西遊記 : 心主夜間修藥物　君王筵上論妖邪

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《心しん主ぬし夜間やかん修おさむ藥物やくぶつ　君王くんのう筵むしろ上うえ論ろん妖邪》

1 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	話はなし表ひょう孫まご大聖たいせい同どう近侍きんじ宦官かんがん到いた於皇宮こうぐう內院，直ちょく至いたり寢ね宮門きゅうもん外立はしだて定じょう。將しょう三條金線與宦官拿入裡面，吩咐：「教きょう內宮妃ひ后きさき，或ある近侍きんじ太ふと監かん，先さき繫在聖せい躬左手腕しゅわん下か，按寸、關せき、尺しゃく三さん部ぶ上じょう，卻將線せん頭あたま從したがえ窗まど櫺兒穿ほじ出で與あずか我わが。」真個しんこ那な宦官かんがん依よ此言，請國王おう坐すわ在ざい龍りゅう床ゆか，按寸、關せき、尺せき，以金線せん一いち頭とう繫了，一いち頭とう理り出で窗まど外がい。行者ぎょうじゃ接せっ了りょう線せん頭あたま，以自己じこ右手みぎて大だい指先ゆびさき托たく著ちょ食指しょくし，看み了りょう寸すん脈みゃく；次じ將はた中指なかゆび按大指ゆび，看み了りょう關せき脈みゃく；又また將はた大指おおざす托たく定てい無名指むめいし，看み了りょう尺じゃく脈みゃく。調停ちょうてい自家じか呼吸こきゅう，分ふん定じょう四よん氣き、五ご鬱うつ、七なな表ひょう、八はち裡うら、九きゅう候こう、浮中沉、沉中浮，辨明べんめい了りょう虛實きょじつ之の端はし。又また教きょう解かい下か左手ひだりて，依よ前ぜん繫在右手みぎて腕うで下部かぶ位い。行者ぎょうじゃ即そく以左手指しゅし，一一從頭診視畢，卻將身み抖了一いち抖，把わ金線きんせん收おさむ上じょう身み來らい。厲聲高だか呼よび道どう：「陛下へいか左手ひだりて寸すん脈みゃく強きょう而緊，關せき脈みゃく濇而緩なる，尺しゃく脈みゃく芤且沉；右手みぎて寸すん脈みゃく浮而滑すべり，關せき脈みゃく遲おそ而結，尺しゃく脈みゃく數すう而牢。夫おっと左ひだり寸すん強きょう而緊者しゃ，中ちゅう虛心きょしん痛つう也；關せき濇而緩なる者しゃ，汗あせ出で肌はだ麻也まや；尺じゃく芤而沉者，小便しょうべん赤あか而大便びん帶たい血ち也。右手みぎて寸すん脈みゃく浮而滑すべり者しゃ，內結經けい閉也；關せき遲おそ而結者しゃ，宿やど食しょく留とめ飲いん也；尺じゃく數すう而牢者しゃ，煩うるさ滿まん虛きょ寒かん相しょう持じ也。診み此貴恙，是ぜ一個驚恐憂思，號ごう為ため『雙そう鳥とり失しつ群ぐん』之これ症しょう。」那な國王こくおう在ざい內聞言ごと，滿まん心しん歡喜かんき，打だ起おこり精神せいしん，高こう聲こえ應おう道どう：「指ゆび下か明白めいはく，指ゆび下か明白めいはく，果はて是ぜ此疾。請出外面がいめん用よう藥やく來らい也。」
2 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	大聖たいせい卻才緩なる步ふ出で宮みや。早はや有ゆう在ざい傍聽ぼうちょう見み的てき太ふとし監かん，已やめ先さき對たい眾報知ほうち。須臾しゅゆ，行ぎょう者しゃ出來でき，唐から僧そう即そく問とい如何いか。行者ぎょうじゃ道どう：「診み了りょう脈みゃく，如今對症たいしょう製藥せいやく哩まいる。」眾官上前うわまえ道どう：「神かみ僧そう長老ちょうろう適才てきさい說せつ『雙そう鳥とり失しつ群ぐん』之これ症しょう，何なに也？」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「有ゆう雌雄しゆう二に鳥ちょう，原はら在ざい一いち處しょ同どう飛ひ，忽ゆるがせ被ひ暴風ぼうふう驟雨しゅうう驚おどろき散ち，雌めす不ふ能見のうみ雄つよし，雄ゆう不ふ能見のみ雌めす，雌めす乃想雄ゆう，雄ゆう亦また想そう雌めす：這不是ぜ『雙そう鳥とり失しつ群ぐん』也？」眾官聞說きくならく，齊ひとし聲こえ喝采かっさい道どう：「真ま是ぜ神しん僧そう！真ま是ぜ神かみ醫い！」稱讚しょうさん不ふ已やめ。當とう有ゆう太ふとし醫い官かん問とい道どう：「病勢びょうせい已やめ看み出で矣，但ただし不知ふち用よう何なん藥やく治之はるゆき？」行者ぎょうじゃ道どう：「不ふ必執方かた，見み藥やく就要。」醫い官かん道どう：「經けい云うん：『藥くすり有ゆう八はち百ひゃく八はち味あじ，人にん有ゆう四百四病しひゃくしびょう。』病びょう不在ふざい一いち人にん之の身み，藥くすり豈あに有ゆう全ぜん用よう之の理り？如何いか見み藥やく就要？」行者ぎょうじゃ道どう：「古人こじん云うん：『藥くすり不ふ執と方かた，合ごう宜むべ而用。』故こ此全徵ちょう藥品やくひん，而隨便びん加減かげん也。」
3 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	那な醫い官かん不ふ復ふく再さい言げん，即そく出で朝ちょう門もん之の外そと，差さ本ほん衙當值之人じん，遍へん曉あかつき滿まん城生じょうのう熟じゅく藥鋪やくほ，即そく將はた藥品やくひん。每まい味あじ各かく辦三さん斤きん，送おく與あずか行者ぎょうじゃ。行者ぎょうじゃ道どう：「此間不ふ是ぜ製藥せいやく處しょ，可か將しょう諸しょ藥くすり之の數すう並製なみせい藥やく一いち應おう器き皿さら，都と送おく入會にゅうかい同館どうかん，交與我わが師弟してい二に人にん收おさむ下か。」醫い官かん聽命，即そく將はた八百八味每味三斤及藥碾、藥くすり磨みがけ、藥くすり羅ら、藥くすり乳ちち並なみ乳ちち缽、乳ちち槌づち之の類るい都と送おく至いたり館かん中ちゅう，一いち一いち交付こうふ收おさむ訖。
4 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	行者ぎょうじゃ往殿上じょう請師父ちち同どう至いたり館かん中ちゅう製藥せいやく。那な長老ちょうろう正ただし自じ起おこり身み，忽ゆるがせ見み內宮傳でん旨むね，教きょう閣下かっか留とめ住じゅう法師ほうし，同宿どうしゅく文ぶん華はな殿どの。待まち明朝みんちょう服藥ふくやく之これ後ご，病やまい痊酬謝しゃ，倒たおせ換かわ關せき文ぶん送おく行くだり。三藏さんぞう大だい驚おどろき道どう：「徒弟とてい啊，此意是ぜ留とめ我わが做當頭あたま哩まいる。若わか醫い得とく好こう，歡喜かんき起おこり送おく；若わか醫い不ふ好このみ，我わが命いのち休きゅう矣。你須仔細しさい上じょう心こころ，精せい虔けん制度せいど也。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「師父しふ放心ほうしん在ざい此受用じゅよう，老ろう孫まご自じ有ゆう醫い國之くにゆき手しゅ。」
5 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	好こう大聖たいせい，別べつ了りょう三藏さんぞう，辭じ了りょう眾臣，徑みち至いたり館かん中ちゅう。八戒はっかい迎むかい著ちょ笑わらい道どう：「師し兄けい，我わが知道ともみち你了。」行者ぎょうじゃ道どう：「你知甚麼いんも？」八戒はっかい道どう：「知ち你取經けい之の事こと不ふ果はて，欲よく作さく生涯しょうがい無む本ほん，今日きょう見み此處ここら富とみ庶，設しつらえ法要ほうよう開ひらき藥鋪やくほ哩まいる。」行者ぎょうじゃ喝かつ道どう：「莫胡說せつ，醫い好こう國王こくおう，得意とくい處しょ辭じ朝あさ走路そうろ，開ひらき甚麼いんも藥鋪やくほ？」八戒はっかい道どう：「終おわり不ふ然しか，這八百ひゃく八はち味あじ藥やく，每まい味あじ三さん斤きん，共きょう計けい二に千せん四よん百ひゃく二に十じゅう四よん斤きん，只ただ醫い一いち人にん，能のう用よう多少たしょう？不知ふち多少たしょう年代ねんだい方かた吃ども得う了りょう哩まいる。」行者ぎょうじゃ道どう：「那な裡うら用よう得とく許多きょた？他た那な太ふとし醫院いいん官かん都と是ぜ些愚盲めくら之の輩やから，所しょ以取這許多た藥品やくひん，教きょう他た沒ぼつ處しょ捉摸，不知ふち我が用よう的てき是ぜ那な幾いく味あじ，難なん識我神妙しんみょう之これ方かた也。」
6 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	正せい說せつ處しょ，只見ただみ兩個りゃんこ館かん使し當面とうめん跪下道どう：「請神僧そう老爺ろうや進しん晚ばん齋とき。」行者ぎょうじゃ道どう：「早さ間あいだ那な般待我わが，如今卻跪而請之の，何なに也？」館かん使し叩頭こうとう道どう：「老爺ろうや來らい時じ，下しも官有かんゆう眼め無む珠たま，不ふ識尊顏がお。今こん聞老爺じい大だい展てん三さん折おり之の肱ひじ，治なお我わが一いち國こく之の主おも，若わか主上しゅじょう病びょう愈いよいよ，老爺ろうや江山えやま有ゆう分ぶん，我輩わがはい皆みな臣子しんし也，禮れい當とう拜はい請。」行者ぎょうじゃ見み說せつ，欣然きんぜん登とう堂上どうじょう坐すわ；八戒はっかい、沙すな僧そう分ぶん坐すわ左右さゆう。擺上齋とき來らい，沙すな僧そう便びん問とい道どう：「師し兄けい，師父しふ在ざい那な裡うら哩まいる？」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「師父しふ被ひ國王こくおう留とめ住じゅう作さく當とう頭あたま哩まいる。只ただ待まち醫い好こう了りょう病びょう，方ぽう才ざい酬むくい謝しゃ送おく行くだり。」沙すな僧そう又また問とい：「可か有ゆう些受用じゅよう麼？」行者ぎょうじゃ道どう：「國王こくおう豈あに無む受用じゅよう？我わが來き時とき，他た已やめ有ゆう三さん個こ閣老かくろう陪侍左右さゆう，請入文ぶん華はな殿どの去さ也。」八戒はっかい道どう：「這等說せつ，還かえ是ぜ師父しふ大だい哩まいる：他た倒たおせ有ゆう閣老かくろう陪侍，我わが們只得とく兩個りゃんこ館かん使し奉たてまつ承うけたまわ。且莫管かん他た，讓ゆずる老ろう豬吃頓ひたぶる飽飯也。」兄弟きょうだい們遂自在じざい受用じゅよう一いち番ばん。
7 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	天てん色しょく已やめ晚ばん。行者ぎょうじゃ叫さけべ館かん使し：「收おさむ了りょう家か火ひ，多た辦些油ゆ蠟，我わが等ひとし到いた夜よる靜せい時じ，方ほう好こう製藥せいやく。」館かん使し果はて送おく若干じゃっかん油あぶら蠟，各かく命いのち散ち訖。
8 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	至いたり半夜はんや，天てん街がい人じん靜しずか，萬籟ばんらい無聲むせい。八戒はっかい道どう：「哥哥，製せい何なん藥やく？趕早幹事かんじ，我わが瞌睡了りょう。」行者ぎょうじゃ道どう：「你將大黃だいおう取と一いち兩りょう來らい，碾為細ほそ末まつ。」沙すな僧そう乃道：「大黃だいおう味あじ苦く，性せい寒さむ無毒むどく。其性沉而不ふ浮，其用走はし而不守もり。奪だつ諸しょ鬱うつ而無壅滯，定てい禍わざわい亂らん而致太平たいへい。名な之の曰『將軍しょうぐん』。此行藥やく耳みみ，但ただし恐おそれ久ひさ病びょう虛弱きょじゃく，不ふ可用かよう此。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「賢弟けんてい不知ふち。此藥利くずり痰たん順じゅん氣き，蕩とろけ肚中凝滯ぎょうたい之の寒かん熱ねつ。你莫管かん我が。你去取と一いち兩りょう巴豆はず，去さ殼から去さ膜まく，搥去油ゆ毒どく，碾為細ほそ末まつ來らい。」八戒はっかい道どう：「巴豆はず味あじ辛からし，性せい熱ねつ有毒ゆうどく。削そぎ堅けん積せき，蕩とろけ肺腑はいふ之の沉寒；通どおり閉塞へいそく，利水りすい穀こく之の道路どうろ。乃斬關せき奪だつ門もん之の將はた，不可ふか輕けい用よう。」行者ぎょうじゃ道どう：「賢弟けんてい，你也不知ふち。此藥破やぶ結ゆい宣せん腸ちょう，能のう理り心こころ膨水脹。快かい製せい來らい，我わが還かえ有佐ありさ使し之の味あじ輔之也。」
9 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	他た二人即時將二藥碾細道：「師し兄けい，還かえ用よう那な幾いく十じゅう味あじ？」行者ぎょうじゃ道どう：「不用ふよう了りょう。」八戒はっかい道どう：「八はち百ひゃく八はち味あじ，每まい味あじ三さん斤きん，只ただ用よう此二に兩りょう，誠まこと為ため起おこり奪だつ人ひと了りょう。」行者ぎょうじゃ將しょう一いち個こ花はな磁盞子こ，道みち：「賢弟けんてい莫講，你拿這個盞兒，將はた鍋なべ臍ほぞ灰はい刮半盞過來らい。」八戒はっかい道どう：「要よう怎的？」行者ぎょうじゃ道どう：「藥くすり內要用よう。」沙すな僧そう道どう：「小弟しょうてい不ふ曾見藥やく內用鍋なべ灰はい。」行者ぎょうじゃ道どう：「鍋なべ灰はい名めい為ため『百草もぐさ霜しも』，能のう調ちょう百ひゃく病びょう，你不知道ともみち。」那な獃子真個しんこ刮了半はん盞，又また碾細了りょう。
10 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	行者ぎょうじゃ又また將はた盞子遞與他た道みち：「你再去さ把わ我わが們的馬ば尿にょう等とう半はん盞來。」八戒はっかい道どう：「要よう他た怎的？」行者ぎょうじゃ道どう：「要よう丸藥がんやく。」沙すな僧そう又また笑わらい道どう：「哥哥，這事不ふ是ぜ耍子。馬うま尿にょう腥なまぐさ臊，如何いか入にゅう得とく藥品やくひん？我わが只見ただみ醋す糊のり為ため丸まる，陳ちん米べい糊のり為ため丸まる，煉ねり蜜みつ為ため丸まる，或ある只ただ是ぜ清水しみず為ため丸まる，那な曾見馬ば尿にょう為ため丸まる？那な東西とうざい腥なまぐさ腥なまぐさ臊臊，脾虛的てき人じん，一いち聞就吐；再さい服ふく巴豆はず、大黃だいおう，弄ろう得とく人じん上じょう吐下瀉，可か是ぜ耍子？」行者ぎょうじゃ道どう：「你不知ふち就裡。我わが那な馬ば不ふ是ぜ凡馬，他た本ほん是ぜ西海にしうみ龍りゅう身み。若わか得え他た肯去便びん溺おぼれ，憑你何なん疾やまし，服ふく之の即そく愈いよいよ。但ただし急きゅう不可ふか得とく耳みみ。」八戒はっかい聞言，真個しんこ去さ到いた邊あたり前まえ，那な馬ば斜はす伏ふく地下ちか睡ねむ哩まいる。獃子一いち頓ひたぶる腳踢起おこり，襯在肚下，等とう了りょう半はん會かい，全ぜん不ふ見み撒尿。他た跑將來しょうらい，對たい行者ぎょうじゃ說せつ：「哥啊，且莫去醫い皇帝こうてい，且快去さ醫い醫い馬ば來らい。那な亡ほろび人じん乾いぬい結ゆい了りょう，莫想尿にょう得とく出で一いち點てん兒じ。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「我わが和わ你去。」沙すな僧そう道どう：「我わが也去看み看み。」
11 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	三人都到馬邊，那な馬跳うまとび將はた起おこり來らい，口くち吐人言ごと，厲聲高だか叫さけべ道どう：「師し兄けい，你豈不知ふち？我わが本ほん是ぜ西海さいかい飛ひ龍りゅう，因いん為ため犯はん了りょう天てん條じょう，觀音かんのん菩薩ぼさつ救すくい了りょう我わが，將はた我わが鋸のこ了りょう角かく，退すさ了りょう鱗うろこ，變へん作さく馬ば，馱師父ちち往西天てん取と經けい，將はた功こう折おり罪ざい。我わが若わか過か水みず撒尿，水中すいちゅう遊ゆう魚ぎょ食しょく了りょう成なり龍りゅう；過か山やま撒尿，山中やまなか草くさ頭あたま得とく味あじ變へん作さく靈れい芝しば，仙せん僮採去さ長壽ちょうじゅ。我わが怎肯在ざい此塵俗ぞく之の處しょ輕けい拋卻也？」行者ぎょうじゃ道どう：「兄弟きょうだい謹言きんげん。此間乃西方かた國王こくおう，非ひ塵ちり俗ぞく也，亦また非ひ輕けい拋棄也。常つね言道ことみち：『眾毛攢裘。』要よう與本よもと國之くにゆき王おう治おさむ病びょう哩まいる。醫い得とく好このみ時じ，大家たいか光輝こうき；不ふ然しか，恐おそれ俱不得とく善ぜん離はなれ此地也。」那な馬ば才ざい叫さけべ聲ごえ：「等ひとし著ちょ。」你看他た往前撲なぐ了りょう一いち撲なぐ，往後蹲つくばい了りょう一いち蹲つくばい，咬得那な滿まん口くち牙きば齕支支ささえ的てき響ひびき喨，僅努出で幾いく點てん兒じ，將はた身み立りつ起おこり。八戒はっかい道どう：「這個亡ほろび人じん，就是金きん汁じる子こ，再さい撒些兒じ也罷。」那な行者ぎょうじゃ見み有ゆう少しょう半はん盞，道みち：「夠了，夠了。拿去罷やめ。」沙すな僧そう方かた才ざい歡喜かんき。
12 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	三さん人にん回かい至いたり廳ちょう上じょう，把わ前項ぜんこう藥餌やくじ攪和一いち處しょ，搓了三さん個こ大丸だいまる子こ。行者ぎょうじゃ道どう：「兄弟きょうだい，忒大了りょう。」八戒はっかい道どう：「只ただ有ゆう核かく桃もも大だい，若わか論ろん我わが吃ども，還かえ不ふ夠一いち口くち哩まいる。」遂とげ此收在ざい一いち個こ小しょう盒兒裡うら，兄弟きょうだい們連衣ころも睡ねむ下した。一夜いちや無む詞し，早はや是ぜ天てん曉あかつき。
13 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	卻說那な國王こくおう耽ふけ病やまい設しつらえ朝あさ，請唐僧そう見み了りょう，即そく命いのち眾官快かい往會同館どうかん參拜さんぱい神しん僧そう孫まご長老ちょうろう取と藥くすり去さ。
14 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	多た官かん隨ずい至いたり館かん中ちゅう，對たい行者ぎょうじゃ拜はい伏ふく於地道どう：「我わが王おう特命とくめい臣しん等とう拜領はいりょう妙みょう劑ざい。」行者ぎょうじゃ叫さけべ八はち戒取盒兒，揭開蓋ぶた子こ，遞與多た官かん。多た官かん啟けい問とい：「此藥何なん名めい？好こう見み王おう回かい話ばなし。」行者ぎょうじゃ道どう：「此名烏金からすがね丹に。」八戒二人暗中作笑道：「鍋なべ灰はい拌的，怎麼不ふ是ぜ烏金からすがね？」多た官かん又また問とい道どう：「用もちい何なん引子？」行者ぎょうじゃ道どう：「藥くすり引兒兩りょう般都下か得とく。有ゆう一般易取者，乃六物煎湯送下。」多た官かん問とい：「是ぜ何なん六ろく物ぶつ？」行者ぎょうじゃ道どう：「半はん空そら飛ひ的てき老ろう鴉からす屁へ，緊水負まけ的てき鯉こい魚ぎょ尿にょう，王おう母はは娘むすめ娘むすめ搽臉粉こ，老ろう君くん爐ろ裡うら煉丹れんたん灰はい，玉たま皇すめらぎ戴破的てき頭巾ずきん要よう三さん塊かたまり，還かえ要よう五根ごこん困こま龍りゅう鬚ひげ。六物煎湯送此藥，你王憂ゆう病びょう等とう時じ除じょ。」多た官かん聞言道どう：「此物乃世間あいだ所しょ無む者しゃ。請問那な一般いっぱん引子是ぜ何なに？」行者ぎょうじゃ道どう：「用よう無根むこん水すい送おく下した。」眾官笑わらい道どう：「這個易えき取と。」行者ぎょうじゃ道どう：「怎見得とく易えき取と？」多た官かん道どう：「我わが這裡人家じんか俗論ぞくろん：若わか用よう無根むこん水すい，將はた一いち個こ碗わん盞，到いた井邊いのべ或ある河下かわしも，舀了水すい，急轉きゅうてん步ふ，更さら不ふ落地おろち，亦また不ふ回かい頭あたま，到いた家いえ與あずか病人びょうにん吃ども藥くすり，便びん是ぜ。」行者ぎょうじゃ道どう：「井中いなか河かわ內之水すい，俱是有ゆう根ね的てき。我わが這無根むこん水すい，非ひ此之論ろん，乃是天上てんじょう落下らっか者しゃ，不ふ沾地就吃，才さい叫さけべ做無根むこん水すい。」多た官かん又また道みち：「這也容易ようい。等ひとし到いた天てん陰かげ下か雨う時じ，再さい吃ども藥くすり便びん罷やめ了りょう。」
15 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	遂とげ拜はい謝しゃ了りょう行者ぎょうじゃ，將はた藥くすり持回もちまわ獻上けんじょう。國王こくおう大喜だいぎ，即そく命いのち近侍きんじ接せっ上じょう來き，看み了りょう道どう：「此是甚麼いんも丸子まりこ？」多た官かん道どう：「神かみ僧そう說せつ是ぜ『烏金からすがね丹に』，用よう無根むこん水すい送おく下した。」國王こくおう便びん教きょう宮人みやびと取と無根むこん水すい。眾官道どう：「神かみ僧そう說せつ，無根むこん水すい不ふ是井これい、河中かわなか者しゃ，乃是天上てんじょう落下らっか不ふ沾地的てき才ざい是ぜ。」國王こくおう即そく喚當駕が官かん傳でん旨むね，教きょう請法官かん求もとめ雨う。眾官遵依出で榜不題だい。
16 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	卻說行者ぎょうじゃ在ざい會同かいどう館かん廳ちょう上じょう，叫さけべ豬八戒道：「適てき間あいだ允まこと他た天てん落之水すい，才さい可用かよう藥やく，此時急きゅう忙せわし，怎麼得とく個こ雨水あまみず？我わが看み這王倒たおせ也是個こ大賢たいけん大だい德之のりゆき君くん，我わが與あずか你助他た些兒雨下あまげ藥やく，如何いか？」八戒はっかい道どう：「怎麼樣さま助すけ？」行者ぎょうじゃ道どう：「你在我わが左邊さへん立りつ下か，做個輔星。」又また叫さけべ沙すな僧そう：「你在我わが右邊うへん立りつ下か，做個弼宿。等とう老ろう孫まご助じょ他た些無根むこん水すい兒じ。」好こう大聖たいせい，步ほ了りょう罡訣，念ねん聲ごえ咒語，早見はやみ那な正せい東上とうじょう一いち朵烏雲くも，漸近ぜんきん於頭頂上ちょうじょう。叫さけべ道どう：「大聖たいせい，東海とうかい龍王りゅうおう敖廣來見くるみ。」行者ぎょうじゃ道どう：「無事ぶじ不ふ敢捻煩はん，請你來き助じょ些無根むこん水すい與國よこく王おう下か藥やく。」龍王りゅうおう道どう：「大聖たいせい呼よび喚時，不ふ曾說用水ようすい，小しょう龍りゅう隻せき身み來らい了りょう，不ふ曾帶得とく雨う器き，亦また未み有ゆう風雲ふううん雷電らいでん，怎生降雨こうう？」行者ぎょうじゃ道どう：「如今用よう不ふ著ちょ風雲ふううん雷電らいでん，亦また不ふ須多雨う，只ただ要よう些須引藥之の水みず便びん了りょう。」龍王りゅうおう道どう：「既すんで如此，待まて我わが打だ兩個りゃんこ噴涕，吐些涎よだれ津つ溢，與あずか他た吃ども藥くすり罷やめ。」行者ぎょうじゃ大喜だいぎ道どう：「最さい好このみ，最さい好このみ。不ふ必遲疑ちぎ，趁早行事ぎょうじ。」
17 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	那な老ろう龍りゅう在ざい空中くうちゅう漸やや漸やや低下ていか烏がらす雲くも，直ちょく至いたり皇宮こうぐう之の上うえ，隱かくれ身み潛せん像ぞう，噀一いち口くち津つ唾つば，遂とげ化か作さく甘あま霖。那な滿まん朝あさ官かん齊ひとし聲こえ喝采かっさい道どう：「我わが主おも萬まん千せん之これ喜き，天てん公こう降下こうか甘あま雨う來らい也。」國王こくおう即そく傳でん旨むね，教きょう：「取と器うつわ皿さら盛もり著ちょ，不ふ拘かかわ宮みや內外及官大小だいしょう，都みやこ要かなめ等とう貯仙水すい，拯救寡人。」你看那な文武ぶんぶ多た官かん並なみ三宮六院妃嬪與三千綵女、八はち百ひゃく嬌娥，一個個擎杯托盞，舉碗持じ盤ばん，等とう接せっ甘あま雨う。那な老ろう龍りゅう在ざい半はん空そら運うん化か津つ涎よだれ，不離ふり了りょう王宮おうきゅう前後ぜんこう。將はた有ゆう一いち個こ時じ辰たつ，龍王りゅうおう辭じ了りょう大聖たいせい回かい海うみ。眾臣將しょう杯はい盂碗盞收來らい，也有やゆう等とう著ちょ一いち點てん兩りょう點者てんじゃ，也有やゆう等とう著ちょ三さん點てん五ご點てん者しゃ，也有やゆう一點いてん不ふ曾等著者ちょしゃ，共きょう合一ごういつ處しょ，約やく有ゆう三さん盞之多た，總そう獻けんじ至いたり御ご案あん。真個しんこ是ぜ異い香こう滿まん襲かさね金きん鑾殿，佳けい味あじ熏飄天子てんし庭にわ。
18 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	那な國王こくおう辭じ了りょう法師ほうし，將すすむ著ちょ烏金からすがね丹に並なみ甘あま雨う至いたり宮中きゅうちゅう，先さき吞了一丸いちがん，吃ども了りょう一いち盞甘雨う；再さい吞了一丸いちがん，又また飲いん了りょう一いち盞甘雨う；三さん次じ，三丸みつまる俱吞了りょう，三さん盞甘雨う俱送下か。不ふ多た時じ，腹中ふくちゅう作さく響ひびき，如轆轤之聲ごえ不ふ絕ぜっ。即そく取と淨きよし桶おけ，連行れんこう了りょう三さん五ご次じ。服ふく了りょう些米飲いん，攲倒在ざい龍りゅう床ゆか之の上うえ。有ゆう兩個りゃんこ妃ひ子こ將はた淨きよし桶おけ檢けん看み，說せつ不盡ふじん那な穢けがれ污痰涎よだれ，內有糯もち米飯べいはん塊かたまり一いち團だん。妃ひ子こ近きん龍りゅう床ゆか前ぜん來報らいほう：「病根びょうこん都と行あるき下か來らい也。」國王こくおう聞此言ごと，甚喜，又また進すすむ一いち次じ米飯べいはん。
19 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	少すくな頃ころ，漸やや覺さとし胸むね心こころ寬ひろし泰たい，氣き血ち調和ちょうわ，就精神せいしん抖擻，腳力強健きょうけん。下した了りょう龍りゅう床ゆか，穿ほじ上うわ朝ちょう服ふく，即そく登とう寶殿ほうでん，見み了りょう唐から僧そう，輒倒身み下か拜はい。那な長老ちょうろう忙せわし忙せわし還かえ禮れい。拜はい畢，以御手しゅ攙著，便びん教きょう閣かく下か：「快かい具ぐ簡帖，帖じょう上じょう寫うつし朕ちん『再拜さいはい頓首とんしゅ』字じ樣さま，差さ官かん奉たてまつ請法師し高だか徒と三さん位い。一いち壁かべ廂ひさし大だい開東かいとう閣かく，光ひかり祿ろく寺てら排はい宴えん酬むくい謝しゃ。」多た官かん領りょう旨むね，具ぐ簡的具ぐ簡，排はい宴えん的てき排はい宴えん，正せい是ぜ：國家こっか有ゆう倒たおせ山やま之の力ちから，霎時俱完。
20 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	卻說八戒見官投簡，喜き不ふ自じ勝かち道どう：「哥啊，果はて是ぜ好こう妙藥みょうやく。今來こんらい酬むくい謝しゃ，乃兄長ちょう之の功こう。」沙すな僧そう道どう：「二に哥說那な裡うら話ばなし，常つね言道ことみち：『一人ひとり有福ありふく，帶おび挈一屋や。』我わが們在此合藥やく，俱是有功ゆうこう之の人ひと。只管ひたすら受用じゅよう去さ，再さい休きゅう多た話はなし。」咦！你看他た弟おとうと兄けい們俱歡歡喜かんき喜き，徑みち入朝にゅうちょう來らい。
21 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	眾官接せっ引，上うえ了りょう東ひがし閣かく，早見はやみ唐から僧そう、國王こくおう、閣老かくろう，已やめ都と在ざい那な裡うら安やす排はい筵むしろ宴えん哩まいる。這行者しゃ與あずか八戒はっかい、沙すな僧そう對たい師父しふ唱了個こ喏。隨ずい後ご眾官都と至いたり。只見ただみ那な上面うわつら有ゆう四よん張ちょう素す桌面，都みやこ是ただし吃ども一いち看み十じゅう的てき筵むしろ席せき。前面ぜんめん有ゆう一いち張ちょう葷桌面めん，也是吃ども一看十的珍饈。左右さゆう有ゆう四よん五ご百ひゃく張ちょう單たん桌面，真個しんこ排はい得とく齊ひとし整せい：
Jump to dictionary		古こ云うん：「珍ちん饈百味あじ，美祿びろく千せん鍾。瓊膏酥酪，錦にしき縷肥紅べに。」寶たから妝花彩いろどり豔，果はて品ひん味香あじか濃こ。斗と糖とう龍りゅう纏まとい列れつ獅仙，餅もち錠じょう拖爐擺鳳侶。葷有豬羊雞鵝魚ぎょ鴨かも般般肉にく，素もと有ゆう蔬餚筍たけのこ芽め木耳きくらげ並なみ蘑菇。幾いく樣よう香が湯ゆ餅もち，數次すうじ透とおる糖とう酥。滑すべり軟黃粱飯，清新せいしん菰こも米まい糊のり。色色いろいろ粉こ湯ゆ香が又また辣，般般添換美び還かえ甜。君臣くんしん舉盞方かた安やす席せき，名分めいぶん品ひん級きゅう慢傳壺つぼ。
22 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	那な國王こくおう御ご手て擎杯，先さき與あずか唐から僧そう安坐あんざ。三藏さんぞう道どう：「貧ひん僧そう不ふ會かい飲酒いんしゅ。」國王こくおう道どう：「素もと酒しゅ，法師ほうし飲いん此一いち杯はい何なん如？」三藏さんぞう道どう：「酒さけ乃僧家か第だい一いち戒。」國王こくおう甚不過か意い道どう：「法師ほうし戒飲，卻以何なん物ぶつ為ため敬けい？」三藏さんぞう道どう：「頑徒三さん眾代飲いん罷やめ。」國王こくおう卻才歡喜かんき，轉てん金きん卮，遞與行者ぎょうじゃ。行者ぎょうじゃ接せっ了りょう酒しゅ，對たい眾禮畢，吃ども了りょう一いち杯はい。國王こくおう見み他た吃ども得う爽利，又また奉たてまつ一いち杯はい。行者ぎょうじゃ不ふ辭じ，又また吃ども了りょう。國王こくおう笑わらい道どう：「吃ども個こ三寶さんぼう鍾兒。」行者ぎょうじゃ不ふ辭じ，又また吃ども了りょう。國王こくおう又また叫さけべ斟上，吃ども個こ四季しき杯はい兒じ。
23 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	八戒はっかい在ざい旁つくり，見み酒しゅ不ふ到いた他ほか，忍しのべ得え他た嘓嘓嚥えん唾つば。又また見み那な國王こくおう苦く勸すすむ行者ぎょうじゃ，他た就叫將はた起おこり來らい道どう：「陛下へいか，吃ども的てき藥くすり也虧了りょう我わが，那な藥やく裡うら有馬ありま」這行者しゃ聽說，恐おそれ怕獃子こ走はし了りょう消息しょうそく，卻將手中しゅちゅう酒しゅ遞與八戒はっかい。八戒接著就吃，卻不言語げんご。國王こくおう問とい道どう：「神かみ僧そう說せつ藥やく裡うら有馬ありま，是ぜ甚麼いんも馬ば？」行者ぎょうじゃ接せっ過か口くち來らい道どう：「我わが這兄弟きょうだい是ぜ這般しゃはん口こう敞たかし，他た有ゆう個こ經驗けいけん的てき好よ方かた兒じ，他た就要說せつ與あずか人ひと。陛下へいか早さ間あいだ吃ども藥くすり，內有馬ば兜かぶと鈴すず。」國王こくおう問とい眾官道どう：「馬うま兜かぶと鈴すず是ぜ何なん品ひん味あじ？能のう醫い何なん症しょう？」時じ有ゆう太ふとし醫院いいん官かん在ざい旁つくり道どう：「主しゅ公おおやけ：
Jump to dictionary		兜かぶと鈴すず味あじ苦寒くかん無毒むどく，定てい喘消痰たん大だい有功ゆうこう。通氣つうき最さい能のう除じょ血ち蠱，補ほ虛きょ寧やすし嗽うがい又また寬ひろし中ちゅう。」
24 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	國王こくおう笑わらい道どう：「用もちい得え當とう，用よう得とく當とう。豬長老ろう再さい飲いん一いち杯はい。」獃子亦また不ふ言語げんご，卻也吃了りょう個こ三寶さんぼう鍾。國王こくおう又また遞了沙すな僧そう酒しゅ，也吃了りょう三さん杯はい，卻俱敘坐。
25 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	飲いん宴えん多おお時とき，國王こくおう又また擎大爵，奉たてまつ與あずか行者ぎょうじゃ。行者ぎょうじゃ道どう：「陛下へいか請坐。老ろう孫まご依よ巡めぐ痛飲つういん，決けつ不ふ敢推辭じ。」國王こくおう道どう：「神かみ僧そう恩おん重じゅう如山，寡人酬むくい謝しゃ不盡ふじん。好こう歹進此一巨きょ觥，朕ちん有ゆう話はなし說せつ。」行者ぎょうじゃ道どう：「有ゆう甚話說せつ了りょう，老ろう孫まご好こう飲いん。」國王こくおう道どう：「寡人有數ゆうすう載の憂う疑うたぐ病やめ，被ひ神かみ僧そう一貼靈丹打通，所しょ以就好こう了りょう。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「昨日きのう老ろう孫まご看み了りょう陛下へいか，已やめ知ち是ぜ憂う疑うたぐ之これ疾やまし，但ただし不知ふち憂う疑うたぐ何事なにごと？」國王こくおう道どう：「古人こじん云うん：『家いえ醜みにく不可ふか外がい談だん。』奈神僧そう是ぜ朕ちん恩おん主ぬし，惟おもんみ不ふ笑わらい，方ぽう可か告つげ之の。」行者ぎょうじゃ道どう：「怎敢笑話しょうわ？請說無む妨さまたげ。」國王こくおう道どう：「神かみ僧そう東ひがし來らい，不知ふち經過けいか幾いく個こ邦國ほうこく？」行者ぎょうじゃ道どう：「經けい有ゆう五ご六ろく處しょ。」又また問とい：「他國たこく之の后きさき，不知ふち是ぜ何なん稱呼しょうこ。」行者ぎょうじゃ道どう：「國王こくおう之の后きさき，都と稱しょう為ため正せい宮みや、東宮とうぐう、西宮にしのみや。」國王こくおう道どう：「寡人不ふ是ぜ這等稱呼しょうこ：將はた正せい宮みや稱しょう為ため金きむ聖きよし宮みや，東宮とうぐう稱しょう為ため玉だま聖ひじり宮みや，西宮にしのみや稱しょう為ため銀ぎん聖せい宮みや。現今げんこん只ただ有ゆう銀ぎん、玉たま二に后きさき在ざい宮みや。」行者ぎょうじゃ道どう：「金きむ聖きよし宮みや因いん何なん不在ふざい宮中きゅうちゅう？」國王こくおう滴しずく淚なみだ道どう：「不在ふざい已やめ三さん年ねん矣。」行者ぎょうじゃ道どう：「向こう那な廂ひさし去さ了りょう？」國王こくおう道どう：「三さん年ねん前まえ，正せい值端陽ひ之の節ふし，朕ちん與あずか嬪后都と在ざい御ご花園はなぞの海うみ榴亭下か解かい粽ちまき插艾，飲いん菖蒲しょうぶ雄つよし黃き酒しゅ，看み鬥龍舟ぶね。忽ゆるがせ然しか一いち陣じん風かぜ至いたる，半はん空中くうちゅう現出げんしゅつ一いち個こ妖精ようせい，自稱じしょう賽さい太ふとし歲とし，說せつ他た在ざい麒麟きりん山やま獬豸洞ほら居住きょじゅう，洞ほら中ちゅう少しょう個こ夫人ふじん，訪おとずれ得え我わが金きむ聖きよし宮生みやお得とく貌美嬌姿きょうし，要よう做個夫人ふじん，教きょう朕ちん快かい早はや送出そうしゅつ；如若三さん聲こえ不ふ獻けんじ出來でき，就要先さき吃ども寡人，後ご吃ども眾臣，將はた滿まん城じょう黎はじむ民みん盡つき皆みな吃ども絕ぜっ。那な時節じせつ，朕ちん卻憂國こく憂ゆう民みん，無む奈，將はた金きむ聖きよし宮みや推出海でうみ榴亭外がい，被ひ那な妖響一聲攝將去了。寡人為ため此著了りょう驚おどろき恐おそれ，吃ども那な粽ちまき子こ，凝滯ぎょうたい在ざい內；況きょう又また晝夜ちゅうや憂う思おもえ不ふ息いき：所以ゆえん成なり此苦疾やまし三さん年ねん。今こん得とく神しん僧そう靈れい丹に服ふく後ご，行ぎょう了りょう數すう次じ，盡つき是ぜ那な三年前積滯之物，所しょ以這會かい體からだ健けん身輕みがる，精神せいしん如舊。今日きょう之の命めいじ，皆みな是ぜ神しん僧そう所しょ賜たまもの，豈あに但ただし如泰山たいざん之の重じゅう而已乎！」
26 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	行者ぎょうじゃ聞得此言，滿まん心しん喜悅きえつ，將はた那な巨きょ觥之酒しゅ，兩りょう口くち吞之，笑わらい問とい國王こくおう曰：「陛下へいか原はら來らい是ぜ這般しゃはん驚おどろき憂ゆう。今こん遇ぐう老ろう孫まご，幸こう而獲愈いよいよ。但ただし不知ふち可か要よう金きむ聖きよし宮みや回國かいこく？」那な國王こくおう滴しずく淚なみだ道どう：「朕ちん切切せつせつ思おもえ思おもえ，無む晝ひる無む夜よる，但ただし只ただ是ぜ沒ぼつ一いち個こ能のう獲得かくとく妖精ようせい的てき，豈あに有ゆう不要ふよう他た回國かいこく之の理り？」行者ぎょうじゃ道どう：「我わが老ろう孫まご與あずか你去伏ふく妖邪，何なに如？」國王こくおう跪下道どう：「若わか救すくい得とく朕ちん后きさき，朕ちん願ねがい領りょう三さん宮みや九きゅう嬪，出城でしろ為ため民みん，將一しょういち國こく江山えやま，盡つき付づけ神かみ僧そう，讓ゆずる你為帝みかど。」八戒はっかい在ざい旁つくり，見出みだし此言，行ぎょう此禮，忍しのぶ不ふ住じゅう呵呵かか大だい笑わらい道どう：「這皇帝こうてい失しつ了りょう體たい統すべ，怎麼為ため老婆ろうば就不要よう江山えやま，跪著和尚おしょう？」行者ぎょうじゃ急きゅう上前うわまえ，將はた國王こくおう攙起道どう：「陛下へいか，那な妖精ようせい自得じとく金きむ聖きよし宮みや去さ後のち，這一向いっこう可か曾再來さいらい？」國王こくおう道どう：「他た前年ぜんねん五月節攝了金聖宮，至いたり十じゅう月がつ間あいだ，來き要よう兩個りゃんこ宮みや娥，說せつ是ぜ伏ふく侍さむらい娘むすめ娘むすめ，朕ちん即そく獻けんじ出で兩個りゃんこ；至いたり舊年きゅうねん三さん月がつ間あいだ，又また來き要よう兩個りゃんこ宮みや娥；七なな月がつ間あいだ，又また要よう去さ兩個りゃんこ；今年ことし二に月がつ裡うら，又また要よう去さ兩個りゃんこ。不知ふち到いた幾いく時じ又また要よう來らい也。」行者ぎょうじゃ道どう：「似に他た這等頻しき來き，你們可か怕他麼？」國王こくおう道どう：「寡人見み他た來らい得とく多た遭，一則かずのり懼怕，二來又恐有傷害之意。舊年きゅうねん四よん月がつ內，是ぜ朕ちん命いのち工こう起おこり了りょう一座いちざ避妖樓ろう，但ただし聞風響ひびき，知ち是ぜ他た來らい，即そく與あずか二に后きさき、九きゅう嬪入樓ろう躲避。」行者ぎょうじゃ道どう：「陛下へいか不ふ棄，可か攜老孫まご去さ看み那な避妖樓ろう一番いちばん，何なに如？」那な國王こくおう即そく將はた左手ひだりて攜著行者ぎょうじゃ出席しゅっせき。眾官一齊いっせい起おこり身み。豬八戒道：「哥哥，你不達たち禮れい。這般しゃはん御酒みき不ふ吃ども，搖ゆら席せき破やぶ坐すわ的てき，且去看み甚麼いんも哩まいる？」國王こくおう聞說きくならく，情じょう知ち八はち戒是為ため嘴くちばし，即そく命いのち當とう駕が官かん擡もたげ兩りょう張ちょう素す桌面看み酒しゅ，在ざい避妖樓ろう外がい伺候しこう。獃子卻才不ふ嚷，同どう師父しふ、沙すな僧そう笑わらい道どう：「翻こぼし席せき去さ也。」
27 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	一いち行ぎょう文武ぶんぶ官かん引導いんどう，那な國王こくおう並行へいこう者しゃ相しょう攙，穿ほじ過か皇宮こうぐう，到いた了りょう御ご花園はなぞの後ご，更さら不ふ見み樓臺ろうだい殿どの閣かく。行者ぎょうじゃ道どう：「避妖樓ろう何なん在ざい？」說せつ不ふ了りょう，只見ただみ兩個りゃんこ太ふとし監かん拿兩根ね紅べに漆うるし扛子，往那空地くうち上じょう掬きく起おこり一塊ひとかたまり四方しほう石板せきばん。國王こくおう道どう：「此間便びん是ぜ。這底下か有ゆう三さん丈たけ多おお深ふか，穵成的てき九きゅう間あいだ朝あさ殿どの。內有四よん個こ大だい缸，缸內滿まん注ちゅう清きよし油あぶら，點てん著ちょ燈火ともしび，晝夜ちゅうや不ふ息いき。寡人聽得風ふう響ひびき，就入裡うら邊べ躲避，外面がいめん著ちょ人じん蓋ぶた上じょう石板せきばん。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「那な妖精ようせい還かえ是ぜ不ふ害がい你；若わか要害ようがい你，這裡如何いか躲得？」正せい說せつ間あいだ，只見ただみ那な正南せいなん上じょう，呼よび呼よび的てき吹得風ふう響ひびき，播土揚あげ塵ちり。諕得那な多た官かん齊ひとし聲こえ報ほう怨道：「這和尚なお鹽しお醬口，講こう甚麼いんも妖精ようせい，妖精ようせい就來了りょう。」慌得那な國王こくおう丟了行者ぎょうじゃ，即そく鑽入地ち穴あな；唐から僧そう也就跟入；眾官亦また躲個乾いぬい淨きよし。
28 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	八戒はっかい、沙すな僧そう也都要よう躲，被ひ行者ぎょうじゃ左右さゆう手しゅ扯住他た兩個りゃんこ道どう：「兄弟きょうだい們不要よう怕得，我わが和わ你認他た一いち認みとめ，看み是これ個こ甚麼いんも妖精ようせい？」八戒はっかい道どう：「可か是ぜ扯淡，認みとめ他た怎的？眾官躲了，師父しふ藏ぞう了りょう，國王こくおう避了，我わが們不去さ了りょう罷やめ，衒的是ぜ那な家か世よ？」那な獃子左ひだり掙右掙，掙不得とく脫だっ手しゅ。被ひ行者ぎょうじゃ拿定多おお時とき，只見ただみ那な半はん空そら裡うら閃出一いち個こ妖精ようせい。你看他た怎生模樣もよう：
Jump to dictionary		九尺長身多惡獰，一雙環眼閃金燈。兩輪りょうりん查耳如撐扇おうぎ，四個鋼牙似插釘。鬢びん繞にょう紅毛こうもう眉まゆ豎焰，鼻はな垂たれ糟かす準じゅん孔あな開明かいめい。髭ひげ髯ひげ幾いく縷朱砂すな線せん，顴骨かんこつ崚嶒滿面まんめん青あお。兩りょう臂ひじ紅べに觔藍靛手，十條尖爪把槍擎。豹ひょう皮がわ裙子腰間ようかん繫，赤あか腳蓬頭あたま若わか鬼おに形がた。
29 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	行者ぎょうじゃ見み了りょう道どう：「沙すな僧そう，你可認みとめ得え他ほか？」沙すな僧そう道どう：「我わが又また不ふ曾與他た相識そうしき，那な裡うら認みとめ得え？」又また問とい：「八戒はっかい，你可認みとめ得え他ほか？」八戒はっかい道どう：「我わが又また不ふ曾與他た會かい茶會ちゃかい酒しゅ，又また不ふ是ぜ賓まろうど朋とも鄰里，我わが怎麼認みとめ得え他ほか？」行者ぎょうじゃ道どう：「他た卻像東嶽あずまだけ天てん齊ひとし手下てした把わ門もん的てき那な個こ醮面金きん睛鬼。」八戒はっかい道どう：「不ふ是ぜ，不ふ是ぜ。」行者ぎょうじゃ道どう：「你怎知ち他た不ふ是ぜ？」八戒はっかい道どう：「鬼おに乃陰靈れい也，一いち日にち至いたり晚ばん，交申酉とり戌亥いぬい時じ方かた出で。今日きょう還かえ在ざい巳み時じ，那な裡うら有ゆう鬼おに敢出來でき？就是鬼おに，也不會かい駕が雲くも。縱たて會かい弄ろう風ふう，也只是ぜ一いち陣じん旋風せんぷう耳みみ，有ゆう這等狂風きょうふう？或ある者もの他た就是賽さい太ふとし歲とし也。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「好こう獃子，倒たおせ也有やゆう些論頭あたま。既すんで如此說せつ，你兩個りゃんこ護持ごじ在ざい此，等ひとし老ろう孫まご去さ問とい他た個こ名號みょうごう，好こう與國よこく王おう救すくえ取ど金きむ聖きよし宮みや來朝らいちょう。」八戒はっかい道どう：「你去自じ去さ，切きり莫供出きょうしゅつ我わが們來。」行者ぎょうじゃ昂然こうぜん不ふ答こたえ，急きゅう縱たて祥さち光こう，跳とべ將しょう上じょう去さ。咦！正せい是ぜ：
Jump to dictionary		安あん邦くに先さき卻君王おう病びょう，守道もち須除愛あい惡心あくしん。
30 Jump to dictionary	心しん主ぬし夜間やかん... :	畢竟ひっきょう不知ふち此去到いた於空中ちゅう，勝敗しょうはい如何いか，怎麼擒とりこ得とく妖怪ようかい，救すくえ得え金きむ聖きよし宮みや，且聽下か回かい分解ぶんかい。

《李り卓たく吾われ先生せんせい批評ひひょう西にし游ゆう記き》

URN: ctp:xiyouji/ch69

《心しん主ぬし夜間やかん修おさむ藥物やくぶつ 君王くんのう筵むしろ上うえ論ろん妖邪》

《心しん主ぬし夜間やかん修おさむ藥物やくぶつ　君王くんのう筵むしろ上うえ論ろん妖邪》