松平まつだいら忠重ただしげ

凡例はんれい 松平まつだいら忠重ただしげ
時代じだい	江戸えど時代じだい前期ぜんき
生誕せいたん	慶長けいちょう6年ねん（1601年ねん）
死没しぼつ	寛永かんえい16年ねん2月がつ12日にち（1639年ねん3月16日にち）
神かみ号ごう	青雲せいうん伊い多多たた須毘古こ命いのち
戒名かいみょう	正覚しょうがく院いん観かん誉ほまれ春はる翁おう道みち喜き
墓所はかしょ	東京とうきょう都と江東こうとう区く白河しらかわの霊れい巌いわお寺てら
官位かんい	従したがえ五ご位い下か・大膳だいぜん亮あきら
幕府ばくふ	江戸えど幕府ばくふ奏者そうしゃ番ばん
主君しゅくん	徳川とくがわ秀忠ひでただ→家光いえみつ
藩はん	上総かずさ佐貫さぬき藩はん主おも→駿河するが田中たなか藩はん主おも→遠江とおとうみ掛川かけがわ藩はん主あるじ
氏族しぞく	桜井さくらい松平まつへい家か
父母ちちはは	父ちち：松平まつだいら忠頼ただより、母はは：織田おだ長ちょう益えき娘むすめ
兄弟きょうだい	忠重ただしげ、忠直ただなお、忠勝ただかつ、忠久ただひさ、忠好ただよし、忠利ただとし
妻つま	木下きのした延のべ俊しゅんの長女ちょうじょ
子こ	忠ちゅう倶、織田おだ信勝のぶかつ正室せいしつ

松平まつだいら 忠重ただしげ（まつだいら ただしげ）は、江戸えど時代じだい前期ぜんきの旗本はたもと・大名だいみょう。桜井さくらい松平まつへい家か8代だい当主とうしゅ。父ちち・忠頼ただよりの不慮ふりょの死しにより一時いちじ改易かいえきされた桜井さくらい松平まつへい家かを大名だいみょうに復帰ふっきさせた。上総かずさ国こく佐貫さぬき藩はん主おも、駿河するが国こく田中たなか藩はん主あるじを経へて、遠江とおとうみ国こく掛川かけがわ藩はん初代しょだい藩主はんしゅ。

略歴りゃくれき

慶長けいちょう6年ねん（1601年ねん）、遠江とおとうみ浜松はままつ藩はん主おも・松平まつだいら忠頼ただよりの長男ちょうなんとして誕生たんじょうした。

慶長けいちょう14年ねん（1609年ねん）9月がつ29日にち、父ちちが従弟じゅうていの水野みずの忠ただし胤たねの江戸えど藩邸はんていに招まねかれて茶会ちゃかいに参加さんかしていた際さい、同席どうせきしていた久米くめ左ひだり平次へいじと服部はっとり半はん八はち郎ろうの両りょう名なが囲碁いごの勝敗しょうはいをめぐって口論こうろん、刃傷にんじょうに及および、この争あらそいを観みた忠頼ただよりが仲裁ちゅうさいに入はいったが、逆上ぎゃくじょうした左ひだり平次へいじによって刺殺しさつされた。忠頼ただよりの城しろ地ちは没収ぼっしゅうされ、妻子さいしは江戸えどに召めされた。

翌よく慶長けいちょう15年ねん（1610年ねん）7月がつ、武蔵むさし国こく深谷ふかやで8000石せきを与あたえられ旗本はたもととなる。

元和がんわ8年ねん（1622年ねん）10月がつ、上総かずさ佐貫さぬきで1万まん5000石せきの所領しょりょうを与あたえられ、桜井さくらい松平まつへい家かは大名だいみょうに復帰ふっきした。寛永かんえい10年ねん（1633年ねん）8月がつ9日にち、1万まん石せきの加増かぞうを受うけ、2万まん5000石せきで駿河するが田中たなかに移うつり封ふうされる。寛永かんえい11年ねん（1634年ねん）、徳川とくがわ家光いえみつが上洛じょうらくする際さいに田中たなか城じょうに立たち寄よっており、江戸えどへの帰還きかん時じに5000石せきを加増かぞうされ、都合つごう3万まん石せきとなる。

寛永かんえい12年ねん（1635年ねん）8月がつ4日にち、1万まん石せき加増かぞうを加増かぞうされて遠江とおとうみ掛川かけがわ藩はん4万まん石せきに移うつり封ふう。寛永かんえい15年ねん（1638年ねん）6月がつ9日にち、駿府すんぷ城じょう普請ふしんを務つとめ、11月18日にちには奏者そうしゃ番ばんに任にんじられたが、寛永かんえい16年ねん（1639年ねん）2月がつ12日にちに死去しきょした。享年きょうねん39。

跡あとを長男ちょうなんの忠ちゅう倶が継ついだ。

備考びこう

• 桜井さくらい松平まつへい家かはのちに（忠重ただしげの曽そ孫まごに当あたる松平まつだいら忠ただし喬たかしの代だいに）摂津せっつ国こく尼崎あまがさき藩はんに定着ていちゃくする。尼崎あまがさきに伝つたわる「朱しゅ地ち葵あおい紋もん染しみ抜大旗き」（桜井さくらい神社じんじゃ所蔵しょぞう、尼あま信しん博物館はくぶつかん展示てんじ、尼崎あまがさき市し指定してい文化財ぶんかざい）は桜井さくらい松平まつへい家か再興さいこうの象徴しょうちょうとして代々だいだい受うけ継つがれてきたとされ、以下いかのような逸話いつわが伝つたわる。徳川とくがわ家康いえやすが67歳さいの時とき、三河そうご国こくの安城あきを巡察じゅんさつしていると、この大だい旗はたを押おし立だてて、赤子あかごを抱だいた一団いちだんが目めに留とどまった。不思議ふしぎに思おもった家康いえやすが尋たずねたところ、この赤子あかごこそが改易かいえきされた松平まつだいら忠頼ただよりの嫡子ちゃくし・忠重ただしげであった。家康いえやすは同族どうぞくの情じょうから忠重ただしげに8000石せきを与あたえ、お家いえ再興さいこうを許ゆるした、というものである。
• 忠重ただしげは桜井さくらい松平まつへい家かを再興さいこうした人物じんぶつとしてとらえられた。明治維新めいじいしん後ごの1882年ねんに創建そうけんされた尼崎あまがさき市しの桜井さくらい神社じんじゃ（現在げんざいは初代しょだい信しん定じょうから16代だい忠興ただおきまでを祀まつる）は、信しん定じょう・忠重ただしげと10代忠ちゅう喬たかし（尼崎あまがさき藩主はんしゅ初代しょだい）を祀まつる神社じんじゃとして始はじまった。

系譜けいふ

特記とっき事項じこうのない限かぎり、『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ』による。

• 父ちち：松平まつだいら忠頼ただより
• 母はは：織田おだ長ちょう益えき（有楽うらく斎とき）の娘むすめ
• 正室せいしつ：木下きのした延のべ俊しゅん（豊後ぶんご日出ひので藩主はんしゅ）の娘むすめ
  • 長女ちょうじょ：織田おだ信勝のぶかつ（丹波たんば柏原かしわばら藩主はんしゅ）室しつ
  • 長男ちょうなん：松平まつだいら忠ただし倶

補足ほそく

• 忠重ただしげの長女ちょうじょが嫁とついだ信勝のぶかつの祖父そふは織田おだ信包のぶかねで、忠重ただしげの外祖父がいそふである織田おだ長ちょう益えきの兄あににあたる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ』巻まき第だい五ご
  • 『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ 第だい一いち輯』（国民こくみん図書としょ、1922年ねん）　NDLJP:1082717/24
  • 『新しん訂てい寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ 第だい一いち』（続つづけ群ぐん書しょ類従るいじゅう刊行かんこう会かい、1964年ねん）

関連かんれん項目こうもく

• デジタル版ばん 日本人にっぽんじん名めい大だい辞典じてん+Plus『松平まつだいら忠重ただしげ』 - コトバンク