工業こうぎょう地域ちいき

工業こうぎょう地域ちいき（こうぎょうちいき、英語えいご: industrial region）とは、工業こうぎょう活動かつどうの集積しゅうせきがみられ、景観けいかん・機能きのうの観点かんてんで工業こうぎょう活動かつどうが特筆とくひつされる地域ちいきのことである^[1]。工業こうぎょう地域ちいきでは、工業こうぎょう的てき土地とち利用りようが卓越たくえつする^[2]ほか、工場こうじょう間あいだでの分業ぶんぎょうネットワークが発達はったつしている^[3]。また、特とくに規模きぼが大おおきい場合ばあいは工業こうぎょう地帯ちたい（こうぎょうちたい）ともよばれ得える^[2]。

等質とうしつ地域ちいきとして工業こうぎょう地域ちいきを捉とらえる場合ばあいは、工業こうぎょう地域ちいきは工業こうぎょう活動かつどうが卓越たくえつし、工業こうぎょう関係かんけいの土地とち利用りようが顕著けんちょな地域ちいきと解釈かいしゃくできる^[4]。工業こうぎょうの集積しゅうせきにより、工業こうぎょう地域ちいきでは工業こうぎょう数すうの増加ぞうかが進行しんこうし、工業こうぎょう従事じゅうじ者しゃの増加ぞうか、工業こうぎょう関連かんれん施設しせつの集積しゅうせき、当該とうがい地域ちいきの財政ざいせいへの影響えいきょう力りょくの増大ぞうだいなどが進行しんこうしていく^[4]。

一方いっぽう、機能きのう地域ちいきとしては、工業こうぎょう生産せいさんにおける分業ぶんぎょうネットワークをもとに工業こうぎょう地域ちいきを捉とらえ^[5]、工業こうぎょう生産せいさんと関連かんれん機能きのうが集積しゅうせきして形成けいせいされた、まとまりをもつ地域ちいきのことを工業こうぎょう地域ちいきとすることもできる^[6]。機能きのう地域ちいき的てきな工業こうぎょう地域ちいきは、工業こうぎょう圏けんともいう^[7]。

形成けいせい[編集へんしゅう]

近代きんだいの工業こうぎょう地域ちいきの形成けいせいは、工業こうぎょう化かと深ふかい関係かんけい性せいを持もつ^[5]。近代きんだい初期しょきは、主おもに原料げんりょう産地さんちや集散しゅうさん地ち、都市としにおいて工業こうぎょう地域ちいきが形成けいせいされた^[8]。その後ご、資本しほん主義しゅぎの発展はってんに伴ともない、局地きょくち的てきな市場いちば圏けんの再編さいへんが進行しんこうし、国家こっかレベルの工業こうぎょう地帯ちたいが形成けいせいされていった^[9]。一方いっぽう、工業こうぎょうの過度かどな集積しゅうせきによる問題もんだいが原因げんいんとなり、地方ちほうの工業こうぎょう化かが進行しんこうするようになっていった^[10]。1990年代ねんだい以降いこうはグローバル化かの進行しんこうにより、新興しんこう国こくにおいて工業こうぎょう地域ちいきが形成けいせいされるようになってきている^[11]。

類型るいけい[編集へんしゅう]

海岸かいがん地域ちいきに形成けいせいされた工業こうぎょう地域ちいきを臨海りんかい工業こうぎょう地域ちいき（地帯ちたい）という。埋立うめたて地ちや干拓かんたく地ちに作つくられ、専用せんようの港湾こうわんを持もっていることが多おおい。原料げんりょうの入手にゅうしゅや製品せいひんの搬出はんしゅつに有利ゆうりで、日本にっぽんなど原料げんりょう・燃料ねんりょうの輸入ゆにゅうの割合わりあいの高たかい国くにによく見みられる。重化学じゅうかがく工業こうぎょうが立地りっちする。反対はんたいに、内陸ないりく部ぶにある工業こうぎょう地域ちいきは内陸ないりく工業こうぎょう地域ちいき（地帯ちたい）という。海港かいこうから離はなれた内陸ないりく部ぶに形成けいせいされた工業こうぎょう地域ちいきで、内陸ないりく部ぶに豊富ほうふな地下ちか資源しげんの産地さんちがあるなどの場合ばあいは、それらに牽引けんいんされて内陸ないりくに大だい工場こうじょうが立地りっちすると同時どうじに都市としが発展はってんするので、大だい規模きぼな内陸ないりく工業こうぎょう地域ちいきが成立せいりつする。

各国かっこく・各かく地域ちいきの工業こうぎょう地帯ちたい・工業こうぎょう地域ちいき[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽん国内こくないにおいては、歴史れきしや規模きぼを考慮こうりょして、京浜けいひん、中京ちゅうきょう、阪神はんしん、北九州きたきゅうしゅうの四よん大だい工業こうぎょう地帯ちたいのみを工業こうぎょう地帯ちたいと呼よび、他たを工業こうぎょう地域ちいきと呼よんで区別くべつすることがある（最近さいきんでは北九州きたきゅうしゅうを工業こうぎょう地域ちいきとする場合ばあいもある）^[12]。ただし、四よん大だい工業こうぎょう地帯ちたい以外いがいでも、工業こうぎょう地帯ちたいという名称めいしょうが公式こうしきに用もちいられたり、一般いっぱんに普及ふきゅうしているものも数多かずおおい。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

大西洋たいせいよう岸がん中部ちゅうぶ工業こうぎょう地帯ちたい（メガロポリス）（ニューヨーク、フィラデルフィア、ボルティモアなど）
五大ごだい湖みずうみ沿岸えんがん工業こうぎょう地帯ちたい（英語えいご版ばん）（デトロイト、クリーブランド、ピッツバーグ、シカゴ、ミルウォーキー、ゲーリー）
太平洋たいへいよう岸がん工業こうぎょう地帯ちたい（英語えいご版ばん）（ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼなど）
ニューイングランド工業こうぎょう地帯ちたい（ボストンなど）
中西部ちゅうせいぶ工業こうぎょう地帯ちたい（セントルイス、ミネアポリス、カンザスシティ）
南部なんぶ工業こうぎょう地帯ちたい（ダラス、バーミングハム、アトランタ、ヒューストン、ニューオーリンズなど）

大韓民国だいかんみんこく[編集へんしゅう]

ドイツ[編集へんしゅう]

ルール工業こうぎょう地帯ちたい

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 浮田うきたほか 2004, p. 80.
^ ^a ^b 友澤ともざわ 2018, p. 293.
^ 友澤ともざわ 2018, p. 234.
^ ^a ^b 鹿嶋かしま 2013, p. 474.
^ ^a ^b 友澤ともざわ 2018, p. 294.
^ 鹿嶋かしま 2013, pp. 474–475.
^ 鹿嶋かしま 2013, p. 475.
^ 友澤ともざわ 2018, pp. 294–295.
^ 友澤ともざわ 2018, p. 295.
^ 友澤ともざわ 2018, pp. 295–296.
^ 友澤ともざわ 2018, p. 296.
^ “【東京書籍とうきょうしょせき】会社かいしゃ案内あんないお問とい合あわせよくあるご質問しつもんQ&A 教科書きょうかしょ・図書としょ教材きょうざい：小学校しょうがっこう社会しゃかい”. 東京とうきょう書籍しょせき. 2020年ねん2月がつ8日にち閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

浮田うきた典のり良りょう編へん編へん『最新さいしん地理ちり学がく用語ようご辞典じてん』（改訂かいてい版ばん）原はら書房しょぼう、2004年ねん。ISBN 4-562-09054-5。
鹿嶋かしま洋ひろし著ちょ「工業こうぎょう地域ちいき」、人文じんぶん地理ちり学会がっかい編へん編へん『人文じんぶん地理ちり学がく事典じてん』丸善まるぜん出版しゅっぱん、2013年ねん、474-475頁ぺーじ。ISBN 978-4-621-08687-2。
友澤ともざわ和夫かずお著ちょ「工業こうぎょう地域ちいき」、経済けいざい地理ちり学会がっかい編へん編へん『キーワードで読よむ経済けいざい地理ちり学がく』原はら書房しょぼう、2018年ねん、293-305頁ぺーじ。ISBN 978-4-562-09211-6。