トム・ウォーキンショー

トム・ウォーキンショー Tom Walkinshaw
生誕せいたん	(1946-08-14) 1946年ねん8月がつ14日にち イギリス, スコットランド, モールドスリー
死没しぼつ	(2010-12-12) 2010年ねん12月12日にち（64歳さい没ぼつ） イギリス, オックスフォードシャー州しゅう, チッピング・ノートン
国籍こくせき	英国えいこく
業績ぎょうせき
勤務きんむ先さき	チーム MG ミゼット チーム ロータス トム ウォーキンショー レーシング
成果せいか	スコティッシュFF1600, ヨーロッパツーリングカー選手権せんしゅけん, 選手権せんしゅけんタイトル

トム・ウォーキンショー（Tom Walkinshaw 、1946年ねん11月17日にち - 2010年ねん12月12日にち）は、スコットランド・ミッドロージアン生うまれの元もとレーシングドライバー、実業じつぎょう家か。日本にっぽんではレーシングチームのオーナー・マネージャーとして知しられている。

経歴けいれき

ドライバー活動かつどう

1968年ねんにレースを始はじめ、フォーミュラ・フォード1600を経へて1970年ねんよりイギリスF3選手権せんしゅけんに参戦さんせんを開始かいし。その後ごF2やF5000、イギリスツーリングカー選手権せんしゅけん（BTCC）などに参戦さんせんした。

また、日本にっぽんのメーカーではマツダとのつながりが深ふかく、1979年ねんのデイトナ24時じ間あいだレース、1981年ねんのスパ・フランコルシャン24時じ間あいだレース、1981、82年ねんのル・マン24時じ間あいだレースのいずれもマツダ・RX-7で参戦さんせんしている。デイトナでは77号車ごうしゃのドライバーとして参戦さんせんしたが、もう一いち台だいのRX-7の７号車ごうしゃはGTU優勝ゆうしょうを果はたし、その後ごの7年ねん連続れんぞくGTU優勝ゆうしょうの足掛あしがかりとなった。スパでは1970年ねんに惜おしくも敗やぶれたマツダ・ファミリアロータリークーペ（R100）の仇かたきを取とるかたちで日本にっぽん車しゃ初はつの総合そうごう優勝ゆうしょうを成なし遂とげた。1981年ねんのル・マン参戦さんせん時じには生なま沢さわ徹とおるとコンビを組くんでいる。

チーム・マネージャーとしての活動かつどう

1975年ねんに自みずからのレーシングチームとしてトム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）を設立せつりつし、しばらくドライバー兼けんチームマネージャーとして活動かつどうした。このほか、フランス製せい「GPAヘルメット」のイギリスにおける代理だいり店てん業ぎょうのビジネスもしていた。

1979年ねんのル・マン24時じ間あいだレースで惨敗ざんぱいしたマツダのレース監督かんとく大橋おおはし孝たかし至いたりは、充分じゅうぶんなノウハウを持もっている現地げんちのレース関係かんけい者しゃと組くむことを考かんがえ、当時とうじイギリス・サルーン・カー・レースやスパ・フランコルシャン24時じ間あいだレースにマツダ・RX-7で参戦さんせんしていたトム・ウォーキンショーを誘さそった。当時とうじTWRは100名めい程ほどの人員じんいんを持もっていたという。ウォーキンショーはマツダとの提携ていけいを「興味きょうみがない」として当初とうしょ断ことわったが、大橋おおはしは会あうたびに共同きょうどう参戦さんせんを提案ていあんし続つづけ、結局けっきょく1981年ねんの初はじめに承諾しょうだくした。1981年ねんのル・マン24時じ間あいだレース、1982年ねんのル・マン24時じ間あいだレースにはドライバー兼けんチームマネージャーとして参戦さんせんした。また、1981年ねんのスパ・フランコルシャン24時じ間あいだレースにてマツダ・RX-7をBMWとの激闘げきとうの末すえ、日本にっぽん車しゃ初はつの総合そうごう優勝ゆうしょうへと導みちびいた。

1984年ねんにはTWRからジャガー・XJ-Sでヨーロッパツーリングカー選手権せんしゅけん（ETCC）に参戦さんせんしシリーズチャンピオンを獲得かくとく、同年どうねんのマカオグランプリではギア・レース（ツーリングカーレース）で勝利しょうりを挙あげた。ちょうどこの頃ころグループ44がジャガー・XJR-5でル・マン24時じ間あいだレースに参戦さんせんしジャガー社内しゃないでル・マン24時じ間あいだレースへの盛もり上あがりを見みせた。当時とうじの会長かいちょうだったジョン・イーガンに呼よばれたウォーキンショーは「私わたしに3年ねんの猶予ゆうよを下ください。必かならずル・マンを制覇せいはしてみせます」と答こたえ、TWRはジャガーのワークス・チームとなってグループCカーのジャガー・XJR-6を開発かいはつした。

こうして1980年代ねんだい後半こうはんはTWRのチーム・マネージャーとしての活動かつどうがメインとなり、XJR-9やXJR-12、XJR-14といったマシンで世界せかいスポーツプロトタイプカー選手権せんしゅけん（WSPC）やその後継こうけいカテゴリーであるスポーツカー世界せかい選手権せんしゅけん（SWC）に参戦さんせん。1988年ねんのル・マン24時じ間あいだレースをXJR-9で制せいするなど多おおくのタイトルを獲得かくとくした。

1991年ねん7月がつより、F1チームのベネトン・フォーミュラのエンジニアリングディレクターに招まねかれ、1994年ねんには同どうチームに所属しょぞくするミハエル・シューマッハがシリーズチャンピオンを獲得かくとくするのに貢献こうけんした。しかし同年どうねんにはベネトンが国際こくさい自動車じどうしゃ連盟れんめい（FIA）から、当時とうじレギュレーションで禁止きんしされていたトラクションコントロールシステムを導入どうにゅうの他ほか、いくつかのレギュレーション違反いはんの疑うたがいをかけられてしまう。結局けっきょくこの件けんは証拠しょうこ不充分ふじゅうぶんで終おわったが、ウォーキンショーは同年どうねん末まつにベネトンを離脱りだつした。

ちょうどその頃ころ、当時とうじベネトンで一緒いっしょに仕事しごとをしていたフラビオ・ブリアトーレがルノーエンジンの使用しよう権けん欲ほしさにリジェを買収ばいしゅうしたことから、1995年ねんにリジェの株式かぶしきの50%を購入こうにゅうしブリアトーレとともにリジェの共同きょうどうオーナーに就任しゅうにんした。ウォーキンショーは当初とうしょリジェの完全かんぜん買収ばいしゅうを狙ねらっていたが諸しょ事情じじょうによりそれは果はたせず、代かわりに1996年ねんに完全かんぜん買収ばいしゅうが可能かのうだったアロウズの株式かぶしきを買収ばいしゅうし、アロウズのオーナーとなった。それに伴ともない、不要ふようとなったリジェの株式かぶしきは同年どうねん末まつにアラン・プロストに売却ばいきゃくした。この間あいだ、1997年ねんよりF1へとタイヤ供給きょうきゅうを開始かいしするブリヂストンのMS部門ぶもん責任せきにん者しゃ・安川やすかわひろしとウォーキンショウが旧知きゅうちであったことから、ブリヂストンのF1タイヤ開発かいはつにTWRが協力きょうりょく。リジェ・アロウズ双方そうほうの立場たちばでテストへのスタッフ派遣はけんなどを行おこなった。

一方いっぽうでスポーツカーレースでのTWRの活動かつどうも継続けいぞくしており、1992年ねんのル・マン24時じ間あいだレースにはマツダ・MX-R01で、1995年ねんのル・マン24時じ間あいだレースにはポルシェ・WSC95で参戦さんせん。1997年ねんのル・マン24時じ間あいだレース、1998年ねんのル・マン24時じ間あいだレースには日産自動車にっさんじどうしゃ（ニスモ）と組くんで日産にっさん・R390で参戦さんせんした。またオーストラリアのレースカテゴリーであるV8スーパーカーに参戦さんせんするホールデンチームの運営うんえいにも関かかわっていたほか、ツーリングカー分野ぶんやでも1994年ねんよりボルボと組くんでBTCCに参戦さんせん、1998年ねんには同どうチームから参戦さんせんしたリカルド・リデルがBTCCのシリーズチャンピオンを獲得かくとくしている。

しかしアロウズのF1での成績せいせきは振ふるわず、スポンサー獲得かくとくに苦くるしむようになり、2002年ねんには経営けいえい難なんに陥おちいってF1から撤退てったいし、TWR自体じたいも倒産とうさんしてしまった。このため一いち時じウォーキンショーはモータースポーツ界かいから離はなれることになるが、2006年ねんにはV8スーパーカーのホールデンチームの運営うんえいに復帰ふっきしたほか、同年どうねんにはオーストラリアのスポーツカーメーカーである「エルフィン」（Elfin Sports Cars ）を買収ばいしゅうし、引ひき続つづきモータースポーツ界かいで活動かつどうを続つづけた。

2010年ねん12月12日にち、肺癌はいがんのため死去しきょ。64歳さい没ぼつ。

レース戦績せんせき

ル・マン24時じ間あいだレース

年とし	チーム	コ・ドライバー	使用しよう車両しゃりょう	クラス	周回しゅうかい	総合そうごう順位じゅんい	クラス順位じゅんい
1976年ねん	ヘルメタイト プロダクション Ltd.	ジョン・フィッツパトリック	BMW・3.5CSL	Gr.5	17	DNF	DNF
1977年ねん	ルイージ・レーシング	エディ・ジューセン クロード・デ・ワール	BMW・3.0CSL	IMSA	45	DNF	DNF
1981年ねん	マツダスピード株式会社かぶしきがいしゃ	生なま沢さわ徹とおる ピート・ロヴェット	マツダ・RX-7	IMSA GTO	107	DNF	DNF
1982年ねん		チャック・ニコルソン ピート・ロヴェット		IMSA GTX	180	DNF	DNF

評価ひょうか

日本にっぽんにおいては、1995年ねんにリジェと契約けいやくした鈴木すずき亜あ久里くさとの扱あつかいを巡めぐるトラブルなどが知しられている。また1997年ねんのシーズンオフに、当時とうじアロウズにエンジンを供給きょうきゅうしていたヤマハ発動機やまははつどうきに対たいし、ウォーキンショーが傘下さんかに収おさめていたハートエンジンへの出資しゅっしを迫せまったことが原因げんいんでヤマハのF1撤退てったいを招まねき、ヤマハを失うしなったアロウズはこの以降いこう低迷ていめいすることになる。他ほかにもフランク・ダーニーやジョン・バーナードなど関係かんけい者しゃからの評判ひょうばんは芳かんばしくないものもあった。

その反面はんめん、F1参戦さんせんのためのタイヤ開発かいはつを継続けいぞくしていたブリヂストンがテスト用ようのF1マシンを必要ひつようとした際さいにリジェ・JS41を提供ていきょうしたり、「できることなら現役げんえきのF1マシンでテストがしたい」というブリヂストンの要望ようぼうに、当時とうじアロウズでグッドイヤーを履はいて参戦さんせん中ちゅうだったにもかかわらず、グッドイヤーと交渉こうしょうし許可きょかを得えたうえで現役げんえき参戦さんせん中ちゅうのアロウズ・A17とドライバーのヨス・フェルスタッペン、アロウズのチームスタッフによるタイヤテストをヨーロッパ各地かくちで実施じっしするなど、ブリヂストンのタイヤ技術ぎじゅつ開発かいはつに大おおきく貢献こうけんしている。アロウズとして1997年ねんの契約けいやくをデイモン・ヒルと締結ていけつした後のちには、ウォーキンショーの計はからいにより開発かいはつドライバーとしての能力のうりょくが高たかかったヒルをブリヂストンのタイヤテストにも参加さんかさせた。これらの経緯けいいからブリヂストンの安川やすかわひろしは「ウォーキンショーがいなければブリヂストンは今いまこうしてF1を戦たたかっていない」と後のちに述のべている。また、1995年ねんにリジェのシートシェア問題もんだいの当事とうじ者しゃだった鈴木すずき亜あ久里くさとも「ウォーキンショー好すきですよ。彼かれと知しり合あってF1のビジネスのやり方かたが勉強べんきょうになった。あいつのやり方かたはおもしろい（笑）」と好意こうい的てきに話はなしている。

また1991年ねんのル・マン24時じ間あいだレースで優勝ゆうしょうしル・マン優勝ゆうしょう者しゃは翌年よくねんにも参戦さんせんする決きまりであったため、1992年ねんにSWC規定きていのマシンが必要ひつようだったマツダにジャガー・XJR-14を供給きょうきゅうしたり、日産にっさんとともにル・マンに参戦さんせんし日産にっさん・R390で1998年ねん日産にっさんにとっての最高さいこう成績せいせきである3位い表彰台ひょうしょうだい獲得かくとくに貢献こうけんするなど、モータースポーツにおける日本にっぽんメーカーの活躍かつやくに多大ただいな影響えいきょうを与あたえた。WSPC・SWCにおける「常勝じょうしょうジャガー」の礎いしずえを築きずいたほか、当時とうじはまだ若手わかてエンジニアの一人ひとりに過すぎなかったロス・ブラウンを発掘はっくつしたこと、またBTCCにおけるボルボの活躍かつやくなどもあり、強つよいチームを作つくれるマネージャーとして高たかい評価ひょうかをする関係かんけい者しゃもいる。

ウォーキンショーと意見いけんの相違そういからアロウズを離脱りだつしたフランク・ダーニーに対たいし、中途ちゅうと離脱りだつにもかかわらず契約けいやく金きんの満額まんがくを払はらっていた。

家族かぞく

息子むすこのショーン・ウォーキンショーもレーシングドライバーの道みちに進すすみ、2017年ねんからはSUPER GT・GT300クラスにARTA BMW M6 GT3で参戦さんせんしている。またかつてのTWRの一部いちぶを継承けいしょうした「ショーン・ウォーキンショー・レーシング」のチームオーナーでもある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『GRAND PRIX SPECIAL』（ソニー・マガジンズ）2008年ねん1月がつ号ごう
• 黒井くろい尚志ひさし『ル・マン 偉大いだいなる草くさレースの挑戦ちょうせん者しゃたち』集英社しゅうえいしゃ ISBN 4-08-780158-6
• 『ワールドカーガイド12ジャガー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-105-6