寂蓮じゃくれん

寂蓮じゃくれん（歌川うたがわ国芳くによし画が）

寂蓮じゃくれん（じゃくれん、1139年ねん（保ほ延のべ5年ねん）? - 1202年ねん8月がつ9日にち（建たて仁ひとし2年ねん7月がつ20日はつか））は、平安へいあん時代じだい末すえから鎌倉かまくら時代ときよ初期しょきにかけての歌人かじん、僧侶そうりょである。俗名ぞくみょうは藤原ふじわら定じょう長ちょう。

略歴りゃくれき

僧そう俊しゅん海うみの子ことして生うまれ、久安ひさやす6年ねん（1150年ねん）頃ごろ叔父おじである藤原ふじわら俊成としなりの養子ようしとなり、長ながじて従したがえ五ご位い上じょう・中務なかつかさ少しょう輔に至いたる。30歳さい代だいで出家しゅっけ、歌道かどうに精進しょうじんした。御子みこ左ひだり家かの中心ちゅうしん歌人かじんとして活躍かつやくし、「六ろく百ひゃく番ばん歌合うたあわせ」での顕昭けんしょうとの「独鈷とっこ鎌首かまくび論争ろんそう」は有名ゆうめいである。建たて仁ひとし元年がんねん（1201年ねん）、和歌わか所しょ寄人よりうどとなり、『新しん古今ここん和歌集わかしゅう』の撰者せんじゃとなるが、完成かんせいを待またず翌よく建けん仁じん2年ねん（1202年ねん）に没ぼっした。享年きょうねん64。

『千載せんざい和歌集わかしゅう』以下いかの勅撰ちょくせん和歌集わかしゅうに、117首しゅ入いれ集しゅう。家集かしゅうに『寂蓮じゃくれん法師ほうし集しゅう』がある。

評価ひょうか

後鳥羽ごとば院いんは、後鳥羽ごとば院いん御ご口伝くでんにおいて、「寂さび連れんは、なをざりならず歌詠うたよみし物ぶつなり」、「折おりにつけて、きと歌詠うたよみ、連歌れんがし、ないし狂歌きょうかまでも、にはかの事ことに、故こあるやうに詠よみし方かた、真実しんじつの堪能かんのうと見みえき」と様々さまざまな才能さいのうを絶賛ぜっさんしている。また、鴨長明かものちょうめいは無名むめい抄しょうの中なかで、世間せけんでは藤原ふじわら隆信たかのぶとは一いち対ついに評価ひょうかされているが、六ろく百ひゃく番ばん歌合うたあわせの際さい、寂蓮じゃくれんは出家しゅっけしていて、時間じかん的てきに余裕よゆうが出来できていたので、「たとしへなく勝まさりたりければ、其時より寂蓮じゃくれん左右さゆうなしといふ事ことになりにき」と評価ひょうかが上あがったとし、また、三さん体たい和歌わかにおいて、長明ちょうめい自身じしんの出だし詠歌えいかを事前じぜんに見みせた時ときに、同おなじ様ような「高こう間あいだの桜さくら」を詠えい出だしていたが、文句もんくも言いわず「いと有難ありがたき心しん也かし」と人間にんげん性せいも評価ひょうかしている。 後ごの世よにおいて、新しん古今ここん和歌集わかしゅう秋あき歌か上じょうの中なかの結句けっくが「秋あきの夕暮ゆうぐれ」の三さん首しゅ並ならんだ、西行さいぎょう、定家さだいえと寂蓮じゃくれんの「さびしさは」を三さん夕ゆうと称しょうし、茶ちゃ具ぐの銘めいなどとしている。

作品さくひん

　かつらきやたかまのさくらさきにけり たつたのおくにかかるしらくも
（葛城かつらぎや高こう間あいだのさくら咲ざきにけり 立田たったのおくにかかるしら雲くも） — 『新しん古今ここん和歌集わかしゅう』巻まき一いち 春はる上じょう 87
— 「三さん体たい和歌わか」

　くれてゆくはるのみなとはしらねともかすみにおつるうちのしはふね
（暮くれて行いく春はるの湊みなとは知しらねども霞かすみに落おつる宇治うじの柴舟さいしゅう） — 『新しん古今ここん和歌集わかしゅう』巻まき二に 春はる下か 169
— 「老若ろうにゃく五ご十じゅう首しゅ歌合うたあわせ」

　さひしさはそのいろとしもなかりけり まきたつやまのあきのゆふくれ
（さびしさはその色いろとしもなかりけり まき立たつ山やまの秋あきの夕暮ゆうぐれ） — 『新しん古今ここん和歌集わかしゅう』巻まき四よん 秋あき上じょう 361

　むらさめのつゆもまたひぬまきのはに きりたちのほるあきのゆふくれ
（村雨むらさめの露つゆも未いまだ干ひぬ槇まきの葉はに 霧きり立だち昇のぼる秋あきの夕暮ゆうぐれ） — 『新しん古今ここん和歌集わかしゅう』巻まき五ご 秋あき下か 491
— 「老若ろうにゃく五ご十じゅう首しゅ歌合うたあわせ」
— 『小倉おぐら百ひゃく人にん一いち首しゅ』87

書家しょかとして

寂蓮じゃくれん筆ひつ二に首しゅ懐紙かいし（「一品いっぴん経けい懐紙かいし」のうち）京都きょうと国立こくりつ博物館はくぶつかん蔵ぞう、国宝こくほう

書家しょかとしても名ながあり、現存げんそんする書跡しょせきには以下いかのものがある。

• 一品いっぴん経けい和歌わか懐紙かいし
• 熊野くまの懐紙かいし

平安へいあん時代じだいから鎌倉かまくら時代じだい初期しょきの古筆こひつ類るいは、伝つて称しょう筆者ひっしゃは多おおいものの確実かくじつなものが少すくない中なかで、この2つの書跡しょせきはともに署名しょめいがあり、筆者ひっしゃの確実かくじつな自筆じひつ詠草よみくさである。

系譜けいふ

• 父ちち：俊しゅん海うみ - 醍醐寺だいごじの阿闍梨あじゃり
• 母はは：不ふ詳しょう
• 養父ようふ/伯父おじ：藤原ふじわら俊成としなり
• 妻つま：藤原ふじわら永ひさし範はんの女おんな
  • 男子だんし：藤原ふじわら保たもつ季き（?-1200） - 藤原ふじわら実みのる宗むね養子ようし
  • 男子だんし：幸さいわい尊たかし
  • 男子だんし：公おおやけ猷
  • 男子だんし：昌あきら観かん
  • 女子じょし：藤原家隆ふじわらのいえたか室しつ

参考さんこう文献ぶんけん

• 木村きむら卜ぼく堂どう『日本にっぽんと中国ちゅうごくの書しょ史し』、日本にっぽん書しょ作家さっか協会きょうかい 、1972年ねん
• 久ひさ曽そ神かみ昇のぼる『顕昭けんしょう・寂蓮じゃくれん』、三省堂さんせいどう、1942年ねん

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの書家しょか一覧いちらん

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