細川ほそかわ澄きよし之これ

凡例はんれい 細川ほそかわ 澄きよし之これ
『続ぞく英雄えいゆう百ひゃく人にん一いち首しゅ』より （細川ほそかわ澄きよし之これの名なと辞世じせいの歌うた「梓弓あずさゆみ（あずさゆみ） 張はりて心しんは 強つよけれど 引ひき手てすくなき 身みとぞ成なりぬる」が書かかれている）
時代じだい	室町むろまち時代ときよ後期こうき - 戦国せんごく時代じだい
生誕せいたん	延徳えんとく元年がんねん（1489年ねん）
死没しぼつ	永えい正ただし4年ねん8月がつ1日にち（1507年ねん9月7日にち）
改名かいめい	聡明そうめい丸まる（幼名ようみょう）、澄きよし之これ
別名べつめい	九郎くろう（仮名かめい）
幕府ばくふ	室町むろまち幕府ばくふ 管領かんりょう
主君しゅくん	足利あしかが義澄よしずみ
氏族しぞく	九きゅう条じょう家か、細川ほそかわ京きょう兆ちょう家いえ
父母ちちはは	父ちち：九条くじょう政まさし基もと、母はは：武者小路むしゃのこうじ隆光たかみつ娘むすめ 養父ようふ：細川ほそかわ政まさし元もと
兄弟きょうだい	九条くじょう尚しょう経けい、澄きよし之これ

細川ほそかわ 澄きよし之これ（ほそかわ すみゆき）は、室町むろまち時代ときよ後期こうきから戦国せんごく時代じだいにかけての武将ぶしょう、室町むろまち幕府ばくふ29代だい管領かんりょう。細川ほそかわ京きょう兆ちょう家いえ13代だい当主とうしゅ。

生涯しょうがい

延徳えんとく元年がんねん（1489年ねん）、関白かんぱく・九条くじょう政まさし基もとの二男じなんとして誕生たんじょうした。母ははは武者小路むしゃのこうじ隆光たかみつの娘むすめ。政せい基もとより九きゅう条じょう家かの家督かとくを継ついだ九条くじょう尚しょう経けいは20歳さいほど年としの離はなれた異母いぼ兄けいである。

延徳えんとく3年ねん（1491年ねん）2月がつ13日にち、2歳さいのとき、独身どくしんのため実子じっしの無なかった細川ほそかわ政まさし元もとの養子ようしとなり、細川ほそかわ京きょう兆ちょう家いえの世子せいしが代々だいだい称しょうした聡明そうめい丸まるを幼名ようみょうとして名乗なのる。

明あかり応おう4年ねん（1495年ねん）7月がつ、足利あしかが義澄よしずみに目通めどおりし、家督かとくと定さだめられた。

文ぶん亀かめ元年がんねん（1501年ねん）5月がつ末まつ、政せい元もとから家督かとくを譲ゆずられた。このことを、和泉いずみ国こく日にち根ね荘そうにいた実父じっぷ・九条くじょう政まさし基もとは、「抑そもそもも細川ほそかわ家かの事こと、聡明そうめい丸まる（澄きよし之これ）に仰おおせつけ、安富やすとみ筑後ちくご守まもる（元もと家いえ）・薬師寺やくしじ備後びんご守もり（元一げんいち）両人りょうにんを以もって諸しょ公事こうじ以下いか申もうし沙汰さたすべき由よし相しょう定さだめ了りょうんぬ」と記しるしている（『政せい基もと公こう旅たび引付ひきつけ』）。

しかし、政せい元もとの被官ひかんの中なかには、公家くげ出身しゅっしんの澄きよし之これの家督かとく継承けいしょうに反対はんたいする者ものもいたため、文ぶん亀かめ3年ねん（1503年ねん）、政せい元もとは、細川ほそかわ一門いちもんの細川ほそかわ成之しげゆきの孫まご・六郎ろくろう（のちの細川ほそかわ澄きよし元もと）を後嗣こうしとした。これにより、政せい元もとの後継こうけい者しゃは、澄きよし之これと澄きよし元もとの二人ふたりとなった。政せい元もとは、摂津せっつ国こくと丹波たんば国こくをそれぞれ二に人にんに分与ぶんよする方針ほうしんであったようだが、管領かんりょう家かとしての惣領そうりょうをいずれにするかで、内うち衆しゅ（家臣かしん団だん）は二に派はに分わかれて争あらそうことになった。

永えい正ただし元年がんねん（1504年ねん）、聡明そうめい丸まるは元服げんぷくし、母方ははかたの従兄弟いとこで室町むろまち幕府ばくふ11代だい将軍しょうぐん・足利あしかが義澄よしずみより偏へん諱いみなを賜たまわり、澄きよし之これと名乗なのる。烏帽子えぼし親おやは細川ほそかわ政まさし賢けんであった。

永えい正ただし2年ねん（1505年ねん）5月がつ、淡路あわじ守護しゅごの細川ほそかわ尚しょう春はるや安やす冨とみ氏し、香川かがわ氏しなどと共ともに讃岐さぬき国こくの阿波あわ細川ほそかわ氏しを攻せめるも細川ほそかわ成之しげゆきや三好みよし之の長ながに敗北はいぼくし、後継こうけい者しゃの地位ちいは澄きよし元もとのものとなった。

永えい正ただし3年ねん（1506年ねん）4月がつ下旬げじゅん、養父ようふ・細川ほそかわ政まさし元もとは、丹後たんご国こく守護しゅご・一色いっしき義よし有ゆうと争あらそっていた若狭わかさ国こく守護しゅご・武田たけだ元信もとのぶから助たすけを求もとめられ、澄きよし之これを丹後たんご国こくに派遣はけんした。政せい元もとは、澄きよし之これと澄きよし元もとに、円滑えんかつに家督かとくを継承けいしょうするため、澄きよし之これを丹波たんば国こく守護しゅごに任にんじて下向げこうさせていた。

澄きよし之これは、丹後たんご国こく宮津みやづ城しろを攻せめたが、同年どうねん9月がつ末まつになっても城しろは落おちなかった。結局けっきょく、一色いっしょく攻ぜめは成功せいこうせず、丹後たんご国賀こくか屋城やしろ（加悦かや城じょう）を攻せめていた澄きよし之これは、永えい正ただし4年ねん（1507年ねん）5月がつ28日にち、帰京ききょうした。このとき、澄きよし之これは、一色いっしき氏し被官ひかんの城じょう将すすむ・石川いしかわ直ただし経けいと共謀きょうぼうし、世上せじょうへは、城しろは陥落かんらくしたと触ふれた上うえで、軍ぐんを引ひき上あげていた（『多門院たもんいん日記にっき』）。

永えい正ただし4年ねん（1507年ねん）6月がつ23日にち、香西こうざい元長もとながの間諜かんちょう・竹田たけだ孫七まごしちによって、養父ようふ・政せい元もとが自邸じていで暗殺あんさつされた（永えい正ただしの錯乱さくらん）。翌日よくじつ24日にち、澄きよし之これや香西こうさい元長もとながらの軍勢ぐんぜいは細川ほそかわ澄きよし元もと邸やしきを攻せめ、澄きよし元もとや三好みよし之の長ながらを近江おうみ国こくに追おいやった。同年どうねん7月がつ8日にち、幕府ばくふは、澄きよし之これを細川ほそかわ家かの後嗣こうしと定さだめた。しかし、細川ほそかわ澄きよし元方もとかたは態勢たいせいを立たて直なおし、もう一人ひとりの政せい元もとの養子ようし・細川ほそかわ高だか国こくも澄きよし元方もとかたに加くわわった。

永えい正ただし4年ねん（1507年ねん）8月がつ1日にち、細川ほそかわ高だか国こく・政せい賢けん・尚なお春はるらによって、京都きょうとの自邸じていを攻せめられ、香西こうざい元長もとながや薬師寺やくしじ長ちょう忠ただしらと共ともに殺害さつがいされた。享年きょうねん19。

澄きよし之の政権せいけんは僅わずか40日にちで崩壊ほうかいしたが、澄きよし之これが支持しじされなかったのは細川ほそかわ家かの血統けっとうでは無なかったためであり、細川ほそかわ一族いちぞくの細川ほそかわ政まさし賢けんや細川ほそかわ尚しょう春はるらからも敵視てきしされていた（『宣せん胤たね卿きょう記き』『多聞たもん院いん日記にっき』『 瓦林かわらばやし政まさし頼よりゆき記き』）。

辞世じせいの歌うた

自害じがいする際さい、澄きよし之これは、実父じっぷ・九条くじょう政まさし基もとと母ははに書状しょじょうをしたため、和歌わかを詠よんだ。髪かみを少すこし添そえて、涙なみだとともに巻まき込こみ、女房にょうぼうに託たくしたと伝つたわる。

「御ごふたりより先さきだち、後生ごしょう菩提ぼだいさかさまにとぶらはれ申さるさん事じの口くちおしさよとて、おくに一いち首しゅの歌うたをあそばしたまふ」

梓弓あずさゆみ　はりて心しんは強つよけれど　引手ひきてすくなき　身みとぞなりぬる

細川ほそかわ政まさし元もと暗殺あんさつの背景はいけい

事件じけんは、澄きよし之これを新あらたな京きょう兆ちょう家いえ当主とうしゅとして擁立ようりつすることで三さん好之よしゆき長ちょうら阿波あわ国こくの勢力せいりょくを排除はいじょしたい香西こうざい元長もとなが・薬師寺やくしじ長ちょう忠ただしら京きょう兆ちょう家いえ被官ひかんが中心ちゅうしん的てきな役割やくわりを果はたしていたとされる。『両りょう将しょう記き』によると、政せい元もとの寵臣ちょうしん・薬師寺やくしじ長ちょう忠ただしと澄きよし元もとの被官ひかん・三好みよし之これ長ちょうが不和ふわであり、長ちょう忠ただしは香西こうさい元長もとながと相談そうだんし、澄きよし元もと・之これ長ちょうを除のぞこうとしたために永えい正ただしの錯乱さくらんが起おこったといい、澄きよし之の自身じしんは政せい元もとの死しと関係かんけいなく、単たんなる澄きよし元もとの対抗たいこう馬ばにすぎなかったとされる。7月25日にちには、在京ざいきょうしていた六角ろっかく氏綱うじつなが近江おうみ国こくへ帰国きこくし、京都きょうとの人々ひとびとは恐怖きょうふしたという（『多門院たもんいん日記にっき』）。『不問ふもん物語ものがたり』によれば、六角ろっかく氏しは澄きよし之これと共ともに澄きよし元もとや之これ長ちょうを討伐とうばつする手筈てはずであったが、澄きよし之これを裏切うらぎったとされる。

澄きよし之これと澄きよし元もとの一連いちれんの戦たたかいは、当初とうしょ、細川ほそかわ京きょう兆ちょう家いえの家督かとく争あらそいであると考かんがえられていた。しかし、澄きよし之これの烏帽子えぼし親おやを務つとめた細川ほそかわ政まさし賢けんや、細川ほそかわ尚しょう春はるなど、細川ほそかわ氏しの人間にんげんはみな澄きよし元方もとかたとして参戦さんせんしていることから、家督かとく争あらそいではなく、「細川ほそかわ氏しとその家臣かしんの対立たいりつ」であったと考かんがえられる。

『不問ふもん物語ものがたり』によれば、澄きよし之これの切腹せっぷくの介錯かいしゃくを務つとめた波なみ々伯はく部ぶ盛郷もりさとは、高雄たかおの尾崎おざき坊ぼうにいた自身じしんの孫まご・波なみ々伯はく部ぶ正せい盛もりに、澄きよし之これの辞世じせいの句くや、澄きよし之これは政せい元もと暗殺あんさつに加担かたんした不義ふぎの人ひとであること、澄きよし之これには京きょう兆ちょう家いえ当主とうしゅとしての器うつわがないこと、そのため、あえて澄きよし之これの「香西こうさい元長もとながの嵐山あらしやま城じょうに移動いどうしよう」という提案ていあんを断ことわり、京きょうで間接かんせつ的てきに（澄きよし元もとや之これ長ちょうの反転はんてん攻勢こうせいを利用りようして）命いのちを絶たたせようと考かんがえたことなどを伝つたえたという。

細川ほそかわ家かの養子ようしとなった背景はいけい

政せい元もとは、九条くじょう政まさし基もとと武者小路むしゃのこうじ隆光たかみつの娘むすめの子こである澄きよし之これを養子ようし（将来しょうらいの管領かんりょう）とすることで、同おなじく隆光りゅうこうの娘むすめ（円満えんまん院いん）を母ははとする足利あしかが潤じゅん童子どうじ・足利あしかが義澄よしずみとの結むすびつきを利用りようして権力けんりょくの強化きょうかに努つとめようとしたとする説せつがある。

ただし、足利茶々丸あしかがちゃちゃまるによる潤じゅん童子どうじ殺害さつがいによってこの計画けいかくが頓挫とんざしている上うえに、次つぎの話はなしから、この構想こうそう自体じたいも否定ひていされている。それは、政せい元もとが東国とうごく（越後えちご国こく）への下向げこうを望のぞんでいたものの、宿老しゅくろうたちから「子供こどもがいないのに東国とうごくへ行いって、政せい元もとが死しんでしまったら大変たいへんだ」と反対はんたいされたため、澄きよし之これが養子ようしになったというものである。実際じっさいに、澄きよし之これが養子ようしになることを記しるした文書ぶんしょが発見はっけんされており、そこには上原うえはら元秀もとひで、秋庭あきば元重もとしげ、薬師寺やくしじ元長もとなが、安富やすとみ元もと家いえ、香川かがわ元もと景けいの署名しょめいがなされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 大阪おおさか府ふ史し編集へんしゅう専門せんもん委員いいん会かい 編へん『大阪おおさか府ふ史し』 第だい4巻かん《中世ちゅうせい編へん　Ⅱ》、大阪おおさか府ふ、1981年ねん5月がつ30日にち。NDLJP:9574696。 (要よう登録とうろく)
• 長江ながえ正一しょういち『三好みよし長慶ちょうけい』（新装しんそう版ばん）吉川弘文館よしかわこうぶんかん〈人物じんぶつ叢書そうしょ〉、1989年ねん4月がつ（原著げんちょ1968年ねん）。ISBN 978-4-642-05154-5。 

関連かんれん項目こうもく

• 畿内きない・近国きんごくの戦国せんごく時代じだい

外部がいぶリンク

• 『細川ほそかわ澄きよし之これ』 - コトバンク