからである。財政ざいせい再建さいけんで最もっとも重要じゅうようなのは、市場いちばの信頼しんらいを損そこなわないことである。財政ざいせい健全けんぜん化かに向むけて努力どりょくする姿勢しせいを持もち続つづけることで、市場いちばに安心あんしん感かんを与あたえるのである。たとえば、消費しょうひ税ぜいを10%に引ひき上あげる法案ほうあんだが、景気けいき悪化あっかを理由りゆうに消費しょうひ税ぜい引ひき上あげを先送さきおくりするようなことにでもなれば、日本にっぽんの財政ざいせい再建さいけんの姿勢しせいはその信頼しんらい性せいを大おおきく損そこねることになりかねない」と述のべている[211]。伊藤いとうは「消費しょうひ税ぜいの引ひき上あげのタイミングを遅おくらせると、国債こくさい市場いちばに大おおきな影響えいきょうが及およぶ可能かのう性せいが出でてくる。地方ちほうの金融きんゆう機関きかんは、預あずか貸かし率りつが低ひくく多おおくの国債こくさいを購入こうにゅうしている。経済けいざいが混乱こんらんするようだとその影響えいきょうは地方ちほうに特とくに強つよく及およぶ。また、地方ちほう経済けいざいは国くにの財政ざいせいへの依存いぞん度どが大おおきいことからも、財政ざいせいの混乱こんらんの影響えいきょうは地方ちほうにより大おおきく及およぶことになる」と指摘してきしている[212]。

「（消費しょうひ税ぜい）増税ぞうぜいしないと投資とうし家かが日本にっぽん国債こくさいを失望しつぼう売うりするため金利きんりが高騰こうとうし、日本にっぽん国債こくさいの暴落ぼうらくを招まねく」という議論ぎろんについて、高橋たかはし洋一よういちは「小泉こいずみ政権せいけんは増税ぞうぜいしないと言いって何なにか問題もんだいが起おきたのか。増税ぞうぜいしないと言いったが経済けいざい成長せいちょうしたので、どの政権せいけんよりも財政ざいせい再建さいけんができた。財政ざいせいの信認しんにんは経済けいざい成長せいちょうがキモで、増税ぞうぜいではない」と指摘してきしている[213]。

エコノミストの山崎やまざき元はじめは「消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげを見送みおくった場合ばあいに、格付かくづけ会社かいしゃが日本にっぽん国債こくさいの格付かくづけを引ひき下さげて国債こくさいが暴落ぼうらくするとの声こえを聞きく。金融きんゆう監督かんとくレベルで国債こくさいのリスクが変かわらなければ、高利回こうりまわりの日本にっぽん国債こくさいは、金融きんゆう機関きかん・機関きかん投資とうし家かにとっては相変あいかわらず魅力みりょく的てきな運用うんよう対象たいしょうであり、インフレ率りつから大幅おおはばに上方かみがた乖離かいりした利回りまわり水準すいじゅんは継続けいぞくしないだろう。また、国内こくない資本しほんの格付かくづけ会社かいしゃは日本にっぽん国債こくさいの格付かくづけを高たかく据すえ置おくだろう。加くわえて、消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげを見送みおくった場合ばあい、景気けいきの拡大かくだいで税収ぜいしゅうが回復かいふくする公算こうさんが大おおきい。総合そうごう的てきに見みて、国債こくさい暴落ぼうらくを防ふせぐために消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげはやむを得えないという意見いけんの説得せっとく力りょくは乏とぼしい」と指摘してきしている[214]。

中原なかはら伸之のぶゆきは「『消費しょうひ増税ぞうぜいしないと国債こくさいが暴落ぼうらくする』『国際こくさい公約こうやくだ』など議論ぎろんが定型ていけい化か・類型るいけい化かされている。消費しょうひ税ぜいを政治せいじゲームにしてはいけないし、国際こくさい公約こうやくなどに拘束こうそくされることはなく、最後さいごは国益こくえきが優先ゆうせんされる」と指摘してきしている[139]。

小幡おばた績は「『日本にっぽん国債こくさいのリスクが高たかまるのであれば、消費しょうひ税ぜい引ひき上あげ延期えんきは避さけるべきである』というのがもっとも誠実せいじつな議論ぎろんである。『海外かいがい投資とうし家かが売うり浴あびせるから、消費しょうひ税ぜいを上あげるべき』という議論ぎろんは、脅おどしのように聞きこえるから悪わるいのではなく、将来しょうらいの投資とうし家か行動こうどうを予言よげんできると考かんがえている点てんで誤あやまりであり、同時どうじに政策せいさく哲学てつがく・政策せいさく立案りつあん側がわの戦略せんりゃくとして『負まけ』の戦略せんりゃくである[215]」「『投資とうし家かの失望しつぼうにつながる』という理由りゆうで消費しょうひ増税ぞうぜいを行おこなうことは、投資とうし家かの行動こうどうを恐おそれて政府せいふが自分じぶんの行動こうどうを変かえることであり迎合げいごうである。市場いちばでは迎合げいごうしたほうが必かならず負まける。そして、いったん投資とうし家かに主導しゅどう権けんを握にぎられれば、政府せいふは永遠えいえんに投資とうし家かの言いいなりになってしまう[103]」と述のべている。

消費しょうひ増税ぞうぜいと国際こくさい公約こうやく[編集へんしゅう]

消費しょうひ増税ぞうぜいについて「国際こくさい公約こうやくだから実行じっこうすべき」「先送さきおくりすれば日本にっぽんの信認しんにんが失うしなわれる」といった議論ぎろんがある[216]。2013年ねん7月がつ23日にち、麻生あそう太郎たろうは閣議かくぎ後ごの記者きしゃ会見かいけんで、2014年ねん4月がつに予定よていされている消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげについて「国際こくさい公約こうやくに近ちかいものになっているから、変かえるというのは大変たいへんな影響えいきょうを受うける」と述のべている[217]。

G7、G20などの国際こくさい会議かいぎでは、その場ばで新あらたな約束やくそくを各国かっこく間あいだで行おこなうのでなく、既すでに各国かっこくで決きめられている内容ないようを披露ひろうする場ばであり、先進せんしん国こくでは政府せいふの権能けんのうは国会こっかいの議決ぎけつの範囲はんい内ないであるため、国際こくさい会議かいぎで国会こっかいの意向いこうを無視むしして勝手かってに国くにとして約束やくそくすることはできないというのが基本きほんである[216]。

高橋たかはし洋一よういちは「『国際こくさい公約こうやく』とは、国内こくないで決きまったことを一方いっぽう的てきに国際こくさい会議かいぎの場ばで宣言せんげんすることである。国際こくさい会議かいぎにおいて各国かっこくともに『国際こくさい公約こうやく』として一方いっぽう的てきな宣言せんげんをするが、仮かりに国内こくない法ほうによってそれが変更へんこうされても、各国かっこくともに変更へんこうした国くにを非難ひなんすることはない。消費しょうひ増税ぞうぜいして経済けいざい成長せいちょう率りつが下さがったり、落おち込こみを防ふせごうと無茶むちゃな財政ざいせい支出ししゅつを行おこなって財政ざいせいが悪化あっかしたら、そのときこそ日本にっぽんの信認しんにんは失うしなわれることになる」と指摘してきしている[216]。

片岡かたおか剛士たけしは「国際こくさい公約こうやくといった指摘してきは、消費しょうひ税ぜいが内うち国税こくぜいであり他国たこくが干渉かんしょうできない国内こくない問題もんだいであることに留意りゅういすべきである。国際こくさい公約こうやく違反いはんといった批判ひはんは詭弁きべんである」と指摘してきしている[218]。

経済けいざい学者がくしゃの本田ほんだ悦朗えつろうは「（日本にっぽんの）財政ざいせい再建さいけんは国際こくさい公約こうやくだと言いわれるが、国際こくさい的てきには条約じょうやくや、コミュニケといった国際こくさい的てき約束やくそく以外いがいには拘束こうそくされない。だから、国際こくさい公約こうやくだから予定よてい通どおり消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいをやらないといけないという嘘うそで国民こくみんを騙だましてはいけない」と指摘してきしている[219]。

福祉ふくし財源ざいげん[編集へんしゅう]

「日本にっぽんの福祉ふくし#財源ざいげんの確保かくほ」も参照さんしょう

消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげにより福祉ふくし財源ざいげんを賄まかなうという方針ほうしんは、自民党じみんとうからに再三さいさんにわたって示しめされてきた。民主党みんしゅとう政権せいけんにおいても、菅かん総理そうりは、自民じみんの方針ほうしんに近ちかい考かんがえを表明ひょうめいしている[220][221]。

伊藤いとう元もと重じゅうは「一定いってい率りつの消費しょうひ税ぜいを国民こくみん皆みなが負担ふたんすれば、富とむ者ものも貧まずしい者ものも、同等どうとうの権利けんりとして教育きょういくや社会しゃかい保障ほしょうのサービスを受うけられる。これが社会しゃかい保障ほしょう政策せいさくや教育きょういく政策せいさくによる国民こくみんのあいだの再さい配分はいぶん政策せいさくである。それを維持いじするためには、安定あんてい的てきに税収ぜいしゅうを確保かくほできる消費しょうひ税ぜいが好このましい」と述のべている[85]。エコノミストの西沢にしざわ和彦かずひこは「（社会しゃかい保障ほしょうの財源ざいげんを）全国ぜんこく一律いちりつにあらゆる世代せだいから集あつめられる消費しょうひ税ぜいでまかなうのは妥当だとうである」と述のべている[193]。

若田部わかたべ昌あきら澄きよしは「消費しょうひ税ぜいは薄うすく広ひろくとる性質せいしつがあるため、負担ふたんは広範こうはんに薄うすくなっているのに、社会しゃかい保障ほしょうは限かぎられた人ひとたちに行いく。負担ふたんと給付きゅうふのバランスが崩くずれている」「社会しゃかい保障ほしょうが大事だいじだから、消費しょうひ税ぜいを増税ぞうぜいするという考かんがえ方かたは短絡たんらく的てきであり、社会しゃかい保障ほしょうの財源ざいげんの話はなしと、消費しょうひ税ぜいの話はなしは分わけて考かんがえるべきである。財源ざいげんが必要ひつようであるなら、景気けいきに悪影響あくえいきょうを与あたえないようなやり方かたもある。人々ひとびとの所得しょとく・雇用こようが減へってしまうと、貧困ひんこん者しゃ層そうには大おおきな打撃だげきを与あたえる。それでは増税ぞうぜいの意味いみがない」と指摘してきしている[222]。

鈴木すずき亘わたるは「（社会しゃかい保障ほしょうの）不安ふあん解消かいしょうどころか、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいが仇かたきとなって社会しゃかい保障ほしょう費ひばらまきの道みちを開ひらいてしまう。増収ぞうしゅうのたびに支出ししゅつを追加ついかするなら消費しょうひ税ぜいは将来しょうらい30%を超こえてしまう」「国民こくみんは負担ふたんが増ますことに不安ふあんを持もっているのではなく、どこまで将来しょうらい負担ふたんが増ふえるのか、どこまで（社会しゃかい保障ほしょうの）給付きゅうふが削減さくげんされるのかが解わからないのが最大さいだいの不安ふあんなのである。まずは情報じょうほうをオープンにして、財政ざいせい状況じょうきょうを正直しょうじきに話はなした上うえで、負担ふたんを求もとめるのが筋すじだ」と指摘してきしている[193]。竹中たけなか平蔵へいぞうは、このまま消費しょうひ増税ぞうぜい案あんにのれば、日本にっぽんは「低てい福祉ふくし・重税じゅうぜい国家こっか」となると主張しゅちょうしている[180]。

社会しゃかい保障ほしょう目的もくてき税ぜい[編集へんしゅう]

高橋たかはし洋一よういちは「消費しょうひ税ぜいを上あげるロジックとして、社会しゃかい保障ほしょうにくっつける発想はっそうには無理むりがあり、社会しゃかい保障ほしょうを人質ひとじちにして消費しょうひ税ぜいを増税ぞうぜいするための屁理屈へりくつにすぎない。本来ほんらいの消費しょうひ税ぜいは一般いっぱん財源ざいげんが普通ふつうで、社会しゃかい保障ほしょうなどの特定とくてい財源ざいげんにしている国くにはほとんどない[223]」「消費しょうひ税ぜいを社会しゃかい保障ほしょう目的もくてき税ぜいにするのは、先進せんしん国こくではまず例れいを見みない奇妙きみょうなものだ。消費しょうひ税ぜいを社会しゃかい保障ほしょう目的もくてき税ぜい化かして国くにのサービスに固定こていすると地方ちほう分権ぶんけんができにくくなる[224]」と指摘してきしている。

森永もりなが卓郎たくろうは「社会しゃかい保障ほしょう財源ざいげんを保険ほけん料りょうから、税金ぜいきんに（完全かんぜんに）切きり替かえたら会社かいしゃの負担ふたんが無なくなる」「庶民しょみんは収入しゅうにゅうの80%を消費しょうひに回まわしているのに対たいして、金持かねもちは20%しか消費しょうひしていない。社会しゃかい保険ほけん料りょうは収入しゅうにゅうにかかるのに対たいして、消費しょうひ税ぜいは消費しょうひにかかる。消費しょうひ税ぜいが10%になった場合ばあい、庶民しょみんの支払しはらう消費しょうひ税ぜいは、80%×10%で収入しゅうにゅうの8%となるが、金持かねもちが支払しはらう消費しょうひ税ぜいは、20%×10%で収入しゅうにゅうの2%でよい、つまり、社会しゃかい保障ほしょう財源ざいげんを消費しょうひ税ぜいに移うつすだけで、金持かねもちの負担ふたんは4分ぶんの1になる。（社会しゃかい保障ほしょう財源ざいげんを保険ほけん料りょうから、税金ぜいきんに完全かんぜんに切きり替かえ）企業きぎょう負担ふたんが無なくなれば、8分ぶんの1となる」と指摘してきしている[225]。

片岡かたおか剛士たけしは「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいは低てい所得しょとく者しゃに対たいして厳きびしく、弱者じゃくしゃを救すくう目的もくてきの一ひとつである社会しゃかい保障ほしょう制度せいどの財源ざいげんにはそぐわない」と指摘してきしている[226]。また片岡かたおかは「消費しょうひ税ぜいは社会しゃかい保障ほしょう制度せいどを維持いじするための安定あんてい財源ざいげんではない。2013年度ねんどの社会しゃかい保障ほしょう給付きゅうふ費ひは総額そうがくで110兆ちょう円えんであるが、毎年まいとし増加ぞうかを続つづけており、消費しょうひ税率ぜいりつを5%から10%に引ひき上あげても、毎年まいとし社会しゃかい保障ほしょう給付きゅうふ費ひは3-4兆ちょう円えん増ふえるため、数すう年ねん後ごには再ふたたび赤字あかじ額がくが拡大かくだいする。研究けんきゅう者しゃの試算しさんによると、将来しょうらいの社会しゃかい保障ほしょう制度せいど維持いじするために必要ひつような消費しょうひ税率ぜいりつは30-40%程度ていどと言いわれている。社会しゃかい保障ほしょう制度せいどを維持いじするために消費しょうひ税ぜいを利用りようするのであれば、毎年まいとし消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげる必要ひつようがあり現実げんじつ的てきではない」と指摘してきしている[227]。

飯田いいだ泰之やすゆきは「そもそも社会しゃかい保障ほしょう費ひの方ほうが消費しょうひ税収ぜいしゅうよりも多おおいため、目的もくてき税ぜいにはしようがない」と指摘してきしている[228]。

原田はらだ泰やすしは「税ぜいと社会しゃかい保障ほしょうの一体いったい改革かいかくの議論ぎろんは、増税ぞうぜいすればこれまでの福祉ふくしを続つづけられるという筋道すじみちになっているが、超ちょう高齢こうれい社会しゃかいではそうはならないことを認識にんしきしなければならない。増税ぞうぜいされれば、その増税ぞうぜい分ぶんは現在げんざいの高齢こうれい者しゃに分配ぶんぱいされ、将来しょうらいの高齢こうれい者しゃには分配ぶんぱいされない。それならば何なにもしない方ほうがマシである。現実げんじつ的てきな消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい幅はばと社会しゃかい保障ほしょう支出ししゅつのカット率りつを考かんがえなくてはならない」と指摘してきした[229]。

年金ねんきんの財政ざいせい[編集へんしゅう]

岩田いわた規久男きくおは「基礎きそ的てき年金ねんきん財源ざいげんを目的もくてき消費しょうひ税ぜいに置おき換かえれば、現役げんえき世代せだいは基礎きそ的てき年金ねんきん保険ほけん料りょうを支払しはらわずに済すむようになるが、受給じゅきゅう世代せだいである高齢こうれい者しゃの消費しょうひ税ぜい負担ふたんが増ふえる。基礎きそ的てき年金ねんきん目的もくてき消費しょうひ税ぜいの導入どうにゅうは、世代せだい間あいだの不公平ふこうへいを是正ぜせいし、将来しょうらい世代せだいの負担ふたんを和やわらげ、年金ねんきんの持続じぞく的てき可能かのう性せいを高たかめる。低てい所得しょとく者しゃの税ぜい負担ふたんを高たかめるという議論ぎろんについては、『給付きゅうふ付つき税額ぜいがく控除こうじょ制せい』の導入どうにゅうによって解決かいけつできる」と指摘してきしている[230]。

飯田いいだ泰之やすゆきは「（野田のだ内閣ないかく）政権せいけんの財政ざいせい運営うんえいは、目先めさきの年金ねんきん財政ざいせいにおける歳入さいにゅう欠陥けっかんを埋うめるために増税ぞうぜいし、今後こんごも財源ざいげん不足ふそくになったら増税ぞうぜいするという半永久はんえいきゅう的てきな「繰くり返かえし増税ぞうぜい」を基本きほんとしている」と指摘してきしている[231]。

代替だいたい案あん[編集へんしゅう]

森永もりなが卓郎たくろうは「年金ねんきん給付きゅうふの財源ざいげんに税金ぜいきんを充あてることには賛成さんせいである。ただし消費しょうひ税ぜい以外いがいに方法ほうほうはある。例たとえば所得しょとく税ぜいの最高さいこう税率ぜいりつの引ひき上あげ、法人ほうじん税ぜいの引ひき上あげ、金融きんゆう資産しさんに課税かぜいするなど代替だいたい策さくはいくらでもある。せめて公平こうへいに課税かぜいした税金ぜいきんを財源ざいげんに充あてるべきであって、所得しょとくの低ひくい者ものに厳きびしい消費しょうひ税ぜいを上あげるべきではない」と指摘してきしている[232]。

税率ぜいりつの試算しさん[編集へんしゅう]

「日本にっぽんの消費しょうひ税率ぜいりつ5%は、国際こくさい的てきにみて低ひくすぎる」「福祉ふくし先進せんしん国こくのスウェーデンの5分ぶんの1、欧州おうしゅう各国かっこくの4分ぶんの1」との指摘してきがある[233]。しかし、国税こくぜい収入しゅうにゅうに占しめる消費しょうひ税ぜい収入しゅうにゅうの割合わりあいをみると、スウェーデンは約やく22%と日本にっぽんと同どう程度ていどである[233]。これは、日本にっぽんの消費しょうひ税ぜいが医療いりょうや福祉ふくしなどの一部いちぶ非課税ひかぜい項目こうもくを除のぞけば網羅もうら的てきに課税かぜいされているのに対たいし、欧州おうしゅう各国かっこくの付加ふか価値かち税ぜいは、医療いりょう・教育きょういくから住宅じゅうたく取得しゅとく・不動産ふどうさん・金融きんゆうなど幅広はばひろい非課税ひかぜい項目こうもくがあることと、食料しょくりょう品ひんや医薬品いやくひんなどの生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんは軽減けいげん税率ぜいりつをとっているためである[233]。

エコノミストの鈴木すずき準じゅんは「物価ぶっかが上あがった時ときに年金ねんきんの水準すいじゅんを据すえ置おくなどの限かぎられた給付きゅうふ抑制よくせい策さくだけでは、2030年代ねんだいに消費しょうひ税ぜいを25%程度ていどまで引ひき上あげたとしても、税収ぜいしゅうで政策せいさく的てき経費けいひを賄まかなえない。公的こうてきな皆みな保険ほけんや皆みな年金ねんきんを最低限さいていげんにして民間みんかんの保険ほけん・サービスの利用りようが広ひろがれば、民間みんかんの伸のびで成長せいちょう率りつを維持いじすることができ、消費しょうひ税ぜいは20%程度ていどで抑おさえられるかもしれない」と述のべている[73]。

原田はらだ泰やすしは「財政ざいせい赤字あかじを増税ぞうぜいによって賄まかなおうという議論ぎろんはいいが、増税ぞうぜい分ぶんを社会しゃかい保障ほしょうに回まわすとの考かんがえは根本こんぽん的てきに間違まちがっている。社会しゃかい保障ほしょう給付きゅうふ費ひの対たい名目めいもくGDP比ひを見みると、1970年ねんは4.6%だったものが、2010年ねんは24.6%までに上昇じょうしょうした。2060年ねんには53.5%までに達たっする。消費しょうひ税ぜい1%はGDPの0.5%の税収ぜいしゅうに相当そうとうする。そうなると社会しゃかい保障ほしょう給付きゅうふ費ひは現状げんじょうから28.9%まで上昇じょうしょうするためそれを0.5%で割わると57.8%となる。現在げんざい（2012年ねん）の消費しょうひ税率ぜいりつが5%に57.8%を上乗うわのせした62.8%が、2060年ねん時点じてんの消費しょうひ税率ぜいりつという計算けいさんが成なり立たつ。このような増税ぞうぜいが可能かのうだとは思おもえない。つまり、現在げんざいの社会しゃかい保障ほしょうを維持いじするために必要ひつようなお金かねを、増税ぞうぜいのみで賄まかなうのは不可能ふかのうである。あまりにも高こう税率ぜいりつになると経済けいざい効率こうりつが低下ていかする上じょう、税金ぜいきんを納おさめるのがバカらしくなり、節税せつぜいと脱税だつぜい行為こういが横行おうこうする。結果けっか税率ぜいりつをあまりに引ひき上あげると、逆ぎゃくに税収ぜいしゅうが減へることになる。高齢こうれい者しゃ1人にんあたりの社会しゃかい保障ほしょう支出ししゅつを減へらさざるを得えない[234]」「高齢こうれい化かはこれまで以上いじょうのペースで進すすんでいくことを考慮こうりょしなければならない。高齢こうれい化かがほぼピークになる2050年ねんに必要ひつような消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを15%、現行げんこう（2011年ねん）の消費しょうひ税ぜいと合あわせて20%とあらかじめ決定けっていし、その範囲はんい内ないでの財政ざいせい支出ししゅつしか行おこなわず、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを順次じゅんじ行いっていくべきだ[235]」と指摘してきしている。

総合そうごう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう主任しゅにん研究けんきゅう員いんの島しま澤さわ論ろんは「2011年ねん時点じてんで社会しゃかい保障ほしょう費ひの支出ししゅつは約やく108兆ちょう円えんで2030年ねんには226兆ちょう円えんになると予想よそうされている。消費しょうひ増税ぞうぜいだけで赤字あかじを解消かいしょうしようとすると、2030年ねんの消費しょうひ税ぜいは37-41%程度ていどになる」と指摘してきしている[236]。

そのほか[編集へんしゅう]

  • 竹中たけなか平蔵へいぞうは「法人ほうじん税ぜいは企業きぎょうの競争きょうそう力りょくを削そぐため引ひき上あげられず、所得しょとく税ぜいもフロンティアの時代じだいであり引ひき上あげられない。つまり、消費しょうひ税ぜいを上あげるしかない」と指摘してきしている[237]。
  • 土居どい丈たけ朗ろうは、2015年ねん10月がつに予定よていされている消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげについて「消費しょうひ税率ぜいりつを予定よてい通どおりに引ひき上あげなかった場合ばあい、国くにの信認しんにんの維持いじ、社会しゃかい保障ほしょう制度せいどを次世代じせだいに引ひき渡わたしていくという責任せきにん、子こ育そだて支援しえんがまっとうできなくなる。その上うえ、国債こくさい金利きんりの急騰きゅうとう、金利きんり上昇じょうしょうに伴ともなう企業きぎょうの資金繰しきんぐり難なん、社会しゃかい保障ほしょう給付きゅうふの抑制よくせいといった支障ししょうが国民こくみん生活せいかつに及およぶ可能かのう性せいがある」と指摘してきしている[101]。
  • 飯田いいだ泰之やすゆきは「消費しょうひ税ぜいはとりっぱぐれが無なく効率こうりつのいい税制ぜいせいであり、税収ぜいしゅうを安定あんていさせるという意味いみでは必要ひつようである。給付きゅうふ付つき税額ぜいがく控除こうじょやベーシックインカムという制度せいどと同時どうじでやるなら賛成さんせいである」と指摘してきしている[238]。
  • 森永もりなが卓郎たくろうは「消費しょうひ税ぜいを上あげることで、法人ほうじん税率ぜいりつ引ひき下さげ・研究けんきゅう開発かいはつ投資とうし支援しえん拡充かくじゅうのための資金しきんを確保かくほしたいのだろう。給料きゅうりょうが上あがらずに苦くるしんでいる庶民しょみんから金かねを取とり上あげて、大だい企業きぎょうに所得しょとく移転いてんをするわけである」と述のべている[7]。
  • 経済けいざい評論ひょうろん家か・経済けいざい学者がくしゃである植草うえくさ一秀かずひでは「日本にっぽん政府せいふが2010年ねん欧州おうしゅうソブリン危機ききに便乗びんじょうして、日本にっぽんの財政ざいせい危機ききキャンペーンを実施じっししている」と主張しゅちょうしている。植草うえくさは、「累積るいせき債務さいむ1000兆ちょう円えんに短期たんき債務さいむが含ふくまれている」「中央ちゅうおう政府せいふだけで簿ぼ価かベースで647兆ちょう円えんもの資産しさんを保有ほゆうしている」「日本にっぽんの経常けいじょう収支しゅうしが巨額きょがくの黒字くろじを計上けいじょうし続つづけている」という三みっつの点てんを挙あげ、「日本にっぽんの財政ざいせいがPIIGS諸国しょこく同様どうようの危機ききに瀕ひんしているというのは大おおきな間あいだ違ちがい」「財務省ざいむしょうの天下あまくだり利権りけんを切きらずに消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを実現じつげんしてしまおうと邪よこしまな考かんがえに基もとづく大だい増税ぞうぜい政策せいさくが景気けいき回復かいふくの好機こうきを吹ふき飛とばしてしまう」と主張しゅちょうしている[239]。
  • 三橋みつはし貴明たかあきは、増税ぞうぜいとは税率ぜいりつの引ひき上あげや新税しんぜい導入どうにゅうによって政府せいふの歳入さいにゅうを増ふやそうとする発想はっそうのことであるとし[240]、デフレーションの国くにが増税ぞうぜいすると実際じっさいに税収ぜいしゅう増ぞうとならないと指摘してきしている[241] それでも財務省ざいむしょうが増税ぞうぜいをしたがる理由りゆうは「増税ぞうぜいと軽減けいげん税率ぜいりつのセット」によって、天下あまくだり先さきを確保かくほするためだと述のべている[242]。
  • 田中たなか秀臣ひでおみは「日本にっぽんの場合ばあい、高齢こうれい者しゃの投票とうひょう率りつが圧倒的あっとうてきに高たかい。消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいというのは、高齢こうれい者しゃの低てい負担ふたんという利益りえきにかない、また不ふ況きょうのような将来しょうらい不安ふあんがあるときには、高齢こうれい者しゃ対策たいさくとなる。これが世界せかいでも珍めずらしい補強ほきょうの中なかでの増税ぞうぜい議論ぎろんの実体じったいである」と指摘してきしている[243]。
  • 高橋たかはし洋一よういちは「エコノミストたちには、消費しょうひ増税ぞうぜいの影響えいきょうが軽微けいびと言いいたい事情じじょうがある。多おおくのエコノミストは金融きんゆう機関きかんの子会社こがいしゃにいるが、親会社おやがいしゃの金融きんゆう機関きかんは財務省ざいむしょうに弱よわい。また、金融きんゆう機関きかんは、外為がいため資金しきんの運用うんよう・取扱とりあつかい、国債こくさい入札にゅうさつや財務省ざいむしょうオペの対象たいしょう、財務省ざいむしょうの事実じじつ上じょうの内部ないぶ組織そしきである国税庁こくぜいちょう・国税局こくぜいきょくと税務ぜいむ上じょうのトラブルを避さけたいため、財務省ざいむしょうには弱よわい立場たちばにある」と指摘してきしている[244]。

日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごう会かいの主張しゅちょう[編集へんしゅう]

「法人ほうじん税ぜい#日本にっぽんでの議論ぎろん」および「法定ほうてい実効じっこう税率ぜいりつ#諸しょ外国がいこくの法定ほうてい実効じっこう税率ぜいりつ」も参照さんしょう

日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごう会かいは、「消費しょうひ税法ぜいほう改正かいせい法ほうの成立せいりつは、持続じぞく可能かのうな社会しゃかい保障ほしょう制度せいどの確立かくりつ、財政ざいせいの健全けんぜん化かに向むけた一いち歩ほ」と高たかく評価ひょうかすると同時どうじに、法定ほうてい実効じっこう税率ぜいりつの約やく25%まで引ひき下さげとその後ごの更さらなる減税げんぜいや、消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげまでに自動車じどうしゃ取得しゅとく税ぜいと自動車じどうしゃ重量じゅうりょう税ぜいを廃止はいしすることや、10%までは単一たんいつ税率ぜいりつとし低てい所得しょとく者しゃに対たいしては10%の段階だんかいで給付きゅうふ付つき税額ぜいがく控除こうじょを検討けんとうする、所得しょとく税ぜいの最高さいこう税率ぜいりつの引ひき上あげは慎重しんちょうに検討けんとう、相続そうぞく税ぜいは国民こくみんの合意ごういを得えながら必要ひつような見直みなおし。贈与ぞうよ税ぜいは経済けいざい活性かっせい化かのため負担ふたん軽減けいげん等とうを提言ていげんしている[245]。

2014年ねん10月がつ20日はつか、経団連けいだんれんの榊原さかきばら定じょう征せい会長かいちょうは、2015年ねん10月がつに予定よていされる消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげについて「議論ぎろんがあるが引ひき上あげは必要ひつようだ」と述のべ、増税ぞうぜい先送さきおくり論ろんを牽制けんせいした[246]。榊原さかきばら会長かいちょうは、2015年ねん10月がつに予定よていされる消費しょうひ税ぜいの10%への再さい増税ぞうぜいについて「国家こっか的てきな課題かだいとして、再さい引ひき上あげは避さけて通とおることはできない」「日本にっぽんのためには絶対ぜったいに必要ひつようである」と述のべている[247]。

マスメディアの主張しゅちょう[編集へんしゅう]

2012年ねん日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいは「現状げんじょう（税率ぜいりつ5%）以上いじょうの税率ぜいりつ引ひき上あげは、民主みんしゅ主義しゅぎ体制たいせいの維持いじと発展はってんに果はたしてきた新聞しんぶんの役割やくわりと公共こうきょう性せいを損そこなう」として、新聞しんぶんの税率ぜいりつ引ひき上あげに反対はんたいしている[248]。新聞しんぶんには軽減けいげん税率ぜいりつを適用てきようするよう求もとめる大会たいかい決議けつぎを採択さいたくしている[249][250]。

朝日新聞あさひしんぶんは社説しゃせつで、「所得しょとく税ぜいや法人ほうじん税収ぜいしゅうにくらべ消費しょうひ税収ぜいしゅうは安定あんていしているため、福祉ふくしの財源ざいげんに適てきしているともいわれている」ことを根拠こんきょに挙あげ「国債こくさいがこれ以上いじょう増ふえないようにするのは難なん事業じぎょうであり負担ふたん増ぞうは避さけられない」「それはやはり消費しょうひ税ぜいを中心ちゅうしんにせざるを得えない」と主張しゅちょうしている[251]。

南みなみ日本にっぽん新聞しんぶんは社説しゃせつで、消費しょうひ税ぜいが10%に上あがると年収ねんしゅう300万まん円えん4人にん家族かぞくの場合ばあい、10万まん6700円えんの年間ねんかん負担ふたん増ぞうになるとの試算しさん結果けっかを挙あげ、「所得しょとく税ぜいと比くらべると、所得しょとくの少すくない人ひとにも同おなじ税率ぜいりつがかかるため、低てい所得しょとく者しゃほど相対そうたい的てきに負担ふたんが重おもくなる。この「逆進ぎゃくしん性せい」の問題もんだいを解決かいけつすることが何なにより重要じゅうようだ」と主張しゅちょうしている[252]。

ジャーナリスの横山よこやま渉わたるは「新聞しんぶん社しゃは『自分じぶんたちだけは税金ぜいきんを安やすくしろ』と言いっているわけである」「各社かくしゃは新聞しんぶんを軽減けいげん税率ぜいりつの対象たいしょうにすべき理由りゆうとして『活字かつじ文化ぶんかの存続そんぞく』や『知しる権利けんり』などを挙あげているが、今いまや新聞しんぶん社しゃだけが情報じょうほう取得しゅとく手段しゅだんの担にない手てではない。インターネットの普及ふきゅうで、情報じょうほうは多様たよう化かしている。また、速報そくほう性せいでもネットメディアは力ちからを発揮はっきしている。新聞しんぶんが軽減けいげん税率ぜいりつの対象たいしょうになるとすれば、それは新聞しんぶん社しゃの既得きとく権けん以外いがいの何なにものでもない」と述のべている[253]。

消費しょうひ税率ぜいりつ8%および10%への引ひき上あげ[編集へんしゅう]

2013年ねん8月がつから、2014年ねん4月がつに消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを行おこなうかどうかの決定けっていに関かんする経済けいざい財政ざいせい諮問しもん会議かいぎが開ひらかれた。消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい反対はんたい派はは宍戸ししど駿しゅん太郎たろうなど少数しょうすうであった。日本にっぽんの経済けいざい学者がくしゃの多おおくは増税ぞうぜいに賛成さんせいした。例たとえば伊藤いとう隆敏たかとしは、1997年ねんの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいではアジア金融きんゆう危機ききなどがその後ごの景気けいき低迷ていめいの原因げんいんであったとし[254]、予定よていどおり消費しょうひ税率ぜいりつを8%に引ひき上あげることに賛成さんせいした。土居どい丈たけ朗ろうや吉川よしかわ洋ひろしも消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげに賛成さんせいした。

そして、2013年ねん10月がつ1日にちに首相しゅしょうの安倍晋三あべしんぞうは消費しょうひ税率ぜいりつの8%への引ひき上あげを表明ひょうめいした[255]。この消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいが日本にっぽん経済けいざいに再度さいどのダメージを与あたえるのではないかと懸念けねんされている。その増税ぞうぜいの影響えいきょうについてはエコノミストらの間あいだで議論ぎろんが継続けいぞくしている。

8%への増税ぞうぜい後ご、景気けいきは悪化あっかした。2014年ねん10月がつ現在げんざい、一時いちじ的てきな消費しょうひ低迷ていめいなのか、景気けいき後退こうたいへ突入とつにゅうしたのか判断はんだんが分わかれている[256]。

消費しょうひ税率ぜいりつ8%への引ひき上あげに関かんする集中しゅうちゅう点検てんけん会合かいごうでの意見いけん一覧いちらん[編集へんしゅう]

2013年ねん8月がつ26日にちより、経済けいざい財政ざいせい諮問しもん会議かいぎで消費しょうひ税率ぜいりつ8%への引ひき上あげに関かんする集中しゅうちゅう点検てんけん会合かいごうが行おこなわれた。その際さいの有識者ゆうしきしゃの賛否さんぴは以下いかの通とおり[257]。

氏名しめい 所属しょぞく 理由りゆう・意見いけん[254][258]
増税ぞうぜい賛成さんせい 土居どい丈たけ朗ろう 慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく経済学部けいざいがくぶ 勤労きんろう世代せだいに過重かじゅうな負担ふたんを求もとめない財源ざいげんが消費しょうひ税ぜい
伊藤いとう隆敏たかとし 東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん経済けいざい学がく研究けんきゅう科か 消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいによる景気けいき落おち込こみは軽微けいび
古市ふるいち憲けん寿ことぶき 東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん 海外かいがいからアベノミクスとセットで増税ぞうぜいが認識にんしきされている
吉川よしかわ洋ひろし 東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん経済けいざい学がく研究けんきゅう科か 成長せいちょう戦略せんりゃくが信頼しんらいされなくなるので、1%ずつ上あげるのも不可ふか
中空なかぞら麻奈まな BNPパリバ証券しょうけん 社会しゃかい保障ほしょう・税ぜい一体いったい改革かいかくの一環いっかん
西岡にしおか純子じゅんこ アール・ビー・エス証券しょうけん 増税ぞうぜい自体じたいは個人こじん消費しょうひを抑圧よくあつする要因よういんにはならない[259]
高田たかだ創はじめ みずほ総合そうごう研究所けんきゅうじょ 財政ざいせい規律きりつは「市場いちばへの愛あい」
武田たけだ洋子ようこ 三菱みつびし総合そうごう研究所けんきゅうじょ 補正ほせい予算よさんなどのカンフル剤ざいでGDPを押おし上あげるべきではない[260]
菅野かんの雅明まさあき JPモルガン証券しょうけん 優先ゆうせん順位じゅんいは「潜在せんざい成長せいちょう率りつの押おし上あげ」＞「財政ざいせい健全けんぜん化か」＞「2%インフレターゲット」
熊谷くまがい亮あきら丸まる 大和総研だいわそうけん 一定いっていの景気けいき下か支ささえ策さくを講こうじた上うえで、予定よてい通どおり増税ぞうぜいすべき
植田うえだ和男かずお 東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん経済けいざい学がく研究けんきゅう科か 消費しょうひ税ぜい25%でも不十分ふじゅうぶん[259]
加藤かとう淳子じゅんこ 東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん法学ほうがく政治せいじ学がく研究けんきゅう科か 増税ぞうぜい回避かいひの理由りゆうとして、経済けいざいがあげられるのは初はじめてではない[260]
井伊いい雅子まさこ 一橋大学ひとつばしだいがく国際こくさい・公共こうきょう政策せいさく大学院だいがくいん 増税ぞうぜいは中長期ちゅうちょうき的てきに大おおきなプラス
宮本みやもと太郎たろう 中央大学ちゅうおうだいがく法学部ほうがくぶ 成長せいちょう戦略せんりゃくとしての「税ぜいと社会しゃかい保障ほしょうの一体いったい改革かいかく」であり、経済けいざい成長せいちょうにつながる
永井ながい良三りょうぞう 自治医科大学じちいかだいがく 財政ざいせい問題もんだい、世代せだい間あいだの公平こうへい性せいの観点かんてんから賛成さんせい[261]
清家きよいえ篤あつし 社会しゃかい保障ほしょう制度せいど改革かいかく国民こくみん会議かいぎ 消費しょうひ税ぜいの増収ぞうしゅうが段階だんかい的てきに生しょうじる期間きかん内ないに一体いったい的てきに社会しゃかい保障ほしょう改革かいかくすべき
増田ますだ寛ひろし也 東京大学とうきょうだいがく公共こうきょう政策せいさく大学院だいがくいん 社会しゃかい保障ほしょうの充実じゅうじつに必要ひつような財源ざいげんの確保かくほ
古川ふるかわ康やすし 佐賀さが県けん知事ちじ ツケの先送さきおくりの政治せいじに終止符しゅうしふを打うつ
林はやし文子ふみこ 横浜よこはま市し長なが 国くにと地方ちほうの財政ざいせい健全けんぜん化かは消費しょうひマインドを改善かいぜん
岡おか﨑誠也 高知こうち市し長なが 国民こくみん健康けんこう保険ほけんの持続じぞく的てき運営うんえいが可能かのうな財源ざいげんの確保かくほ
立谷たちや秀しげる清きよし 福島ふくしま県けん相馬そうま市し長なが 社会しゃかい保障ほしょう費ひ負担ふたんの公平こうへい性せいと、将来しょうらいの財源ざいげん不足ふそく懸念けねん
谷たに正明まさあき 全国ぜんこく地方銀行ちほうぎんこう協会きょうかい 個人こじん消費しょうひ、設備せつび投資とうし、住宅じゅうたく投資とうしが堅調けんちょう
岡本おかもと圀衞 経済同友会けいざいどうゆうかい 日本銀行にっぽんぎんこう見通みとおしで2014年度ねんどは1.3%成長せいちょう
坂井さかい信也しんや 日本にっぽん民営みんえい鉄道てつどう協会きょうかい 運賃うんちんへの転嫁てんかについては、政府せいふの方針ほうしんに従したがう
鶴田つるた欣也きんや 全国ぜんこく中小ちゅうしょう企業きぎょう団体だんたい中央ちゅうおう会かい 経済けいざいの再生さいせいと表裏一体ひょうりいったい
豊田とよだ章男あきお 日本にっぽん自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい 自動車じどうしゃにかかる各種かくしゅ税金ぜいきんの廃止はいしを要望ようぼう
米倉よねくら弘昌ひろまさ 日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごう会かい 日本にっぽん政府せいふの国際こくさい的てき信用しんようを保たもつためにも増税ぞうぜいをためらうべきではない[260]
岩沙いわさ弘道ひろみち 不動産ふどうさん協会きょうかい ローン減税げんぜいの大幅おおはばな拡充かくじゅうや給付きゅうふ措置そち等とうの施策しさくがあり、落おち込こみは限定げんてい的てき[262]
古賀こが伸明のぶあき 日本にっぽん労働ろうどう組合くみあい総そう連合れんごう会かい 三さん党とう合意ごういされた議員ぎいん定数ていすうの削減さくげんをやるべき[259]
青柳あおやぎ剛つよし 群馬ぐんま県けん建設けんせつ業ぎょう協会きょうかい 「中長期ちゅうちょうき的てきな展望てんぼう」があれば若わかい人ひとに魅力みりょくのある産業さんぎょうになる
岸きし宏ひろし 全国ぜんこく漁業ぎょぎょう協同きょうどう組合くみあい連合れんごう会かい 漁業ぎょぎょう者しゃの手取てどりへのしわ寄よせを防ふせぐ転嫁てんか対策たいさくを要望ようぼう
西田にしだ陽一よういち おんせん県けん観光かんこう誘致ゆうち協議きょうぎ会かい 税ぜい抜ぬき表示ひょうじを恒久こうきゅう化かしてほしい
萬歳ばんざい章あきら 全国ぜんこく農業のうぎょう協同きょうどう組合くみあい中央ちゅうおう会かい 一部いちぶの大だい規模きぼ小売こうり店てんで消費しょうひ税ぜい引上ひきあげに際さいして価格かかく据すえ置おきの動うごき
樋口ひぐち武男たけお 住宅じゅうたく生産せいさん団体だんたい連合れんごう会かい 住宅じゅうたくローン減税げんぜいの拡充かくじゅう等とうと新あらたな給付きゅうふ措置そちがされたので賛成さんせい
青山あおやま理恵子りえこ 日本にっぽん消費しょうひ生活せいかつアドバイザー・コンサルタント協会きょうかい 与野党よやとう合意ごういで出来できた法案ほうあん。決きめられない政治せいじは困こまる[263]
奥山おくやま千鶴ちづる 子育こそだてひろば全国ぜんこく連絡れんらく協議きょうぎ会かい 子育こそだて支援しえんの充実じゅうじつのため[264]
馬うま袋ふくろ秀男ひでお 全国ぜんこく介護かいご事業じぎょう者しゃ協議きょうぎ会かい 平成へいせい27年度ねんど介護かいご報酬ほうしゅう改定かいていへの影響えいきょうを回避かいひ
稲野いなの和利かずとし 日本にっぽん証券しょうけん業ぎょう協会きょうかい 財務省ざいむしょうと安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうの協力きょうりょく関係かんけいが崩くずれる
石黒いしぐろ生子いくこ UAゼンセン 社会しゃかい保障ほしょうの充実じゅうじつに使つかうという前提ぜんていで、予定よてい通どおりの税率ぜいりつ引ひき上あげに賛成さんせい
横倉よこくら義武よしたけ 日本にっぽん医師いし会かい 医療いりょう機関きかんの消費しょうひ税ぜい負担ふたんの問題もんだいの解決かいけつの先送さきおくりは好このましくない
岡村おかむら正ただし 日本にっぽん商工しょうこう会議かいぎ所しょ 1%ずつ引ひき上あげは、対応たいおうするための事務じむ量りょうが膨大ぼうだい
國部こくぶ毅あつし 全国ぜんこく銀行ぎんこう協会きょうかい 計画けいかく通どおり引ひき上あげることが大事だいじ[259]
吉川よしかわ萬里子まりこ 全国ぜんこく消費しょうひ生活せいかつ相談そうだん員いん協会きょうかい 増税ぞうぜいする場合ばあいは、社会しゃかい保障ほしょう制度せいどのしっかりとした構築こうちくが必要ひつよう[265]
小室こむろ淑恵よしえ 株式会社かぶしきがいしゃワーク・ライフバランス 長時間ちょうじかん労働ろうどうさせる企業きぎょうが損そんをする仕組しくみを要望ようぼう
小松こまつ万希子まきこ 小松こまつばね工業こうぎょう株式会社かぶしきがいしゃ 一時いちじ的てきな痛いたみを伴ともなうことを覚悟かくごで賛成さんせい[266]
増税ぞうぜい慎重しんちょう 片岡かたおか剛士たけし 三菱みつびしUFJリサーチ&コンサルティング 多おおくの調査ちょうさ機関きかんの成長せいちょう率りつ予想よそうは「ゲタ」であり、実勢じっせいはマイナス成長せいちょう
宍戸ししど駿しゅん太郎たろう 筑波大学つくばだいがく 完全かんぜん雇用こよう達成たっせいまで延期えんき
岩田いわた一政かずまさ 日本にっぽん経済けいざい研究けんきゅうセンター 3%引ひき上あげを実施じっしすると2015年ねん10月がつの2%消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげは困難こんなん
浜田はまだ宏一こういち イェール大学だいがく IMFやOECDには財務省ざいむしょうや日銀にちぎんの出向しゅっこう者しゃが多おおい
本田ほんだ悦朗えつろう 静岡県立大学しずおけけんりつだいがく 財政ざいせい赤字あかじの最大さいだいの原因げんいんは、デフレによる名目めいもくGDPの下落げらく
工藤くどう啓あきら ｢育そだて上あげ｣ネット 若者わかものの無業者むぎょうしゃへの就労しゅうろう支援しえんを
永濱ながはま利廣としひろ 第一生命だいいちせいめい経済けいざい研究所けんきゅうじょ 小刻こきざみ引ひき上あげor予定よてい通どおり+景気けいき対策たいさくが望のぞましい
白川しらかわ浩道ひろみち クレディ・スイス証券しょうけん 大幅おおはば増税ぞうぜいはデフレ脱却だっきゃく確かく率りつを低下ていかさせる
大久保おおくぼ朝江あさえ 杜もりの伝言板でんごんばんゆるる 1年ねん先送さきおくり
広田ひろた和子かずこ 精神せいしん医療いりょうサバイバー 絶対ぜったい反対はんたい
山根やまね香織かおり 主婦しゅふ連合れんごう会かい 増税ぞうぜい自体じたいに反対はんたい
石澤いしざわ義文よしふみ 全国ぜんこく商工会しょうこうかい連合れんごう会かい 2回かい目めの増税ぞうぜいは耐たえられない可能かのう性せい
その他た 阿部あべ眞一しんいち 岩村田いわむらた本町ほんちょう商店しょうてん街がい 一気いっきに5%上あげてほしい
清水しみず信次しんじ 日本にっぽんチェーンストア協会きょうかい 一気いっきに5%上あげてほしい[267]
白石しらいし興きょう二郎じろう 読売新聞よみうりしんぶんグループ 新聞しんぶんに高たかい公共こうきょう性せい、5%の軽減けいげん税率ぜいりつを

消費しょうひ税率ぜいりつ8%への引ひき上あげ後ごの景気けいきへの影響えいきょうに関かんする議論ぎろん[編集へんしゅう]

日本銀行にっぽんぎんこう政策せいさく委員いいん会かい審議しんぎ委員いいんである佐藤さとう健けん裕ひろしは、2014年ねん4月がつに消費しょうひ税ぜいが増税ぞうぜいされても一時いちじ的てきに消費しょうひは落おち込こむが6月がつから9月がつにかけて景気けいきは回復かいふくし始はじめると述のべた[268]。けれども消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいによって物価ぶっか動向どうこうの観測かんそくは難むずかしくなるとし、日銀にちぎんは物価ぶっかの動向どうこうを数カ月すうかげつ注視ちゅうししていくとしている。佐藤さとうは、1997年ねんに比くらべて2014年ねん現在げんざいの日本にっぽん経済けいざいは消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいに十分じゅうぶん耐たえられるほど堅固けんごであり、消費しょうひ税率ぜいりつを8%に上あげても1997年ねんの再来さいらいはないと主張しゅちょうし[269]、増税ぞうぜいで景気けいきが落おち込こんでも追加ついかの金融きんゆう緩和かんわを講こうじる必要ひつようはないと示唆しさした[270]。

ポール・クルーグマンは、デフレのために依然いぜんとして実質じっしつ金利きんりが高こう止とまりしており、日本にっぽん経済けいざいがデフレを脱だっし健全けんぜんな経済けいざい成長せいちょうをするまでは消費しょうひ税ぜいの増税ぞうぜいをするべきではないとの見解けんかいを示しめしている。もし脆弱ぜいじゃくな景気けいき回復かいふくの中なかで消費しょうひ増税ぞうぜいを行おこなえば、一時期いちじきの回復かいふくが自滅じめつ的てきな結果けっかに終おわってしまう可能かのう性せいがあることが懸念けねんされる[271]。財政ざいせい規律きりつという名目めいもくで、回復かいふく傾向けいこうにある日本にっぽん経済けいざいを不ふ況きょうに逆戻ぎゃくもどりさせることは愚おろかなことだとクルーグマンは論ろんじる。

ローレンス・サマーズは、2013年ねんにおける日本にっぽんのデフレからの脱却だっきゃく路線ろせんが永続えいぞく的てきかそれとも一時いちじ的てきなものかは不明瞭ふめいりょうだと述のべた。2014年ねん4月がつの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいは日本にっぽん政府せいふによる緊縮きんしゅく財政ざいせいであり、これの悪影響あくえいきょうを打うち消けすだけの消費しょうひ拡大かくだいの策さくを打うたない限かぎりは、この増税ぞうぜいは日本にっぽんにとって大おおきなリスクになるとサマーズは説とく[272]。サマーズは2014年ねん3月がつにアブダビで開ひらかれた会合かいごうで、2014年ねん4月がつの消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいによる悪影響あくえいきょうが予想よそう以上いじょうのものになるのではないかとの懸念けねんを示しめし[273]、また、増税ぞうぜい後ごの景気けいき回復かいふくの見込みこみについても過大かだい評価ひょうかされているのではないかと述のべた。

ジョセフ・E・スティグリッツは、5%から8%への消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいが1997年ねんの再現さいげんになるのではないかと危惧きぐする。日本にっぽん経済けいざいは依然いぜんとして脆弱ぜいじゃくであり、早はやすぎる増税ぞうぜいによって経済けいざい成長せいちょうが損そこなわれてしまうリスクがある[274]。第だい2次じ安倍あべ内閣ないかくは2.4%の法人ほうじん税ぜい減税げんぜいなどトリクルダウン理論りろんによって消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの負まけのインパクトを緩和かんわするつもりだが、仮かりにそれを米国べいこくや英国えいこくで行おこなったとしても高こう所得しょとく者しゃのおこぼれが低てい所得しょとく者しゃにしたたりおちることはなく、現実げんじつには大だい企業きぎょうはそれを自分じぶんたちのボーナスとするだけであるとスティグリッツは述のべる[274]。

日本にっぽん政府せいふは増税ぞうぜいと同時どうじに5兆ちょう円えん規模きぼの景気けいき対策たいさくを行おこない増税ぞうぜいの悪影響あくえいきょうを緩和かんわするつもりであるが、みんなの党とうの浅尾あさお慶一郎けいいちろうは増税ぞうぜいが日本にっぽん経済けいざいにダメージを与あたえることがわかっているなら、何故なぜわざわざ増税ぞうぜいをするのかわからないと述のべる[275]。

消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげに関かんする議論ぎろん[編集へんしゅう]

  • 2014年ねん10月がつ31日にち、9月の家計調査かけいちょうさで全ぜん世帯せたいの実質じっしつ消費しょうひ支出ししゅつが対たい前年ぜんねん比ひで5.6％減げんとなり[276]、同日どうじつに日本銀行にっぽんぎんこうは追加ついか量的りょうてき緩和かんわに踏ふみ切きった。日銀にちぎん総裁そうさいの黒田くろだ東ひがし彦は「日本にっぽん経済けいざいはデフレ脱却だっきゃくに向むけて正念場しょうねんばにある。」と述のべた[277]。ブルームバーグは、日本銀行にっぽんぎんこう出身しゅっしんの馬場ばば直彦なおひこ[278]、熊野くまの英生ひでおや日銀にちぎん審議しんぎ委員いいんに推挙すいきょされたことのある河野こうの龍太郎りゅうたろうなどの話はなしとして「消費しょうひ税ぜい増ぞうを最終さいしゅう判断はんだんするときの支援しえん」「年金ねんきん積立つみたて金きん管理かんり運用うんよう独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん（GPIF）の新しん資産しさん構成こうせいとの連携れんけい」との見方みかたを伝つたえた[279]。
  • 11月6日にち、ポール・クルーグマンが首相しゅしょうの安倍あべと会談かいだんし増税ぞうぜいの延期えんきを進言しんげん[280]。
  • 首相しゅしょうの安倍晋三あべしんぞうは11月13日にち、消費しょうひ税ぜい再さい増税ぞうぜいの先送さきおくりと、衆議院しゅうぎいんを解散かいさんする方針ほうしんを決定けってい[281]。
  • 11月14日にち、民主党みんしゅとうはこれまでの方針ほうしんを転換てんかんし増税ぞうぜい先送さきおくりを容認ようにんする方針ほうしんを固かためた[282][283]。これに関かんして、官房かんぼう長官ちょうかんの菅かん義よし偉えらは「驚おどろきましたですよね。予算よさん（委員いいん会かい）の色々いろいろな議論ぎろんを見みた上うえで、『えーっ！』って感かんじ。これに尽つきます」と述のべた[284]
  • 11月14日にち、ローレンス・サマーズが「消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいの先送さきおくりを決定けっていすることを歓迎かんげいする」と語かたった。[285]
  • 増税ぞうぜい先送さきおくり決定けってい後ごに官邸かんていと財務省ざいむしょうの間あいだで、景気けいき弾力だんりょく条項じょうこうと呼よばれる附則ふそく18条じょうをめぐるさや当あてが始はじまり、首相しゅしょう側近そっきんの一人ひとりは「景気けいき弾力だんりょく条項じょうこうがなければ、未み曽そ有ゆうの大だい不況ふきょうでも増税ぞうぜいしなければならなくなる」と反発はんぱつした[286][287]。
  • 2019年ねん2月がつ、ジム・ロジャーズは、秋あきに控ひかえた消費しょうひ増税ぞうぜいについて、「債務さいむの拡大かくだいが進すすむ中なかでは間違まちがった方法ほうほうで、むしろ歳出さいしゅつをカットすべきだ」と強調きょうちょうした。ロジャーズは2018年ねん秋あき、日本にっぽん株かぶは手てばしたと言いう[288]。
  • 2019年ねん7月がつ、ステファニー・ケルトンは、10月に予定よていされる消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげについて「適切てきせつな政策せいさくではない」と批判ひはんした[289]。

消費しょうひ税率ぜいりつ15％への引ひき上あげに関かんする議論ぎろん[編集へんしゅう]

  • 1996年ねん、竹下たけした登のぼるが「消費しょうひ税ぜい１５％を考かんがえる必要ひつようがある」と発表はっぴょう。「税率ぜいりつ二に五ご％の北欧ほくおう三さん国こくは、「年としとってからのための貯金ちょきんです」という気持きもちが支ささえだったが、ちょっと限界げんかいにきているのではないか。そうなると、ＥＣの一いち五ご％ぐらいも一ひとつの考かんがえ方かたではある。」としていた[290]。
  • 2005年ねん8月がつ、民主党みんしゅとうの年金ねんきん政策せいさくとして、橘たちばな木き俊しゅん詔みことのり著ちょの『消費しょうひ税ぜい１５％による年金ねんきん改革かいかく』（東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ）が提示ていじされた[291]。
  • 2010年ねん8月がつ、IMFは日本にっぽんの財政ざいせいに不安ふあんがあるとして、消費しょうひ税ぜい１５％を注文ちゅうもん[292]。
  • 2012年ねん12月7日にち、民主党みんしゅとうの津村つむら啓介けいすけが「消費しょうひ税ぜいは2020年ねんまでに15％にするべき」と発表はっぴょう[293]。
  • 2018年ねん、関西かんさい経済けいざい連合れんごう会かいは、消費しょうひ税ぜいを「将来しょうらい的てきには、１５％超ちょうへの引ひき上あげも視野しやに入いれる必要ひつようがある」と検討けんとうを求もとめた[294]。
  • 2018年ねん11月、野田のだ毅あつしは、「２０％が上限じょうげんだと思おもう。」と述のべた[295]。
  • 2019年ねん11月11日にち、経団連けいだんれんが消費しょうひ税率ぜいりつの10%超ちょうへの引ひき上あげを巡めぐり「有力ゆうりょくな選択肢せんたくしの一ひとつとし、国民こくみん的てきな議論ぎろんを喚起かんきする必要ひつようがある」との提言ていげんをまとめた。 とされており、経団連けいだんれんが消費しょうひ税ぜいの１０％を超こえる政策せいさく提言ていげんを始はじめる[296]。」
  • 2019年ねん11月25日にち、IMFは、「日本にっぽん経済けいざいについて分析ぶんせきした2019年ねんの報告ほうこく書しょを公表こうひょうした。医療いりょうや介護かいごなどで増ふえる社会しゃかい保障ほしょう費ひを賄まかなうため、2030年ねんまでに消費しょうひ税率ぜいりつを15%に上あげる必要ひつようがある」と再ふたたび強調きょうちょうした[297]。
  • 同年どうねん、安倍晋三あべしんぞうは、「『次つぎは１５％』と言いう人ひとがたくさんいるが、そういうことを言いうだけで人々ひとびとの消費しょうひ意欲いよくとか投資とうし意欲いよくが損そこなわれてしまって、経済けいざいに黒雲くろくもがかかる。非常ひじょうに残念ざんねん」と話はなした[298]。

点検てんけん会合かいごう[編集へんしゅう]

2014年ねん10月がつ27日にち、日本経済新聞にほんけいざいしんぶんは税率ぜいりつ再さい引ひき上あげに関かんして意見いけんを聞きく点検てんけん会合かいごうのメンバーを報ほうじ、取材しゅざいによると約やく40人にんのメンバー中ちゅうで数すう人にんが増税ぞうぜいに反対はんたいであるとした[299]。10月29日にちに選抜せんばつメンバー42人にんが正式せいしきに発表はっぴょうされ、日本経済新聞にほんけいざいしんぶんの事前じぜん報道ほうどうに加くわえて、昨年さくねんの会合かいごうで2014年度ねんどはゼロ成長せいちょうになると主張しゅちょうしていた片岡かたおか剛士たけし[300] などが入はいった[301]。財政ざいせい制度せいど等とう審議しんぎ会かい会長かいちょうの吉川よしかわ洋ひろし[302] や日本銀行にっぽんぎんこう出身しゅっしんの武田たけだ洋子ようこ[303]、西岡にしおか純子じゅんこ[304] なども前回ぜんかいに続つづいて選抜せんばつメンバーに入はいった[299]。日本銀行にっぽんぎんこう副ふく総裁そうさいである岩田いわた規久男きくおはインフレターゲット達成たっせいに懐疑かいぎ的てきな民間みんかん識者しきしゃを「足たし算ざんエコノミスト」と批判ひはんしている[305] が、今回こんかい点検てんけん会合かいごうのメンバーに選えらばれた吉川よしかわは「物価ぶっかは足たし算ざんだ」と日本経済新聞にほんけいざいしんぶんのインタビューで述のべ、貨幣かへい数量すうりょう説せつを否定ひていした[306]。

2014年ねん11月4日にちから始はじまった消費しょうひ税ぜいに関かんする点検てんけん会合かいごうには、45人にんが参加さんかした。初日しょにちの点検てんけん会合かいごうで増税ぞうぜいに反対はんたいした荻おぎ上じょうチキは、財務省ざいむしょう内ないで新あらたな広報こうほうが始はじまっていて、これまでの経済けいざい団体だんたいなどに加くわえて「発信はっしん力りょくの高たかい個人こじんや、大学だいがく、NPO、地方ちほうの経済けいざい団体だんたい」に対象たいしょうを広ひろげ、バイラル・マーケティングが行おこなわれていると指摘してきしている[307]。この会合かいごう[308] にはNPO関係かんけい者しゃ3人にん+地方ちほう関係かんけい者しゃ5人にん（首長しゅちょうが4人にん）が参加さんかしているが、8人にん中ちゅう6人にんが増税ぞうぜいに賛成さんせいした。NPO関係かんけい者しゃの中なかでは、インクルいわて理事りじ長ちょうの山屋やまや理恵りえが、被災ひさい地ちや低てい所得しょとく者しゃへの影響えいきょうが大おおきいとして反対はんたい。三鷹みたか市長しちょうの清原きよはら慶子けいこは態度たいど表明ひょうめいしなかった[308][309]。また女性じょせいエコノミストが3人にん、女性じょせい学者がくしゃが2人ふたり参加さんかしているが、増税ぞうぜい賛成さんせい率りつは100％だった[308]。NPO関係かんけい者しゃでかつ学者がくしゃである大日向おおひなた雅美まさみは増税ぞうぜいに賛成さんせいした[310]。内閣ないかく官房かんぼう参与さんよの浜田はまだ宏一こういちや片岡かたおか剛士たけしは増税ぞうぜいに反対はんたいした[308]。11月17日にち、内閣ないかく府ふは7-9月がつ期き実質じっしつGDPを発表はっぴょうし、前期ぜんき比ひ‐0.4％、年率ねんりつ‐1.6％（ロイター予想よそう+2.1％[311]）となり、「驚おどろくほど低ひくい」数字すうじとなった[312]。消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげ後ごの4-6月がつ期きに続つづいてさらに悪化あっかしたことになる。「個人こじん消費しょうひ」は、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの時ときを超こえる大幅おおはばな落おち込こみだった4-6月がつ期きからわずか0.4％しか回復かいふくしておらず、「住宅じゅうたく投資とうし」は4-6月がつ期きから-6.7％だった[313]。「驚おどろくほど低ひくい」[312] GDPが発表はっぴょうされた17日にちの消費しょうひ税ぜい再さい増税ぞうぜいのための点検てんけん会合かいごうでは、日本銀行にっぽんぎんこう出身しゅっしんの西岡にしおか純子じゅんこが「財政ざいせい再建さいけん先送さきおくりで良よいことはない」と増税ぞうぜいに賛成さんせい[314] するなど賛成さんせい派はが6人にんで、増税ぞうぜいに反対はんたいしたのは片岡かたおか剛士たけしと若田部わかたべ昌あきら澄きよしの2人ふたりだけだった[315]。参与さんよの本田ほんだ悦朗えつろうは、もはや増税ぞうぜいの議論ぎろんをしている場合ばあいではなく、経済けいざい対策たいさくに集中しゅうちゅうすべき時ときだと語かたった。[316]

メディアの論調ろんちょう[編集へんしゅう]

  • 朝日新聞あさひしんぶんは、社説しゃせつで増税ぞうぜい支持しじを表明ひょうめいした上うえで「再さい増税ぞうぜいを最終さいしゅう判断はんだんする安倍あべ政権せいけんは、自民党じみんとう内ないでも『1強きょう』と呼よばれる基盤きばんを誇ほこってきた。その政権せいけんが増税ぞうぜいを先送さきおくりするようでは、増税ぞうぜいそれ自体じたいが困難こんなんになりかねない。」と主張しゅちょうした[317]。
  • ロイターの田巻たまき一彦かずひこらは「ハードル引ひき下さげ論ろん」があると主張しゅちょうし7-9月がつ期きのGDPが年率ねんりつ+2％程度ていどなら増税ぞうぜいを行おこなうとした[318]
  • 日本経済新聞にほんけいざいしんぶんは「消費しょうひ税率ぜいりつは予定よてい通どおり10％に上あげる環境かんきょうにあるとの指摘してきが多おおい」と述のべ、夏なつの天候てんこう不順ふじゅんによって消費しょうひ増税ぞうぜい後ごの個人こじん消費しょうひが弱よわくなっていると主張しゅちょうした[319]。これについて高橋たかはし洋一よういちは、結論けつろんありきの試算しさんで天候てんこうが消費しょうひに与あたえた影響えいきょうはほとんどないと批判ひはんした[320]。

世論せろん調査ちょうさ[編集へんしゅう]

  • 2014年ねん10月がつ26日にち、日本経済新聞にほんけいざいしんぶんの世論せろん調査ちょうさで消費しょうひ税率ぜいりつの10％への引ひき上あげについて70％が反対はんたいしていることが分わかった[321]。
  • 朝日新聞あさひしんぶんの世論せろん調査ちょうさによると消費しょうひ税ぜいを「引ひき上あげられる状況じょうきょうだ」との回答かいとうが16％にとどまった[322]。NHKの世論せろん調査ちょうさでも、増税ぞうぜいに賛成さんせいする人ひとは20％となった[323]。
  • 福島ふくしま民みん報ほうによると、女性じょせいでは増税ぞうぜいの「賛成さんせい」がわずか9.5％で、反対はんたい理由りゆうは家計かけいの厳きびしさだった[324]。

日本にっぽんの国会こっかいに議席ぎせきを有ゆうする政党せいとうの消費しょうひ税ぜいへの姿勢しせい[編集へんしゅう]

自由民主党じゆうみんしゅとう[編集へんしゅう]

党内とうないには上あげ潮しお派はと増税ぞうぜい派はが混在こんざいするが、2012年ねん以前いぜんにおいては消費しょうひ税ぜい導入どうにゅうや引ひき上あげは全すべて自民党じみんとう政権せいけんの下したで行おこなわれてきた。2009年ねんの総そう選挙せんきょにおいては、麻生あそう首相しゅしょうは、消費しょうひ増税ぞうぜいの前まえに景気けいき対策たいさくや国会こっかい議員ぎいんの定数ていすう削減さくげんなど歳出さいしゅつの削減さくげんを行おこなうと表明ひょうめいしつつも、その後ごで税率ぜいりつを上あげることは避さけられないとする主張しゅちょうであった。この選挙せんきょにおいて、自民党じみんとうは、消費しょうひ税ぜいを4年間ねんかん上あげないと明確めいかくに公約こうやくした鳩山はとやま代表だいひょうが率ひきいる民主党みんしゅとうに、歴史れきし的てき大敗たいはいを喫きっすることとなった。野党やとうとなった自民党じみんとうの谷垣たにがき執行しっこう部ぶのもとでは、税率ぜいりつ10%への引ひき上あげを党議とうぎ決定けっていしている。2012年ねん6月がつ、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい法案ほうあんを民主党みんしゅとうならびに公明党こうめいとうと合同ごうどうで提出ていしゅつ。消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい法案ほうあんは、衆議院しゅうぎいんで採決さいけつを行おこない賛成さんせい多数たすうで可決かけつされた[325]。

民主党みんしゅとう[編集へんしゅう]

結党けっとう当初とうしょは、新進党しんしんとうが提出ていしゅつした増税ぞうぜい中止ちゅうし法案ほうあんに反対はんたいしていた。岡田おかだ代表だいひょう時代じだいは、年金ねんきん目的もくてき消費しょうひ税ぜいを主張しゅちょうしていたが、小沢おざわ一郎いちろうが代表だいひょうに就任しゅうにんしてからは、これを凍結とうけつ。2007年ねんの参議院さんぎいん選挙せんきょでは、消費しょうひ税ぜい引ひき上あげを否定ひていしている。鳩山はとやま代表だいひょうが就任しゅうにん後ごの2009年ねんの総そう選挙せんきょでは、無駄むだを省はぶけば歳出さいしゅつを大幅おおはばに減へらせるとして、4年間ねんかんは消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげないと公約こうやくしている。しかし、鳩山はとやま内閣ないかくにおいて歳出さいしゅつの削減さくげんは進すすまず、鳩山はとやまの突然とつぜんの辞任じにん後ごに成立せいりつした菅内すがうち閣かくでは一転いってんして消費しょうひ税ぜい引ひき上あげを示唆しさすることとなった。次つぎの野田のだ内閣ないかくでは、野田のだ首相しゅしょうが財政ざいせい規律きりつを重視じゅうしし消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげを表明ひょうめいした。民主みんしゅ党内とうないには、小沢おざわ派はなど消費しょうひ増税ぞうぜい反対はんたい派はが半数はんすうを占しめていたため、党内とうない採決さいけつをとらず前原まえはら政調せいちょう会長かいちょうがとりまとめを一任いちにんするという形かたちで議論ぎろんを打うち切きったことで党内とうないの溝みぞが深ふかまった。2012年ねん6月がつ、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい法案ほうあんを自民党じみんとう、公明党こうめいとうと合同ごうどうで提出ていしゅつし、党議とうぎ拘束こうそくをかけて衆議院しゅうぎいんで採決さいけつを行おこない可決かけつされた[325]。この動うごきに対たいして、党内とうないの最大さいだい派閥はばつである小沢おざわ派はなどが造反ぞうはんした。

2014年ねん11月14日にち、民主党みんしゅとうは幹部かんぶによる会合かいごうで、消費しょうひ税ぜい再さい増税ぞうぜいの凍結とうけつを容認ようにんする方針ほうしんで一致いっちさせた[326][327]。

公明党こうめいとう[編集へんしゅう]

2009年ねんの総そう選挙せんきょ時じにはマニフェストにおいて消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげを示唆しさしている。翌年よくねんの参議院さんぎいん選挙せんきょではトーンダウンして財政ざいせい再建さいけん目的もくてきでの増税ぞうぜいには反対はんたいを表明ひょうめいし、社会しゃかい保障ほしょうのあるべき姿すがたを先さきに議論ぎろんすべきとしていた。2012年ねん6月がつ、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい法案ほうあんを民主党みんしゅとうならびに自民党じみんとうと合同ごうどうで提出ていしゅつ。消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい法案ほうあんは、衆議院しゅうぎいんで採決さいけつを行おこない賛成さんせい多数たすうで可決かけつされた[325]。

公明党こうめいとう代表だいひょう山口やまぐち那な津つ男おとこは、8%への消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいに合あわせて復興ふっこう増税ぞうぜいの法人ほうじん税ぜい上乗うわのせ部分ぶぶんを終了しゅうりょうさせることでの税収ぜいしゅう総額そうがく確保かくほに係かかる批判ひはんを行おこなっている[328]。

2014年ねん8月がつ26日にち、山口やまぐち代表だいひょうは、消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげは、予定よてい通どおり2015年ねん10月がつに実施じっしすべきだとの認識にんしきを示しめした[329]。

2014年ねん9月がつ23日にち、山口やまぐち代表だいひょうは2015年ねん10月がつの消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげについて「消極しょうきょく的てきな選択せんたくをしたときの色々いろいろなリスクも考かんがえておくべきだ」と述のべ、先送さきおくりに否定ひてい的てきな考かんがえを示しめした[330]。

2014年ねん10月がつ31日にち、公明党こうめいとうの上田うえだ勇いさむ経済けいざい再生さいせい調査ちょうさ会長かいちょうは、消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげについて、「来年らいねん10月がつは厳きびしいのではないか。景気けいきが腰折こしおれしてしまえば元もとも子こもない。慎重しんちょうに判断はんだんすべきである」との考かんがえを示しめした[331]。

日本にっぽん共産党きょうさんとう[編集へんしゅう]

基本きほん的てきに公共こうきょう事業じぎょう費ひや防衛ぼうえい費ひを削減さくげんすることや大だい企業きぎょうや大だい資産しさん家かへの増税ぞうぜいによる財政ざいせい再建さいけんを主張しゅちょうしており、一貫いっかんして反はん消費しょうひ税ぜいの立場たちばをとる。

社会しゃかい民主党みんしゅとう[編集へんしゅう]

導入どうにゅうされた「日本にっぽん社会党しゃかいとう」時じは消費しょうひ税ぜいそのものに反対はんたいし、消費しょうひ税ぜい廃止はいし法案ほうあんまで提出ていしゅつするほどであった。「社会しゃかい民主党みんしゅとう」改称かいしょう後ごの自社じしゃさ連立れんりつ政権せいけん時代じだいには一転いってんして消費しょうひ税ぜい引ひき上あげを容認ようにん。連立れんりつを解消かいしょうし、再ふたたび消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげが行おこなわれるムードになると増税ぞうぜい反対はんたいを表明ひょうめいし、共産党きょうさんとうに歩調ほちょうを合あわせて直接ちょくせつ税ぜいの増税ぞうぜいを主張しゅちょうしている。

新党しんとう改革かいかく[編集へんしゅう]

2010年ねんの参議院さんぎいん選挙せんきょにおいて2020年ねん頃ごろには複数ふくすう税率ぜいりつなどの条件じょうけん付つきで税率ぜいりつを10%以上いじょうにせざるを得えないとしているが、代表だいひょうの舛添ますぞえ氏しは社会しゃかい保障ほしょうの切きり込こみが不十分ふじゅうぶんであるとして野田のだ内閣ないかくの増税ぞうぜい路線ろせんには批判ひはん的てきである。

日本にっぽん維新いしんの会かい[編集へんしゅう]

党とうの維新いしん八はち策さくで、消費しょうひ税ぜいの地方ちほう税ぜい化か（と地方ちほう間あいだ財政ざいせい調整ちょうせい制度せいど）を基本きほん方針ほうしんに掲かかげている。

次世代じせだいの党とう[編集へんしゅう]

2014年ねん7月がつ7日にち、石原いしはら慎太郎しんたろうは、2015年ねん10月がつに予定よていしている消費しょうひ税率ぜいりつの10%への引ひき上あげは「やらないといけない」と強調きょうちょうしている[332]。

れいわ新選しんせん組ぐみ[編集へんしゅう]

2019年ねん7月がつの参院さんいん選せんにおいて、「消費しょうひ税ぜいの廃止はいし」を主張しゅちょう。財源ざいげんとして「法人ほうじん税ぜいへの累進るいしん制せい導入どうにゅう」及および「新規しんき国債こくさいの発行はっこう」による財源ざいげん確保かくほを訴うったえている[333][334]。

日本にっぽんの政治せいじ的てきな動向どうこう[編集へんしゅう]

（導入どうにゅう - 2014年ねん現在げんざいに至いたるまで）

  • 1988年ねん（昭和しょうわ63年ねん）12月 - 消費しょうひ税法ぜいほうが成立せいりつ。1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）4月がつ1日にちより税率ぜいりつ3%で施行しこうされる。
  • 1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）
  • 1990年ねん（平成へいせい2年ねん） - 第だい39回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょで自民党じみんとうを含ふくむ全ぜん政党せいとうが食料しょくりょう品ひんなどへの非課税ひかぜいを公約こうやく。選挙せんきょの結果けっか、社会党しゃかいとうが議席ぎせきを伸のばすも自民党じみんとうが多数たすうを維持いじ。その後ご家賃やちんなど一部いちぶのものが非課税ひかぜいになるも、食料しょくりょう品ひんへの非課税ひかぜいという公約こうやくは果はたされなかった。
  • 1994年ねん（平成へいせい6年ねん）
  • 1996年ねん（平成へいせい8年ねん）
    • 1月がつ - 村山むらやま首相しゅしょうが退陣たいじんし橋本はしもと龍太郎りゅうたろう自民党じみんとう総裁そうさいが自社じしゃさ連立れんりつ政権せいけんを継承けいしょう。橋本はしもと首相しゅしょうは9月に衆議院しゅうぎいんを解散かいさん。野党やとう第だい一いち党とうの新進党しんしんとうは20世紀せいき中ちゅうは消費しょうひ税率ぜいりつを3%に据すえ置おくことを公約こうやくしたものの、党とうの公約こうやくと候補者こうほしゃの公約こうやくにねじれがあったことを自民党じみんとうに突つかれるなどの影響えいきょうで新進党しんしんとうが後退こうたいし、自民党じみんとうが大幅おおはばに躍進やくしんする。
    • 6月25日にち - 橋本はしもと内閣ないかくは「1997年ねん4月がつ1日にちから消費しょうひ税ぜいを5%に引上ひきあげる」ことを閣議かくぎ決定けってい。
  • 1997年ねん（平成へいせい9年ねん）4月がつ1日にち - 消費しょうひ税ぜい税率ぜいりつが5%に引ひき上あげ。消費しょうひ税ぜい引ひき上あげに伴ともなう消費しょうひの落おち込こみや、同年どうねん夏なつのアジア通貨つうか危機きき、秋あきには不良ふりょう債権さいけん問題もんだいを要因よういんとして大手おおて金融きんゆう機関きかんが相次あいついで破綻はたんした影響えいきょうで、バブル崩壊ほうかい後ご緩ゆるやかに回復かいふく基調きちょうにあった景気けいきが腰折こしおれする。結果けっか、増税ぞうぜいによる増収ぞうしゅう効こうはその年としだけに留とまり、財政ざいせいはかえって悪化あっかした。
  • 1998年ねん（平成へいせい10年ねん）の第だい18回かい参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょでは、日本にっぽん共産党きょうさんとうは消費しょうひ税率ぜいりつを3%に戻もどすことを公約こうやく。選挙せんきょの結果けっか野党やとう第だい一いち党とうの民主党みんしゅとう及および共産党きょうさんとうが大幅おおはばに議席ぎせきを伸のばし、一方いっぽうで景気けいき対策たいさくが二に転てん三さん転てんした自民党じみんとうは議席ぎせきを激減げきげんさせ参議院さんぎいんの過半数かはんすうを割わり込こむ。橋本はしもと首相しゅしょうは敗北はいぼくの責任せきにんをとって退陣たいじん。その後ご日本にっぽん共産党きょうさんとうや自由じゆう連合れんごうにより消費しょうひ税ぜい減税げんぜい法案ほうあんが提出ていしゅつされるが、成立せいりつはしなかった。一方いっぽう与党よとう自民党じみんとうは、小渕おぶち内閣ないかくにより所得しょとく税ぜいや法人ほうじん税ぜいを減税げんぜいするも、景気けいき対策たいさくという名目めいもくで大型おおがた予算よさんを組くむなどしたため財政ざいせい再建さいけんはますます困難こんなんとなった。
  • 2003年ねん（平成へいせい15年ねん）の自由民主党じゆうみんしゅとう総裁そうさい選挙せんきょにおいて小泉こいずみ純一郎じゅんいちろう首相しゅしょうは「任期にんきである3年間ねんかんは消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげを行おこなわず無駄むだな税金ぜいきんの使つかい方かたを正ただしていく」と公約こうやくし再選さいせんされた。公約こうやく通どおり増税ぞうぜいはされなかったものの財政ざいせい再建さいけんは達成たっせいできなかったとされる。
  • 民主党みんしゅとう及および民主党みんしゅとう代表だいひょう就任しゅうにん直後ちょくごの岡田おかだ克也かつやは、2004年ねん（平成へいせい16年ねん）の第だい20回かい参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょで「消費しょうひ税ぜいを8%に上あげる」と公約こうやく。その参議院さんぎいん選挙せんきょでは辛勝しんしょうしたが、翌年よくねんの第だい44回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょ（郵政ゆうせい選挙せんきょ）で小泉こいずみ劇場げきじょうの前まえに民主党みんしゅとうは大敗たいはいした。その後ご、2007年ねん（平成へいせい19年ねん）の第だい21回かい参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょでは小沢おざわ一郎いちろう代表だいひょうのもと「消費しょうひ税率ぜいりつの据すえ置おき」に方針ほうしんを変更へんこうし、同年どうねんの参議院さんぎいん選挙せんきょでは大勝たいしょうした。
  • 2006年ねん自民じみん総裁そうさい選せんで、谷垣たにがき禎一ていいち財務ざいむ相しょうは「2010年代ねんだいには消費しょうひ税ぜいを10%にする」「社会しゃかい保障ほしょう目的もくてき税ぜい化か」と表明ひょうめいした。同どう選挙せんきょで当選とうせんした安倍晋三あべしんぞう官房かんぼう長官ちょうかん（当時とうじ）は消費しょうひ税ぜい議論ぎろんに関かんしては明言めいげんを避さけていた。
  • 2007年ねん（平成へいせい19年ねん）、テレビ番組ばんぐみに出演しゅつえんした 安倍あべ首相しゅしょうは「消費しょうひ税ぜいを上あげないと言いったことはない」「税制ぜいせいの抜本ばっぽん改革かいかくは近ちかいうちに信しんを問とうことになっている（=国民こくみんに審判しんぱんを仰あおぐ）」と税率ぜいりつを上あげる可能かのう性せいがあることを示唆しさした。直後ちょくごには、「出来できるだけ上あげないように努力どりょくする」と発言はつげんしている。
  • 同年どうねん10月がつ、内閣ないかく府ふ直属ちょくぞくの経済けいざい財政ざいせい諮問しもん会議かいぎが「財政ざいせいを黒字くろじ化かした上うえで医療いりょう・介護かいご給付きゅうふの水準すいじゅんを維持いじするためには2025年度ねんどに約やく14-31兆ちょう円えん分ぶんの増税ぞうぜいが必要ひつようとなり、消費しょうひ税ぜいでまかなうなら11-17%まで税率ぜいりつを引ひき上あげる必要ひつようがある」と現行げんこうと比くらべて最大さいだい12パーセント消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげる可能かのう性せいがある試算しさんを公表こうひょうした。
  • 2008年ねん（平成へいせい20年ねん）10月がつ30日にち、麻生あそう太郎たろう首相しゅしょうは消費しょうひ税率ぜいりつについて、「大胆だいたんな行政ぎょうせい改革かいかくを行おこなった後のち、経済けいざい状況じょうきょうを見みた上うえで」と断ことわった上うえで、「3年ねん後ごに消費しょうひ税ぜいの引ひき上あげをお願ねがいしたい」と述のべた。また、2009年ねん（平成へいせい21年ねん）2月がつ3日にちには衆院しゅういん予算よさん委員いいん会かいで、生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんなどに配慮はいりょする複数ふくすう税率ぜいりつについても言及げんきゅう。
  • 2009年ねん（平成へいせい21年ねん）の第だい45回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょでは、自民党じみんとうは「景気けいき回復かいふく後ごに消費しょうひ税ぜい引ひき上あげ」と公約こうやく、一方いっぽう、民主党みんしゅとうの鳩山はとやま由紀夫ゆきお代表だいひょうは「4年間ねんかんは引ひき上あげず、議論ぎろんもしない」と公約こうやくした。選挙せんきょの結果けっか民主党みんしゅとうが圧勝あっしょうし、自民党じみんとうは大敗たいはいして下野げやした。
  • 2010年ねん（平成へいせい22年ねん）6月がつ18日にち、就任しゅうにん間あいだもない菅かん直人なおと首相しゅしょうは民主党みんしゅとう本部ほんぶに主要しゅよう閣僚かくりょうを呼よび、福祉ふくし財源ざいげん獲得かくとくのために消費しょうひ税ぜいを、谷垣たにがき総裁そうさい率ひきいる自民党じみんとうが2010年ねん（平成へいせい22年ねん）の第だい22回かい参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょで公約こうやくしたのと同おなじ10%まで引ひき上あげる案あんを提示ていじ。同時どうじに年収ねんしゅう400万まん以下いかであれば納税のうぜい額がくを全額ぜんがく還付かんぷする方式ほうしきや食料しょくりょう品ひんに低ひくめの税率ぜいりつ（軽減けいげん税率ぜいりつ）を設定せっていするなど低てい所得しょとく者しゃへの配慮はいりょを盛もり込こむことを主張しゅちょうした。また鳩山はとやま前ぜん首相しゅしょうの「4年間ねんかんは引ひき上あげない」といった公約こうやくを撤回てっかいし、最速さいそくの場合ばあいは2012年ねん（平成へいせい24年ねん）の秋あきにも増税ぞうぜいを実施じっしするとした。これに対たいし日本にっぽん総研そうけんは社会しゃかい保障ほしょうの機能きのうを強化きょうかするためには10%では足たりないとの試算しさんしている[335]。
  • 消費しょうひ税ぜいを導入どうにゅうした直後ちょくごに行おこなわれた1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）の参議院さんぎいん選挙せんきょで宇野うの内閣ないかくを構成こうせいする自民党じみんとうが、5%増税ぞうぜい後ごに行おこなわれた1998年ねん（平成へいせい10年ねん）参議院さんぎいん選挙せんきょで橋本はしもと内閣ないかくを構成こうせいする自民党じみんとうが、10%増税ぞうぜい論議ろんぎとなった2010年ねん参議院さんぎいん選挙せんきょでは菅内すがうち閣かくを構成こうせいする民主党みんしゅとう、国民こくみん新党しんとうがいずれも惨敗ざんぱいしている。このように、消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげ問題もんだいは近年きんねんでは（1989年ねん以降いこう参議院さんぎいんでは政権せいけん与党よとうが単独たんどくで過半数かはんすうを維持いじしていないため）ねじれ現象げんしょうを起おこし政治せいじ空洞くうどう化かの遠因えんいんとなっている。
  • 2011年ねん（平成へいせい23年ねん）
    • 1月がつ
      • 内閣ないかく改造かいぞうを行おこなう。菅かん首相しゅしょうは2011年ねん（平成へいせい23年ねん）半なかばまでに消費しょうひ税ぜい引ひき上あげ問題もんだいに関かんする結論けつろんを出だすと表明ひょうめいしている。また、たちあがれ日本にっぽんを離党りとうした増税ぞうぜい論ろん者しゃである与謝野よさの馨かおるを閣僚かくりょうに登用とうようするなど増税ぞうぜい路線ろせんを明確めいかくにした。
      • 菅かん総理そうりは、社会しゃかい保障ほしょうと税制ぜいせいの一体いったい改革かいかくについて「6月がつまでに成案せいあんを得える」と表明ひょうめいで説明せつめい。「消費しょうひ税ぜい（率りつ）引ひき上あげを実施じっしするときには国民こくみんの審判しんぱんを仰あおぐと従来じゅうらい言いっており、その方針ほうしんに変更へんこうない」と述のべた。
    • 6月30日にち、政府せいふ・与党よとうは「2010年代ねんだい半なかばまでに段階だんかい的てきに消費しょうひ税率ぜいりつを10%まで引ひき上あげる」ことを決定けってい[336]。国民こくみん新党しんとうは会議かいぎで反対はんたいしたが打うち切きられ[337]、同おなじく反対はんたいした与党よとう会派かいはの新党しんとう日本にっぽんは議事ぎじ録ろくがとられなかったとしている[338]。また内閣ないかく府ふは同年どうねん5月がつ、逆進ぎゃくしん性せい対策たいさくとしての食料しょくりょう品ひんへの軽減けいげん税率ぜいりつ適用てきようは「他たの手段しゅだんによる対応たいおうに比くらべ、効果こうかが小ちいさいという見方みかたが一般いっぱん的てき」だとして、否定ひてい的てきな見方みかたを示しめした[339]。
    • 9月19日にち、野田のだ佳彦よしひこ総理そうりは消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいは社会しゃかい保障ほしょうの財源ざいげん確保かくほのために行おこなうべきであり、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの復興ふっこう財源ざいげんを確保かくほするための臨時りんじ増税ぞうぜいからは除外じょがいする考かんがえを示しめした[340]。また同年どうねん6月がつの菅内すがうち閣かくによる増税ぞうぜい案あんについて民主党みんしゅとうは、2013年ねん10月がつに7-8%、2015年度ねんど中ちゅうに10%とする案あんを軸じくに検討けんとうし政府せいふの合意ごういを得える方針ほうしん[341]。同どう総理そうりはフランス・カンヌで始はじまったG20首脳しゅのう会議かいぎの場ばで（2011年ねん11月3日にち午後ごご、日本にっぽん時間じかん同日どうじつ夜よる）、「2010年代ねんだい半なかばまでに段階だんかい的てきに消費しょうひ税率ぜいりつを10%まで引ひき上あげる」と表明ひょうめいし、関連かんれん法案ほうあんを2011年度ねんど内ないに提出ていしゅつすると明言めいげんした[342]。
    • 12月30日にち、民主党みんしゅとう税制ぜいせい調査ちょうさ会かいは社会しゃかい保障ほしょうと税ぜいの一体いったい改革かいかくに伴ともなう消費しょうひ税率ぜいりつの引ひき上あげについて、当初とうしょ原案げんあん（2013年ねん10月がつに8%、2015年ねん4月がつに10%）で示しめした増税ぞうぜい時期じきを半年はんとし先さき延長えんちょうさせ、「2014年ねん4月がつに8%、2015年ねん10月がつに10%とする」ことで決着けっちゃく。党とうとして一体いったい改革かいかくの税制ぜいせい部分ぶぶんの素案そあんが決定けっていした[343]。
  • 2012年ねん（平成へいせい24年ねん）
    • 2月がつ17日にち、政府せいふが消費しょうひ増税ぞうぜいを柱はしらとした税ぜいと社会しゃかい保障ほしょうの一体いったい改革かいかくの素案そあんを大綱たいこうとして閣議かくぎ決定けっていした[344]。
    • 3月30日にち午前ごぜん、政府せいふは消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげ関連かんれん法案ほうあんを閣議かくぎ決定けっていした[345]。
    • 6月15日にち夜よる、民主党みんしゅとう・自民党じみんとう・公明党こうめいとうは消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを柱はしらとする社会しゃかい保障ほしょうと税ぜいの一体いったい改革かいかく関連かんれん法案ほうあんの修正しゅうせいで合意ごういした。社会しゃかい保障ほしょう制度せいど改革かいかくは事実じじつ上じょう先送さきおくりされた[346][347]。
    • 6月21日にち、民主党みんしゅとう・自民党じみんとう・公明党こうめいとうの幹事かんじ長ちょうが会談かいだんを行おこない、先さきに実務じつむ者しゃ間あいだの協議きょうぎによって合意ごういに至いたった項目こうもくについて、あらためて誠実せいじつに実行じっこうすることが確認かくにんされ、三さん党とう合意ごういが成立せいりつした[348]。
    • 6月26日にち、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを柱はしらとする社会しゃかい保障ほしょうと税ぜいの一体いったい改革かいかく関連かんれん法案ほうあんが衆議院しゅうぎいん本ほん会議かいぎで採決さいけつされ、民主党みんしゅとう・国民こくみん新党しんとう・自民党じみんとう・公明党こうめいとうの賛成さんせい多数たすうで可決かけつされた。なお、民主党みんしゅとうから57名めいの反対はんたい、16名めいの棄権きけん・欠席けっせき者しゃが出でた。
    • 7月がつ19日にち、消費しょうひ増税ぞうぜい法案ほうあんを巡めぐる参議院さんぎいんの審議しんぎで、安住淳あずみじゅん財務ざいむ相しょうは新聞しんぶんの社説しゃせつを根拠こんきょに消費しょうひ増税ぞうぜいの必要ひつよう性せいを訴うったえた[349]。
    • 8月がつ10日とおか、同どう法案ほうあんが参議院さんぎいん本ほん会議かいぎで採決さいけつされ、民主党みんしゅとう・国民こくみん新党しんとう・自民党じみんとう・公明党こうめいとうの賛成さんせい多数たすうで可決かけつ・成立せいりつした[350]。なお、民主党みんしゅとうからは数すう名めいの反対はんたい・欠席けっせき者しゃ、自民党じみんとう及および公明党こうめいとうからは数すう名めいの棄権きけん・欠席けっせき者しゃが出でた[351]。
    • 8月がつ22日にち、同どう法ほうが公布こうふされた（平成へいせい24年ねん法律ほうりつ第だい68号ごう）。
  • 2013年ねん（平成へいせい25年ねん）
    • 1月がつ4日にち、安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは、年頭ねんとう記者きしゃ会見かいけんでの質問しつもんに対たいして、「消費しょうひ税ぜいの引ひき上あげの実施じっしについては、4-6月の経済けいざい指標しひょうを含ふくめ、経済けいざい状況じょうきょうを総合そうごう的てきに勘案かんあんして判断はんだんをしていく」と述のべた[352]。
    • 4月がつ19日にち、麻生あそう太郎たろう財務ざいむ相しょうは、ワシントンで開ひらかれたG20財務ざいむ相しょう・中央ちゅうおう銀行ぎんこう総裁そうさい会議かいぎの記者きしゃ会見かいけんで「予定よてい通どおり消費しょうひ税ぜいを引ひき上あげる決意けついを説明せつめいした」と述のべ、消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを国際こくさい社会しゃかいに公約こうやくし財政ざいせい再建さいけんをアピールした[353]。
    • 8月がつ8日にち、8月がつ23日にち、消費しょうひ税率ぜいりつ引上ひきあげに係かかる経済けいざい状況じょうきょう等とうの総合そうごう的てき勘案かんあんの参考さんこうとするため、幅広はばひろく国民こくみん各層かくそうの有識者ゆうしきしゃ・専門せんもん家かを招まねいて集中しゅうちゅう的てきに意見いけんを伺うかがうべく、「今後こんごの経済けいざい財政ざいせい動向どうこう等とうについての集中しゅうちゅう点検てんけん会合かいごう」を同年どうねん8月がつ26日にちから同月どうげつ31日にちまで総理そうり大臣だいじん官邸かんていで開催かいさいすることとされた[354][355]。なお、有識者ゆうしきしゃ・専門せんもん家かには、学者がくしゃやエコノミスト、首長しゅちょうら計けい59人にんが選定せんていされたが、後日ごじつ、横倉よこくら義武よしたけ日本にっぽん医師いし会かい会長かいちょうが追加ついかされた。
    • 8月がつ28日にち、甘利あまり明あきら経済けいざい財政ざいせい・再生さいせい相しょうは消費しょうひ増税ぞうぜいの影響えいきょうを巡めぐる集中しゅうちゅう点検てんけん会合かいごう後ごの記者きしゃ会見かいけんで、消費しょうひ増税ぞうぜい賛成さんせいの意見いけんが多おおくなっていることについて「なるべくバランス良よく（賛成さんせい派はと反対はんたい派はの）人ひとを入いれようと相談そうだんしたが、人選じんせんをしていく中なかで反対はんたい派はの対象たいしょう者しゃが少すくないことは実感じっかんした」と述のべた[356]。
    • 8月がつ31日にち
      • 政府せいふの「集中しゅうちゅう点検てんけん会合かいごう」は最終さいしゅう日びの議論ぎろんを終おえ、7回かいに及およんだ会合かいごうで計けい60人にんの有識者ゆうしきしゃが意見いけん表明ひょうめい、予定よてい通どおり増税ぞうぜいを容認ようにんしたのは7割わり超ちょうの44人にんで、増税ぞうぜい時期じきの先さき延のばしや税率ぜいりつ上あげ幅はばの変更へんこうなどの見直みなおし案あんは11人にん、増税ぞうぜい反対はんたいは3人にんで、2人ふたりは賛否さんぴを明確めいかくにしなかった[257][357]。
      • 自民党じみんとうの石破いしば茂しげる幹事かんじ長ちょうは、消費しょうひ増税ぞうぜいについて、「引ひき上あげは党とうとして決定けっていしている」と述のべた[358]。
    • 9月3日にち
      • 安倍あべ首相しゅしょうは、甘利あまり明あきら経済けいざい財政ざいせい・再生さいせい相しょうから「集中しゅうちゅう点検てんけん会合かいごう」の報告ほうこくを受うけ、消費しょうひ増税ぞうぜいについて、「判断はんだんは10月がつ上旬じょうじゅんにする」と表明ひょうめいし、10月1日にちに日本銀行にっぽんぎんこうが発表はっぴょうする全国ぜんこく企業きぎょう短期たんき経済けいざい観測かんそく調査ちょうさ（日銀短観にちぎんたんかん）を「最後さいごの経済けいざい指標しひょうとして確認かくにんしたい」述のべた[359]。なお、10月1日にちには、日銀短観にちぎんたんかんの他ほか、完全かんぜん失業しつぎょう率りつ、有効ゆうこう求人きゅうじん倍率ばいりつ、家計調査かけいちょうさ、毎月まいつき勤労きんろう統計とうけい調査ちょうさ（賃金ちんぎんの動向どうこう）の8月がつ分ぶん結果けっかも公表こうひょうされ、同日どうじつまでに主要しゅような経済けいざい指標しひょうの最新さいしん結果けっかが出でそろう。
      • 自民党じみんとうの高市たかいち早苗さなえ政調せいちょう会長かいちょうと野田のだ毅あつし税制ぜいせい調査ちょうさ会長かいちょうは、国会こっかい内ないで会談かいだんし、消費しょうひ増税ぞうぜいに関かんする党内とうないヒアリングを9月9日にちに実施じっしすることで一致いっち、政府せいふから消費しょうひ増税ぞうぜいの影響えいきょうを検証けんしょうする集中しゅうちゅう点検てんけん会合かいごうの報告ほうこくを受うけ、出席しゅっせき者しゃから意見いけんをき取きとるが消費しょうひ増税ぞうぜいはすでに党議とうぎ決定けってい済ずみとして意見いけん集約しゅうやくはしない方針ほうしんを示しめしている[360]。
    • 9月8日にち、安倍あべ首相しゅしょうは、2020年ねん夏季かき五輪ごりん・パラリンピックの東京とうきょう開催かいさい決定けっていが消費しょうひ増税ぞうぜいの判断はんだんに与あたえる影響えいきょうについて、「直接ちょくせつ、関係かんけいはない」と述のべた[361]。さらに、（消費しょうひ増税ぞうぜいは）経済けいざい情勢じょうせいを見極みきわめてこの秋あきに判断はんだんしていくという方針ほうしんに変かわりはないと示しめした[362]。
    • 9月12日にち
    • 9月13日にち、毎日新聞まいにちしんぶん・スポーツニッポンは、安倍あべ首相しゅしょうが2014年ねん4月がつに消費しょうひ税率ぜいりつを8%に法律ほうりつ通どおり引ひき上あげる方針ほうしんを固かためたと報ほうじた[374][375]。
    • 9月16日にち、読売新聞よみうりしんぶんは、安倍あべ首相しゅしょうが消費しょうひ税率ぜいりつを2014年ねん4月がつから予定よてい通どおり8%に引ひき上あげる意向いこうを固かためたと報ほうじた[376]。
    • 9月18日にち、産経新聞さんけいしんぶんは、安倍あべ首相しゅしょうが消費しょうひ税率ぜいりつについて、2014年ねん4月がつに8%に引ひき上あげることを決断けつだんしたと報ほうじた[377]。
    • 9月がつ20日はつか
      • フジテレビは、安倍あべ首相しゅしょうが消費しょうひ税率ぜいりつを2014年ねん4月がつに8%に引ひき上あげる意向いこうを固かためたと報ほうじた[378]。同日どうじつ、朝日新聞あさひしんぶんは安倍あべ首相しゅしょうが消費しょうひ税ぜいを2014年ねん4月がつに8%に引ひき上あげることを決断けつだんした報ほうじた[379]。
      • 菅かん官房かんぼう長官ちょうかんは記者きしゃ会見かいけんで、2014年ねん4月がつからの消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげを安倍あべ首相しゅしょうが決断けつだんした、との報道ほうどうについて「総理そうりご自身じしんがもう決断けつだんしたということは私わたしはまったく聞きいていない」と述のべた[380]。
    • 9月21日にち、NHKは、安倍あべ首相しゅしょうが消費しょうひ税率ぜいりつを2014年ねん4月がつから8%に引ひき上あげることを10月1日にちに表明ひょうめいする見通みとおしとなったと報ほうじた[381]。
    • 9月22日にち、時事通信じじつうしんは、安倍あべ首相しゅしょうが10月1日にちに8%への引ひき上あげを正式せいしき表明ひょうめいする方針ほうしんと報ほうじた[382]。
    • 9月23日にち、読売新聞よみうりしんぶんは、安倍あべ首相しゅしょうが10月1日にちに消費しょうひ税率ぜいりつを8%へ引ひき上あげることを発表はっぴょうする方針ほうしんと報ほうじた[383]。
    • 9月24日にち、安倍あべ首相しゅしょうは「消費しょうひ税ぜいを引ひき上あげるかどうか決きめていない」と同行どうこう記者きしゃ団だんに語かたった[384]。
    • 9月25日にち、時事通信じじつうしんは、安倍あべ首相しゅしょうが消費しょうひ税率ぜいりつを予定よてい通どおり、2014年ねん4月がつに8%へ引ひき上あげる方針ほうしんについて、10月1日にち午後ごご6時じから記者きしゃ会見かいけんをして正式せいしきに表明ひょうめいすると報ほうじた[385]。
    • 9月30日にち
      • 産経新聞さんけいしんぶんは、安倍あべ首相しゅしょうが10月1日にち夕ゆうに記者きしゃ会見かいけんを行おこない、消費しょうひ税率ぜいりつを2014年ねん（平成へいせい26年ねん）4月がつから8%に引ひき上あげることを表明ひょうめいすると報ほうじた[386]。
      • 共同通信きょうどうつうしんは、政府せいふが「消費しょうひ税率ぜいりつを2014年ねん4月がつ1日にちに8%へ引ひき上あげることを確認かくにんする」と消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいに関かんする閣議かくぎ決定けってい案あんに明記めいきしたとし、安倍あべ首相しゅしょうは10月1日にち夕ゆうに記者きしゃ会見かいけんし、増税ぞうぜい方針ほうしんを説明せつめいすると報ほうじた[387]。
    • 10月1日にち午後ごご、安倍あべ首相しゅしょうは、官邸かんていで開ひらかれた政府せいふ与党よとう政策せいさく懇談こんだん会かいで、2014年ねん4月がつに消費しょうひ税率ぜいりつを8%に引ひき上あげると表明ひょうめいし「経済けいざい政策せいさくパッケージの実行じっこうにより、消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげたとしても、その影響えいきょうを緩和かんわすることができ、日本にっぽん経済けいざいが再ふたたび成長せいちょう軌道きどうに、早期そうきに回復かいふくすることが可能かのうと考かんがえている」と述のべた[388]。同日どうじつ、安倍あべ首相しゅしょうは、首相しゅしょう官邸かんていで記者きしゃ会見かいけんし、2014年ねん4月がつから消費しょうひ税率ぜいりつを8%に引ひき上あげる決定けっていを発表はっぴょうし「社会しゃかい保障ほしょうを安定あんていさせ、厳きびしい財政ざいせいを再建さいけんするために財源ざいげんの確保かくほは待まったなし」と述のべ、増税ぞうぜいに理解りかいを求もとめた[210]。
  • 2014年ねん（平成へいせい26年ねん）
    • 4月がつ1日にち、消費しょうひ税率ぜいりつが8%に増税ぞうぜい。
    • 7月がつ22日にち、麻生あそう副ふく総理そうり兼けん財務ざいむ相しょうは、横浜よこはま市内しないでの講演こうえんで、2015年ねん10月がつに予定よていされている消費しょうひ税率ぜいりつ10%引ひき上あげについて「財政ざいせい再建さいけんにはあと2%増税ぞうぜいをやらなければならない」と予定よてい通どおり行おこなうべきだと強調きょうちょうし「（安倍あべ政権せいけんは）約束やくそくしたことを実行じっこうすることで信任しんにんを得えている。将来しょうらいはよくなるという確信かくしんのもとに、国民こくみんの信頼しんらいを得えている」と述のべた[389]。
    • 9月13日にち、自民党じみんとうの谷垣たにがき禎一ていいち幹事かんじ長ちょうは、消費しょうひ税率ぜいりつ10%への引ひき上あげについて「上あげなかった時ときのリスクは打うつ手てが難むずかしくなる」と述のべ、予定よてい通どおり実施じっしすべきだとの考かんがえを示しめした[390]。
    • 11月14日にち、東京とうきょう新聞しんぶんは、安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうが2015年ねん10月がつに予定よていされていた消費しょうひ税率ぜいりつの8%から10%への引ひき上あげを延期えんきし、一いち年ねん半はん後ごの2017年ねん4月がつからとする意向いこうであることが分わかったと報道ほうどうした[391]。
    • 11月18日にち、安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは記者きしゃ会見かいけんで、消費しょうひ税ぜい再さい増税ぞうぜいの先送さきおくりを正式せいしきに表明ひょうめいした[392]。
  • 2019年ねん（令れい和わ元年がんねん）
    • 6月11日にち、消費しょうひ税ぜいの10%引ひき上あげを10月がつに行おこなう政府せいふ方針ほうしんを発表はっぴょう[393]。
    • 7月がつ21日にち、第だい25回かい参議院さんぎいん議員ぎいん通常つうじょう選挙せんきょにて消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいをかがけた政府せいふ与党よとうが過半数かはんすうを獲得かくとくしたことを受うけ麻生あそう財務ざいむ大臣だいじんは予定よてい通どおり10月がつ増税ぞうぜいを行おこなうとした[394]。その一方いっぽう消費しょうひ税ぜいの廃止はいしを掲かかげた新興しんこう政治せいじ団体だんたいれいわ新選しんせん組ぐみが政党せいとう要件ようけんを獲得かくとくした[395]。
  • 2020年ねん（令れい和わ2年ねん）
    • 2020年度ねんどにおいて、消費しょうひ税ぜい21.7兆ちょう円えん、所得しょとく税ぜい19.5兆ちょう円えん、法人ほうじん税ぜい12.1兆ちょう円えんと、歳入さいにゅうの租税そぜい及印紙し収入しゅうにゅうにおいて消費しょうひ税ぜいが最大さいだいの歳入さいにゅうになっている[396]。なお、国債こくさい発行はっこうによる歳入さいにゅうである公債こうさい金きんは、新型しんがたコロナ対策たいさくのための予算よさん確保かくほの都合つごうもあって90.2兆ちょう円えんにまで肥大ひだい化かし、国債こくさいの利り払はらい費ひだけで9兆ちょう円えんにも及およんでいる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 例たとえば、イギリスでは、菓子かし類るいは標準ひょうじゅん税率ぜいりつである一方いっぽうで、ケーキは非課税ひかぜいである。1991年ねんに、"ジャファケーキ"という食品しょくひんが、ケーキであるがゆえに非課税ひかぜいか、ビスケットであるがゆえに標準ひょうじゅん税率ぜいりつで課税かぜいされるかを巡めぐって訴訟そしょうが起おこっている（非課税ひかぜいとの判決はんけつが出でた）。
  2. ^ 多た段階だんかい税率ぜいりつ適用てきよう国こくでは申告しんこく時じの区分くぶん間違まちがえを防ふせぐためにインボイスを発行はっこうして消費しょうひ税ぜい申告しんこく書しょに添付てんぷするため、事業じぎょう者しゃはインボイスの発行はっこうが義務付ぎむづけられている。
  3. ^ 例たとえばAmazonの場合ばあい、物品ぶっぴんの販売はんばいには消費しょうひ税ぜいが内うち税ぜいとして課税かぜいされるが、MP3やPCソフト等とうのダウンロード販売はんばいには消費しょうひ税ぜいは課税かぜいされない。
  4. ^ 1990年ねん（平成へいせい2年ねん）度ど以降いこう37.5%であった日本にっぽんの法人ほうじん税率ぜいりつは、1998年ねん（平成へいせい10年ねん）度どに減税げんぜいされ、34.5%になった。1999年ねん（平成へいせい11年ねん）度ど、さらに減へらされ、30%になっている。法人ほうじん税率ぜいりつの推移すいい 財務省ざいむしょう（Ministry of Finance Japan）
  5. ^ 日本にっぽんの所得しょとく税ぜいは、1999年ねん（平成へいせい11年ねん）度どに高こう所得しょとく者しゃ層そうの負担ふたんが軽減けいげんされている。
    所得しょとく税ぜいの税率ぜいりつ構造こうぞうの推移すいい 財務省ざいむしょう（Ministry of Finance Japan）
  6. ^ 日本にっぽんの1990年代ねんだい以降いこうの約やく20年間ねんかんの平均へいきん名目めいもく成長せいちょう率りつは年率ねんりつマイナス0.7%程度ていど。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 物品ぶっぴん税ぜいとは - コトバンク
  2. ^ 麻木あさぎ久仁子くにこ・田村たむら秀男ひでお・田中たなか秀臣ひでおみ 『日本にっぽん建替たてかえ論ろん 〔100兆ちょう円えんの余剰よじょう資金しきんを動員どういんせよ!〕』 藤原ふじわら書店しょてん、2012年ねん、30頁ぺーじ。
  3. ^ 伊藤いとう元重もとしげ 『はじめての経済けいざい学がく〈下した〉』 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん出版しゅっぱん社しゃ〈日経にっけい文庫ぶんこ〉、2004年ねん、38頁ぺーじ。
  4. ^ 消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい延期えんきで財政ざいせい再建さいけんはどうなる? WEDGE（ウェッジ） 2014年ねん12月24日にち
  5. ^ a b 消費しょうひ税ぜい10% 家計かけいを痛いため景気けいきも悪化あっか 全国ぜんこく商工しょうこう新聞しんぶん 2013年ねん7月がつ12日にち
  6. ^ a b スティグリッツ『公共こうきょう経済けいざい学がく』第だい二に版はん。p741
  7. ^ a b c d 飄々ひょうひょうと始はじまった増税ぞうぜい論議ろんぎ SFETY JAPAN 日経にっけいBP社しゃ 2007年ねん11月26日にち
  8. ^ 「消費しょうひ税ぜいは本当ほんとうに逆進ぎゃくしん的てきか」大竹おおたけ文雄ふみお・小原おはら美紀みき『論ろん座ざ』127号ごう,2005.12,pp.44-51
  9. ^ 「第一生命だいいちせいめい経済けいざい研究所けんきゅうじょマクロ経済けいざい分析ぶんせきレポート」永澤ながさわ利廣としひろ 2010年ねん4月がつ2日にち
  10. ^ 「消費しょうひ税ぜいは本当ほんとうに逆進ぎゃくしん的てきか」 大竹おおたけ文雄ふみお・小原おはら美紀みき『論ろん座ざ』127号ごう 2005.12 pp.44-51.
  11. ^ 平成へいせい22年度ねんど税制ぜいせい改正かいせいの大綱たいこう 参考さんこう資料しりょう2
  12. ^ 松原まつばら聡さとし 『日本にっぽんの経済けいざい （図解ずかい雑学ざつがくシリーズ）』 ナツメ社しゃ、2000年ねん、178頁ぺーじ。
  13. ^ a b c アメリカがアベノミクスに味方みかたする理由りゆう〔2〕 PHPビジネスオンライン 衆知しゅうち 2014年ねん2月がつ14日にち
  14. ^ 森永もりなが卓郎たくろう 『「騙だまされない!」ための経済けいざい学がく モリタク流りゅう・経済けいざいニュースのウラ読よみ術じゅつ』 PHP研究所けんきゅうじょ〈PHPビジネス新書しんしょ〉、2008年ねん、142頁ぺーじ。
  15. ^ 高橋たかはし洋一よういち 『日本にっぽんの大だい問題もんだいが面白おもしろいほど解とける本ほん シンプル・ロジカルに考かんがえる』 光文社こうぶんしゃ〈光文社こうぶんしゃ新書しんしょ〉、2010年ねん、161頁ぺーじ。
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  383. ^ 政治せいじ 消費しょうひ税率ぜいりつ10%、首相しゅしょう「経済けいざい推移すいい見みながら判断はんだん」 YOMIURI ONLINE（読売新聞よみうりしんぶん） 2013年ねん9月がつ23日にち
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  386. ^ 首相しゅしょう、1日にちに消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげ表明ひょうめいへ 与党よとうは経済けいざい対策たいさく結論けつろん持もち越こし MSN産経さんけいニュース 2013年ねん9月がつ30日にち
  387. ^ 経済けいざい対策たいさくは6兆ちょう円えん規模きぼ 首相しゅしょう、消費しょうひ税ぜい8%表明ひょうめいへ 47NEWS（よんななニュース） 共同きょうどうニュース 2013年ねん9月がつ30日にち
  388. ^ 安倍あべ首相しゅしょう、消費しょうひ税ぜい引ひき上あげ表明ひょうめい 政府せいふ与党よとう政策せいさく懇談こんだん会かい発言はつげん全文ぜんぶん MSN産経さんけいニュース 2013年ねん10月がつ1日にち
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  393. ^ 10月の消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜいを明記めいき　政府せいふ、骨太ほねぶと素案そあんを公表こうひょう 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん2019年ねん6月がつ11日にち付づけ
  394. ^ 消費しょうひ税ぜい増税ぞうぜい、麻生あそう財務ざいむ相しょう「信任しんにんいただいた」 産経新聞さんけいしんぶん2019年ねん7月がつ22日にち付づけ
  395. ^ 「れいわ新選しんせん組ぐみ」支援しえん者しゃら歓声かんせい 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん2019年ねん7月がつ21日にち付づけ
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