李り良枝よしえ

李り 良枝よしえ（イ・ヤンジ、이양지、1955年ねん（昭和しょうわ30年ねん）3月15日にち - 1992年ねん（平成へいせい4年ねん）5月22日にち）は、在日ざいにち韓国かんこく人じん二に世せいの小説しょうせつ家か。帰化きか後ごの本名ほんみょうは田中たなか 淑枝よしえ。

生涯しょうがい

山梨やまなし県けん南都留みなみつる郡ぐん西桂にしかつら町まち生うまれ。小学生しょうがくせいのときに両親りょうしんが日本にっぽん国籍こくせきを取得しゅとくしたので、同時どうじに彼女かのじょも国籍こくせきは日本にっぽんとなった。山梨やまなし県けん富士吉田ふじよしだ市し下吉田しもよしだの山梨やまなし県立けんりつ吉田高等学校よしだこうとうがっこうから1973年ねん（昭和しょうわ48年ねん）に京都きょうと府立ふりつ鴨かも沂高等こうとう学校がっこうに編入へんにゅうする。1975年ねん（昭和しょうわ50年ねん）に早稲田大学わせだだいがく社会しゃかい科学かがく部ぶに入学にゅうがくするが、1学期がっきで中退ちゅうたいする。

1980年ねん（昭和しょうわ55年ねん）5月がつにははじめて大韓民国だいかんみんこくを訪おとずれ、以後いごは韓国かんこくへの往来おうらいを繰くり返かえし、巫みこ俗ぞく舞踊ぶよう（ムソク）や伽耶かや琴きん（カヤグム）、語かたり歌か（パンソリ）などの影響えいきょうを受うける。1982年ねん（昭和しょうわ57年ねん）にはソウル大だい学校がっこう国語こくご国文学こくぶんがく科かへ入学にゅうがくし、留学りゅうがく中ちゅうに書かき上あげた「ナビ・タリョン（나비타령）」を『群像ぐんぞう』に発表はっぴょうし、第だい88回かい芥川賞あくたがわしょう候補こうほとなる。また、「かずきめ」（1983年ねん）、「刻こく」（1984年ねん）もそれぞれ候補こうほ作さくとなる。

1988年ねん（昭和しょうわ63年ねん）にはソウル大学だいがくを卒業そつぎょうする。卒業そつぎょう論文ろんぶんのテーマは「パリコンジュ（捨すて姫ひめ）とつながりの世界せかい」。1989年ねん（昭和しょうわ64年ねん/平成へいせい元年がんねん）には『由ゆかり熙』（ユヒ、유희）で第だい100回かい芥川賞あくたがわしょうを受賞じゅしょう。韓国かんこく女性じょせいの視点してんから、在日ざいにち韓国かんこく人じんの若わかい女性じょせいが、自みずからのルーツを尋たずねて韓国かんこくに留学りゅうがくするが、韓国かんこく語ごができず、自分じぶんのアイデンティティを求もとめてもがき苦くるしむ姿すがたを描えがいた作品さくひんである。梨花りか女子じょし大学だいがく舞踊ぶよう科か大学院だいがくいん修士しゅうし課程かていに学まなびつつ、1992年ねんには長編ちょうへん「石いしの聲こえ」の執筆しっぴつを手てがける一方いっぽうで、妹いもうとの四よんヶ国かこく語ご情報じょうほう誌し『we’re』の創刊そうかんを手伝てつだっていたが、5月22日にちに急性きゅうせい肺炎はいえんを罹患りかんし、ウイルス性せいの心筋しんきん炎えんを併発へいはつしてまもなく死去しきょした。享年きょうねん37。

「群像ぐんぞう」に掲載けいさいされた「石いしの聲こえ」第だい一いち章しょうが遺稿いこうとなる。没後ぼつごの一いち周忌しゅうきにあたる1993年ねん5月22日にちに講談社こうだんしゃより『李り良枝よしえ全集ぜんしゅう』が刊行かんこうされた。作品さくひんは韓国かんこく語ごや中国ちゅうごく語ごでも翻訳ほんやく出版しゅっぱんされている。

著作ちょさく

• 『かずきめ』（講談社こうだんしゃ, 1983）、のち「ナビ・タリョン」講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ
• 『刻こく』（講談社こうだんしゃ, 1985）、のち新版しんぱん・講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ
• 『由ゆかり熙』（講談社こうだんしゃ, 1989）、のち新編しんぺん版ばん『由ゆかり熙/ナビ・タリョン』講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ
• 『石いしの聲こえ』（講談社こうだんしゃ, 1992）、のち完全かんぜん版ばん・講談社こうだんしゃ文芸ぶんげい文庫ぶんこ
• 『李り良枝よしえ全集ぜんしゅう』全ぜん1巻かん（講談社こうだんしゃ, 1993）
• 『ことばの杖つえ　李り良枝よしえエッセイ集しゅう』（新泉しんいずみ社しゃ，2022.4）
• 『李り良枝よしえセレクション』（白水しろみず社しゃ，2022.8）温ぬる又また柔やわら編へん・解説かいせつ

関連かんれん作品さくひん

• 『生なまの証あかしをのこして』 石村いしむら博子ひろこ著ちょ 1997 筑摩書房ちくましょぼう ちくまプリマーブックス - 早さ逝した3人にんの芸術げいじゅつ家かの1人ひとりとして李りが扱あつかわれている。