石鹸せっけん

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マルセイユ石鹸せっけん(サヴォン・ド・マルセイユ)

石鹸せっけんいし鹼、せっけん、シャボン、: sabão西にし: jabón)は、一般いっぱんよごとしの洗浄せんじょうざいしめかたりである。また高級こうきゅう脂肪酸しぼうさんしおえん総称そうしょうである。

一般いっぱん用語ようごとしての石鹸せっけん化学かがく用語ようごとしての石鹸せっけんかさなりうことがおおいが、化学かがくてきには石鹸せっけんではないものが一般いっぱんてき石鹸せっけんばれている場合ばあいや、そのぎゃく場合ばあいがある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

界面かいめん活性かっせいざいであり、あぶらあぶらふくよごれをみず分散ぶんさんさせる作用さようにより洗浄せんじょう能力のうりょく発揮はっきする[1]

物体ぶったい付着ふちゃくした細菌さいきんやウイルスを物理ぶつりてきあらとす除菌じょきん効果こうかがある。また、細菌さいきん細胞さいぼうまくウイルスエンベロープ破壊はかいするため、一部いちぶ病原びょうげんたいたいして消毒しょうどく効果こうか発揮はっきする[2]ぎゃくせい石鹸せっけんや、殺菌さっきん成分せいぶん添加てんかした一部いちぶ薬用やくよう石鹸せっけん普通ふつうのものにくらつよ殺菌さっきん作用さようゆうする。

石鹸せっけん主成分しゅせいぶん脂肪酸しぼうさんしおであり、牛脂ぎゅうしひつじあぶらぶたあぶら硬化こうか・ヤシ綿実油めんじつゆなどの油脂ゆし水酸化すいさんかナトリウムなどの塩基えんき鹸化けんかすることによってつくることができる[3]成分せいぶん脂肪酸しぼうさんしおだけで、添加てんかぶつふくまない石鹸せっけんとくじゅん石鹸せっけんぶが、おおくの石鹸せっけんじゅん石鹸せっけんではなく、炭酸たんさんしお香料こうりょうなどが添加てんかされている。

石鹸せっけん古代こだいから手作てづくりされてきた。現代げんだいでも家庭かてい容易ようい手作てづくりすることができるが、市販しはんひんのほとんどは工業こうぎょうてきつくられている。

一般いっぱんにはみず溶媒ようばいとしてかして使用しようするものであるが、みずなしで使つかえるよう工夫くふうされたドライシャンプーもあり、介護かいご災害さいがい宇宙うちゅうステーションでも使用しようされている[4]

石鹸せっけん硬水こうすいでは泡立あわだたず、石鹸せっけんかすを形成けいせいするため洗浄せんじょう効果こうか低下ていかする[5][6]

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

成分せいぶんによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

ナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属きんぞくしおのアルカリ石鹸せっけんと、アルカリ金属きんぞく以外いがい金属きんぞくしお金属きんぞく石鹸せっけん分類ぶんるいされ、石鹸せっけんといえば通常つうじょう前者ぜんしゃす。

アルカリ石鹸せっけん水溶すいようせい表面ひょうめん活性かっせいいちじるしく、おこりあわりょくをもち洗浄せんじょうりょくがすぐれる。

使用しようするアルカリ金属きんぞく種類しゅるいによって、せっけんの性状せいじょうことなる。水酸化すいさんかナトリウムからつくられるナトリウム石鹸せっけん固形こけいで、水酸化すいさんかカリウムからつくられるカリウム石鹸せっけんやわらかく、液状えきじょうであることがおおい。リチウムせっけんもかた傾向けいこうがある。リチウムせっけんは、もっぱらグリースとしてもちいられる。

用途ようとによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

身体しんたいよう石鹸せっけん[編集へんしゅう]

ひと身体しんたいかおふくむ)にもちいる石鹸せっけんである。各国かっこく薬事やくじほうなどの規制きせいける[7]浴用よくよう石鹸せっけん(ボディーソープ)、洗顔せんがんよう石鹸せっけん手洗てあらよう石鹸せっけん(ハンドソープ)、薬用やくよう石鹸せっけんなどがある。固形こけいこな石鹸せっけんはナトリウム石鹸せっけんで、液体えきたい石鹸せっけん・ボディーソープ・シャンプー溶解ようかいおおきいカリウム石鹸せっけんである。また、ナトリウム石鹸せっけん・カリウム石鹸せっけん併用へいようしたものもある。「合成ごうせい固形こけい石鹸せっけん」は石鹸せっけんではなく、日本にっぽん医薬品いやくひん医療いりょう機器ききとうほうでは「化粧けしょうひん」としてあつかわれている。

一般いっぱんに「化粧けしょう石鹸せっけん」という言葉ことば使つかわれることがあるが、これには明確めいかく定義ていぎはない[7]身体しんたいよう固形こけい石鹸せっけんを「化粧けしょう石鹸せっけん」とぶこともあれば、「洗顔せんがん石鹸せっけん」と「浴用よくよう石鹸せっけん」をひっくるめて「化粧けしょう石鹸せっけん」とぶこともある[7]。いずれの場合ばあいも「化粧けしょう石鹸せっけん」は通常つうじょう固形こけい石鹸せっけんだけをし、液体えきたい石鹸せっけんふくまれない[7]

薬用やくよう石鹸せっけん
殺菌さっきん消毒しょうどくよう身体しんたい一部いちぶ食器しょっき布巾ふきんなどにもちいる。日本にっぽん医薬品いやくひん医療いりょう機器ききとうほうでは医薬いやく部外ぶがいひんとしてあつかわれている。殺菌さっきん成分せいぶんとしてトリクロカルバン、トリクロロカルバニリド、イソプロピルメチルフェノールなどをふくむ。
2016ねん9がつ米国べいこく食品しょくひん医薬品いやくひんきょく (FDA) トリクロサン、トリクロカルバンとう19成分せいぶん含有がんゆうする抗菌こうきんせっけんの米国べいこくないでの販売はんばい停止ていしする方向ほうこうであると発表はっぴょうした[8]。これをけて、日本にっぽん厚生こうせい労働省ろうどうしょうもトリクロサンとうふく薬用やくようせっけんの成分せいぶん変更へんこううなが通知つうちおこなった[9][10]
日本にっぽん薬局方やっきょくほう薬用やくよういしケン
日本にっぽん薬局方やっきょくほう収載しゅうさいされている医薬品いやくひんで、医療いりょうよう洗浄せんじょうざいリニメントざい坐薬ざやくもとざい、瀉下浣腸かんちょうもちいる[11]殺菌さっきん消毒しょうどくようではない。白色はくしょくないしあわ黄白こうはくしょく粉末ふんまつまたはつぶで、においがある[11]

身体しんたい以外いがいよう石鹸せっけん[編集へんしゅう]

洗濯せんたくよう石鹸せっけん
手洗てあらけの固形こけい石鹸せっけんと、洗濯せんたくけのこな石鹸せっけん合成ごうせい洗剤せんざいより高価こうかだが、水質すいしつ汚染おせん皮膚ひふえん蛍光けいこうざいによる衣類いるい褪色たいしょくける効果こうか期待きたいできる。水温すいおんたかいほど洗浄せんじょうりょくがることから、風呂ふろのこ利用りようすることがおおい。また、石鹸せっけんかすの残留ざんりゅうによるばみをおさえるため、クエン酸くえんさん使つかわれる。
台所だいどころよう石鹸せっけん
使用しよう食器しょっき洗浄せんじょう食品しょくひん寄生虫きせいちゅうたまご除去じょきょよう食器しょっきすべりやすく、破損はそんリスクがたか欠点けってんがある。近年きんねん普及ふきゅうした食器洗しょっきあら構造こうぞうじょうせっけんが使用しようしにくいが、成分せいぶん調整ちょうせいした製品せいひんもある。

工業こうぎょうよう石鹸せっけん[編集へんしゅう]

工場こうじょうなどの機械きかい部品ぶひんについたあぶらよごれの除去じょきょ目的もくてきとする。よごれの程度ていどつよいため、木材もくざいパーライトなどの研磨けんまざいふくむものがおおい。

形状けいじょうによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

液体えきたい石鹸せっけんとレフィル(よう

鹸化けんか使用しようするアルカリによってかたまりやすさがわるため、固形こけい液体えきたい製造せいぞう段階だんかいかれる。水酸化すいさんかカリウムで鹸化けんかしたものはカリ石鹸せっけん脂肪酸しぼうさんカリウム)、水酸化すいさんかナトリウムで鹸化けんかしたものはナトリウム石鹸せっけん脂肪酸しぼうさんナトリウム)とばれ、カリ石鹸せっけんはナトリウム石鹸せっけんより融点ゆうてんひくい。

固形こけい石鹸せっけん (Bar soap)[編集へんしゅう]

ナトリウム石鹸せっけんおさまるサイズに成形せいけいしたもの。ただし、洗濯せんたく石鹸せっけんではキログラム単位たんいのものもある。乾燥かんそうするとひびれることから、防湿ぼうしつ包装ほうそうされる。プラスチック包装ほうそう普及ふきゅうするまではパラフィン(グラシン)がもちいられた。

かみ石鹸せっけん[編集へんしゅう]

固形こけい石鹸せっけんかみのようにうすいだもので、手洗てあらいちかいぶんとして携帯けいたい可能かのうである。もともとは子供こどもけで駄菓子だがしなどでられていた[注釈ちゅうしゃく 1]

下火したびとなっていたが、新型しんがたコロナウイルス流行りゅうこうともな手指しゅし洗浄せんじょう除菌じょきんへの関心かんしんたかまり、ふたた注目ちゅうもくされつつある[12][13][14]

粉末ふんまつ石鹸せっけん[編集へんしゅう]

おも洗濯せんたくよう石鹸せっけん形状けいじょう必要ひつようりょう計量けいりょうしやすく、かしやすい。

液体えきたい石鹸せっけん[編集へんしゅう]

常温じょうおんでゼリーじょうから粘液ねんえきじょうになるカリ石鹸せっけん適度てきど加水かすいしたもの。ホテルなど宿泊しゅくはく施設しせつではったぶんだけ補充ほじゅうすればよいてん管理かんり有利ゆうりなため普及ふきゅうしている。手洗てあらよう(ハンドソープ)と浴用よくよう(ボディソープ)があり、前者ぜんしゃ殺菌さっきん洗浄せんじょうを、後者こうしゃ香料こうりょう保湿ほしつ重視じゅうししている。液状えきじょう以外いがいゲルじょうあわじょう(プッシュしき容器ようきによる)の製品せいひんがある。

石鹸せっけんではないもの[編集へんしゅう]

界面かいめん活性かっせいざいとして脂肪酸しぼうさんしお利用りようしていないため石鹸せっけんではないが、一般いっぱんに、または法令ほうれいじょう石鹸せっけん」とされているものがある。

ぎゃくせい石鹸せっけん陽性ようせい石鹸せっけん[編集へんしゅう]

界面かいめん活性かっせいざいとして脂肪しぼうぞくアミンだいよんきゅうアンモニウムイオン)をもちいる。界面かいめん活性かっせいつイオンがイオンであるため、イオン界面かいめん活性かっせいざい分類ぶんるいされる。石鹸せっけん脂肪酸しぼうさんイオンはかげイオンであり、性質せいしつぎゃくなのでぎゃくせい石鹸せっけんばれる。

洗浄せんじょうりょくひくいが殺菌さっきんりょくつよく、殺菌さっきんざい消毒しょうどくやくとして利用りようされる。石鹸せっけん混合こんごうすると界面かいめん活性かっせいざい同士どうし中和ちゅうわ反応はんのうこして相殺そうさいし、効果こうかげんじる。

塩化えんかベンザルコニウム塩化えんかベンゼトニウム外用がいよう消毒しょうどくやくとして器具きぐなどの消毒しょうどくもちいられている。

両性りょうせい石鹸せっけん[編集へんしゅう]

両性りょうせいイオン界面かいめん活性かっせいざい分類ぶんるいされる殺菌さっきんざい消毒しょうどくやく利用りようされる。普通ふつう石鹸せっけん混合こんごうしても殺菌さっきんりょくがある程度ていど維持いじされる。

ステンレスソープ[編集へんしゅう]

金属きんぞくのイオンせい利用りようしたくさ製品せいひん作用さよう原理げんりまったことなる。

石鹸せっけんつくミセル構造こうぞう石鹸せっけん分子ぶんしは、そのひとひとつのりょうはしおやもと親水しんすいもとち、よごれ(≒)があると、そこに多数たすう石鹸せっけん分子ぶんしおやもとがわ次々つぎつぎき、結果けっかとして内側うちがわおやもと外側そとがわ親水しんすいもとけた状態じょうたい多数たすう分子ぶんしきがそろい、つつむようにして球状きゅうじょうのミセルとなり、みずとともにながれてゆく状態じょうたいになる。

歴史れきし[編集へんしゅう]

起源きげん[編集へんしゅう]

17世紀せいき中頃なかごろ石鹸せっけん工場こうじょうえがいた版画はんが

石鹸せっけん歴史れきし紀元前きげんぜん3000年代ねんだいはじまるといわれている[15]

古代こだいからみずだけでちにくいよごれにたいして粘土ねんど灰汁あく植物しょくぶつあぶら種子しゅし[注釈ちゅうしゃく 2]などが利用りようされていたが、やがて動物どうぶつにくくときにしたたちた脂肪しぼうたきぎはい混合こんごうぶつあめり、アルカリによる油脂ゆし鹸化けんか自然しぜん発生はっせいして石鹸せっけん発見はっけんされたとかんがえられている。石鹸せっけんの「鹸」は「灰汁あく」や「塩基えんき(アルカリ)」を意味いみするであり(鹸性=塩基えんきせいアルカリ性あるかりせい)、石鹸せっけんひらたく解釈かいしゃくすれば「固形こけい塩基えんき」「固形こけいアルカリ」となる。

伝説でんせつではかみへの供物くもつとしてひつじいたときのあぶらはい石鹸せっけんらしきものが誕生たんじょうしたとされ、それが古代こだいローマの「サポーのおか英語えいごばん」での出来事できごとであり soap語源ごげんになったとされている[15][16]一方いっぽうシュメール粘土ねんどばん薬用やくよう石鹸せっけん記述きじゅつがみられる。中東ちゅうとうでは現在げんざいでも石鹸せっけん地場じば産業さんぎょうとなっている地域ちいきナーブルスアレッポなど)がある[17]

普及ふきゅう[編集へんしゅう]

ヨーロッパではプリニウス博物はくぶつ記載きさい最初さいしょで、ゲルマンじんガリアじんもちいていたこと、すでにしおおこなわれていたことがしるされている。そのいったんすたれるが、アラビアじんつたわり生石灰せいせっかい使つか製造せいぞうほうひろまると8世紀せいきにスペイン経由けいゆさい導入どうにゅうされ、家内かない工業こうぎょうとして定着ていちゃくしていった。12世紀せいき以降いこう、それまでのカリ石鹸せっけんわりオリおりブ油ぶゆ原料げんりょうとする固形こけいのソーダ石鹸せっけん地中海ちちゅうかい沿岸えんがん中心ちゅうしんひろまり、とくフランスマルセイユ9世紀せいき以降いこう主要しゅよう集散しゅうさんから生産せいさん中心ちゅうしんとなった。

18世紀せいきまつには産業さんぎょう革命かくめいのもとで原料げんりょうのアルカリざい大量たいりょう生産せいさん可能かのうとなったことで、石鹸せっけん大量たいりょう生産せいさんされるようになり普及ふきゅうした[15]医学いがく進歩しんぽともあいまって、皮膚ひふびょうおおくの経口けいこう伝染でんせんびょう減少げんしょうした[18]

1916ねんにはドイツで世界せかいはつ合成ごうせい洗剤せんざい誕生たんじょう[15]。1933ねんにはアメリカで世界せかいはつ家庭かていよう合成ごうせい洗剤せんざい発売はつばいされた[15]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんには安土あづち桃山ももやま時代じだい西洋せいようじんによりつたえられたと推測すいそくされている[19]最古さいこたしかな文献ぶんけんは、1596ねん慶長けいちょう元年がんねん8がつ)、石田いしだ三成みつなり博多はかた豪商ごうしょう神屋かみやそうじんおくったシャボンの礼状れいじょうである。

最初さいしょ石鹸せっけん製造せいぞうしたのは、江戸えど時代じだい蘭学らんがくしゃ宇田川うだがわ榛斎しんさい宇田川うだがわようで、1824ねん文政ぶんせい7ねん)のことである。ただし、これは医薬品いやくひんとしてであった[20]

最初さいしょ洗濯せんたくよう石鹸せっけん商業しょうぎょうレベルで製造せいぞうしたのは、横浜よこはま磯子いそごつつみいそみぎ衛門えもんである[20]つつみいそみぎ衛門えもん石鹸せっけん製造せいぞうしょ1873ねん明治めいじ6ねん)3がつ横浜よこはま三吉みつよしまちよん丁目ちょうめげんみなみ万世まんせいまち2丁目ちょうめ25番地ばんち付近ふきん)で日本にっぽん最初さいしょ石鹸せっけん製造せいぞうしょ創業そうぎょう同年どうねん7がつ洗濯せんたく石鹸せっけん翌年よくねんには化粧けしょう石鹸せっけん製造せいぞう成功せいこうした。1877ねん明治めいじ10ねん)、だい1かい内国ないこく勧業かんぎょう博覧はくらんかいはなもんしょう受賞じゅしょう。その香港ほんこん上海しゃんはいへも輸出ゆしゅつされ、明治めいじ10年代ねんだい前半ぜんはん石鹸せっけん製造せいぞう事業じぎょう最盛さいせいむかえた。1890ねん明治めいじ23ねん)、時事新報じじしんぽう主催しゅさい優良ゆうりょう国産こくさん石鹸せっけん大衆たいしゅう投票とうひょうだい1になったが、全国ぜんこくてききょうのなかで経営けいえい規模きぼ縮小しゅくしょうした。翌年よくねん創業そうぎょうしゃいそみぎ衛門えもん死去しきょ。その2ねん1893ねん明治めいじ26ねん)、廃業はいぎょうした。かれ門下もんか花王かおう資生堂しせいどうなどで製造せいぞうつづけた。

日本にっぽん一般いっぱん石鹸せっけん普及ふきゅうしたのは1900年代ねんだいはいってからである[15]

銭湯せんとうでは明治めいじ10年代ねんだいから使用しようされはじめ、洗濯せんたく石鹸せっけんのことを「あら石鹸せっけん」、洗面せんめん石鹸せっけんのことを「かお石鹸せっけん」としょうしていた[19]。また、艦上かんじょう真水まみず貴重きちょうだった大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐんではそれぞれセンセキ、メンセキとんでいたという。

だい世界せかい大戦たいせん直前ちょくぜんには、原料げんりょう油脂ゆし入手にゅうしゅ困難こんなんとなったことから石鹸せっけん規格きかく価格かかく統一とういつ段階だんかいてきすすみ、結果けっかてきに1940ねんにはかく石鹸せっけんブランドが一時いちじてき消滅しょうめつした。名称めいしょう化粧けしょう石鹸せっけんから浴用よくよう石鹸せっけんへ、さらに洗濯せんたく石鹸せっけん統合とうごうされて家庭かていよう石鹸せっけんとなった。1943ねんには、ベントナイト混入こんにゅうした戦時せんじ石鹸せっけん登場とうじょう。さらによく1944ねんには2ごう石鹸せっけんとしてカオリン混入こんにゅう、3ごう石鹸せっけんとしてこん和物あえものを80 %までみとめた石鹸せっけん製造せいぞうされた。これらはどろ石鹸せっけんばれたが、戦争せんそう終結しゅうけつはさらに劣悪れつあく石鹸せっけん流通りゅうつうした[21]当時とうじ混和こんわざいとしてもちいられたベントナイトやカオリンは、戦後せんご登場とうじょうしたクレンジングよう洗顔せんがん石鹸せっけんなどにえて利用りようされることがある。

製法せいほう[編集へんしゅう]

石鹸せっけん工場こうじょう現場げんば
製造せいぞう工程こうてい

油脂ゆし鹸化けんかほう脂肪酸しぼうさん中和ちゅうわほう、エステル鹸化けんかほうの3種類しゅるいがある。原料げんりょう天然てんねん油脂ゆしアルカリのみだが、製法せいほうによって最終さいしゅう製品せいひんふくまれないふく原料げんりょう使用しようする。天然てんねん油脂ゆしとしておも牛脂ぎゅうしヤシが、そのにもオリおりブ油ぶゆうまこめツバキなど様々さまざま油脂ゆしもちいられている。

油脂ゆし鹸化けんかほう
原料げんりょう油脂ゆし水酸化すいさんかナトリウム鹸化けんかし、食塩しょくえんしおして分離ぶんりする。原料げんりょう油脂ゆしぜん処理しょりをしない古来こらいからの製法せいほうで、がま通称つうしょうされる。品質ひんしつがやや不安定ふあんていだが個性こせいてき石鹸せっけんつくれるため、おも小規模しょうきぼ事業じぎょうしゃおこなう。
脂肪酸しぼうさん中和ちゅうわほう
原料げんりょう油脂ゆし高温こうおん加水かすい分解ぶんかいしてられた脂肪酸しぼうさん蒸留じょうりゅうしてグリセリンから分離ぶんりし、単独たんどく中和ちゅうわする。アルカリの残留ざんりゅうがないはだにやさしい石鹸せっけんられ、大量たいりょう生産せいさんてき品質ひんしつ安定あんていするため、だい規模きぼメーカーの製造せいぞう連続れんぞく中和ちゅうわほう)に使つかわれる。分離ぶんりしたグリセリンは保湿ほしつ機能きのうつため、あとでもど配合はいごうする場合ばあいもある。
エステル鹸化けんかほう
ぜん処理しょりとして、原料げんりょう油脂ゆしトリアシルグリセロール)にメチルアルコール反応はんのうさせ、エステル交換こうかん反応はんのうによって脂肪酸しぼうさんメチルエステルバイオディーゼル主成分しゅせいぶんでもある)に変換へんかんしたのち鹸化けんかする。低温ていおん短時間たんじかん鹸化けんかできるため、油脂ゆし酸化さんかなどによるにおいや不純物ふじゅんぶつ発生はっせいおさえる。アレルギー対策たいさくようなどの製品せいひん利用りようされる。

成分せいぶん[編集へんしゅう]

市販しはん石鹸せっけん脂肪酸しぼうさんアルカリしお主成分しゅせいぶんとし、洗浄せんじょう補助ほじょざいとして無機むきしお炭酸たんさんしおケイ酸けいさんしおリンさんしおなど)や金属きんぞく封鎖ふうさざいキレート)、添加てんかざいとして香料こうりょう染料せんりょう、グリセリン、天然てんねん油脂ゆしハーブビタミンなどのほか保存ほぞんりょうくわえられる製品せいひん存在そんざいするが、添加てんかうたった製品せいひんもある。

一方いっぽう脂肪酸しぼうさんしお以外いがい界面かいめん活性かっせいざいふく製品せいひんもあり、含有がんゆうりょうによってふくあい石鹸せっけん合成ごうせい洗剤せんざい合成ごうせい化粧けしょう石鹸せっけんなどに区分くぶんされる。

脂肪酸しぼうさん種類しゅるい[編集へんしゅう]

脂肪酸しぼうさんは、親水しんすいせいカルボキシルもと結合けつごうしたしん油性ゆせい炭化たんか水素すいそによっておおくの種類しゅるいがあり、石鹸せっけん性質せいしつはそのおや油性ゆせい炭素たんそすうおおいほどつよい)により変化へんかする。 炭素たんそすうすくない脂肪酸しぼうさんつくった石鹸せっけんは、親水しんすいせいつよわりにしん油性ゆせいよわく、冷水れいすいやすいがあぶらたいする洗浄せんじょうりょくがる。ぎゃく炭素たんそすうおおいと、あぶらよごれの洗浄せんじょうりょくつよいがみずけにくい。このため、炭素たんそすう12から18のものが利用りようされる。

脂肪酸しぼうさん種類しゅるい石鹸せっけん性質せいしつ[22]
脂肪酸しぼうさんめい 炭素たんそすう 原料げんりょう油脂ゆしれい 冷水れいすいでのやす 洗浄せんじょうりょく あわ 皮膚ひふ刺激しげきせい
ラウリンさん 12 ヤシパームかく やす ややだい 持続じぞくせいしょう なか
ミリスチンさん 14 ヤシ、パームかく ける だい やや粗大そだい じゃく
パルミチンさん 16 パーム牛脂ぎゅうし けにくい だい 持続じぞくせいだい じゃく
ステアリンさん 18 牛脂ぎゅうし けない 特大とくだい 泡立あわだなか じゃく
オレインさん 18飽和ほうわ パーム牛脂ぎゅうしオリおりブ油ぶゆ やす だい こまかい 微弱びじゃく

アルカリの種類しゅるい[編集へんしゅう]

洗浄せんじょう用途ようとでは、脂肪酸しぼうさんナトリウムしおカリウムしおもちいられる。カリウムしおはナトリウムしおより溶解ようかいせいたかく、固形こけい石鹸せっけんこな石鹸せっけんにはナトリウム石鹸せっけん液体えきたい石鹸せっけんにはカリウム石鹸せっけん使つかわれる。たとえば浴用よくよう石鹸せっけんにおいては日本にっぽんではほぼナトリウム石鹸せっけんであるが、ヨーロッパなど水道すいどうすい硬度こうどたか地域ちいきではカリウム石鹸せっけん浴用よくよう石鹸せっけんとされている。

このほかアルカリ金属きんぞくであるリチウムルビジウムセシウムなどのしお洗浄せんじょう能力のうりょくつが、ほとんど利用りようされていない。リチウム石鹸せっけん洗浄せんじょうようではなく、グリースぞう稠剤としてひろ使つかわれている。

アルカリ金属きんぞく以外いがいしお水溶すいようせいひくく、金属きんぞく石鹸せっけんばれるが、グリースに使つか場合ばあい水溶すいようせいにする必要ひつようはないので、カルシウムやアルミニウムのしおもちいられる。

金属きんぞく石鹸せっけん工業こうぎょうてき重要じゅうようで、グリース以外いがいにも塗料とりょう印刷いんさつインキ乾燥かんそう促進そくしんざい(ドライヤー)として利用りようされるほか、軍事ぐんじめんでは焼夷弾しょういだんナパームだんなど)に使つかわれる。洗浄せんじょうよう石鹸せっけん水中すいちゅう硬度こうど成分せいぶんカルシウムマグネシウム)と反応はんのうすると、水溶すいようせいうしな洗浄せんじょうりょくのない石鹸せっけんかすとなるが、これも金属きんぞく石鹸せっけんである。

洗浄せんじょう補助ほじょざい[編集へんしゅう]

アルカリざい軟化なんかざい水分すいぶん調整ちょうせいざいとして炭酸たんさんしおゼオライトケイ酸けいさんしおなどの無機むきしお使用しようされる。こな石鹸せっけんには水分すいぶん放出ほうしゅつする作用さよう炭酸たんさんしおやゼオライトが、固形こけい石鹸せっけんには水分すいぶんたも性質せいしつケイ酸けいさんしおみずガラス)が使つかわれる。

金属きんぞく封鎖ふうさざい[編集へんしゅう]

遷移せんい金属きんぞく脂肪酸しぼうさんしお反応はんのうして石鹸せっけんかす(金属きんぞく石鹸せっけん)をつくるが、これらは往々おうおうにして有色ゆうしょくである(たとえばどう石鹸せっけん)。硬度こうど成分せいぶん洗浄せんじょう効果こうかそこねる以上いじょう着色ちゃくしょくによる支障ししょう懸念けねんされ、これをふせぐため遷移せんい金属きんぞく優先ゆうせんてき結合けつごうするキレートざいエチドロンさん(ヒドロキシエタンジホスホンさんしお、エデトさんエチレンジアミンよん酢酸さくさんしお使つかわれる。

添加てんかざい[編集へんしゅう]

様々さまざまかおりの石鹸せっけん

脂肪酸しぼうさんにおいをやわらげるため、しばしば香料こうりょうくわえられるほか、洗濯せんたく石鹸せっけん化粧けしょう石鹸せっけん区別くべつするために目立めだ染料せんりょう添加てんかした製品せいひんもある。また、化粧けしょう石鹸せっけん添加てんかざいによる保湿ほしつ皮膚ひふへの有用ゆうようせいうたった様々さまざま製品せいひん販売はんばいされている。一方いっぽう主成分しゅせいぶん脂肪酸しぼうさんしお腐敗ふはいカビ繁殖はんしょくふせぐため、ジブチルヒドロキシトルエンなどが保存ほぞんりょうとして使用しようされる(このため添加てんか製品せいひんは、変質へんしつふせぐために使用しようしゃ配慮はいりょする必要ひつようがある)。

殺菌さっきんざい[編集へんしゅう]

薬用やくよう石鹸せっけん場合ばあい塩化えんかベンザルコニウムトリクロサンなどが有効ゆうこう成分せいぶんとなっている。ただし、これらが効果こうか発揮はっきするにはpHをひくくする必要ひつようがあり、脂肪酸しぼうさんしおではなく合成ごうせい界面かいめん活性かっせいざい(アシルイセチオンさんナトリウム(スルホンさんるい)、アシルグルタミンさんナトリウムなど)がもちいられ、ここでいう石鹸せっけん該当がいとうしない可能かのうせいたかい。

合成ごうせい洗剤せんざいなどにくらべ、5000ねん歴史れきしのある自然しぜん石鹸せっけんこうウイルス作用さようつよく、こう頻度ひんど手洗てあらいによる肌荒はだあ予防よぼうにもすぐれていることがられている[23][24]

界面かいめん活性かっせいざい種類しゅるい[編集へんしゅう]

医薬品いやくひん医療いりょう機器ききとうほう成分せいぶんめいでは「せっけん素地そじ」と表示ひょうじされる。一方いっぽう合成ごうせい界面かいめん活性かっせいざい物質ぶっしつめい表示ひょうじされる。メーカーが製品せいひんをアピールする目的もくてきじゅん石鹸せっけん添加てんかなどをうたっている場合ばあい脂肪酸しぼうさんしお主成分しゅせいぶんである可能かのうせいたかい。

家庭かてい用品ようひん品質ひんしつ表示法ひょうじほうさだめられた品名ひんめい表示ひょうじ
品名ひんめい表示ひょうじ 表示ひょうじ対象たいしょう 界面かいめん活性かっせいざいちゅう
脂肪酸しぼうさんナトリウム(じゅんせっけんぶん)の割合わりあい
合成ごうせい洗剤せんざい おも洗浄せんじょう作用さようじゅんせっけんぶん以外いがい界面かいめん活性かっせいざいはたらきによるもの。 0 %以上いじょう
洗濯せんたくよう70 %未満みまん
台所だいどころよう60 %未満みまん
ふくあいせっけん おも洗浄せんじょう作用さようじゅんせっけんぶん界面かいめん活性かっせい作用さようによるもので、
じゅんせっけんぶん以外いがい界面かいめん活性かっせいざいふくむもの。
洗濯せんたくよう70 %以上いじょう
台所だいどころよう60 %以上いじょう
100 %未満みまん
せっけん おも洗浄せんじょう作用さようじゅんせっけんぶん界面かいめん活性かっせい作用さようによるもので、
じゅんせっけんぶん以外いがい界面かいめん活性かっせいざいふくまないもの。
100 %

ほう規制きせい[編集へんしゅう]

日本にっぽん法令ほうれい体系たいけいでは、身体しんたい洗浄せんじょうようせっけん(浴用よくよう薬用やくよう)は医薬品いやくひん医療いりょう機器ききとうほうにおける化粧けしょうひん医薬いやく部外ぶがいひんとして、家庭かていようせっけん(洗濯せんたくよう台所だいどころよう)は家庭かてい用品ようひん品質ひんしつ表示法ひょうじほうにおける雑貨ざっか工業こうぎょうひん品質ひんしつ表示ひょうじ規程きてい[25]規格きかくされている。

医薬品いやくひん医療いりょう機器ききとうほうではすべての原料げんりょう成分せいぶんめい表示ひょうじすることが義務付ぎむづけられているが、家庭かてい用品ようひん品質ひんしつ表示法ひょうじほうよう石鹸せっけん洗剤せんざい区分くぶん割合わりあい表示ひょうじ義務ぎむはない。また、化粧けしょう石鹸せっけん場合ばあいは含量のおおじゅん記載きさいされるが、薬用やくよう石鹸せっけん医薬いやく部外ぶがいひんとして有効ゆうこう成分せいぶんとその成分せいぶんけることが規定きていされているため、含量の多寡たかあきらかではない。化粧けしょう石鹸せっけんにはJIS規格きかく (K3301) がある。

家庭かてい用品ようひん品質ひんしつ表示法ひょうじほうでは界面かいめん活性かっせいざい種類しゅるい含有がんゆうりょうにより、洗濯せんたくようせっけんは70 %以上いじょう台所だいどころようせっけんは60 %以上いじょう脂肪酸しぼうさんしおであること[26]義務付ぎむづけられている。含有がんゆうりょう試験しけん方法ほうほうとしては、JISのさだめるせっけん試験しけん方法ほうほう (K3304) がある[27]

手作てづく石鹸せっけん[編集へんしゅう]

手作てづく石鹸せっけん
着色ちゃくしょくされた手作てづく石鹸せっけん

皮膚ひふまも保護ほごと、材料ざいりょうさえ用意よういすれば、石鹸せっけん手作てづくりは比較的ひかくてき簡単かんたんにできる。理科りか実験じっけん、アレルギー対策たいさく環境かんきょう保護ほご(リサイクル)などのために石鹸せっけん手作てづくりはおこなわれている。

手作てづくりの方法ほうほう[編集へんしゅう]

以下いかいちれいしるす。

材料ざいりょう原料げんりょう)は油脂ゆし・アルカリざい食塩しょくえん用意よういする。ただし、水酸化すいさんかナトリウム水酸化すいさんかカリウムといったこう濃度のうどげきぶつ使用しようするため、たいねつ容器ようき保護ほご(ゴム手袋てぶくろまもるゴーグル)は必要ひつようである。

作業さぎょう性質せいしつじょう肌荒はだあれや化学かがく熱傷ねっしょうなどの危険きけんがあるため、十分じゅうぶん知識ちしきて、経験けいけんしゃ監督かんとくおこなうことがのぞましい。

  1. 反応はんのう必要ひつようなアルカリのりょうを、使用しようする原料げんりょう油脂ゆし鹸化けんかあたいと、アルカリの分子ぶんしりょうからもとめる。
  2. アルカリを少量しょうりょうみず溶解ようかいし、原料げんりょう油脂ゆしくわえて撹拌かくはんする。
  3. 次第しだいねばたびがあがり、20ふんほどで反応はんのう完了かんりょうする(かたまらない場合ばあいりょう間違まちがっている)
  4. 2週間しゅうかん放置ほうち飽和ほうわしょく塩水えんすいくわえて撹拌かくはんし、分離ぶんりした固形こけいぶんす。
  5. pH試験しけんでアルカリ残留ざんりゅうがなく石鹸せっけんアルカリ性あるかりせい範囲はんいないであることを確認かくにんする。

理科りか実験じっけん[編集へんしゅう]

石鹸せっけんつくることにより、油脂ゆし構造こうぞう、アルカリによる鹸化けんかしお界面かいめん活性かっせい両性りょうせい分子ぶんしなどといった様々さまざま化学かがくてき知識ちしき体験たいけんてきまなぶことができるため、かつて理科りか化学かがく実験じっけん教育きょういく利用りようされていた。

環境かんきょう保護ほご[編集へんしゅう]

1990年代ねんだい家庭かてい使用しようてんぷらあぶら下水道げすいどうながされていることが社会しゃかいてき問題もんだいとしてげられ、家庭かてい廃油はいゆおも使用しようみのてんぷら)を使つかった石鹸せっけんづくりがひろまるきっかけとなり、現在げんざいにいたるまで、環境かんきょう保護ほご活動かつどうのためのリサイクル活動かつどう実践じっせんのひとつとして家庭かてい地域ちいきコミュニティで石鹸せっけんづくりがひろおこなわれている。またかく家庭かていでの消費しょうひ行動こうどう地球ちきゅう環境かんきょうにどのような悪影響あくえいきょうおよぼしているか、ということを周知しゅうちするための環境かんきょう教育きょういく一環いっかんとしておこなわれることもある。

アレルギー対策たいさく[編集へんしゅう]

また、市販しはん石鹸せっけんでは問題もんだいがあって使つかえないひと、たとえば市販しはん石鹸せっけんでは添加てんかぶつによりアレルギーこしてしまうひとは、それを回避かいひするためにメーカーせいけ、自分じぶん自身じしんで、自分じぶんにとってアレルギーをこさない原材料げんざいりょう厳選げんせんし、たとえばオリーブ・オイルなどを原料げんりょうとして、自分じぶんのためだけに「安全あんぜん石鹸せっけんづくりをおこなひともいる。できた石鹸せっけんにはふく生物せいぶつグリセリン多少たしょう残留ざんりゅうするが、無害むがいである。

環境かんきょうへの影響えいきょう[編集へんしゅう]

石鹸せっけん合成ごうせい洗剤せんざいは、1gあたりの洗浄せんじょう能力のうりょくおよび必要ひつようりょうまったことなるため、単純たんじゅん比較ひかくしてはならない。

石鹸せっけん合成ごうせい洗剤せんざいより環境かんきょうへの影響えいきょうちいさいとされるのは、環境かんきょうちゅう石鹸せっけん分子ぶんし界面かいめん活性かっせいざい機能きのうすみやかにうしなわれることと、最終さいしゅう分解ぶんかいまでの期間きかんみじかいことを根拠こんきょとしている。ただし、石鹸せっけんおな用途ようと使つかわれる合成ごうせい洗剤せんざい製品せいひんには多様たようふく成分せいぶん添加てんかざい使つかわれているため、主成分しゅせいぶんのみの比較ひかくではあまり意味いみはない。

2014ねん4がつ化学かがく物質ぶっしつ審査しんさおよ製造せいぞうとう規制きせいかんする法律ほうりつにおける、リスク評価ひょうか優先ゆうせんてきおこな必要ひつようがある物質ぶっしつ優先ゆうせん評価ひょうか化学かがく物質ぶっしつ[28]指定していされている。

2014ねん界面かいめん活性かっせいざい環境かんきょう特性とくせいおよび影響えいきょうかんする250以上いじょう論文ろんぶん報告ほうこくをまとめた論文ろんぶん発表はっぴょうされ、石鹸せっけんふく界面かいめん活性かっせいざい非常ひじょう大量たいりょう使用しようされ水生すいせい環境かんきょうひろ放出ほうしゅつされているものの、現在げんざい使用しようレベルでは水生すいせい環境かんきょうまたはそこしつ環境かんきょう悪影響あくえいきょうおよぼさないと報告ほうこくした[29]

毒性どくせい[編集へんしゅう]

生物せいぶつ細胞さいぼう細胞さいぼうまく表面ひょうめん重要じゅうよう物質ぶっしつ代謝たいしゃおこなっており、細胞さいぼうまく繊細せんさい界面かいめん(ここではみずあぶら接触せっしょくする境界きょうかいめん)で成立せいりつしており、試験管しけんかんないでの細胞さいぼう毒性どくせい試験しけん界面かいめん活性かっせいざい作用さようさせると機能きのううしない、死滅しめつする。このため、石鹸せっけん合成ごうせい洗剤せんざいなどの界面かいめん活性かっせいざいとく水生すいせい生物せいぶつへの毒性どくせいつよく、環境かんきょうちゅう一定いってい濃度のうど以上いじょう存在そんざいすると生態せいたい悪影響あくえいきょうおよぼすことになる。

しかし、石鹸せっけん硬度こうど成分せいぶんカルシウムマグネシウムイオン)の封鎖ふうさにより親水しんすいせいうしない、みずけない金属きんぞく石鹸せっけん石鹸せっけんかす)となる。また、バクテリアによる脂肪しぼうくさりしん油性ゆせい低下ていかしやすい。こうして界面かいめん活性かっせいりょくうしなうことで、毒性どくせい消失しょうしつする。

さかな毒性どくせい試験しけんでは、石鹸せっけん脂肪酸しぼうさんナトリウム)の半数はんすう致死ちしりょうは 100 mg/L 前後ぜんごと、1-10 mg/L の合成ごうせい洗剤せんざい(LASなど)よりよわいものの毒性どくせい[30]が、実験じっけんしつ環境かんきょうなので硬度こうど供給きょうきゅうがなくバクテリア濃度のうどひくいことから、ちいさくなっている。

一方いっぽう合成ごうせい洗剤せんざい硬度こうど影響えいきょうけない商品しょうひんとしての特長とくちょうと、安価あんか合成ごうせい樹脂じゅし原料げんりょうとする製品せいひんとしての特長とくちょうから、界面かいめん活性かっせいりょく持続じぞくして毒性どくせい継続けいぞくする。代表だいひょうてきちょくくさりアルキルベンゼンスルホンさんナトリウム (LAS) の場合ばあいちょくくさりまつはしアルキルもと酸化さんかされてカルボキシルもととなるとおや油性ゆせいおおきく低下ていかする。ただし、この反応はんのうそこしつなど酸素さんそとぼしい環境かんきょうでは進行しんこうせず、水中すいちゅう固形こけいぶつ吸着きゅうちゃくされて沈殿ちんでんすると残留ざんりゅうしやすい。下水げすい処理しょり汚泥おでいちゅう残留ざんりゅうするのは、このためである。

分解ぶんかいせい[編集へんしゅう]

石鹸せっけん構成こうせいする脂肪酸しぼうさんは、環境かんきょうちゅうではバクテリアや水生すいせい生物せいぶつによる摂取せっしゅ分解ぶんかい積極せっきょくてきおこなわれる。このため、一時いちじ分解ぶんかいせい完全かんぜん分解ぶんかいせいともにたかく、環境かんきょうちゅうでの半減はんげんみじかいことから環境かんきょう負荷ふかひくいとされる。

ただしこのことは、BODたか水中すいちゅう溶存ようぞん酸素さんそ消費しょうひ速度そくどおおきいことも意味いみするため、酸素さんそ供給きょうきゅうとぼしいとめ水域すいいきではさんかけリスクをつよめる。また、用水ようすい硬度こうどたか地域ちいきでは使用しようりょうやす必要ひつようから、有機物ゆうきぶつ負荷ふかりょうたかくなる(ぎゃくいちじるしくひく場合ばあいは、親水しんすいせい残留ざんりゅう毒性どくせい低下ていかおくれる可能かのうせいがある)。

一方いっぽう合成ごうせい洗剤せんざい (LAS) の代表だいひょうてき化合かごうぶつ場合ばあい、BODが47 %と5日間にちかんでほぼ半減はんげん[31]しているが、石鹸せっけんよりはおそいことになる。また、さかな場合ばあい体内たいない半減はんげんが1 - 6日間にちかん時間じかんがかかることから、蓄積ちくせきせいつ。

オイルボール[編集へんしゅう]

1997ねんごろから、東京とうきょう海岸かいがん悪臭あくしゅうびたしろ油脂ゆしかたまりがみられるようになった。これは、家庭かてい事業じぎょうしょから排出はいしゅつされ下水げすい流入りゅうにゅうした油分ゆぶんが、下水内しもみのちでバクテリアによって脂肪酸しぼうさんとなり、下水内しもみのちカルシウムイオンと反応はんのうしてカルシウム石鹸せっけんとなったものである[32]。オイルボールともばれる[33][34]中国ちゅうごく問題もんだいとなっている地溝ちこう同種どうしゅのものである。主成分しゅせいぶんは、パルミチンさん、ステアリンさん、ミリスチンさん、オレインさんとう高級こうきゅう脂肪酸しぼうさんおよびその金属きんぞくしおである[32]

東京とうきょうなどで採用さいようされている合流ごうりゅうしき下水道げすいどうは、大雨おおあめなどには処理しょり下水げすいかわうみ放流ほうりゅうされるという構造こうぞう[35]。こうして放流ほうりゅうされた処理しょり下水げすいこし流水りゅうすいぶ。そのなかには家庭かてい事業じぎょうしょからの排出はいしゅつされた油分ゆぶん汚物おぶつふくまれているため、オイルボールの原因げんいんとなっていた。近年きんねんでは下水げすい設備せつび改良かいりょうにより減少げんしょう傾向けいこうにある[36]

文化ぶんか[編集へんしゅう]

ソープボックスうえスネークオイル英語えいごばん(いかがわしいくすり代表だいひょう)をるパフォーマンスをおこな役者やくしゃ。「Get off your soapbox(ソープボックスからりろ!)」とわれる慣用かんようのヤジなどがある。

日本にっぽんでは、中元ちゅうげん歳暮せいぼなど礼儀れいぎじょうおくものとして定番ていばん商品しょうひんだが、文化ぶんかけんによってはだしなみがわるい、体臭たいしゅうになるという忠告ちゅうこくてこすりの意味いみられる場合ばあいがあり、配慮はいりょ必要ひつよう

箪笥たんす石鹸せっけん衣類いるいへのうつたのしむ習慣しゅうかんは、芳香ほうこうざい普及ふきゅうするまでは石鹸せっけん身近みぢか香料こうりょうだったことに由来ゆらいする。現代げんだいでは、石鹸せっけん自体じたい脂肪酸しぼうさん)のにおいも対象たいしょうとなっている。

受験生じゅけんせいおくると縁起えんぎわるい(すべる、ちる)としたり、そのぎゃく厄落やくおとし意味いみづけるなどの若者わかもの文化ぶんかがあった。

学校がっこうなどで石鹸せっけんあみぶくろれて蛇口じゃぐちつるすことがひろおこなわれていたが、カラスべるためすくなくなった。

固形こけい石鹸せっけん適度てきどやわらかさをかし、カービング素材そざいとしてもちいられる。

石鹸せっけん(などのドライグッズ)を問屋とんや工場こうじょうから小売こうりてんまではこぶのに使つかわれるソープボックス (soapbox) は、英語えいごけんではそれをひっくりかえして演説えんぜつなどをおこなだいとして使つかわれており、てんじて街頭がいとうでの演説えんぜつ言葉ことばとなっている。また、ソープボックスに車輪しゃりんをつけたものから発展はってんしたソープボックスレースもさかんにおこなわれている。

製造せいぞう販売はんばい業者ぎょうしゃ[編集へんしゅう]

世界せかい

日本にっぽん

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 駄菓子だがしられていたかみ石鹸せっけんおんなほんあいだはさんでかおりをたのしむという使用しよう方法ほうほうもあった
  2. ^ サポニンおおふくむ、エゴノキムクロジなど。インドではリタ (reetha)、ソープナッツともばれ、現在げんざい粉末ふんまつ利用りようされている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]