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心臓しんぞう血管けっかん外科げかがく

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血管けっかん外科げかから転送てんそう

心臓しんぞう血管けっかん外科げかがく(しんぞうけっかんげかがく、英語えいご:cardiovascular surgery)とは、心臓しんぞう血管けっかんなどを中心ちゅうしんあつか外科げかがくいち分野ぶんやである。

欧米おうべいでは一般いっぱんに、心臓しんぞう疾患しっかんあつかう「心臓しんぞう外科げかがくcardiac surgery)」と血管けっかん疾患しっかんあつかう「血管けっかん外科げかがくvascular surgery)」という2つの分野ぶんやかれている。しかし日本にっぽんではおおくの場合ばあい心臓しんぞうだい血管けっかん末梢まっしょう血管けっかんふくめて循環じゅんかん系統けいとう疾患しっかん対象たいしょうする統合とうごうされた外科げかがく領域りょういきとして心臓しんぞう血管けっかん外科げかがくとしている。また、とも胸部きょうぶ臓器ぞうきあつか心臓しんぞう外科げかがく呼吸こきゅう外科げかがくわせて胸部きょうぶ外科げかがくまたは胸部きょうぶ心臓しんぞう外科げかがくとしていることもある。また、診療しんりょうとしてはおな循環じゅんかん系統けいとう疾患しっかんあつか循環じゅんかん内科ないかとも循環じゅんかんセンターを設置せっちしている施設しせつもある[1]

心臓しんぞう外科げか歴史れきし

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こころまくたいする最初さいしょ手術しゅじゅつとしては、19世紀せいきフランシスコ・ロメロ英語えいごばんドミニク=ジャン・ラレー英語えいごばんヘンリー・ダルトン英語えいごばんダニエル・ヘイル・ウィリアムズ英語えいごばんらによっておこなわれたこころまく縫合ほうごうじゅつがある[2][3]。また心臓しんぞうそのものにたいする最初さいしょ手術しゅじゅつは、1895ねん9がつ4にちノルウェー外科げかであるアクセル・カペレン英語えいごばんによってクリスチャニア(現在げんざいオスロ)でおこなわれ、ひだり腋窩えきかされ重度じゅうどショックおちいった24さい男性だんせいたいして、ひだりひらきむね出血しゅっけつしている冠動脈かんどうみゃく結紮けっさつした。男性だんせい覚醒かくせいし、術後じゅつご24あいだ経過けいか良好りょうこうであったが、最終さいしゅうてきには術後じゅつごだい3びょうたてへだたほのお死亡しぼうした[4][5]

合併症がっぺいしょう成功裏せいこうりおこなわれた最初さいしょ心臓しんぞう手術しゅじゅつは、1896ねん9がつ7にちドイツフランクフルト外科げかであるルートヴィッヒ・レーン英語えいごばんによっておこなわれたみぎしつとげそう修復しゅうふくじゅつである[6][7]

大動脈だいどうみゃくたいする手術しゅじゅつ大動脈だいどうみゃくちぢみ窄症修復しゅうふくじゅつブラロック・タウジッヒシャント作成さくせいじゅつ動脈どうみゃくかん閉鎖へいさじゅつ)は、厳密げんみつには心臓しんぞう自体じたいたいする手術しゅじゅつではないが、20世紀せいき以降いこうより心臓しんぞう外科げか領域りょういき手術しゅじゅつとして一般いっぱんてきになった。

ひらき心術しんじゅつ

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だい大戦たいせんより、患者かんじゃ心臓しんぞう切開せっかい直視ちょくし心臓しんぞう内部ないぶたいして手術しゅじゅつ操作そうさおこなひらき心術しんじゅつ発展はってんしていった。トロント大学だいがく心臓しんぞう外科医げかいウィルフレッド・G・ビゲロー英語えいごばんが1950ねん発表はっぴょうした全身ぜんしんてい体温たいおんほう[8]をもとに、1952ねんF・ジョン・ルイス英語えいごばんらが世界せかいはつひらき心術しんじゅつとして心房しんぼうちゅうへだた欠損けっそんしょう閉鎖へいさじゅつおこなった[9]

当時とうじてい体温たいおんほうもちいた手術しゅじゅつでは、時間じかんようする複雑ふくざつしんない修復しゅうふくじゅつ場合ばあい全身ぜんしんしょ臓器ぞうきとくきょによるてい酸素さんそよわのうへの血液けつえき灌流が不足ふそくするため、そのてんにおいて限界げんかいがあった。そのため患者かんじゃ心肺しんぱい機能きのう人工じんこうてき代替だいたいする手法しゅほうのぞまれていたが、1953ねんにジェファーソン医科いか大学だいがく外科医げかいジョン・ヘイシャム・ギボンにより、最初さいしょ人工じんこう心肺しんぱいもちいた体外たいがい循環じゅんかんによるひらき心術しんじゅつおこなわれた。しかしながら、そのつづ人工じんこう心肺しんぱいによる手術しゅじゅつ成績せいせきかんばしいものではなかった。1954ねんC・ウォルトン・リレヘイ英語えいごばんにより、患者かんじゃ父親ちちおやまたは母親ははおやを「人工じんこう心肺しんぱい」として使つか交叉こうさ循環じゅんかんほう(cross circulation)が発表はっぴょうされ[10]人工じんこう心肺しんぱい装置そうちによる体外たいがい循環じゅんかんほう一時いちじ断念だんねんされたが、そのメイヨー・クリニックジョン・カークリン英語えいごばんらによりギボンがた人工じんこう心肺しんぱい改良かいりょうされて良好りょうこう手術しゅじゅつ成績せいせきをおさめたことにより、以後いご人工じんこう心肺しんぱい世界中せかいじゅう心臓しんぞう外科げか手術しゅじゅつ幅広はばひろ使用しようされるようになった。

心拍しんぱくどう手術しゅじゅつ

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1990年代ねんだいより、人工じんこう心肺しんぱい使用しようせずにおこな冠動脈かんどうみゃくバイパスじゅつ(CABG)である、人工じんこう心肺しんぱい使用しよう冠動脈かんどうみゃくバイパスじゅつOPCAB: off-pump CABG)がおこなわれるようになった。この場合ばあい心臓しんぞうはくどうさせたままで、スタビライザーを使用しようしてターゲットとなる冠動脈かんどうみゃく周囲しゅうい固定こていすることにより静止せいし状態じょうたいちかじゅつでグラフトを吻合ふんごうすることが可能かのうとなる。

血管けっかん外科げか歴史れきし

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血管けっかん外科げか血管けっかん動脈どうみゃく静脈じょうみゃく)の疾患しっかんたいする外科げかてき治療ちりょうおこな専門せんもん領域りょういきであり、欧米おうべいなどではくわえて血管けっかんない治療ちりょうふくまれることがある。血管けっかん外科げか一般いっぱん外科げか心臓しんぞう外科げか、および画像がぞう治療ちりょうによるていおかせかさね治療ちりょう技術ぎじゅつ基礎きそにして発展はってんしてきた。

アレクシス・カレル血管けっかん吻合ふんごうほう基礎きそ確立かくりつし、血管けっかん外科げか研究けんきゅうおおくの業績ぎょうせきのこした[11]。そのこの領域りょういきにおける先駆せんくしゃとして、初期しょき外科げかてき技術ぎじゅつ考案こうあんしたロシア外科げかであるニコライ・コロトコフていおかせかさね血管けっかん形成けいせいじゅつ開発かいはつしたアメリカチャールズ・ドッター英語えいごばん、そして血管けっかん外科げか専門せんもん領域りょういきとしての認知にんち確立かくりつ尽力じんりょくしたオーストラリアのロバート・パトン(Robert Paton)らがげられる。

血管けっかん外科医げかいあつか対象たいしょう心臓しんぞうのうのぞからだすべての部位ぶい血管けっかんおよぶ。心臓しんぞうおよび胸部きょうぶ大動脈だいどうみゃくまでは心臓しんぞう外科医げかいあつか領域りょういきである[注釈ちゅうしゃく 1]。またのう動脈どうみゃくこぶなどのう血管けっかん疾患しっかんかんしては脳神経のうしんけい外科げかあつか領域りょういきである。

対象たいしょう疾患しっかん

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弁膜べんまく疾患しっかん

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冠動脈かんどうみゃく疾患しっかん

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不整脈ふせいみゃく

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こころまく疾患しっかん

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心臓しんぞう腫瘍しゅよう

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  • 心臓しんぞう粘液ねんえきしゅ

先天せんてんせいこころ疾患しっかん

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重症じゅうしょう心不全しんふぜん

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大動脈だいどうみゃく疾患しっかん

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末梢まっしょう血管けっかん疾患しっかん

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手術しゅじゅつじゅつしき

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心臓しんぞう血管けっかん外科げかがく領域りょういきおこなわれる代表だいひょうてき手術しゅじゅつじゅつしき以下いかとおり。

成人せいじん心臓しんぞう外科げか

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弁膜べんまくしょう外科げか

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冠動脈かんどうみゃく外科げか

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不整脈ふせいみゃく外科げか

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小児しょうに心臓しんぞう外科げか

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心不全しんふぜん外科げか

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大動脈だいどうみゃく外科げか

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血管けっかん外科げか末梢まっしょう血管けっかん

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  • 末梢まっしょう動脈どうみゃく血行けっこう再建さいけんじゅつ
    • 解剖かいぼうがくてきバイパスじゅつ
    • 解剖かいぼうがくてきバイパスじゅつ
      • 大腿だいたい動脈どうみゃく-大腿だいたい動脈どうみゃくバイパス(F-F bypass)
      • 腋窩えきか動脈どうみゃく-大腿だいたい動脈どうみゃくバイパス(Ax-F bypass)
  • 末梢まっしょう静脈じょうみゃく血行けっこう再建さいけんじゅつ
  • 静脈じょうみゃくストリッピング英語えいごばん
  • 静脈じょうみゃく血栓けっせん摘除てきじょじゅつ
  • うちシャント作成さくせいじゅつ

ひらき心術しんじゅつひらき心術しんじゅつ

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心臓しんぞう外科げか手術しゅじゅつは、ひらき心術しんじゅつひらき心術しんじゅつおおきく分類ぶんるいされる。ひらき心術しんじゅつ人工じんこう心肺しんぱい使用しようして体外たいがい循環じゅんかんおこないながら心臓しんぞう直接ちょくせつ切開せっかいしておこな手術しゅじゅつであり、通常つうじょうしん停止ていし心臓しんぞう内部ないぶ手術しゅじゅつ操作そうさおこなう。一方いっぽうひらき心術しんじゅつ人工じんこう心肺しんぱい使用しようせず、心拍しんぱくどう手術しゅじゅつおこな方法ほうほうである。

ひらき心術しんじゅつ詳細しょうさいについてはどう項目こうもく参照さんしょう

しゅうじゅつ管理かんり

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ほん項目こうもくでは一般いっぱんてき外科げかけい手術しゅじゅつしゅうじゅつ管理かんり比較ひかくして、心臓しんぞう血管けっかん外科げか手術しゅじゅつにおいてとく留意りゅういすべきてん中心ちゅうしんべる[12]

じゅつぜん管理かんり

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冠動脈かんどうみゃくバイパスじゅつ体外たいがい循環じゅんかん使用しようしない予定よてい場合ばあいなどもふくめて、つね体外たいがい循環じゅんかんもちいるという想定そうていのもとにじゅつぜん検査けんさおこな必要ひつようがある。具体ぐたいてきには以下いかよう項目こうもく中心ちゅうしんじゅつぜん検査けんさおこなうが、ヘマトクリット血小板けっしょうばんによって輸血ゆけつ準備じゅんびりょう検討けんとうする。そしてこころ機能きのう呼吸こきゅう機能きのうとともに、きも機能きのうじん機能きのう評価ひょうかおこない、臓器ぞうき不全ふぜんのリスクを評価ひょうかする。大動脈だいどうみゃく遮断しゃだん予定よてい部位ぶいおくだつ血管けっかん挿入そうにゅう予定よてい部位ぶい血管けっかん石灰せっかい血管けっかんみち確認かくにん必須ひっすである。

  • 代表だいひょうてきじゅつぜん検査けんさ
  1. 一般いっぱん検査けんささん生化学せいかがく凝固ぎょうこ機能きのう動脈血どうみゃくけつガス分析ぶんせきとう
  2. しん機能きのう循環じゅんかん動態どうたい評価ひょうか胸部きょうぶXせん検査けんさ心電図しんでんず心臓しんぞうちょう音波おんぱ検査けんさ心臓しんぞうカテーテル検査けんさ冠動脈かんどうみゃく造影ぞうえいひだりしつ造影ぞうえいとう),心筋しんきんシンチグラフィー
  3. 中枢ちゅうすう神経しんけいけい評価ひょうか頭部とうぶCT頚部けいぶ血管けっかんエコーとう頸部MRA
  4. 大動脈だいどうみゃく遮断しゃだん部位ぶいおくだつ部位ぶい評価ひょうか,: むね腹部ふくぶCT

術中じゅっちゅう管理かんり

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心臓しんぞう手術しゅじゅつ術中じゅっちゅう管理かんり循環じゅんかんけい呼吸こきゅうけい管理かんり中心ちゅうしんとなる。術中じゅっちゅう必要ひつようなモニターのうち代表だいひょうてきなものをしたしるす。からだ血圧けつあつたわわこつ動脈どうみゃくあつをモニターすることがおおいが、その大腿だいたい動脈どうみゃくあつなども使用しようされる[注釈ちゅうしゃく 2]動脈どうみゃくあつラインからは適宜てきぎ動脈血どうみゃくけつガス分析ぶんせきおこなう。はい動脈どうみゃくカテーテル(スワンガンツカテーテル®)心拍しんぱくりょうはい動脈どうみゃくあつなど様々さまざまなパラメーターを測定そくてい出来できる。パルスオキシメーターにより酸素さんそ飽和ほうわ変化へんか迅速じんそくることが出来できる。けい食道しょくどうしんエコーは術中じゅっちゅうしん機能きのう評価ひょうか体外たいがい循環じゅんかん離脱りだつしん腔内の空気くうき有無うむ評価ひょうかなどにもちいる。ダイレクトエコーはうえぎょう大動脈だいどうみゃくおく血管けっかん位置いち遮断しゃだん可能かのうかどうかの検討けんとうのためにじゅつしゃじゅつ直接ちょくせつ施行しこうする。ダイレクトエコー以外いがいのモニター・検査けんさ麻酔ますいおこなうが、術中じゅっちゅうじゅつしゃとのみつ意思いし疎通そつうもとづいた管理かんり重要じゅうようである。

  • 術中じゅっちゅう必要ひつようなモニター・検査けんさ
  1. 心電図しんでんず
  2. 血圧けつあつおかせかさねてき血圧けつあつ測定そくてい(NIBP),かんてき動脈どうみゃくあつ測定そくてい(ABP)
  3. スワンガンツカテーテル: 心拍しんぱくりょう(CO),中心ちゅうしん静脈じょうみゃくあつ(CVP),はい動脈どうみゃくあつ(PAP),みぎぼうあつ(RAP),はい動脈どうみゃくくさびにゅうあつ(PCWP),混合こんごう静脈じょうみゃく酸素さんそ飽和ほうわ(SvO2),とう
  4. けいがわ酸素さんそ飽和ほうわ(SpO2)
  5. けい食道しょくどうしんエコー
  6. 深部しんぶ体温たいおん直腸ちょくちょうあつし膀胱ぼうこうぬる
  7. ダイレクトエコー(じゅつしゃおこなう)

術後じゅつご管理かんり

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術後じゅつごICUないしCCUでの代表だいひょうてきなモニタリング項目こうもくしたしるしたとおりで、おおむ手術しゅじゅつしつ同様どうようである。じゅつ直後ちょくごすうあいだから1~2にちあいだ呼吸こきゅう循環じゅんかん動態どうたい不安定ふあんていになりやすいため、変化へんか即応そくおうした厳密げんみつ管理かんり必要ひつようである。また、ふか鎮静ちんせい挿管した手術しゅじゅつしつからICUに入室にゅうしつするか、手術しゅじゅつしつ覚醒かくせい・抜管してからICUに入室にゅうしつするかで管理かんりおおきくわる。前者ぜんしゃ場合ばあい鎮静ちんせいざい麻薬まやくもちいて人工じんこう呼吸こきゅう管理かんりおこない、覚醒かくせいのタイミングをはかることになる。

  • 術後じゅつご呼吸こきゅう循環じゅんかんけいモニター
  1. 心電図しんでんずモニター
  2. 血圧けつあつ: NIBP,ABP,CVP
  3. スワンガンツカテーテル
  4. SpO2
  5. 深部しんぶ体温たいおん

輸液管理かんり

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人工じんこう心肺しんぱい使用しようしたひらく心術しんじゅつにおける術中じゅっちゅう術後じゅつごには全体ぜんたい水分すいぶんりょうちょあかり増加ぞうかしていることがおおく、またこう利尿りにょうホルモン活性かっせい副腎ふくじん皮質ひしつホルモン分泌ぶんぴつ増加ぞうかなどの影響えいきょうナトリウム貯留ちょりゅうカリウム喪失そうしつこるため、術後じゅつご早期そうきとく水分すいぶん管理かんり・カリウムの管理かんり重要じゅうようであり、ぜん負荷ふか軽減けいげんのために一般いっぱんてきにはマイナスバランスをたも必要ひつようがある。上記じょうきのモニタリング項目こうもく参考さんこうにしながら、輸液、輸血ゆけつ強心剤きょうしんざい調整ちょうせいする。

てい心拍しんぱくりょう症候群しょうこうぐん

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スワンガンツカテーテルにより測定そくていしたこころ係数けいすう(CI)の低下ていかてい心拍しんぱくりょう症候群しょうこうぐんえい: Low cardiac output syndromeLOS)をしめ重要じゅうよう所見しょけんである。LOSの徴候ちょうこうみとめる場合ばあい、まずは出血しゅっけつなどの手術しゅじゅつによる合併症がっぺいしょうたいして対処たいしょおこなう。またじゅつまえより使用しようしているβべーたブロッカー影響えいきょう内因ないいんせい因子いんしじょみゃくになることもあり、必要ひつようおうじて心房しんぼうペーシング心室しんしつペーシングで管理かんりする。てい血圧けつあつときにはPCWPがひくければ容量ようりょう負荷ふかおこない、たかければドパミンなどのカテコラミン使用しようし(場合ばあいによりドブタミンアドレナリン考慮こうりょする)、血圧けつあつ上昇じょうしょうはじめたら少量しょうりょう血管けっかん拡張かくちょうやく使用しようする。正常せいじょう血圧けつあつでPCWP、PAP、RAPがたかときニトログリセリンミルリノンなどの血管けっかん拡張かくちょうやく使用しようする。

出血しゅっけつ

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心臓しんぞう外科げか手術しゅじゅつける患者かんじゃじゅつまえこう凝固ぎょうこ療法りょうほうけていることがおおく、また体外たいがい循環じゅんかんもちいる手術しゅじゅつおおいため、術後じゅつご凝固ぎょうこ機能きのう異常いじょうられることがある。ヘパリン影響えいきょうによる凝固ぎょうこ機能きのう異常いじょうたいしてはプロタミン対処たいしょし、血小板けっしょうばん減少げんしょうたいしては必要ひつようおう血小板けっしょうばん輸血ゆけつおこなう。ドレーンからの出血しゅっけつりょうによっては止血しけつ再開さいかいむね考慮こうりょする必要ひつようがある。ぎゃくにドレーンのはいえきすくないときでも凝血ぎょうけつかたまりでドレーンが閉塞へいそくしてこころタンポナーデおちいることがあり、しきみゃくてい血圧けつあつ・SvO2の低下ていかなどがられタンポナーデと判断はんだんされたら躊躇ちゅうちょせずすみやかに再開さいかいむね止血しけつじゅつおこなう。

循環じゅんかんサポート

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術後じゅつごしん機能きのう抑制よくせいられるときには心臓しんぞう収縮しゅうしゅくりょくたかめるために各種かくしゅ循環じゅんかん作動さどうやく使用しようする。カテコラミンにはアドレナリンノルアドレナリンドパミンドブタミンひとし、またカテコラミンではカルシウム製剤せいざいジゴキシンアムリノン・ミルリノンとうがあり、これらを状況じょうきょうおう使用しようする。薬剤やくざい使用しようしてもCI 2.0L/min/m2以下いか持続じぞくするときには大動脈だいどうみゃくないバルーンパンピング使用しようすることにより、拡張かくちょうかんむり流量りゅうりょう増大ぞうだいさせ(diastolic augmentation)、収縮しゅうしゅくあつ負荷ふかげんじゃくさせる(systolic unloading)。

呼吸こきゅう管理かんり

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挿管鎮静ちんせいにICUに入室にゅうしつした場合ばあい覚醒かくせい十分じゅうぶん動脈どうみゃくガスデータが適切てきせつ範囲はんいにあることを確認かくにんしたら人工じんこう呼吸こきゅうからの離脱りだつ開始かいしする。ただ血行けっこう動態どうたい不安定ふあんていであったり、いま術後じゅつご出血しゅっけつつづいており再開さいかいむね可能かのうせいのこっているとき安定あんていするまで鎮静ちんせい人工じんこう呼吸こきゅう管理かんり継続けいぞくする。喀痰かくたん排出はいしゅつ困難こんなんときにはトラヘルパーやミニトラックなども使用しようし、長期ちょうき呼吸こきゅう管理かんり必要ひつようになるとき気管きかん切開せっかい考慮こうりょする。

専門医せんもんい制度せいど

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日本にっぽんでの心臓しんぞう血管けっかん外科げか領域りょういきにおける一定いってい水準すいじゅん知識ちしき技量ぎりょう認定にんていする専門医せんもんい資格しかくとして、心臓しんぞう血管けっかん外科げか専門医せんもんい制度せいど設置せっちされている。

日本にっぽん胸部きょうぶ外科げか学会がっかい日本にっぽん心臓しんぞう血管けっかん外科げか学会がっかい日本にっぽん血管けっかん外科げか学会がっかいからなる3学会がっかい構成こうせい心臓しんぞう血管けっかん外科げか専門医せんもんい認定にんてい機構きこうにより、経験けいけん手術しゅじゅつ症例しょうれい論文ろんぶん学会がっかい発表はっぴょうとう業績ぎょうせきなどにもとづいて資格しかく認定にんてい審査しんさおこなわれている。心臓しんぞう血管けっかん外科げか専門医せんもんい取得しゅとく条件じょうけんひとつとして「外科げか専門医せんもんいであること」が要求ようきゅうされているため、心臓しんぞう血管けっかん外科医げかいこころざ若手わかて医師いしは、初期しょき研修けんしゅう終了しゅうりょう消化しょうか外科げか呼吸こきゅう外科げか乳腺にゅうせん外科げかといった一般いっぱん外科げか経験けいけんを2-3ねん程度ていどむことが必須ひっすとなる。

心臓しんぞう血管けっかん外科げか手術しゅじゅつデータベース

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心臓しんぞう血管けっかん外科げか領域りょういきにおける手術しゅじゅつリスクの評価ひょうかもちいることの出来でき臨床りんしょうデータベースもとづいたリスク解析かいせきモデルとして、EuroSCORE英語えいごばんやSTS scoreなど様々さまざまなものが存在そんざいする。日本にっぽんでは20世紀せいきまで心臓しんぞう血管けっかん外科げか手術しゅじゅつ全国ぜんこく規模きぼでのリスク調査ちょうさがなされていなかったが、2000ねん日本にっぽん成人せいじん心臓しんぞう血管けっかん外科げか手術しゅじゅつデータベース(JACVSD)が発足ほっそくし、翌年よくねんより実際じっさいにインターネットをかいしてデータ入力にゅうりょく開始かいし。2007ねん10がつよりデータ解析かいせき機能きのうJapanSCORE)が設置せっちされた[13][14]小児しょうに心臓しんぞう外科げかにおいても同様どうように、日本にっぽん先天せんてんせい心臓しんぞう血管けっかん外科げか手術しゅじゅつデータベース(JCCVSD)が構築こうちくされている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 実際じっさいには大動脈だいどうみゃく疾患しっかん心臓しんぞう外科げか血管けっかん外科げか一部いちぶオーバーラップする領域りょういきとなっているが、横隔膜おうかくまく上下じょうげ胸部きょうぶ腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃく)でけられることがおおい。
  2. ^ この場合ばあいIABP(大動脈だいどうみゃくないバルーンパンピング)を緊急きんきゅう挿入そうにゅうする必要ひつようがある場合ばあいにも即座そくざ対応たいおうできる。

出典しゅってん

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  1. ^ 昭和大学しょうわだいがく横浜よこはま北部ほくぶ病院びょういん 循環じゅんかんセンター
  2. ^ Aris A (September 1997). “Francisco Romero the first heart surgeon”. Ann. Thorac. Surg. 64 (3): 870–1. doi:10.1016/S0003-4975(97)00760-1. PMID 9307502. http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0003497597007601. 
  3. ^ Pioneers in Academic Surgery”. U.S. National Library of Medicine. 2014ねん6がつ10日とおか閲覧えつらん
  4. ^ Westaby, Stephen; Bosher, Cecil. Landmarks in Cardiac Surgery. ISBN 1-899066-54-3 
  5. ^ Baksaas ST, Solberg S (January 2003). “Verdens første hjerteoperasjon”. Tidsskr Nor Lægeforen 123 (2): 202–4. http://www.tidsskriftet.no/?seks_id=659174. 
  6. ^ Absolon KB, Naficy MA (2002). First successful cardiac operation in a human, 1896: a documentation: the life, the times, and the work of Ludwig Rehn (1849–1930). Rockville, MD : Kabel, 2002
  7. ^ Johnson SL (1970). History of Cardiac Surgery, 1896–1955. Baltimore: Johns Hopkins Press. p. 5.
  8. ^ W. G. Bigelow, et al., General Hypothermia for Experimental Intracardiac Surgery: The Use of Electrophrenic Respirations, an Artificial Pacemaker for Cardiac Standstill, and Radio-Frequency Rewarming in General Hypothermia, Ann Surg. 1950 September; 132(3): 531–537.
  9. ^ Lewis FJ, Taufic M. Closure of atrial septal defects with aid of hypothermia: experimental accomplishments and the report of one successful case. Surgery. 1953; 33: 52–59.
  10. ^ Dr. C. Walton Lillehei (Vincent L. Gott, M.D. Johns Hopkins Medical Institutions.Baltimore, MD)
  11. ^ 日本にっぽん心臓しんぞう血管けっかん外科げか学会がっかい わがくににおける血管けっかん外科げか 1.血管けっかん外科げか歴史れきし
  12. ^ 龍野たつの勝彦かつひこ .『心臓しんぞう血管けっかん外科げかテキスト』.中外ちゅうがい医学いがくしゃ.pp25-36.ISBN 978-4-498-03910-0
  13. ^ 梅原うめはら しんだい, 齊藤さいとう さとし, 津久井つくい 宏行ひろゆき, 山崎やまざき 健二けんじ. JapanSCOREの有用ゆうようせい検討けんとう — Logistic EuroSCOREとの比較ひかくふくめて. 日本にっぽん心臓しんぞう血管けっかん外科げか学会がっかい雑誌ざっし Vol.42 (2013) No.2 p.94-102
  14. ^ JACVSDパンフレット 2013ねん2がつ発行はっこう (PDF)

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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