無量むりょう寿ことぶき経けい

『無量むりょう寿ことぶき経けい』（むりょうじゅきょう）は、大乗だいじょう仏教ぶっきょうの経典きょうてんの一ひとつ。 原題げんだいは『スカーヴァティー・ヴィユーハ』（梵: Sukhāvatī-vyūha）で、「極楽ごくらくの荘厳しょうごん」という意味いみである。サンスクリットでは同どうタイトルの『阿弥陀あみだ経けい』と区別くべつして、『大だいスカーヴァティー・ヴィユーハ』とも呼よぶ。

概要がいよう

サンスクリット写本しゃほん、チベット語ご訳わけ、漢かん訳やくが現存げんそんする。 日本にっぽんでは特記とっきが無ない限かぎり『無量むりょう寿ことぶき経けい』というと、漢かん訳やく『仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき経けい』の事ことを示しめし、浄土宗じょうどしゅうや浄土真宗じょうどしんしゅうでは根本こんぽん所しょ依よの経典きょうてんとされる。

イェシェーデ（Ye shes sde）らによるチベット語ご訳やくは『アミターバ・ヴューハ』（Amitābhavyūha）すなわち「無量むりょう光こう仏ふつの荘厳そうごん」というサンスクリットの題名だいめいを持もつ。

漢かん訳やく

『大だいスカーヴァティー・ヴィユーハ』の漢かん訳やくは、かつて古来こらい中国ちゅうごくに12訳やくが存そんしたと日本にっぽんでは伝つたえられており、5つの訳本やくほんが現存げんそんし、7つの訳本やくほんは欠本けっぽんとされる。このように五ご存そん七なな欠かけ十じゅう二に訳やくが言いわれるが、その史実しじつ性せいは疑うたがわれている。 諸しょ漢かん訳やくはいずれも無量むりょう寿ことぶき佛ふつの立たて誓ちかい、浄土じょうど・極楽往生ごくらくおうじょうが説とかれるが、内容ないようは同一どういつでなく差異さいがみえる。

仏説ぶっせつ阿弥陀あみだ三耶三仏薩楼仏檀過度人道経

• 『仏説ぶっせつ阿弥陀あみだ三耶三仏薩楼仏檀過度人道経』2巻かん 呉ごの支ささえ謙けん訳わけ…「呉くれ訳やく」
  • 後こう漢かんの支ささえ婁迦讖訳とする説せつもあるが、支ささえ謙けん訳やくという説せつが一般いっぱん的てきである。
  • 別称べっしょうには、『大だい阿弥陀あみだ経けい』がある。
  • 阿弥陀如来あみだにょらいの本願ほんがんは、「四よん十じゅう八はち願ねがい」ではなく、「二に十じゅう四よん願ねがい」である。
  • 偈げ頌を持もたず、散文さんぶんのみで構成こうせいされる。
  • 『大正たいしょう新しん脩おさむ大蔵経だいぞうきょう』（以下いか、『大正たいしょう蔵ぞう』）第だい12巻かん P300～P317
  • 原文げんぶんの経けい題だいの表記ひょうきは、『佛説ぶっせつ阿彌陀あみだ三耶三佛薩樓佛檀過度人道經卷上』、『佛説ぶっせつ阿彌陀あみだ三耶三佛薩樓佛檀過度人道經卷下』 呉ご月がつ支ささえ國こく居士こじ支ささえ謙けん譯やく。
  • 主おもな引用いんよう先さき…源みなもと信しん…『往生おうじょう要よう集しゅう』、法然ほうねん：『選択せんたく集しゅう』、親鸞しんらん：『教行信証きょうぎょうしんしょう』。

仏説ぶっせつ無量むりょう清浄せいじょう平等びょうどう覚さとし経けい

• 『仏説ぶっせつ無量むりょう清浄せいじょう平等びょうどう覚さとし経けい』4巻かん 後こう漢かんの支ささえ婁迦讖訳わけ…「漢かん訳やく」
  • 支ささえ婁迦讖訳という説せつは仏教ぶっきょう学がくでは受うけ入いれられていない。
  • 西にし晋すすむの竺法護まもる訳わけ、曹魏の白しろ延のべ（はくえん〈帛延とも〉）訳やくとの説せつもある。
  • 『大だい阿弥陀あみだ経けい』と『仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき経けい』の中なか間あいだ期きに成立せいりつしたとされている。
  • 略称りゃくしょうは、『清浄せいじょう平等びょうどう覚さとし経けい』、『平等びょうどう覚さとし経けい』が用もちいられる。
  • 阿弥陀あみだ仏ふつの本願ほんがんは、「四よん十じゅう八はち願ねがい」ではなく、「二に十じゅう四よん願ねがい」である。
  • 『大正たいしょう蔵ぞう』 第だい12巻かん P279～P299。
  • 原文げんぶんの経けい題だいの表記ひょうきは、『佛説ぶっせつ無量むりょう清淨せいじょう平等びょうどう覺さとし經卷きょうかん第だい一いち』、『佛説ぶっせつ無量むりょう清淨せいじょう平等びょうどう覺さとし經卷きょうかん第だい二に』、『佛説ぶっせつ無量むりょう清淨せいじょう平等びょうどう覺さとし經卷きょうかん第だい三さん』、『佛説ぶっせつ無量むりょう清淨せいじょう平等びょうどう覺さとし經卷きょうかん第だい四よん』 後ご漢かん月がつ支ささえ國こく三藏支婁迦讖譯。
  • 主おもな引用いんよう先さき…善導ぜんどう：『観かん経けい疏』、源信みなもとのまこと…『往生おうじょう要よう集しゅう』、法然ほうねん：『選択せんたく集しゅう』、親鸞しんらん：『教行信証きょうぎょうしんしょう』、『愚禿ぐとく鈔』、作者さくしゃ不ふ詳しょう：『安心あんしん決定けってい鈔』。

仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき経けい

• 『仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき経けい』2巻かん 曹魏の康かん僧そう鎧よろい訳わけ…「魏ぎ訳やく」
  • 漢かん訳やくのうち日本にっぽんの浄土じょうど教きょう諸宗しょしゅうにおいて主おもに用もちいられるのは、この二に巻かん本ほん『仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき経けい』である。
  • 『歴代れきだい三さん宝たから紀おさむ』に現あらわれる、康かん僧そう鎧よろいが漢かん訳やくしたという説せつは、多おおくの点てんから支持しじし難がたく、東あずま晋すすむの仏陀ぶっだ跋ばつ陀羅・宝たから雲くもの両者りょうしゃによって421年ねんに共とも訳やくされたとする説せつが有力ゆうりょくである 。
  • 上下じょうげ巻まきの2巻かんからなるため『双そう巻まき無量むりょう寿ことぶき経けい』（『雙そう巻まき無量むりょう壽ことぶき經けい』）、『双そう巻まき経けい』（『雙そう巻まき經けい』）とも呼よばれる。また、経けい名めいに「大だい」の字じを冠かんして『大だい無量むりょう寿ことぶき経けい』と称しょうし、略りゃくして『大だい経けい』とも称しょうする。。
  • 日本にっぽんの浄土じょうど教きょうの根本こんぽん聖典せいてんの一ひとつで、『仏説ぶっせつ観かん無量むりょう寿ことぶき経けい』（畺良耶舎訳わけ）、『仏説ぶっせつ阿弥陀あみだ経けい』（鳩ばと摩ま羅ら什訳わけ）とともに「浄土じょうど三さん部ぶ経けい」と総称そうしょうされる。
  • 浄土じょうど教きょう諸宗しょしゅうの信者しんじゃが勤行ごんぎょうで読誦とくしょうする「四よん誓ちかい偈げ」(三さん誓ちかい偈げ、重じゅう誓ちかい偈げ)は『仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき経けい』の一部分いちぶぶんである。
  • 『大正たいしょう蔵ぞう』第だい12巻かん P265～279。
  • 原文げんぶんの経けい題だいの表記ひょうきは、『佛説ぶっせつ無量むりょう壽ことぶき經卷きょうかん上じょう』・『佛説ぶっせつ無量むりょう壽ことぶき經卷きょうかん下か』 曹魏天竺てんじく三藏さんぞう康かん僧そう鎧よろい譯やく。

内容ないよう

上巻じょうかん

序じょ分ぶんに王おう舎しゃ城じょうの耆闍崛山において、優すぐれた比丘びくや菩薩ぼさつたちに対たいして、釈尊しゃくそんが五徳ごとくの瑞相ずいそうをあらわし説とかれた。

正宗まさむね分ぶんには、ある国王こくおうが世よ自在じざい王おう仏ふつのもとで出家しゅっけし法蔵ほうぞう菩薩ぼさつと名乗なのり、偈げ文ぶん（「讃さん仏ふつ偈げ」）を作つくり師しを讃たたえ嘆し、諸々もろもろの仏ふつの国土こくどの成なり立たちを見みせて欲ほしいと願ねがいを述のべ、その仏ふつ国土こくどより優すぐれた点てんを選えらび取とり、発願ほつがん（ほつがん）し、五ご劫こうの間あいだ思惟しいして行くだりを選えらび取とった。 願ねがいと行くだりを選えらび取とった法蔵ほうぞう菩薩ぼさつは、師しに向むかい48の願ねがい（四よん十じゅう八はち願ねがい）を述のべた。 続つづけてこの願ねがいの目的もくてきを述のべ重かさねて誓ちかった（「四よん誓ちかい偈げ（重じゅう誓ちかい偈げ・三さん誓ちかい偈げ）」）。 そして兆ちょう戴永劫えいごうにわたり修行しゅぎょうし、願ねがいが成就じょうじゅし、無量むりょう寿ことぶき仏ふつ（阿弥陀あみだ仏ほとけ）と成なり、その仏ふつ国土こくどの名なが「極楽ごくらく」であると説とかれる。 願ねがいが成就じょうじゅしてから十じゅう劫こうが経たっていて、阿弥陀あみだ仏ふつの徳とくとその国土こくどである「極楽ごくらく」の様子ようすが説とかれる。

下巻げかん

極楽浄土ごくらくじょうどに生うまれたいと願ねがう者ものは皆みな、仏ふつになることが約束やくそくされ、阿弥陀あみだ仏ふつの名号みょうごうを聞信し喜よろこび、心しんから念ねんずれば往生おうじょうが定さだまると説とかれる。 その者ものたちは、上うえ輩やから・中ちゅう輩やから・下しも輩やからに分わけられ、それぞれの往生おうじょうの方法ほうほうが説とかれる。修行しゅぎょうもやり遂とげられない、善行ぜんこうも戎えびすも守まもりきれない下しも輩やからの者ものは、たとえわずかな回数かいすうでも、一心いっしんに念ねんずれば往生おうじょうがさだまると説とかれる。 そして釈尊しゃくそんは、偈げ文ぶん（「東方とうほう偈げ〈往覲偈げ〉」）を読よみ、教おしえを聞きき、阿弥陀あみだ仏ほとけを敬うやまい、「極楽ごくらく」への往生おうじょうを勧すすめる。 さらに浄土じょうどに往生おうじょうした聖せいなる者ものたちの徳とくを説とかれる。 次つぎに釈尊しゃくそんは弥勒菩薩みろくぼさつに対たいして、煩悩ぼんのうのある世界せかい（穢土えど）に生いきる衆生しゅじょうの苦くるしみの理由りゆうを、三さん毒どく・五ご悪あくによると示しめし、誡める。 続つづけて弥勒菩薩みろくぼさつに、そのままではその苦くるしみから逃のがれられない事ことを説とき、「極楽ごくらく」に往生おうじょうする事ことが苦くるしみから逃のがれる方法ほうほうであると説とかれる。 それは、ただ無量むりょう寿ことぶき仏ふつの名なを聞きいて、たった一いち度どでも名なを称たたえれば（念仏ねんぶつ）すれば、功徳くどくを身みに供そなえる事ことができると説といた。この教おしえを聞きいたものは、後戻あともどりする事ことは無ない（必かならず往生おうじょうできる）と説とかれる。

流通りゅうつう分ぶんには、無上むじょう功徳くどくの名号みょうごうを受持うけもちせよとすすめ、時ときが流ながれ一切いっさいの法ほうが滅ほろぼしても、この経けい（『無量むりょう寿ことぶき経けい』）だけは留とめおいて人々ひとびとを救すくいつづけると説とかれる。

無量むりょう寿ことぶき如来にょらい会かい

• 『無量むりょう寿ことぶき如来にょらい会かい』2巻かん 唐とうの菩提ぼだい流りゅう志こころざし訳わけ…「唐とう訳やく」
  • 『大正たいしょう蔵ぞう』第だい11巻かん P91～P101。
  • 原文げんぶんの経けい題だいの表記ひょうきは、『大だい寶積ほうしゃく經卷きょうかん第だい十じゅう七なな』「無量むりょう壽ことぶき如來にょらい會かい第だい五ご之の一いち」、『大だい寶積ほうしゃく經卷きょうかん第だい十じゅう八はち』「無量むりょう壽ことぶき如來にょらい會かい第だい五ご之の二に」 大だい唐とう三藏菩提流志詔譯。
  • 略称りゃくしょうは、『如来にょらい会かい』が用もちいられる。
  • 阿弥陀あみだ仏ふつの本願ほんがんは、「魏ぎ訳やく」と同どうじ「四よん十じゅう八はち願ねがい」である。
  • 主おもな引用いんよう先さき…親鸞しんらん：『教行信証きょうぎょうしんしょう』、『浄土じょうど文ぶん類るい聚鈔』、『愚禿ぐとく鈔』、『浄土じょうど三さん経けい往生おうじょう文ぶん類るい』、『一念いちねん多た念ねん文意ぶんい』、『如来にょらい二に種しゅ回向えこう文ぶん』、『親鸞しんらん聖人まさと御ご消息しょうそく（善ぜん性せい本ほん）』、蓮如れんにょ：『正信まさのぶ偈げ大意たいい』。

仏説ぶっせつ大乗だいじょう無量むりょう寿ことぶき荘厳しょうごん経けい

• 『仏説ぶっせつ大乗だいじょう無量むりょう寿ことぶき荘厳しょうごん経けい』3巻かん 宋そうの法ほう賢けん（ほっけん）訳やく…「宋そう訳やく」
  • 『大正たいしょう蔵ぞう』第だい12巻かん P318～P326。
  • 原文げんぶんの経けい題だいの表記ひょうきは、『佛説ぶっせつ大乘だいじょう無量むりょう壽ことぶき莊嚴しょうごん經卷きょうかん上じょう』、『佛説ぶっせつ大乘だいじょう無量むりょう壽ことぶき莊嚴しょうごん經卷きょうかん中ちゅう』、『佛説ぶっせつ大乘だいじょう無量むりょう壽ことぶき莊嚴しょうごん經卷きょうかん下か』 西にし天たかし譯やく經けい三藏朝散大夫試光禄卿 明あかり教きょう大師だいし臣しん法ほう賢けん奉たてまつ詔みことのり譯やく。
  • 略称りゃくしょうは、『荘厳しょうごん経けい』が用もちいられる。
  • 阿弥陀あみだ仏ふつの本願ほんがんは、「四よん十じゅう八はち願ねがい」ではなく、「三さん十じゅう六ろく願ねがい」である。

欠本けっぽんとされている7つの異い訳本やくほん

• 『無量むりょう寿ことぶき経けい』2巻かん 後ご漢かんの安世やすよ高だか訳わけとされる。
• 『仏説ぶっせつ無量むりょう清浄せいじょう平等びょうどう覚さとし経けい』2巻かん 曹魏の白しろ延のべ訳やくとされる。
• 『仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき経けい』2巻かん 西にし晋すすむの竺法護まもる訳やくとされる。
• 『仏説ぶっせつ無量むりょう寿ことぶき至いたる真しん等とう正覚しょうがく経けい』1巻かん 東あずま晋すすむの竺法力りょく（じくほうりき）訳やくとされる。
• 『新しん無量むりょう寿ことぶき経けい』2巻かん 東あずま晋すすむの仏陀ぶっだ跋ばつ陀羅訳やくとされる。
• 『新しん無量むりょう寿ことぶき経けい』2巻かん 東あずま晋すすむの宝たから雲くも（ほううん）訳やくとされる。
• 『新しん無量むりょう寿ことぶき経けい』2巻かん 劉りゅう宋そうの曇くもり摩ま蜜みつ多た（どんまみった）訳やくとされる。

チベット語ご訳やく

• 経けい題だいは『'phags pa 'od dpag med kyi bkod pa zhes bya ba theg pa chen po'i mdo』（聖せいなる“無量むりょう光こう仏ふつの荘厳そうごん”という名なの大乗だいじょう経けい）。
• 阿弥陀あみだ仏ふつの本願ほんがんは、「四よん十じゅう八はち願ねがい」より一ひとつ多おおい「四よん十じゅう九きゅう願ねがい」である。
• 訳者やくしゃはデルゲ版ばん、ラサ版ばん、トクパレス写本しゃほんに至いたるまで、イェシェーデ、ジナミトラ、ダーナシーラと記しるされているが、北京ぺきん版ばんだけがルイギェンツェン（Klu'i rgyal mtshan）とする。
• 三さん毒どく段だん、五ご悪あく段だんがなく、サンスクリット本ほんと同おなじ形態けいたいである。

注釈ちゅうしゃく書しょ

• ヴァスバンドゥ（世よ親おや・天てん親おや）造みやつこ・菩提ぼだい留とめ支ささえ訳やく　『無量むりょう寿ことぶき経けい優ゆう婆ばば提ひさげ舎しゃ願ねがい生せい偈げ』（『浄土じょうど論ろん』） - 菩提ぼだい留とめ支ささえによる漢かん訳やくが現存げんそんするのみで、サンスクリット語ごの原典げんてんは発見はっけんされていない。
  • 曇くもり鸞註解ちゅうかい 『無量むりょう寿ことぶき経けい優ゆう婆ばば提ひさげ舎しゃ願ねがい生せい偈げ註』（『浄土じょうど論ろん註』） - 『浄土じょうど論ろん』の注釈ちゅうしゃく書しょであり、『無量むりょう寿ことぶき経けい』に対たいする複ふく注釈ちゅうしゃく書しょ。
• 憬興（璟興）撰せん『無量むりょう寿ことぶき経連けいれん義ぎ述じゅつ文ぶん賛さん』- 親鸞しんらん撰せん 『顕あらわ浄土じょうど真実しんじつ教きょう行ぎょう証文しょうもん類るい』（『教行信証きょうぎょうしんしょう』）において多おおく引用いんようされる。

経典きょうてん成立せいりつ時期じきと編纂へんさん者しゃ

「仏説ぶっせつ」とは、釈尊しゃくそんが自みずから口くちで説といた教おしえのことである。しかし、釈尊しゃくそんの在世ざいせい時じから滅後めつご100年ねん頃ごろまでは口伝くでんによって教おしえである「法ほう」と規則きそくである「律りつ」が伝つたえられる。それら「法ほう」と「律りつ」は、「結集けっしゅう」によって認証にんしょう確定かくていされていく。そして滅後めつご100年ねんを過すぎた頃ころに、「法ほう」を集あつめた「経蔵きょうぞう」と「律りつ」を集あつめた「律蔵りつぞう」が成立せいりつしたものと考かんがえられる。（詳細しょうさいは、大乗だいじょう非ひ仏説ぶっせつを参照さんしょう）。

成立せいりつ時期じきなどに関かんする諸説しょせつ

仏典ぶってん研究けんきゅう上じょうでは、阿弥陀あみだ仏ほとけに対たいする信仰しんこうは、客観きゃっかん的てきな資料しりょうがとぼしく諸説しょせつ存在そんざいするが、インドおよび近隣きんりん諸国しょこくの思想しそうの影響えいきょう下か、「釈尊しゃくそん観かんの展開てんかいによるとする説せつ」が有力ゆうりょくである。原始げんし仏教ぶっきょう以来いらいの釈尊しゃくそん観かんの発展はってん、および『無量むりょう寿ことぶき経けい』の法蔵ほうぞう菩薩ぼさつ説話せつわにおける仏ふつ伝でんの投影とうえいから、浄土じょうど教きょうは大乗だいじょう仏教ぶっきょうが伝播でんぱするに伴ともなう菩薩ぼさつ思想しそうの深化しんかの中なかで、釈尊しゃくそん観かんの展開てんかいとしたものと考かんがえられる。

• 仏教ぶっきょう学者がくしゃの中村なかむら元はじめは、浄土じょうど教きょう・浄土じょうど経典きょうてんは部ぶ派は仏教ぶっきょうがいちおう確立かくりつしたのちに出現しゅつげんしたものとする。140年ねん頃ごろかそれ以前いぜんには、『無量むりょう寿ことぶき経けい』・『阿弥陀あみだ経けい』が漢かん訳やくされたとする。（『浄土じょうど三さん部ぶ経けい』下したを参照さんしょう。）
• 信楽しがらき峻たかし麿まろは、釈尊しゃくそん入滅にゅうめつから500年ねん前後ぜんこうには大乗だいじょう仏教ぶっきょうが成立せいりつしたものと考かんがえ、『無量むりょう寿ことぶき経けい』の成立せいりつ時期じきについて、釈尊しゃくそん入滅にゅうめつ後ご約やく500年ねんとし、編纂へんさん者しゃは不明ふめいとする（信楽しがらき峻たかし麿まろ「阿弥陀あみだ仏ふつ論ろん」P.251を参照さんしょう）。
• 藤田ふじた宏ひろし達たちは、原始げんし仏教ぶっきょうにおいて、阿弥陀あみだ仏ふつ、極楽浄土ごくらくじょうどの観念かんねん、浄土じょうど思想しそうが存在そんざいしなかったとする。（教学きょうがく本部ほんぶ編へん『伝道でんどう』29号ごう、80P.を参照さんしょう）

参考さんこう文献ぶんけん

• 浄土真宗じょうどしんしゅう教学きょうがく編集へんしゅう所しょ 浄土真宗じょうどしんしゅう聖典せいてん編纂へんさん委員いいん会かい 編纂へんさん『<浄土真宗じょうどしんしゅう聖典せいてん>浄土じょうど三さん部ぶ経けい -現代げんだい語ご版ばん-』本願寺ほんがんじ出版しゅっぱん社しゃ、初版しょはん1996年ねん。ISBN 978-4-89416-601-1。 
• 中村なかむら 元はじめ、早島はやしま鏡かがみ正ただし・紀きの野の一いち義ぎ 訳注やくちゅう『浄土じょうど三さん部ぶ経けい 上じょう』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ文庫ぶんこ 青あお306-1〉、1990年ねん。ISBN 4-00-333061-7。 
• 中村なかむら 元はじめ、早島はやしま鏡かがみ正ただし・紀きの野の一いち義ぎ 訳注やくちゅう『浄土じょうど三さん部ぶ経けい 下か』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ文庫ぶんこ 青あお306-2〉、1990年ねん。ISBN 4-00-333062-5。 
• 信楽しがらき峻たかし麿まろ「阿弥陀あみだ仏ふつ論ろん」（龍谷大りゅうこくだい学がく仏教ぶっきょう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ 編へん『仏教ぶっきょう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ紀要きよう』第だい20集しゅう、1982年ねん3月がつ
• 信楽しがらき峻たかし麿まろ「現代げんだい真宗しんしゅう真偽しんぎ論ろん」（真宗しんしゅう連合れんごう学会がっかい 編へん『真宗しんしゅう研究けんきゅう』2002年ねん1月がつ）
• 多屋たや頼よりゆき俊しゅん、横よこ超ちょう慧とし日び・舟橋ふなばし一哉かずや 編へん『仏教ぶっきょう学がく辞典じてん』（新版しんぱん）法藏館ほうぞうかん、1995年ねん。ISBN 4-8318-7009-9。 
• 大橋おおはし俊雄としお 校こう注ちゅう『法然ほうねん 選択せんたく本願ほんがん念仏ねんぶつ集しゅう』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ文庫ぶんこ 青あお340-1〉、1997年ねん。ISBN 4-00-333401-9。 
• 金子かねこ大栄おおえ 校訂こうてい『親鸞しんらん 教行信証きょうぎょうしんしょう』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ文庫ぶんこ 青あお318-1〉、1957年ねん。ISBN 4-00-333181-8。 
• 教科書きょうかしょ改訂かいてい検討けんとう委員いいん会かい　編へん『新しん訂てい　仏教ぶっきょう学がく概論がいろん』浄土宗じょうどしゅう出版しゅっぱん、2004年ねん。https://press.jodo.or.jp/products/detail.php?product_id=322。 
• 香川かがわ, 孝雄たかお「『無量むりょう寿ことぶき経けい』の漢かん訳者やくしゃについて」『佛教大学ぶっきょうだいがく佛教ぶっきょう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ年報ねんぽう』第だい2号ごう、佛教大学ぶっきょうだいがく仏教ぶっきょう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ、1984年ねん、18-49頁ぺーじ。 
• 藤田ふじた, 宏ひろし達たち「浄土じょうど経典きょうてん研究けんきゅうの現状げんじょうと課題かだい」『佛教ぶっきょう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ紀要きよう』第だい43号ごう、龍谷大りゅうこくだい学がく佛教ぶっきょう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ、2004年ねん、97-112頁ぺーじ。 

関連かんれん項目こうもく

• 七宝しっぽう
• 落語らくご『寿ことぶき限げん無な』…無量むりょう寿ことぶき経けいに出でてくるありがたい言葉ことばを全部ぜんぶ並ならべた結果けっかとんでもない事ことに

外部がいぶリンク

• 大正たいしょう新しん脩おさむ大藏經だいぞうきょう…『大正たいしょう新しん脩おさむ大藏經だいぞうきょう』のオンライン検索けんさく（テキストデータによる閲覧えつらん）
• 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん 近代きんだいデジタルライブラリー…『大正たいしょう新しん脩おさむ大藏經だいぞうきょう』と入力にゅうりょく検索けんさくすると、同書どうしょが写真しゃしんにより閲覧えつらんができる。
• 本願寺ほんがんじ派は聖典せいてん
• 聖教せいきょう電子でんし化か研究けんきゅう会かい （冒頭ぼうとう～） ・（第だい十じゅう八はち願ねがいの部分ぶぶん）