(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ペスト - Wikipedia コンテンツにスキップ

ペスト

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ペスト
ペストきん
概要がいよう
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 A20.a
ICD-9-CM 020
MedlinePlus 000596
eMedicine med/3381
Patient UK ペスト
MeSH D010930
ペストでくろくなってしまった

ペストひゃく斯篤[1]ひゃく斯杜[1]ドイツ: Pest英語えいご: plague[ちゅう 1])とは、ペストきんによる感染かんせんしょう[2]症状しょうじょうは、発熱はつねつ脱力だつりょくかん頭痛ずつうなどがある[3]感染かんせんして1-7にち発症はっしょうする[2]感染かんせんしゃ皮膚ひふ内出血ないしゅっけつしてむらさき黒色こくしょくになるため、黒死病こくしびょう(こくしびょう、英語えいご: Black Deathドイツ: Schwarzer Tod)ともばれる。

感染かんせんルートや臨床りんしょうぞうによってせんペストはいペスト、敗血症はいけつしょうかたペストにけられる[4]ひとじゅう共通きょうつう感染かんせんしょうかつ動物どうぶつ由来ゆらい感染かんせんしょうである[4]ネズミ[ちゅう 2]などかじるい宿主しゅくしゅとし、おもノミによって伝播でんぱされるほか、野生やせい動物どうぶつペットからの直接ちょくせつ感染かんせんや、ヒト―ヒトあいだでの飛沫しぶき感染かんせん場合ばあいもある[4]感染かんせんした場合ばあい治療ちりょう抗生こうせい物質ぶっしつ支持しじ療法りょうほうによる[2]致命ちめいりつ非常ひじょうたかく、治療ちりょうした場合ばあい死亡しぼうりつやく10%だが、治療ちりょうおこなわれなかった場合ばあいには60%から90%にたっする[5](これはエボラ出血熱えぼらしゅっけつねつの40〜70%よりもたかい)。

英語えいご本来ほんらい伝染でんせんびょう全般ぜんぱん意味いみするplagueがペストをも意味いみするように、スペイン風邪かぜならんで伝染病でんせんびょう代表だいひょうするものとえる。世界せかい歴史れきしにおいて古来こらいふくすうかい世界せかいてきだい流行りゅうこう記録きろくされており、14世紀せいききただい流行りゅうこうでは、当時とうじ世界せかい人口じんこう4おく5000まんにんの22%にあたる1おくにん死亡しぼうしたと推計すいけいされているが、正式せいしき住民じゅうみん登録とうろく制度せいどはおろか正式せいしき記録きろく文書ぶんしょもないため信憑しんぴょうせい不明ふめいである[6]1894ねん香港ほんこんにおける発生はっせいパスツール研究所けんきゅうじょアレクサンドル・イェルサン英語えいごばん日本にっぽん北里きたさとしば三郎さぶろうによって原因げんいんきんめられ[7]有効ゆうこう感染かんせん防止ぼうし対策たいさくがなされ流行りゅうこうったが、近年きんねんでもペストの感染かんせんつづいている。2004-2015ねん世界せかいで56,734めい感染かんせんし、死亡しぼうしゃすうは4,651めい死亡しぼうりつ 8.2%)である[4]

日本にっぽん感染かんせんしょうほうでは一類いちるい感染かんせんしょう指定していされている[8]。なお、一類いちるい感染かんせんしょうでは唯一ゆいいつ細菌さいきん感染かんせんしょうである。

症状しょうじょうやまいがた

[編集へんしゅう]

おおくの場合ばあい潜伏期せんぷくきあいだは 2 - 7にちで、全身ぜんしん倦怠けんたいかんはじまって寒気さむけがし、39から40℃の高熱こうねつる。

そのの、ペストきん感染かんせん仕方しかた症状しょうじょう出方でかたによって「せんペスト」「はいペスト」などに分類ぶんるいされている。

つぎのようなやまいがた分類ぶんるいされている。

せんペスト(bubonic plague)

[編集へんしゅう]
せんペストの症状しょうじょうれい

リンパぶしおかされるのでこのがある。ペストのなかもっと頻度ひんどたかやまいがた。ペストに感染かんせんしたネズミから吸血きゅうけつしたノミにされた場合ばあい、まずされた付近ふきんのリンパぶし、ついでわきした鼠蹊そけいのリンパぶしれていたむ。リンパぶしはしばしばこぶしだいにまでがる。ペストきん肝臓かんぞう脾臓ひぞうでも繁殖はんしょくして毒素どくそ生産せいさんするので、その毒素どくそによって意識いしき混濁こんだくして心臓しんぞう衰弱すいじゃくし、治療ちりょうしなければ数日すうじつ死亡しぼうする。

皮膚ひふペスト・ペスト

ノミにされた皮膚ひふにペストきん感染かんせんし、膿疱のうほう潰瘍かいようをつくる。

敗血症はいけつしょうせい)ペスト(septicemic plague)

[編集へんしゅう]
敗血症はいけつしょうせいペストの症状しょうじょうれいあし皮膚ひふくろくなってしまっている。

1わりがこのタイプとされる。局所きょくしょ症状しょうじょうていしないままペストきん血液けつえきによって全身ぜんしんまわ敗血症はいけつしょうこすと、急激きゅうげきショック症状しょうじょう昏睡こんすい皮膚ひふのあちこちに出血しゅっけつまだらができて、手足てあし壊死えしこし全身ぜんしんくろあざだらけになって死亡しぼうする。

ペストの別名べつめいである“黒死病こくしびょう”は、この敗血症はいけつしょうせい)ペストの症状しょうじょうからまれた呼称こしょうである。

はいペスト(pneumonic plague)

[編集へんしゅう]

せんペストの流行りゅうこうつづいたのちこりやすいが、とき単独たんどく発生はっせいすることもある。せんペストを発症はっしょうしているひとてきはいきんまわって発病はつびょうする。また、はいペスト患者かんじゃせきやくしゃみによって飛散ひさんしたペストきんんで発病はつびょうすることもある。 頭痛ずつうや40℃程度ていど発熱はつねつ下痢げり気管支炎きかんしえん肺炎はいえんにより呼吸こきゅう困難こんなん血痰けったんともな肺炎はいえんとなる。呼吸こきゅう困難こんなんとなり治療ちりょうしなければ数日すうじつ死亡しぼうする。

原因げんいん

[編集へんしゅう]
吸血きゅうけつしたたくわえたオリエンタルラットノミ

ネズミイヌネコなどを宿主しゅくしゅとし、ノミ媒介ばいかいしてヒトに伝染でんせんする[8]。ペストは元々もともとかじるいとくクマネズミ)に流行りゅうこうした病気びょうきであるので、まずネズミなどのあいだ流行りゅうこうられたのちに、イヌ、ネコ、ノミなどをかいしてヒトに伝染でんせん人間にんげん社会しゃかい感染かんせん拡大かくだいするという経緯けいいをたどることがとくおおいとかんがえられている。

ヒトへの感染かんせん経路けいろはノミによる感染かんせんが78%、ペットふくしょう動物どうぶつからの感染かんせんが20%となっている[4]

ノミ→ヒト感染かんせん

[編集へんしゅう]

ペストきんネズミなどおも野性やせいかじるい感染かんせん動物どうぶつとし、これを吸血きゅうけつするノミ[ちゅう 3]媒介ばいかい節足動物せっそくどうぶつとする伝播でんぱサイクルにより自然しぜんかいにおいて維持いじされている[4]。ヒトがこのサイクルにはいむことによってペストきんへの感染かんせん成立せいりつする[4]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは野生やせいリスウサギプレイリードッグ感染かんせん宿主しゅくしゅである[4]

動物どうぶつ→ヒト感染かんせん

[編集へんしゅう]

ネコはネズミとう捕食ほしょくするため、保菌ほきんノミに曝露ばくろされ感染かんせんする[4]2014ねんにペットのいぬ感染かんせんげんとするヒトはいペスト流行りゅうこう報告ほうこくされた[4]モンゴル中国ちゅうごくでは、野生やせいマーモット猟師りょうしでペスト集団しゅうだん感染かんせん報告ほうこくされている[4]。このように動物どうぶつとの接触せっしょく感染かんせん報告ほうこくされているため、野生やせい動物どうぶつおよびペットとう愛玩あいがん動物どうぶつとの過度かど接触せっしょくにも留意りゅういすべきである[4]

感染かんせんネコからの飛沫しぶき感染かんせんはいペストを発症はっしょうしたれいも5れい報告ほうこくがある[4]

なお、ジビエしょくではラクダ肝臓かんぞう生食なましょくしてペストきんによる咽頭いんとうえん発症はっしょうしたサウジアラビアれいがある[4]

ヒト→ヒト感染かんせん

[編集へんしゅう]

一旦いったんヒトに感染かんせんしたのちの、「ヒト→ヒト感染かんせん」の経路けいろは、ペストの種類しゅるいによってやや傾向けいこうことなる。

  • せんペスト」の場合ばあい患者かんじゃ身体しんたいからきん汚染おせんされた体液たいえきし、衣服いふくにもつく。べつひと感染かんせんしゃ)が患者かんじゃ身体しんたい患者かんじゃ衣服いふくれるときんうつ感染かんせんする。
  • はいペスト」の場合ばあいは、患者かんじゃ肺炎はいえんにかかり、せきをし、きん大量たいりょうはいったたん血痰けったん)やつば飛沫しぶきり、感染かんせんしゃ身体しんたい表面ひょうめん衣服いふく周囲しゅういのモノなどにつき、そこから感染かんせんする(飛沫しぶき感染かんせん[4]のヒト(感染かんせんしゃ)が、感染かんせんしゃ身体しんたい衣服いふく周囲しゅういのモノなどにれるときん粘膜ねんまくからはい感染かんせんする。感染かんせんしゃ血痰けったんやツバの飛沫しぶき直接ちょくせつびた場合ばあい当然とうぜん感染かんせんする。

はいペスト患者かんじゃからのペストきんふくんだ血痰けったんなどは、1〜2メートルは飛散ひさんする[4]

診断しんだん

[編集へんしゅう]

血液けつえきたん、リンパぶしからのうみなどをサンプルとして採取さいしゅして検査けんさする。

治療ちりょう

[編集へんしゅう]

適切てきせつ抗菌こうきんやくによる治療ちりょうおこなわれなかった場合ばあい現在げんざいでも30%以上いじょう患者かんじゃ死亡しぼうし、せんペストでの死亡しぼうりつは30%から60%、はいペストの場合ばあいはさらに死亡しぼうりつたかまる[4]。これはエボラ出血熱えぼらしゅっけつねつ匹敵ひってきする。ただしペストは早期そうき適切てきせつ抗菌こうきんやく投与とうよすれば20%以下いかおさえることが可能かのうである。

感染かんせんしょう指定してい医療いりょう機関きかん隔離かくりされ、かぶごとにことなる感受性かんじゅせいのある抗生こうせい物質ぶっしつによる治療ちりょうおこなわれる。代表だいひょうてき抗菌こうきんやくとして、テトラサイクリンクロラムフェニコールストレプトマイシンドキシサイクリンシプロフロキサシンげられる。

治療ちりょうやくとしてフルオロキノロンけいアミノグリコシドけい、もしくはテトラサイクリンけい抗菌こうきんやく使用しようされる[4]

予防よぼう

[編集へんしゅう]

予防よぼうさくとして、

  • 感染かんせん予防よぼうさくとしては、ペストきん保有ほゆうするノミや、ノミの宿主しゅくしゅとなるネズミ駆除くじょ
  • せんペスト患者かんじゃ体液たいえきれない。
  • 患者かんじゃ部屋へやへのりを制限せいげん
  • 患者かんじゃの 2メートル以内いない接近せっきんする場合ばあいは、マスクよう保護ほご、アイソレーションガウン手袋てぶくろ着用ちゃくよう
  • テトラサイクリン、ドキシサイクリン、STごうざい予防よぼう内服ないふく

げられる。

なお、有効ゆうこうワクチン存在そんざいしない。コクラン共同きょうどう計画けいかくによるシステマティック・レビューによれば、ワクチンの有効ゆうこうせいについて言及げんきゅうできるしつ医学いがく研究けんきゅうつからなかった[9]

歴史れきし

[編集へんしゅう]

ペストはこれまでに3にわたる世界せかいてき流行りゅうこうをみている。

だい2のパンデミックは、1331ねん中国ちゅうごく大陸たいりく発生はっせいし、もと人口じんこう半分はんぶん減少げんしょうさせる猛威もういるったのち[10]貿易ぼうえきルートに沿ってヨーロッパ中東ちゅうとうきたアフリカ拡散かくさんし、およそ8000まんにんから1おくにんほどが死亡しぼうしたと推計すいけいされている。ヨーロッパでは、1348ねんから1420ねんにかけて断続だんぞくてき流行りゅうこうした[11]。ヨーロッパで猛威もういをふるったペストは、放置ほうちすると肺炎はいえんなどの合併症がっぺいしょうによりほぼ全員ぜんいん死亡しぼうし、たとえ治療ちりょうこころみたとしても、当時とうじ医療いりょう技術ぎじゅつでは十分じゅうぶん効果こうかられず、致命ちめいりつは30%から60%におよんだ[11]イングランドイタリアでは人口じんこうの8わり死亡しぼうし、全滅ぜんめつしたまちむらもあった。ペストによってもたらされた人口じんこうげんは、それまでの社会しゃかい構造こうぞう変化へんかいられるおおきな打撃だげきあたえた。

中国ちゅうごく大陸たいりくのペストは19世紀せいきふたた発生はっせい1894ねん世界せかいてき交易こうえきだったえいりょう香港ほんこんしたためパンデミックをこした。日本にっぽん政府せいふ北里きたさとしば三郎さぶろう調査ちょうさだん派遣はけんし、同年どうねん6がつ12にち香港ほんこん到着とうちゃく北里きたさとどう14にちにペストきん発見はっけんした(イェルサンとほぼ同時どうじ)。団員だんいんからも感染かんせんしゃたがきたさと現地げんちまり、石炭酸せきたんさん石灰せっかいえきによる消毒しょうどく有効ゆうこうなことをめ、さらに患者かんじゃいえ死骸しがいおおくあったネズミが媒介ばいかいしているとみられることを香港ほんこん政庁せいちょうつたえた[7]

1990年代ねんだい

[編集へんしゅう]
CDCによる汚染おせん地域ちいきしめ地図ちず (1998)

世界せかい保健ほけん機関きかん(WHO)の報告ほうこくによれば、1991ねん以降いこうヒトペストは増加ぞうかし 1996ねん患者かんじゃ3017にん(うち死亡しぼう205にん)、1997ねんには患者かんじゃ5419にん(うち死亡しぼう274にん)であった。ただし、WHOに報告ほうこくされたひとのペスト患者かんじゃすうは、がいして、実際じっさい患者かんじゃすうよりもすくなく、実態じったいはさらに深刻しんこくであった。

汚染おせん地域ちいきとされるのは、

  1. アフリカ山岳さんがく地帯ちたいおよび密林みつりん地帯ちたい
  2. アジア大陸たいりくひがし南部なんぶヒマラヤ山脈ひまらやさんみゃく周辺しゅうへんならびに熱帯ねったい雨林うりん地帯ちたい
  3. 中国ちゅうごくモンゴル亜熱帯あねったい草原そうげん地域ちいき
  4. アラビア半島はんとうからカスピ海かすぴかい北西ほくせい
  5. 北米ほくべい南西なんせいロッキー山脈さんみゃく周辺しゅうへん
  6. 南米なんべい北西ほくせいアンデス山脈あんですさんみゃく周辺しゅうへんならびに密林みつりん地帯ちたい

などである。

1992-1995ねん南米なんべいペルー流行りゅうこうがあった[4]

2000年代ねんだい

[編集へんしゅう]

WHOによれば 2004-2015ねん感染かんせんしゃは56,734めいで、死亡しぼうしゃすうは4,651めい死亡しぼうりつ 8.2%)であった[4][ちゅう 4]。このうち86%(48,699めい)は、マダガスカル(19,122めい)、コンゴ民主みんしゅ共和きょうわこく(14,175めい)、タンザニア(6,448めい)などのアフリカ諸国しょこくである[4]。マダガスカルでは2017ねんにも流行りゅうこうし、患者かんじゃ2,348めい死亡しぼう202れいであった[4]

2000年代ねんだいではアジアでも流行りゅうこうし、ベトナム(3,425めい)、インド(900めい)、ミャンマー(774めい)、中国ちゅうごく(584めい)が報告ほうこくされている[4]。2011-2015ねんでは中国ちゅうごく5めい、モンゴル5めいキルギス1めい、ロシア1めい[4]

ぜん世界せかいでの平均へいきん発生はっせいすうは、依然いぜんとして発生はっせいする地域ちいきてきアウトブレイクによる増減ぞうげんられるものの、1998ねん以降いこうおおきな変化へんかはない[12]

日本にっぽんにおけるペスト発生はっせい

[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおいてペストは、明治めいじ以前いぜん発生はっせい確認かくにんされていない[13]最初さいしょ報告ほうこくは、1896ねん明治めいじ29ねん)に横浜よこはま入港にゅうこうした中国人ちゅうごくじん船客せんきゃくで、3月29にち横浜よこはま上陸じょうりくし、同地どうち中国人ちゅうごくじん病院びょういんで3がつ31にち死亡しぼうした[14][15]。1899ねん明治めいじ32ねん)9がつ横浜よこはまおきでの「亜米利加あめりかまる検疫けんえき船倉ふなぐらから高熱こうねつしている中国人ちゅうごくじん船員せんいんつかり、横浜よこはま海港かいこう検疫けんえきしょ施設しせつ隔離かくりして検査けんさしたところペストと判明はんめい関東かんとう上陸じょうりく阻止そしされた。このとき検疫けんえきかんだったのが野口のぐち英世ひでよである[7]

だがその大小だいしょう流行りゅうこうふくすうかいあった[16]。1899ねん明治めいじ32ねん)11月が最初さいしょ流行りゅうこうで、台湾たいわんから門司もじこう帰国きこくした日本人にっぽんじん会社かいしゃいん広島ひろしま発病はつびょうして死亡しぼう。その半月はんつきあいだ神戸こうべうち大阪おおさかうち浜松はままつ発病はつびょう死者ししゃ発生はっせいした。1899ねんは45にんのペスト患者かんじゃ発生はっせい、40にん死亡しぼうした。

香港ほんこんでペストきん発見はっけんした北里きたさとしば三郎さぶろう指導しどう当局とうきょくはペストの蔓延まんえん防止ぼうしつとめた[7]翌年よくねん1がつ15にちより東京とうきょう予防よぼうのため、ネズミを1ひきあたり5ぜにげた[17]火葬かそうじょう焼却しょうきゃくされたネズミのれい供養くようするためのねずみづかが1902ねん明治めいじ44ねん)、渋谷しぶや祥雲寺しょううんじ境内けいだいてられた[7]。1901ねん明治めいじ34ねん)5がつ29にち警視庁けいしちょうはペスト予防よぼうのため、屋内おくないのぞはだしあし裸足はだし)での歩行ほこう禁止きんしちょうれいだい41ごう[18]車夫しゃふ馬丁ばていなどの裸足はだし厳禁げんきんした[19]日本にっぽん』(新聞しんぶんによれば、10月6にち横浜よこはまでペスト患者かんじゃ発生はっせいし、10月30にち発生はっせい地域ちいき家屋かおく12はらい、12月24にちには東京とうきょうでペスト患者かんじゃ発生はっせいした。最大さいだい流行りゅうこうは1905-1910ねん大阪おおさかで、958めい患者かんじゃ発生はっせいし、社会しゃかいてきおおきな影響えいきょうあたえた[20]。このさい紡績ぼうせき工場こうじょうでの患者かんじゃ発生はっせいつづいたことから、ペスト流行りゅうこうのインドから輸入ゆにゅうされた綿花めんか混入こんにゅうしたネズミが感染かんせんげんというのが通説つうせつになった[7]。1914ねん4がつ東京とうきょうでペストが流行りゅうこうし、年末ねんまつまでの死者ししゃは41にん。1899ねんから1926ねんまでの日本にっぽん感染かんせんれいは2,905めいで、死亡しぼうれい2,420めい報告ほうこくされた[4]

1927ねん昭和しょうわ2ねん以降いこう国内こくない感染かんせんれいはない[16][ちゅう 5]

日本にっぽんにおける対応たいおうについて

[編集へんしゅう]

感染かんせんしょう指定してい医療いりょう機関きかん指定していじょうきょう

[編集へんしゅう]

2019ねん平成へいせい31ねん)4がつ1にち現在げんざい日本にっぽん国内こくないにおける感染かんせんしょう指定してい医療いりょう機関きかん指定していじょうきょうは、特定とくてい感染かんせんしょう指定してい医療いりょう機関きかんが4医療いりょう機関きかん(10しょう)でだい一種いっしゅ感染かんせんしょう指定してい医療いりょう機関きかん が55医療いりょう機関きかん(103しょう)である(うち2かしょ特定とくてい感染かんせんしょう指定してい医療いりょう機関きかん重複じゅうふくしている。)[21]

検査けんさ方法ほうほう

[編集へんしゅう]

細菌さいきんがくてき検査けんさほうについては、国立こくりつ感染かんせんしょう研究所けんきゅうじょさだめられている「ペストの病原びょうげんたい検査けんさ診断しんだんマニュアル[22]」にしたがって実施じっしする[23]

確定かくてい診断しんだんには、下記かき要件ようけん必要ひつようかんがえられている。

なお、実際じっさいのペスト確定かくていにはペストきん培養ばいようされ、そのきんがあらゆる検査けんさほう陽性ようせいしめこと必要ひつようかんがえられ、実際じっさい確定かくてい作業さぎょうおよびその結果けっかかんして十分じゅうぶん議論ぎろんうえ慎重しんちょうおこな必要ひつようがあるとかんがえられる。 — 厚生こうせい労働省ろうどうしょう健康けんこうきょく結核けっかく感染かんせんしょう一類いちるい感染かんせんしょうへの行政ぎょうせい対応たいおう手引てび

回復かいふくしゃ管理かんり

[編集へんしゅう]

入院にゅういんしているペスト患者かんじゃ退院たいいんする場合ばあいには、あらかじめ病原びょうげんたい保有ほゆうしていないことを確認かくにんする必要ひつようがある。病原びょうげんたい保有ほゆうしていないことの確認かくにん方法ほうほうは、「感染かんせんしょう病原びょうげんたい保有ほゆうしていないことの確認かくにん方法ほうほうについて[24]」にもとづき検査けんさ実施じっしする[23]

患者かんじゃについては、抗菌こうきんざい服薬ふくやく中止ちゅうし24時間じかん以上いじょう経過けいかしたのちに24時間じかん以上いじょう間隔かんかくいた連続れんぞくかい検査けんさ(ジフテリアの場合ばあい咽頭いんとうぬぐいえき、ペストの場合ばあい喀痰かくたんはいペスト)、分泌ぶんぴつえきせんペスト)また血液けつえき敗血症はいけつしょうペスト))によって、いずれも病原びょうげんたい検出けんしゅつされなければ、病原びょうげんたい保有ほゆうしていないものとかんがえてよい。 — 厚生こうせい労働省ろうどうしょう感染かんせんしょう病原びょうげんたい保有ほゆうしていないことの確認かくにん方法ほうほうについて


文芸ぶんげい作品さくひん

[編集へんしゅう]
  • ジョヴァンニ・ボッカッチョデカメロン』(1349-51ねん) - 1348ねんのペストを題材だいざいとする。
  • 舞踏ぶとう (美術びじゅつ) - 14世紀せいきごろのペスト流行りゅうこうをきっかけとして成立せいりつ
  • イブン・バットゥータだい旅行りょこう』- 14世紀せいきイスラーム世界せかいにおけるペスト被害ひがい記述きじゅつがある。
    • イブン・バットゥータ 『だい旅行りょこうイブン・ジュザイイ英語えいごばんへん家島いえじま彦一ひこいち訳注やくちゅう平凡社へいぼんしゃ東洋文庫とうようぶんこ〉(ぜん8かん)、1996ねん-2002ねんNCID BN14503129
  • シェイクスピアロミオとジュリエット』(1595ねんごろ) - 作中さくちゅうでペストが重要じゅうよう役割やくわりつ。
おも日本語にほんごやく
おも日本語にほんごやく

関連かんれん法規ほうき

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ pest(英語えいご)は(伝染でんせんびょう媒介ばいかいする)害虫がいちゅうがいじゅう
  2. ^ 漢字かんじいち文字もじでは「癙」(疒部ねずみ)といておいて「ペスト」とむこともある。
  3. ^ ペストに感染かんせんしたネズミについたノミ(とくケオプスネズミノミ英語えいごばん)がそのう。
  4. ^ WHOの報告ほうこくによれば、2004ねんから2009ねんまでのあいだ世界せかい全体ぜんたい患者かんじゃすうは1まん2503にん。うち、死亡しぼうしゃはアフリカ、アジア、アメリカしゅうの16ヶ国かこくから843にん調査ちょうさ期間きかん毎年まいとしペスト患者かんじゃ報告ほうこくされていたくには、コンゴ民主みんしゅ共和きょうわこくマダガスカル、ペルー、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの4かこく
  5. ^ 1930ねんとも[8]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b 大槻おおつき文彦ふみひこちょ 「ペスト」『大言たいげんうみ新編しんぺんばん冨山とやまぼう、1982ねん、1852ぺーじ
  2. ^ a b c Plague”. World Health Organization(世界せかい保健ほけん機関きかん (October 2017). 8 November 2017閲覧えつらん
  3. ^ Symptoms Plague” (英語えいご). CDC (September 2015). 8 November 2017閲覧えつらん
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y ペストとは国立こくりつ感染かんせんしょう研究所けんきゅうじょ、2019ねん12月27にち改訂かいてい
  5. ^ FAQ Plague” (英語えいご). CDC (September 2015). 8 November 2017閲覧えつらん
  6. ^ Historical Estimates of World Population アメリカ国勢調査こくせいちょうさきょく推計すいけい
  7. ^ a b c d e f たずねて 1899】ペスト防衛ぼうえい東京とうきょう横浜よこはま北里きたさと野口のぐち水際みずぎわ発見はっけん北海道新聞ほっかいどうしんぶん日曜にちよう朝刊ちょうかんべつり2020ねん10がつ25にち1-2めん
  8. ^ a b c 日本にっぽん小児科しょうにか学会がっかい 予防よぼう接種せっしゅ感染かんせん対策たいさく委員いいんかい学校がっこう幼稚園ようちえん保育ほいくしょにおいて予防よぼうすべき感染かんせんしょう解説かいせつ”. 厚生こうせい労働省ろうどうしょう. 2020ねん1がつ22にち閲覧えつらん
  9. ^ Jefferson T, Demicheli V, Pratt M (2000). Jefferson, Tom. ed. “Vaccines for preventing plague”. Cochrane Database Syst Rev (2): CD000976. doi:10.1002/14651858.CD000976. PMC 6532692. PMID 10796565. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6532692/. 
  10. ^ How Pandemics EndNew York Times、MAY. 10, 2020(2020ねん10がつ27にち閲覧えつらん
  11. ^ a b Suzanne Austin Alchon(2003),A Pest in the Land: New World Epidemics in a Global Perspective, p.21(ひょう
  12. ^ ペスト:地域ちいきべつ罹患りかんりつ死亡しぼうりつ検討けんとう-2004ねん〜2009ねん CDC Travelers' Health, Outbreak Notice(2010ねん2がつ18にち)2017ねん3がつ4にち
  13. ^ 瀬上せのうえ清貴きよたか健康けんこう危機きき管理かんり治世ちせい (PDF)国立こくりつ保健ほけん医療いりょう科学かがくいん
  14. ^ 高木たかぎ友枝ともえ横濱よこはまノ「ペスト」びょう」『細菌さいきんがく雜誌ざっし』1896ねん 1895and1896かん 5ごう p.319-322, doi:10.14828/jsb1895.1895and1896.319
  15. ^ 時事新報じじしんぽう
  16. ^ a b ペストとは 国立こくりつ感染かんせんしょう研究所けんきゅうじょ
  17. ^ 警視庁けいしちょう東京とうきょう広報こうほう 明治めいじ33ねんつづり
  18. ^ はだしあし厳禁げんきんちょうれい発足ほっそく」『毎日新聞まいにちしんぶん』1901ねん5月31にち。『新聞しんぶん集成しゅうせい明治めいじ編年史へんねんし. だいじゅういちかん国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん近代きんだいデジタルライブラリー、2014ねん7がつ3にち閲覧えつらん
  19. ^ 警視庁けいしちょう東京とうきょう広報こうほう 明治めいじ34ねんつづり
  20. ^ 坂口さかぐちまこと近代きんだい大阪おおさかのペスト流行りゅうこう, 1905-1910ねん」『三田みた学会がっかい雑誌ざっし』2005ねん 97かん 4ごう p.561-581, NAID 120005440787, 慶應義塾けいおうぎじゅく経済けいざい学会がっかい
  21. ^ 感染かんせんしょう指定してい医療いりょう機関きかん指定していじょうきょう平成へいせい31ねん4がつ1にち現在げんざい”. www.mhlw.go.jp. 厚生こうせい労働ろうどうしょう. 2020ねん12月14にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2020ねん12月14にち閲覧えつらん
  22. ^ ペストの病原びょうげんたい検査けんさ診断しんだんマニュアル” (PDF). 国立こくりつ感染かんせんしょう研究所けんきゅうじょ (2012ねん5がつ). 2020ねん12月14にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2020ねん12月14にち閲覧えつらん
  23. ^ a b 一類いちるい感染かんせんしょうへの行政ぎょうせい対応たいおう手引てびき(あん)” (PDF). 厚生こうせい労働ろうどうしょう. 2020ねん12月14にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2020ねん12月14にち閲覧えつらん
  24. ^ ジフテリアおよびペスト”. 感染かんせんしょう病原びょうげんたい保有ほゆうしていないことの確認かくにん方法ほうほうについて. 厚生こうせい労働ろうどうしょう. 2020ねん12月14にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2020ねん12月14にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

関連かんれん資料しりょう

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

医学いがく

[編集へんしゅう]

歴史れきし

[編集へんしゅう]

文化ぶんか

[編集へんしゅう]

代名詞だいめいし

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]