マクラーレン・MP4/4

マクラーレン・MP4/4

1988年ねんカナダGPにて アイルトン・セナが駆かるMP4/4
カテゴリー	F1
コンストラクター	マクラーレン
デザイナー	ゴードン・マレー スティーブ・ニコルズ
先代せんだい	マクラーレン・MP4/3
後継こうけい	マクラーレン・MP4/5
主要しゅよう諸しょ元もと
シャシー	カーボンファイバー ハニカム モノコック
サスペンション（前まえ）	ダブルウィッシュボーン, プルロッド コイルスプリング ダンパー
サスペンション（後ご）	ダブルウィッシュボーン, プッシュロッド コイルスプリング ダンパー
エンジン	ホンダRA168-E, 1,494 cc (91.2 cu in), 80度ど V6, ターボ (2.5 Bar limited), ミッドエンジン, 縦たて置おき
トランスミッション	ヴァイスマン/マクラーレン製せい 6速そく MT
燃料ねんりょう	シェル
タイヤ	グッドイヤー
主要しゅよう成績せいせき
チーム	ホンダ マールボロ マクラーレン
ドライバー	11. アラン・プロスト 12. アイルトン・セナ
コンストラクターズタイトル	1
ドライバーズタイトル	1 （アイルトン・セナ）
初戦しょせん	1988年ねんブラジルグランプリ
出走しゅっそう 優勝ゆうしょう ポール Fラップ 16 15 15 10

マクラーレン・MP4/4 (McLaren MP4/4) は、マクラーレンが1988年ねんのF1世界せかい選手権せんしゅけんに投入とうにゅうしたフォーミュラ1カーである。

概要がいよう

MP4/4の設計せっけいは1987年ねん夏なつの終おわりごろから本格ほんかく的てきにスタートした。エンジンをTAG（ポルシェ）からホンダに変更へんこうしたが、チーフデザイナであるスティーブ・ニコルズによると、このホンダとの契約けいやくが正式せいしき締結ていけつされ明あきらかにされるのが9月4日にち（1987年ねんイタリアグランプリで発表はっぴょう）と遅おそかったため、白紙はくしの状態じょうたいから6か月げつでデザインを完了かんりょうさせなければならなかった。

設計せっけい開始かいしが遅おくれたため、シーズンオフの間あいだ、ホンダエンジンを使つかった実じつ走はしテストにはMP4/3Bが使用しようされた。MP4/4がシェイクダウンを行おこなったのは開幕かいまく戦せんの11日にち前まえで、イモラで行おこなわれたシーズン前ぜんテストの最終さいしゅう日びだった。

1988年ねんシーズン開幕かいまく戦せんから最終さいしゅう戦せんまで使用しようされ、圧倒的あっとうてきな強つよさで全ぜん16戦中せんちゅう15勝しょうを記録きろくし、アイルトン・セナに自身じしん初はつのドライバーズタイトルとマクラーレンにコンストラクターズタイトルをもたらした。このときに記録きろくした93.75%という勝率しょうりつは、2023年ねんにレッドブルが更新こうしんするまで35年間ねんかん最高さいこう勝率しょうりつであり続つづけた。

構造こうぞう

当初とうしょ、1988年ねんに向むけてのモノコックデザインはマクラーレンの元もとテクニカルディレクターであったジョン・バーナードがデザインした前年ぜんねん用よう「MP4/3」をリファインして使用しようする予定よていであった。しかし、レギュレーションが安全あんぜん性せい向上こうじょうのため改訂かいていされドライバーの足あしを前ぜん車軸しゃじくより後うしろに下さげる規定きてい（新しんフットボックス規定きてい）が定さだめられたこと、ブラバムからゴードン・マレーが加入かにゅうしていたことなどが重かさなり、MP4/3までの大柄おおがらなスタイルから一変いっぺん。MP4/4はマレーが2年ねん前まえに設計せっけいし「フラットフィッシュ（ヒラメ）」の異名いみょうをとったブラバム・BT55とよく似にて全ぜん高こうが低ひくく、ドラッグが少すくないデザインとなった。

マレーの風洞ふうどう実験じっけんによるデータでは、シートの角度かくどを通常つうじょうより寝ねた姿勢しせいとなる35度どにすることで、7％優すぐれた空そら力りょく特性とくせいを得えられる利点りてんが判明はんめいしていた。7％数字すうじが変かわるというのはそれまで聞きいたことも無ない数すう価かであり、マレーはブラバム所属しょぞく時代じだいのBT55設計せっけい時じからこのアイディアの導入どうにゅうを強つよく望のぞんでいた。マクラーレン合流ごうりゅう後ごにスティーブ・ニコルズとニール・オートレイにも図面ずめんを見みせ、コンセプトに賛同さんどうを得えられたことからMP4/4のドライバーポジションは強つよく寝ねているマシンとなった。マレーによると、このマシンに乗のる際さいにドライバーはそれまでには無なかったような角度かくどに体からだを斜ななめに寝ねかせ、首くびを立たてる姿勢しせいになるが、それには慣なれが必要ひつようで特とくにプロストは姿勢しせいよく背中せなかを立たてた状態じょうたいで座すわりたがるスタイルのため、シェイクダウン直後ちょくごのテストではプロスト用ようのシートは角度かくどを上あげてアジャストしていた。しかしそれだとヘルメットの位置いちが理想りそうより上うえになってしまうため気流きりゅうを遮断しゃだんしてしまい、セナよりタイムで損そんをするだけでなくコクピット内ないに大量たいりょうの空気くうきが入はいり込こむことが判明はんめいしたので、プロスト用ようのシートポジション設定せっていはかなり時間じかんがかかった。マレーの要請ようせいにより、搭載とうさいしたホンダのRA168Eエンジンも、前年ぜんねん型がたのRA167Eからクラッチとフライホイールを小径しょうけい化かすることなどで全ぜん高こうは50mm以上いじょう、クランクシャフト位置いちは28mm下さげられ、ワイズマンシステムを基もとにした3軸じくギアボックスの採用さいようなど、各部かくぶに低てい重心じゅうしん化かが図はかられていた。マレーによれば、サスペンションジオメトリーはBT55と全まったく同おなじとのことである。

モノコックを低ひくくしたためフロントサスペンションは前年ぜんねんまでのようなプッシュロッドがレイアウトできず、ガイドローラーを介かいしたプルロッドとなった。

ターボエンジン最終さいしゅう年ねんのこの年とし、燃料ねんりょう搭載とうさい量りょうが195Lから150Lに引ひき下さげられ、ターボエンジンに求もとめられる燃費ねんぴ性能せいのうはより厳きびしくなった。しかしホンダはこの条件じょうけんを逆手さかてにとり、低てい燃費ねんぴハイパフォーマンス技術ぎじゅつを駆使くしして他たのエンジンメーカーを圧倒あっとうした。

ホンダ・RA168Eエンジンは大おおきく3つの仕様しようが投入とうにゅうされた。開幕かいまく戦せんのブラジルGPではXE1型がたと呼よばれるものが使つかわれたが、第だい2戦せんのサンマリノGPではXE2型がたを投入とうにゅうした。XE1型がたではスロットルバルブが各かくシリンダに配置はいちされていたが、XE2型がたではスロットルバルブがエアチャンバーの手前てまえに移動いどうされた。これはターボの過か給きゅう圧あつを2.5バール以下いかでより正確せいかくにコントロールするためである。第だい4戦せんメキシコGPでは、より高こう回転かいてんで高こう出力しゅつりょくを得えることができるXE3型がたが投入とうにゅうされた。これは主おもに高地こうち対策たいさくによるもので（メキシコGPは高度こうど2300mのメキシコシティで開催かいさいのため）同どうGPのみで使用しよう。以後いごのレースではXE2型がたが使用しようされた。

シーズン前半ぜんはんまでは、サイドポッド上面うわつらにシュノーケル状じょうのダクトを設もうけ、そこからターボへと空気くうきを送おくり込こんでいたが、第だい8戦せんイギリスGPではサイドポッド上じょうのダクトを廃はいし、サイドポッド前ぜん端はしから入はいる空気くうきをターボに送おくり込こむようにダクトをデザイン変更へんこうしたマシンを持もち込こんだ。ところが初日しょにちである金曜日きんようびにこのマシンは不調ふちょうだったため、その金曜きんようの夜よるのうちにシュノーケル状じょうのダクトを付つけた仕様しように戻もどされ土曜日どようびの予選よせんを戦たたかったが、ポールポジションをフェラーリのゲルハルト・ベルガーにさらわれてしまい、MP4/4が1988年ねんシーズンで唯一ゆいいつポールポジションを逃のがしたグランプリとなった。また決勝けっしょうでもシュノーケル状じょうのダクトが使用しようされた。

イギリスGPの次つぎ戦せん第だい9戦せんドイツGPには再ふたたびダクトをサイドポッド内ないに移動いどうしたマシンが持もち込こまれ、以後いご最終さいしゅう戦せんまで同どう形状けいじょうのマシンが使用しようされた。

スペック

アイルトン・セナ車くるま(ホンダコレクションホール所蔵しょぞう)

1988年ねんカナダGPにてアラン・プロストが駆かるMP4/4

ホンダRA168Eエンジン

ホンダRA168Eのエンジン音おん（2009年ねんグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにて収録しゅうろく）

シャーシ

• シャーシ名めい MP4/4
• シャーシ構造こうぞう カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複ふく合あい構造こうぞうモノコック
• ホイールベース 2,875mm
• 前ぜんトレッド 1,824mm
• 後こうトレッド 1,670mm
• クラッチ AP
• ブレーキキャリパー ブレンボ
• ブレーキディスク・パッド SEP
• ホイール スピードライン
• タイヤ グッドイヤー

エンジン

• エンジン名めい ホンダRA168E
• 気筒きとう数すう・角度かくど V型がた6気筒きとうターボ・80度ど
• 排気はいき量りょう 1,494cc
• ターボ IHIツインターボ
• ピストンボア 79 mm
• ストローク 50.8 mm
• 圧縮あっしゅく比ひ 9.4
• 最高さいこう回転かいてん数すう 12,300回転かいてん以上いじょう
• 最大さいだい出力しゅつりょく 685ps(最大さいだいブースト圧あつ時じ1500ps)
• 重量じゅうりょう 146kg
• イグニッション ホンダPGM-IG
• インジェクション ホンダPGM-FI
• スパークプラグ NGK
• 燃料ねんりょう シェル　（トルエン84%,ノルマルヘプタン16%）
• 潤滑油じゅんかつゆ シェル

シャーシ履歴りれき

MP4/4はMP4/4-1からMP4/4-6までの6台だいが製造せいぞうされた。開幕かいまく戦せんのブラジルGPにはMP4/4-1からMP4/4-3までの3台だいが用意よういされた。 MP4/4は、MP4/4-3を除のぞく5台だいが勝利しょうりを挙あげた。シーズン終了しゅうりょう後ご、翌よくシーズンからの自然しぜん吸気きゅうきエンジンテスト用ようのシャーシが3台だい新造しんぞうされた。これらはMP4/4Bと呼よばれ、インダクションポッド付つきのボディカウルをまとった車両しゃりょうを用もちいてテストが行おこなわれた。

成績せいせき

開発かいはつ着手ちゃくしゅの遅おくれの影響えいきょうが懸念けねんされていたが、MP4/4は開幕かいまく当初とうしょから他たチームを圧倒あっとうする速はやさと高たかい信頼しんらい性せいを発揮はっきした。全ぜん16戦せん中ちゅう、イギリスGPを除のぞく15回かいのポールポジションと、イタリアGPを除のぞく15回かいの勝利しょうり、全すべてのレースでどちらかが「完走かんそう」を記録きろく。ワンツーフィニッシュは10回かいを数かぞえ、獲得かくとくしたコンストラクターズポイントは199点てんで、2位いフェラーリ(65ポイント)の3倍ばい以上いじょうの、F1史上しじょうでも類るいを見みない記録きろくを打うち立たてた。

アラン・プロストとアイルトン・セナの両りょうマクラーレンドライバーによって争あらそわれたドライバーズチャンピオン争あらそいは、7勝しょうのプロストに対たいし8勝しょうを挙あげたセナのものとなった。セナにとっては初はつのドライバーズタイトルとなった。獲得かくとく総そうポイントではプロストが105ポイント、セナが94ポイントと、プロストが上回うわまわるが、有効ゆうこうポイント制せいによりベスト11戦せんのリザルトが有効ゆうこうとされた（この場合ばあい、セナが90ポイント、プロストが87ポイント）。

年とし	No.	ドライバー	1	2	3	4	5	6	7	8	9	10	11	12	13	14	15	16	ポイント	ランキング
			BRA	SMR	MON	MEX	CAN	DET	FRA	GBR	GER	HUN	BEL	ITA	POR	ESP	JPN	AUS
1988
	11	プロスト	1	2	1	1	2	2	1	Ret	2	2	2	Ret	1	1	2	1	199	1位い
	12	セナ	DSQ	1	Ret	2	1	1	2	1	1	1	1	10	6	4	1	2

• 太字ふとじはポールポジション、斜はす字じはファステストラップ、DSQは失格しっかく、Retは途中とちゅう棄権きけん。
• 第だい1戦せんブラジルGPのセナはスタートやり直なおしの際さいマシンを乗のり換かえたため失格しっかく。

外部がいぶリンク

• Honda Racing Gallery McLaren Honda MP4/4 - ホンダ公式こうしきサイト