(Translated by https://www.hiragana.jp/)
春の庭 - Wikipedia コンテンツにスキップ

はるにわ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
はるにわ
著者ちょしゃ 柴崎しばざき友香ゆか
発行はっこう 2014ねん7がつ28にち
発行はっこうもと 文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう
ジャンル 中編ちゅうへん小説しょうせつ
くに 日本の旗 日本にっぽん
言語げんご 日本語にほんご
ページすう 141
コード ISBN 978-4163901015
ISBN 978-4167908270文庫ぶんこばん
ウィキポータル 文学ぶんがく
[ ウィキデータ項目こうもく編集へんしゅう ]
テンプレートを表示ひょうじ

はるにわ』(はるのにわ)は、柴崎しばざき友香ゆか小説しょうせつ2014ねん6がつごうの『文學ぶんがくかい』に発表はっぴょうされ、だい151かい芥川賞あくたがわしょう受賞じゅしょうした。

あらすじ

[編集へんしゅう]

〈わたし〉のおとうと太郎たろうは、自分じぶんのアパートで、不審ふしんおんな発見はっけんする。「たつ部屋へや」(このアパートは各室かくしつ干支えと部屋へや番号ばんごうわりにふられている)にむ「西にし」という苗字みょうじ女流じょりゅう漫画まんがだ。西にしは、高校こうこう3ねんのときに写真しゃしんしゅうはるにわ』にいませられつづけていた。写真しゃしんしゅううつっているうつくしい水色みずいろ洋館ようかんふう建物たてもの目的もくてきで、西にしはその建物たてものとなりにあるビューパレスサエキIIIにしてきたらしい。その建物たてものは、もとはCMディレクターの牛島うしじまタローと劇団げきだん女優じょゆううまむらかいこがんでいたので、写真しゃしん撮影さつえい使つかわれたのだ。そして、西にしはその水色みずいろ建物たてもの森尾もりお一家かずやちかづきになることに成功せいこうし、いえのあちこちを確認かくにんする。しかし、彼女かのじょとくあこがれたみどりのタイルのられた風呂場ふろばはい口実こうじつがみつからない。そこで西にしは、おなじアパートの太郎たろうをまきこみ、ホームパーティーのとき事故じこよそおって風呂場ふろば使用しようできる状況じょうきょうをつくろうとする。そして、おもいがけない展開てんかいにより、風呂場ふろばはいることに成功せいこうする。その、その一家いっかすことになり、いえはふたたびになる。面倒めんどういやがる性格せいかくだった太郎たろうは、写真しゃしんしゅうのあのにわ不法ふほう侵入しんにゅうし、ちち遺骨いこつくだいた乳棒にゅうぼうとすりばちをそこにめる。

登場とうじょう人物じんぶつ

[編集へんしゅう]
  • 太郎たろう - もと美容びよう離婚りこんれきあり。
  • 西にし - 太郎たろうおなじアパートの「たつ」の部屋へや住人じゅうにん漫画まんが太郎たろうあねおなどし女性じょせい
  • さん」 - 太郎たろうおなじアパートの「」の部屋へや住人じゅうにん太郎たろうちちおなどし女性じょせい
  • 沼津ぬまづ - 太郎たろう同僚どうりょう結婚けっこんして北海道ほっかいどう移住いじゅうする。
  • 森尾もりお実和子みわこ - 水色みずいろ屋根やね部屋へや現在げんざい住人じゅうにん北海道ほっかいどう出身しゅっしんおっとと5さい長男ちょうなん、3さい長女ちょうじょらしている。
  • わたし - 太郎たろうあね名古屋なごや専門せんもん学校がっこう講師こうしつとめる。

エピソード

[編集へんしゅう]

太郎たろう」という人物じんぶつめい漱石そうせきの『彼岸ひがんまで』からの登場とうじょう人物じんぶつめいたかし太郎たろう」の一部いちぶからったと著者ちょしゃっている[1]。また、「西にし」という人物じんぶつめいは、柴崎しばざきや「太郎たろう同様どうよう西にしから人物じんぶつだということをあらわしていると、芥川賞あくたがわしょう授賞じゅしょうしきかたった[2]

作中さくちゅう登場とうじょうする写真しゃしんしゅうはるにわ』は、荒木あらきけいおもんみ藤代ふじしろめいすな写真しゃしんしゅうがモデルになっているという[3]

芥川賞あくたがわしょう受賞じゅしょうさいして

[編集へんしゅう]

授賞じゅしょうしき作者さくしゃ柴崎しばざきは、ヴィスワヴァ・シンボルスカ一節いっせつ引用いんようして、なぞちた現実げんじつへの探求たんきゅう意気込いきごみをかたった[2]

評価ひょうか

[編集へんしゅう]

芥川賞あくたがわしょう選評せんぴょう

[編集へんしゅう]

(『文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう』2014ねん9がつごうったかく選評せんぴょうから)

  • 山田やまだ詠美えいみは、場面ばめん転換てんかんすうぎょうけるかたはよほど上手うまくないと失敗しっぱいするが、ほんさくでは、著者ちょしゃの「さ」によって成功せいこうしているとひょうした。
  • 村上むらかみりゅうは、アパートを俯瞰ふかんかたちかぎ括弧かっこかたちであることを記号きごう"「"であらわしたけんを、「このしのせいで感情かんじょう移入いにゅうはばまれた。作家さっか描写びょうしゃ唯一ゆいいつ武器ぶきなのに、何故なぜそんなことをするのかからない」と批判ひはんした。
  • 川上かわかみ弘美ひろみほんさくし、「むずかしさ」を指摘してきした。
  • 小川おがわ洋子ようこは、作者さくしゃくべきものをつよにぎめているがそのいたみをせないことを評価ひょうかした。
  • 奥泉おくいずみひかりは、ねらいはかるがそのねらいが成功せいこうしていないとひょうし、作品さくひんした。
  • 宮本みやもとあきらは、以前いぜんから一貫いっかんして追求ついきゅうしていたものを、視角しかくえて表現ひょうげんしたことによって、比喩ひゆ真実しんじつとどかせることができたとひょうした。
  • 堀江ほりえ敏幸としゆきは、最後さいごに「わたし」という視点してんてくるところが不気味ぶきみだとひょうした。
  • 島田しまだ雅彦まさひこは、焦点しょうてんてき伏線ふくせんらしきものが放置ほうちされることもあるが、現実げんじつはそのようなものであり、そういう現実げんじつまえ謙虚けんきょ作者さくしゃ稀有けう存在そんざいだとひょうした。
  • 高樹たかぎのぶは、伝聞でんぶんのなかで視点してんうごいていく表現ひょうげん注目ちゅうもくした。

その評価ひょうか

[編集へんしゅう]
  • 比較ひかく文学ぶんがくもの小谷野こやのあつしは、ハンス・ロベルト・ヤウスの『挑発ちょうはつとしての文学ぶんがく』から「期待きたい地平ちへい概念がいねんいにして、ほんさくが「期待きたい地平ちへい裏切うらぎることによってっている」とした[4]
  • 文芸ぶんげい評論ひょうろん田中たなか弥生やよいは、この作品さくひんの「悲劇ひげき抑制よくせいするちから」を評価ひょうかした[5]
  • エッセイスト平松ひらまつ洋子ようこは、「停止ていししていた過去かこ現在げんざい流動りゅうどうする瞬間しゅんかん」をえがけていると評価ひょうかした[6]
  • ちゃ水女子大学みずじょしだいがくじゅん教授きょうじゅ谷口たにぐち幸代さちよは、太郎たろうはじめとした人物じんぶつたちのあな行為こうい作中さくちゅう反復はんぷくされることに注目ちゅうもくして、なにかをめるという行為こうい土地とち人間にんげん関係かんけいなんらかのかたちあらわすものだとべた[2]
  • 松田まつだあおは、この小説しょうせつが「ひとのうちの風呂場ふろばること」という山場やまばらしくない山場やまば小説しょうせつであることに注目ちゅうもくした[7]

かた「わたし」についての議論ぎろん

[編集へんしゅう]
  • 終盤しゅうばん太郎たろうあねが「わたし」というかたとしててくることにかんして、大森おおもりのぞむ豊崎とよさき由美ゆみは、最初さいしょからあね視点してんかたられたとかんがえ、小谷野こやのあつし栗原くりはら裕一郎ゆういちろうは『週刊しゅうかん読書どくしょじん』の対談たいだん文学ぶんがくはこのままほろびゆく運命うんめいにあるのか」で、大森おおもりらの見方みかた違和感いわかんとなえ、小谷野こやの三人称さんにんしょう全知ぜんち視点してんはじまり最後さいごあねかたとしてんできたと解釈かいしゃくした。この対談たいだんで、栗原くりはらが「わたし」の唐突とうとつ登場とうじょうかかわっているのにたいし、小谷野こやのバルガス=リョサらの既存きそん作品さくひんかたについてのれい列挙れっきょして、「読者どくしゃおどろかせるための効果こうかであり、さほど前衛ぜんえいてきではない」と軽視けいしした。福永ふくながしん栗原くりはら同様どうようかた「わたし」にかかわった。[2]

書籍しょせき情報じょうほう

[編集へんしゅう]
  • 単行本たんこうぼん[8]
  • 文庫本ぶんこぼん[9]
    • 収録しゅうろく作品さくひん: 「はるにわ」「いと」「えない」「かける準備じゅんび
    • ページすう: 245ページ
    • 出版しゅっぱんしゃ: 文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう
    • ISBN 978-4167908270
    • 発売はつばい: 2017ねん4がつ7にち

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ 文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう』2014ねん9がつごう芥川賞あくたがわしょう受賞じゅしょうインタビュー
  2. ^ a b c d 週刊しゅうかん読書どくしょじん』 2014ねん9がつ5にちごう
  3. ^ 週刊しゅうかん読書どくしょじん小谷野こやのあつし栗原くりはら裕一郎ゆういちろう対談たいだんから
  4. ^ アマゾンレビュー
  5. ^ 産経さんけいニュース
  6. ^ 読売よみうりオンライン・書評しょひょう
  7. ^ 群像ぐんぞう』 2014ねん10がつごう
  8. ^ アマゾン・ドットコム 本書ほんしょ単行たんこうほんのページより
  9. ^ アマゾン・ドットコム 本書ほんしょ文庫本ぶんこぼんのページより

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]