西遊記 : 心猿妒木母　魔主計吞禪

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《心しん猿ざる妒木母はは　魔ま主計しゅけい吞禪》

1 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	話はなし說せつ那な國王こくおう早朝そうちょう文武ぶんぶ多た官かん俱執表ひょう章あきら啟けい奏そう道どう：「主しゅ公おおやけ，望もち赦臣等とう失しつ儀ぎ之の罪つみ。」國王こくおう道どう：「眾卿禮れい貌如常つね，有ゆう何なん失しつ儀ただし？」眾卿道どう：「主しゅ公おおやけ啊，不知ふち何故なぜ，臣しん等とう一夜把頭髮都沒了。」國王こくおう執と了りょう這沒頭髮とうはつ之の表ひょう，下しも龍りゅう床ゆか對たい群臣ぐんしん道どう：「果然かぜん不知ふち何故なぜ，朕ちん宮中きゅうちゅう大だい小人こども等とう，一夜也盡沒了頭髮。」君臣くんしん們都各かく汪ひろし汪ひろし滴しずく淚なみだ道どう：「從したがえ此後，再さい不ふ敢殺戮さつりく和かず尚也なおや。」王おう復ふく上じょう龍りゅう位い，眾官各かく立だて本ほん班はん。王おう又また道みち：「有事ゆうじ出で班はん來らい奏かなで，無事ぶじ捲めく簾すだれ散ち朝あさ。」只見ただみ那な武たけ班はん中ちゅう閃出巡じゅん城じょう總そう兵へい官かん，文ぶん班はん中ちゅう走出はしりで東城とうじょう兵馬へいば使し，當とう階かい叩頭こうとう道どう：「臣しん蒙こうむ聖旨せいし巡じゅん城じょう，夜來やらい獲得かくとく賊ぞく臟一櫃ひつ、白馬はくば一いち匹ひき。微ほろ臣しん不ふ敢擅專せん，請旨定てい奪だつ。」國王こくおう大喜だいぎ道どう：「連れん櫃ひつ取と來らい。」
2 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	二臣即退至本衙，點てん起おこり齊ひとし整せい軍ぐん士し，將はた櫃ひつ擡もたげ出で。三藏さんぞう在ざい內，魂たましい不ふ附ふ體たい道どう：「徒弟とてい們，這一到いた國王こくおう前まえ，如何いか理り說せつ？」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「莫嚷，我わが已やめ打點だてん停とま當とう了りょう，開ひらき櫃ひつ時じ，他た就拜我わが們為師し哩まいる。只ただ教きょう八戒不要爭競長短。」八戒はっかい道どう：「但ただし只ただ免めん殺ころせ，就是無量むりょう之の福ぶく，還かえ敢爭競きおい哩まいる。」說せつ不ふ了りょう，擡もたげ至いたり朝あさ外がい，入いれ五ご鳳おおとり樓ろう，放ひ在ざい丹に墀之下か。
3 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	二臣請國王開看，國王こくおう即そく命いのち打開だかい。方かた揭了蓋ぶた，豬八戒就忍不住往外一跳，諕得那な多た官かん膽きも戰せん，口くち不能ふのう言ごと。又また見み孫まご行者ぎょうじゃ攙出唐から僧そう，沙すな和尚おしょう搬出はんしゅつ行李こうり。八戒見總兵官牽著馬，走はし上前うわまえ，咄的一聲いっせい道どう：「馬うま是ただし我が的てき，拿過來らい。」嚇得那な官かん兒じ翻こぼし跟頭，跌倒在地ざいち。四眾俱立在階中。那な國王こくおう看み見み是ぜ四よん個こ和尚おしょう，忙せわし下しも龍りゅう床ゆか，宣せん召三さん宮みや妃ひ后きさき，下した金きん鑾寶殿どの，同どう群臣ぐんしん拜はい問とい道どう：「長老ちょうろう何なん來らい？」三藏さんぞう道どう：「是ぜ東ひがし土ど大だい唐から駕が下か差さ往西方かた天竺てんじく國大こくだい雷かみなり音おん寺てら拜はい活佛かつぶつ取と真經さねつね的てき。」國王こくおう道どう：「老師ろうし遠來えんらい，為ため何なん在ざい這櫃裡うら安やす歇？」三藏さんぞう道どう：「貧ひん僧そう知ち陛下へいか有ゆう願ねがい心こころ殺ころせ和尚おしょう，不ふ敢明投とう上うえ國こく，扮ふん俗人ぞくじん，夜よる至寶しほう方かた飯店はんてん裡うら借宿かりやど。因よし怕人識破原げん身み，故こ此在櫃ひつ中安なかやす歇。不幸ふこう被ひ賊ぞく偷出，被ひ總そう兵へい捉獲擡もたげ來らい。今こん得とく見み陛下へいか龍顏りゅうがん，所謂いわゆる撥ばち雲見くもみ日び。望もち陛下へいか赦放貧ひん僧そう，海うみ深ふか恩おん便びん也。」國王こくおう道どう：「老師ろうし是ぜ天朝てんちょう上うえ國こく高僧こうそう，朕ちん失しつ迎むかえ迓。朕ちん常つね年とし有ゆう願ねがい殺ころせ僧そう者しゃ，曾因僧そう謗そし了りょう朕ちん，朕ちん許もと天願てんがん，要よう殺ころせ一いち萬まん和尚おしょう做圓滿えんまん。不ふ期き今夜こんや歸依きえ，教きょう朕ちん等とう為ため僧そう。如今君臣くんしん后妃こうひ，髮かみ都と剃そ落了，望もち老師ろうし勿吝高だか賢けん，願ねがい為ため門下もんか。」八戒はっかい聽言，呵呵かか大だい笑わらい道どう：「既すんで要よう拜はい為ため門徒もんと，有ゆう何なん贄にえ見み之の禮れい？」國王こくおう道どう：「師し若わか肯從，願ねがい將しょう國こく中ちゅう財寶ざいほう獻上けんじょう。」行者ぎょうじゃ道どう：「莫說財寶ざいほう，我わが和尚おしょう是ぜ有ゆう道どう之の僧そう。你只把わ關せき文ぶん倒たおせ換かわ了りょう，送おく我わが們出城じょう，保ほ你皇圖ず永なが固かた，福壽ふくじゅ長ちょう臻。」那な國王こくおう聽說，即そく著ちょ光こう祿ろく寺てら大だい排はい筵むしろ宴えん。君臣くんしん合同ごうどう，拜はい歸き於一。即時そくじ倒たおせ換かわ關せき文あや，請師父ちち改號かいごう。行者ぎょうじゃ道どう：「陛下へいか『法ほう國こく』之の名めい甚好，但ただし只ただ『滅めつ』字じ不通ふつう。自じ經けい我わが過か，可か改號かいごう『欽法國こく』，管かん教きょう你海晏河清きよし千代ちよ勝まさる，風ふう調ちょう雨あめ順じゅん萬まん方ぽう安やす。」國王こくおう謝しゃ了りょう恩おん。擺整朝あさ鑾駕，送おく唐から僧そう四眾出城西去。君臣くんしん們乘善ぜん歸き真ま不ふ題だい。
4 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	卻說長老ちょうろう辭じ別べつ了りょう欽法國王こくおう，在ざい馬上まけ欣然きんぜん道どう：「悟空ごくう，此一法ほう甚善，大だい有功ゆうこう也。」沙すな僧そう道どう：「哥啊，是ぜ那な裡うら尋ひろ這許多た整容せいよう匠たくみ，連夜れんや剃そ這許多た頭あたま？」行者ぎょうじゃ把わ那な施ほどこせ變化へんか弄ろう神通じんずう的てき事こと說せつ了りょう一いち遍へん。師し徒と們都笑わらい不ふ合口あいくち。
5 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	正せい歡喜かんき處しょ，忽ゆるがせ見み一座いちざ高山こうざん阻路。唐から僧そう勒馬道どう：「徒弟とてい們，你看這面前山さきやま勢ぜい崔ちぇ巍たかし，切きり須仔細しさい。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「放心ほうしん，放心ほうしん，保ほ你無事ぶじ。」三藏さんぞう道どう：「休きゅう言ごと無事ぶじ。我わが看み那な山やま峰ほう挺てい立りつ，遠とお遠とお的てき有ゆう些兇氣き，暴雲飛出とびで，漸やや覺さとし驚おどろき惶，滿身まんしん麻木あさぎ，神かみ思おもえ不安ふあん。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「你把烏がらす巢す禪師ぜんじ的てき《多た心しん經けい》早さ已やめ忘了？」三藏さんぞう道どう：「我わが記き得う。」行者ぎょうじゃ道どう：「你雖記き得え，這有四よん句く頌子，你卻忘了哩まいる。」三藏さんぞう道どう：「那な四よん句く？」行者ぎょうじゃ道どう：
Jump to dictionary		「佛ふつ在ざい靈山れいざん莫遠求もとめ，靈山りょうぜん只ただ在ざい汝なんじ心頭しんとう。人人ひとびと有ゆう個こ靈山れいざん塔とう，好こう向むかい靈山れいざん塔下とうのした修おさむ。」
6 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	三藏さんぞう道どう：「徒弟とてい，我わが豈あに不知ふち？若わか依よ此四よん句く，千せん經けい萬まん典てん，也只是ぜ修おさむ心こころ。」行者ぎょうじゃ道どう：「不ふ消けし說せつ了りょう。心こころ淨きよし孤こ明あきら獨どく照あきら，心しん存そん萬まん境さかい皆みな清きよし。差さ錯些兒じ成なり惰懈，千せん年ねん萬まん載の不ふ成功せいこう。但ただし要よう一片いっぺん志こころざし誠まこと，雷かみなり音おん只ただ在ざい眼下がんか。似に你這般しゃはん恐懼きょうく驚おどろき惶，神かみ思おもえ不安ふあん，大道だいどう遠どお矣，雷かみなり音おん亦また遠どお矣。且莫胡えびす疑うたぐ，隨したがえ我わが去さ。」那な長老ちょうろう聞言，心神しんしん頓ひたぶる爽，萬ばん慮おもんばか皆みな休きゅう。
7 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	四よん眾一同どう前進ぜんしん。不ふ幾いく步ほ到いた於山上じょう。舉目看み時じ：
Jump to dictionary		那な山やま真ま好こう山やま，細ほそ看み色しょく班はん班はん。頂上ちょうじょう雲くも飄蕩，崖がけ前ぜん樹影じゅえい寒かん。飛ひ禽淅瀝，走はし獸しし兇頑。林はやし內松千せん榦，巒頭竹ちく幾いく竿さお。吼ほえ叫さけべ是ぜ蒼あお狼おおかみ奪だつ食しょく，咆哮ほうこう是ぜ餓かつえ虎とら爭そう餐。野猿やえん長嘯ちょうしょう尋ひろ鮮果，麋おうしか鹿しか攀よじ花上はなうえ翠みどり嵐あらし。風ふう灑灑，水みず潺潺，時じ聞幽鳥とり語ご間あいだ關せき。幾いく處しょ藤ふじ蘿牽又また扯，滿まん溪けい瑤よう草くさ雜ざつ香蘭こうらん。磷磷怪かい石せき，削そぎ削そぎ峰ほう岩がん。狐きつね狢むじな成なり群ぐん走はし，猴猿作さく隊たい頑。行くだり客きゃく正せい愁多險峻けんしゅん，奈何いかん古道ふるみち又また灣わん還かえ。
8 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	師し徒と們怯怯おびえ驚おどろき驚おどろき，正行まさゆき之これ時じ，只ただ聽得呼よび呼よび一いち陣じん風ふう起おこり。三藏さんぞう害がい怕道：「風ふう起おこり了りょう。」行者ぎょうじゃ道どう：「春はる有ゆう和風わふう，夏なつ有ゆう薰風くんぷう，秋あき有ゆう金風きんぷう，冬ふゆ有ゆう朔風さくふう。四よん時じ皆みな有風ゆうふう，風ふう起おこり怕怎的てき？」三藏さんぞう道どう：「這風來らい得とく甚急，決然けつぜん不ふ是ぜ天風てんぷう。」行者ぎょうじゃ道どう：「自じ古來こらい，風ふう從したがえ地ち起おこり，雲くも自じ山出やまで，怎麼得とく個こ天風てんぷう？」
9 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	說せつ不ふ了りょう，又また見み一いち陣じん霧きり起おこり。那な霧きり真個しんこ是ぜ：
Jump to dictionary		漠漠ばくばく連れん天てん暗くら，濛濛もうもう匝地昏。日にち色しょく全ぜん無む影かげ，鳥とり聲ごえ無む處しょ聞。宛然えんぜん如混沌こんとん，彷彿ほうふつ似に飛ひ塵ちり。不ふ見山みやま頭あたま樹じゅ，那な逢採藥やく人じん。
10 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	三藏さんぞう一發いっぱつ心しん驚おどろき道どう：「悟空ごくう，風ふう還かえ未定みてい，如何いか又また這般しゃはん霧きり起おこり？」行者ぎょうじゃ道どう：「且莫忙せわし，請師父ちち下馬げば，你兄弟きょうだい二に個こ在ざい此保守ほしゅ，等とう我わが去さ看み看み是ぜ何なん吉凶きっきょう。」
11 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	好こう大聖たいせい，把わ腰こし一いち躬，就到半はん空そら。用よう手しゅ搭在眉まゆ上じょう，圓えん睜火眼め，向こう下した觀かん之の，果はて見み那な懸かか巖いわお邊あたり坐すわ著しる一いち個こ妖精ようせい。你看他た怎生模樣もよう：
Jump to dictionary		炳炳文ぶん斑むら多た采さい豔，昂のぼる昂のぼる雄ゆう勢ぜい甚抖擻。獠牙出口でぐち如鋼鑽，利り爪つま藏ぞう蹄似玉だま鉤かぎ。金きむ眼め圓えん睛禽獸じゅう怕，銀ぎん鬚ひげ倒たおせ豎鬼神しん愁。張ちょう狂きょう哮たけ吼ほえ施ほどこせ威い猛たけし，噯霧噴風運うん智謀ちぼう。
12 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	又また見み那な左右さゆう手下てした有ゆう三さん四よん十じゅう個こ小しょう妖擺列れつ，他た在ざい那な裡うら逼法的てき噴風噯霧。行者ぎょうじゃ暗くら笑わらい道どう：「我わが師父しふ也有やゆう些兒先さき兆ちょう，他た說せつ不ふ是ぜ天風てんぷう，果然かぜん此風是ぜ個こ妖精ようせい在ざい這裡弄ろう喧やかまし兒じ哩まいる。若わか老ろう孫まご使し鐵棒てつぼう往下就打，這叫做『搗蒜打だ』，打だ便びん打だ死し了りょう，只ただ是ぜ壞了老ろう孫まご的てき名めい頭あたま。」那な行者ぎょうじゃ一生いっしょう豪傑ごうけつ，再さい不ふ曉あかつき得とく暗算あんざん計けい人ひと。他た道みち：「我わが且回去さ，照あきら顧豬八はち戒照顧，教きょう他た來らい先さき與あずか這妖精ようせい見み一いち仗。若わか是ぜ八戒はっかい有本ありもと事ごと，打倒だとう這妖，算さん了りょう造化ぞうか；若わか無む手段しゅだん，被ひ這妖拿去，等とう我わが再さい去さ救すくい他た，才さい好こう出だし名めい。他た又また平日へいじつ做作，有ゆう些躲懶ものぐさ，不ふ肯出頭しゅっとう，卻只是ぜ有ゆう些口緊，好こう吃ども東西とうざい。等ひとし我わが哄他一いち哄，看み他た怎麼說せつ？」
13 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	即時そくじ落下らっか雲くも頭あたま，到いた三藏さんぞう前まえ。三藏さんぞう問とい道どう：「悟空ごくう，風ふう霧きり處しょ吉凶きっきょう何なん如？」行者ぎょうじゃ道どう：「這會子こ明あきら淨きよし了りょう，沒ぼつ甚風霧きり。」三藏さんぞう道どう：「正せい是ぜ，覺さとし到いた退ずさ下しも些去了りょう。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「師父しふ，我わが常時じょうじ間あいだ還かえ看み得え好こう，這番卻看錯了。我わが只ただ說せつ風ふう霧きり之の中ちゅう恐おそれ有ゆう妖怪ようかい，原はら來らい不ふ是ぜ。」三藏さんぞう道どう：「是ぜ甚麼いんも？」行者ぎょうじゃ道どう：「前面ぜんめん不ふ遠とお，乃是一いち莊そう村むら。村上むらかみ人家じんか好こう善ぜん，蒸ふけ的てき白米はくまい乾飯ほしいい、白しろ麵饝饝齋僧そう哩まいる。這些霧きり，想そう是ぜ那な些人家か蒸ふけ籠かご之の氣き，也是積善せきぜん之の應おう。」八戒はっかい聽說，認みとめ了りょう真實しんじつ，扯過行者ぎょうじゃ，悄悄しょうしょう的てき道みち：「哥哥，你先吃ども了りょう他た的てき齋とき來らい的てき？」行者ぎょうじゃ道どう：「吃ども不ふ多た兒じ，因いん那な菜さい蔬太鹹了些，不ふ喜多きた吃ども。」八戒はっかい道どう：「啐！憑他怎麼鹹，我わが也盡肚吃他た一いち飽。十分じゅうぶん作さく渴，便びん回かい來らい吃水きっすい。」行者ぎょうじゃ道どう：「你要吃ども麼？」八戒はっかい道どう：「正せい是ぜ，我わが肚裡有ゆう些饑了りょう，先さき要よう去さ吃ども些兒，不知ふち如何いか？」行者ぎょうじゃ道どう：「兄弟きょうだい莫題。古書こしょ云うん：『父ちち在ざい，子し不ふ得とく自じ專せん。』師父しふ又また在ざい此，誰だれ敢先去さ？」八はち戒笑道どう：「你若不ふ言語げんご，我わが就去了りょう。」行者ぎょうじゃ道どう：「我わが不ふ言語げんご，看み你怎麼得去さ？」那な獃子吃ども嘴くちばし的てき見識けんしき偏へん有ゆう，走はし上前うわまえ，唱個大だい喏道：「師父しふ，適才てきさい師し兄けい說せつ，前村まえむら裡うら有人ゆうじん家か齋とき僧そう。你看這馬，有ゆう些要打だ攪人家か，便びん要よう草くさ要よう料りょう，卻不費ひ事ごと？幸こう如今風ふう霧きり明あきら淨きよし，你們且略坐すわ坐すわ，等とう我わが去さ尋ひろ些嫩草くさ兒じ，先さき喂喂馬ば，然しか後こう再往さいおう那な家子いえこ化か齋とき去さ罷やめ。」唐から僧そう歡喜かんき道どう：「好こう啊，你今日び卻怎肯這等とう勤つとむ謹？快かい去さ快かい來らい。」
14 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	那な獃子暗暗あんあん笑えみ著ちょ便びん走はし。行者ぎょうじゃ趕上扯住道どう：「兄弟きょうだい，他た那な裡うら齋とき僧そう，只ただ齋とき俊しゅん的てき，不ふ齋とき醜みにく的てき。」八戒はっかい道どう：「這等說せつ，又また要よう變化へんか是ぜ。」行者ぎょうじゃ道どう：「正せい是ぜ，你變變へん兒じ去さ。」好こう獃子，他た也有やゆう三さん十じゅう六ろく般變化へんか，走はし到いた山やま凹裡，捻ねじ著しる訣，念ねん動どう咒語，搖ゆら身み一變いっぺん，變へん做個矮瘦和尚おしょう。手て裡うら敲個木魚もくぎょ，口くち裡うら哼阿哼的，又また不ふ會かい念ねん經けい，只ただ哼的是ぜ「上うえ大人おとな」。
15 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	卻說那な怪物かいぶつ收おさむ風ふう斂霧，號令ごうれい群ぐん妖，在ざい於大おだい路ろ口上こうじょう，擺開一いち個こ圈けん子こ陣じん，專せん等とう行ぎょう客きゃく。這獃子こ晦みそ氣き，不ふ多た時じ，撞到當とう中ちゅう，被ひ群ぐん妖圍住じゅう，這個扯住衣服いふく，那な個こ扯著絲いと絛，推推擁よう擁よう，一齊いっせい下手へた。八戒はっかい道どう：「不要ふよう扯，等とう我わが一家いっか家か吃ども將來しょうらい。」群ぐん妖道：「和尚おしょう，你要吃ども甚的？」八戒はっかい道どう：「你們這裡齋とき僧そう，我わが來き吃ども齋とき的てき。」群ぐん妖道：「你想這裡齋とき僧そう，不知ふち我わが這裡專せん要よう吃ども僧そう。我わが們都是ぜ山中さんちゅう得道とくどう的てき妖仙，專せん要よう把わ你們和尚おしょう拿到家か裡うら，上うえ蒸ふけ籠かご蒸ふけ熟じゅく吃ども哩まいる。你倒還かえ想そう來らい吃ども齋とき。」八戒はっかい聞言，心中しんちゅうの害がい怕，才さい報ほう怨行者しゃ道どう：「這個弼馬溫あつし，其實憊懶。他た哄我說せつ是ぜ這村裡うら齋とき僧そう，這裡那な得とく村莊そんそう人家じんか？那な裡うら齋とき甚麼いんも僧そう？卻原來らい是ぜ此妖精ようせい。」那な獃子被ひ他た扯急了りょう，即そく便びん現出げんしゅつ原げん身み，腰間ようかん掣釘鈀，一いち頓ひたぶる亂らん築きずけ，築きずけ退ずさ那な些小妖。
16 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	小しょう妖急跑去報むくい與あずか老ろう妖道：「大王だいおう，禍事まがごと了りょう。」老ろう怪かい道どう：「有ゆう甚禍事まがごと？」小しょう妖道：「山やま前ぜん來らい了りょう一いち個こ和尚おしょう，且是生得しょうとく乾いぬい淨きよし。我わが說せつ拿家來けらい蒸ふけ他た吃ども，若わか吃ども不ふ了りょう，留とめ些兒防ぼう天てん陰かげ。不ふ想そう他た會かい變化へんか。」老ろう妖道：「變化へんか甚的模樣もよう？」小しょう妖道：「那な裡うら成なり個人こじん相しょう？長ちょう嘴くちばし大だい耳みみ朵，背後はいご又また有ゆう鬃。雙手そうしゅ掄一根ね釘くぎ鈀，沒頭ぼっとう沒ぼつ臉的亂らん築きずけ，諕得我わが們跑回かい來報らいほう大王だいおう也。」老ろう怪かい道どう：「莫怕，等とう我わが去さ看み。」掄著一いち條じょう鐵てつ杵きね，走はし近きん前まえ看み時じ，見み那な獃子果然かぜん醜惡しゅうあく。他た生得しょうとく：
Jump to dictionary		碓うす嘴くちばし初はつ長ちょう三さん尺しゃく零れい，獠牙觜出賽さい銀ぎん釘くぎ。一雙いっそう圓えん眼光がんこう如電じょでん，兩りょう耳みみ搧風唿唿聲ごえ。腦のう後ご鬃長排はい鐵てつ箭や，渾身こんしん皮がわ糙癩還かえ青あお。手中しゅちゅう使し件けん蹊蹺物ぶつ，九齒釘鈀個個驚。
17 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	妖精ようせい硬かた著ちょ膽きも喝かつ道どう：「你是那な裡うら來らい的てき？叫さけべ甚名字みょうじ？快かい早はや說せつ來らい，饒にょう你性命いのち。」八はち戒笑道どう：「我が的てき兒じ，你是也不認みとめ得え你豬祖宗そそう哩まいる。上前うわまえ來らい，說せつ與あずか你聽：
Jump to dictionary		巨きょ口こう獠牙神力しんりき大だい，玉たま皇すめらぎ陞我天てん蓬よもぎ帥そち。掌てのひら管かん天てん河かわ八はち萬兵まんひょう，天宮あまみや快樂かいらく多おお自在じざい。只ただ因いん酒しゅ醉よい戲おどけ宮みや娥，那な時じ就把英雄えいゆう賣うり。一嘴拱倒斗牛宮，吃ども了りょう王おう母はは靈れい芝しば菜さい。玉たま皇すめらぎ親おや打だ二に千せん鎚づち，把わ吾われ貶下三さん天界てんかい。教きょう吾われ立志りっし養やしなえ元もと神かみ，下方かほう卻又為ため妖怪ようかい。正せい在高ありだか莊そう喜き結ゆい親おや，命いのち低てい撞著孫まご兄けい在ざい。金きむ箍たが棒ぼう下か受他降くだ，低頭ていとう才ざい把わ沙門しゃもん拜はい。背せ馬ば挑包做夯工こう，前生ぜんしょう少しょう了りょう唐から僧そう債さい。鐵てつ腳天蓬よもぎ本姓ほんせい豬，法名ほうみょう喚作豬八戒はっかい。」
18 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	那な妖精ようせい聞言，喝かつ道どう：「你原來らい是ぜ唐から僧そう的てき徒弟とてい。我わが一向聞得唐僧的肉好吃，正せい要よう拿你哩まいる，你卻撞得來らい，我わが肯饒你？不要ふよう走はし，看み杵きね。」八戒はっかい道どう：「孽畜，你原來き是これ個こ染しみ博士はかせ出身しゅっしん。」妖精ようせい道どう：「我わが怎麼是ぜ染しみ博士はかせ？」八戒はっかい道どう：「不ふ是ぜ染しみ博士はかせ，怎麼會かい使し棒ぼう槌づち？」那な怪かい那な容よう分ぶん說せつ，近きん前ぜん亂打らんだ。他た兩個りゃんこ在ざい山やま凹裡，這一場じょう好こう殺ころせ：
Jump to dictionary		九きゅう齒は釘くぎ鈀，一條いちじょう鐵てつ杵きね。鈀丟解かい數すう滾たぎ狂風きょうふう，杵きね運うん機き謀はかりごと飛ひ驟雨しゅうう。一個是無名惡怪阻山程，一個是有罪天蓬扶性主。性せい正せい何なん愁怪與あずか魔ま，山高やまたか不ふ得とく金きん生土いきど。那な個こ杵きね架か猶なお如蟒出で潭，這個鈀來卻似龍りゅう離はなれ浦うら。喊聲かんせい咤吒振山川やまかわ，吆喝雄お威い驚おどろき地ち府ふ。兩個りゃんこ英雄えいゆう各かく逞たくまし能のう，捨身しゃしん卻把神通じんずう賭と。
19 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	八戒はっかい長起ながおき威風いふう，與あずか妖精ようせい廝鬥，那な怪かい喝かつ令れい小しょう妖把八戒一齊圍住不題。
20 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	卻說行者ぎょうじゃ在ざい唐から僧そう背後はいご，忽ゆるがせ失しつ聲ごえ冷笑れいしょう。沙すな僧そう道どう：「哥哥冷笑れいしょう，何なに也？」行者ぎょうじゃ道どう：「豬八戒はっかい真個しんこ獃呀，聽見說せつ齋とき僧そう，就被我わが哄去了りょう。這早晚そうばん還かえ不ふ見回みまわ來らい：若わか是ぜ一頓鈀打退妖精，你看他た得とく勝しょう而回，爭そう嚷功果はて；若わか戰せん他た不ふ過か，被ひ他た拿去，卻是我が的てき晦みそ氣き，背せ前面ぜんめん後ご，不知ふち罵ののし了りょう多少たしょう弼馬溫あつし哩まいる。悟さとる淨きよし，你休言語げんご，等とう我わが去さ看み看み。」
21 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	好こう大聖たいせい，他た也不使し長老ちょうろう知道ともみち，悄悄しょうしょう的てき腦のう後ご拔了一いち根ね毫毛，吹口仙せん氣き，叫さけべ：「變へん！」即そく變へん做本身ほんみ模樣もよう，陪著沙すな僧そう，隨ずい著ちょ長老ちょうろう。他た的てき真ま身み出で個こ神しん，跳とべ在ざい空中くうちゅう觀かん看み，但ただし見み那な獃子被ひ怪かい圍繞いじょう，釘くぎ鈀勢亂みだれ，漸やや漸すすむ的てき難なん敵てき。行者ぎょうじゃ忍にん不ふ住じゅう，按落雲くも頭あたま，厲聲高だか叫さけべ道どう：「八戒はっかい不要ふよう忙せわし，老ろう孫まご來らい了りょう。」那な獃子聽得是ぜ行者ぎょうじゃ聲音こわね，仗著勢ぜい，愈いよいよ長ちょう威風いふう，一いち頓ひたぶる鈀，向むかい前ぜん亂らん築ちく。那な妖精ようせい抵敵不ふ住じゅう，道みち：「這和尚おしょう先さき前ぜん不ふ濟すみ，這會子こ怎麼又また發起ほっき狠來？」八戒はっかい道どう：「我が的てき兒じ，不可ふか欺負我わが，我家わがや裡うら人じん來らい也。」一いち發向はっこう前まえ，沒頭ぼっとう沒ぼつ臉築去さ。那な妖精ようせい委い架か不ふ住じゅう，領りょう群ぐん妖敗陣じん去さ了りょう。行者ぎょうじゃ見み妖精ようせい敗はい去さ，他た就不曾近前まえ，撥ばち轉てん雲くも頭あたま，徑みち回かい本ほん處しょ，把わ毫毛一いち抖，收おさむ上じょう身み來らい。長老ちょうろう的てき肉眼にくがん凡胎，那な裡うら認みとめ得う。
22 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	不ふ一いち時じ，獃子得とく勝しょう，也自轉じてん來らい，累るい得とく那な粘ねば涎よだれ鼻はな涕，白しろ沫あわ生生せいせい。氣き呼よび呼よび的てき走はし將來しょうらい，叫さけべ聲ごえ：「師父しふ。」長老ちょうろう見み了りょう，驚おどろき訝いぶか道みち：「八戒はっかい，你去打だ馬草まぐさ的てき，怎麼這般しゃはん狼狽ろうばい回かい來らい？想そう是ぜ山上さんじょう人家じんか有人ゆうじん看護かんご，不ふ容よう你打草くさ麼？」獃子放下ほうか鈀，搥胸跌腳道どう：「師父しふ，莫要問とえ，說せつ起おこり來らい就活しゅうかつ活かつ羞殺人じん。」長老ちょうろう道どう：「為ため甚麼いんも羞來？」八戒はっかい道どう：「師し兄けい捉弄我が。他た先頭せんとう說せつ風ふう霧きり裡うら不ふ是ぜ妖精ようせい，沒ぼつ甚兇兆ちょう，是ぜ一いち莊そう村人むらびと家か好こう善ぜん，蒸ふけ白米はくまい乾飯ほしいい、白しろ麵饝饝齋僧そう的てき。我わが就當真しん，想そう著ちょ肚內饑ひだる了りょう，先さき去さ乞些兒じ，假かり倚打草くさ為ため名めい；豈あに知ち若干じゃっかん妖怪ようかい，把わ我わが圍かこえ了りょう，苦戰くせん了りょう這一會かい，若わか不ふ是ぜ師し兄けい的てき哭喪棒ぼう相しょう助すけ，我わが也莫想おもえ得え脫だつ羅ら網もう回かい來らい也。」行者ぎょうじゃ在ざい傍はた笑わらい道どう：「這獃子こ胡えびす說せつ。你若做了賊ぞく，就攀上じょう一いち牢ろう人じん。是ぜ我わが在ざい這裡看み著ちょ師父しふ，何なに曾側離はなれ？」長老ちょうろう道どう：「是ぜ啊，悟空ごくう不ふ曾離我が。」那な獃子跳とべ著ちょ嚷道：「師父しふ，你不曉あかつき得え，他た有ゆう替がえ身み。」長老ちょうろう道どう：「悟空ごくう，端はし的てき可か有ゆう怪かい麼？」
23 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	行者ぎょうじゃ瞞不過か，躬身笑わらい道どう：「是ぜ有ゆう個こ把わ小しょう妖兒，他た不ふ敢惹我わが們。──八戒はっかい，你過來らい，一發照顧你照顧。我わが們既保ほ師父しふ，走はし過か險峻けんしゅん山路やまじ，就似行軍こうぐん的てき一般いっぱん。」八戒はっかい道どう：「行軍こうぐん便びん怎的？」行者ぎょうじゃ道どう：「你做個こ開ひらき路ろ將軍しょうぐん，在ざい前ぜん剖路。那な妖精ようせい不ふ來き便びん罷やめ，若わか來き時とき，你與他た賭と鬥，打倒だとう妖精ようせい，算さん你的功こう果はて。」八戒量著那妖精手段與他差不多，卻說：「我わが就死在ざい他た手しゅ內也罷やめ，等とう我わが先走さきばし。」行者ぎょうじゃ笑わらい道どう：「這獃子こ先さき說せつ晦みそ氣き話ばなし，怎麼得とく長ちょう進すすむ？」八戒はっかい道どう：「哥哥，你知道どう：公子こうし登とう筵むしろ，不ふ醉よい即そく飽；壯士そうし臨陣，不死ふし帶たい傷きず。先さき說せつ句く錯話兒じ，後便こうびん有ゆう威風いふう。」行者ぎょうじゃ歡喜かんき，即そく忙せわし背せ了りょう馬ば，請師父ちち騎き上じょう，沙すな僧そう挑著行李こうり，相そう隨ずい八戒はっかい，一路いちろ入山にゅうざん不ふ題だい。
24 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	卻說那な妖精ようせい帥そち幾いく個こ敗殘はいざん的てき小しょう妖徑回かい本ほん洞ほら，高こう坐すわ在ざい那な石せき崖がけ上じょう，默默もくもく無言むごん。洞ほら中ちゅう還かえ有ゆう許多きょた看み家か的てき小しょう妖，都と上前うわまえ問とい道どう：「大王だいおう常時じょうじ出で去ざ，喜き喜き歡歡回かい來らい，今日きょう如何いか煩惱ぼんのう？」老ろう妖道：「小しょう的てき們，我わが往常出で洞ほら巡じゅん山やま，不ふ管かん那な裡うら的てき人じん與あずか獸しし，定てい撈幾いく個こ來らい家か，養やしなえ贍汝等とう。今日きょう造化ぞうか低てい，撞見一いち個こ對たい頭あたま。」小しょう妖問：「是ぜ那な個こ對たい頭あたま？」老ろう妖道：「是ぜ一いち個こ和尚おしょう，乃東土ど唐から僧そう取と經けい的てき徒弟とてい，名めい喚豬八戒はっかい。我わが被ひ他た一いち頓ひたぶる釘くぎ鈀，把わ我わが築ちく得とく敗はい下か陣じん來らい。好こう惱啊！我わが這一向いっこう，常つね聞得人じん說せつ，唐から僧そう乃十じゅう世せい修行しゅぎょう的てき羅漢らかん，有人ゆうじん吃ども他た一塊ひとかたまり肉にく，可か以延壽ことぶき長生ちょうせい。不ふ期き他た今日きょう到いた我わが山やま裡うら，正せい好こう拿住他た蒸ふけ吃ども，不知ふち他た手下てした有ゆう這等徒弟とてい。」
25 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	說せつ不ふ了りょう，班はん部ぶ叢くさむら中ちゅう閃上一いち個こ小しょう妖，對たい老ろう妖哽哽咽咽のど哭了三さん聲こえ，又また嘻嘻哈哈的てき笑わらい了りょう三さん聲こえ。老ろう妖喝道どう：「你又哭又笑わらい，何なに也？」小しょう妖跪下道げどう：「大王だいおう才ざい說せつ要よう吃ども唐から僧そう，唐から僧そう的てき肉にく不ふ中なか吃ども。」老ろう妖道：「人ひと都と說せつ吃ども他た一塊肉可以長生不老，與あずか天てん同どう壽ことぶき，怎麼說せつ他た不ふ中なか吃ども？」小しょう妖道：「若わか是ぜ中ちゅう吃ども，也到不ふ得とく這裡，別べつ處しょ妖精ようせい也都吃ども了りょう。他た手下てした有ゆう三さん個こ徒弟とてい哩まいる。」老ろう妖道：「你知那な三さん個こ？」小しょう妖道：「他た大だい徒弟とてい是ぜ孫まご行者ぎょうじゃ，三さん徒弟とてい是ぜ沙すな和尚おしょう，這個是ぜ他た二に徒弟とてい豬八戒はっかい。」老ろう妖道：「沙すな和尚おしょう比ひ豬八戒はっかい如何いか？」小しょう妖道：「也差不ふ多た兒じ。」「那な個こ孫まご行者ぎょうじゃ比ひ他た如何いか？」小しょう妖吐舌した道どう：「不ふ敢說。那な孫まご行者ぎょうじゃ神通じんずう廣大こうだい，變化へんか多端たたん。他た五百年前曾大鬧天宮，上方かみがた二に十じゅう八はち宿しゅく、九曜くよう星ほし官かん、十じゅう二に元げん辰たつ、五ご卿きょう四よん相そう、東西とうざい星ぼし斗と、南北なんぼく二に神かみ、五ご嶽たけ四よん瀆、普天ふてん神しん將はた，也不曾惹得とく他た過か，你怎敢要吃ども唐から僧そう？」老ろう妖道：「你怎麼知得ちとく他た這等詳細しょうさい？」小しょう妖道：「我わが當初とうしょ在ざい獅駝嶺みね獅駝洞ほら與那よな大王だいおう居住きょじゅう，那な大王だいおう不知ふち好こう歹，要よう吃ども唐から僧そう，被ひ孫まご行者ぎょうじゃ使し一いち條じょう金きん箍たが棒ぼう，打だ進すすむ門もん來らい，可憐かれん就打得とく犯はん了りょう骨牌こっぱい名めい，都と『斷だん么絕六ろく』。還かえ虧我有ゆう些見識けんしき，從したがえ後ご門もん走はし了りょう，來き到いた此處ここら，蒙こうむ大だい王おう收おさむ留とめ。故こ此知他た手段しゅだん。」老ろう妖聽言ごと，大だい驚おどろき失しつ色しょく。這正是ぜ「大將軍だいしょうぐん怕讖語ご」。他聞たぶん得とく自家じか人じん這等說せつ，安やす得え不ふ驚おどろき。
26 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	正せい都と在ざい悚懼之の際さい，又また一いち個こ小しょう妖上前ぜん道みち：「大王だいおう莫惱，莫怕。常つね言道ことみち：『事こと從したがえ緩なる來らい。』若わか是ぜ要よう吃ども唐から僧そう，等とう我わが定てい個こ計けい策さく拿他。」老ろう妖道：「你有何なん計けい？」小しょう妖道：「我わが有ゆう個こ分ぶん瓣べん梅花ばいか計けい。」老ろう妖道：「怎麼叫さけべ做『分ぶん瓣べん梅花ばいか計けい』？」小しょう妖道：「如今把わ洞口ほらぐち大小だいしょう群ぐん妖點將はた起おこり來らい，千せん中ちゅう選せん百ひゃく，百ひゃく中ちゅう選せん十じゅう，十じゅう中ちゅう只ただ選せん三さん個こ。須是有能ゆうのう幹みき，會かい變化へんか的てき，都と變へん做大王おう的てき模樣もよう，頂いただき大王だいおう之の盔，貫かん大王だいおう之の甲きのえ，執と大王だいおう之の杵きね，三さん處しょ埋伏まいふく。先さき著ちょ一いち個こ戰せん豬八戒はっかい，再さい著ちょ一いち個こ戰せん孫まご行者ぎょうじゃ，再さい著ちょ一いち個こ戰せん沙すな和尚おしょう：捨著三さん個こ小しょう妖，調しらべ開ひらけ他た弟おとうと兄けい三さん個こ。大王だいおう卻在半はん空そら伸しん下か拿雲手しゅ，去さ捉這唐から僧そう，就如探さがせ囊取物ぶつ，就如魚ぎょ水すい盆ぼん內捻蒼あお蠅はえ，有ゆう何なん難なん哉？」老ろう妖聞此言，滿まん心しん歡喜かんき道どう：「此計絕妙ぜつみょう，絕妙ぜつみょう！這一去さ，拿不得とく唐から僧そう便びん罷やめ；若わか是ぜ拿了唐から僧そう，決けつ不ふ輕けい你，就封你做個こ前部ぜんぶ先鋒せんぽう。」小しょう妖叩頭こうとう謝恩しゃおん，叫さけべ點てん妖怪ようかい。即そく將はた洞ほら中ちゅう大小だいしょう妖精ようせい點てん起おこり，果然かぜん選出せんしゅつ三さん個こ有能ゆうのう的てき小しょう妖，俱變做老妖，各かく執と鐵てつ杵きね，埋伏まいふく等とう待まち唐から僧そう不ふ題だい。
27 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	卻說這唐長老ちょうろう無慮むりょ無む憂ゆう，相あい隨ずい八はち戒上大路おおじ。行くだり夠多時じ，只見ただみ那な路傍ろぼう邊あたり撲なぐ落的一聲いっせい響ひびき喨，跳とべ出で一いち個こ小しょう妖，奔向前まえ邊あたり，要よう捉長老ちょうろう。孫まご行者ぎょうじゃ叫さけべ道どう：「八戒はっかい，妖精ようせい來らい了りょう，何なに不動ふどう手しゅ？」那な獃子不ふ認みとめ真ま假かり，掣釘鈀趕上じょう亂らん築ちく。那な妖精ようせい使し鐵てつ杵きね就架相しょう迎むかえ。他た兩個りゃんこ一往一來的在山坡下正然賭鬥，又また見み那な草くさ科か裡うら響ひびき一聲いっせい，又また跳とべ出で個こ怪かい來らい，就奔唐から僧そう。行者ぎょうじゃ道どう：「師父しふ，不ふ好こう了りょう，八戒はっかい的てき眼め拙つたな，放ひ那な妖精ようせい來らい拿你，且等老ろう孫まご打だ他た去さ。」急きゅう掣棒迎むかえ上前うわまえ喝かつ道どう：「那な裡うら去さ？看み棒ぼう。」那な妖精ようせい更さら不ふ打だ話ばなし，舉杵來迎らいごう他た。兩個りゃんこ在ざい草くさ坡下一いち撞一衝，正せい相しょう持じ處しょ，又また聽得山やま背後はいご呼よび的てき風ふう響ひびき，又また跳とべ出で個こ妖精ようせい來らい，徑みち奔唐僧そう。沙すな僧そう見み了りょう，大だい驚おどろき道どう：「師父しふ，大だい哥與二哥的眼都花了，把わ妖精ようせい放ひ將來しょうらい拿你了りょう。你坐在ざい馬上もうえ，等ひとし老ろう沙すな拿他去さ。」這和尚也なおや不ふ分ぶん好こう歹，即そく掣杖，對面たいめん擋住那な妖精ようせい鐵てつ杵きね，恨苦相しょう持じ，吆吆喝かつ喝かつ，亂らん嚷亂鬥，漸やや漸すすむ的てき調ちょう遠とお。那な老ろう怪かい在ざい半はん空中くうちゅう見み唐から僧そう獨坐どくざ馬ば上じょう，伸しん下か五ご爪つめ鋼こう鉤かぎ，把わ唐とう僧そう一いち把わ撾住。那な師父しふ丟了馬ば，脫だつ了りょう鐙あぶみ，被ひ妖精ようせい一陣風徑攝去了。可憐かれん！這正是ぜ：
Jump to dictionary		禪ぜん性せい遭魔難なん正せい果はて，江こう流りゅう又また遇ぐう苦く災わざわい星ぼし。
28 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	老ろう妖按下風かふう頭あたま，把わ唐とう僧そう拿到洞ほら裡うら，叫さけべ：「先鋒せんぽう。」那な定じょう計けい的てき小しょう妖上前ぜん跪倒，口くち中道ちゅうどう：「不ふ敢，不ふ敢。」老ろう妖道：「何なに出で此言？大將軍だいしょうぐん一言ひとこと既出きしゅつ，如白染しみ皂。當時とうじ說せつ拿不得とく唐から僧そう便びん罷やめ，拿了唐から僧そう，封ふう你為前部ぜんぶ先鋒せんぽう。今日きょう你果妙計みょうけい成功せいこう，豈あに可か失しつ信しん於你？你可把わ唐とう僧そう拿來，著ちょ小しょう的てき們挑水すい刷すり鍋なべ，搬柴燒しょう火ひ，把わ他た蒸ふけ一いち蒸ふけ。我わが和わ你都吃ども他た一塊ひとかたまり肉にく，以圖延壽えんじゅ長生ちょうせい也。」先鋒せんぽう道どう：「大王だいおう，且不可ふか吃ども。」老ろう怪かい道どう：「既すんで拿來，怎麼不可ふか吃ども？」先鋒せんぽう道どう：「大王だいおう吃ども了りょう他た不ふ打だ緊，豬八戒也做得人情にんじょう，沙すな和かず尚也なおや做得人情にんじょう，但ただし恐おそれ孫まご行者ぎょうじゃ那な主ぬし子こ刮毒。他た若わか曉あかつき得とく是ぜ我わが們吃了りょう，他た也不來らい和わ我わが們廝打だ，他た只ただ把わ那な金きん箍たが棒ぼう往山腰こし裡うら一いち搠，搠個窟くつ窿，連山れんざん都と掬きく倒たおせ了りょう，我わが們安身み之の處しょ也無之の矣。」老ろう怪かい道どう：「先鋒せんぽう，憑你有ゆう何なん高見こうけん？」先鋒せんぽう道どう：「依よ著しる我わが，把わ唐とう僧そう送おく在ざい後こう園えん，綁在樹じゅ上じょう，兩りょう三日不要與他飯吃：一則圖他裡面乾淨；二則等他三人不來門前尋找，打だ聽得他た們回去さ了りょう，我わが們卻把わ他た拿出來でき，自じ自在じざい在ざい的てき受用じゅよう，卻不是ぜ好こう？」老ろう怪かい笑わらい道どう：「正せい是ぜ，正せい是ぜ，先鋒せんぽう說得せっとく有理ゆうり。」一聲いっせい號令ごうれい，把わ唐とう僧そう拿入後ご園えん，一條繩綁在樹上，眾小妖都去さ前面ぜんめん聽候。
29 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	你看那な長老ちょうろう苦く捱著繩なわ纏まとい索さく綁，緊縛きんばく牢ろう拴，止とめ不ふ住じゅう腮邊流りゅう淚なみだ，叫さけべ道どう：「徒弟とてい呀，你們在ざい那な山中さんちゅう擒とりこ怪かい，甚路裡うら趕妖？我わが被ひ潑魔捉來，此處ここら受災，何なん日にち相しょう會かい？痛つう殺ころせ我わが也！」正せい自じ兩りょう淚なみだ交流こうりゅう，只見ただみ對面たいめん樹じゅ上じょう有人ゆうじん叫さけべ道どう：「長老ちょうろう，你也進しん來らい了りょう？」長老ちょうろう正せい了りょう性せい道どう：「你是何人なんにん？」那な人道じんどう：「我わが是ぜ本山中もとやまなか的てき樵きこり子こ，被ひ那な山主やまぬし前日ぜんじつ拿來，綁在此間，今いま已やめ三さん日にち，算さん計けい要よう吃ども我わが哩まいる。」長老ちょうろう滴しずく淚なみだ道どう：「樵きこり夫おっと啊，你死只ただ是ぜ一身いっしん，無む甚掛礙，我わが卻死得とく不ふ甚乾淨きよし。」樵きこり子道しどう：「長老ちょうろう，你是個こ出家しゅっけ人じん，上うえ無む父母ちちはは，下した無む妻子さいし，死し便びん死し了りょう，有ゆう甚麼いんも不ふ乾いぬい淨きよし？」長老ちょうろう道どう：「我わが本ほん是ぜ東ひがし土ど往西天てん取と經へ去ざ的てき，奉たてまつ唐から朝あさ太ふと宗そう皇帝こうてい御ご旨むね拜はい活佛かつぶつ，取と真經さねつね，要よう超ちょう度ど那な幽冥ゆうめい無主むしゅ的てき孤こ魂たましい。今こん若わか喪も了りょう性せい命いのち，可か不ふ盼殺那な君王くんのう，孤こ負ふ那な臣子しんし？那な枉死城じょう中ちゅう，無限むげん的てき冤魂，卻不大だい失しつ所望しょもう，永世えいせい不ふ得とく超ちょう生せい，一場いちじょう功こう果はて，盡つき化か作風さくふう塵ちり，這卻怎麼得とく乾いぬい淨きよし也？」樵きこり子こ聞言，眼中がんちゅう墮淚道どう：「長老ちょうろう，你死也只如此，我わが死し又また更さら傷きず情じょう。我わが自じ幼よう失しつ父ちち，與あずか母はは鰥居，更さら無む家業かぎょう，止とめ靠もたれ著ちょ打だ柴しば為ため生せい。老母ろうぼ今年ことし八はち十じゅう三さん歲さい，只ただ我わが一人ひとり奉たてまつ養よう。倘若身み喪も，誰だれ與あずか他た埋うめ屍かばね送おく老ろう？苦く哉，苦く哉！痛つう殺ころせ我わが也。」長老ちょうろう聞言，放ひ聲こえ大だい哭道：「可憐かれん，可憐かれん！山人さんじん尚ひさし有ゆう思おもえ親しん意い，空そら教きょう貧ひん僧そう會かい念ねん經けい。事こと君くん事ごと親おや，皆みな同どう一理いちり；你為親おや恩おん，我わが為ため君恩くんおん。」正せい是ぜ那な：
Jump to dictionary		流ながれ淚なみだ眼め觀かん流りゅう淚なみだ眼め，斷腸だんちょう人じん送おく斷腸だんちょう人じん。
30 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	且不言ふげん三藏さんぞう身み遭困苦く。卻說孫まご行者ぎょうじゃ在ざい草くさ坡下戰たたかえ退ずさ小しょう妖，急きゅう回かい來らい路傍ろぼう邊あたり，不ふ見み了りょう師父しふ，止とめ存そん白馬はくば、行くだり囊。慌得他た牽馬挑擔，向山むかいやま頭あたま找尋。咦！正せい是ぜ那な：
Jump to dictionary		有難ありがた的てき江え流りゅう專せん遇ぐう難なん，降魔ごうま的てき大聖たいせい亦また遭魔。
31 Jump to dictionary	心しん猿ざる妒木... :	畢竟ひっきょう不知ふち尋ひろ找師父ちち下落げらく如何いか，且聽下か回かい分解ぶんかい。

《李り卓たく吾われ先生せんせい批評ひひょう西にし游ゆう記き》

URN: ctp:xiyouji/ch85

《心しん猿ざる妒木母はは 魔ま主計しゅけい吞禪》

《心しん猿ざる妒木母はは　魔ま主計しゅけい吞禪》