西遊記 : 寇員外喜待高僧　唐長老不貪富貴

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《寇員外喜とき待まち高僧こうそう　唐から長老ちょうろう不ふ貪むさぼ富貴ふうき》

1 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	色色いろいろ原げん無色むしょく，空空くうくう亦また非ひ空そら。靜せい喧やかまし語ご默だま本來ほんらい同どう，夢ゆめ裡うら何なん勞ろう說せつ夢ゆめ。有用ゆうよう用よう中ちゅう無用むよう，無む功こう功こう裡うら施ほどこせ功こう。還かえ如果熟じゅく自然しぜん紅べに，莫問如何いか修おさむ種しゅ。
2 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	話はなし表ひょう唐から僧そう師し眾，使つかい法力ほうりき阻住那な布ぬの金きん寺僧じそう。僧そう見み黑くろ風ふう過か處しょ，不ふ見み他た師し徒と，以為活佛かつぶつ臨凡，磕頭而回不ふ題だい。
3 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	他た師し徒と們西行ぎょう，正せい是ぜ春はる盡つき夏なつ初はつ時節じせつ：
Jump to dictionary		清和せいわ天氣てんき爽，池沼ちしょう芰荷生せい。梅うめ逐雨餘あまり熟じゅく，麥むぎ隨ずい風ふう裡うら成なり。草香くさか花落はなおち處しょ，鶯うぐいす老ろう柳やなぎ枝えだ輕けい。江こう燕つばめ攜雛習，山やま雞哺子こ鳴な。斗と南みなみ當とう日永ひなが，萬物ばんぶつ顯あらわ光明こうみょう。
4 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	說せつ不盡ふじん那な朝餐ちょうさん暮くれ宿やど，轉てん澗尋波は。在ざい那な平安へいあん路上ろじょう，行ぎょう經けい半月はんつき。前ぜん邊あたり又また見み一いち城垣しろがき相近すけちか。三藏さんぞう問とい道どう：「徒弟とてい，此又是ぜ甚麼いんも去さ處しょ？」行者ぎょうじゃ道どう：「不知ふち，不知ふち。」八はち戒笑道どう：「這路是ぜ你行過か的てき，怎說不知ふち？卻是又また有ゆう些兒蹺蹊，故意こい推不認みとめ得え，捉弄我わが們哩。」行者ぎょうじゃ道どう：「這獃子こ全ぜん不ふ察理。這路雖是走はし過か幾いく遍へん，那な時じ只ただ在ざい九きゅう霄空裡うら，駕が雲くも而來，駕が雲くも而去，何なに曾落在ざい此地？事こと不ふ關心かんしん，查他做甚？此所以ゆえん不知ふち。卻有甚蹺蹊，又また捉弄你也？」
5 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	說話せつわ間あいだ，不覺ふかく已やめ至いたり邊べ前まえ。三藏さんぞう下馬げば，過か吊橋つりばし，徑みち入門にゅうもん裡うら長ちょう街がい上じょう，只見ただみ廊下ろうか坐すわ著しる兩個りゃんこ老ろう兒じ敘話。三藏さんぞう叫さけべ：「徒弟とてい，你們在ざい那な街がい心裡しんり站住，低てい著ちょ頭あたま，不要ふよう放肆ほうし。等ひとし我わが去さ那な廊下ろうか，問もん個こ地方ちほう。」行者ぎょうじゃ果はて依よ言げん立りつ住じゅう。長老ちょうろう近ちか前ぜん合掌がっしょう，叫さけべ聲ごえ：「老ろう施主せしゅ，貧ひん僧そう問とい訊了。」那な二老正在那裡閑講閑論，說せつ甚麼いんも興きょう衰おとろえ得失とくしつ，誰だれ聖せい誰だれ賢けん，當時とうじ的てき英雄えいゆう事業じぎょう，而今安在あんざい，誠まこと可か謂いい大だい嘆息たんそく。忽ゆるがせ聽得道どう聲問こえとい訊，隨ずい答禮とうれい道どう：「長老ちょうろう有ゆう何なん話わ說せつ？」三藏さんぞう道どう：「貧ひん僧そう乃遠方かた來らい拜はい佛祖ぶっそ的てき，適てき到いた寶たから方かた，不知ふち是ぜ甚地名めい。哪裡有向ゆうこう善ぜん的てき人家じんか，化か齋とき一いち頓とみ？」老ろう者しゃ道どう：「我わが敝處是ぜ銅どう臺うてな府ふ。府ふ後ご有ゆう一いち縣けん，叫さけべ做地靈れい縣けん。長老ちょうろう若わか要よう吃ども齋とき，不ふ須募化か，過か此牌坊ぼう，南北なんぼく街がい坐すわ西向にしむき東ひがし的てき，有ゆう一個虎坐門樓，乃是寇員外がい家か，他た門前もんぜん有ゆう個こ『萬まん僧そう不ふ阻』之の牌ぱい。似に你這遠方えんぽう僧そう，盡つき著ちょ受用じゅよう。去さ！去さ！去さ！莫打斷だん我わが們的話頭わとう。」三藏さんぞう謝しゃ了りょう。轉身てんしん對たい行者ぎょうじゃ道どう：「此處ここら乃銅臺うてな府ふ地ち靈れい縣けん。那な二に老ろう道みち：『過か此牌坊ぼう南北なんぼく街がい，向東むかいひがし虎とら坐すわ門もん樓ろう，有ゆう個こ寇員外がい家か，他た門前もんぜん有ゆう個こ「萬まん僧そう不ふ阻」之の牌ぱい。』教きょう我わが到いた他家たけ去さ吃ども齋とき哩まいる。」沙すな僧そう道どう：「西方せいほう乃佛家か之の地ち，真個しんこ有ゆう齋とき僧そう的てき。此間既すんで是ぜ府縣ふけん，不ふ必照驗けん關せき文ぶん，我わが們去化か些齋吃ども了りょう，就好走路そうろ。」
6 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	長老ちょうろう與三よそう人じん緩なる步ふ長ちょう街がい，又また惹得那な市し口こう裡うら人じん都と驚おどろき驚おどろき恐恐きょうきょう，猜猜疑さいぎ疑うたぐ的てき，圍繞いじょう爭そう看み他た們相貌そうぼう。長老ちょうろう吩咐閉口へいこう，只ただ教きょう：「莫放肆ほうし，莫放肆ほうし。」三さん人にん果はて低てい著ちょ頭あたま，不ふ敢仰視し。轉うたて過か拐角，果はて見み一條南いちじょうみなみ北大ほくだい街がい。
7 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	正行まさゆき時じ，見み一個虎坐門樓，門もん裡うら邊べ影かげ壁かべ上じょう掛かけ著ちょ一いち面めん大だい牌ぱい，書しょ著ちょ「萬まん僧そう不ふ阻」四よん字じ。三藏さんぞう道どう：「西方にしかた佛ふつ地ち，賢者けんじゃ愚者ぐしゃ，俱無詐偽さぎ。那な二に老ろう說せつ時じ，我わが猶なお不信ふしん，至いたり此果如其言ごと。」八戒はっかい村野むらの，就要進しん去さ。行者ぎょうじゃ道どう：「獃子且住，待まち有人ゆうじん出來でき，問もん及何如，方ほう好よしみ進しん去さ。」沙すな僧そう道どう：「大だい哥說得せっとく有理ゆうり，恐こわ一時いちじ不ふ分ぶん內外，惹施主ぬし煩惱ぼんのう。」在ざい門口かどぐち歇下馬匹ばひつ、行李こうり。
8 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	須臾しゅゆ間あいだ，有ゆう個こ蒼あお頭あたま出來でき，提ひさげ著ちょ一いち把わ秤ばかり、一いち隻せき籃兒，猛然もうぜん看み見み，慌的丟了，倒たおせ跑進去さ報道ほうどう：「主しゅ公おおやけ，外面がいめん有ゆう四個異樣僧家來也！」那な員外いんがい拄著拐，正せい在天ざいてん井中いなか閑走，口くち裡うら不ふ住じゅう的てき念佛ねんぶつ，一いち聞報道ほうどう，就丟了りょう拐，出來でき迎接げいせつ。見み他た四よん眾，也不怕醜惡あく，只ただ叫さけべ：「請進！請進！」三藏謙謙遜遜，一同いちどう都と入いれ。轉うたて過か一いち條じょう巷ちまた子こ，員外いんがい引路，至いたり一座いちざ房ぼう裡うら，說せつ道どう：「此上手じょうず房ぼう宇，乃管待まち老爺ろうや們的佛堂ぶつどう、經堂きょうどう、齋とき堂どう。下手へた的てき，是ぜ我わが弟子でし老ろう小しょう居住きょじゅう。」三藏さんぞう稱讚しょうさん不ふ已やめ。隨したがえ取ど袈裟けさ穿ほじ了りょう拜はい佛ふつ，舉步登とう堂どう觀かん看み，但ただし見み那な：
Jump to dictionary		香こう雲くも靉靆，燭しょく焰光輝こうき。滿堂まんどう中ちゅう錦にしき簇むらが花はな攢，四下裡金鋪彩絢。朱しゅ紅くれない架か高だか掛かけ紫むらさき金きん鐘かね，彩あや漆うるし檠對設しつらえ花はな腔鼓。幾いく對たい旛繡成なり八はち寶たから，千尊佛盡戧黃金。古銅こどう爐ろ，古銅こどう瓶びん；雕漆桌，雕漆盒。古銅こどう爐ろ內，常常つねづね不斷ふだん沉檀；古銅こどう瓶びん中ちゅう，每每まいまい蓮花れんげ現げん彩いろどり。雕漆桌上五ご雲くも鮮，雕漆盒中香が瓣べん積せき。玻璃はり盞，淨水じょうすい澄きよし清しん；琉璃燈とう，香油こうゆ明あきら亮あきら。一聲いっせい金きむ磬かおる，響ひびき韻いん虛むなし徐じょ。真個しんこ是ぜ紅べに塵ちり不ふ到いた賽さい珍ちん樓ろう，家いえ奉たてまつ佛堂ぶつどう欺上剎。
9 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	長老ちょうろう淨きよし了りょう手しゅ，拈ひね了りょう香が，叩頭こうとう拜はい畢，卻轉回てんかい與あずか員外いんがい行ぎょう禮れい。員外いんがい道どう：「且住，請到經堂きょうどう中ちゅう相しょう見み。」又また見み那な：
Jump to dictionary		方かた臺だい豎櫃，玉たま匣くしげ金きん函はこ。方かた臺だい豎櫃，堆積たいせき著ちょ無數むすう經文きょうもん；玉だま匣くしげ金きん函はこ，收おさむ貯著許多きょた簡札。彩いろどり漆うるし桌上，有ゆう紙し墨すみ筆硯ひっけん，都みやこ是ただし些精精緻せいち緻的文ぶん房ぼう；椒はじかみ粉こ屏へい前まえ，有ゆう書畫しょが琴きん棋，盡つき是ぜ些妙妙みょう玄げん玄げん的てき真ま趣おもむき。放ひ一口輕玉浮金之仙磬，掛かけ一柄披風披月之龍髯。清きよし氣き令れい人じん神氣しんき爽，齋とき心しん自覺じかく道心どうしん閑。
10 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	長老ちょうろう到いた此，正せい欲よく行ぎょう禮れい，那な員外いんがい又また攙住道どう：「請寬佛ふつ衣ころも。」三藏さんぞう脫だつ了りょう袈裟けさ。才ざい與あずか長老ちょうろう見み了りょう。又また請行者しゃ三さん人見ひとみ了りょう。又また叫さけべ把わ馬ば喂了，行ぎょう李り安在あんざい廊下ろうか，方ぽう問とい起居ききょ。三藏さんぞう道どう：「貧ひん僧そう是ぜ東ひがし土ど大だい唐から欽差詣まい寶たから方かた謁靈山見やまみ佛祖ぶっそ求もとめ真經さねつね者しゃ。聞知ぶんち尊みこと府ふ敬けい僧そう，故こ此拜見はいけん，求もとめ一いち齋とき就行。」員外いんがい面めん生せい喜色きしょく，笑わらい吟ぎん吟ぎん的てき道みち：「弟子でし賤名寇洪，字じ大寬だいかん，虛きょ度ど六ろく十じゅう四よん歲さい。自じ四よん十じゅう歲さい上じょう，許もと齋とき萬まん僧そう，才さい做圓滿えんまん。今いま已やめ齋とき了りょう二に十じゅう四よん年ねん，有ゆう一簿齋僧的帳目。連日れんじつ無事ぶじ，把わ齋とき過か的てき僧そう名めい算さん一いち算さん，已やめ齋とき過か九きゅう千せん九きゅう百ひゃく九きゅう十じゅう六ろく員いん，止とめ少しょう四よん眾，不ふ得とく圓滿えんまん。今日きょう可か可か的てき天てん降くだ老師ろうし四よん位い，圓滿えんまん萬まん僧そう之の數かず。請留うけどめ尊みこと諱いみな，好こう歹寬住じゅう月餘げつよ，待まち做了圓滿えんまん，弟子でし著ちょ轎馬送おく老師ろうし上山かみのやま。此間到いた靈山れいざん只ただ有ゆう八はち百ひゃく里さと路ろ，苦く不ふ遠どお也。」三藏さんぞう聞言，十分じゅうぶん歡喜かんき，都と就權且應承うけたまわ不ふ題だい。
11 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	他た那な幾いく個こ大小だいしょう家か僮，往宅裡うら搬柴打水うちみず，取と米べい麵蔬菜そさい，整せい治ち齋とき供きょう，忽ゆるがせ驚おどろき動員どういん外がい媽媽，問もん道どう：「是ぜ哪裡來らい的てき僧そう，這等上じょう緊？」僮僕道どう：「才ざい有ゆう四よん位い高僧こうそう，爹爹問とい他た起居ききょ，他た說せつ是ぜ東ひがし土ど大だい唐から皇帝こうてい差さ來らい的てき，往靈山れいざん拜はい佛ふつ爺じい爺じい。到いた我わが們這裡うら，不知ふち有ゆう多少たしょう路程ろてい。爹爹說せつ是ぜ天てん降くだ的てき，吩咐我わが們快整せい齋とき，供養くよう他た也。」那な老ろう嫗おうな聽說也喜，叫さけべ丫鬟：「取と衣服いふく來らい我わが穿ほじ，我わが也去看み看み。」僮僕道どう：「奶奶，只ただ一いち位い看み得え，那な三さん位い看み不ふ得え，形容けいよう醜みにく得え很哩。」老ろう嫗おうな道どう：「汝なんじ等とう不知ふち，但ただし形容けいよう醜みにく陋，古こ怪かい清きよし奇き，必是天人てんにん下界げかい。快かい先さき去さ報ほう你爹爹知道どう。」那な僮僕跑至經堂きょうどう，對たい員外いんがい道どう：「奶奶來らい了りょう，要よう拜見はいけん東ひがし土ど老爺ろうや哩まいる。」三藏さんぞう聽見，即そく起おこり身み下座げざ。說せつ不ふ了りょう，老ろう嫗おうな已やめ至いたり堂前どうまえ。舉目見み唐から僧そう相貌そうぼう軒昂けんこう，丰姿英えい偉えら。轉てん面めん見み行者ぎょうじゃ三さん人にん模樣もよう非凡ひぼん，雖知他た是ぜ天人てんにん下界げかい，卻也有ゆう幾いく分ふん悚懼，朝あさ上じょう跪拜きはい。三藏急急還禮道：「有ゆう勞ろう菩薩ぼさつ錯敬。」老ろう嫗おうな問とい員いん外道げどう：「四よん位い師父しふ，怎不並なみ坐すわ？」八戒はっかい掬きく著ちょ嘴くちばし道どう：「我わが三さん個こ是ぜ徒弟とてい。」噫！他た這一聲ごえ，就如深山みやま虎とら嘯，那な媽媽一發いっぱつ害がい怕。
12 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	正せい說せつ處しょ，又また見み一いち個こ家か僮來報道ほうどう：「兩個りゃんこ叔叔也來了りょう。」三藏さんぞう急きゅう轉身てんしん看み時じ，原はら來らい是ぜ兩個りゃんこ少年しょうねん秀才しゅうさい。那な秀才しゅうさい走はし上うわ經堂きょうどう，對たい長老ちょうろう倒たおせ身み下か拜はい。慌得三藏急便還禮。員外いんがい上前うわまえ扯住道どう：「這是我わが兩個りゃんこ小兒しょうに，喚名寇梁、寇棟，在ざい書房しょぼう裡うら讀書どくしょ方かた回かい，來き吃ども午うま飯めし，知ち老師ろうし下降かこう，故こ來らい拜はい也。」三藏さんぞう喜き道どう：「賢哉けんや，賢哉けんや！正せい是ぜ：欲よく高だか門もん第だい須為善ぜん，要よう好こう兒こ孫まご在ざい讀書どくしょ。」二に秀才しゅうさい啟上けいじょう父親ちちおや道どう：「這老爺じい是ぜ哪裡來らい的てき？」員外いんがい笑わらい道どう：「來らい路みち遠とお哩まいる，南みなみ贍部洲しゅう東ひがし土ど大だい唐から皇帝こうてい欽差到いた靈山れいざん拜はい佛祖ぶっそ爺じい爺じい取と經けい的てき。」秀才しゅうさい道どう：「我わが看み《事こと林はやし廣ひろ記き》上じょう，蓋ぶた天下でんか只ただ有ゆう四よん大部たいぶ洲しゅう。我わが們這裡うら叫さけべ做西牛うし賀が洲しゅう，還かえ有ゆう個こ東ひがし勝しょう神洲しんしゅう。想そう南みなみ贍部洲しま至いたる此，不知ふち走はし了りょう多少たしょう年代ねんだい？」三藏さんぞう笑わらい道どう：「貧ひん僧そう在ざい路みち，耽ふけ閣かく的てき日子にっし多た，行ぎょう的てき日子にっし少しょう。常つね遭毒魔ま狠怪，萬まん苦く千せん辛からし，甚虧我わが三さん個こ徒弟とてい保護ほご。共とも計けい一いち十じゅう四よん遍へん寒さむ暑あつ，方ぽう得とく至寶しほう方かた。」秀才しゅうさい聞言，稱しょう獎不盡ふじん道どう：「真ま是ぜ神しん僧そう！真ま是ぜ神しん僧そう！」
13 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	說せつ未み畢，又また有ゆう個こ小しょう的てき來らい請道：「齋とき筵むしろ已やめ擺，請老爺じい進しん齋とき。」員外いんがい著ちょ媽媽與兒じ子こ轉宅てんたく，他た卻陪四眾進齋堂吃齋。那な裡うら鋪しき設しつらえ的てき齊ひとし整せい，但ただし見み：
Jump to dictionary		金きむ漆うるし桌案，黑くろ漆うるし交椅。前面ぜんめん是ぜ五ご色しょく高だか果はて，俱巧匠たくみ新裝しんそう成なり的てき時樣じよう；第だい二に行ぎょう五ご盤ばん小しょう菜さい；第だい三さん行ぎょう五ご碟水果はて；第だい四よん行ぎょう五ご大盤おおばん閑食。般般甜美，件けん件けん馨かおる香が。素もと湯ゆ米飯べいはん，蒸ふけ饅頭まんじゅう，辣辣爨爨熱ねつ騰あが騰あが，盡つき皆みな可か口こう，真ま足あし充たかし腸ちょう。七なな八個僮僕往來奔奉，四よん五ご個こ庖丁ぼうちょう不ふ住じゅう手しゅ。
14 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	你看那な上じょう湯ゆ的てき上じょう湯ゆ，添飯的てき添飯，一いち往一來らい，真如しんにょ流星りゅうせい趕月。這豬八戒はっかい一口ひとくち一いち碗わん，就是風ふう捲めく殘ざん雲くも。師し徒と們盡受用じゅよう了りょう一いち頓とみ。長老ちょうろう起おこり身み，對たい員外いんがい謝しゃ了りょう齋とき，就欲走路そうろ。那な員外いんがい攔住道どう：「老師ろうし，放心ほうしん住じゅう幾いく日にち兒じ。常つね言道ことみち：『起おこり頭あたま容易ようい結ゆい梢こずえ難なん。』只ただ等とう我わが做過了りょう圓滿えんまん，方ぽう敢送程ほど。」三さん藏見くらみ他心たしん誠意せいい懇こん，沒ぼつ奈何いかん住じゅう了りょう。
15 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	早さ經過けいか五ご七なな遍へん朝夕あさゆう，那な員外いんがい才ざい請了本ほん處しょ應おう佛ふつ僧そう二に十じゅう四よん員いん，辦做圓滿えんまん道場どうじょう。眾僧們寫作さく有ゆう三さん四よん日にち，選定せんてい良辰りょうしん，開ひらき啟けい佛事ぶつじ。他た那な裡うら與あずか大だい唐とう的てき世情せじょう一般いっぱん，卻倒也：
Jump to dictionary		大だい揚あげ旛，鋪しき設しつらえ金きむ容ひろし；齊ひとし秉燭，燒香しょうこう供養くよう。擂す鼓こ敲鐃，吹笙捻ねじ管かん。雲くも鑼兒，橫笛よこぶえ音おと清きよし，也都是ぜ尺じゃく工こう字じ樣さま。打だ一いち回かい，吹一趟，朗ろう言げん齊ひとし語ご開ひらき經藏きょうぞう。先安さきやす土地とち，次じ請神將しょう。發はつ了りょう文書ぶんしょ，拜はい了りょう佛像ぶつぞう。談だん一部いちぶ《孔雀くじゃく經けい》，句く句く消しょう災わざわい障さわ；點てん一いち架か藥師くすし燈とう，焰焰輝光てるみつ亮あきら。拜はい水すい懺，解かい冤愆；諷《華嚴けごん》，除じょ誹謗ひぼう。三さん乘じょう妙法みょうほう甚精勤せいきん，一いち二に沙門しゃもん皆みな一いち樣よう。
16 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	如此做了三さん晝夜ちゅうや，道場どうじょう已やめ畢。唐から僧そう想そう著ちょ雷かみなり音おん，一心いっしん要よう去さ，又また相あい辭じ謝しゃ。員外いんがい道どう：「老師ろうし辭じ別べつ甚急，想そう是ぜ連日れんじつ佛事ぶつじ冗忙，多た致簡慢，有ゆう見み怪かい之の意い？」三藏さんぞう道どう：「深ふか擾尊府ふ，不知ふち何なん以為報むくい，怎敢言げん怪かい？但ただし只ただ當時とうじ聖きよし君くん送おく我わが出で關せき，問もん幾いく時じ可か回かい，我わが就誤答こたえ三さん年ねん可か回かい。不ふ期き在ざい路みち耽ふけ閣かく，今いま已やめ十じゅう四よん年ねん矣。取と經けい未知みち有無うむ，及回又また得とく十じゅう二に三さん年ねん，豈あに不ふ違背いはい聖旨せいし？罪つみ何なん可か當とう？望もち老ろう員外いんがい讓ゆずる貧ひん僧そう前まえ去さ，待まち取得しゅとく經けい回かい，再さい造みやつこ府ふ久住くじゅう些時，有ゆう何なん不可ふか？」
17 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	八戒はっかい忍しのぶ不ふ住じゅう，高こう叫さけべ道どう：「師父しふ忒也不ふ從したがえ人じん願ねがい，不ふ近きん人情にんじょう。老ろう員外いんがい大家たいか巨富きょふ，許もと下か這等齋とき僧そう之の願ねがい，今いま已やめ圓滿えんまん，又また況きょう留とめ得とく至誠しせい，須住年ねん把わ，也不妨さまたげ事ごと，只管ひたすら要よう去さ怎的？放ひ了りょう這等現げん成なり好こう齋とき不ふ吃ども，卻往人家じんか化か募つの。前頭まえがしら有ゆう你甚老爺ろうや、老ろう娘むすめ家か哩まいる？」長老ちょうろう咄的喝かつ了りょう一聲いっせい道どう：「你這夯貨，只ただ知し好こう吃ども，更さら不ふ管かん回向えこう之の因いん，正せい是ぜ那な槽そう裡うら吃ども食しょく，胃い裡うら擦こす癢的畜生ちくしょう。汝なんじ等とう既すんで要よう貪むさぼ此嗔痴ち，明日あした等ひとし我わが自家じか去さ罷やめ。」行者ぎょうじゃ見み師父しふ變へん了りょう臉，即そく揪住八戒はっかい，著ちょ頭打あたまうち一いち頓ひたぶる拳けん，罵ののし道みち：「獃子不知ふち好こう歹，惹得師父しふ連れん我わが們都怪かい了りょう。」沙すな僧そう笑わらい道どう：「打だ得とく好こう，打だ得とく好このみ。只ただ這等不ふ說話せつわ還かえ惹人嫌いや，且又插嘴。」那な獃子氣き呼よび呼よび的てき立だて在ざい傍はた邊あたり，再さい不ふ敢言。員外いんがい見み他た師し徒と們生惱，只ただ得とく滿面まんめん陪笑道どう：「老師ろうし莫焦燥しょうそう，今日きょう且少寬容かんよう。待まち明日あした我わが辦些旗鼓きこ，請幾いく個こ鄰里親戚しんせき，送おく你們起おこり程ほど。」
18 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	正せい講こう處しょ，那な老ろう嫗おうな又また出來でき道どう：「老ろう師父しふ，既すんで蒙こうむ到いた舍しゃ，不ふ必苦辭じ。今いま到いた幾いく日にち了りょう？」三藏さんぞう道どう：「已やめ半月はんつき矣。」老ろう嫗おうな道どう：「這半月はんつき算ざん我わが員外いんがい的てき功德くどく。老身ろうしん也有やゆう些針線せん錢ぜに兒じ，也願齋とき老ろう師父しふ半月はんつき。」說せつ不ふ了りょう，寇棟兄弟きょうだい又また出來でき道どう：「四よん位い老爺ろうや，家父かふ齋とき僧そう二に十じゅう餘よ年ねん，更さら不ふ曾遇著ちょ好こう人ひと。今こん幸こう圓滿えんまん，四よん位い下降かこう，誠まこと然しか是ぜ蓬よもぎ蓽生輝てる。學生がくせい年ねん幼よう，不知ふち因果いんが，常つね聞得有ゆう云うん：『公おおやけ修おさむ公おおやけ得え，婆ばば修おさむ婆ばば得え，不ふ修おさむ不ふ得とく。』我わが家父かふ、家母かぼ各かく欲よく獻けんじ芹せり者しゃ，正せい是ぜ各かく求もとめ得え些因果いんが，何なに必苦辭じ？就是愚ぐ兄弟きょうだい，也省得とく有ゆう些束修おさむ錢ぜに兒じ，也指望もち供養くよう老爺ろうや半月はんつき，方ぽう才ざい送おく行くだり。」三藏さんぞう道どう：「令れい堂どう老ろう菩薩ぼさつ盛もり情じょう，已やめ不ふ敢領，怎麼又また承うけたまわ賢かしこ昆こん玉たま厚あつ愛あい？決けつ不ふ敢領。今朝けさ定てい要よう起おこり身み，萬まん勿見罪ざい。不ふ然しか，久ひさ違たがえ欽限，罪つみ不ふ容よう誅矣。」那な老ろう嫗おうな與あずか二子見他執一不住，便びん生起せいき惱來道どう：「好意こうい留とめ他た，他た這等固執こしつ要よう去さ。要よう去さ便びん就去了りょう罷やめ，只管ひたすら勞ろう叨甚麼いんも？」母子ぼし遂とげ抽身進しん去さ。
19 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	八戒はっかい忍しのぶ不ふ住じゅう口こう，又また對たい唐とう僧そう道どう：「師父しふ，不要ふよう拿過了りょう班はん兒じ。常つね言道ことみち：『留とめ得とく在ざい，落得怪かい。』我わが們且住じゅう一いち個月かげつ兒じ，了りょう了りょう他た母子ぼし的てき願ねがい心こころ也罷了りょう，只管ひたすら忙せわし怎的？」唐から僧そう又また咄了一聲いっせい，那な獃子就自家か把わ嘴くちばし打だ了りょう兩りょう下道げどう：「啐啐啐！說せつ道どう莫多話ばなし，又また做聲了りょう！」行者ぎょうじゃ與あずか沙すな僧そう赥赥的てき笑わらい在ざい一いち邊へん。唐から僧そう又また怪かい行者ぎょうじゃ道どう：「你笑甚麼いんも？」即そく捻ねじ訣，要よう念ねん緊箍兒じ咒。慌得個こ行者ぎょうじゃ跪下道どう：「師父しふ，我わが不ふ曾笑，我わが不ふ曾笑。千せん萬まん莫念，莫念。」
20 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	員外いんがい又また見み他た師し徒と們漸生せい煩惱ぼんのう，再さい也不敢苦留とめ，只ただ叫さけべ：「老師ろうし不ふ必吵鬧，準じゅん於明早はや送おく行くだり。」遂とげ此出了りょう經堂きょうどう，吩咐書しょ辦，寫うつし了りょう百ひゃく十じゅう個こ簡帖兒じ，邀請鄰里親戚しんせき，明あきら早さ奉送ほうそう唐から朝あさ老師ろうし西行さいぎょう。一壁廂又叫庖人安排餞行的筵宴；一壁廂又叫管辦的做二十對彩旗，覓一いち班はん吹鼓手しゅ樂人がくじん，南みなみ來らい寺てら裡うら請一いち班はん和尚おしょう，東岳あずまだけ觀かん裡うら請一いち班はん道士どうし，限げん明日あした巳み時じ俱要整齊せいせい。眾執事しつじ領りょう命めいじ去ざ訖。
21 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	不ふ多た時じ，天てん又また晚ばん了りょう。吃ども了りょう晚ばん齋とき，各かく歸き寢ね處しょ。但ただし見み：
Jump to dictionary		幾いく點てん歸かえり鴉からす過か別べつ村むら，樓ろう頭あたま鐘鼓しょうこ遠どお相聞そうもん。六ろく街がい三さん市し人煙じんえん靜せい，萬まん戶こ千せん門燈もんとう火ひ昏。月つき皎こう風かぜ清きよし花はな弄ろう影かげ，銀河ぎんが慘むご淡あわ映うつ星辰せいしん。子規しき啼處更さら深ふか矣，天籟てんらい無聲むせい大地だいち鈞ひとし。
22 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	當夜とうや三さん四よん更さら天氣てんき，各かく管かん事ごと的てき家か僮盡皆みな早さ起おこり，買かい辦各項かくこう物件ぶっけん。你看那な辦筵席せき的てき，廚上慌忙；置おけ彩いろどり旗はた的てき，堂前どうまえ吵鬧；請僧道どう的てき，兩りょう腳奔波は；叫さけべ鼓こ樂らく的てき，一身いっしん急きゅう縱たて；送おく簡帖的てき，東ひがし走はし西にし跑；備轎馬ば的てき，上うえ呼よび下か應おう。這半夜よる，直ちょく嚷至天明てんめい，將はた巳み時じ前後ぜんこう，各項かくこう俱完，也只是ぜ有ゆう錢ぜに不ふ過か。
23 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	卻表唐から僧そう師し徒と們早起おこり，又また有ゆう那な一いち班はん人じん供奉ぐぶ。長老ちょうろう吩咐收拾しゅうしゅう行李こうり，扣備馬匹ばひつ。獃子聽說要よう走はし，又また努つとむ嘴くちばし胖ゆたか唇くちびる，唧唧噥噥，只ただ得とく將はた衣ころも缽收拾しゅうしゅう，找出高だか肩かた擔子。沙すな僧そう刷すり洗あらい馬匹ばひつ，套起鞍くら轡くつわ伺候しこう。行者ぎょうじゃ將しょう九環杖遞在師父手裡，他た將しょう通關つうかん文ぶん牒的引袋兒じ掛かけ在ざい胸むね前まえ，只ただ是ぜ一齊いっせい要よう走はし。員外いんがい又また都と請至後ご面めん大だい廠しょう廳ちょう內，那な裡うら面めん又また鋪しき設しつらえ了りょう筵むしろ宴えん，比ひ齋とき堂どう中ちゅう相しょう待まち的てき更さら是ぜ不同ふどう。但ただし見み那な：
Jump to dictionary		簾すだれ幕まく高だか掛かけ，屏へい圍かこえ四よん繞にょう。正中せいちゅう間あいだ掛かけ一幅壽山福海之圖，兩りょう壁かべ廂ひさし列れつ四よん軸じく春夏秋冬しゅんかしゅうとう之の景けい。龍文たつふみ鼎かなえ內香飄靄，鵲かささぎ尾お爐ろ中ちゅう瑞氣ずいき生せい。看み盤ばん簇むらが彩いろどり，寶たから妝花色色いろいろ鮮明せんめい；排はい桌堆金きん，獅仙糖とう齊ひとし齊ひとし擺列。階かい前ぜん鼓舞こぶ按宮商しょう，堂上どうじょう果はて餚鋪錦にしき繡。素もと湯ゆ素もと飯めし甚清奇き，香こう酒しゅ香が茶ちゃ多美たみ艷つや。雖然是ぜ百姓ひゃくしょう之の家いえ，卻不亞あ王侯おうこう之の宅たく。只ただ聽得一いち片へん歡聲かんせい，真個しんこ也驚天動地きょうてんどうち。
24 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	長老ちょうろう正ただし與あずか員外いんがい作さく禮れい，只見ただみ家か僮來報らいほう：「客きゃく俱到了りょう。」卻是那な請來しょうらい的てき左ひだり鄰右舍しゃ、妻つま弟おとうと姨兄、姐あね夫おっと妹いもうと丈たけ，又また有ゆう那な些同道どうどう的てき齋とき公こう，念佛ねんぶつ的てき善ぜん友とも，一齊いっせい都と向むこう長老ちょうろう禮拜れいはい。拜はい畢，各かく各かく敘坐。只見ただみ堂どう下面かめん鼓こ瑟吹笙しょう，堂上どうじょう邊べ絃歌げんか酒しゅ讌うたげ。這一いち席せき盛宴せいえん，八戒はっかい留とめ心しん，對たい沙すな僧そう道どう：「兄弟きょうだい，放ひ懷なつけ放ひ量りょう吃ども些兒，離はなれ了りょう寇家，再さい沒ぼつ這好豐ゆたか盛もり的てき東西とうざい了りょう。」沙すな僧そう笑わらい道どう：「二に哥說哪裡話ばなし，常つね言道ことみち：『珍ちん饈百味あじ，一いち飽便休きゅう。』只ただ有ゆう私わたし房ぼう路ろ，哪有私わたし房ぼう肚？」八戒はっかい道どう：「你也忒不濟ずみ，不ふ濟すみ。我わが這一頓盡飽吃了，就是三日也急忙不餓。」行者ぎょうじゃ聽見道どう：「獃子，莫脹破やぶ了りょう肚子，如今要よう走路そうろ哩まいる。」
25 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	說せつ不ふ了りょう，日にち將はた中ちゅう矣。長老ちょうろう在ざい上うえ舉箸，念ねん《謁齋經けい》。八戒はっかい慌了，拿過添飯來らい，一口ひとくち一いち碗わん，又また丟夠有ゆう五ご六ろく碗わん，把わ那な饅頭まんじゅう、兒こ、餅もち子こ、燒しょう果はて，沒ぼつ好こう沒ぼつ歹的滿滿まんまん籠こめ了りょう兩りょう袖そで，才さい跟師父ちち起おこり身み。長老ちょうろう謝しゃ了りょう員外いんがい，又また謝しゃ了りょう眾人，一同いちどう出で門もん。你看那な門外もんがい擺著彩いろどり旗はた寶たから蓋ぶた、鼓手こしゅ樂人がくじん，又また見み那な兩りょう班はん僧そう道方みちかた來らい。員外いんがい笑わらい道どう：「列れつ位い來らい遲おそ，老師ろうし去さ急きゅう，不ふ及奉齋とき，俟回來らい謝しゃ罷やめ。」眾等讓ゆずる出で道路どうろ，擡もたげ轎的擡もたげ轎，騎馬きば的てき騎馬きば，步行ほこう的てき步行ほこう，都みやこ讓ゆずる長老ちょうろう四よん眾前行ぎょう。只ただ聞得鼓こ樂らく諠天，旗はた旛蔽日び，人煙じんえん湊みなと集しゅう，車馬しゃば駢填，都と來らい看み寇員外がい迎むかえ送おく唐から僧そう。這一場じょう富貴ふうき，真ま賽さい過か珠たま圍かこえ翠みどり繞にょう，誠まこと不ふ亞あ錦にしき帳ちょう藏ぞう春はる。那な一いち班はん僧そう，打だ一いち套佛曲きょく；那な一いち班はん道どう，吹一道いちどう玄げん音おん。俱送出府しゅっぷ城じょう之の外そと，行ぎょう至いたり十じゅう里さと長ちょう亭てい，又また設しつらえ著ちょ簞食壺つぼ漿，擎杯把わ盞，相あい飲いん而別。那な員外いんがい猶なお不ふ忍にん捨，噙著淚なみだ道どう：「老師ろうし取と經けい回かい來らい，是ぜ必到舍しゃ再さい住じゅう幾いく日にち，以了我わが寇洪之の心しん。」三藏さんぞう感かん之の不盡ふじん，謝しゃ之の無む已やめ道どう：「我わが若わか到いた靈山れいざん，得とく見み佛祖ぶっそ，首しゅ表ひょう員外いんがい之の大德だいとく。回かい時じ定てい踵かかと門もん叩謝叩謝。」說せつ說話せつわ兒じ，不覺ふかく的てき又また有ゆう二に三さん里さと路ろ，長老ちょうろう懇切こんせつ拜辭はいじ。那な員外いんがい又また放ひ聲こえ大だい哭而轉てん。這正是ぜ：
Jump to dictionary		有ゆう願ねがい齋とき僧そう歸き妙みょう覺さとし，無緣むえん得とく見み佛ふつ如來にょらい。
26 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	且不說せつ寇員外がい送おく至いたり十じゅう里さと長ちょう亭てい，同どう眾回家か。卻說他た師し徒と四よん眾，行ぎょう有ゆう四よん五ご十じゅう里り之の地ち，天てん色しょく將はた晚ばん。長老ちょうろう道どう：「天てん晚ばん了りょう，何方どなた借宿かりやど？」八戒はっかい挑著擔，努つとむ著ちょ嘴くちばし道どう：「放ひ了りょう現げん成なり茶飯ちゃめし不ふ吃ども，清涼せいりょう瓦屋かわらや不ふ住じゅう，卻要走はし甚麼いんも路ろ，像ぞう搶喪撞魂的てき。如今天てん晚ばん，倘下起おこり雨う來らい，卻如之の何なに？」三藏さんぞう罵ののし道みち：「潑孽畜，又また來報らいほう怨了。常つね言道ことみち：『長安ながやす雖好，不ふ是ぜ久ひさ戀こい之の家いえ。』待まち我わが們有緣えん拜はい了りょう佛祖ぶっそ，取得しゅとく真經さねつね，那な時じ回轉かいてん大だい唐とう，奏そう過か主しゅ公おおやけ，將はた那な御ご廚裡飯めし，憑你吃上じょう幾いく年ねん，脹死你這孽畜，教きょう你做個こ飽鬼。」那な獃子哈哈的てき暗くら笑わらい，不ふ敢復言ごと。
27 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	行者ぎょうじゃ舉目遙はるか觀かん，只見ただみ大だい路傍ろぼう有ゆう幾いく間あいだ房ぼう宇，急きゅう請師父ちち道どう：「那な裡うら安やす歇，那な裡うら安やす歇。」長老ちょうろう至いたり前まえ，見み是ぜ一座倒塌的牌坊，坊ぼう上じょう有ゆう一いち舊きゅう匾，匾上有ゆう落顏色しょく積せき塵ちり的てき四よん個こ大字だいじ，乃「華はな光行みつゆき院いん」。長老ちょうろう下か了りょう馬道うまみち：「華はな光ひかり菩薩ぼさつ是ぜ火ひ焰五光こう佛ふつ的てき徒弟とてい，因いん剿除毒どく火ひ鬼王おにお，降くだ了りょう職しょく，化か做五顯あらわ靈れい官かん。此間必有廟びょう祝しゅく。」遂とげ一齊いっせい進しん去さ，但ただし見み廊ろう房ぼう俱倒，不ふ見み人影ひとかげ。欲よく抽身而出，不ふ期き天上てんじょう黑雲くろくも蓋ぶた頂いただき，大雨おおあめ淋漓りんり。沒ぼつ奈何いかん，卻在那な破やぶ房ぼう之の下した，揀遮得とく風雨ふうう處しょ，將はた身み躲避。密密みつみつ寂寂せきせき，不ふ敢高聲ごえ，恐こわ有ゆう妖邪知覺ちかく。坐すわ的てき坐すわ，站的站，苦く捱了一夜いちや未み睡ねむ。咦！真個しんこ是ぜ：
Jump to dictionary		泰やすし極ごく還かえ生なま否ひ，樂らく處しょ又また逢悲。
28 Jump to dictionary	寇員外喜とき... :	畢竟ひっきょう不知ふち天てん曉あかつき向こう前まえ去さ還かえ是これ如何いか，且聽下か回かい分解ぶんかい。

《李り卓たく吾われ先生せんせい批評ひひょう西にし游ゆう記き》

URN: ctp:xiyouji/ch96

《寇員外喜とき待まち高僧こうそう 唐から長老ちょうろう不ふ貪むさぼ富貴ふうき》

《寇員外喜とき待まち高僧こうそう　唐から長老ちょうろう不ふ貪むさぼ富貴ふうき》