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アヴァターラ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヴィシュヌの10の化身けしんえがいた絵画かいが

ヒンドゥーきょうにおいて、アヴァターラサンスクリット: अवतार, Avatāra)とは、不死ふし存在そんざい、または究極きゅうきょく至上しじょう存在そんざいの「化身けしん」「権現ごんげん」(肉体にくたいあらわれ)である。これはサンスクリットで「低下ていか転落てんらく降下こうか」を意味いみし、通例つうれい特別とくべつ目的もくてきためのあるものへの意図いとてき転落てんらく意味いみする。ヒンドゥーきょうではこのかたりおも救済きゅうさいかみヴィシュヌ化身けしん使つかう。ダシャーヴァターラ(しもじゅつ)はヴィシュヌのとく偉大いだいな10の化身けしんである。

キリスト教きりすときょうシヴァちがい、ヴァイシュナヴァヴィシュヌ)は正義せいぎダルマ)がおとろあくさかえたときかみはいつでも特別とくべつ姿すがた人間にんげんふくむ)をとるとしんじている。ヴィシュヌのアヴァターラのクリシュナは、ラーマーヌジャマドヴァにより支持しじされるヴァイシュナヴァガウディーヤ・ヴァイシュナヴァによれば、『バガヴァッド・ギーター』のなかでこうった「ぜんまもるため、あくほろぼすため、正義せいぎ確立かくりつするため、わたし時代じだいから時代じだい出現しゅつげんする。」(『バガヴァッド・ギーター』、4しょう8せつすべての出来事できごとにおいて、すべてのヒンドゥー教徒きょうとは、それがすべてヴィシュヌにむすびつくとして、ヴィシュヌとそのアヴァターラの信仰しんこうあいだちがいがないとしんじる。

教義きょうぎ意義いぎ[編集へんしゅう]

アヴァターラ(ヴィシュヌの化身けしん動物どうぶつまたはひとかたちをとるかみ)のおしえはヒンドゥー叙事詩じょじし哲学てつがく反映はんえいされている。 叙事詩じょじし登場とうじょうするヴィシュヌのおもなアヴァターラは『ラーマーヤナ』の英雄えいゆうラーマと『マハーバーラタ』のパーンダヴァ友人ゆうじんクリシュナである。ヴェーダちょう人的じんてきデーヴァかみ)のサンヒターとくまなく普及ふきゅうしたブラフマン抽象ちゅうしょうてきウパニシャッド概念がいねんことなり、これら叙事詩じょじしのアヴァターラはサグナ・ブラフマンニルグナ・ブラフマンのいずれかであらわされる超越ちょうえつしゃたんなる人間にんげんあいだ仲介ちゅうかいしゃである。

このおしえはかみまった洗練せんれんされていなくてもまさしく評価ひょうかされかたち自身じしん明示めいじしたこと、またおおくのそれが意味いみすることによりヒンドゥー教徒きょうと信仰しんこう生活せいかつおおきな影響えいきょうおよぼした。ラーマクリシュナはヒンドゥー教徒きょうとあいだすうせんねんにわたりあいされ信仰しんこうされたかみ出現しゅつげんとして顕著けんちょのこされている。根本こんぽんてき単一たんいつせいブラフマンウパニシャッド概念がいねんはヒンドゥーきょう思想しそう頂点ちょうてんであるためおおくの人々ひとびとにより崇敬すうけいされる。またアヴァターラの概念がいねんは、平均へいきんてきなヒンドゥー教徒きょうとたいして、邪悪じゃあく時代じだい人間にんげんすくうためヒンドゥーの最高さいこう単一たんいつ神性しんせい出現しゅつげんするという概念がいねん提供ていきょうする。ヒンドゥーの創造そうぞう破壊はかい周期しゅうきはアヴァターラの思想しそう原点げんてんふくんでおり、世界せかいわりにあらわれる最後さいご破壊はかいてきちからとしてヴィシュヌの最後さいごのアヴァターラ、カルキおおきな役割やくわりたすとされる。

ラーマとクリシュナはさておき、おおくのほか人間にんげん動物どうぶつ姿すがた地上ちじょうまたは宇宙うちゅうのどこかにあらわれる。教典きょうてんにはブラフマーとシヴァのアヴァターラはかれていない(彼等かれら自体じたいはグナのアヴァターラにふくまれる)が、ヴィシュヌはなんもアヴァターラとして降誕こうたんしたことがしるされる。おおくのヒンドゥー教徒きょうとは、『ラーマーヤナ』にもとづいて、シヴァはかつてさるしんハヌマーンとして化身けしんしたと断言だんげんする。ハヌマーンはふう発生はっせいさせるデーヴァ、ヴァーユ息子むすことしてよくられている(ハヌマーンはジャングルにんでジャングル人々ひとびと意味いみするヴァナラばれ、もっと偉大いだいなヴィシュヌの信仰しんこうしゃ一人ひとりであった)。

10のアヴァターラ、またはダシャーヴァターラ[編集へんしゅう]

マツヤ
クールマ
ヴァラーハ

ヴィシュヌのマハー・アヴァターラ(偉大いだい化身けしん)は10あるとわれ、じゅう化身けしん(ダシャーヴァターラ;dashaはサンスクリットで10を意味いみする)として有名ゆうめいである:

  1. マツヤさかな
  2. クールマかめ
  3. ヴァラーハいのしし
  4. ナラシンハひと獅子じし(Nara=ひと, simha=ライオン)
  5. ヴァーマナ矮人
  6. パラシュラーマおのったラーマ
  7. ラーマ、シュリ・ラマチャンドラ、アヨーディヤーのおう
  8. クリシュナやみまたはくろ意味いみかれかんする記事きじ参照さんしょう
  9. バララーマすきにぎもの)またはブッダ後述こうじゅつ
  10. カルキ(「永遠えいえん」または「時間じかん」または「汚物おぶつ破壊はかいしゃ」)、我々われわれ現在げんざい存在そんざいしている時期じきで、西暦せいれき428899ねんおわりをむかえるカリ・ユガ最後さいご出現しゅつげんすると予測よそくされる。

バーガヴァタ・プラーナの22のアヴァターラ[編集へんしゅう]

バーガヴァタ・プラーナ』1.3でヴィシュヌの22のアヴァターラがリストされている[1]

1)クマーラチャトゥルサナ)(Catursana) 2)ヴァラーハ(Varaha) 3)ナーラダ(Narada) 4)ナラ・ナーラーヤナ(Nara-Narayana) 5)カピラ(Kapila) 6)ダッタートレーヤ(Dattatreya) 7)ヤジュニャ(Yajna)8) リシャバ(Rsabha) 9)プリトゥ(Prithu) 10)マツヤ(Matsya) 11)クールマ(Kurma) 12)ダンヴァンタリ(Dhanvantari) 13) モーヒニー(Mohini) 14)ナラシンハ(Narasimha) 15)ヴァーマナ(Vamana) 16)ブリグパティ(パラシュラーマ)(Parasurama) 17)ヴィヤーサ(Vyasa) 18) ラーマ(Rama) 19)バララーマ(Balarama) 20)クリシュナ(Krsna) 21)ブッダ(Buddha) 22)カルキ(Kalki)

きゅう番目ばんめのアヴァターラ:バララーマかブッダか[編集へんしゅう]

バララーマはプラーナ文献ぶんけん伝統でんとうによる9番目ばんめのアヴァターラである。紀元きげん最初さいしょの1000ねん後半こうはん、インドで仏教ぶっきょうさかえるとともにブッダが9番目ばんめのアヴァターラであるとわれること顕著けんちょになり、それはヒンドゥーきょう同化どうかされた(これがインドでの仏教ぶっきょう衰退すいたい寄与きよした)。ヴィシュヌ詩人しじんジャヤデーヴァ・ゴスヴァミ(12世紀せいき)の有名ゆうめいな『ギータ・ゴーヴィンダ』の ダシャーヴァターラ・ストートラ ではバララーマ(8番目ばんめのアヴァターラとして)とブッダ(9番目ばんめのアヴァターラとして)両方りょうほう賛美さんびされている。

ブッダはそのためおおくのヒンドゥー教徒きょうとからブッダデーヴ(「せいなるブッダ」)となされる。しかし、仏教徒ぶっきょうとはブッダをアヴァターラとしてかんがえない。現在げんざいのブッダをアヴァターラとかんがえる著名ちょめいなヒンドゥー思想家しそうかサルヴパッリー・ラーダークリシュナンがいる。

一方いっぽうドヴァイタ支持しじしゃは、ことなった基準きじゅんを(すなわちヴェーダなどを拒絶きょぜつして)くため、とくにブッダをアヴァターラとかんがえずにわりにバララーマをそうであるとかんがえる。バララーマはのアヴァターラとはちがって、ヴィシュヌ自身じしんではなくむしろヴィシュヌのへびアナンタである。

現代げんだいてき解釈かいしゃく[編集へんしゅう]

進化しんかろんとアヴァターラ[編集へんしゅう]

アヴァターラが生命せいめい人類じんるい進化しんかあらわすという主張しゅちょう存在そんざいする[2][3]。マツヤはみず生命せいめい、クールマはつぎ段階だんかい水陸すいりく両棲りょうせいだいさん動物どうぶついのししのヴァラーハはりく生命せいめいあらわし、ひと獅子じしのナラシンハは人類じんるい発展はってん開始かいし、矮人のヴァーマナがこの不完全ふかんぜん発達はったつ象徴しょうちょうし、そしてもり賢者けんじゃパラシュラーマが人類じんるい基本きほんてき発展はってん完了かんりょう意味いみし、ラーマおうひとくにおさめる能力のうりょくきざしとなり、ヒンドゥーきょうによれば64の分野ぶんや科学かがく芸術げいじゅつ専門せんもんであったクリシュナはひと文化ぶんかてき関心かんしん進歩しんぽしめし、啓蒙けいもうされた存在そんざいたるブッダはひと啓蒙けいもう精神せいしんてき発達はったつ象徴しょうちょうする(ラーマ以前いぜんおう存在そんざいし、クリシュナのまえにも科学かがく探求たんきゅうされたようにアヴァターラの時代じだいかならずしもそのときしめわけではないこと注意ちゅういせよ)。しかしながら、このように生物せいぶつ進化しんか進歩しんぽ歴史れきしととらえるかんがかた本来ほんらい進化しんかろんにはないものである。

キアラ・ウィンドライダー[編集へんしゅう]

キアラ・ウィンドライダー著書ちょしょ"Fire from Heaven: Dawn of Golden Age"で、アヴァターラはある程度ていど沈滞ちんたいがあるとき人間にんげんしにおうじて地上ちじょうあらわれると主張しゅちょうした。アヴァターラはよりたか意識いしき降下こうかであり精神せいしんてき存在そんざいである必要ひつようはない。たとえばガンディー暴力ぼうりょくのアヴァターラ、アルベルト・アインシュタイン物理ぶつりがくのアヴァターラで、すべてのたか意識いしきってうまれたものをアヴァターラとべると主張しゅちょうした。この見解けんかいはウィンドライダー独自どくじのもので、アヴァターラをヴィシュヌの化身けしんでありダルマたすあくほろぼすための特別とくべつ目的もくてきつとしんじるヒンドゥー教徒きょうと伝統でんとうてき観点かんてん反映はんえいしたものではない。

アヴァターラ主張しゅちょうしゃ一覧いちらん[編集へんしゅう]

ヒンドゥーきょう伝統でんとうてきな10のアヴァターラ以外いがいに、自分じぶんがアヴァターラであると主張しゅちょうしたり、アヴァターラであると信奉しんぽうしゃしんじている人物じんぶつ存在そんざいする。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

参照さんしょう[編集へんしゅう]

  1. ^ Śrīmad-Bhāgavatam (Bhāgavata Purāṇa): Canto 1: Creation, Chapter 3: Kṛṣṇa Is the Source of All Incarnations, https://vedabase.io/en/library/sb/1/3/ 
  2. ^ Incarnations of Vishnu & Theory of Evolution « Going Insane
  3. ^ Hindu Gods

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]