冨澤とみさわ有爲男ういお

1947年ねん

冨澤とみさわ 有爲男ういお（とみさわ/とみざわ ういお、1902年ねん3月29日にち - 1970年ねん1月がつ15日にち）は、日本にっぽんの作家さっか、画家がか。

経歴けいれき

大分おおいた県けん大分おおいた市し生うまれ。父ちち・冨澤とみさわ久蔵きゅうぞうは中学校ちゅうがっこうの英語えいご教師きょうしをしており、転勤てんきんの都合つごうにより全国ぜんこくに移うつり住すむ。やがて幼年ようねん期きより名古屋なごや市しで過すごす。旧制きゅうせい東海とうかい中学校ちゅうがっこう卒業そつぎょう。東京とうきょう美術びじゅつ学校がっこうに進学しんがくして絵画かいがだけでなく文学ぶんがくについても学まなぶが1年ねんで中退ちゅうたいし、漫画まんが記者きしゃとして新しん愛知あいち新聞しんぶん（現在げんざいの中日新聞ちゅうにちしんぶん）に入社にゅうしゃする。

1921年ねんより2年ねん連続れんぞくで帝みかど展てんに入選にゅうせんし、1927年ねんにはフランスへ1年間ねんかん留学りゅうがくし絵画かいがを学まなんだが、その側がわで作家さっかとしての活動かつどうも行おこない1925年ねんに同人どうじん誌し『鷲わしの巣す』を創刊そうかんしている。1930年ねんに結婚けっこんし、東京とうきょう市し牛込うしごめ区く天神てんじん町まち（当時とうじ）へ移住いじゅうすると、次第しだいに作家さっかとしての活躍かつやくが認みとめられるようになり、1936年ねん8月がつに発表はっぴょうした『地中海ちちゅうかい』で翌よく1937年ねん2月がつに芥川賞あくたがわしょうを受賞じゅしょうした。

1942年ねんには陸軍りくぐんの報道ほうどう班はん員いんとなり、従軍じゅうぐん作家さっかとしてインドネシアに1年間ねんかん赴おもむく。帰国きこく後ごの1945年ねんに自宅じたくが空襲くうしゅうで全焼ぜんしょうしたため、福島ふくしま県けん双葉ふたば郡ぐん広野こうの町まちに疎開そかいするが、終戦しゅうせん後ごも東京とうきょうには戻もどらず、晩年ばんねんまで広野こうの町まちで暮くらしていた。1970年ねん1月がつ東京とうきょうでの静養せいよう中ちゅうに心臓しんぞう衰弱すいじゃくで死去しきょ。68歳さい。

作風さくふう

当初とうしょは純文学じゅんぶんがくだけでなく、画家がかでもあったことから美術びじゅつ論評ろんぴょうも執筆しっぴつしたが、戦前せんぜんから戦時せんじ中ちゅうは国策こくさく協力きょうりょくとして戦記せんき小説しょうせつを多おおく書かき、戦後せんごはもっぱら児童じどう読物よみものと外国がいこく文学ぶんがくの児童じどう向むけ翻訳ほんやくが主おもとなった。

関連かんれん人物じんぶつなど

母方ははかたの従兄弟いとこである岡田おかだ三郎助さぶろうすけが東京とうきょう美術びじゅつ学校がっこうにいたことから師事しじして絵画かいがを学まなんだが、三郎助さぶろうすけ夫人ふじんの岡田おかだ八千代やちよから文学ぶんがくも学まなんでいた。その後ご佐藤さとう春夫はるおの知遇ちぐうを得えて小説しょうせつを書かくようになり、同人どうじん誌し『鷲わしの巣す』には佐々木ささき弘之ひろゆき、小林こばやし理一りいち、坪田つぼた譲二じょうじ、井伏いぶせ鱒二ますじらが参加さんかしている。

戦時せんじ中ちゅうには寺内てらうち大吉だいきちが富沢とみざわの下したへ訪おとずれ事実じじつ上じょうの弟子でしとなり、富沢とみざわが福島ふくしまに移住いじゅうしてからも寺内てらうちは富沢とみざわに会あうため度々たびたび福島ふくしまを訪おとずれたが、富沢とみざわは寺内てらうちに文学ぶんがくだけでなく競輪けいりんも教おしえ、共ともに現地げんちの競輪けいりん場じょうへ赴おもむいたりもしていた。後のちに富沢とみざわが亡なくなった際さい、寺内てらうちは僧侶そうりょ・成田なりた有恒ありつねとして自みずから富沢とみざわを葬ほうむっている。

なお富沢とみざわの長男ちょうなんは陸上りくじょう幕僚ばくりょう長ちょうを務つとめた冨澤とみさわ暉あきらである。

著書ちょしょ

• 『漂ふ草花くさばな』（那須なす書房しょぼう） 1935
• 『鹽原しおばら多助たすけ』（小山こやま書店しょてん、少年しょうねん少女しょうじょ世界せかい文庫ぶんこ） 1936
• 『新選しんせん純文学じゅんぶんがく叢書そうしょ 地中海ちちゅうかい・法廷ほうてい』（新潮社しんちょうしゃ） 1937
• 『ロンバルデイア』（東陽とうよう社しゃ） 1937
• 『愛情あいじょう部隊ぶたい』（中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ） 1938
• 『新しん小説しょうせつ選集せんしゅう 法律ほうりつの轍わだち』（春陽しゅんよう堂どう） 1938
• 『作家さっか自選じせん短篇たんぺん小説しょうせつ傑作けっさく集しゅう 夫婦ふうふ 他た五ご篇へん』（人文書院じんぶんしょいん） 1939
• 『東洋とうよう 第だい1部ぶ』（にっぽん書房しょぼう） 1939
• 『新あたらしい小説しょうせつとそのあり方かた』（日本にっぽん文章ぶんしょう学会がっかい） 1941
• 『軍人ぐんじん村長そんちょう』（平凡社へいぼんしゃ） 1941
• 『白しろ薔薇ばら夫人ふじん』（小学館しょうがくかん） 1941
• 『芸術げいじゅつ論ろん』（平凡社へいぼんしゃ） 1942
• 『ふるさと』（桜井さくらい書店しょてん） 1942
• 『民族みんぞくの祭典さいてん』（大だい都と書房しょぼう） 1942
• 『凍土とうど』（小学館しょうがくかん） 1942
• 『黒竜江こくりゅうこうの口笛くちぶえ』（金かねの星ほし社しゃ） 1942
• 『ジャワ文化ぶんか戦せん』（日本にっぽん文ぶん林りん社しゃ） 1943
• 『光ひかりのジャワ』（同どう光ひかり社しゃ、少しょう国民こくみん南方なんぽう読本とくほん） 1944
• 『愛あいの画廊がろう』（藤田ふじた書店しょてん） 1947
• 『珠たまのゆくえ 光こうと風ふう』（偕成社かいせいしゃ） 1948
• 『少年しょうねん富豪ふごう 人じん喰くえ鮫さめ』（偕成社かいせいしゃ） 1948
• 『双葉ふたば日記にっき』（偕成社かいせいしゃ） 1949
• 『貝かいがらの願ねがい』（講談社こうだんしゃ） 1949
• 『折おれた相思樹そうしじゅ』（大だい日本にっぽん雄弁ゆうべん会かい講談社こうだんしゃ） 1952
• 『これが人生じんせいだ』（東京とうきょう文芸ぶんげい社しゃ） 1957
• 『白しろい壁画へきが』（大だい日本にっぽん雄弁ゆうべん会かい講談社こうだんしゃ） 1957
• 『人ひと喰くえ鮫さめ』（講談社こうだんしゃ、ロマン・ブックス） 1959
• 『侠骨きょうこつ一いち代だい』（講談社こうだんしゃ、ロマン・ブックス） 1959

翻訳ほんやく（一部いちぶ）

• 『偉大いだいなる王おう（ワン）』（ニコライ・バイコフ、小学館しょうがくかん） 1943
• 『ケティー物語ものがたり』（クーリッジ、偕成社かいせいしゃ） 1953
• 『くろうま物語ものがたり』（アンナ・シュウエル、偕成社かいせいしゃ） 1956
• 『美うつくしいポリー』（ルイザ・メイ・オルコット、偕成社かいせいしゃ） 1959
• 『コルネリの幸福こうふく』（ヨハンナ・スピリ、偕成社かいせいしゃ） 1959
• 『クオレ』（エドモンド・デ・アミーチス、小学館しょうがくかん） 1960
• 『子鹿こじか物語ものがたり』（マージョリー・キーナン・ローリングス、偕成社かいせいしゃ） 1960
• 『制服せいふくの処女しょじょ』（ウィンスローエ、偕成社かいせいしゃ） 1961

参考さんこう文献ぶんけん

• 『芥川賞あくたがわしょう全集ぜんしゅう 第だい一いち巻かん』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう 1982年ねん

外部がいぶリンク

• 名古屋なごや近代きんだい文学ぶんがく史し研究けんきゅう会かい - ウェイバックマシン（2019年ねん3月がつ30日にちアーカイブ分ぶん） - 「若わかき日ひの富沢とみざわ有爲男ういお」という記述きじゅつがある。
• 浄土宗じょうどしゅう新聞しんぶん1970年ねん4月がつ10日にち号ごう（pdf） - 寺内てらうち大吉だいきちの『人間にんげんは死しなず』という寄稿きこうで富沢とみざわについての記述きじゅつがある。