紀きの川かわ

紀きの川かわ
和歌山わかやま市しJR阪和線はんわせん車窓しゃそうから
水系すいけい	一級いっきゅう水系すいけい 紀きの川かわ
種別しゅべつ	一級いっきゅう河川かせん
延長えんちょう	135 km
平均へいきん流量りゅうりょう	37.4 m³/s （船戸ふなと観測かんそく所しょ 2002年ねん）
流域りゅういき面積めんせき	1,660 km²
水源すいげん	大台おおだいヶ原ばら（奈良なら県けん）
水源すいげんの標高ひょうこう	1,695 m
河口かこう・合流ごうりゅう先さき	紀伊きい水道すいどう（和歌山わかやま県けん）
流域りゅういき	日本にっぽん 奈良なら県けん・和歌山わかやま県けん

紀きの川かわ（きのかわ）は、奈良なら県けんから和歌山わかやま県けんへと流ながれ紀伊きい水道すいどうに注そそぐ一級いっきゅう水系すいけいの本流ほんりゅう。河川かせん名めいは「紀伊きい国こく」に由来ゆらいする。

奈良なら県内けんないでは奈良なら県けん南部なんぶの地名ちめい「吉野よしの」に因ちなみ「吉野川よしのがわ（よしのがわ）」と呼よばれるが、河川かせん名めいを案内あんないする標識ひょうしきなどには水系すいけい名めいである「紀きの川かわ（きのかわ）」が併記へいきされる（例れい：「よしのがわ（きのかわ）」）。地図ちずや橋はしの銘板めいばんには吉野川よしのがわと記しるされる。そのほかに「木き御ご川かわ」「紀伊きい御ご川かわ」とも呼よばれる。

地理ちり

吉野山よしのやまの周辺しゅうへん
奈良なら県けん吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち橋屋はしやで撮影さつえい

吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち椿つばき橋きょう（北緯ほくい34度ど23分ふん07.86秒びょう 東経とうけい135度ど48分ふん23.49秒びょう）より東ひがしを見みる

奈良なら県けんと三重みえ県けんの県境けんきょうに跨またがり全国ぜんこく的てきにも有数ゆうすうな多雨たう地帯ちたいとして知しられている大台おおだいヶ原ばらを源流げんりゅうとし、「吉野川よしのがわ」として紀伊きい山地さんちを北西ほくせいへと流ながれる。上うえ流域りゅういきには渓流けいりゅう区間くかんが連続れんぞくしており、発電はつでん所しょの取水しゅすい・放水ほうすいや支流しりゅうの流入りゅうにゅうなどによって流量りゅうりょうの変動へんどうが大おおきい。吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち付近ふきんで高見川たかみがわと合流ごうりゅうすると流ながれを西にしに変かえ、和歌山わかやま県けんに入はいると名前なまえを「紀きの川かわ」に変かえる。橋本はしもと市し付近ふきんからは中央ちゅうおう構造こうぞう線せんの南側みなみがわに沿そって西にしへと流ながれるが、橋本はしもと市しから紀きの川かわ市し東部とうぶまで付近ふきんでは河岸かわぎし段丘だんきゅうを形成けいせいする。以下いか河口かこう部ぶまで南北なんぼく4キロメートルほどの細長ほそながい扇状地せんじょうち（三角州さんかくす）が広ひろがり、和歌山わかやま市しで紀伊きい水道すいどうに注そそぐ。

下しも流域りゅういきの紀州きしゅう大橋おおはし付近ふきん、和歌山わかやま市し小豆島しょうどしまと田屋たやにまたがる地域ちいきに「中州なかす」と呼よばれる輪中わじゅうが形成けいせいされている。この輪中わじゅう堤つつみがいつごろ作つくられたものかは分わかっていないが、江戸えど時代じだいにはすでにこの地域ちいきに10軒けん弱じゃくの農家のうかがあり、1889年ねん（明治めいじ22年ねん）の紀きの川かわの大だい洪水こうずいでは輪中わじゅう堤つつみによって被害ひがいを免まぬかれたことが分わかっている。なお、1960年ねん（昭和しょうわ35年ねん）にこの地域ちいきで銅鐸どうたくが出土しゅつどしている。

本ほん流域りゅういきの自治体じちたい

奈良なら県けん（吉野川よしのがわ）

吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら、吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち、吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち、吉野よしの郡ぐん下市しもいち町まち、五條ごじょう市し

和歌山わかやま県けん（紀きの川かわ）

橋本はしもと市し、伊都いと郡ぐん九度山くどやま町まち、伊都いと郡ぐんかつらぎ町まち、紀きの川かわ市し※、岩出いわで市し、和歌山わかやま市し

※2005年ねん（平成へいせい17年ねん）11月7日にちに和歌山わかやま県けんの那賀なか郡ぐん打田うちだ町まち、粉河こかわ町まち、那賀なか町まち、桃山ももやま町まち、貴志川きしがわ町まちが合併がっぺいして成立せいりつした「紀きの川かわ市し」の市し名めいは、この河川かせんが由来ゆらいとなった。

紀きの川かわ開発かいはつ史し

日本にっぽん有数ゆうすうの多雨たう地帯ちたいである大台おおだいヶ原ばらを水源すいげんとする紀きの川かわは、夏季かき（6月がつ～9月がつ）に集中しゅうちゅうする降雨こうう分布ぶんぷを示しめす。従したがって梅雨つゆ時期じきや台風たいふうの際さいには容易よういに氾濫はんらんを繰くり返かえす河川かせんであった。河口かこうの沖積ちゅうせき平野へいやである和歌山平野わかやまへいやでは河かわ道どうが度々どど変遷へんせんする状況じょうきょうであったが、豊富ほうふな水量すいりょうは慢性まんせい的てきな水不足みずぶそくにあえぐ奈良盆地ならぼんちの人間にんげんにとって魅力みりょく的てきであった。

1400年代ねんだいの地震じしん・津波つなみによって砂丘さきゅうが破壊はかいされたことにより、紀きの川かわは和歌浦わかうらへ注そそいでいた河かわ道どうから現在げんざいの紀伊きい水道すいどうへ注そそぐ河かわ道どうに変かわった。なお、和歌浦わかうらへ注そそいでいた旧きゅう河かわ道どうは和歌川わかがわとして残のこっている。ただし近年きんねんでは、和歌川わかがわの横断おうだん面めんに河床かしょう跡あとの砂礫されきが認みとめられないことから、かつて和歌浦わかうらに注ちゅういだとする復元ふくげん説せつには否定ひてい的てきな説せつが挙あげられている。

秀吉ひでよしの水攻みずぜめ

秀吉ひでよしが築きずいた太田おおた城じょう水攻みずぜめにおける堤防ていぼうの推定すいてい位置いち。紀きの川かわにおける大だい規模きぼな土木どぼく工事こうじの初はつ見みるでもある。国土こくど交通省こうつうしょう 国土こくど地理ちり院いん 地図ちず・空中くうちゅう写真しゃしん閲覧えつらんサービスの空中くうちゅう写真しゃしんを基もとに作成さくせい

太田おおた城じょう由来ゆらい并郷士し由緒ゆいしょ記き/個人こじん蔵ぞう

太田おおた城じょうを巡めぐる合戦かっせんの詳細しょうさいについては紀州きしゅう征伐せいばつ#太田おおた城じょう水攻みずぜめ、太田おおた城じょう (紀伊きい国こく)#第だい二に次じ太田おおた城じょうの戦たたかいを参照さんしょうのこと。

中世ちゅうせい、紀伊きい国こくは山名やまな氏し・大内おおうち氏し・畠山はたけやま氏しなどが守護しゅごを務つとめていた。だが高野山こうのやまや粉河寺こかわでら、紀三井寺きみいでらといった寺社じしゃ勢力せいりょくが強つよい地域ちいきであり、中央ちゅうおう集権しゅうけん的てきな統治とうちは不可能ふかのうであった。従したがって在地ざいち豪族ごうぞくは自立じりつ性せいが強つよく、大だい勢力せいりょくに従したがうことには抵抗ていこうを見みせた。戦国せんごく時代じだい、織田おだ信長のぶながは石山いしやま本願寺ほんがんじに通つうじる雑賀さいか衆しゅう・太田おおた党とうや根来寺ねごろじの討伐とうばつを行おこなったが、それは他たの一向いっこう一揆いっきに比くらべて峻烈しゅんれつなものではなく、和睦わぼくという形かたちで決着けっちゃくを見みた。このため寺社じしゃ勢力せいりょくはその影響えいきょう力りょくを保持ほじしたままであった。

1584年ねん（天正てんしょう12年ねん）、小牧こまき・長久手ながくての戦たたかいにおいて根来寺ねごろじ・雑賀さいか衆しゅう・太田おおた党とうは徳川とくがわ家康いえやすに味方みかたし、羽柴はしば秀吉ひでよしへの敵対てきたい姿勢しせいを強つよめた。このため翌よく1585年ねん（天正てんしょう13年ねん）に秀吉ひでよしは弟おとうとの羽柴はしば秀長ひでなが・甥おいの羽柴はしば秀次しゅうじと共ともに6万まんの軍勢ぐんぜいを率ひきい紀州きしゅう征伐せいばつに乗のり出だした。根来寺ねごろじを焼やき討うちした羽柴はしば軍ぐんは太田おおた党とうの本拠地ほんきょち・太田おおた城じょう（現げん・和歌山わかやま市し太田おおた）への攻撃こうげきを開始かいしした。最初さいしょは力ちから攻ぜめを行おこなったが太田おおた党とうの奇襲きしゅうによる打撃だげきを受うけ、秀吉ひでよしは得意とくいの兵糧ひょうろう攻せめによる攻撃こうげきに切きり替かえた。そしてこの時とき秀吉ひでよしが選択せんたくしたのは、備中高松びっちゅうたかまつ城じょう攻せめと同おなじ水攻みずぜめであった（太田おおた城じょう水攻みずぜめ）。

秀吉ひでよしは明石あかし則のり実みに命めいじ堤つつみを設計せっけいさせ、付近ふきんを流ながれる紀きの川かわを堰せき止とめて太田おおた城じょうを水没すいぼつさせる策さくに出でた。推定すいていで堤つつみ高だか3メートルから5メートル、堤つつみの長ながさ6キロメートルの大だい規模きぼな土ど堤つつみであり、所伝しょでん通どおり3月がつ25日にちに起工きこうし、4月がつ1日にちに湛たたえ水すいを開始かいししたとなると全すべて人力じんりきであるにもかかわらずわずか6日間にちかんで完成かんせいさせたことになる。十分じゅうぶんな籠城ろうじょう準備じゅんびが出来できていなかった城内きうちは10日とおか余あまりで兵糧ひょうろうが尽つき、蜂須賀はちすか正勝まさかつ・前野まえの長ちょう康やすしの降伏ごうぶく勧告かんこくを受諾じゅだくし4月がつ12日にちに太田おおた城じょうは開城かいじょう。城主じょうしゅである太田おおた宗そう正ただしを始はじめ51名めいが自刃じじんして戦たたかいは終了しゅうりょうした。

この第だい二に次じ太田おおた城じょうの戦たたかいにおける秀吉ひでよしの水攻みずぜめで建設けんせつされた堤つつみは、治水ちすいにも利水りすいにも関係かんけいしない軍事ぐんじ的てきな河川かせん工作こうさく物ぶつであるが、紀きの川かわにおける初はつの大だい規模きぼな河川かせん工作こうさく物ぶつである。

紀州きしゅう藩政はんせい下かの治水ちすい・利水りすい

1600年ねん（慶長けいちょう5年ねん）の関ヶ原せきがはらの戦たたかいにおいて本戦ほんせんに参さんじ、戦勝せんしょう後ごの恩賞おんしょうで紀伊きい一いち国こくを領りょうする事こととなった浅野あさの幸長よしながは、古ふるくから存在そんざいしていた堤防ていぼうを改修かいしゅうして街道かいどうとしていた。紀きの川かわの治水ちすいではこれら街道かいどうが堤防ていぼうを兼かねる形かたちで建設けんせつされていたが、到底とうてい十分じゅうぶんなものではなかった。大坂おおさか夏なつの陣じんの後のち、安芸あき広島ひろしまに転てん封ふうとなった浅野あさの氏しに代かわり、1619年ねん（元和がんわ5年ねん）に南海なんかいの鎮として駿河するが府中ふちゅうより入部にゅうぶしたのが、家康いえやすの十じゅう男なん・徳川とくがわ頼宣よりのぶである。頼宣よりのぶ入国にゅうこくにより、徳川とくがわ御三家ごさんけの一ひとつ紀州きしゅう徳川とくがわ家かが成立せいりつしたが、これが紀きの川かわの河川かせん開発かいはつの号砲ごうほうともなった。

紀州きしゅう藩はんは南海なんかい道どうの鎮護ちんごを目的もくてきとし、大坂おおさかや西国さいこくを監察かんさつする役目やくめを担になっていた為ため居城きょじょうである和歌山わかやま城じょうを大幅おおはばに拡張かくちょうする必要ひつよう性せいが生うまれた。頼宣よりのぶは居城きょじょうの拡張かくちょうと城下じょうかの発展はってんを図はかるためには紀きの川かわの治水ちすいが不可欠ふかけつと考かんがえ、嘉家作丁かけづくりちょうから地蔵じぞうの辻つじに至いたる高たかさ3.0m・天てん端はし幅はば5.0m・総そう延長えんちょう1.7kmの堤防ていぼうを建設けんせつし、補強ほきょうする為ためにヤナギを植うえた。これは「柳やなぎ堤つつみ」と呼よばれ、更さらに地蔵じぞうの辻つじから八軒屋はちけんやまでの区間くかんに松まつ並木なみきで強化きょうかした堤防ていぼうを建設けんせつした。これは「松原まつばら堤つつみ」と呼よばれるが、堤つつみに植うえられたマツは敵てきの侵攻しんこうの際さいに切きり倒たおして和歌山わかやま城じょうの防衛ぼうえいに利用りようする事ことも頼宣よりのぶは考かんがえていた。また、岩出いわで付近ふきんには「花見はなみ堤つつみ」が1626年ねん（寛永かんえい3年ねん）に建設けんせつされているが、名なの由来ゆらいはこの付近ふきん一帯いったいに広ひろがる桃園ももぞのが、春はるになると見事みごとな開花かいか風景ふうけいを見みせることから付つけられたといわれている。この他た上流じょうりゅうの伊都いと郡ぐん（現げん・かつらぎ町まち）には三さん代だい将軍しょうぐん・徳川とくがわ家光いえみつの命いのちにより高野山大こうやさんだい塔とう建築けんちくの為ための貯木機能きのうを兼かねた「上様うえさま堤つつみ」や「千間せんま堤つつみ」が寛永かんえい～寛文ひろふみ年間ねんかんに建設けんせつされている。

紀州きしゅう流りゅう治水ちすい工法こうほう

こうした頼宣よりのぶの治水ちすいにより次第しだいに新田にった開発かいはつが為なされて行いく様ようになったが、こうした治水ちすいと利水りすいを組くみ合あわせた総合そうごう開発かいはつに取とり組くんだのは第だい五ご代だい藩主はんしゅである徳川とくがわ吉宗よしむねであった。吉宗よしむねは井沢いざわ弥わたる惣そう兵衛ひょうえや大畑おおはた勝善かつよしを登用とうようし、紀きの川かわ流域りゅういきの総合そうごう開発かいはつに着手ちゃくしゅした。彼かれらの採とった手法しゅほうは、先まず治水ちすいを行おこない後ごに利水りすいを行おこなうもの、具体ぐたい的てきには連続れんぞく堤つつみを直線ちょくせん化かした堤防ていぼうに改築かいちくして切きれ目めを無なくし、河原かわはらと氾濫はんらん原ばらを分離ぶんりする。そして分離ぶんりした氾濫はんらん原ばらに紀きの川かわから用水ようすいを引ひき、新田にった開発かいはつを行おこなうというものである。この手法しゅほうは「紀州きしゅう流りゅう治水ちすい工法こうほう」と呼よばれるが、吉宗よしむねが江戸えど幕府ばくふ第だい8代だい将軍しょうぐんに就任しゅうにんした後のちには利根川とねがわ・荒川あらかわの治水ちすい・利水りすいに採用さいようされ、見沼みぬま代用だいよう水すいを始はじめとする関東平野かんとうへいやの大だい規模きぼ灌漑かんがい事業じぎょうに結実けつじつして行いく。

紀きの川かわでは本川ほんがわに上流じょうりゅうから小田井おだい堰せき・七なな郷さと井堰いせき・藤崎ふじさき井堰いせき・小倉こくら井堰いせき・六ろくヶ井堰いせき・宮井みやい堰せき・四よんヶ井堰いせきが建設けんせつ・拡張かくちょう修復しゅうふくされ、支流しりゅうの貴志川きしがわには佐々井ささい堰せき・諸井もろい堰せき・丸橋まるはし井堰いせきが、安楽川あんらくがわには安楽川あんらくがわ井堰いせきが建設けんせつされた。これら井堰いせきから引ひかれた用水路ようすいろによって氾濫はんらん原ばらの新田にった開発かいはつが促進そくしんされた。代表だいひょう的てきなものとしては安田やすだ島新田しましんでん（九度山くどやま町まち）、妙寺みょうじ新田しんでん（かつらぎ町まち）、中島なかじま新田にった（岩出いわで市し）、松島まつしま新田にった（和歌山わかやま市し）などがあり、こうした紀州きしゅう流りゅう治水ちすい工法こうほうによる新田にった開発かいはつによって1839年ねんには約やく72,700石せきの増収ぞうしゅうを紀きの川かわ流域りゅういきだけでもたらし、灌漑かんがいが可能かのうになった耕地こうち面積めんせきも約やく一いち万まん町歩ちょうぶ（約やく992,000ha）に上のぼった。この吉宗よしむねによる「紀州きしゅう流りゅう治水ちすい工法こうほう」こそ、後ごの河川かせん総合そうごう開発かいはつ事業じぎょうの原点げんてんにも通つうじる。

吉野川よしのがわ分水ぶんすい

紀州きしゅうではこのように紀きの川かわを有効ゆうこう利用りようした新田にった開発かいはつが行おこなわれていたが、大和やまと北部ほくぶの奈良盆地ならぼんちは紀きの川かわのような水量すいりょうが豊富ほうふな大河たいがは無なく、大和やまと川がわなどは渇水かっすい時ときには容易よういに水不足みずぶそくに陥おちいり、旱魃かんばつによる被害ひがいが起おこり易やすかった。この為ため、農民のうみんは古ふるくから大小だいしょう様々さまざまなため池いけを大和川やまとがわ流域りゅういきに建設けんせつ。さらに隠かくし井戸いどを造つくって水みずを確保かくほするという苦労くろうを長年ながねん続つづけていた。他たの地域ちいきがたとえ晴天せいてん続つづきの順調じゅんちょうな天候てんこうであっても、少雨しょうう地帯ちたいである奈良盆地ならぼんちでは却かえって旱魃かんばつを招まねくという皮肉ひにくな状況じょうきょうであり、この事ことを指さして人々ひとびとは『大和やまと豊年とよとし米まい食くわず』と囁ささやいていた。

奈良盆地ならぼんちに暮くらす住民じゅうみんにとって、滔々とうとうと流ながれる紀きの川かわの水みずは何者なにものにも替かえがたい魅力みりょく的てきな水みずであった。そして、『奈良盆地ならぼんちに紀きの川かわの水みずが引ひけないか』という願望がんぼうとなり、やがてそれは「吉野川よしのがわ分水ぶんすい構想こうそう」へと繋つながっていった。最初さいしょに発案はつあんしたのは高橋たかはし佐助さすけであり、元禄げんろく年間ねんかんに構想こうそうをまとめている。その後ご寛政かんせい年間ねんかんには角倉すみくら玄げん匡ただしが再度さいど実地じっち調査ちょうさを行おこなっているが、何いずれも中途ちゅうとで挫折ざせつした。幕末ばくまつから明治めいじ時代じだい初期しょきには吉野よしの郡ぐん下渕したふち村むらの農民のうみん達たちが分水ぶんすい計画けいかくを立たち上あげ、更さらに辰たつ市し祐ゆう興きょうも同様どうようの計画けいかくをまとめた。これらの計画けいかくは明治めいじ政府せいふも注目ちゅうもくし実際じっさいに実施じっし計画けいかく調査ちょうさを行おこなっているが、和歌山わかやま県けんの反発はんぱつもあり中断ちゅうだん。その後ご奈良なら県けんは名張川なばりがわ流域りゅういきからの分水ぶんすいを計画けいかくし、「宇陀川うだがわ分水ぶんすい」計画けいかくも策定さくていしたが財政難ざいせいなんや水利すいり権けんを持もつ京都きょうと府ふの反対はんたいでこちらも挫折ざせつした。この様ように「吉野川よしのがわ分水ぶんすい」は何なん度ど挫折ざせつしても再ふたたび構想こうそうされる、奈良なら県民けんみん300年ねんの悲願ひがんとなっていった。

大和やまと国こく・奈良なら県けん側がわからすれば『奈良なら県けんに降ふった雨あめが流ながれる紀きの川かわの水みずを、使つかうのは当然とうぜん』という意識いしきもあった。だが紀伊きい国こく・和歌山わかやま県けん側がわはこの考かんがえに猛もう反発はんぱつした。紀きの川かわは最大さいだい流量りゅうりょうと最小さいしょう流量りゅうりょうの差さ（河かわ況きょう係数けいすうという）が日本一にっぽんいち大おおきい。雨あめが降ふるのは6月～9月がつの時期じきに集中しゅうちゅうし、その時期じきに降ふらなければ確実かくじつに水不足みずぶそくを招まねく。かといって降ふりすぎれば確実かくじつに水害すいがいを招まねく厄介やっかいな河川かせんでもあった。更さらに新田にった開発かいはつは成功せいこうしてもそれは紀きの川かわに近ちかい氾濫はんらん原ばらでの事ことであり、川かわから遠とおい地域ちいきや山裾やますそに近ちかい地域ちいきは慢性まんせい的てきな水不足みずぶそくを受うけており紀きの川かわ流域りゅういきにもため池いけは多おおかった。この為ため水みずはあるようでないというのが紀州きしゅうの本音ほんねでもあり、『渇水かっすいどころか水害すいがいの被害ひがいも受うけている。水害すいがいを受うけない分ぶん大和やまとのほうがマシだ』として「吉野川よしのがわ分水ぶんすい」には強硬きょうこうに反対はんたいした。

1886年ねん（明治めいじ18年ねん）には奈良なら県議会けんぎかいで「吉野川よしのがわ分水ぶんすい調査ちょうさ計画けいかく」が議決ぎけつされ、和歌山わかやま県けんとの交渉こうしょうに臨のぞむが和歌山わかやま県けんはたとえ洪水こうずい時じであろうとも『紀きの川かわに注そそぐ水みずはたとえ、その一いち滴てきたりとも余人よにんの勝手かっては許ゆるさず』（大阪おおさか毎日新聞まいにちしんぶん・昭和しょうわ4年ねん4月がつ18日にち付づけ）として頑強がんきょうに抵抗ていこう。遂ついには両りょう県けんによる水みず紛争ふんそうに発展はってんし1917年ねん（大正たいしょう4年ねん）・1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）・1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん）・1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）と4度どに亘わたる水みず紛争ふんそう・提訴ていそ運動うんどうが勃発ぼっぱつした。紛争ふんそうの中なかで奈良なら県けんは和歌山わかやま県けんの強硬きょうこうな反対はんたい理由りゆうを精査せいさするうちに、水みずが潤沢じゅんたくと思おもわれた和歌山平野わかやまへいやも奈良盆地ならぼんちとそう変かわらないことを知しり、両りょう県けんが同時どうじに水みず需要じゅようを満みたす計画けいかくで無ない限かぎり吉野川よしのがわ分水ぶんすいは不可能ふかのうという認識にんしきが生うまれた。だが、この問題もんだいが解決かいけつするのは戦後せんごを待またなければならなかった。

近代きんだい河川かせん改修かいしゅう

明治めいじ以降いこう、全国ぜんこくの主要しゅよう河川かせんは内務省ないむしょうによる直轄ちょっかつ管理かんり河川かせんとして河川かせん改修かいしゅうが行おこなわれていた。紀きの川かわにおいては1899年ねん（明治めいじ31年ねん）に和歌山わかやま県けん営事業じぎょうとして堤防ていぼう改修かいしゅうが開始かいしされたのが近代きんだい河川かせん改修かいしゅうの始はじまりである。岩出いわで市し～紀きの川かわ河口かこうに至いたる堤防ていぼう整備せいびが主おもなものであった。ところが1917年ねん（大正たいしょう6年ねん）10月がつに紀きの川かわの流域りゅういきは大だい水害すいがいの被害ひがいを受うけ、従来じゅうらいの堤防ていぼうは各所かくしょで決壊けっかいしてしまった。

この為ため1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）に紀きの川かわは内務省ないむしょうの直轄ちょっかつ改修かいしゅう対象たいしょう河川かせんとなり、大正たいしょう6年ねんに洪水こうずいを基準きじゅんとした『紀きの川かわ改修かいしゅう計画けいかく』が策定さくていされた。これは基準きじゅん流量りゅうりょうを大正たいしょう6年ねん洪水こうずいの最高さいこう流量りゅうりょうである5,600トン／秒びょうに定さだめ、この流量りゅうりょうに耐たえられる河川かせん改修かいしゅうを行おこなう事ことを目標もくひょうとした。具体ぐたい的てきには堤防ていぼう築堤ちくてい・護岸ごがん改修かいしゅう・浚渫しゅんせつ・川底かわぞこ掘削くっさくといった従来じゅうらいからの河川かせん工法こうほうと、所々ところどころに見みられる急激きゅうげきな狭窄きょうさく部ぶを開鑿かいさくして拡張かくちょうし、河水こうすいの流下りゅうか阻害そがい要因よういんを排除はいじょする事ことを目的もくてきとしている。

改修かいしゅう計画けいかくは当初とうしょ1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）に完成かんせいする予定よていであったが、その後ごの国内こくない事情じじょうによって事業じぎょうは遅延ちえんし1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）以降いこうは太平洋戦争たいへいようせんそうに伴ともない中断ちゅうだんを余儀無よぎなくされた。また、当時とうじ全国ぜんこくの河川かせんで着手ちゃくしゅされていた「河水こうすい統制とうせい事業じぎょう」も紀きの川かわでは行おこなわれず、水力すいりょく発電はつでんによる電源でんげん開発かいはつも目立めだったものは行おこなわれなかった。

吉野よしの熊野くまの特定とくてい地域ちいき総合そうごう開発かいはつ計画けいかく

戦後せんご、経済けいざい安定あんてい本部ほんぶは戦火せんかによって荒廃こうはいした国土こくどを回復かいふくするため、河川かせん総合そうごう開発かいはつ事業じぎょうによる治水ちすいと国営こくえい農業のうぎょう水利すいり事業じぎょうによる利水りすいを強力きょうりょくに推進すいしんする政策せいさくを採とった。これ以降いこう全国ぜんこくの主要しゅよう河川かせんにおいて多目的たもくてきダムを中心ちゅうしんとした河川かせん総合そうごう開発かいはつが推進すいしんされた。

江戸えど時代じだいから続つづく「吉野川よしのがわ分水ぶんすい構想こうそう」は、前述ぜんじゅつの様ように奈良なら県けんと和歌山わかやま県けんの利害りがいが対立たいりつし、双方そうほうが恩恵おんけいを受うける計画けいかくでない限かぎり実現じつげんは不可能ふかのうと思おもわれていた。だが、戦後せんごテネシー川がわ流域りゅういき開発かいはつ公社こうしゃ（TVA）を手本てほんとした河川かせん総合そうごう開発かいはつが紀きの川かわ水系すいけいでも計画けいかくされ、紀きの川かわの場合ばあいは奈良なら県けん・和歌山わかやま県けん下かの灌漑かんがい整備せいびを主眼しゅがんとした地域ちいき開発かいはつの動うごきがにわかに現実げんじつ性せいを帯おびてきた。そして1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）、農林省のうりんしょうを事業じぎょう主体しゅたいとする十津川とつかわ・紀きの川かわ総合そうごう開発かいはつ計画けいかくが策定さくていされ、奈良なら県けん長年ながねんの懸案けんあんであった紀きの川かわからの分水ぶんすい計画けいかくが本格ほんかく的てきに動うごき出だした。さらに翌よく1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）の国土こくど総合そうごう開発かいはつ法ほう施行しこうにより、同どう計画けいかくは紀きの川かわ・熊野川くまのがわという紀伊きい半島はんとうの二ふたつの大河たいがを利用りようして灌漑かんがいと水力すいりょく発電はつでんを行おこなう吉野よしの熊野くまの特定とくてい地域ちいき総合そうごう開発かいはつ計画けいかくに発展はってんした。

まず紀きの川かわ本川ほんがわ最さい上流じょうりゅう部ぶの吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むらに大迫おおさこダム（おおさこダム）を、支流しりゅうの津風呂つぶろ川がわ（つぶろがわ）に津風呂つぶろダムを建設けんせつ。また貴志川きしがわの支流しりゅうである野田原のたはら川がわに山田やまだダムを建設けんせつして水源すいげんとした。続つづいて下渕したふち頭首とうしゅ工こうを建設けんせつしてここから紀きの川かわの水みずを奈良盆地ならぼんちに送水そうすいする。送水そうすいされた水みずは奈良盆地ならぼんちに送おくられ奈良なら県けんの上水道じょうすいどうと農業のうぎょう用水ようすいに利用りようされる。一方いっぽう下渕したふち頭首とうしゅ工こうによる取水しゅすいによって水量すいりょうが減少げんしょうする紀きの川かわについては十津川とつかわ（熊野川くまのがわの奈良なら県内けんないにおける呼称こしょう）からの分水ぶんすいを図はかった。これは熊野川くまのがわ本川ほんかわ上流じょうりゅう部ぶの奈良なら県けん吉野よしの郡ぐん大塔だいとう村むら（現げん・五條ごじょう市し）に建設省けんせつしょう近畿きんき地方ちほう建設けんせつ局きょく（現げん・国土こくど交通省こうつうしょう近畿きんき地方ちほう整備せいび局きょく）が建設けんせつする猿谷さるやダムの阪本さかもと取水しゅすい口こうより取水しゅすい、天辻てんつじトンネルより導水どうすいした水みずは紀きの川かわ支流しりゅうの大和やまと丹生川にゅうかわに電源でんげん開発かいはつ株式会社かぶしきがいしゃが管理かんりする西吉野にしよしの第だい一いち・第だい二に発電はつでん所しょ（黒淵くろぶちダム）で発電はつでん後ごに放水ほうすいされ、紀きの川かわへ合流ごうりゅうする。

また紀きの川かわより取水しゅすいする井堰いせきの整備せいび・統合とうごうを進すすめ、従来じゅうらい7ヶ所かしょあった井堰いせきを小田おだ・藤崎ふじさき・岩出いわで・六ろくヶ井いの四よん井堰いせきに統合とうごうし且かつ固定こてい堰せきであった堰せきを可動かどう堰せき化かした。こうして小田おだ頭首とうしゅ工こう・藤崎ふじさき頭首とうしゅ工こう・岩出いわで頭首とうしゅ工こう・新しん六ろくヶ井い頭首とうしゅ工こうとして再編さいへんされた井堰いせきから農業のうぎょう用水ようすいを取水しゅすい、和歌山平野わかやまへいやに供給きょうきゅうを行おこなった。これらの事業じぎょうによって和歌山平野わかやまへいや・奈良盆地ならぼんちに安定あんていした水みず供給きょうきゅうが図はかられた一方いっぽう、奈良なら市し・和歌山わかやま市し・五條ごじょう市し・橋本はしもと市しなどの上水道じょうすいどう・工業こうぎょう用よう水道すいどうの供給きょうきゅうも行おこなわれた。この後のち奈良なら県内けんないの紀きの川中かわなか流域りゅういきにおける灌漑かんがい強化きょうかも図はかられ、国営こくえい五條ごじょう吉野よしの土地とち改良かいりょう事業じぎょうが進すすめられ大和やまと丹生川にゅうかわの右みぎ支ささえ川かわ・吉里よしざと川がわに一いちの木きダムも建設けんせつされた。なお、奈良なら盆地ぼんちへの水みず供給きょうきゅうは紀きの川かわの他ほかに木津川きづがわ・名張川なばりがわからも取水しゅすいし、室生むろうダム（宇陀川うだがわ）から初瀬はつせ水路すいろを経へて大和やまと川がわに導水どうすいを行おこなっている。

一方いっぽう、大阪おおさか府ふ南部なんぶは阪神はんしん工業こうぎょう地帯ちたいの一部いちぶとして工場こうじょう群ぐんが立地りっちし、さらに泉北せんぼくニュータウン等ひとしの造成ぞうせいで人口じんこうも急増きゅうぞうした。また和歌山わかやま市しや海南かいなん市しなど、紀伊きい水道すいどう（和歌山わかやま湾わん）沿岸えんがんも阪神はんしん工業こうぎょう地帯ちたいの一部いちぶとして住友金属工業すみともきんぞくこうぎょうの和歌山製鉄所わかやませいてつしょを始はじめ大型おおがた工業こうぎょう施設しせつが立地りっちしており、水みず需要じゅようはさらに増加ぞうかしていった。また1990年代ねんだいに入はいり、関西国際空港かんさいこくさいくうこうの開港かいこうや阪和はんわ自動車じどうしゃ道どうの開通かいつうもあり、特とくに大河たいがが無なく水不足みずぶそくが顕著けんちょであった大阪おおさか府ふ南部なんぶへの紀きの川かわからの分水ぶんすいがより求もとめられるようになった。この為ため新しん六ろくヶ井い頭首とうしゅ工こうを改造かいぞうして治水ちすいの他た新規しんき利水りすい容量ようりょうを確保かくほし、大阪おおさか府ふ泉南せんなん地域ちいきへの利水りすいを図はかるために紀きの川かわ大堰おおせぎが建設けんせつされ、現在げんざい暫定ざんてい運用うんようを行おこなっている。

連続れんぞくする水害すいがいと治水ちすい

戦後せんご、全国ぜんこく各地かくちで水害すいがいが多発たはつしていたが、紀きの川かわでも例外れいがいではなかった。紀きの川かわでは1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）9月がつ3日にちのジェーン台風たいふうによる水害すいがい（死傷ししょう者しゃ1,894名めい、家屋かおく全ぜん半壊はんかい13,820戸こ、床上ゆかうえ・床下ゆかした浸水しんすい11,612戸こ）を皮切かわきりに1953年ねん（昭和しょうわ28年ねん）まで毎年まいとし大だい水害すいがいが発生はっせいした。特とくに1953年ねん（昭和しょうわ28年ねん）7月がつの紀州きしゅう大だい水害すいがいでは紀きの川かわのみならず有田ありた川がわ・日高川ひだかがわ・日置川ひきがわ・古座川こざがわなど県内けんない全すべての河川かせんが氾濫はんらん、和歌山わかやま県けんは壊滅かいめつ的てきな被害ひがいを生しょうじた。

戦争せんそうで中断ちゅうだんしていた『紀きの川かわ改修かいしゅう計画けいかく』は戦後せんご再開さいかいし、1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）に完了かんりょうしていた。更さらに1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）には橋本はしもと市しまでの本川ほんがわと貴志川きしがわの合流ごうりゅう点てんから6.0km区間くかんまでを改修かいしゅう区間くかんに編入へんにゅうした。ところが紀州きしゅう大だい水害すいがいで計画けいかくを上回うわまわる洪水こうずいとなったため1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）には貴志川きしがわの計画けいかく水位すいいを改訂かいていした『第だい一いち次じ改訂かいてい紀きの川かわ改修かいしゅう計画けいかく』が策定さくていされた。この際さい紀きの川かわ本川ほんかわの計画けいかく洪水こうずい流量りゅうりょうも橋本はしもと市しで6,000トン／秒びょうとする方向ほうこうで調整ちょうせいを図はかっていたところ、1959年ねん（昭和しょうわ34年ねん）9月がつ26日にちの伊勢湾いせわん台風たいふうが紀きの川かわ流域りゅういきにかつてない大だい洪水こうずいをもたらした。上流じょうりゅうを中心ちゅうしんに豪雨ごううが襲おそい、吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら入之波しおのは（しおのは）では26日にち夜よる7時じに時間じかん雨量うりょうが118mmという猛烈もうれつな雨あめとなり、この日ひ一いち日にちだけで650mmの記録きろく的てきな雨量うりょうとなった（なお、現在げんざいに至いたるまで紀きの川かわ流域りゅういきでの年間ねんかん最多さいた降水こうすい量りょう・最多さいた日び降水こうすい量りょう・最多さいた一いち時じ間あいだ降水こうすい量りょう記録きろくはこの時ときの豪雨ごううによるものであり、近畿きんき地方ちほう整備せいび局きょく管内かんないの年間ねんかん最多さいた降水こうすい量りょう記録きろくもこの年としの入之波しおのはにおける記録きろくである）。このような激烈げきれつな豪雨ごううにより紀きの川かわの洪水こうずい流量りゅうりょうは計画けいかくを上回うわまわる7,000トン／秒びょうを記録きろくし奈良なら県けん・和歌山わかやま県けんで浸水しんすい被害ひがいが拡大かくだい。特とくに奈良なら県けんは1958年ねん（昭和しょうわ33年ねん）の台風たいふう17号ごうの被害ひがいが復旧ふっきゅうする暇ひまなく水害すいがいに遭あい、歳入さいにゅうを上回うわまわる被害ひがい額がくが算出さんしゅつされ財政ざいせい危機ききに陥おちいる状況じょうきょうとなった。この為ため国会こっかいにおいて当時とうじの奥田おくだ良三りょうぞう奈良なら県けん知事ちじが『紀きの川かわに多目的たもくてきダムを建設けんせつして欲ほしい』と第だい33回かい国会こっかい災害さいがい地ち対策たいさく特別とくべつ委員いいん会かい第だい4号ごう(昭和しょうわ34年ねん11月5日にち）の参考さんこう人じん質疑しつぎで答弁とうべんする切実せつじつな状況じょうきょうであった。

伊勢湾いせわん台風たいふうの翌年よくねん、1960年ねん（昭和しょうわ35年ねん）に「紀きの川かわ改修かいしゅう計画けいかく」は全面ぜんめん的てきに改訂かいていされ、「紀きの川かわ修正しゅうせい総体そうたい計画けいかく」が策定さくていされた。この際さいに橋本はしもと市しにおけるピーク時じの洪水こうずい流量りゅうりょうを7,100トン／秒びょうとし、この中なかで2,600トン／秒びょうを紀きの川かわ本川ほんかわに多目的たもくてきダムを建設けんせつする事ことでカットする事こととした。こうして建設省けんせつしょうは『紀きの川かわ総合そうごう開発かいはつ事業じぎょう』として吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら大滝おおたき地点ちてんに堤つつみ高だか100.0m、総そう貯水ちょすい容量ようりょう84,000,000トンの大だい規模きぼ特定とくてい多目的たもくてきダムを計画けいかくした。これが大滝おおたきダムであるが、当時とうじ上流じょうりゅう部ぶに『十津川とつかわ・紀きの川かわ総合そうごう開発かいはつ事業じぎょう』として農林省のうりんしょうが大迫おおさこダムを建設けんせつしており、この上うえ更さらにダムによる犠牲ぎせいを蒙こうむる事ことに399戸この水没すいぼつ予定よてい住民じゅうみんは猛烈もうれつに反発はんぱつ。猛烈もうれつなダム反対はんたい運動うんどうを展開てんかいし、事業じぎょうは完全かんぜんに膠着こうちゃく化かした。当時とうじ東日本ひがしにっぽんでは八はちッ場じょうダム（吾妻川あがつまがわ）に対たいする強烈きょうれつな反対はんたい運動うんどうが展開てんかいされており、計画けいかくが全まったく進展しんてんしないダム事業じぎょうの代名詞だいめいしとして『東ひがしの八はちッ場じょう、西にしの大滝おおたき』とまで形容けいようされた。

1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん）4月がつに紀きの川かわ水系すいけいは新しん河川かせん法ほうの施行しこうにより一級いっきゅう水系すいけいに指定していされ、これ以降いこう五條ごじょう市しから河口かこうまでの62.4km区間くかんの紀きの川本かわもと川がわと『紀きの川かわ改修かいしゅう計画けいかく』の指定してい区間くかんである貴志川きしがわ（本川ほんがわ合流ごうりゅう点てんから6.0kmまで）が建設省けんせつしょう直轄ちょっかつ管理かんり区間くかんとなった。これに伴ともない「紀きの川かわ工事こうじ実施じっし基本きほん計画けいかく」が定さだめられ、1974年ねん（昭和しょうわ49年ねん）の改訂かいていを経へて現在げんざいは和歌山わかやま市し船戸ふなと地点ちてんにおけるピーク時じ洪水こうずい流量りゅうりょうを16,000トン／秒びょうとする改修かいしゅう計画けいかくとなっている。「紀きの川かわ改修かいしゅう計画けいかく」時じのピーク時じ洪水こうずい流量りゅうりょうから3倍ばい強きょうの流量りゅうりょうとなっているが、それだけ治水ちすいの難むずかしさを物語ものがたっている。2003年ねん（平成へいせい15年ねん）には大滝おおたきダムと紀きの川かわ大堰おおせぎの本体ほんたいが完成かんせいし、暫定ざんてい的てきな運用うんようが図はかられている。現在げんざいは2005年ねん（平成へいせい17年ねん）11月18日にちに策定さくていされた「紀きの川かわ水系すいけい河川かせん整備せいび計画けいかく」に基もとづき、環境かんきょう保護ほごも重視じゅうしした河川かせん整備せいびが推進すいしんされているが、大滝おおたきダム・紀きの川かわ大堰おおぜきは紀きの川かわの治水ちすい・利水りすいの根幹こんかんとして重要じゅうような位置いちを占しめている。

ダム事業じぎょうを巡めぐる問題もんだい

こうして紀きの川かわは数々かずかずの河川かせん開発かいはつが江戸えど時代じだいより行おこなわれてきたが、河川かせん開発かいはつを巡めぐる問題もんだいとして、欠かく事ことが出来できない問題もんだいとして大滝おおたきダムがある。前述ぜんじゅつの様ように水没すいぼつ予定よてい地ちの川上かわかみ村むらの反発はんぱつは予想よそうを超こえる激はげしいものであり、蜂はちの巣す城じょう紛争ふんそうを上回うわまわるとも形容けいようされた。当初とうしょはダム対策たいさく協議きょうぎ会かいとの交渉こうしょうが持もたれたが全まったく折おり合あわず、後のちには団体だんたい交渉こうしょうを断念だんねんして水没すいぼつ住民じゅうみん一いち人にん一人ひとりとの個別こべつ交渉こうしょうを行おこなうに至いたった。これがダム事業じぎょうの長期ちょうき化かを招まねき、当初とうしょの予定よてい建設けんせつ費ひ400億おく円えんを大おおきく上回うわまわる3,410億おく円えんの事業じぎょう費ひを投入とうにゅうする結果けっかとなり、事業じぎょう者しゃである建設省けんせつしょうへの批判ひはんが高たかまった。住民じゅうみんに対たいしては水源すいげん地域ちいき対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほうの9条じょう指定していを施行しこう同日どうじつの1974年ねん（昭和しょうわ49年ねん）7月がつ20日はつかに指定していし、補償ほしょう額がくの嵩上かさあげを始はじめとする補償ほしょう交渉こうしょうを進すすめ漸ようやく妥結だけつを見みた。2003年ねん（平成へいせい15年ねん）に本体ほんたいは完成かんせいし現在げんざい暫定ざんてい運用うんようを行おこなうが、ここまで43年ねんが経過けいかした。

だが、完成かんせい直前ちょくぜん大滝おおたきダムの試験しけん湛たたえ水中すいちゅうである2003年ねん（平成へいせい15年ねん）4月がつ25日にち、湖岸こがんの川上かわかみ村むら白屋しらや地区ちくで地滑じすべりの兆候ちょうこうが住民じゅうみんの通報つうほうで発覚はっかく、試験しけん湛たたえ水すいを中断ちゅうだんした。その後ごも住宅じゅうたくに亀裂きれつが入はいるなど住民じゅうみん生活せいかつに深刻しんこくな影響えいきょうを与あたえており、住民じゅうみんは全戸ぜんこの永住えいじゅう移転いてんを要望ようぼう。川上かわかみ村議そんぎ会かいも早急そうきゅうな対策たいさくを国土こくど交通省こうつうしょうに要求ようきゅうした。国土こくど交通省こうつうしょうは仮設かせつ住宅じゅうたくの建設けんせつを直ただちに行おこない、現在げんざい住民じゅうみんは仮住かりずまいをしているが要望ようぼうする永住えいじゅう移転いてんの目処めどは立たっておらず、住民じゅうみんの疲労ひろうと不満ふまんが高たかまっている。また、地滑じすべりについても既すでに1974年ねん（昭和しょうわ49年ねん）から指摘してきされていたとの意見いけんもあり、地滑じすべりに対たいする認識にんしきの甘あまさを批判ひはんする意見いけんも多おおい。ダム湖みずうみへの地滑じすべりによる災害さいがいはイタリアのバイオントダム事故じこが著名ちょめいであるが、この事故じこでは2,600名めいが死亡しぼうしており対策たいさくの不備ふびは大だい事故じこにつながりかねない。現在げんざい国土こくど交通省こうつうしょうは恒久こうきゅう的てきな地滑じすべり対策たいさくを施工しこう中ちゅうであるが、安全あんぜんが確認かくにんされない限かぎりダムの貯水ちょすいは行おこなわれず、さらなる事業じぎょう費ひの拡大かくだいや治水ちすい・利水りすい計画けいかくへの影響えいきょうが懸念けねんされている。

また、公共こうきょう事業じぎょうの見直みなおしによるダム事業じぎょうの再さい評価ひょうかが全国ぜんこく的てきに行おこなわれ、紀きの川かわ水系すいけいでもその影響えいきょうが及およんだ。建設省けんせつしょうは高野山こうのやまを水源すいげんにして紀きの川かわに合流ごうりゅうする紀伊きい丹生川にゅうかわ（大和やまと丹生川にゅうかわとは別べつの川かわ）の上流じょうりゅう部ぶ、九度山くどやま町まち北又きたまた地ち先さきに「紀伊きい丹生川にゅうかわダム計画けいかく」を1989年ねん（平成へいせい元年がんねん）より進すすめていた。ダムは堤つつみ高だか145.0m、総そう貯水ちょすい容量ようりょう60,400,000トンの重力じゅうりょく式しきコンクリートダムで、紀きの川かわ水系すいけい最大さいだい級きゅうの特定とくてい多目的たもくてきダムであった。だが利水りすい計画けいかく縮小しゅくしょうによって計画けいかくの再さい検討けんとうが行おこなわれ、当初とうしょ計画けいかくよりも上流じょうりゅうに再度さいど建設けんせつが計画けいかくされた。だが、実施じっし計画けいかく調査ちょうさ時じに基礎きそ岩盤がんばんが予想よそう以上いじょうに劣悪れつあくである事ことが判明はんめい。掘削くっさく処理しょりを施ほどこすと大幅おおはばな事業じぎょう費ひ増額ぞうがくが予想よそうされ、同どう程度ていどの事業じぎょう費ひであれば既存きそんの河川かせん整備せいび・利水りすい施設しせつ整備せいびを行おこなえば十分じゅうぶん対応たいおうできる事ことが報告ほうこくされ、コストパフォーマンスに優すぐれない事業じぎょうの継続けいぞくは住民じゅうみんの理解りかいを得えられないとして2003年ねん（平成へいせい15年ねん）に国土こくど交通省こうつうしょうはダム計画けいかくの中止ちゅうしを決定けっていした。

現在げんざいは大滝おおたきダムの地滑じすべり対策たいさくと紀きの川かわ大堰おおせぎの周辺しゅうへん事業じぎょう整備せいび（新しん六ろくヶ井堰いせき撤去てっきょ事業じぎょう）が進すすめられている。水害すいがいによる被害ひがいは一時期いちじきに比くらべ格段かくだんに減少げんしょうしているが、地球ちきゅう温暖おんだん化かの影響えいきょうによる短期たんき集中しゅうちゅう的てきな豪雨ごうう被害ひがいが全国ぜんこくで毎年まいとし起おきている事ことを考慮こうりょすると、万全ばんぜんな治水ちすい整備せいびを怠おこたる事ことは出来できない。また渇水かっすいについては1990年ねん（平成へいせい2年ねん）・1994年ねん（平成へいせい6年ねん）・1995年ねん（平成へいせい7年ねん）・2001年ねん（平成へいせい13年ねん）・2002年ねん（平成へいせい14年ねん）と平成へいせいに入はいっても渇水かっすい被害ひがいが後こうを絶たたない。特とくに1994年ねん・2001年ねん・2002年ねんの渇水かっすいでは紀きの川かわ・貴志川きしがわの流水りゅうすいが途絶とぜつ（瀬切せぎれ）し、市民しみん生活せいかつに深刻しんこくなダメージを与あたえた。これは紀きの川かわが一いち級きゅう水系すいけいの中なかで最大さいだい流量りゅうりょう・最小さいしょう流量りゅうりょうの差さが最もっとも大おおきく、雨量うりょうは夏季かきに集中しゅうちゅうしている事ことが原因げんいんであり、故ゆえに夏季かきに雨量うりょうが少すくないと致命ちめい的てきな水不足みずぶそくに陥おちいる。この為ため利水りすい目的もくてきを有ゆうする大滝おおたきダムと紀きの川かわ大堰おおせぎの早期そうき本格ほんかく運用うんようが期待きたいされているが、特とくに大滝おおたきダムについては上記じょうきの理由りゆうがある為ため、被害ひがい住民じゅうみんへの恒久こうきゅう的てき住宅じゅうたく対策たいさくと完全かんぜんな安全あんぜん性せいの確保かくほは極きわめて重要じゅうようと言いわれており、国土こくど交通省こうつうしょうの抜本ばっぽん的てき対策たいさくが求もとめられている。

紀きの川かわ水系すいけいの主要しゅよう河川かせん

• 奈良なら県けん
  • 高見川たかみがわ
  • 津風呂つぶろ川がわ
  • 秋野あきの川かわ
  • 大和やまと丹生川にゅうかわ
• 和歌山わかやま県けん
  • 紀伊きい丹生川にゅうかわ
  • 貴志川きしがわ

紀きの川かわ水系すいけいの河川かせん施設しせつ

紀きの川かわの河川かせん施設しせつ整備せいびは紀州きしゅう藩はん政せい下かにおける徳川とくがわ吉宗よしむねの治水ちすい・利水りすい事業じぎょうに伴ともなう井堰いせきの整備せいびに始はじまる。戦後せんご、農林省のうりんしょう（現げん・農林水産省のうりんすいさんしょう近畿きんき農政のうせい局きょく）による『十津川とつかわ・紀きの川かわ総合そうごう開発かいはつ事業じぎょう』によって大迫おおさこダム・津風呂つぶろダム・山田やまだダムの建設けんせつや井堰いせきの統合とうごうが進すすめられ、熊野川くまのがわからの分水ぶんすいも行おこない灌漑かんがい整備せいびを実施じっしした。同時どうじに電源でんげん開発かいはつによる水力すいりょく発電はつでんも行おこなわれたが、他たの河川かせんに比くらべれば小規模しょうきぼである。

一方いっぽう治水ちすいについては1959年ねん（昭和しょうわ34年ねん）の伊勢湾いせわん台風たいふう以降いこう、建設省けんせつしょう近畿きんき地方ちほう建設けんせつ局きょく（現げん・国土こくど交通省こうつうしょう近畿きんき地方ちほう整備せいび局きょく）による大滝おおたきダムを中心ちゅうしんとした治水ちすい事業じぎょうが進すすめられ、現在げんざいは紀きの川かわ大堰おおせぎと共ともに暫定ざんてい的てきな運用うんようを実施じっししている。治水ちすいを目的もくてきとする多目的たもくてきダムはこの2施設しせつのみである。

河川かせん施設しせつ一覧いちらん

一いち次じ 支ささえ川名かわな （本川ほんがわ）	二に次じ 支ささえ川名かわな	三さん次じ 支ささえ川名かわな	ダム名めい	堤つつみ高だか (m)	総そう貯水ちょすい 容量ようりょう (千せんm3)	型式けいしき	事業じぎょう者しゃ	備考びこう
紀きの川かわ	－	－	大迫おおさこダム	70.5	27,750	アーチ	農林水産省のうりんすいさんしょう	－
紀きの川かわ	－	－	大滝おおたきダム	100.0	84,000	重力じゅうりょく式しき	国土こくど交通省こうつうしょう	2013年ねん竣工しゅんこう
紀きの川かわ	－	－	下渕したふち頭首とうしゅ工こう	－	－	可動かどう堰せき	農林水産省のうりんすいさんしょう	－
紀きの川かわ	－	－	小田おだ頭首とうしゅ工こう	－	－	可動かどう堰せき	農林水産省のうりんすいさんしょう	－
紀きの川かわ	－	－	藤崎ふじさき頭首とうしゅ工こう	－	－	可動かどう堰せき	農林水産省のうりんすいさんしょう	固定こてい堰せき併用へいよう
紀きの川かわ	－	－	岩出いわで頭首とうしゅ工こう	－	－	可動かどう堰せき	農林水産省のうりんすいさんしょう	－
紀きの川かわ	－	－	新しん六ろくヶ井堰いせき	－	－	固定こてい堰せき	農林水産省のうりんすいさんしょう	撤去てっきょ中ちゅう
紀きの川かわ	－	－	紀きの川かわ大堰おおせぎ	7.1	5,100	可動かどう堰せき	国土こくど交通省こうつうしょう	2012年ねん本格ほんかく運用うんよう開始かいし
津風呂つぶろ川がわ	－	－	津風呂つぶろダム	54.3	25,700	重力じゅうりょく式しき	農林水産省のうりんすいさんしょう	－
大和やまと丹生川にゅうかわ	－	－	黒渕くろぶちダム	小しょう堰堤えんてい	－	重力じゅうりょく式しき	電源でんげん開発かいはつ	－
大和やまと丹生川にゅうかわ	吉里よしざと川がわ	－	一いちの木きダム	38.4	1,400	重力じゅうりょく式しき	農林水産省のうりんすいさんしょう	－
貴志川きしがわ	野田原のたはら川がわ	－	山田やまだダム	34.0	3,400	重力じゅうりょく式しき	農林水産省のうりんすいさんしょう	－

水系すいけい外がい関連かんれん河川かせん施設しせつ

一いち次じ 支ささえ川名かわな （本川ほんがわ）	二に次じ 支ささえ川名かわな	三さん次じ 支ささえ川名かわな	ダム名めい	堤つつみ高だか (m)	総そう貯水ちょすい 容量ようりょう (千せんm3)	型式けいしき	事業じぎょう者しゃ	備考びこう
熊野川くまのがわ	－	－	猿谷さるやダム	74.0	23,300	重力じゅうりょく式しき	国土こくど交通省こうつうしょう	－

（備考びこう）赤色あかいろ欄らんは撤去てっきょ・凍結とうけつ中ちゅうの施設しせつ。大滝おおたきダムは2013年ねん（平成へいせい25年ねん）に竣工しゅんこう、紀きの川かわ大堰おおぜきはそれに先立さきだつ2012年ねん（平成へいせい24年ねん）10月がつに新しん六ろくヶ井堰いせきの撤去てっきょと川底かわぞこの掘削くっさく作業さぎょうが完了かんりょうしたとしていずれも暫定ざんてい運用うんようを終了しゅうりょう、本格ほんかく運用うんように移行いこうしている。

交通こうつう

周辺しゅうへんの交通こうつう

古ふるくは都とのあった大和やまと平野へいや（奈良盆地ならぼんち）から来くる下しも街道かいどうが今いまの五條ごじょう市しまで達たっして、そこから紀きの川かわ（吉野川よしのがわ）の右岸うがん（北側きたがわ）を西進せいしんし紀伊きい国こくに入はいり今いまの和歌山わかやま市し加太かだへと通つうずる南海なんかい道どうが走はしっていた。なお、紀伊きい国こくの国府こくふは右岸うがんの名めい草くさ郡ぐん（今いまの和歌山わかやま市し府中ふちゅう。JR阪和はんわ線せん紀伊きい駅えき付近ふきん）にあったとされる。 大和やまと国こく（奈良なら県けん）の吉野川よしのがわ（紀きの川かわ）沿ぞいには古代こだい、離宮りきゅうが置おかれていたが、都とのあった飛鳥あすかや大和やまと平野へいやからは竜門山りゅうもんざん地ちを越こえなければならず、当初とうしょは遠回とおまわりではあるが今いまの御所ごしょ市し古瀬ふるせ（吉野口よしのぐち駅えき付近ふきん）から今いまの大淀おおよど町まち下渕したふちへと出でて、そこから吉野川よしのがわ（紀きの川かわ）の右岸うがんを東進とうしんして離宮りきゅうに入はいったとされる。この吉野川よしのがわ（紀きの川かわ）と竜門山りゅうもんざん地ちに挟はさまれた野原のはらは、狩かりに適てきした良よい野のであったので「吉野よしの」という地名ちめいが生うまれた。

平安へいあん時代じだい以降いこう、熊野くまの三山さんざんや高野山こうのやま、吉野山よしのやま・大峰山おおみねさんへの参詣さんけいが盛さかんになり、多おおくの参詣さんけい者しゃが紀きの川かわ（吉野川よしのがわ）を渡わたるようになり渡わたし場ばが設もうけられた。こういった中なかで現在げんざい、周辺しゅうへんを走はしる国道こくどうの原形げんけいが成立せいりつする。

江戸えど時代じだいに入はいり徳川とくがわ御三家ごさんけの一ひとつ紀州きしゅう徳川とくがわ家かが成立せいりつし紀きの川かわ（吉野川よしのがわ）、高見川たかみがわ沿ぞいを西にしへ進すすみ、高見山たかみやまを越こえて伊勢いせ国こくへと至いたる伊勢いせ街道かいどう（和歌山わかやま街道かいどう）は参勤交代さんきんこうたいの道みちとして、また紀州きしゅう徳川とくがわ家かは南みなみ伊勢いせも藩はん領りょうであり、その拠点きょてんである松阪まつさか城じょうとを直線ちょくせんで結むすぶ道みちとして整備せいびされた。一方いっぽうで、紀きの川かわ源流げんりゅう近ちかくまで上のぼり伯母おば峰ほうを越こえる東ひがし熊野くまの街道かいどうや、代官だいかん所しょの置おかれていた今いまの五條ごじょう市しから吉野川よしのがわ（紀きの川かわ）を渡わたり丹生川にゅうかわを上のぼって天辻てんつじ峠とうげを越こえる西にし熊野くまの街道かいどう、今いまの吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まちから吉野川よしのがわ（紀きの川かわ）を渡わたり下市しもいちを経へて奥おく吉野よしのへの道みち、また高野山こうのやまへの参詣さんけい道どうで今いまの橋本はしもと市し付近ふきんで紀きの川かわを渡わたる高野たかの街道かいどう、河口かこう付近ふきんで紀きの川かわを渡わたる紀州きしゅう街道かいどうなどが利用りようされた。

現在げんざい、紀きの川かわ付近ふきんを走はしる国道こくどうおよび鉄道てつどうとしては下記かきのものがある。

道路どうろ

和歌山わかやま県けん岩出いわで市しの岩出いわで橋きょうより上流じょうりゅうをみる。見みえる鉄橋てっきょうは和歌山わかやま線せん（岩出いわで～船戸ふなと）

• 京きょう奈和自動車じどうしゃ道どう

現在げんざい、建設けんせつ中ちゅう。右岸うがんを五條ごじょう市しから並行へいこうして和歌山わかやまで阪和はんわ自動車じどうしゃ道どうの和歌山わかやまJCTに至いたる。紀きの川かわの近ちかくは通とおらず金剛こんごう山脈さんみゃく、和泉山脈いずみさんみゃくの山麓さんろくを通とおる。現在げんざい、橿原かしはら高田たかだICから和歌山わかやまJCTまで暫定ざんてい2車線しゃせんで開通かいつうしている。

• 国道こくどう24号ごう

奈良なら県けん五條ごじょう市しから和歌山わかやま市し。右岸うがんを下流かりゅうに向むけて並行へいこうし和歌山わかやま市しで紀州きしゅう大橋おおはしで紀きの川かわを渡わたる。現げん・大和やまと街道かいどう。

• 国道こくどう169号ごう

奈良なら県けん吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まちから吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら。右岸うがんを上流じょうりゅうに向むけて並行へいこうし途中とちゅう、吉野よしの町まちの宮滝みやたき大橋おおはしで左岸さがんに渡わたり、五ご社しゃトンネルを経へて川上かわかみ村むらに入はいり、大滝おおたきダム左岸さがんを大迫おおさこダムまで上流じょうりゅうに向むけ並なみ走はしする。現げん・東ひがし熊野くまの街道かいどう。

• 国道こくどう370号ごう

現げん・伊勢いせ街道かいどう（和歌山わかやま街道かいどう）

伊都いと郡ぐん九度山くどやま町まちから橋本はしもと市し橋本はしもと一いち丁目ちょうめ - 左岸さがんを上流じょうりゅうに向むけ並行へいこうし橋本はしもと市しで橋本はしもと橋きょうで紀きの川かわを渡わたり、重複じゅうふく区間くかんの国道こくどう24号ごうと合流ごうりゅう。

五條ごじょう市し三在さんざいから大淀おおよど町まち土田どた - 国道こくどう24号ごうと別わかれ宇野うの峠とうげを越こえて右岸うがんを上流じょうりゅうに向むけ並行へいこうし、重複じゅうふく区間くかんの国道こくどう169号ごうと合流ごうりゅう。

吉野よしの町まち宮滝みやたき大橋おおはし北詰きたづめから吉野よしの町まち窪垣内くぼがいと - 国道こくどう169号ごうと別わかれ右岸うがんを上流じょうりゅうに向むけ並行へいこうする。窪垣内くぼがいと交差点こうさてんで左折させつし入野いりの峠とうげへと入はいる。

• 京きょう奈和自転車じてんしゃ道どう

既存きそんの河川かせん管理かんり用よう通路つうろなどを活用かつようし、嵐山あらしやまから和歌山港わかやまこうに至いたる自転車じてんしゃ道どうを整備せいびする計画けいかく。和歌山わかやま県けん道どう803号ごう紀きの川かわ自転車じてんしゃ道どう線せんおよび奈良なら県けん道どう280号ごう大和やまと青垣あおがき吉野川よしのがわ自転車じてんしゃ道どう線せんの一部いちぶが紀きの川かわに沿そう。そこから佐保川さほがわ－大和やまと川がわ－葛城川かつらぎがわを通つうじて京都きょうと府ふ道どう801号ごう京都きょうと八幡やはた木津きづ自転車じてんしゃ道どう線せんに接続せつぞくする。

• この他ほかの紀きの川かわ（吉野川よしのがわ）を渡わたる国道こくどうや道路どうろについては下記かきの橋梁きょうりょう一覧いちらんを参照さんしょう

鉄道てつどう

• 南海なんかい和歌山港わかやまこう線せん - 和歌山わかやま市し駅えき・和歌山港わかやまこう駅えきの全ぜん区間くかんで、河口かこう近ちかくの紀きの川かわ左岸さがんを走はしる。
• 南海本線なんかいほんせん - 左岸さがん近ちかくにある和歌山わかやま市し駅えきから次つぎの紀ノ川きのかわ駅えき間あいだで紀きの川かわを渡わたる。
• 南海なんかい加太かだ線せん - 紀きの川かわの近ちかくではないが、東ひがし松江まつえ駅えき付近ふきんから紀きの川かわ駅えきまで並行へいこうしている。かつての加太かだ線せんは東ひがし松江まつえ駅えきからは南みなみへ進すすみ北島きたじま駅えきから紀きの川かわを渡わたり今いまの和歌山わかやま市し駅えきまで走はしっていた。
• JR阪和線はんわせん - 紀きの川かわの近ちかくではないが紀伊きい駅えき付近ふきんから六十谷むそた駅えき付近ふきんまで並行へいこうし次じの紀伊きい中ノ島なかのしま駅えきとの間あいだで紀きの川かわを渡わたる。
• JR和歌山線わかやません - 五条ごじょう駅えき付近ふきんから和歌山わかやま駅えき間あいだで紀きの川かわ（吉野川よしのがわ）と並行へいこう。五条ごじょう駅えきから岩出いわで駅えきまで右岸うがんを走はしり、紀きの川かわを渡わたり船戸ふなと駅えきから和歌山わかやま駅えきまで左岸さがんを走はしる。

なお、紀勢本線きせいほんせんの和歌山わかやま駅えきから和歌山わかやま市し駅えきまでの区間くかんは元もと和歌山わかやま線せんで、短みじかい距離きょりであるが紀きの川かわの左岸さがんを並行へいこうしている

• 南海なんかい高野たかの線せん - 橋本はしもと駅えき・紀伊きい清水しみず駅えき間あいだで紀きの川かわを渡わたり、九度山くどやま駅えきまでの間あいだで紀きの川かわと並行へいこうする。
• 近鉄きんてつ吉野線よしのせん - 大だい阿おもね太たい駅えきと下市しもいち口くち駅えきの間あいだから大和やまと上市うわいち駅えきまで並行へいこうし、次つぎの吉野神宮よしのじんぐう駅えき間あいだで吉野川よしのがわ（紀きの川かわ）を渡わたる。

橋梁きょうりょう

紀きの川かわに架かかる橋はしについて上流じょうりゅうから列記れっきする。

奈良なら県けん
橋梁きょうりょう名めい	供用きょうよう道路どうろまたは鉄道てつどう会社かいしゃ	所在地しょざいち	備考びこう
入之波しおのは大橋おおはし	奈良なら県けん道どう224号線ごうせん	吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	大迫おおさこダム貯水池ちょすいちに架かかる橋はし。右岸うがん（北岸ほくがん）には入之波しおのは温泉おんせんがある。
名称めいしょう不明ふめい		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	歩行ほこう者しゃ用よう吊つり橋ばし。川上かわかみ村むら柏木かしわぎ集落しゅうらくの下方かほう、国道こくどう169号線ごうせん沿ぞいにある。
大平おおひら橋きょう		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	1959年ねん（昭和しょうわ34年ねん）の銘めいがある。通行止つうこうどめ（2010年ねん（平成へいせい22年ねん）9月がつ現在げんざい）。
北和田きたわだ橋きょう		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	1990年ねん（平成へいせい2年ねん）1月がつ完成かんせい。
鍬くわの瀬せ橋きょう	奈良なら県けん道どう258号線ごうせん	吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	1998年ねん（平成へいせい10年ねん）2月がつ完成かんせい。
名称めいしょう不明ふめい		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	銘板めいばんなどなし。
名称めいしょう不明ふめい		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	銘板めいばんなどなし。現在げんざい、閉鎖へいさされている。
武たけ光ひかり橋きょう		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら
井戸いど橋きょう		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	1990年ねん（平成へいせい2年ねん）9月がつ完成かんせい。
白屋しらや橋きょう		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	大滝おおたきダム貯水池ちょすいちに架かかる橋はし。PC斜はす張はり橋きょうで、橋はし長ちょう225m、橋脚きょうきゃく高だか68m、全高ぜんこう124m。1991年ねん（平成へいせい3年ねん）土木どぼく学会がっかい田中たなか賞しょう受賞じゅしょう。
北塩谷きたしおだに橋きょう		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	大滝おおたきダム貯水池ちょすいちに架かかる橋はし。
鎧よろい掛橋かけはし		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら
友とも遊ゆう橋きょう		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	歩行ほこう者しゃ専用せんようの吊つり橋ばし。1998年ねん（平成へいせい10年ねん）3月がつ竣工しゅんこう。
住吉橋すみよしばし		吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	銘板めいばんには1961年ねん（昭和しょうわ36年ねん）12月とある。左岸さがん上流じょうりゅう側がわに吊つり橋ばし時代じだいの主しゅ塔とうが残のこる。
小倉こくら橋きょう	奈良なら県けん道どう262号ごう	吉野よしの郡ぐん川上かわかみ村むら	1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）3月がつ竣工しゅんこう。
鈴すずの音おと橋きょう		吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち
吉野渡よしのわたり場じょう大橋おおはし		吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち	吉野渡よしのわたり場じょう大橋おおはし（よしのわたしばおおはし）。平成へいせい10年ねんの完成かんせい以前いぜんは吊つり橋ばしであった。
五ご社しゃ大橋おおはし		吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち
菜摘なつみ大橋おおはし		吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち
宮滝みやたき大橋おおはし	国道こくどう169号ごう	吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち
柴橋しばはし	奈良なら県けん道どう39号線ごうせん	吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち	現在げんざいの鉄製てつせいの橋梁きょうりょうが架かけられる以前いぜんより木造もくぞうの橋はしが架かけられていたようである。
楢井ならい不動ふどう橋きょう		吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち
妹背いもせ大橋おおはし		吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち
桜さくら橋きょう	奈良なら県けん道どう37号線ごうせん	吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち	かつて、付近ふきんに桜さくらの渡わたりがあり橋きょう名めいの由来ゆらいとなっている。
上市かみいち橋きょう		吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち
吉野川よしのがわ橋梁きょうりょう （近鉄きんてつ吉野線よしのせん）	近畿日本鉄道きんきにほんてつどう	吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち	1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）に完成かんせい。
吉野よしの大橋おおはし	奈良なら県けん道どう15号線ごうせん	吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち 吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち
美吉野みよしの橋きょう	奈良なら県けん道どう15号線ごうせん	吉野よしの郡ぐん吉野よしの町まち 吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち	かつて、付近ふきんに柳やなぎの渡わたりがあり右岸うがん（北岸ほくがん）に1786年ねん（天明てんめい6年ねん）に建たてられた燈籠とうろうが残のこる。渇水かっすい期きや吉野山よしのやまの桜さくらのシーズンには木造もくぞうの仮かり橋はしが架かけられていたようである。現在げんざいの美吉野みよしの橋きょうは1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）に架橋かきょうされ近年きんねん改修かいしゅうされた。
新しん椿つばき大橋おおはし		吉野よしの郡ぐん下市しもいち町まち 吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち	2004年ねん（平成へいせい16年ねん）に完成かんせい。右岸うがん（北岸ほくがん）は、近鉄きんてつ吉野よしの線せんと国道こくどう169号線ごうせんを跨またいでおり、長ながさが310mで奈良なら県けんで3番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
椿つばき橋きょう		吉野よしの郡ぐん下市しもいち町まち 吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち	かつて、付近ふきんに椿つばきの渡わたりがあり、橋はし名めいの由来ゆらいとなっている。右岸うがん（北岸ほくがん）大淀おおよど町まち側がわは、近鉄きんてつ吉野よしの線せんと交差こうさするが、踏切ふみきり道どうの幅はばが狭せまいため車くるまは通とおることができない。
千石せんごく橋きょう	国道こくどう309号ごう	吉野よしの郡ぐん下市しもいち町まち 吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち	かつて左岸さがん（南岸なんがん）の下市しもいちは吉野よしのの商業しょうぎょうの中心ちゅうしん地ちで大量たいりょうの物資ぶっし（一いち日にち千せん石せきとも）が行いき交かい江戸えど時代じだい中期ちゅうき頃ごろには、木造もくぞうの橋はしが架かけられ「千石せんごく橋きょう」と名付なづけられる。木造もくぞう時代じだいは、たびたび洪水こうずいで流ながされたが、1892年ねん（明治めいじ25年ねん）に堅牢けんろうな鉄製てつせいのトラス橋きょうが架かけられる。現在げんざいの橋はしは1963年ねん（昭和しょうわ38年ねん）に架かけ替かえられた。なお、上流じょうりゅう100mには桧ひのきの渡わたりがあった。
水道橋すいどうばし		吉野よしの郡ぐん下市しもいち町まち 吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち
梁瀬やなせ橋きょう	奈良なら県けん道どう39号線ごうせん	吉野よしの郡ぐん下市しもいち町まち 吉野よしの郡ぐん大淀おおよど町まち
阿おもね太ふと橋きょう	奈良なら県けん道どう259号線ごうせん	五條ごじょう市し	旧きゅう・阿おもね太ふと橋きょうは1車線しゃせんのトラス橋きょうであったが、2011年ねん（平成へいせい23年ねん）8月がつに2車線しゃせんのアーチ橋きょうが完成かんせい。
大昭たいしょう橋きょう	奈良なら県けん道どう39号線ごうせん	五條ごじょう市し
栄さかえ山寺やまでら橋きょう	奈良なら県けん道どう137号線ごうせん	五條ごじょう市し
大川橋おかわはし	国道こくどう168号ごう	五條ごじょう市し
御蔵おぐら橋きょう	奈良なら県けん道どう732号線ごうせん	五條ごじょう市し
阪ばん合ごう部ぶ橋きょう		五條ごじょう市し

橋梁きょうりょうの長ながさに関かんしては奈良なら県けん橋梁きょうりょう延長えんちょうベスト10[1]を参考さんこうにした。
川上かわかみ村むらの大滝おおたきダム流域りゅういきでは、かつての沈下ちんか橋きょうが残のこっている。また現在げんざい、地滑じすべり対策たいさく工事こうじの関係かんけいで100パーセントの貯水ちょすいが行おこなわれていないため、国道こくどう沿ぞいから今いまも見みることが出来できる。

和歌山わかやま県けん
橋梁きょうりょう名めい	道路どうろまたは鉄道てつどう	所在地しょざいち	備考びこう
恋野こいの橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう104号線ごうせん	橋本はしもと市し
紀ノ川きのかわ橋梁きょうりょう （南海なんかい高野たかの線せん）	南海電鉄なんかいでんてつ	橋本はしもと市し	1924年ねん（大正たいしょう13年ねん）に完成かんせい。
橋本はしもと橋きょう	国道こくどう370号ごう	橋本はしもと市し
橋本はしもと高野橋たかのはし	国道こくどう371号ごう	橋本はしもと市し
岸上きしがみ橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう118号線ごうせん	橋本はしもと市し
九度山くどやま橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう4号線ごうせん	伊都いと郡ぐん九度山くどやま町まち 橋本はしもと市し
高野たかの参詣さんけい大橋おおはし		伊都いと郡ぐん九度山くどやま町まち 橋本はしもと市し
三谷みたに橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう110号線ごうせん	伊都いと郡ぐんかつらぎ町まち
かつらぎ橋ばし		伊都いと郡ぐんかつらぎ町まち
大だい門口かどぐち大橋おおはし	国道こくどう480号ごう	伊都いと郡ぐんかつらぎ町まち
大だい門口かどぐち橋きょう		伊都いと郡ぐんかつらぎ町まち
麻生あそう津つ大橋おおはし	和歌山わかやま県けん道どう120号線ごうせん	紀きの川かわ市し
麻生あそう津橋つばし		紀きの川かわ市し
新しん龍りゅう門もん橋きょう		紀きの川かわ市し
竜りゅう門もん橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう123号線ごうせん	紀きの川かわ市し
竹房たけぶさ橋きょう	国道こくどう424号ごう	紀きの川かわ市し
井い阪ばん橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう128号線ごうせん	紀きの川かわ市し
紀ノ川きのかわ橋梁きょうりょう （JR和歌山線わかやません）	JR西日本にしにほん	岩出いわで市し	1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）に完成かんせい。
岩出いわで橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう14号線ごうせん	岩出いわで市し	2018年ねん11月29日にちに4車線しゃせんの新橋しんばしへの切きり替かえ工事こうじが完了かんりょう。
川辺かわべ橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう64号線ごうせん	和歌山わかやま市し	1986年ねん（昭和しょうわ61年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう755.5mで和歌山わかやま県けんで1番ばん長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
北きた田井ノ瀬たいのせ橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう149号線ごうせん	和歌山わかやま市し	小豆しょうず（あず）島しまを挟はさみ南みなみ田井ノ瀬たいのせ橋きょうと併あわせて「田井ノ瀬たいのせ橋きょう」とも呼よばれる。2004年ねん（平成へいせい16年ねん）に現在げんざいの橋はしに掛かけ替かえられた。
南みなみ田井ノ瀬たいのせ橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう149号線ごうせん	和歌山わかやま市し	小豆島あずしまを挟はさみ北きた田井ノ瀬たいのせ橋きょうと併あわせて「田井ノ瀬たいのせ橋きょう」とも呼よばれる。
紀州きしゅう大橋おおはし	国道こくどう24号ごう	和歌山わかやま市し	1987年ねん（昭和しょうわ62年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう718.9mで和歌山わかやま県けんで3番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
紀きの川かわ橋きょう	阪和はんわ自動車じどうしゃ道どう	和歌山わかやま市し	1974年ねん（昭和しょうわ49年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう647.3mで和歌山わかやま県けんで5番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
紀ノ川きのかわ橋梁きょうりょう （JR阪和線はんわせん）	JR西日本にしにほん	和歌山わかやま市し	ガーター橋きょうだったが、紀きの川かわ大堰おおせぎ完全かんぜん運用うんようのため2009年ねん（平成へいせい21年ねん）にトラス橋きょうに架かけ替かえられた。
六十谷むそた橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう141号線ごうせん	和歌山わかやま市し	1962年ねん（昭和しょうわ37年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう475.3mで和歌山わかやま県けんで10番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
六ろく十じゅう谷水たにみず管かん橋きょう		和歌山わかやま市し	1975年ねん（昭和しょうわ50年ねん）3月がつに完成かんせい、2021年ねん（令れい和わ3年ねん）10月がつに一部いちぶ崩落ほうらくする事故じこが発生はっせい。
紀きの川かわ大堰おおせぎ管理かんり橋きょう		和歌山わかやま市し
南海なんかい橋きょう		和歌山わかやま市し	現在げんざいは撤去てっきょされている。
紀きの国大こくだい橋きょう	国道こくどう26号ごう	和歌山わかやま市し	2003年ねん（平成へいせい15年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう689.0mで和歌山わかやま県けんで4番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
紀ノ川きのかわ橋梁きょうりょう （南海本線なんかいほんせん）	南海電鉄なんかいでんてつ	和歌山わかやま市し	現在げんざいの上のぼり線せんは1903年ねん（明治めいじ36年ねん）に完成かんせい。下くだり線せんは1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）に完成かんせい。
北島きたじま橋きょう	和歌山わかやま県けん道どう15号線ごうせん	和歌山わかやま市し	1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう620.5mで和歌山わかやま県けんで6番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
河西かさい橋きょう （旧きゅう・紀ノ川きのかわ橋梁きょうりょう）		和歌山わかやま市し	元もとは南海なんかい加太かだ線せんの鉄橋てっきょうで、現在げんざいは歩行ほこう者しゃ・二輪車にりんしゃ専用せんよう橋きょう。1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）完成かんせい。2014年ねん（平成へいせい26年ねん）より架かけ替かえ工事こうじ開始かいし。
紀きの川かわ大橋おおはし	和歌山わかやま県けん道どう752号線ごうせん	和歌山わかやま市し	1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう748.1mで和歌山わかやま県けんで2番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。
紀きの川かわ河口かこう大橋おおはし	和歌山わかやま県けん道どう148号線ごうせん	和歌山わかやま市し	1992年ねん（平成へいせい4年ねん）完成かんせい。全長ぜんちょう521.3mで和歌山わかやま県けんで7番目ばんめに長ながい橋はしである（2010年ねん9月がつ現在げんざい）。有料ゆうりょう道路どうろであったが2010年ねん（平成へいせい22年ねん）8月がつ1日にちより無料むりょう開放かいほう。

橋梁きょうりょうの長ながさに関かんしては和歌山わかやま県けん情報じょうほう館かん・県内けんないの橋梁きょうりょう、トンネル[2]を参考さんこうにした。

自然しぜん景勝けいしょう地ち・名所めいしょ・祭典さいてん

宮滝みやたき（吉野よしの町まち）

• 大台おおだいヶ原ばら
• 吉野山よしのやま
• 高野山こうのやま

参考さんこう文献ぶんけん

• 「紀きの川かわ水系すいけい河川かせん整備せいび計画けいかく」：国土こくど交通省こうつうしょう河川かせん局きょく。2005年ねん11月18日にち
• 「河川かせん便覧びんらん 平成へいせい十じゅう六ろく年版ねんばん」：社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん河川かせん協会きょうかい監修かんしゅう・国土こくど開発かいはつ調査ちょうさ会かい編へん。2004年ねん
• 「日本にっぽんの多目的たもくてきダム」1963年版ねんばん：建設省けんせつしょう河川かせん局きょく監修かんしゅう・全国ぜんこく河川かせん総合そうごう開発かいはつ推進すいしん期成きせい同盟どうめい会かい編へん。山海さんかい堂どう 1963年ねん
• 「日本にっぽんの多目的たもくてきダム」1972年版ねんばん：建設省けんせつしょう河川かせん局きょく監修かんしゅう・全国ぜんこく河川かせん総合そうごう開発かいはつ推進すいしん期成きせい同盟どうめい会かい編へん。山海さんかい堂どう 1972年ねん
• 「日本にっぽんの多目的たもくてきダム」1980年版ねんばん：建設省けんせつしょう河川かせん局きょく監修かんしゅう・全国ぜんこく河川かせん総合そうごう開発かいはつ推進すいしん期成きせい同盟どうめい会かい編へん。山海さんかい堂どう 1980年ねん
• 「ダム年鑑ねんかん 1991」：日本にっぽんダム協会きょうかい。1991年ねん
• 「ダム便覧びんらん 2006」：日本にっぽんダム協会きょうかい。2006年ねん
• 「奈良なら県けん大滝おおたきダム地じすべり問題もんだいの新あたらしい展開てんかい」：奥西おくにし一夫かずお。国土こくど問題もんだい研究けんきゅう会かい 2005年ねん
• 「戦国せんごく合戦かっせん事典じてん」：小和田こわだ哲男てつお編へん・著ちょ。三省堂さんせいどう 1988年ねん

関連かんれん項目こうもく

• 熊野川くまのがわ
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